(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064201
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ハンガー及びハンガー群
(51)【国際特許分類】
A47G 25/30 20060101AFI20230501BHJP
A47G 25/48 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A47G25/30
A47G25/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174331
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】505083461
【氏名又は名称】齋藤 友博
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友博
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA04
3K099BA03
3K099BA15
(57)【要約】
【課題】従来よりも利便性の高いハンガーを提供する。
【解決手段】上着を掛けることができる肩部2、及び、ズボンを掛けることができる横杆3を備えるハンガーであって、前記肩部2及び前記横杆3の厚み方向の隙間を有して相対向する、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bと、前記横杆3の下方において、前記第1矜持片4A、前記第2矜持片4B、及び、前記横杆3を互いに連結する連設部4Cを備えることで、従来よりも利便性の高いハンガーを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上着を掛けることができる肩部、及び、ズボンを掛けることができる横杆を備えるハンガーであって、
前記肩部及び前記横杆の厚み方向の隙間を有して相対向する、第1矜持片及び第2矜持片と、
前記横杆の下方において、前記第1矜持片、前記第2矜持片、及び、前記横杆を互いに連結する連設部を備える
ことを特徴とするハンガー。
【請求項2】
上着を掛けることができる肩部、及び、ズボンを掛けることができる横杆を備えるハンガーであって、
前記肩部及び前記横杆の厚み方向の隙間を有して相対向する、第1矜持片及び第2矜持片と、
上端が前記肩部に固定され、前記下端が、前記横杆の下方において、前記第1矜持片及び前記第2矜持片を連結する固定器具を備える
ことを特徴とするハンガー。
【請求項3】
前記隙間、前記第1矜持片及び前記第2矜持片の鉛直方向の長さ、前記第1矜持片及び前記第2矜持片の幅方向の長さの組み合わせがそれぞれ異なる複数のハンガーを有する
ことを特徴とするハンガー群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンガーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上着を掛ける肩部とズボンを掛ける横杆が一体となった衣料用ハンガーでは、ズボンが横杆からずり落ちないよういろいろな機構がある。
【0003】
特許文献1では、横杆の端部近傍に連接した短い矜持片を設けてその下部と横杆の間にズボンを挟んで横杆とズボンの布の間に圧迫による摩擦力を生じさせてズボンのずり落ちを防ぐとともに、矜持片の上部に係合段部を設けて矜持片が浮いて横杆とズボンの布の間の摩擦力が低下するのを防いでいる。
【0004】
特許文献2では、横杆の左右端の下方に横杆に接して短い矜持片を設け、その間にズボンを挟み、同時にその矜持片の下方に追加して矜持片がズボンの厚みで下方に下がらないよう第二の矜持片を連結設置している。
【0005】
特許文献3では、板状の横杆を左右端いずれかを固定せず2枚重ねて、その間にズボンを挟むようにしている。
【0006】
特許文献4では、木材の横杆2本が横杆を貫いて支える支持針金の弾力で強く接触するよう設置し、それまでの木と金属、金属と金属より高い圧力による摩擦力を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平07-027382号公報
【特許文献2】実登第3158192号
【特許文献3】実開昭54-027826号公報
【特許文献4】実開昭63-159575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1~4に開示されたハンガーでは、いずれも矜持片の機材とズボンの布の摩擦力によりずり落ち防止するものであるが、摩擦力が低く、例えばベルト等を付けたままのズボンなどはずりおちてしまうことがあり、あるいは、複雑化された構造であるためズボンの掛け外しが面倒不便である。
【0009】
上述の課題に鑑み、本発明では利便性が高いハンガー及びハンガー群を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点におけるハンガーによれば、
上着を掛けることができる肩部、及び、ズボンを掛けることができる横杆を備えるハンガーであって、
前記肩部及び前記横杆の厚み方向の隙間を有して相対向する、第1矜持片及び第2矜持片と、
前記横杆の下方において、前記第1矜持片、前記第2矜持片、及び、前記横杆を互いに連結する連設部を備える
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の観点におけるハンガーによれば、
上着を掛けることができる肩部、及び、ズボンを掛けることができる横杆を備えるハンガーであって、
前記肩部及び前記横杆の厚み方向の隙間を有して相対向する、第1矜持片及び第2矜持片と、
上端が前記肩部に固定され、前記下端が、前記横杆の下方において、前記第1矜持片及び前記第2矜持片を連結する固定器具を備える
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点におけるハンガー群によれば、
前記隙間、前記第1矜持片及び前記第2矜持片の鉛直方向の長さ、前記第1矜持片及び前記第2矜持片の幅方向の長さの組み合わせがそれぞれ異なる複数のハンガーを有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るハンガー及びハンガー群によれば、前記第1矜持片と前記第2矜持片の隙間にズボンを挟み入れ込むことによって、前記横杆とズボン、前記第1矜持片と前記第2矜持片とズボン、そしてズボンとズボンの3種類の接触面ができ、結果として簡便な構成で摩擦力が向上ので、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係るハンガーの正面図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るハンガーの部分拡大図である。
【
図5】本発明の実施例3に係るハンガーの
図2に対応する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明に係るハンガー及びハンガー群について、実施例により図面を用いて説明する。
【0016】
[実施例1]
図1は本実施例に係るハンガーの正面図であり、
図2は
図1のa-a矢視図であり、
図3は
図1のb-b断面図である。本実施例に係るハンガーは、主たる構成として、フック部1、肩部2、横杆3、及び、矜持部4を備えている。
【0017】
フック部1は、上部が鈎状となっており、例えば図示しないクローゼットのハンガーパイプ等の棒状部材に掛けることができるものである。
【0018】
肩部2は、その鉛直方向上端かつ幅方向中央位置(
図1におけるX)が、フック部1の下端に接続するようにして形成されている。また肩部2は、上記Xから幅方向両端(
図1におけるY1,Y2)に向けて(左右対称に)下方へ傾斜する形状となっており、上着を掛けることができるようになっている。
【0019】
横杆3は、上記Y1とY2を直線的に連結するようにして形成され、ズボンを掛けることができるようになっている。
【0020】
矜持部4は、横杆3の端部(例えば上記Y2側の端部)の下方に連設される。また矜持部4は、第1矜持片4A、第2矜持片4B、及び、連設部4Cを備えている。
【0021】
第1矜持片4A及び第2矜持片4Bは、それぞれ細板状部材であり、その長手方向が横杆3の延伸方向と平行するようにして、横杆3の下方に(横杆3と離間して)設けられている。また、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bは、互いに面部分が隙間dを有して相対向し、かつ鉛直方向において同位置に設けられる。なお、隙間dは肩部2及び横杆3の厚み方向の隙間となる。
【0022】
連設部4Cは、(横杆3の下方において)第1矜持片4Aの一端11、第2矜持片4Bの一端12、及び、横杆3の端部を互いに連結するものである。
【0023】
ただし、
図2に示すように、第1矜持片4Aの他端13、及び、第2矜持片4Bの他端14は、隙間dが拡がるように、互いに厚み方向において傾斜している。また、第1矜持片4A、及び、第2矜持片4Bは、同一サイズとするのが望ましいが、互いに異なるサイズであってもよい。
【0024】
なお、本実施例において、フック部1、肩部2、横杆3、第1矜持片4A、第2矜持片4B、及び、連設部4Cは、全て別体ではなく一体的に形成されるものとする。
【0025】
以上、本実施例に係るハンガーの構成について説明した。以下では本実施例に係るハンガーの動作について説明する。
【0026】
まず、作業者は横杆3にズボンを掛ける。
次に、ズボンの横杆3の直下の端の部分を指でつまんで端側へ引っ張りながら、第1矜持片4Aの他端13及び第2矜持片4Bの他端14側から隙間dに挿入する。
なお、隙間dの長さは予めこの状態においてズボンを挟むように調整されているものとする。
【0027】
これにより、横杆3とズボンの下方の片面が接触、また、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bの相対向する面と、ズボンの外側の片面とが接触、さらにズボンの内側の片面がお互いに接触し、合計4面のそれぞれの接触面でズボンのずり落ちを防止する摩擦力が生成される。
【0028】
なお、この状態においては、ズボンの内側の片面同士の接触面の摩擦力が、他の接触面に比べて大きくなる。
【0029】
ズボンずり落ち防止の摩擦力は、接触する材質と材質への圧力および接触面積が反映されて大小が決まる。肩部2、横杆3、矜持部4に使用される金属、木材、プラスティックに比べて、ズボンの布は同じ圧力や面積でははるかに大きな摩擦力を生む。
【0030】
ズボンがずり落ちないようにする特許文献1~4に開示されたハンガーでは、横杆とズボンの片面との接触面、および矜持部とズボンの片面との接触面から生じる2種類の摩擦力を利用している。
【0031】
本実施例では、横杆とズボンの片面との接触面および矜持部とズボンの左右2本のそれぞれの片面との接触面から生じるこれまで同様の2種類の摩擦力に加えて、ズボンの左股下部の布の片面と右股下部の布の片面の接触面より生じるより大きな摩擦力を持つ新たな種類の摩擦力を利用する。
【0032】
ずり落ちないハンガーへズボンを掛ける操作が簡単にできないと利用価値が下がるが、本実施例では、片手による簡単な一操作で、ズボンがズレ落ちないようにハンガーに掛けることができる。
【0033】
本実施例によれば、これまでのハンガーからのズボンのずり落ち、特にズボンからベルトを外さずに掛けることによるベルトの重力によるズボンの腰側からの落下を防止することができる。
【0034】
特許文献1~4に開示されたハンガーは、横杆とズボンの片面との接触面、及び矜持部とズボンの片面あるいは両面との接触面から生じる2種類の摩擦力では十分な摩擦力が生まれずにズボンがズレ落ちることもある。このことへの対策として、横杆あるいは矜持部とズボンとの接触面への圧力を高める対処が考えられるが、高まった圧力によりズボンが掛けづらい、掛け外しにくくなる、ズボンに皺が残るなどの欠点がある。
【0035】
あるいは、特許文献1~4に開示されたハンガーは、更なる対処として矜持部に加えてさらに落下防止機構を用いているが、構造が複雑となりハンガー製造コストが増す、ズボンの掛け外しが簡単でなくなる欠点が生まれる。
【0036】
本実施例では、上記2種類のズボンのずり落ち防止の摩擦力に加えて、衣料用ハンガーでは新たな種類となるズボンの布と布間の接触面に生じるより大きな摩擦力を利用する。また、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bの2つとズボンの両面が接触するので接触面が多くなる。
【0037】
このようにして本実施例によれば、従来に比べはるかに大きな摩擦力が発生し利便性が向上する。
【0038】
[実施例2]
本実施例に係るハンガー群は、実施例1に係るハンガーのサイズを変更した複数のハンガーから成るものである。以下では、実施例1と同様の部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0039】
図4は本実施例に係るハンガーの部分拡大図であり、
図5は本実施例に係るハンガーの
図2に対応する図である。
【0040】
本実施例は、
図4に示すように、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bのそれぞれにおける、鉛直方向の長さh及び幅方向の長さwを、実施例1に係るハンガーから変更するものである。
【0041】
すなわち、上記長さhを長くすれば、接触面の面積が大きくなり摩擦力は大きくなる。また、上記長さwを長くすれば、接触面の面積が大きくなり摩擦力は大きくなる。
【0042】
さらに、本実施例は、
図5に示すように、第1矜持片4Aと第2矜持片4Bとの隙間dの長さを、実施例1に係るハンガーから変更するものである。
【0043】
すなわち、
図5に示すように、上記隙間dを狭くすれば摩擦力が大きくなり、広げれば摩擦力は小さくなる。
【0044】
ずり落ちやすいズボンでは隙間dが狭いハンガーが適するが、生地が厚いズボンでは隙間dにズボンを挟みにくくなる。一方、2本以上の複数のズボンを同時に本実施例に係るハンガーに掛ける場合は、この隙間dが広い方が挟みやすくなる。
【0045】
ズボンのずり落ち防止の摩擦力は、上述したように、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bの、鉛直方向の長さh、幅方向の長さw、及び、互いの隙間dに加え、第1矜持片4A及び第2矜持片4Bの弾力に大きく左右される。
【0046】
これらの組み合わせを変えることによって、無数に近いさまざまなずり落ち防止の摩擦力を持つハンガーを作成することができる。
【0047】
これら第1矜持片4A及び第2矜持片4Bの、鉛直方向の長さh及び幅方向の長さwの異なるハンガーの使用の際の選択では、ズボンの繊維の種類の違いや織り方の違いによる摩擦力の違いを考慮し、第1矜持片4Aと第2矜持片4Bとの隙間dの長さの異なるハンガーの選択では、主に掛けるズボンの本数を考慮する。
【0048】
摩擦力の大きさは、主に材質特に表面の性状、接触面への圧力、接触面積に依存する。材質では、凹凸すなわち表面の滑らかさの影響が大きく、金属、木材、プラスティックに比べて布でははるかに大きな摩擦力を生む。布でも、繊維の種類や織り方により接触面での摩擦力は異なり、合成繊維であるナイロンやポリエステルの接触面の摩擦力より、絹、綿、羊毛の順で摩擦力は大きくなる。織り方では糸の太い方が、また縦糸と横糸の間隔が大きい方が摩擦力は大きくなる。
【0049】
ズボンの材質、織り方、厚さによって布と布の接触面の摩擦力は異なり、ズボンによってずり落ちやすさに違いが生まれる。本実施例に係るハンガー群では、第1矜持片4Aと第2矜持片4Bとの隙間d、鉛直方向の長さh、及び、幅方向の長さwの組み合わせがそれぞれ異なる複数のハンガーを有することで、ズボンの種類に合わせた、さまざまなずり落ち防止の摩擦力を持つ多様なハンガーを提供することができる。
【0050】
なお本実施例に係るハンガー群は、後述する実施例3にも適用可能である。
【0051】
[実施例3]
本実施例に係るハンガーは、実施例1に係るハンガーの構成の一部を変更したものである。以下では、実施例1と同様の部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0052】
図5は本実施例に係るハンガーの部分拡大図であり、
図6は
図5のc-c矢視図であり、
図7は
図5のd-d矢視図である。本実施例に係るハンガーは、主たる構成として、フック部1、肩部2、横杆3、及び、矜持部5を備えている。
【0053】
矜持部5は、肩部2の幅方向端部(例えばY2)に固定されるものであり、第1矜持片4A、第2矜持片4B、及び、固定器具4Dを備えている。
【0054】
固定器具4Dは、その長手方向を鉛直方向と平行させた状態において、肩部2の一端及び横杆3の一端、又は、肩部2の他端及び横杆3の他端を摺動させながら挿入可能な貫通穴20が形成された棒状部材である。貫通穴20に肩部2の一端及び横杆3の一端、又は、肩部2の他端及び横杆3の他端を挿入することで、固定器具4Dの上端22を肩部2に掛け、固定することができる。
【0055】
ただし、上述の固定については、図示していないが、接着剤やクリップ等を用いて実現されてもよく、あるいは、肩部2に突起や凹み等の係止部分を設けることによって実現されるものとしてもよい。
【0056】
また、固定器具4Dの上端22を肩部2に掛けて固定した状態において、固定器具4Dの下端21が横杆3の端部(
図5~7ではY2側の端部)の下方に位置し、当該下方において、第1矜持片4Aの一端11、及び、第2矜持片4Bの一端12を連結する。
【0057】
なお、本実施例においては、フック部1、肩部2、及び、横杆3は一体的に形成されるものとし、矜持部5は別体として形成されるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ベルトを掛けたままのズボンや複数のズボンを同時に掛けた場合に度々起こる横杆からのずり落ちを防止するハンガーとして、一般家庭やホテルで利用価値が高い。
【符号の説明】
【0059】
1 フック部
2 肩部
3 横杆
4,5 矜持部
4A 第1矜持片
4B 第2矜持片
4C 連設部
4D 固定器具
11 (第1矜持片の)一端
12 (第2矜持片の)一端
11 (第1矜持片の)他端
12 (第2矜持片の)他端
20 貫通穴
21 (固定器具の)下端
22 (固定器具の)上端