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特開2023-64169下肢用衣類および下肢用衣類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064169
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】下肢用衣類および下肢用衣類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/00 20060101AFI20230501BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230501BHJP
   A41D 27/06 20060101ALI20230501BHJP
   A41D 27/24 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A41D27/00 C
A41D13/05 143
A41D27/06 F
A41D27/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174263
(22)【出願日】2021-10-26
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王子 裕基
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 飛鳥
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AA12
3B011AC17
3B035AB05
3B035AC18
3B035AD07
(57)【要約】
【課題】綿を主成分とする生地であっても、段階着圧設計のカットソーを容易に製造可能な下肢用衣類を提供することを目的とする。
【解決手段】下肢用衣類1は、人体Bの足首から大腿までを覆うように人体Bの下肢に装着され、下肢に装着したときに、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなるように設計されている。下肢用衣類1は、下肢の前面を覆う前身頃2と、下肢の後面を覆う後身頃とを備える。前身頃2および後身頃は、綿を主成分とする生地から構成されている。前身頃2および後身頃は、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、軸方向D1に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の足首から大腿までを覆うように人体の下肢に装着され、下肢に装着したときに、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなるように設計されている下肢用衣類であって、
前記下肢用衣類は、
下肢の前面を覆う前身頃と、
下肢の後面を覆う後身頃と
を備え、
前記前身頃および前記後身頃は、綿を主成分とする生地から構成され、
前記前身頃および前記後身頃は、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、軸方向に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、軸方向に沿って、フラットシーマによって縫合されている、下肢用衣類。
【請求項2】
前記前身頃および前記後身頃は、人体の股上を覆うショーツ部を含み、
前記前身頃および前記後身頃は、下肢の内側に対応する位置において、軸方向に沿って、オーバーロックによって縫合され、前記下肢の外側に対応する位置において、軸方向に沿って、フラットシーマによって縫合されている、請求項1記載の下肢用衣類。
【請求項3】
前記生地は、インレイ編みによって編成されている、請求項1または2記載の下肢用衣類。
【請求項4】
前記生地は、50%以上であって、70%以下の綿と、20%以上であって、40%以下のポリエステルと、5%以上であって、25%以下のポリウレタンから構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の下肢用衣類。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の下肢用衣類の製造方法であって、
下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、前記前身頃と前記後身頃とをフラットシーマによって縫合するステップと、
下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、前記前身頃と前記後身頃とをオーバーロックによって縫合するステップと
を含み、
前記フラットシーマによって縫合するステップの後に、前記オーバーロックによって縫合するステップを行う、下肢用衣類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢用衣類および下肢用衣類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、装着したときに、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなるように設計された、いわゆる段階着圧設計の下肢用衣類が開示されている。特許文献1の下肢用衣類は、ポリウレタンなどを主成分とする、伸縮性に優れた生地を使用し、下肢に伸張した状態で装着されることで、人体に着圧を付与している。この下肢用衣類は、裁断された生地を縫合した、いわゆるカットソーとして製造されている。下肢用衣類をカットソーとして製造すると、丸編みされた生地を使用する場合に比べて、生地を低コストで入手可能であるため、下肢用衣類を低価格で提供することができる。特許文献1の下肢用衣類では、裁断された生地をフラットシーマによって縫合している。フラットシーマによって生地を縫合すると、下肢用衣類を下肢に装着したときに、良好な装着感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/082677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、段階着圧設計の下肢用衣類には、部屋着や肌着としてだけでなく、外着としても気軽に装着可能な、見た目のカジュアル性が要求されている。特許文献1の下肢用衣類は、ポリウレタンなどを主成分とする生地を使用しているため、たとえば、タイツのような肌着のような印象を与え、外着のような印象を与えるものではない。
【0005】
見た目のカジュアル性を向上させるためには、デニム生地のように、綿を主成分とする生地を使用することが考えられる。しかし、綿を主成分とする生地は、伸縮し難いため、下肢用衣類を作製すると、着圧値が低くなり易い。また、良好な装着感を与えるために、綿を主成分とする生地をフラットシーマによって縫合しようとすると、生地が伸縮し難いため、縫合しようとする生地を重ね合わせた状態で、フラットシーマミシンのアームにセットすることが困難となることがある。したがって、カットソーとして、フラットシーマによる縫合を使用して、段階着圧設計の下肢用衣類を製造し難い。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、綿を主成分とする生地であっても、段階着圧設計のカットソーを容易に製造可能な下肢用衣類および下肢用衣類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る下肢用衣類は、人体の足首から大腿までを覆うように人体の下肢に装着され、下肢に装着したときに、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなるように設計されている下肢用衣類であって、前記下肢用衣類は、下肢の前面を覆う前身頃と、下肢の後面を覆う後身頃とを備え、前記前身頃および前記後身頃は、綿を主成分とする生地から構成され、前記前身頃および前記後身頃は、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、軸方向に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、軸方向に沿って、フラットシーマによって縫合されている。
【0008】
前記前身頃および前記後身頃は、人体の股上を覆うショーツ部を含み、前記前身頃および前記後身頃は、下肢の内側に対応する位置において、軸方向に沿って、オーバーロックによって縫合され、前記下肢の外側に対応する位置において、軸方向に沿って、フラットシーマによって縫合されていてもよい。
【0009】
前記生地は、インレイ編みによって編成されていてよい。
【0010】
前記生地は、50%以上であって、70%以下の綿と、20%以上であって、40%以下のポリエステルと、5%以上であって、25%以下のポリウレタンから構成されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る下肢用衣類の製造方法は、上記下肢用衣類の製造方法であって、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、前記前身頃と前記後身頃とをフラットシーマによって縫合するステップと、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、前記前身頃と前記後身頃とをオーバーロックによって縫合するステップとを含み、前記フラットシーマによって縫合するステップの後に、前記オーバーロックによって縫合するステップを行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る下肢用衣類および下肢用衣類の製造方法によれば、綿を主成分とする生地であっても、段階着圧設計のカットソーを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類を前側から見た模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類を後側から見た模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類の製造方法における、前身頃と後身頃とをフラットシーマによって縫合するステップを示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類の製造方法における、前身頃と後身頃とをオーバーロックによって縫合するステップを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る下肢用衣類を説明する。ただし、以下の実施形態は一例であり、本発明の下肢用衣類は、以下の例に限定されるものではない。
【0015】
なお、本明細書において、特に断らない限り、「A形状」およびこれに類する表現は、完全なA形状のみを指すのではなく、見た目にA形状を連想させる形状(略A形状)を含んで指すものとする。本明細書において、特に断らない限り、「軸方向」およびこれに類する表現は、人体の身長方向を指すものとし、「径方向」およびこれに類する表現は、身長方向を軸として、人体を周回する方向を指すものとする。本明細書において、特に断らない限り、「上」およびこれに類する表現は、人体において、足先から頭に向かう側を指し、「下」およびこれに類する表現は、「上」と反対側であって、人体において、頭から足先に向かう側を指すものとする。本明細書において、特に断らない限り、「前」およびこれに類する表現は、人体の腹が向く側を指し、「後」およびこれに類する表現は、「前」と反対側であって、人体の腰が向く側を指すものとする。本明細書において、特に断らない限り、「右」およびこれに類する表現は、人体を前側から見たときに、左側を指し、「左」およびこれに類する表現は、「右」と反対側であって、人体を前側から見たときに、右側を指すものとする。本明細書において、特に断らない限り、「内」およびこれに類する表現は、左右の脚が向き合う側を指し、「外」およびこれに類する表現は、「内」と反対側であって、左右の脚が向き合わない側を指すものとする。
【0016】
本実施形態に係る下肢用衣類1は、図1および図2に示されるように、人体Bの足首から大腿までを覆うように人体Bの下肢に装着され、下肢に装着したときに、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなるように設計されている。下肢用衣類1の形状は、着圧が段階的に小さくなるように設計されていれば、特に限定されることはない。本実施形態では、下肢用衣類1は、人体Bの脚の略全体を覆うレッグ部20L、20R、30L、30Rを備えている。下肢用衣類1は、レッグ部20L、20R、30L、30Rに加え、レッグ部20L、20R、30L、30Rに連続して形成され、人体Bの股上を覆うショーツ部24L、24R、34L、34Rをさらに備えていてもよい。ただし、下肢用衣類1は、ショーツ部24L、24R、34L、34Rを備えていなくてもよく、たとえば片脚用のレッグ部のみを備える構成であっても構わない。下肢用衣類1は、たとえば、ストッキング、パンティストッキング、タイツ、スパッツ、レギンス、トレンカなどとして具現化することができる。
【0017】
レッグ部20L、20R、30L、30Rは、特に限定されることはないが、本実施形態では、図1および図2に示されるように、人体Bの足首から大腿に至る股下の上下方向の略全体を覆うように、筒形状を有している。具体的には、レッグ部20L、20R、30L、30Rは、人体Bの足首の略全体を覆う足首部21L、21R、31L、31Rと、人体Bの脹脛の略全体を覆う脹脛部22L、22R、32L、32Rと、人体Bの大腿の略全体を覆う大腿部23L、23R、33L、33Rとを備えている。ただし、レッグ部20L、20R、30L、30Rは、具現化される下肢用衣類1の形状に応じて、たとえば足先までを覆うように、一端部が有底である筒形状を有していてもよい。
【0018】
ショーツ部24L、24R、34L、34Rは、本実施形態では、図1および図2に示されるように、人体Bの下腹から腰および臀の略全体を覆う。具体的には、ショーツ部24L、24R、34L、34Rは、上方に人体Bの腰に位置付けられる1つの開口を有し、下方にレッグ部20L、20R、30L、30Rと連通する2つの開口を有する。ショーツ部24L、24R、34L、34Rは、上方に人体Bの腰部を締め付けるウエスト部40を備えていてもよい。この場合、ウエスト部40が人体Bの腰部を締め付けることで、下肢用衣類1が下方にずれ落ちることが抑制される。たとえば、ウエスト部40は、ショーツ部24L、24R、34L、34Rの本体の上端に、環状のゴムを縫合することで形成されている。ただし、ウエスト部40は、ショーツ部24L、24R、34L、34Rを形成する生地が上下方向で折り返されて端部が縫合され、折り返しによって形成される内部空間に固定用紐が挿通されることで、形成されてもよい。
【0019】
下肢用衣類1は、前述のように、下肢に装着したときに、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなるように設計されている。そうすることで、下肢用衣類1が下肢に装着されると、下肢用衣類1が筋肉を圧迫して血液を上方に押し上げ、下肢の疲れやむくみを軽減することができる。本実施形態では、下肢用衣類1のレッグ部20L、20R、30L、30Rが、足首部21L、21R、31L、31R、脹脛部22L、22R、32L、32R、大腿部23L、23R、33L、33Rの順に、着圧が段階的に低くなるように設計されている。下肢用衣類1の着圧設計は、たとえば、下肢用衣類1の装着対象となる装着者の年齢や性別に対応する平均体型に応じて、変更されてもよい。下肢用衣類1の着圧は、足首部21L、21R、31L、31R、脹脛部22L、22R、32L、32R、および大腿部23L、23R、33L、33Rの周方向D2の長さを軸方向D1の各位置で変更することで、調整することができる。
【0020】
下肢用衣類1を下肢に装着したときの着圧は、足首から大腿に向かって、着圧が段階的に小さくなれば、特に限定されることはない。たとえば、下肢用衣類1は、人体Bの下肢に装着したときに、好ましくは、足首への着圧(足首部21L、21R、31L、31Rによる着圧)が13~30hPaであり、脹脛への着圧(脹脛部22L、22R、32L、32Rによる着圧)が8~25hPaであり、大腿への着圧(大腿部23L、23R、33L、33Rによる着圧)が4~21hPaとなるように設計することができ、より好ましくは、足首への着圧が20~25hPaであり、脹脛への着圧が15~20hPaであり、大腿への着圧が10~15hPaとなるように設計することができる。
【0021】
下肢用衣類1は、図1および図2に示されるように、下肢の前面を覆う前身頃2と、下肢の後面を覆う後身頃3とを備えている。本実施形態において、前身頃2は、下肢の前面左側を覆う左側前身頃2Lと、下肢の前面右側を覆う右側前身頃2Rとを備えている。同様に、後身頃3は、下肢の後面左側を覆う左側後身頃3Lと、下肢の後面右側を覆う右側後身頃3Rとを備えている。より具体的には、前身頃2は、左前側のレッグ部20Lおよび左前側のショーツ部24Lが縫合されることなく一体的に形成された左側前身頃2Lと、右前側のレッグ部20Rおよび右前側のショーツ部24Rが縫合されることなく一体的に形成された右側前身頃2Rとを備えている。同様に、後身頃3は、左後側のレッグ部30Lおよび左後側のショーツ部34Lが縫合されることなく一体的に形成された左側後身頃3Lと、右後側のレッグ部30Rおよび右後側のショーツ部34Rが縫合されることなく一体的に形成された右側後身頃3Rとを備えている。しかし、前身頃2および後身頃3の形態は、具現化される下肢用衣類1の形状に応じて、下肢用衣類1の製造の容易性およびコストなどに鑑みて、適宜変更され得る。たとえば、前身頃2は、左側前身頃2Lおよび右側前身頃2Rが縫合されることなく一体的に形成されていてもよい。同様に、後身頃3は、左側後身頃3Lおよび右側後身頃3Rが縫合されることなく一体的に形成されていてもよい。また、前身頃2は、裁断された足首部21L、21R、脹脛部22L、22R、大腿部23L、23R、およびショーツ部24L、24Rが縫合されることで形成されていてもよい。同様に、後身頃3は、裁断された足首部31L、31R、脹脛部32L、32R、大腿部33L、33R、およびショーツ部34L、34Rが縫合されることで形成されていてもよい。
【0022】
このように、下肢用衣類1は、カットソーとして形成されている。具体的には、下肢用衣類1は、図1に示されるように、左側前身頃2Lおよび左側後身頃3Lの外側の端部(周方向D2の端部)を軸方向D1に沿って縫合した左外側縫合部SL1と、左側前身頃2Lおよび左側後身頃3Lの内側下方(レッグ部20L、20R、30L、30Rに対応する部分)の端部(周方向D2の端部)を軸方向D1に沿って縫合した左内側縫合部SL2と、右側前身頃2Rおよび右側後身頃3Rの外側の端部(周方向D2の端部)を軸方向D1に沿って縫合した右外側縫合部SR1と、右側前身頃2Rおよび右側後身頃3Rの内側下方(レッグ部20L、20R、30L、30Rに対応する部分)の端部(周方向D2の端部)を軸方向D1に沿って縫合した右内側縫合部SR2とを有している。より具体的には、下肢用衣類1はさらに、図1に示されるように、左側前身頃2Lおよび右側前身頃2Rの内側上方(ショーツ部24L、24R、34L、34Rに対応する部分)の端部(周方向D2の端部)を軸方向D1に沿って縫合した前側縫合部SC1と、図2に示されるように、左側後身頃3Lおよび右側後身頃3Rの内側上方(ショーツ部24L、24R、34L、34Rに対応する部分)の端部(周方向D2の端部)を軸方向D1に沿って縫合した後側縫合部SC2とを有している。本実施形態では、図1および図2に示されるように、左外側縫合部SL1、左内側縫合部SL2、右外側縫合部SR1、右内側縫合部SR2、前側縫合部SC1、および後側縫合部SC2において、左側前身頃2L、右側前身頃2R、左側後身頃3L、および右側後身頃3Rが互いに縫合されることで、下肢用衣類1がカットソーとしての衣類をなしている。左外側縫合部SL1、左内側縫合部SL2、右外側縫合部SR1、右内側縫合部SR2、および後側縫合部SC2での縫合の詳細については、後述される。
【0023】
前身頃2および後身頃3は、綿を主成分とする生地から構成されている。そうすることで、下肢用衣類1が全体して、カジュアルな印象を与えるので、部屋着や肌着としてだけでなく、外着としても気軽に使用することができるようになる。なお、本明細書において、「生地の主成分」は、生地の50%以上を占める成分を意味し、「%」は、重量%を意味する。図1および図2に示されるように、下肢用衣類1がレギンスとして具現化される場合、下肢用衣類1をスキニーパンツのように見せることができる。また、図1および図2に示されるように、前身頃2や後身頃3の表地に、ポケットPを設けたり、ボタン(図示せず)を縫合したり、ロゴマーク(図示せず)などの装飾を施すと、よりカジュアルな印象を与えることができる。さらに、前身頃2および後身頃3の生地を黒色や藍色に染色すれば、下肢用衣類1が全体して、デニム生地で形成されているような印象を与えるので、下肢用衣類1をより気軽に使用することができる。
【0024】
前身頃2および後身頃3の生地は、綿を主成分とすれば、特に限定されることはない。たとえば、前身頃2および後身頃3の生地は、好ましくは、50%以上であって、70%以下の綿と、20%以上であって、40%以下のポリエステルと、5%以上であって、25%以下のポリウレタンから構成され、より好ましくは、50%以上であって、60%以下の綿と、25%以上であって、35%以下のポリエステルと、10%以上であって、20%以下のポリウレタンから構成されている。上記割合でポリエステルを生地に含有させることで、綿の生地感を損ねることなく、生地に強靭性や耐摩耗性が付与されるので、下肢用衣類1の強度が向上する。また、上記割合でポリウレタンを生地に含有させることで、着圧を損ねない程度に、生地に伸縮性が付与されるので、下肢用衣類1の着脱性が向上する。さらに、ポリウレタンの伸縮性により、脚が絞め付けられるような感覚が緩和されるので、装着感が良好になるとともに、通常のデニムパンツなどと比較して、フィット感が向上する。
【0025】
前身頃2および後身頃3の生地は、本実施形態では、単一成分の繊維から紡いだ糸(単紡糸や単繊糸)を複数種使用して編成することで、上述のような、複数の成分から構成されている。より具体的に言えば、たとえば、前身頃2および後身頃3の生地を、55%の綿と、30%のポリエステルと、15%のポリウレタンとから構成する場合、綿糸と、ポリエステル糸と、ポリウレタン糸とを、55:30:15の割合で使用して編成している。なお、本明細書において、「糸」は、生地を編成する際に原材料となるものを意味し、単糸のみならず、単糸を複数本撚り合わせた多子糸(たとえば、双糸)を含む概念である。しかし、前身頃2および後身頃3の生地は、複数成分の繊維から紡いだ糸(混紡糸や混繊糸)を1種のみ使用して編成することで、上述のような、複数の成分から構成されてもよい。より具体的に言えば、たとえば、前身頃2および後身頃3の生地を、55%の綿と、30%のポリエステルと、15%のポリウレタンとから構成する場合、綿繊維と、ポリエステル繊維と、ポリウレタン繊維とを、55:30:15の割合で混合して紡いだ糸のみを使用して編成してもよい。
【0026】
前身頃2および後身頃3の生地は、本実施形態では、インレイ編みによって編成されている。インレイ編みによって編成された生地を使用することで、生地を編物で編成しても、人体Bの下肢に十分な着圧を与え、かつ、柔軟な装着感を下肢用衣類1の装着者に与えることができる。より具体的には、前身頃2および後身頃3の生地は、綿が表地の主成分として表出し、ポリエステルが裏地の主成分として表出するように編成された編物生地に、ポリウレタン糸がインレイ糸として軸方向D1または周方向D2に挿入された、インレイ編みによって編成されている。この場合、下肢用衣類1全体の成分比に対して、表地から表出する綿の割合が多くなるので、下肢用衣類1が全体として、よりカジュアルな印象を与え、より気軽に使用することができるようになる。また、下肢用衣類1の着圧と、下肢用衣類1の伸縮性とのバランスが適切になり、下肢用衣類1の装着感が良好になる。しかし、前身頃2および後身頃3の生地は、綿を主成分とする生地であれば、特に限定されることはなく、綾織りによって編成されたデニム生地などの織物生地であってもよく、綿フェルトなどの不織布生地であってもよい。
【0027】
前身頃2および後身頃3は、図1および図2に示されるように、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、軸方向D1に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されている。そうすることで、前身頃2および後身頃3が綿を主成分とする生地であり、伸縮性が低い場合であっても、後述されるように、段階着圧設計のカットソーを容易に製造することができる。フラットシーマによる縫合は、生地の表面に対して略平坦であるため、縫合部が人体Bに触れたときの違和感が小さいので、下肢用衣類1の装着感が良好になる。また、フラットシーマによる縫合部は、人体Bに密着し易いため、装着者の動作によって、下肢用衣類1の裏地に対して人体Bが摺動する場合であっても、下肢用衣類1による人体Bへの着圧が安定する。なお、下肢用衣類1の内側および外側のうちの一方の縫合のみにフラットシーマを使用することで、所望の着圧を十分に得ることができる。
【0028】
なお、本明細書において、「オーバーロック」は、1本針または2本針を用いたかがり縫いによる縫合を意味し、より具体的には、2本針を用いたかがり縫いによる縫合を意味する。また、本明細書において、「フラットシーマ」は、4本針以上を用いた扁平縫いによる縫合を意味し、より具体的には、4本針~6本針を用いた扁平縫いによる縫合を意味し、さらに具体的には、4本針を用いた扁平縫いによる縫合を意味する。
【0029】
前身頃2および後身頃3は、図1および図2に示されるように、本実施形態では、下肢の内側に対応する位置(左内側縫合部SL2および右内側縫合部SR2)において、軸方向D1に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の外側に対応する位置(左外側縫合部SL1および右外側縫合部SR1)において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されている。この場合、装着者が動作するときに、下肢用衣類1の裏地に対して摺動度合いが大きい下肢の外側に対応する位置に、フラットシーマによる縫合部を設けているので、装着者の動作時における人体Bへの着圧がさらに安定する。また、ショーツ部24L、24R、34L、34Rにおいて、フラットシーマによって股下に対応する位置を超えて股上に対応する位置まで縫合されるので、人体Bへの着圧がさらに安定する。しかし、前身頃2および後身頃3は、下肢の外側に対応する位置(左外側縫合部SL1および右外側縫合部SR1)において、軸方向D1に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の内側に対応する位置(左内側縫合部SL2および右内側縫合部SR2)において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されていてもよい。
【0030】
さらに、本実施形態では、図1および図2に示されるように、左側前身頃2Lおよび右側前身頃2Rが、ショーツ部24L、24Rの前側中央部に対応する位置(前側縫合部SC1)において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されている。また、本実施形態では、左側後身頃3Lおよび右側後身頃3Rが、ショーツ部34L、34Rの後側中央部に対応する位置(後側縫合部SC2)において、フラットシーマによって縫合されている。この場合、ショーツ部24L、24R、34L、34Rをフラットシーマによって縫合することで、下肢用衣類1の装着感がさらに良好になる。人体Bの股上への着圧が安定する。しかし、左側前身頃2Lおよび右側前身頃2Rは、ショーツ部24L、24R、34L、34Rの前側および後側の中央部に対応する位置(前側縫合部SC1および後側縫合部SC2)において、オーバーロックなどのフラットシーマ以外の適切な縫合によって、縫合されてもよい。
【0031】
次に、図3および図4を参照して、本発明の一実施形態に係る下肢用衣類の製造方法を説明する。ただし、以下の実施形態は一例であり、本発明の下肢用衣類の製造方法は、以下の例に限定されるものではない。
【0032】
本実施形態に係る下肢用衣類1の製造方法は、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、前身頃2と後身頃3とをフラットシーマによって縫合するステップ(図3参照)と、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、前身頃2と後身頃3とをオーバーロックによって縫合するステップ(図4参照)とを含んでいる。本実施形態に係る下肢用衣類の製造方法では、フラットシーマによって縫合するステップの後に、オーバーロックによって縫合するステップを行う。
【0033】
前身頃2と後身頃3とをフラットシーマによって縫合するステップは、公知のフラットシーマミシンを使用して行うことができる。具体的には、図3に示されるように、フラットシーマミシンM1のアームM10上に、前身頃(左側前身頃)2Lおよび後身頃(左側後身頃)3Lを左外側縫合部SL1で重ね合わせた状態でセットし、重ね合わせた左外側縫合部SL1において、前身頃(左側前身頃)2Lおよび後身頃(左側後身頃)3Lを軸方向D1に縫合する。同様に、特に図示しないが、フラットシーマミシンM1のアームM10上に、前身頃(右側前身頃)2Rおよび後身頃(右側後身頃)3Rを右外側縫合部SR1で重ね合わせた状態でセットし、重ね合わせた右外側縫合部SR1において、前身頃(右側前身頃)2Rおよび後身頃(右側後身頃)3Rを軸方向D1に縫合する。
【0034】
このように、まず、前身頃2および後身頃3の外側端部および内側端部のうちの一端部(本実施形態では、左外側縫合部SL1および右外側縫合部SR1)をフラットシーマによって縫合する。そうすることで、何ら縫合されていない状態で、前身頃2および後身頃3をフラットシーマミシンM1のアームM10上に一端部を重ね合わせてセットし、縫合することができる。他方、前身頃2および後身頃3の一端部が縫合された状態で、他端部(本実施形態では、左内側縫合部SL2および右内側縫合部SR2)をフラットシーマによって縫合しようとすると、前身頃2および後身頃3が全体として筒状となるように、前身頃2および後身頃3の他端部を重ね合わせた状態で、フラットシーマミシンM1のアームM10上にセットする必要がある。本実施形態のように、段階着圧設計の下肢用衣類1では、径が最も小さくなる足首部21L、21R、31L、31R(図1および図2参照)において、筒状に重ね合わせた前身頃2および後身頃3による径が、フラットシーマミシンM1のアームM10の径より小さくなることがある。この場合、伸縮し難い綿を主成分とする生地を前身頃2および後身頃3の生地として使用すると、筒状に重ね合わせた状態で、前身頃2および後身頃3をフラットシーマミシンM1のアームM10にうまくセットすることができず、フラットシーマによって、前身頃2および後身頃3の他端部を縫合することが困難となる。
【0035】
前身頃2と後身頃3とをオーバーロックによって縫合するステップは、公知のオーバーロックミシンを使用して行うことができる。具体的には、フラットシーマによって縫合するステップの後に、図4に示されるように、オーバーロックミシンM2のテーブルM20上に、前身頃(左側前身頃)2Lおよび後身頃(左側後身頃)3Lの表地を左内側縫合部SL2で重ね合わせた状態(換言すれば、前身頃(左側前身頃)2Lおよび後身頃(左側後身頃)3Lの裏地が表を向いた状態)でセットし、重ね合わせた左内側縫合部SL2において、前身頃(左側前身頃)2Lおよび後身頃(左側後身頃)3Lを軸方向D1に縫合する。同様に、特に図示しないが、オーバーロックミシンM2のテーブルM20上に、前身頃(右側前身頃)2Rおよび後身頃(右側後身頃)3Rの表地を右内側縫合部SR2で重ね合わせた状態(換言すれば、前身頃(右側前身頃)2Rおよび後身頃(右側後身頃)3Rの裏地が表を向いた状態)でセットし、重ね合わせた右内側縫合部SR2において、前身頃(右側前身頃)2Rおよび後身頃(右側後身頃)3Rを軸方向D1に縫合する。
【0036】
このように、前身頃2および後身頃3の外側端部および内側端部のうちの一端部(本実施形態では、左外側縫合部SL1および右外側縫合部SR1)をフラットシーマによって縫合した後に、他端部(本実施形態では、左内側縫合部SL2および右内側縫合部SR2)をオーバーロックによって縫合する。生地の表裏を逆にして、裏地が表を向くように、前身頃2および後身頃3をオーバーロックによって縫合する場合、フラットシーマによる縫合とは異なり、前身頃2および後身頃3が全体として筒状となるように、前身頃2および後身頃3の他端部を重ね合わせることを必要としない。つまり、オーバーロックによる縫合の場合、図4に示されるように、オーバーロックミシンM2のテーブルM20上において、オーバーロックミシンM2の送り方向(図4では、軸方向D1)に対して左右の一方側のみに、前身頃2および後身頃3をセットすればよい。そのため、フラットシーマによる縫合の場合のように、前身頃2および後身頃3の他端部の重ね合わせが困難とはならない。したがって、伸縮し難い綿を主成分とする生地を前身頃2および後身頃3の生地として使用しても、オーバーロックによる縫合を容易に行うことができる。さらに、縫合の後に、正規の向きとなるように、生地の表裏を再度逆にすれば、オーバーロックによる縫合部(本実施形態では、左内側縫合部SL2および右内側縫合部SR2)が裏地となって表地として表出しなくなるので、下肢用衣類1の見た目も向上する。
【0037】
その後、特に図示しないが、本実施形態では、左側前身頃2Lおよび右側前身頃2Rを、ショーツ部24L、24Rの中央部に対応する位置(前側縫合部SC1)において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合する(図1および図2の縫合後の図を参照)。同様に、特に図示しないが、左側後身頃3Lおよび右側後身頃3Rを、ショーツ部34L、34Rの中央部に対応する位置(後側縫合部SC2)において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合する(図1および図2の縫合後の図を参照)。なお、ショーツ部24L、24R、34L、34Rは、レッグ部20L、20R、30L、30Rと比べて、かなり幅広であるため、筒状に重ね合わせた状態でも、ショーツ部24L、24R、34L、34RをフラットシーマミシンM1のアームM10上に容易にセットすることができる。その後、特に図示しないが、本実施形態では、たとえば、ショーツ部24L、24R、34L、34Rの本体の上端に、環状のゴムを縫合することで、ウエスト部40を形成する(図1および図2の縫合後の図を参照)。以上のステップにより、図1および図2に示される下肢用衣類1が完成する。
【0038】
以上のように構成される本実施形態に係る下肢用衣類1によれば、前身頃2および後身頃3が、下肢の内側および外側のうちの一方に対応する位置において、軸方向D1に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の内側および外側のうちの他方に対応する位置において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されている。そうすることで、綿を主成分とする生地であっても、段階着圧設計のカットソーを容易に製造することができる。
【0039】
本実施形態では、前身頃2および後身頃3は、股上を覆うショーツ部24L、24R、34L、34Rを含み、前身頃2および後身頃3は、下肢の内側に対応する位置において、軸方向D1に沿って、オーバーロックによって縫合され、下肢の外側に対応する位置において、軸方向D1に沿って、フラットシーマによって縫合されている。この場合、装着者が動作するときに、下肢用衣類1の裏地に対して摺動度合いが大きい下肢の外側に対応する位置に、オーバーロックによる縫合部を設けているので、装着者の動作時における人体Bへの着圧がさらに安定する。また、ショーツ部24L、24R、34L、34Rにおいて、フラットシーマによって股下に対応する位置を超えて股上に対応する位置まで縫合されるので、人体Bへの着圧がさらに安定する。
【0040】
本実施形態では、前身頃2および後身頃3の生地は、インレイ編みによって編成されている。この場合、生地を編物で編成しても、人体Bの下肢に十分な着圧を与え、かつ、編物のような柔軟な装着感を与えることができる。
【0041】
本実施形態では、前身頃2および後身頃3の生地は、50%以上であって、70%以下の綿と、20%以上であって、40%以下のポリエステルと、5%以上であって、25%以下のポリウレタンから構成されている。この場合、ポリエステルによって、綿の生地感を損ねることなく、生地に強靭性や耐摩耗性が付与されるので、下肢用衣類1の強度が向上する。さらに、ポリウレタンによって、着圧を損ねない程度に、生地に伸縮性が付与されるので、下肢用衣類1の着脱性が向上する。
【0042】
本実施形態に係る下肢用衣類1は、フラットシーマによって縫合するステップの後に、オーバーロックによって縫合するステップを行うことで製造される。この場合、綿を主成分とする生地であっても、段階着圧設計のカットソーを容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 下肢用衣類
2 前身頃
20L、20R、30L、30R レッグ部
21L、21R、31L、31R 足首部
22L、22R、32L、32R 脹脛部
23R、23L、33R、33L 大腿部
24L、24R、34L、34R ショーツ部
2L 左側前身頃
2R 右側前身頃
3 後身頃
40 ウエスト部
B 人体
D1 軸方向
D2 周方向
M1 フラットシーマミシン
M10 アーム
M2 オーバーロックミシン
M20 テーブル
P ポケット
SC1 前側縫合部
SC2 後側縫合部
SL1 左外側縫合部
SL2 左内側縫合部
SR1 右外側縫合部
SR2 右内側縫合部
図1
図2
図3
図4