(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064175
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20230501BHJP
H02P 7/02 20160101ALI20230501BHJP
【FI】
H02K33/16 A
H02P7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174279
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】陳 東明
【テーマコード(参考)】
5H540
5H633
【Fターム(参考)】
5H540AA10
5H540BA04
5H540BB04
5H540BB05
5H540FC02
5H540GG02
5H540GG07
5H633BB08
5H633GG02
5H633GG04
5H633GG09
5H633GG16
5H633GG21
5H633HH03
5H633HH07
5H633HH09
5H633HH14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可動子が停止している状態において、異常が生じたか否かを判定可能とする。
【解決手段】電動アクチュエータ100は、軸方向に移動可能な可動子70と、コア体72を囲むコイル40と、磁性体製のケース10と、マグネット50と、を有する。制御装置は、検出素子と、コイルに流れる電流を制御可能な制御部と、を有する。制御部は、可動子を軸方向に移動させる場合に、コイルに流れる電流を第1電流とし、可動子を軸方向に移動させない場合に、コイルに流れる電流を第1電流よりも小さい第2電流とし、かつ、検出素子を用いて第2電流の値が所定の閾値よりも小さいと判定した場合に、電動アクチュエータ本体と制御装置との少なくとも一方に異常が生じたと判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アクチュエータ本体と、
前記電動アクチュエータ本体に取り付けられ、前記電動アクチュエータ本体を制御する制御装置と、
を備え、
前記電動アクチュエータ本体は、
磁性体製のコア体を有し、中心軸に沿って軸方向に移動可能な可動子と、
前記コア体の径方向外側に位置し、前記コア体を囲むコイルと、
前記コア体および前記コイルを内部に収容する磁性体製のケースと、
前記ケースの内部に収容されたマグネットと、
を有し、
前記可動子は、軸方向において第1位置と第2位置との間で移動可能であり、
前記可動子の軸方向位置は、前記第1位置および前記第2位置のそれぞれにおいて、前記コイルに電流が流れていない状態で保持可能とされ、
前記制御装置は、
検出素子と、
前記検出素子を用いて前記コイルに流れる電流の変化を検出可能であり、かつ、前記コイルに流れる電流を制御可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記可動子を軸方向に移動させる場合に、前記コイルに流れる電流を第1電流とし、
前記可動子を軸方向に移動させない場合に、前記コイルに流れる電流を前記第1電流よりも小さい第2電流とし、かつ、
前記検出素子を用いて前記第2電流の値が所定の閾値よりも小さいと判定した場合に、前記電動アクチュエータ本体と前記制御装置との少なくとも一方に異常が生じたと判定する、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子が前記第1位置にある場合における前記コイルに流れる前記第2電流の向きは、前記可動子を前記第2位置から前記第1位置に移動させる際に前記コイルに流れる前記第1電流の向きと同じであり、
前記可動子が前記第2位置にある場合における前記コイルに流れる前記第2電流の向きは、前記可動子を前記第1位置から前記第2位置に移動させる際に前記コイルに流れる前記第1電流の向きと同じである、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2電流の大きさは、前記コイルに流れる前記第2電流の向きによらず、前記可動子を移動させることができない大きさである、請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記異常が生じたと判定した場合、前記異常が生じたことを報知可能な報知部に信号を送り、前記異常が生じたことを前記報知部によって報知する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記検出素子は、前記コイルに直列に接続されたシャント抵抗である、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記検出素子は、磁気式の電流センサである、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記マグネットは、前記コイルの径方向内側または前記コイルの径方向外側に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記マグネットは、前記コイルの径方向内側に位置する、請求項7に記載の電動アクチュエータ。
【請求項9】
前記ケースは、
前記コイルの径方向外側に位置し、前記コイルを囲む周壁部と、
前記コイルの軸方向一方側に位置する第1軸方向壁部と、
前記コイルの軸方向他方側に位置する第2軸方向壁部と、
を有し、
前記マグネットは、前記第1軸方向壁部と前記第2軸方向壁部との軸方向に間に位置し、かつ、前記第1軸方向壁部と前記第2軸方向壁部との両方から軸方向に離れて配置されている、請求項7または8に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されるように、コイルに電流を流すことなくプランジャの位置を保持可能な自己保持型ソレノイドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自己保持型ソレノイドにおいてコイルに流される電流は、自己保持型ソレノイドとは別に設けられた制御装置によって制御される。制御装置は、プランジャを移動させる場合にのみコイルに電流を流し、プランジャを停止させておく場合にはコイルに電流を流さない。そのため、制御装置は、プランジャを停止させている間、自己保持型ソレノイドに電流を流す回路部の状態を把握できない。これにより、例えばプランジャを停止させている間に自己保持型ソレノイドに故障が生じても、制御装置は、自己保持型ソレノイドの故障を把握できない。したがって、停止している状態のプランジャを移動させようとした際に、コイルに正常に電流が流れず、プランジャを正常に移動させることができない場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、可動子が停止している状態において異常が生じたか否かを判定可能な制御部を有する電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、電動アクチュエータ本体と、前記電動アクチュエータ本体に取り付けられ、前記電動アクチュエータ本体を制御する制御装置と、を備える。前記電動アクチュエータ本体は、磁性体製のコア体を有し、中心軸に沿って軸方向に移動可能な可動子と、前記コア体の径方向外側に位置し、前記コア体を囲むコイルと、前記コア体および前記コイルを内部に収容する磁性体製のケースと、前記ケースの内部に収容されたマグネットと、を有する。前記可動子は、軸方向において第1位置と第2位置との間で移動可能である。前記可動子の軸方向位置は、前記第1位置および前記第2位置のそれぞれにおいて、前記コイルに電流が流れていない状態で保持可能とされている。前記制御装置は、検出素子と、前記検出素子を用いて前記コイルに流れる電流の変化を検出可能であり、かつ、前記コイルに流れる電流を制御可能な制御部と、を有する。前記制御部は、前記可動子を軸方向に移動させる場合に、前記コイルに流れる電流を第1電流とし、前記可動子を軸方向に移動させない場合に、前記コイルに流れる電流を前記第1電流よりも小さい第2電流とし、かつ、前記検出素子を用いて前記第2電流の値が所定の閾値よりも小さいと判定した場合に、前記電動アクチュエータ本体と前記制御装置との少なくとも一方に異常が生じたと判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、電動アクチュエータにおいて、制御部によって可動子が停止している状態において異常が生じたか否かを判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電動アクチュエータを示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電動アクチュエータと電動アクチュエータに連結されるアームとを示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電動アクチュエータを模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電動アクチュエータの一部を示す断面図であって、可動子が最も上側に位置する状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電動アクチュエータの一部を示す断面図であって、可動子が上側から下側に移動する途中の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の電動アクチュエータの一部を示す断面図であって、可動子が最も下側に位置する状態を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の電動アクチュエータの一部を示す断面図であって、可動子が下側から上側に移動する途中の状態を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の制御部による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1実施形態のシャント抵抗に印加される電圧の変化の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、第2実施形態の電動アクチュエータを模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の電動アクチュエータ100は、車両に取り付けられる電動アクチュエータである。より詳細には、電動アクチュエータ100は、例えば、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるパーク・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載される電動アクチュエータである。
【0010】
各図においては、電動アクチュエータ100の中心軸Jを示している。中心軸Jは、仮想軸線である。以下の説明においては、中心軸Jが延びる方向、つまり中心軸Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。各図においては、軸方向と平行なZ軸を示している。以下の説明においては、軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼び、軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。本実施形態において、上側は「軸方向一方側」に相当し、下側は「軸方向他方側」に相当する。なお、上側および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ100は、電動アクチュエータ本体90と、電動アクチュエータ本体90に取り付けられた制御装置110と、を備える。本実施形態において電動アクチュエータ100は、機電一体型の電動アクチュエータである。電動アクチュエータ本体90は、ケース10と、ボビン30と、コイル40と、被覆部41と、マグネット50と、ガイド部材60と、スペーサ61と、可動子70と、弾性部材80と、を有する。電動アクチュエータ本体90は、可動子70を軸方向に移動させることで、車両のギヤがパーキングであるロック状態と、車両のギヤがパーキング以外であるアンロック状態と、を切り替え可能である。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバースなどである場合を含む。
【0012】
可動子70は、中心軸Jに沿って軸方向に移動可能である。可動子70は、軸方向に延びる中心軸Jに沿って配置されたシャフト71と、シャフト71に固定された磁性体製のコア体72と、を有する。シャフト71は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。本実施形態においてシャフト71の外径は、軸方向の全体に亘って同じである。シャフト71は、非磁性体製である。
【0013】
なお、本明細書において「磁性体」とは、強磁性体を含む。また、本明細書において「非磁性体」とは、強磁性体ではない物質であり、反磁性体および常磁性体を含む。非磁性体は、磁性体に比べて磁束を通しにくい性質を有する。
【0014】
図2に示すように、シャフト71の上側の端部には、一方向に延びるアームAの一端が回転可能に連結されている。アームAは、アームAの中間部分に設けられた回転軸R回りに回転可能である。回転軸Rは、中心軸Jと直交する方向に延びる仮想軸線である。アームAは、例えば、車両のシフトレバーに接続されている。
【0015】
本実施形態においてコア体72は、軸方向に延び、軸方向両側に開口する筒状である。より詳細には、コア体72は、中心軸Jを中心とする円筒状である。コア体72の径方向内側には、シャフト71が軸方向に通されている。コア体72の内周面は、シャフト71の外周面に固定されている。
図1に示すように、コア体72は、コア中央部72aと、コア上部72bと、コア下部72cと、を有する。コア中央部72aは、コア体72のうち軸方向の中央に位置する部分である。コア中央部72aの外径は、軸方向の全体に亘って同じである。
【0016】
コア上部72bは、コア体72のうちコア中央部72aの上側に繋がる部分である。コア上部72bの上側の端部は、コア体72の上側の端部である。コア上部72bの外径は、コア中央部72aの外径よりも小さい。コア上部72bの外径は、コア中央部72aから上側に離れるに従って小さくなっている。コア上部72bの外周面は、下側から上側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面である。
【0017】
コア下部72cは、コア体72のうちコア中央部72aの下側に繋がる部分である。コア下部72cの下側の端部は、コア体72の下側の端部である。コア下部72cの外径は、コア中央部72aの外径よりも小さい。コア下部72cの外径は、コア中央部72aから下側に離れるに従って小さくなっている。コア下部72cの外周面は、上側から下側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面である。コア上部72bの軸方向の寸法およびコア下部72cの軸方向の寸法は、コア中央部72aの軸方向の寸法よりも小さい。コア上部72bの軸方向の寸法とコア下部72cの軸方向の寸法とは、例えば、互いに同じである。
【0018】
ケース10は、ボビン30、コイル40、マグネット50、ガイド部材60、スペーサ61、シャフト71の一部、およびコア体72を内部に収容している。ケース10は、磁性体製である。ケース10は、筒部材11と、蓋部材12と、第1コア部21と、第2コア部22と、を有する。本実施形態において筒部材11と蓋部材12と第1コア部21と第2コア部22とは、互いに別体であり、それぞれ磁性体製の部材である。
【0019】
筒部材11は、上側に開口する筒状である。本実施形態において筒部材11は、中心軸Jを中心とする円筒状である。筒部材11は、中心軸Jを囲む環状部11aと、環状部11aの径方向外周縁部から上側に延びる周壁部11bと、を有する。つまり、ケース10は、環状部11aと、周壁部11bと、を有する。本実施形態において環状部11aは、中心軸Jを中心とする円環状である。環状部11aは、板面が軸方向を向く板状である。本実施形態において周壁部11bは、中心軸Jを中心とする円筒状である。周壁部11bは、コイル40の径方向外側に位置する。周壁部11bは、コイル40を囲んでいる。
【0020】
蓋部材12は、中心軸Jを囲む環状である。本実施形態において蓋部材12は、中心軸Jを中心とする円環状である。蓋部材12は、板面が軸方向を向く板状である。蓋部材12は、筒部材11の上側の端部に固定されている。蓋部材12は、筒部材11の上側の端部から径方向内側に突出している。蓋部材12は、筒部材11の上側の開口の一部を塞いでいる。蓋部材12は、例えば、筒部材11の上側の端部に設けられた複数のカシメ部11cによって、筒部材11に固定されている。カシメ部11cは、カシメられた部分である。
【0021】
第1コア部21は、環状の蓋部材12の径方向内側に固定されている。第1コア部21は、コア体72の上側に位置する。第1コア部21には、第1コア部21を軸方向に貫通する第1貫通孔21eが設けられている。本実施形態において第1貫通孔21eは、中心軸Jを中心とする円形状の孔である。第1貫通孔21eには、シャフト71が軸方向に通されている。シャフト71は、例えば、第1貫通孔21eに隙間嵌めされている。本実施形態において第1貫通孔21eは、シャフト71を軸方向に移動可能に支持している。可動子70は、例えば、シャフト71の外周面の一部が第1貫通孔21eの内周面に接触した状態で軸方向に移動する。
【0022】
第1コア部21は、第1基部21aと、第1収容部21bと、カシメ部21mと、を有する。第1基部21aは、蓋部材12の径方向内側に嵌め合わされている。第1基部21aは、中心軸Jを中心とする円環状である。第1収容部21bは、第1基部21aの下側に繋がっている。第1収容部21bは、周壁部11bの径方向内側に位置する。第1収容部21bは、ボビン30の上側の端部における径方向内側に嵌め合わされている。第1収容部21bは、コア体72の上側の端部を内部に収容可能である。第1収容部21bは、下側に開口している。第1収容部21bは、第1底壁部21cと、第1筒状壁部21dと、を有する。
【0023】
第1底壁部21cは、第1基部21aの下側に繋がる部分である。第1底壁部21cは、コア体72の上側に位置する。本実施形態において第1底壁部21cは、中心軸Jを中心とする円環状である。第1底壁部21cの外径は、第1基部21aの外径よりも大きい。第1底壁部21cは、第1基部21aよりも径方向外側に突出している。第1底壁部21cのうち第1基部21aよりも径方向外側に位置する部分は、蓋部材12の下側の面に接触している。第1底壁部21cは、下側を向く第1底面21kを有する。第1底面21kは、中心軸Jを中心とし、第1貫通孔21eの下側の開口を囲む円環状である。第1底面21kは、軸方向と直交する平坦面である。
【0024】
第1筒状壁部21dは、第1底壁部21cの径方向外周縁部から下側に突出している。本実施形態において第1筒状壁部21dは、中心軸Jを中心とし、下側に開口する円筒状である。第1筒状壁部21dの少なくとも一部は、コイル40の径方向内側に位置する。本実施形態においては、第1筒状壁部21dの全体がコイル40の上端部における径方向内側に位置する。第1筒状壁部21dの外周面における下側部分には、下側を向く段差面21fを有する外側段差部21rが設けられている。段差面21fは、中心軸Jを中心とする円環状である。段差面21fは、軸方向と直交する平坦面である。第1筒状壁部21dの外周面のうち外側段差部21rよりも上側に位置する部分は、軸方向の全体に亘って外径が均一な円筒状である。
【0025】
第1筒状壁部21dの内周面における下側部分には、下側を向く段差面21gを有する内側段差部21sが設けられている。段差面21gは、中心軸Jを中心とする円環状である。段差面21gは、軸方向と直交する平坦面である。内側段差部21sは、外側段差部21rよりも上側に位置する。第1筒状壁部21dの内周面のうち内側段差部21sよりも下側に位置する内周面部21iは、軸方向の全体に亘って内径が均一な円筒状である。第1筒状壁部21dの内周面のうち内側段差部21sよりも上側に位置する内周面部21jは、下側から上側に向かうに従って内径が小さくなるテーパ面である。内周面部21jの内径は、内周面部21iの内径よりも小さい。内周面部21jは、内周面部21iよりも径方向内側に位置する。内周面部21jの軸方向の寸法は、内周面部21iの軸方向の寸法よりも大きい。
【0026】
外側段差部21rと内側段差部21sとが設けられていることで、第1筒状壁部21dの下側の端部には、第1嵌合部21hが設けられている。つまり、第1コア部21は、第1嵌合部21hを有する。第1嵌合部21hの内周面は、内周面部21iである。第1嵌合部21hの外周面は、第1筒状壁部21dの外周面のうち外側段差部21rよりも下側に位置する部分である。第1嵌合部21hの外周面における上側部分は、軸方向の全体に亘って外径が均一な円筒状である。第1嵌合部21hの外周面における下側部分は、上側から下側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面である。
【0027】
本実施形態において第1収容部21bの内面21pは、内周面部21iと内側段差部21sの段差面21gと内周面部21jと第1底面21kとによって構成されている。内周面部21iの上側の端部と内周面部21jの下側の端部とは、段差面21gによって繋げられている。内周面部21jの上側の端部は、第1底面21kの径方向外側の端部に繋がっている。本実施形態において内周面部21jおよび第1底面21kは、第1コア部21における下側を向く面のうち軸方向に見てコア体72と重なる部分である。
【0028】
カシメ部21mは、カシメられた部分である。カシメ部21mは、第1基部21aの上側の端部における径方向外周縁部から径方向外側に突出している。カシメ部21mは、蓋部材12の上側の面に接触している。カシメ部21mと第1底壁部21cとによって蓋部材12の径方向内周縁部が軸方向に挟まれている。これにより、第1コア部21が蓋部材12に対して固定されている。
【0029】
第2コア部22は、環状部11aの径方向内側に固定されている。第2コア部22は、コア体72の下側に位置する。第2コア部22には、第2コア部22を軸方向に貫通する第2貫通孔22eが設けられている。本実施形態において第2貫通孔22eは、中心軸Jを中心とする円形状の孔である。第2貫通孔22eには、シャフト71が軸方向に通されている。シャフト71のうち第2貫通孔22eに通された部分の外周面は、第2貫通孔22eの内周面から径方向内側に離れて配置されている。本実施形態において第2貫通孔22eは、シャフト71を支持していない。
【0030】
本実施形態において第2貫通孔22eの内径は、第1貫通孔21eの内径よりも大きい。ここで、上述したように本実施形態においてシャフト71の外径は、軸方向の全体に亘って同じである。そのため、本実施形態において第2貫通孔22eの内径とシャフト71のうち第2貫通孔22eに通された部分の外径との差は、第1貫通孔21eの内径とシャフト71のうち第1貫通孔21eに通された部分の外径との差よりも大きい。第2貫通孔22eの内周面とシャフト71のうち第2貫通孔22eに通された部分の外周面との径方向の隙間は、第1貫通孔21eの内周面とシャフト71のうち第1貫通孔21eに通された部分の外周面との径方向の隙間よりも大きい。
【0031】
第2コア部22は、第2基部22aと、第2収容部22bと、カシメ部22mと、を有する。第2基部22aは、環状部11aの径方向内側に嵌め合わされている。第2基部22aは、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0032】
第2収容部22bは、第2基部22aの上側に繋がっている。第2収容部22bは、周壁部11bの径方向内側に位置する。第2収容部22bは、ボビン30の下側の端部における径方向内側に挿入されている。第2収容部22bの外周面とボビン30の内周面との径方向の間には、隙間が設けられている。第2収容部22bは、コア体72の下側の端部を内部に収容可能である。第2収容部22bは、上側に開口している。本実施形態において第2収容部22bの外径は、第1収容部21bの外径よりも小さい。本実施形態において第2収容部22bの軸方向の寸法は、第1収容部21bの軸方向の寸法よりも小さい。第2収容部22bは、第2底壁部22cと、第2筒状壁部22dと、を有する。
【0033】
第2底壁部22cは、第2基部22aの上側に繋がる部分である。第2底壁部22cは、コア体72の下側に位置する。本実施形態において第2底壁部22cは、中心軸Jを中心とする円環状である。第2底壁部22cの外径は、第2基部22aの外径よりも大きい。第2底壁部22cは、第2基部22aよりも径方向外側に突出している。第2底壁部22cのうち第2基部22aよりも径方向外側に位置する部分は、環状部11aの上側の面に接触している。第2底壁部22cは、上側を向く第2底面22kを有する。第2底面22kは、中心軸Jを中心とし、第2貫通孔22eの上側の開口を囲む円環状である。第2底面22kは、軸方向と直交する平坦面である。
【0034】
第2筒状壁部22dは、第2底壁部22cの径方向外周縁部から上側に突出している。本実施形態において第2筒状壁部22dは、中心軸Jを中心とし、上側に開口する円筒状である。第2筒状壁部22dの少なくとも一部は、コイル40の径方向内側に位置する。本実施形態においては、第2筒状壁部22dの全体がコイル40の下端部の径方向内側に位置する。第2筒状壁部22dの外周面における上側部分には、上側を向く段差面22fを有する外側段差部22rが設けられている。段差面22fは、中心軸Jを中心とする円環状である。段差面22fは、軸方向と直交する平坦面である。第2筒状壁部22dの内周面22jは、上側から下側に向かうに従って内径が小さくなるテーパ面である。内周面22jの軸方向の寸法は、内周面部21jの軸方向の寸法よりも小さい。
【0035】
外側段差部22rが設けられていることで、第2筒状壁部22dの上側の端部には、第2嵌合部22hが設けられている。つまり、第2コア部22は、第2嵌合部22hを有する。第2嵌合部22hの内周面は、内周面22jの上側部分である。第2嵌合部22hの外周面は、第2筒状壁部22dの外周面のうち外側段差部22rよりも上側に位置する部分である。第2嵌合部22hの外周面は、軸方向の全体に亘って外径が均一な円筒状である。第2嵌合部22hの外周面は、第1嵌合部21hの内周面である内周面部21iよりも径方向内側に位置する。つまり、第2嵌合部22hの外径は、第1嵌合部21hの内径よりも小さい。
【0036】
本実施形態において第2収容部22bの内面22pは、内周面22jと第2底面22kとによって構成されている。内周面22jの下側の端部は、第2底面22kの径方向外側の端部に繋がっている。本実施形態において内面22pは、第2コア部22における上側を向く面のうち軸方向に見てコア体72と重なる部分である。内周面22jの面積は、内周面部21jの面積よりも小さい。第2底面22kの面積は、第1底面21kの面積よりも小さい。そのため、内面22pの合計面積は、第1コア部21における内周面部21jの面積と第1底面21kの面積との合計面積よりも小さい。つまり、第1コア部21における下側を向く面のうち軸方向に見てコア体72と重なる部分の面積は、第2コア部22における上側を向く面のうち軸方向に見てコア体72と重なる部分の面積よりも大きい。本実施形態において第1収容部21bの内面21pの面積は、第2収容部22bの内面22pの面積よりも大きい。
【0037】
カシメ部22mは、カシメられた部分である。カシメ部22mは、第2基部22aの下側の端部における径方向外周縁部から径方向外側に突出している。カシメ部22mは、環状部11aの下側の面に接触している。カシメ部22mと第2底壁部22cとによって環状部11aの径方向内周縁部が軸方向に挟まれている。これにより、第2コア部22が環状部11aに対して固定されている。
【0038】
本実施形態において第1コア部21の径方向の寸法は、第2コア部22の径方向の寸法よりも大きい。第1収容部21bの径方向の寸法は、第2収容部22bの径方向の寸法よりも大きい。第1収容部21bの軸方向の寸法は、第2収容部22bの軸方向の寸法よりも大きい。本実施形態において第1コア部21の体積は、第2コア部22の体積よりも大きい。第1収容部21bの体積は、第2収容部22bの体積よりも大きい。
【0039】
本実施形態においては、蓋部材12と第1コア部21とによって、コイル40の上側に位置する第1軸方向壁部10aが構成されている。また、本実施形態においては、環状部11aと第2コア部22とによって、コイル40の下側に位置する第2軸方向壁部10bが構成されている。つまり、本実施形態においてケース10は、第1コア部21を有する第1軸方向壁部10aと、第2コア部22を有する第2軸方向壁部10bと、を有する。第1軸方向壁部10aは、第1軸方向壁部10aを軸方向に貫通する第1貫通孔21eを有する。第2軸方向壁部10bは、第2軸方向壁部10bを軸方向に貫通する第2貫通孔22eを有する。
【0040】
ボビン30は、コア体72の径方向外側に位置する。ボビン30は、コア体72を囲む筒状である。本実施形態においてボビン30は、中心軸Jを中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。ボビン30は、周壁部11bの径方向内側に位置する。ボビン30は、環状部11aと蓋部材12との軸方向の間に位置する。ボビン30は、非磁性体製である。ボビン30は、例えば、樹脂製である。ボビン30は、ボビン本体部31と、上側フランジ部32と、下側フランジ部33と、を有する。
【0041】
ボビン本体部31は、中心軸Jを中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。ボビン本体部31の外径は、軸方向の全体に亘って同じである。ボビン本体部31は、第1部分31aと、第1部分31aの下側に繋がる第2部分31bと、を有する。第1部分31aの上側の端部は、ボビン本体部31の上側の端部である。第2部分31bの下側の端部は、ボビン本体部31の下側の端部である。第1部分31aの内径は、第2部分31bの内径よりも大きい。第1部分31aの外径と第2部分31bの外径とは、互いに同じである。第1部分31aの軸方向の寸法は、第2部分31bの軸方向の寸法よりも大きい。第1部分31aの内周面と第2部分31bの内周面との間には、上側を向く段差面34aを有する段差部34が設けられている。つまり、ボビン30の内周面には、上側を向く段差面34aを有する段差部34が設けられている。本実施形態において段差面34aは、軸方向と直交する平坦面である。段差面34aは、中心軸Jを中心とする円環状である。第2部分31bの内周面は、第1部分31aの内周面よりも径方向内側に突出している。
【0042】
上側フランジ部32は、ボビン本体部31の上側の端部から径方向外側に突出している。上側フランジ部32は、中心軸Jを中心とする円環状である。下側フランジ部33は、ボビン本体部31の下側の端部から径方向外側に突出している。下側フランジ部33は、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0043】
ボビン30は、ボビン30の下側の端面から上側に窪む凹部35を有する。凹部35は、径方向内側に開口している。凹部35は、中心軸Jを中心とする円環状である。凹部35は、下側フランジ部33に設けられている。凹部35には、弾性部材80の少なくとも一部が収容されている。
【0044】
ボビン30の軸方向の寸法は、環状部11aの上側の面と蓋部材12の下側の面との間の軸方向の距離よりも小さい。ボビン30の上側の端部は、蓋部材12の下側の面の下側に隙間を介して対向して配置されている。本実施形態では、上側フランジ部32の上側の面が蓋部材12の下側の面の下側に隙間を介して対向して配置されている。ボビン30の下側の端部は、環状部11aの上側の面の上側に隙間を介して対向して配置されている。本実施形態では、下側フランジ部33の下側の面が環状部11aの上側の面の上側に隙間を介して対向して配置されている。
【0045】
コイル40は、例えば、金属製の線材が中心軸J回りに螺旋状に巻き回されて構成されたソレノイドである。コイル40は、ボビン30の外周面に巻き回されている。より詳細には、コイル40は、ボビン本体部31の外周面に巻き回されている。コイル40は、中心軸Jを中心とし、軸方向に延びる円筒状である。コイル40は、コア体72の径方向外側に位置する。コイル40は、コア体72を囲んでいる。コイル40は、制御装置110に電気的に接続されている。
【0046】
被覆部41は、ボビン30およびコイル40の径方向外側に位置する。被覆部41は、中心軸Jを中心とする円筒状である。被覆部41は、コイル40の外周面の全体、上側フランジ部32の外周面の全体、および下側フランジ部33の外周面の全体を覆っている。被覆部41は、ボビン30およびコイル40に固定されている。被覆部41は、周壁部11bの径方向内側に嵌め合わされている。被覆部41は、例えば、樹脂製である。
【0047】
本実施形態においてマグネット50は、軸方向に延びる筒状である。より詳細には、マグネット50は、中心軸Jを中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。図示は省略するが、マグネット50は、例えば、半円筒状の2つのマグネットが径方向に合わされて構成されている。マグネット50は、径方向に沿って異なる磁極を有する。マグネット50の径方向内側の磁極とマグネット50の径方向外側の磁極とは、互いに異なる。本実施形態においてマグネット50は、径方向内側にN極の磁極部50Nを有する。マグネット50は、径方向外側にS極の磁極部50Sを有する。なお、マグネット50の径方向内側がS極で、マグネット50の径方向外側がN極であってもよい。本実施形態においてマグネット50は、永久磁石である。
【0048】
マグネット50は、ケース10の内部に収容されている。マグネット50は、第1軸方向壁部10aと第2軸方向壁部10bとの軸方向に間に位置する。より詳細には、マグネット50の径方向内周縁部は、第1筒状壁部21dと第2筒状壁部22dとの軸方向の間に位置する。マグネット50の径方向外周縁部は、第1筒状壁部21dと環状部11aとの軸方向の間に位置する。本実施形態においてマグネット50は、第1軸方向壁部10aと第2軸方向壁部10bとの両方から軸方向に離れて配置されている。マグネット50と蓋部材12との間の軸方向の距離は、マグネット50と環状部11aとの間の軸方向の距離とほぼ同じである。マグネット50と第1コア部21との間の軸方向の距離は、マグネット50と第2コア部22との間の軸方向の距離よりも小さい。
【0049】
マグネット50は、ボビン30およびコイル40の径方向内側に位置する。本実施形態においてマグネット50は、ガイド部材60とボビン30との径方向の間に位置する。マグネット50の外周面は、ボビン30の内周面に接触している。より詳細には、マグネット50の外周面は、ボビン本体部31における第1部分31aの内周面に接触している。マグネット50の下側の端面における径方向外側部分は、段差面34aに接触している。これにより、マグネット50の下側の端部は、段差面34aによって下側から支持されている。マグネット50の内周面は、ボビン本体部31における第2部分31bの内周面よりも径方向内側に位置する。本実施形態においてマグネット50は、ボビン30の径方向内側に圧入されている。マグネット50は、例えば、第1部分31aの径方向内側に軽圧入されている。
【0050】
マグネット50の軸方向の寸法は、コア体72の軸方向の寸法、ボビン30の軸方向の寸法、およびコイル40の軸方向の寸法よりも小さい。つまり、本実施形態においてコア体72の軸方向の寸法は、マグネット50の軸方向の寸法よりも大きい。マグネット50の上側の端部は、コイル40の上側の端部よりも下側に位置する。マグネット50の下側の端部は、コイル40の下側の端部よりも上側に位置する。つまり、コイル40は、マグネット50よりも軸方向両側に突出している。
【0051】
本実施形態においてマグネット50の軸方向における中央部の軸方向位置は、ケース10のうちコア体72の上側に位置する部分とケース10のうちコア体72の下側に位置する部分との間の軸方向における中央部の軸方向位置と同じである。本実施形態においてケース10のうちコア体72の上側に位置する部分は、第1底壁部21cである。本実施形態においてケース10のうちコア体72の下側に位置する部分は、第2底壁部22cである。マグネット50の軸方向における中央部の軸方向位置は、コイル40の軸方向における中央部の軸方向位置とほぼ同じである。
【0052】
ガイド部材60は、軸方向両側に開口し、軸方向に延びる筒状である。本実施形態においてガイド部材60は、中心軸Jを中心とする円筒状である。ガイド部材60は、非磁性体製である。ガイド部材60は、例えば、ステンレス鋼などの金属製である。ガイド部材60は、コア体72の径方向外側に位置する。ガイド部材60は、ボビン30およびマグネット50の径方向内側に位置する。つまり、本実施形態においてガイド部材60は、マグネット50とコア体72との径方向の間に位置する。ガイド部材60は、マグネット50の径方向内側に隙間嵌めされている。
【0053】
ガイド部材60は、コア体72を囲んでいる。ガイド部材60は、コア体72を軸方向に移動可能に支持する。ガイド部材60の径方向内側には、コア体72が隙間嵌めされている。可動子70は、例えば、コア体72の外周面の一部がガイド部材60の内周面に接触した状態で軸方向に移動する。本実施形態では、例えば、コア体72のコア中央部72aにおける外周面の一部がガイド部材60の内周面に接触した状態で可動子70が軸方向に移動する。
【0054】
ガイド部材60は、第1コア部21と第2コア部22との軸方向の間に位置する。ガイド部材60の上側の端部は、第1嵌合部21hに嵌め合わされている。より詳細には、ガイド部材60の上側の端部は、第1嵌合部21hの径方向内側に嵌め合わされている。ガイド部材60の上側の端部は、例えば、第1嵌合部21hの径方向内側に軽圧入されている。ガイド部材60の下側の端部は、第2嵌合部22hに嵌め合わされている。より詳細には、ガイド部材60の下側の端部は、第2嵌合部22hに径方向外側から嵌め合わされている。言い換えれば、第2嵌合部22hは、ガイド部材60の下側の端部における径方向内側に嵌め合わされている。第2嵌合部22hは、例えば、ガイド部材60の下側の端部における径方向内側に軽圧入されている。
【0055】
ガイド部材60の上側の端部は、段差面21gの下側に対向して配置されている。ガイド部材60の下側の端部は、段差面22fの上側に対向して配置されている。図示は省略するが、ガイド部材60の上側の端部と段差面21gとの軸方向の間、およびガイド部材60の下側の端部と段差面22fとの軸方向の間の少なくとも一方には、隙間が設けられている。
【0056】
本実施形態においてスペーサ61は、中心軸Jを囲む筒状である。より詳細には、スペーサ61は、中心軸Jを中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。スペーサ61は、非磁性体製である。スペーサ61は、例えば、ステンレス鋼などの金属製である。スペーサ61は、ケース10の内部に収容されている。スペーサ61は、第1軸方向壁部10aとマグネット50との軸方向の間に位置する。本実施形態においてスペーサ61は、第1コア部21の第1筒状壁部21dにおける径方向外周縁部とマグネット50の径方向外周縁部との軸方向の間に位置する。
【0057】
スペーサ61の上側の端部は、段差面21fに接触している。スペーサ61の上側の端部は、第1嵌合部21hに径方向外側から嵌め合わされている。言い換えれば、第1嵌合部21hは、スペーサ61の上側の端部の径方向内側に嵌め合わされている。このように、本実施形態において第1コア部21は、スペーサ61の上側の端部が嵌め合わされた部分として第1嵌合部21hを有する。第1嵌合部21hは、例えば、スペーサ61の上側の端部の径方向内側に軽圧入されている。スペーサ61の下側の端部は、マグネット50の上側の端面のうち径方向外周縁部に接触している。これにより、マグネット50の上側の端部は、スペーサ61によって上側から支持されている。
【0058】
スペーサ61の軸方向の寸法は、ガイド部材60の軸方向の寸法およびマグネット50の軸方向の寸法よりも小さい。スペーサ61の軸方向の寸法は、第1嵌合部21hの軸方向の寸法よりも大きい。スペーサ61の内周面と外周面との間の径方向の厚さは、ガイド部材60の内周面と外周面との間の径方向の厚さよりも大きい。スペーサ61は、ガイド部材60の径方向外側に位置する。スペーサ61は、ガイド部材60のうち第1嵌合部21hの径方向内側に嵌め合わされた部分を囲んでいる。スペーサ61は、ボビン30の径方向内側に隙間嵌めされている。より詳細には、スペーサ61は、ボビン本体部31の第1部分31aの径方向内側に隙間嵌めされている。
【0059】
本実施形態において弾性部材80は、ウェーブワッシャである。弾性部材80は、ボビン30と第2軸方向壁部10bとの軸方向の間に位置する。本実施形態において弾性部材80は、凹部35と環状部11aとの軸方向の間に位置する。弾性部材80は、中心軸Jを囲む環状である。本実施形態において弾性部材80は、第2コア部22における第2収容部22bの径方向外側に位置する。弾性部材80は、第2収容部22bを囲んでいる。弾性部材80は、ボビン30と第2軸方向壁部10bとに接触している。より詳細には、弾性部材80は、凹部35の内面のうち下側を向く底面と環状部11aの上側の面とに接触している。弾性部材80は、軸方向に圧縮弾性変形した状態となっている。これにより、弾性部材80は、ボビン30に上側向きの力を加えている。
【0060】
制御装置110は、電動アクチュエータ本体90を制御する装置である。本実施形態において制御装置110は、ケース10の径方向外側面に取り付けられている。より詳細には、制御装置110は、周壁部11bの外周面に取り付けられている。制御装置110は、軸方向に延びている。なお、
図2、
図4から
図7では、制御装置110の図示を省略している。制御装置110は、制御装置ケース111と、制御装置ケース111の内部に収容された基板113と、を有する。
【0061】
制御装置ケース111は、ケース10の径方向外側面に固定されている。制御装置ケース111は、樹脂製である。制御装置ケース111は、軸方向に長い略直方体箱状である。制御装置ケース111には、コネクタ部112が設けられている。本実施形態においてコネクタ部112は、制御装置ケース111の下端部から径方向外側に突出している。コネクタ部112は、径方向外側に開口する筒状である。コネクタ部112の内部には、複数のコネクタ端子114の一端部が露出している。複数のコネクタ端子114の他端部は、制御装置ケース111の内部において基板113に電気的に接続されている。コネクタ部112には、例えば、車両を制御する図示しない車両制御装置が接続される。これにより、車両制御装置がコネクタ端子114を介して基板113に電気的に接続される。
【0062】
本実施形態において基板113は、板面が径方向を向く板状である。基板113は、軸方向に延びている。基板113は、板面に配線パターンが設けられたプリント基板である。基板113は、コイル40の径方向外側に位置する。基板113は、2本の配線部材115を介してコイル40に電気的に接続されている。配線部材115は、制御装置ケース111を構成する壁部のうち径方向内側に位置する壁部と、ケース10の周壁部11bのうち制御装置ケース111が取り付けられた部分の壁部と、を径方向に貫通して、基板113からコイル40まで延びている。2本の配線部材115のうち一方の配線部材115は、コイル40を構成する線材の一端に接続されている。2本の配線部材115のうち他方の配線部材115は、コイル40を構成する線材の他端に接続されている。コイル40には一方の配線部材115を介して基板113から電流が流れ、コイル40を流れる電流は他方の配線部材115を介して基板113に戻る。
【0063】
図3に示すように、制御装置110は、制御部116と、電源部117と、トランジスタ118と、シャント抵抗130と、を有する。制御部116、電源部117、トランジスタ118、およびシャント抵抗130は、基板113に設けられている。電動アクチュエータ100には、電源部117とトランジスタ118とシャント抵抗130と電動アクチュエータ本体90のコイル40とを含む回路部100aが設けられている。回路部100aに電流が流れることで、電動アクチュエータ本体90のコイル40に電流が供給される。なお、
図3では、コイル40を等価回路で示している。
【0064】
電源部117は、電動アクチュエータ100の外部に設けられたバッテリBに電気的に接続されている。バッテリBは、例えば、コネクタ部112に接続される図示しない車両制御装置を介して電源部117に電気的に接続されている。電源部117は、バッテリBから供給された電力を電動アクチュエータ本体90に供給する。電源部117は、例えば、バッテリBから供給された電力の電圧を変換し、電圧を変換した電力を電動アクチュエータ本体90に供給する。
【0065】
トランジスタ118は、コイル40に直列に接続されている。本実施形態においてトランジスタ118は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。トランジスタ118には、制御部116からゲート電圧Vgが印加される。トランジスタ118のゲート電極にゲート電圧Vgが印加されると、トランジスタ118のドレイン電極からソース電極に向かって電流が流れることが可能となる。これにより、回路部100aにおいてトランジスタ118に電流が流れることが可能となる。トランジスタ118を流れる電流の大きさは、トランジスタ118に印加されるゲート電圧Vgが大きいほど大きくなる。つまり、トランジスタ118に印加されるゲート電圧Vgが大きいほど、回路部100aを流れる電流は大きくなる。これにより、本実施形態において制御部116は、トランジスタ118に印加するゲート電圧Vgを制御することで回路部100aに流れる電流の大きさを制御でき、電動アクチュエータ本体90のコイル40に流れる電流の大きさを制御できる。
【0066】
シャント抵抗130は、コイル40に流れる電流を検出可能とする検出素子である。シャント抵抗130は、コイル40に直列に接続されている。シャント抵抗130は、コイル40とトランジスタ118との間に位置する。コイル40とシャント抵抗130とトランジスタ118とは、この順に直列に接続されている。
【0067】
制御部116は、コイル40に流れる電流を制御可能である。本実施形態において制御部116は、トランジスタ118に印加するゲート電圧Vgを制御することで、コイル40に流れる電流を制御する。制御部116は、図示しない車両制御装置から入力される駆動信号DSに基づいて、ゲート電圧Vgの大きさを変更し、コイル40に流れる電流の値を変更する。制御部116によるコイル40に流れる電流の制御手順については、後段において詳述する。制御部116には、シャント抵抗130に印加される電圧Vsが入力される。制御部116は、シャント抵抗130を用いてコイル40に流れる電流の変化を検出可能である。より詳細には、制御部116は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsの変化を検出することで、コイル40に流れる電流の変化を検出可能である。
【0068】
なお、本明細書において「検出素子」は、制御部が当該検出素子を用いてコイルに流れる電流の変化を検出可能となるならば、どのような素子であってもよい。本明細書において「検出素子」は、本実施形態のシャント抵抗130のように検出素子自体がコイルに流れる電流の変化を検出する機能を有さずに、間接的に制御部にコイルに流れる電流の変化を検出可能とさせる素子であってもよいし、検出素子自体がコイルに流れる電流の変化を検出する機能を有していてもよい。
【0069】
また、本明細書において「制御部が検出素子を用いてコイルに流れる電流の変化を検出可能である」とは、制御部が検出素子を用いてコイルに流れる電流の変化を検出できるならば、制御部がコイルに流れる電流の値そのものを実際に検出していなくてもよい。例えば、本実施形態において制御部116は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsを検出し、電圧Vsの変化を検出することで、間接的にコイル40に流れる電流の変化を検出している。つまり、本実施形態において制御部116は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsを、コイル40に流れる電流の変化を検出するためのパラメータとして使用しており、コイル40に流れる電流の値そのものを検出してはいない。なお、制御部116は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsに基づいて、コイル40に流れる電流の値を算出してもよい。
【0070】
本実施形態の電動アクチュエータ100においては、コイル40に流す電流の向きを切り替えることで、可動子70を軸方向の両側にそれぞれ移動させることができる。
図1および
図4においては、可動子70が最も上側に位置する状態を示している。
図5においては、可動子70が最も上側に位置する状態から最も下側の位置まで移動する途中の状態を示している。
図2および
図6においては、可動子70が最も下側に位置する状態を示している。
図7においては、可動子70が最も下側に位置する状態から最も上側の位置まで移動する途中の状態を示している。以下の説明においては、可動子70が最も上側に位置する状態を「第1状態S1」と呼び、可動子70が最も下側に位置する状態を「第2状態S2」と呼ぶ。コイル40を流れる電流の向きは、例えば、基板113に設けられた図示しないスイッチング素子によって切り替えられる。当該スイッチング素子は、例えば、基板113からコイル40に電流を流す配線部材115を、2本の配線部材115のうちで切り替えることで、コイル40を流れる電流の向きを切り替える。
【0071】
本実施形態では、電動アクチュエータ100が第1状態S1の場合に車両のギヤがパーキングであるロック状態となり、電動アクチュエータ100が第2状態S2の場合に車両のギヤがパーキング以外であるアンロック状態となる。第1状態S1における可動子70の軸方向位置、すなわち可動子70が最も上側に位置する場合の可動子70の軸方向位置は、第1位置P1である。第2状態S2における可動子70の軸方向位置、すなわち可動子70が最も下側に位置する場合の可動子70の軸方向位置は、第2位置P2である。つまり、可動子70は、軸方向において第1位置P1と第2位置P2との間で移動可能である。
【0072】
図1および
図4に示すように、第1状態S1において、コア体72のコア上部72bは、第1収容部21bの内部に収容される。本実施形態では、第1状態S1において、コア上部72bの上側の端面は第1底面21kに接触し、コア上部72bの外周面は内周面部21jに接触する。第1状態S1において、コア体72の下側の端部は、マグネット50の下側の端部よりも上側に位置する。第1状態S1において、コア体72の軸方向の中央部は、マグネット50の上側部分の径方向内側に位置する。第1状態S1において、マグネット50の軸方向の中央部は、コア中央部72aの下側部分の径方向外側に位置する。
【0073】
図4に示すように、第1状態S1においては、マグネット50からの磁束がコア体72とケース10とを流れる磁気回路Mm1が構成される。
図4に矢印で示すように、磁気回路Mm1において、マグネット50の磁極部50Nから径方向内側に放出された磁束は、コア体72内を上側に流れて、第1コア部21に流入する。第1コア部21に流入した磁束は、径方向外側に流れて、蓋部材12を通って周壁部11bに流入する。周壁部11bに流入した磁束は、下側に流れて、径方向外側からマグネット50の磁極部50Sに流入する。磁気回路Mm1によってコア体72と第1コア部21との間には互いに引き合う磁力が生じる。これにより、コイル40に電流を流さない状態であっても、可動子70が最も上側に位置する第1状態S1が維持される。つまり、可動子70の軸方向位置は、第1位置P1において、コイル40に電流が流れていない状態で保持可能とされている。
【0074】
なお、
図4において図示は省略するが、第1状態S1においては、
図5に示す磁気回路Mm2も生じている。
図5に矢印で示すように、磁気回路Mm2において、マグネット50の磁極部50Nから径方向内側に放出された磁束は、コア体72内を下側に流れて、第2コア部22に流入する。第2コア部22に流入した磁束は、径方向外側に流れて、環状部11aを通って周壁部11bに流入する。周壁部11bに流入した磁束は、上側に流れて、径方向外側からマグネット50の磁極部50Sに流入する。磁気回路Mm2によってコア体72と第2コア部22との間には互いに引き合う磁力が生じる。しかしながら、第1状態S1においては、コア体72と第2コア部22との間の軸方向距離がコア体72と第1コア部21との間の軸方向距離よりも大きいため、磁気回路Mm2に流れる磁束は磁気回路Mm1に流れる磁束よりも少ない。これにより、コア体72と第2コア部22との間に生じる磁力は、コア体72と第1コア部21との間に生じる磁力よりも小さい。したがって、第1状態S1において磁気回路Mm2が生じていても、可動子70が下側に移動することが抑制される。
【0075】
第1状態S1においてコイル40に電流を所定の方向に流すことで、可動子70を下側に移動させることができる。具体的には、
図5に示す磁気回路Ms1が生じる向きにコイル40に電流を流すことで、第1状態S1の可動子70を下側に移動させることができる。
図5の例では、上側から見て時計回りに流れる向きにコイル40に電流が流されている。
図5に矢印で示すように、磁気回路Ms1においては、コイル40の径方向内側に生じた下側向きの磁束が、コア体72から第2コア部22に流入する。第2コア部22に流入した磁束は、径方向外側に流れて、環状部11aを通って周壁部11bに流入する。周壁部11bに流入した磁束は、周壁部11bを上側に流れて蓋部材12に流入する。蓋部材12に流入した磁束は、径方向内側に流れて、第1コア部21に流入する。第1コア部21に流入した磁束は、下側に流れ、上側からコア体72に戻る。
【0076】
磁気回路Ms1においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きは、
図4に示す磁気回路Mm1においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きと逆向きとなっている。そのため、磁気回路Ms1が生じることで磁気回路Mm1の少なくとも一部が打ち消される。これにより、コア体72と第1コア部21との間に生じる磁力が弱められる。一方、磁気回路Ms1においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きは、
図5に示す磁気回路Mm2においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きと同じ向きとなっている。そのため、磁気回路Mm2に起因して生じるコア体72と第2コア部22との間の磁力を、磁気回路Ms1によって強めることができる。これらにより、コア体72と第1コア部21との間に生じる磁力よりも、コア体72と第2コア部22との間に生じる磁力の方が大きくなり、可動子70に下側向きの推進力PF1が生じる。したがって、推進力PF1によって可動子70が下側に移動し、可動子70が最も下側に位置する第2状態S2となる。このように、
図5に示す磁気回路Ms1が生じる向きにコイル40に電流を流すことで、可動子70を第1状態S1から第2状態S2にすることができる。
【0077】
なお、磁気回路Mm2によって生じるコア体72と第2コア部22との間の磁力は、可動子70が下側に移動するに従って大きくなる。一方、磁気回路Mm1によって生じるコア体72と第1コア部21との間の磁力は、可動子70が下側に移動するに従って小さくなる。
【0078】
図6に示すように、第2状態S2において、コア体72のコア下部72cは、第2収容部22bの内部に収容される。本実施形態では、第2状態S2において、コア下部72cの下側の端面は第2底面22kに接触し、コア下部72cの外周面は内周面22jに接触する。第2状態S2において、コア体72の上側の端部は、マグネット50の上側の端部よりも上側に位置する。第2状態S2において、コア体72の軸方向の中央部は、マグネット50の下側部分の径方向内側に位置する。第2状態S2において、マグネット50の軸方向の中央部は、コア中央部72aの上側部分の径方向外側に位置する。
【0079】
第2状態S2においては、磁気回路Mm2が構成される。上述したように磁気回路Mm2によってコア体72と第2コア部22との間には互いに引き合う磁力が生じる。これにより、コイル40に電流を流さない状態であっても、可動子70が最も下側に位置する第2状態S2が維持される。つまり、可動子70の軸方向位置は、第2位置P2において、コイル40に電流が流れていない状態で保持可能とされている。なお、
図6において図示は省略するが、第2状態S2においては、
図4に示す磁気回路Mm1も生じている。しかしながら、第2状態S2においては、コア体72と第1コア部21との間の軸方向距離がコア体72と第2コア部22との間の軸方向距離よりも大きいため、磁気回路Mm1に流れる磁束は磁気回路Mm2に流れる磁束よりも少ない。これにより、コア体72と第1コア部21との間に生じる磁力は、コア体72と第2コア部22との間に生じる磁力よりも小さい。したがって、第2状態S2において磁気回路Mm1が生じていても、可動子70が上側に移動することが抑制される。
【0080】
第2状態S2においてコイル40に電流を所定の方向に流すことで、可動子70を上側に移動させることができる。具体的には、
図7に示す磁気回路Ms2が生じる向きにコイル40に電流を流すことで、第2状態S2の可動子70を上側に移動させることができる。
図7の例では、上側から見て反時計回りに流れる向きにコイル40に電流が流されている。つまり、第2状態S2の可動子70を上側に移動させる際にコイル40に流す電流の向きは、第1状態S1の可動子70を下側に移動させる際にコイル40に流す電流の向きと逆向きである。
図7に矢印で示すように、磁気回路Ms2においては、コイル40の径方向内側に生じた上側向きの磁束が、コア体72から第1コア部21に流入する。第1コア部21に流入した磁束は、径方向外側に流れて、蓋部材12を通って周壁部11bに流入する。周壁部11bに流入した磁束は、周壁部11bを下側に流れて環状部11aに流入する。環状部11aに流入した磁束は、径方向内側に流れて、第2コア部22に流入する。第2コア部22に流入した磁束は、上側に流れ、下側からコア体72に戻る。
【0081】
磁気回路Ms2においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きは、
図6に示す磁気回路Mm2においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きと逆向きとなっている。そのため、磁気回路Ms2が生じることで磁気回路Mm2の少なくとも一部が打ち消される。これにより、コア体72と第2コア部22との間に生じる磁力が弱められる。一方、磁気回路Ms2においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きは、
図7に示す磁気回路Mm1においてコア体72およびケース10を磁束が流れる向きと同じ向きとなっている。そのため、磁気回路Mm1に起因して生じるコア体72と第1コア部21との間の磁力を、磁気回路Ms2によって強めることができる。これらにより、コア体72と第2コア部22との間に生じる磁力よりも、コア体72と第1コア部21との間に生じる磁力の方が大きくなり、可動子70に上側向きの推進力PF2が生じる。したがって、推進力PF2によって可動子70が上側に移動し、可動子70が最も上側に位置する第1状態S1となる。このように、
図7に示す磁気回路Ms2が生じる向きにコイル40に電流を流すことで、可動子70を第2状態S2から第1状態S1にすることができる。
【0082】
なお、磁気回路Mm1によって生じるコア体72と第1コア部21との間の磁力は、可動子70が上側に移動するに従って大きくなる。一方、磁気回路Mm2によって生じるコア体72と第2コア部22との間の磁力は、可動子70が上側に移動するに従って小さくなる。
【0083】
以上のように、本実施形態の電動アクチュエータ100は、可動子70が最も上側に位置する第1状態S1と可動子70が最も下側に位置する第2状態S2とを、コイル40に電流を流すことなく保持可能な自己保持型のソレノイドアクチュエータである。また、電動アクチュエータ100においては、コイル40に流す電流の向きを変えることで、可動子70を軸方向両側のいずれにも移動させることができる。
【0084】
図3に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ100が搭載される車両には、報知部120が搭載されている。報知部120は、車両の運転者等に電動アクチュエータ100に生じた異常を報知可能である。本実施形態において報知部120は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの発光素子である。報知部120は、車両内の運転者等から視認可能な位置に配置されている。報知部120は、制御装置110の制御部116に電気的に接続されている。報知部120は、例えば、車両制御装置を介して、制御部116に電気的に接続されている。報知部120は、制御部116から入力される信号に基づいて、点灯した状態と、消灯した状態と、が切り替えられる。報知部120は、電動アクチュエータ100に異常が生じたことを示す信号が制御部116から入力された場合に点灯する。
【0085】
次に、制御装置110による電動アクチュエータ本体90の制御方法について説明する。本実施形態において制御装置110の制御部116は、
図8に示すフローチャートに沿って、コイル40に流す電流を制御する。
図8に示すように、制御部116は、電動アクチュエータ100の電源がON状態となる(ステップSa)と、車両制御装置から駆動信号DSが入力されているか否かを判定する(ステップSb)。本実施形態において駆動信号DSは、車両の運転者のシフト操作に基づいて車両制御装置から制御部116に入力される信号である。本実施形態において駆動信号DSは、車両のギヤがパーキングとパーキング以外との間で切り替えられた際に、車両制御装置から制御部116に入力される。
【0086】
なお、電動アクチュエータ100の電源は、例えば、電動アクチュエータ100が搭載される車両を駆動する駆動装置が駆動状態とされた際にON状態となる。また、電動アクチュエータ100の電源は、例えば、電動アクチュエータ100が搭載される車両を駆動する駆動装置が非駆動状態とされた際にOFF状態となる。電動アクチュエータ100の電源がON状態となった直後において車両のギヤは、パーキングとなっている。つまり、電動アクチュエータ100の電源がON状態となった直後において、電動アクチュエータ100は第1状態S1であり、可動子70の軸方向位置は第1位置P1である。
【0087】
駆動信号DSが入力されている場合(ステップSb:YES)、制御部116は、駆動信号DSに基づいて、電動アクチュエータ100を駆動させる駆動電流Iaをコイル40に流す(ステップSc)。これにより、上述したようにして可動子70が、第1位置P1と第2位置P2との一方から他方へと軸方向に移動する。例えば、電動アクチュエータ100がON状態になってから初めてシフト操作が行われた場合には、可動子70は、第1位置P1から第2位置P2へと軸方向に移動する。このように、制御部116は、可動子70を軸方向に移動させる場合に、コイル40に流れる電流を駆動電流Iaとする。本実施形態において駆動電流Iaは、「第1電流」に相当する。
【0088】
一方、駆動信号DSが入力されていない場合(ステップSb:NO)、制御部116は、電動アクチュエータ100を駆動させる駆動電流Iaよりも小さい検出電流Ibをコイル40に流す(ステップSd)。駆動信号DSが入力されていない場合とは、運転者が車両のギヤをパーキングとパーキング以外との間で切り替える操作を行っていない場合であり、車両制御装置から可動子70を移動させる指令が入力されていない場合である。つまり、制御部116は、可動子70を軸方向に移動させない場合に、コイル40に流れる電流を駆動電流Iaよりも小さい検出電流Ibとする。本実施形態において検出電流Ibは、「第2電流」に相当する。
【0089】
検出電流Ibの大きさは、可動子70を移動させる向きに検出電流Ibをコイル40に流しても、可動子70を軸方向に移動できない程度に小さい。つまり、検出電流Ibの大きさは、コイル40に流れる検出電流Ibの向きによらず、可動子70を移動させることができない大きさである。具体的に、検出電流Ibによって生じる磁気回路は、仮に第1位置P1において生じる磁気回路Mm1および第2位置P2において生じる磁気回路Mm2に対して逆向きとなっていても、各磁気回路Mm1,Mm2を十分に打ち消せない。検出電流Ibの大きさは、例えば、駆動電流Iaの大きさの10分の1以下である。検出電流Ibは、駆動電流Iaに比べて微小な電流である。
【0090】
本実施形態においてコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、可動子70を現在の位置に保持する向きの力を可動子70に加える磁気回路を生じさせる向きである。可動子70が第1位置P1にある場合におけるコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、可動子70を第2位置P2から第1位置P1に移動させる際にコイル40に流れる駆動電流Iaの向きと同じである。つまり、可動子70が第1位置P1にある場合におけるコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、
図7に示す磁気回路Ms2を生じさせる駆動電流Iaの向きと同じである。また、可動子70が第2位置P2にある場合におけるコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、可動子70を第1位置P1から第2位置P2に移動させる際にコイル40に流れる駆動電流Iaの向きと同じである。つまり、可動子70が第2位置P2にある場合におけるコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、
図5に示す磁気回路Ms1を生じさせる駆動電流Iaの向きと同じである。
【0091】
図8に示すように、検出電流Ibをコイル40に流している状態において、制御部116は、シャント抵抗130を用いて検出された値が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップSe)。具体的に本実施形態では、シャント抵抗130に印加される電圧Vsの大きさが閾値電圧Vst以上か否かを判定することで、コイル40に流れる検出電流Ibの値が所定の閾値以上か否かを判定する。シャント抵抗130に印加される電圧Vsの大きさが閾値電圧Vst以上だった場合、すなわちコイル40に流れる検出電流Ibの値が所定の閾値以上だった場合(ステップSe:YES)、制御部116は、現在の状態を維持し、コイル40に検出電流Ibを流し続ける。一方、シャント抵抗130に印加される電圧Vsの大きさが閾値電圧Vstよりも小さい場合、すなわちコイル40に流れる検出電流Ibの値が所定の閾値よりも小さい場合(ステップSe:NO)、制御部116は、電動アクチュエータ本体90と制御装置110との少なくとも一方に異常が生じたと判定する(ステップSf)。
【0092】
制御部116は、電動アクチュエータ本体90と制御装置110との少なくとも一方に異常が生じたと判定した場合、報知部120に信号を送り、異常が生じたことを報知部120によって報知する(ステップSg)。本実施形態では、制御部116は、異常が生じたと判定した場合、報知部120を点灯させる。また、制御部116は、異常が生じたと判定した場合、例えば、コイル40への電流の供給を停止する。
【0093】
図9は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsの変化の一例を示すグラフである。
図9において、縦軸はシャント抵抗130に印加される電圧Vsを示し、横軸は時間Tを示している。
図9の例では、時刻T1において制御部116に駆動信号DSが入力され始める。制御部116に駆動信号DSが入力されると、制御部116は、駆動信号DSに基づいてゲート電圧Vgを大きくして、コイル40に流される電流を大きくする。これにより、シャント抵抗130に印加される電圧Vsも大きくなる。
図9の例では、電圧Vsの値は、電圧値Vs1まで大きくなる。これにより、コイル40に駆動電流Iaが流れ、可動子70が軸方向に移動する。
【0094】
図9の例では、時刻T2において制御部116への駆動信号DSの入力が停止される。駆動信号DSの入力が停止されると、制御部116は、ゲート電圧Vgを小さくして、コイル40に流される電流を小さくする。これにより、シャント抵抗130に印加される電圧Vsも小さくなる。
図9の例では、電圧Vsの値は、電圧値Vs1に比べて微小な電圧値Vs2まで小さくなる。
図9の例では、シャント抵抗130に印加される電圧Vsの値が電圧値Vs2となった場合に、コイル40には検出電流Ibが流れる。電圧値Vs2は、閾値電圧Vstよりも大きい。制御部116は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsが閾値電圧Vstよりも小さい場合に、検出電流Ibの値が所定の閾値よりも小さいと判定する。このように、制御部116は、駆動信号DSが入力されるとコイル40に流れる電流を大きくして駆動電流Iaとし、駆動信号DSの入力が停止されるとコイル40に流れる電流を流れる向きを変えずに小さくして検出電流Ibとする。
【0095】
制御部116は、コイル40に検出電流Ibを流している状態において駆動信号DSが入力されると、コイル40に流す電流の向きを反転させて、コイル40に流す電流を大きくし、それまでコイル40に流れていた検出電流Ibとは逆向きの駆動電流Iaをコイル40に流す。これにより、第1位置P1と第2位置P2との一方にある可動子70を、第1位置P1と第2位置P2との他方に移動させることができる。本実施形態では、電動アクチュエータ100に異常が生じていない限り、電動アクチュエータ100の電源がONになっている間は、コイル40に電流が流れ続けている。電動アクチュエータ100の電源がOFFになると、コイル40への電流の供給が停止される。
【0096】
本実施形態によれば、制御部116は、可動子70を軸方向に移動させる場合に、コイル40に流れる電流を駆動電流Iaとし、可動子70を軸方向に移動させない場合に、コイル40に流れる電流を駆動電流Iaよりも小さい検出電流Ibとする。また、制御部116は、検出素子であるシャント抵抗130を用いて検出電流Ibの値が所定の閾値よりも小さいと判定した場合に、電動アクチュエータ本体90と制御装置110との少なくとも一方に異常が生じたと判定する。ここで、例えば、コイル40に断線が生じている場合、およびコイル40と基板113との接続不良が生じている場合などには、コイル40に電流を流そうとしても、コイル40に電流が流れない、またはコイル40に流れる電流の大きさが小さくなる。つまり、電動アクチュエータ100に異常が生じている場合には、コイル40に電流が流れない、または電動アクチュエータ100が正常である場合に比べてコイル40を流れる電流が小さくなる。そのため、制御部116は、可動子70を移動させない場合において、コイル40に流される検出電流Ibの大きさが所定の閾値以上か否かを判定することで、電動アクチュエータ100が正常な状態か異常な状態かを判定することができる。つまり、制御部116は、可動子70を移動させない場合においてもコイル40に電流を流し続けておき、当該電流の大きさが正常な範囲内にあるか否かを判定することで、電動アクチュエータ100を駆動させない場合にも電動アクチュエータ100に異常が生じているか否かを判定することができる。本実施形態では、制御部116は、シャント抵抗130に印加される電圧Vsの大きさを監視することによって、間接的にコイル40に流れる電流の大きさを監視して、電動アクチュエータ100に異常が生じているか否かを判定している。
【0097】
以上により、本実施形態によれば、電動アクチュエータ100の制御部116は、可動子70が停止している状態において電動アクチュエータ100に異常が生じたか否かを判定可能である。そのため、電動アクチュエータ100を駆動させていない間に電動アクチュエータ100に異常が生じた場合であっても、次に電動アクチュエータ100を駆動するより前に、電動アクチュエータ100に異常が生じていることを検知することができる。これにより、制御部116が停止していた可動子70を移動させようとした場合に、可動子70が正常に移動しないことを抑制できる。
【0098】
また、可動子70を移動させない場合にコイル40に流れる検出電流Ibは、可動子70を移動させる場合にコイル40に流れる駆動電流Iaよりも小さい。そのため、可動子70を移動させない場合にコイル40に電流を流し続けても、電動アクチュエータ100の消費電力が増大することを抑制できる。また、本実施形態の電動アクチュエータ100は、可動子70の軸方向位置を第1位置P1および第2位置P2のそれぞれにおいて、コイル40に電流が流れていない状態で保持可能な自己保持型の電動アクチュエータ100である。そのため、各位置において可動子70に生じる保持力よりも大きい力を可動子70に加えることができる程度にコイル40に流す電流を大きくしなければ、可動子70は移動しない。したがって、比較的小さい検出電流Ibをコイル40に流しても、検出電流Ibによって生じる磁気回路に起因して可動子70が移動してしまうことを抑制できる。
【0099】
また、制御装置110は、電動アクチュエータ本体90に取り付けられている。つまり、電動アクチュエータ100は、機電一体型の電動アクチュエータである。そのため、例えば制御装置110が電動アクチュエータ本体90の外部に別途設けられているような場合に比べて、電動アクチュエータ本体90と制御装置110の一部とによって構成される回路部100aの全長を短くできる。そのため、回路部100aを構成しやすい。また、回路部100aの配線長を短くできるため、回路部100aの抵抗も小さくできる。これにより、回路部100aに電流を好適に流すことができる。このように回路部100aを好適に構成できるため、制御部116によって、コイル40に流れる電流を好適かつ容易に監視することができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、可動子70が第1位置P1にある場合におけるコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、可動子70を第2位置P2から第1位置P1に移動させる際にコイル40に流れる駆動電流Iaの向きと同じである。そのため、可動子70が第1位置P1にある場合にコイル40に検出電流Ibを流しても、可動子70には、可動子70を第1位置P1から第2位置P2に移動させる向きの力が加えられない。また、可動子70が第2位置P2にある場合におけるコイル40に流れる検出電流Ibの向きは、可動子70を第1位置P1から第2位置P2に移動させる際にコイル40に流れる駆動電流Iaの向きと同じである。そのため、可動子70が第2位置P2にある場合にコイル40に検出電流Ibを流しても、可動子70には、可動子70を第2位置P2から第1位置P1に移動させる向きの力が加えられない。これらにより、コイル40に流される検出電流Ibが比較的大きくても、可動子70が軸方向に移動することを好適に抑制できる。また、検出電流Ibをコイル40に流すことによって、可動子70を各位置に保持する向きの力を可動子70に加えることができる。そのため、第1位置P1と第2位置P2とのそれぞれにおいて、可動子70に生じる保持力を大きくすることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、検出電流Ibの大きさは、コイル40に流れる検出電流Ibの向きによらず、可動子70を移動させることができない大きさである。そのため、可動子70が第1位置P1にある場合に、可動子70を第1位置P1から第2位置P2に移動させる力が生じる向きに検出電流Ibをコイル40に流しても、可動子70が軸方向に移動しない。また、可動子70が第2位置P2にある場合に、可動子70を第2位置P2から第1位置P1に移動させる力が生じる向きに検出電流Ibをコイル40に流しても、可動子70が軸方向に移動しない。そのため、コイル40に対して検出電流Ibがどのような向きで流されても、可動子70が軸方向に移動することを抑制できる。また、検出電流Ibを好適に小さくできるため、電動アクチュエータ100の消費電力が増大することをより好適に抑制できる。
【0102】
また、本実施形態によれば、制御部116は、電動アクチュエータ本体90と制御装置110との少なくとも一方に異常が生じたと判定した場合、当該異常が生じたことを報知可能な報知部120に信号を送り、当該異常が生じたことを報知部120によって報知する。そのため、車両の運転者などに当該異常が生じたことを好適に伝達することができる。本実施形態において、車両の運転者は、発光素子である報知部120が点灯した状態を見ることで、電動アクチュエータ100に異常が生じたことを認識できる。
【0103】
また、本実施形態によれば、制御装置110が有する検出素子は、コイル40に直列に接続されたシャント抵抗130である。そのため、制御部116は、シャント抵抗130を用いた簡易な構成によって、コイル40に流れる検出電流Ibの大きさを判定可能である。また、検出素子を電流センサなどにする場合に比べて、検出素子を安価にできるため、電動アクチュエータ100の製造コストが増大することを抑制できる。
【0104】
また、本実施形態によれば、マグネット50がコイル40の径方向内側に位置する。そのため、上述したように、1つのコイル40に電流を流すことで生じる磁気回路Ms1,Ms2によって、マグネット50によって生じる磁気回路Mm1と磁気回路Mm2との一方を弱めて、他方を強めることができる。これにより、コイル40に流す電流の向きに応じて、コア体72とケース10の上側部分との間に生じる磁力とコア体72とケース10の下側部分との間に生じる磁力とのバランスを変えることができる。したがって、上述したようにして、1つのコイル40に流す電流の向きを切り替えることで、可動子70を軸方向両側にそれぞれ移動させることができる。そのため、コイル40を2つ以上設ける必要がなく、電動アクチュエータ100を軸方向に小型化できる。また、1つのコイル40に流す電流の向きを変えることのみで可動子70を軸方向両側に移動させることができるため、コイル40が複数設けられる場合に比べて、コイル40に供給する電流の制御を容易にできる。
【0105】
また、可動子70が軸方向に移動することで、可動子70が移動する側に位置するケース10の部分とコア体72とを磁束が流れる磁気回路を強めつつ、可動子70が移動する側と逆側に位置するケース10の部分とコア体72とを磁束が流れる磁気回路を弱めることができる。そのため、ケース10の上側部分とケース10の下側部分との一方にコア体72が十分に近づいた状態において、ケース10の上側部分とケース10の下側部分との他方とコア体72とに生じるマグネット50の磁気回路に流れる磁束を、ケース10の上側部分とケース10の下側部分との一方とコア体72とに生じるマグネット50の磁気回路に流れる磁束に対して、十分に小さくできる。これにより、可動子70が最も上側に位置する第1状態S1および可動子70が最も下側に位置する第2状態S2において、コイル40に電流を流すことなく、マグネット50によって生じる磁力のみで可動子70の軸方向位置を保持することができる。したがって、1つのコイル40を備える自己保持型の電動アクチュエータ100が得られる。
【0106】
なお、このように、電動アクチュエータ100においてはコイル40に電流を流し続けなくても可動子70を停止させておくことができる。しかしながら、本実施形態では、上述したように可動子70を停止させておく場合、コイル40には微小な検出電流Ibが流し続けられている。
【0107】
また、本実施形態によれば、マグネット50は、コイル40の径方向内側に位置する。そのため、例えばマグネット50がコイル40の径方向外側に位置する場合に比べて、マグネット50をコア体72に近づけて配置できる。これにより、マグネット50の磁束をコア体72に流しやすい。したがって、コア体72を通る磁気回路Mm1,Mm2をマグネット50によって好適に生じさせやすい。そのため、可動子70をより好適に軸方向に移動させることができ、かつ、第1状態S1および第2状態S2において可動子70をより好適に保持できる。
【0108】
また、本実施形態によれば、マグネット50は、第1軸方向壁部10aと第2軸方向壁部10bとの軸方向に間に位置し、かつ、第1軸方向壁部10aと第2軸方向壁部10bとの両方から軸方向に離れて配置されている。そのため、マグネット50の磁束がマグネット50から第1軸方向壁部10aおよび第2軸方向壁部10bに直接流れることを抑制できる。これにより、マグネット50の磁束をより好適にコア体72に流しやすくできる。したがって、コア体72を通る磁気回路Mm1,Mm2をマグネット50によって、より好適に生じさせやすい。そのため、可動子70をより好適に軸方向に移動させることができ、かつ、第1状態S1および第2状態S2において可動子70をより好適に保持できる。
【0109】
また、本実施形態によれば、第1軸方向壁部10aは、コア体72の上側に位置する第1コア部21を有し、第2軸方向壁部10bは、コア体72の下側に位置する第2コア部22を有する。そのため、第1コア部21および第2コア部22を介して、コア体72とケース10との間で磁束を流しやすい。これにより、各磁気回路Mm1,Mm2,Ms1,Ms2を生じさせやすくできる。
【0110】
また、本実施形態によれば、マグネット50の軸方向における中央部の軸方向位置は、ケース10のうちコア体72の上側に位置する部分、つまり第1底壁部21cとケース10のうちコア体72の下側に位置する部分、つまり第2底壁部22cとの間の軸方向における中央部の軸方向位置と同じである。そのため、例えばコア体72が第1底壁部21cと第2底壁部22cとの軸方向の中央に位置する場合において、マグネット50によって生じる磁気回路Mm1と磁気回路Mm2とを比較的同程度に生じさせやすい。これにより、可動子70を軸方向両側のそれぞれに移動させやすくでき、かつ、第1状態S1および第2状態S2の両方において可動子70を好適に保持しやすくできる。
【0111】
また、本実施形態によれば、コイル40は、マグネット50よりも軸方向両側に突出している。そのため、コイル40を軸方向に比較的大きくでき、コイル40に電流を流すことで生じる磁気回路Ms1,Ms2に流れる磁束を比較的多くしやすい。これにより、磁気回路Ms1,Ms2によって、マグネット50によって生じる磁気回路Mm1と磁気回路Mm2との一方を弱めやすくでき、かつ、磁気回路Mm1と磁気回路Mm2との他方を強めやすくできる。
【0112】
また、本実施形態によれば、コア体72の軸方向の寸法は、マグネット50の軸方向の寸法よりも大きい。そのため、第1状態S1および第2状態S2のそれぞれにおいて、コア体72のうちマグネット50の径方向内側に位置する部分の軸方向の寸法を大きくできる。これにより、第1状態S1および第2状態S2のそれぞれにおいて、マグネット50からコア体72に流れる磁束の量を好適に多くできる。したがって、第1状態S1においてマグネット50によって生じる磁気回路Mm1に流れる磁束の量を好適に多くでき、第2状態S2においてマグネット50によって生じる磁気回路Mm2に流れる磁束の量を好適に多くできる。そのため、第1状態S1および第2状態S2のそれぞれにおいて、可動子70の軸方向位置をより好適に保持できる。
【0113】
また、本実施形態によれば、第1コア部21における下側を向く面のうち軸方向に見てコア体72と重なる部分の面積は、第2コア部22における上側を向く面のうち軸方向に見てコア体72と重なる部分の面積よりも大きい。そのため、コア体72と第1コア部21との間に流れる磁束の量を、コア体72と第2コア部22との間に流れる磁束の量よりも多くできる。これにより、マグネット50によって生じる磁気回路Mm1に流れる磁束の量を、マグネット50によって生じる磁気回路Mm2に流れる磁束の量よりも多くできる。したがって、第2状態S2から第1状態S1に変化する際に可動子70に生じる上側向きの推進力PF2の大きさを、第1状態S1から第2状態S2に変化する際に可動子70に生じる下側向きの推進力PF1の大きさよりも大きくできる。そのため、シャフト71を介して他の機器に伝達される電動アクチュエータ100の出力を、可動子70が移動する向きによって異ならせることができる。これにより、例えば、必要な駆動力が互いに異なる2つの駆動を電動アクチュエータ100によって行う場合に、各駆動に必要な駆動力に合わせてシャフト71から出力される電動アクチュエータ100の出力を変えることができる。したがって、例えば必要な駆動力のうち大きい方の駆動力に合わせて電動アクチュエータ100全体の出力を大きくすることなく、異なる駆動力が必要な2つの駆動を電動アクチュエータ100によって行うことができる。そのため、電動アクチュエータ100を小型化しやすい。
【0114】
また、マグネット50によって生じる磁気回路Mm1に流れる磁束の量をマグネット50によって生じる磁気回路Mm2に流れる磁束の量よりも多くできるため、第1状態S1において可動子70を保持する保持力を、第2状態S2において可動子70を保持する保持力よりも大きくできる。これにより、可動子70の保持状態の一方において他方よりも大きな保持力が必要な場合に、当該一方の保持状態を第1状態S1とすることで、可動子70の状態を好適に保持することができる。
【0115】
上述したように、本実施形態では、電動アクチュエータ100が第1状態S1の場合に車両のギヤがパーキングであるロック状態となり、電動アクチュエータ100が第2状態S2の場合に車両のギヤがパーキング以外であるアンロック状態となる。そのため、第1状態S1において可動子70を保持する保持力を大きくできることで、車両のギヤがパーキングであるロック状態を好適に保持できる。
【0116】
また、
図2に示すように、本実施形態では、アームAのうちシャフト71に連結される端部に対して回転軸Rを挟んで逆側に位置する部分に上側向きの力を加えることで、アームAを介してシャフト71に下側向きの力を加えることが可能な構造となっている。そのため、仮にコイル40に電流を流しても第1状態S1の可動子70が下側に移動しない場合であっても、アームAを介してシャフト71に下側向きの力を加えることで、可動子70を下側に移動させて、可動子70を第2状態S2にできる。したがって、可動子70に生じる下側向きの推進力PF1が足りない場合であっても、可動子70を第1状態S1から第2状態S2に切り替えることができる。つまり、推進力PF1を比較的小さくしても、第1状態S1から第2状態S2への切り替えが可能である。一方、本実施形態では、アームAを介しては可動子70に上側向きの力を加えられない構造となっている。そのため、可動子70に生じる上側向きの推進力PF2は、十分に大きくすることが好ましい。これに対して、本実施形態では、上述したように、推進力PF2の大きさを、推進力PF1の大きさよりも大きくできる。そのため、可動子70を第2状態S2から第1状態S1に切り替えるための推進力PF2が足りなくなることを抑制できる。以上のように、本実施形態によれば、パーク・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載された電動アクチュエータ100において、可動子70の状態を好適に切り替えることができる。
【0117】
<第2実施形態>
図10に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ200は、制御装置210がシャント抵抗130の代わりに電流センサ230を有する点において、第1実施形態の電動アクチュエータ100と異なる。なお、以下の説明においては、上述した実施形態と同様の構成について、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0118】
電流センサ230は、コイル40に流れる電流を検出可能とする検出素子である。電流センサ230は、磁気式の電流センサである。電流センサ230は、例えば、ホール素子を利用したホール式の電流センサである。電流センサ230は、電動アクチュエータ200の回路部200aにおいて、電動アクチュエータ本体90とトランジスタ118とを繋ぐ配線の周囲に配置されている。電流センサ230は、当該配線に流れる電流によって生じる磁界を検出することで、当該配線に流れる電流の大きさを非接触で検出可能である。これにより、電流センサ230は、回路部200aに流れる電流、すなわちコイル40に流れる電流を検出可能である。電流センサ230の検出結果は、制御部116に入力される。制御部116は、第1実施形態におけるシャント抵抗130に印加される電圧Vsの代わりに電流センサ230から取得した電流値を用いて、第1実施形態と同様にコイル40に流す電流を制御する。
【0119】
回路部200aの構成は、シャント抵抗130が含まれていない点を除いて、第1実施形態の回路部100aと同様の構成である。制御装置210の各部におけるその他の構成は、第1実施形態の制御装置110の各部におけるその他の構成と同様である。電動アクチュエータ200の各部におけるその他の構成は、第1実施形態の電動アクチュエータ100の各部におけるその他の構成と同様である。
【0120】
本実施形態によれば、制御装置210が有する検出素子は、磁気式の電流センサ230である。そのため、第1実施形態のシャント抵抗130と異なり、電流センサ230を回路部200aの一部として組み込むことなく、電流センサ230によって、コイル40に流れる電流を検出可能である。これにより、電流センサ230が回路部200aを流れる電流の抵抗となることがなく、より好適に回路部200aに電流を流すことができる。したがって、より好適にコイル40に電流を流すことができる。
【0121】
上述した第1実施形態および第2実施形態の電動アクチュエータの制御装置における各構成要素の機能の少なくとも一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが、図示しない記憶部に記憶されたソフトウェアを実行することで実現される。また、制御装置における各構成要素の機能の少なくとも一部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などの回路部を含むハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されていてもよい。図示しない記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(hard disk drive)、およびフラッシュメモリなどの記憶媒体によって実現される。
【0122】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。制御部がコイルに流れる電流を制御する方法は、特に限定されない。上述した実施形態のようにトランジスタを用いてコイルに流れる電流を制御する場合、トランジスタは、バイポーラトランジスタなどの電界効果トランジスタ以外のトランジスタであってもよい。トランジスタがバイポーラトランジスタの場合、制御部は、ベース電流を変化させることで、コイルに流れる電流を変化させる。制御部は、トランジスタ以外の増幅素子を用いてコイルに流れる電流を制御してもよい。
【0123】
可動子を移動させない場合にコイルに流れる第2電流(検出電流Ib)は、コイルに対してどのような向きに流されてもよい。第2電流の大きさは、第1電流(駆動電流Ia)の大きさよりも小さければ、特に限定されない。
【0124】
報知部は、電動アクチュエータに異常が生じたことを報知できるならば、どのような構成であってもよい。報知部は、音および音声の少なくとも一方によって異常が生じたことを報知するスピーカなどであってもよいし、文字および画像の少なくとも一方を表示することで異常が生じたことを報知するディスプレイなどあってもよい。
【0125】
なお、本明細書において「制御部が電動アクチュエータ本体と制御装置との少なくとも一方に異常が生じたと判定する」とは、制御部が当該判定を行った場合に、電動アクチュエータが正常である場合とは異なる動作を制御部が行えばよい。電動アクチュエータが正常である場合とは異なる動作とは、例えば、上述した実施形態では報知部120へ信号を送る動作である。
【0126】
マグネットは、コイルの径方向外側に位置してもよい。この場合であっても、上述した実施形態と同様にして、1つのコイルによって、可動子を軸方向両側に移動させることができ、かつ、コイルに電流を流すことなく可動子を軸方向両側の位置においてそれぞれ保持できる。
【0127】
マグネットは、コイルの径方向内側またはコイルの径方向外側に位置するならば、どのような位置に配置されてもよい。マグネットは、第1軸方向壁部と第2軸方向壁部とのいずれか一方に接触して配置されてもよい。マグネットは、ボビンの径方向内側に隙間嵌めされていてもよい。マグネットは、接着剤によってボビンに固定されてもよい。マグネットとコイルとの軸方向の相対的な寸法関係は、特に限定されない。マグネットの軸方向の寸法は、コイルの軸方向の寸法より大きくてもよい。マグネットは、3つ以上の別体のマグネットによって構成されてもよい。マグネットは、単一の部材であってもよい。マグネットとコア体との軸方向の相対的な寸法関係は、特に限定されない。マグネットの軸方向の寸法は、コア体の軸方向の寸法より大きくてもよい。
【0128】
第1コア部の形状および第2コア部の形状は、特に限定されない。第1コア部の形状と第2コア部の形状とは、互いに同じであってもよい。第1コア部の体積は、第2コア部の体積と同じであってもよいし、第2コア部の体積より小さくてもよい。第1コア部の径方向の寸法は、第2コア部の径方向の寸法と同じであってもよいし、第2コア部の径方向の寸法より小さくてもよい。第1コア部における軸方向他方側を向く面のうち軸方向に見てコア体と重なる部分の面積は、第2コア部における軸方向一方側を向く面のうち軸方向に見てコア体と重なる部分の面積と同じであってもよいし、第2コア部における軸方向一方側を向く面のうち軸方向に見てコア体と重なる部分の面積より小さくてもよい。
【0129】
本発明が適用される電動アクチュエータの用途は、特に限定されない。電動アクチュエータは、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるシフト・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載されてもよい。また、電動アクチュエータは、車両以外の機器に搭載されてもよい。なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0130】
10…ケース、10a…第1軸方向壁部、10b…第2軸方向壁部、11b…周壁部、40…コイル、50…マグネット、70…可動子、72…コア体、90…電動アクチュエータ本体、100,200…電動アクチュエータ、110,210…制御装置、116…制御部、120…報知部、130…シャント抵抗(検出素子)、230…電流センサ(検出素子)、Ia…駆動電流(第1電流)、Ib…検出電流(第2電流)、J…中心軸、P1…第1位置、P2…第2位置