(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064202
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】搬送管理システム、搬送管理装置及び搬送管理方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
B65G1/137 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174332
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】興津 弘道
(72)【発明者】
【氏名】谷島 耶麻斗
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 俊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 学
(72)【発明者】
【氏名】石川 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】森山 尭晶
(72)【発明者】
【氏名】平安 哲也
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB01
3F522BB25
3F522BB34
3F522CC01
3F522CC03
3F522JJ02
3F522LL11
3F522LL28
(57)【要約】
【課題】ピッキングを行うステーションを動的に決定・変更し、ステーション間の負担を平準化する。
【解決手段】本発明の搬送管理システムは、物品を保管する棚と、前記棚から前記物品をピッキングする複数のステーションと、前記ステーションでピッキングされる前記物品の数量に基づき算出される仕掛量に応じて、複数の前記ステーションのうち前記棚の搬送先となる前記ステーションを決定する搬送管理装置と、を備えること、を特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保管する棚と、
前記棚から前記物品をピッキングする複数のステーションと、
前記ステーションでピッキングされる前記物品の数量に基づき算出される仕掛量に応じて、複数の前記ステーションのうち前記棚の搬送先となる前記ステーションを決定する搬送管理装置と、を備えること、
を特徴とする搬送管理システム。
【請求項2】
前記搬送管理装置は、
あるステーションの仕掛量が所定の基準を満たす程度に大きい場合、当該ステーションを当該ステーションから遠い保管位置にある前記棚の搬送先として決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の搬送管理システム。
【請求項3】
前記搬送管理装置は、
あるステーションの仕掛量が所定の基準を満たす程度に小さい場合、当該ステーションを当該ステーションから近い保管位置にある前記棚の搬送先として決定すること、
を特徴とする請求項2に記載の搬送管理システム。
【請求項4】
前記搬送管理装置は、
前記棚を搬送する搬送車が所定の領域に到着した場合、到着した時点における前記決定したステーションの仕掛量に応じて前記決定したステーションを搬送先とすることの可否を決定すること、
を特徴とする請求項3に記載の搬送管理システム。
【請求項5】
前記搬送管理装置は、
前記棚を搬送する搬送車が所定の領域に到着した場合、到着した時点における前記決定したステーションの仕掛量及び当該棚が前記決定したステーションに課す仕掛量に応じて前記決定したステーションを搬送先とすることの可否を決定すること、
を特徴とする請求項4に記載の搬送管理システム。
【請求項6】
前記搬送管理装置は、
前記決定したステーションの近辺にあり、所定の基準を満たす程度に仕掛量が小さい他のステーションを変更後の搬送先とすること、
を特徴とする請求項5に記載の搬送管理システム。
【請求項7】
前記搬送管理装置は、
複数の前記ステーションのそれぞれにおいてピッキングが行われる前記棚の順番を、前記仕掛量に応じて時系列で変更すること、
を特徴とする請求項6に記載の搬送管理システム。
【請求項8】
前記仕掛量は、
さらに、ピッキングされる物品の作業負担、及び、ピッキングを行う作業員の作業効率に基づき算出されること、
を特徴とする請求項7に記載の搬送管理システム。
【請求項9】
前記仕掛量は、
さらに、1つの前記棚から1回のピッキング機会にピッキングすることができる物品の種類の数であるヒット率に基づき算出されること、
を特徴とする請求項8に記載の搬送管理システム。
【請求項10】
物品を保管する棚及び前記棚から前記物品をピッキングする複数のステーションを備える倉庫において、前記ステーションでピッキングされる前記物品の数量に基づき算出される仕掛量に応じて、複数の前記ステーションのうち前記棚の搬送先となる前記ステーションを決定するステーション管理部を備えること、
を特徴とする搬送管理装置。
【請求項11】
搬送管理装置のステーション管理部は、
物品を保管する棚及び前記棚から前記物品をピッキングする複数のステーションを備える倉庫において、前記ステーションでピッキングされる前記物品の数量に基づき算出される仕掛量に応じて、複数の前記ステーションのうち前記棚の搬送先となる前記ステーションを決定すること、
を特徴とする搬送管理装置の搬送管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送管理システム、搬送管理装置及び搬送管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注文に係る物品を顧客に迅速に届けるためのインフラ施設の1つとして、倉庫が存在する。倉庫では、メーカ等から受け取られた物品が一旦保管される。その後注文が発生すると、注文に係る物品が倉庫から取り出され、梱包されたうえで顧客あて発送される。
【0003】
前記した物品に対する一連の各工程のうち、特に物品の取り出し(“ピッキング”とも呼ばれる)を効率的に行うことが倉庫を運営する企業にとって重要な経営戦略となる。例えば、物品が保管されている棚を複数のステーションのいずれかに搬送し、作業員がその棚から注文に係る物品をピッキングする。ピッキングが行われる複数のステーションが存在する場合、各ステーション間の仕掛量(負担)を平準化することが、倉庫全体の作業効率を向上させるためには重要である。
【0004】
特許文献1のオーダー管理装置は、複数のオーダーをまとめて1つのオーダー組を作成する。1つのオーダーは、物品の種類とその配送先からなる。当該オーダー管理装置は、1つのオーダー組をステーションに割り当て、そのオーダー組に含まれる物品をステーションに搬送する指示を搬送車に送信する。当該オーダー管理装置は、例えば、物品の種類が異なっていても配送先が同じである複数のオーダーから1つのオーダー組を作成することによって、物品が格納された棚がステーションに搬送される回数を最小にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のオーダー管理装置は、ステーションごとに搬送指示を送信した搬送車の数を計算してはいる。しかしながら、搬送車の数がステーションの負担を正確に表しているとは言えない。さらに、一旦決定されたステーションの負担が変化した場合に、ステーションを変更することについては言及していない。
そこで、本発明は、ピッキングを行うステーションを動的に決定・変更し、ステーション間の負担を平準化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送管理システムは、物品を保管する棚と、前記棚から前記物品をピッキングする複数のステーションと、前記ステーションでピッキングされる前記物品の数量に基づき算出される仕掛量に応じて、複数の前記ステーションのうち前記棚の搬送先となる前記ステーションを決定する搬送管理装置と、を備えること、を特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明は、ピッキングを行うステーションを動的に決定・変更し、ステーション間の負担を平準化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、メーカ等から倉庫に物品が入荷された後、注文に応じて物品をピッキングする例である。しかしながら、本発明は、例えばメーカ等が自社内で部品を保管・管理する場合にも適用可能である。なお、本実施形態の“物品”は、取引の対象になる商品、それ以外の製品、部品等を含む概念である。
【0011】
(倉庫のレイアウト)
図1は、倉庫のレイアウトの斜視図である。倉庫は、保管スペース5を有する。保管スペース5は、柵6で囲まれている。保管スペース5内には、複数の棚9が縦横方向に整然と格子状に配置されている。棚9は、2×7個又は1×7個の棚9からなる“島”を形成している。島の個数は、任意である。保管スペース5内には、複数の搬送車3が存在する。搬送車3は、自走する動力及び棚9を下から支持する構造を有し、棚9の下部に潜り込んで棚9を搬送する。保管スペース5の周辺の任意の箇所において柵6が切れており、当該箇所に隣接して複数のステーション7が存在する。なお、保管スペース5とその他の領域とを柵6で物理的に区切ることは、必須ではない。
【0012】
図1の例では、一方のステーション7に、1個の棚9が保管スペース5の島から搬送されて来ている。作業員8は、棚9から物品を取り出している。当該作業は、注文ごとに当該注文に係る物品を棚9から取り出す作業であり、“ピッキング作業”又は単に“ピッキング”と呼ばれる。作業員8は、ピッキングした物品を仕分棚(図示せず)等に移し替える。棚9の上下方向の4面のうち、物品の出し入れが可能な面は、“間口面”と呼ばれる。ステーション7において、間口面が柵6の線に平行になり作業員8に対向するように、棚9は配置される。
【0013】
図2は、倉庫のレイアウトの平面図である。
図2の倉庫は、説明の都合上、
図1の倉庫に比して、島の数、島を構成する棚9の数、ステーション7の数等において細かに異なるが、本質的には
図1の倉庫と同じものである。
図2においては、搬送車3の記載は省略されている。
図1においてはステーションに符号“7”が付されているが、
図2においてはその符号は略され、その代わりにステーションに“1”、“2”及び“3”の番号が付されている。以降、
図2に沿って、搬送車3によって搬送される棚9の動きを説明する。
【0014】
棚9を示す正方形の内部に記された数字“1”、“2”及び“3”は、その棚9の搬送先であるステーション1、ステーション2及びステーション3を示している。棚9aは、ステーション1を搬送先としてある島から搬送され始めた。その後、棚9aは、搬送先見直し領域41に差し掛かった。搬送管理装置1は、このとき搬送先を見直したが、結果的に見直し後の搬送先は、同じステーション1であった。その後、棚9aは、ステーション1に搬送された。
【0015】
棚9bは、ステーション2を搬送先としてある島から搬送され始めた。その後、棚9bは、搬送先見直し領域42に差し掛かった。搬送管理装置1は、このとき搬送先を見直した。その結果、搬送先は、ステーション1に変更された。その後、棚9bは、ステーション1に搬送された。仮に、当該変更がなければ、棚9bは、ステーション2の近辺でL字型をなしている複数の棚9の列の末尾に並ぶことになっていた。つまり、当該変更は、ステーション2に負担が掛かるのを避けるための措置である。
【0016】
棚9cは、ステーション3を搬送先としてある島から搬送され始めた。その後、棚9cは、搬送先見直し領域43に差し掛かった。搬送管理装置1は、このとき搬送先を見直した。その結果、搬送先は、ステーション2に変更された。その後、棚9cは、ステーション2に搬送された。仮に、当該変更がなければ、棚9cは、ステーション3の近辺でL字型をなしている複数の棚9の列の末尾に並ぶことになっていた。つまり、当該変更は、ステーション3に負担が掛かるのを避けるための措置である。
図2では表現されていないが、棚9cが搬送先見直し領域42に差し掛かったとき、搬送管理装置1は、棚9cの搬送先を、ステーション1に再度変更することもできる。
【0017】
(搬送管理装置の構成)
図3は、搬送管理装置1の構成等を説明する図である。搬送管理装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を有する。これらの装置は、バスで相互に接続されている。補助記憶装置15は、物品情報31、注文情報32、搬送順情報33、棚情報34及びステーション情報35(いずれも詳細後記)を格納している。
【0018】
主記憶装置14における入出力処理部21及びステーション管理部22は、プログラムである。以降において、“○○部は、”と動作主体を記した場合、それは、中央制御装置11が補助記憶装置15から各プログラムを読み出し、主記憶装置14にロードしたうえで各プログラムの機能(詳細後記)を実現することを意味する。搬送管理装置1の補助記憶装置15は、搬送管理装置1から独立した構成となっていてもよい。
【0019】
搬送管理装置1は、有線又は無線のネットワーク4(構内専用回線を含む)を介して、搬送車制御装置2及び1又は複数の搬送車3に接続されている。搬送車制御装置2は、ネットワーク4を介して搬送車3を制御する。搬送車3は、駆動輪を回転させる電動機、棚9を持ち上げる荷役台の高さを調節する電動機、これらの電動機に給電する蓄電池、センサ、及び、車載コンピュータを有する(図示せず)。棚9(
図1)、ステーション7(
図1)及び搬送管理装置1は、搬送管理システムを構成する。
【0020】
(物品情報)
図4は、物品情報31の一例である。物品情報31においては、物品ID欄101に記憶された物品IDに関連付けて、作業負担値欄102には作業負担値が、保管数量欄103には保管数量が、棚ID欄104には棚IDが、棚位置欄105には棚位置が記憶されている。
【0021】
物品ID欄101の物品IDは、物品の種類(個体ではない)を一意に特定する識別子である。説明の単純化のため、本実施形態では、1つの容器に1種類の物品のみが保管され、その容器が棚9に格納されるものとする。
図1において棚9に格納されている9個(3×3)の引き出し状の保管箱が、ここでの容器である。
【0022】
作業負担値欄102の作業負担値は、その物品を1個ピッキングするため生じる作業負担を示す任意の値である。“#”は、異なる値を省略的に示している(以下同様)。作業負担値の例として、以下が挙げられる。
・物品1個をピッキングするのに必要な標準時間
・物品1個をピッキングするのに必要な標準工数
・物品1個をピッキングするのに必要な人件費
・物品1個をピッキングするのに必要な光熱費
【0023】
保管数量欄103の保管数量は、容器に保管されている物品の数量である。
棚ID欄104の棚IDは、棚9を一意に特定する識別子である。
棚位置欄105の棚位置は、保管スペース5の床面上における棚9の二次元座標値である。
【0024】
(注文情報)
図5は、注文情報32の一例である。注文情報32においては、注文ID欄111に記憶された注文IDに関連付けて、物品ID欄112には物品IDが、注文数量欄113には注文数量が、顧客ID欄114には顧客IDが、搬送車ID欄115には搬送車IDが、ステーションID欄116にはステーションIDが、搬送指示時刻欄117には搬送指示時刻が記憶されている。
【0025】
注文ID欄111の注文IDは、顧客からの注文を一意に特定する識別子である。注文とは、物品の購入申し込みである。
物品ID欄112の物品IDは、
図4の物品IDと同じであるが、ここでは特に、注文があった物品を特定する。
注文数量欄113の注文数量は、顧客が注文した物品の数量である。
顧客ID欄114の顧客は、物品を注文した顧客を一意に特定する識別子である。
搬送車ID欄115の搬送車IDは、搬送車3を一意に特定する識別子である。
【0026】
ステーションID116欄のステーションIDは、ステーション7を一意に特定する識別子である。
搬送指示時刻欄117の搬送指示時刻は、搬送管理装置1が搬送車3に対して注文に係る物品が保管されている棚9をいずれかのステーションに搬送する旨の指示を送信した時刻である。
【0027】
搬送管理装置1のステーション管理部22は、自身が搬送車3に送信した情報及び搬送車3から受信した情報に基づき、注文情報32の情報を最新の状態に維持する。
【0028】
(搬送順情報)
図6は、搬送順情報33の一例である。搬送順情報33においては、ステーションID欄121に記憶されたステーションIDに関連付けて、搬送順欄122には搬送順が、時刻欄123には時刻が記憶されている。
ステーションID欄121のステーションIDは、
図5のステーションIDと同じである。
【0029】
搬送順欄122の搬送順は、そのステーションに搬送される棚の棚IDを、ピッキングが行われる順に並べたものであり、搬送指示時刻(
図5の欄117)を基準にして、保管位置からステーションまでの距離を勘案して決定される。ここでの棚は、搬送先のステーションを既に割り当てられたうえで、島の内部、又は、島からステーションに向かう経路上に存在する。したがって、特に搬送先の見直しがなければ、ここでの搬送順“1、2、3、・・・”は、
図2におけるL字型の列に並ぶ棚9の先頭からの順番となる。もちろん、搬送順情報33に現れた棚のうち順位が早い(小さい)ものは、既に列に並んでいる場合もある。棚IDの前に“●”又は“○”が付される場合がある。“●”は、その棚に対して初めて搬送先のステーションが割り当てられたことを示す。“○”は、その棚に対して割り当てられたステーションが変更されたことを示す。
時刻欄123の時刻は、搬送順情報33のレコードが作成された時刻である
【0030】
搬送管理装置1のステーション管理部22は、自身が搬送車3に送信した情報及び搬送車3から受信した情報に基づき、搬送順情報33の情報を最新の状態に維持する。
【0031】
図6を見ると、例えば以下のことがわかる。
・ある日の10時04分00秒、ステーション“F01”には、棚“B01”、“B02”及び“B06”がその順で並ぶ予定であった(既に並んでいるものもある。以下同様。)。そのうち、棚“B06”は、10時04分00秒に初めて搬送順情報33に現れた。棚“B01”及び“B02”は、10時04分00秒に先立つ直前の搬送先見直し機会において既に搬送順情報33に現れていた。
【0032】
・その日の10時04分00秒、ステーション“F02”には、棚“B03”、“B04”、“B05”及び“B07”がその順で並ぶ予定でいた。そのうち、棚“B07”は、10時04分00秒に初めて搬送順情報33に現れた。棚“B03”、“B04”及び“B05”は、10時04分00秒に先立つ直前の搬送先見直し機会において既に搬送順情報33に現れていた。
【0033】
・その日の10時06分00秒、ステーション“F01”には、棚“B02”、“B06”及び“B07”がその順で並ぶ予定でいた。そのうち、棚“B07”の搬送先は、10時06分00秒にステーション“F01”に変更された。棚“B01”は、ピッキングが終了した後、ステーション“F01”から島に戻っていた。
【0034】
・その日の10時06分00秒、ステーション“F02”には、棚“B04”及び“B05”がその順で並ぶ予定でいた。棚“B03”は、ピッキングが終了した後、ステーション“F01”から島に戻っていた。
【0035】
(棚情報)
図7は、棚情報34の一例である。棚情報34においては、棚ID欄131に記憶された棚IDに関連付けて、現在位置欄132には現在位置が、現在状態欄133には現在状態が、距離欄134には距離が記憶されている。
棚ID欄131の棚IDは、
図4の棚IDと同じである。
現在位置欄132の現在位置は、保管スペース5の床面上の棚9の現在位置の二次元座標値である。
図4の棚位置は、棚9が戻るべき“島”内の位置(保管位置)を示す。それに対し、
図7の現在位置は、棚9が搬送車3によって保管位置とステーション7との間を搬送されているときの一時的な位置である。搬送車3は、自身が搬送中の棚9の棚ID及び自身の現在位置をピッキング管理装置1にリアルタイムで送信する。
【0036】
現在状態欄133の現在状態は、棚9の現在の状態である。その棚9を搬送する搬送車3の現在位置が保管位置に一致する場合、現在状態は“保管スペースで待機中”となる。搬送車3の現在位置がステーション“F〇〇”に隣接するピッキングのために指定された位置である場合、現在状態は“F〇〇でピッキング中”となる。搬送車3の現在位置が保管位置からステーション7に向かう経路上にある場合、現在状態は“搬送中”となる。搬送車3の現在位置がステーション7から保管位置に向かう経路上にある場合、現在状態は“返却中”となる。現在状態“F〇〇に到着しピッキング待ち”は、“搬送中”から“F〇〇でピッキング中”に遷移する間の列に並んでいる状態である。
【0037】
距離欄134の距離は、棚9と各ステーションとの間の距離を示すベクトルである。ベクトルの次元は、ステーションの数に等しい。例えば現在、棚“B01”の距離が“(10,20,30)”であるとき、棚B01は現在、ステーション1から“10”、ステーション2から“20”かつステーション3から“30”離れた位置にある。
【0038】
(ステーション情報)
図8は、ステーション情報35の一例である。ステーション情報35においては、ステーション棚ID欄141に記憶されたステーションIDに関連付けて、待機棚数欄142には待機棚数が、作業負担合計値欄143には作業負担合計値が、作業員ID欄144には作業員IDが、作業員効率欄145には作業員効率が、仕掛量欄146には仕掛量が記憶されている。
【0039】
ステーション棚ID欄141のステーションIDは、
図5のステーションIDと同じである。
待機棚数欄142の待機棚数は、ステーション“F○○”について、現在状態が“F〇〇に到着しピッキング待ち”又は“F○○でピッキング中”である棚の数である。待機棚数が、“F○○”を搬送先として搬送中である棚の数を含んでもよい。
作業負担合計値欄143の作業負担合計値は、作業負担値(
図4の欄102)に対し注文に係る物品の注文数量(
図5の欄113)を乗算した値を物品ごとに合計し、その合計を待機棚数(
図8の欄142)としてカウントされている棚について合計した値である。
作業員ID欄144の作業員IDは、作業員8を一意に特定する識別子である。
【0040】
作業員効率欄145の作業員効率は、作業員が過去にピッキングしたすべての種類の物品の数量を、その作業員の過去の累計作業時間で除算した値である。作業員効率は、例えばすべての作業員の平均を“50”とする偏差値のような相対値であってもよい。
仕掛量欄146の仕掛量は、作業負担合計値を作業員効率で除算した値である。待機棚数は、現在のステーションの負担を表している。しかしながら、作業負担合計値は、実際にピッキングされる物品の種類及び数量に応じた作業負担(標準時間等)に基づき、正確に負担を表している。さらに、仕掛量は、ピッキングする作業員の作業効率に基づき、より正確に負担を表している。
【0041】
1つの棚からは、少なくとも1種類の物品をピッキングすることができる。偶然にも左右されるが、1つの棚から複数の種類の物品をピッキングすることができれば、作業効率は大きく向上する。搬送管理装置1のステーション管理部22は、仕掛量をヒット率で除算した値を補正後の仕掛量とし、仕掛量欄146に併せて記憶してもよい。ヒット率とは、1つの棚から1回のピッキング機会にピッキングすることができる物品の種類の数である。ヒット率は、注文情報32(
図5)に基づき、棚ごとに定義され、棚の搬送先となるステーションごとに集計され得るものとする。
【0042】
(処理手順)
図9は、処理手順のフローチャートである。処理手順が開始される前提として、前記した注文情報32(
図5)及び搬送順情報33(
図6)に加え、物品情報31(
図4)、棚情報34(
図7)及びステーション情報35(
図8)も常時最新の状態で補助記憶装置15に格納されているものとする。搬送管理装置1の入出力処理部21が、注文情報32に新たなレコード(注文ID単位)が記憶されたことを認識したのを契機に、以下の処理が始まる。なお、この段階では、新たなレコードの搬送車ID欄115、ステーションID欄116及び搬送指示時刻欄117は、空欄である。
【0043】
ステップS201において、搬送管理装置1のステーション管理部22は、搬送対象の棚を特定する。具体的には、ステーション管理部22は、注文情報32(
図5)の新たなレコード及び物品情報31(
図4)を参照し、注文に係る物品が保管されている棚を特定する。説明の便宜のため、ここでは、棚“B07”が特定されたとする。
【0044】
ステップS202において、ステーション管理部22は、ステーションごとの仕掛量を取得する。具体的には、ステーション管理部22は、ステーション情報35(
図8)を参照し、すべてのステーションの仕掛量を取得する。
【0045】
ステップS203において、ステーション管理部22は、仕掛量が閾値未満のステーションが存在するか否かを判断する。具体的には、ステーション管理部22は、ステップS202において取得した仕掛量のうちに所定の閾値未満であるものが存在する場合(ステップS203“Yes”)、ステップS204に進む。ステーション管理部22は、それ以外の場合(ステップS203“No”)、ステップS205に進む。
【0046】
ステップS204において、ステーション管理部22は、仕掛量が閾値未満のステーションのうち棚から最も近いものを特定する。具体的には、ステーション管理部22は、棚情報34(
図7)を参照し、仕掛量が閾値未満であるステーションのうち、棚“B07”との距離が最も小さいものを特定する。ここで特定されたステーションは、“当初ステーション”とよばれる。
【0047】
ステップS205において、ステーション管理部22は、仕掛量が閾値以上のステーションのうち棚から最も遠いものを特定する。具体的には、ステーション管理部22は、棚情報34(
図7)を参照し、仕掛量が閾値以上であるステーションのうち、棚“B07”との距離が最も大きいものを特定する。ここで特定されたステーションも、“当初ステーション”とよばれる。
【0048】
ステップS206において、ステーション管理部22は、搬送車に搬送先のステーションを送信する。具体的には、第1に、ステーション管理部22は、任意の方法で空き状態の搬送車3を特定する。
第2に、ステーション管理部は、当初ステーションに棚“B07”を搬送する指示を、搬送車制御装置2を介して、ステップS206の“第1”において特定した搬送車に対して送信する。その後、搬送車が走行・搬送している間に時間が経過する。その間に他の注文が同時並行的になされることによって各ステーションの仕掛量は、時々刻々と変化している。
【0049】
ステップS207において、ステーション管理部22は、搬送車がステーション付近の特定位置に到着した旨を受信する。具体的には、ステーション管理部22は、棚“B07”が、搬送先見直し領域41、42又は43のいずれかに到着した旨の情報を、ステップS206の“第1”において特定した搬送車から搬送車制御装置2を介して受信する。
【0050】
ステップS208において、ステーション管理部22は、当初ステーションの仕掛量が閾値以上であるか否かを判断する。具体的には、第1に、ステーション管理部22は、ステーション情報35(
図8)を参照し、当初ステーションの現在の仕掛量を取得する。
第2に、ステーション管理部22は、当初ステーションの仕掛量が所定の閾値以上である場合(ステップS208“Yes”)、ステップS209に進む。ステーション管理部22は、それ以外の場合(ステップS208“No”)、ステップS211に進む。
【0051】
ステップS209において、ステーション管理部22は、周辺のステーションの仕掛量が閾値未満であるか否かを判断する。具体的には、第1に、ステーション管理部22は、ステーション情報35(
図8)を参照し、当初ステーションの周辺のステーションの現在の仕掛量を取得する。周辺のステーションとは、例えば、当初ステーションの両隣のステーションである。
第2に、ステーション管理部22は、周辺のすべてのステーションの仕掛量が所定の閾値以上である場合(ステップS209“No”)、ステップS211に進む。ステーション管理部22は、それ以外の場合(ステップS209“Yes”)、最も仕掛量が小さいステーションのステーションIDを保持してステップS211に進む。
【0052】
ステップS210において、ステーション管理部22は、搬送車に変更後のステーションを送信する。具体的には、ステーション管理部は、ステップS209の“第2”において一時的に保持したステーションIDのステーションに棚“B07”を搬送する指示を、搬送車制御装置2を介して、ステップS206の“第1”において特定した搬送車に対して送信する。
【0053】
ステップS211において、ステーション管理部22は、搬送先のステーションをそのまま維持する。具体的には、ステーション管理部は、当初ステーションに棚“B07”を搬送する指示を、搬送車制御装置2を介して、ステップS206の“第1”において特定した搬送車に対して再度送信する。その後、処理手順を終了する。
【0054】
(変形例1)
前記のステップS203~S205は、ステーション管理部22が所与の棚に対して、その搬送先となるステーションを決定する一例に過ぎない。より一般的には、ステーション管理部22は、仕掛量がより大きいステーションがそのステーションからの距離が遠い棚の搬送先となりやすく、仕掛量がより小さいステーションがそのステーションからの距離が近い棚の搬送先となりやすくする。そのために、例えば、ステーション管理部22は、“スコア=W1×距離+W2×仕掛量”のような数式で算出したスコアに基づき、搬送先のステーションを決定してもよい。ここで“W1”及び“W2”は、ユーザが指定する重み兼換算係数であり、“W1”及び“W2”の正負の符号は任意である。
【0055】
一例として、ステーション管理部22は、所与の棚の搬送先となるステーションの仕掛量が所定の基準を満たす程度に大きい場合、当該ステーションに割り当てられ将来的に実行される搬送指示の順序を、当該ステーションから保管位置までの距離が所定の基準を満たす程度に大きい棚を優先して当該ステーションに搬送するように変更してもよい。
【0056】
その場合、あるステーションの仕掛量が大きく、既に到着している棚に対する作業に要する時間が比較的長いと予想される場合、当該ステーションの遠くに保管されており搬送に時間を要する棚を優先的に搬送することによって、当該ステーション前における棚の待機時間の合計を削減でき、所定の期間における当該ステーションの作業効率向上に寄与する。
【0057】
他の一例として、ステーション管理部22は、所与の棚の搬送先となるステーションの仕掛量が所定の基準を満たす程度に小さい場合、当該ステーションに割り当てられ将来的に実行される搬送指示の順序を、当該ステーションから保管位置までの距離が所定の基準を満たす程度に小さい棚を優先して当該ステーションに搬送するように変更してもよい。
【0058】
その場合、あるステーションの仕掛量が小さく、既に到着している棚に対する作業に要する時間が比較的短いと予想される場合、当該ステーションの近くに保管されており搬送に時間のかからない棚を優先的に搬送することによって、当該ステーションが作業をせずに待機する時間の増加を抑制でき、所定の期間における当該ステーションの作業効率向上に寄与する。
【0059】
(変形例2)
前記のステップS208の“第2”において、ステーション管理部22は、当初ステーションの仕掛量(全体仕掛量)をその閾値と比較している。しかしながら、ステーション管理部22は、棚“B07”が当初ステーションに課する仕掛量(個別仕掛量)を算出し、個別仕掛量が全体仕掛量に占める割合が所定の閾値以上である場合、ステップS209に進み、それ以外の場合、ステップS211に進んでもよい。
【0060】
(本実施形態の効果)
本実施形態の搬送管理システムの効果は以下の通りである。
(1)搬送管理システムは、棚の搬送先であるステーションをステーションの仕掛量に応じて決定することができる(平準化)。
(2)搬送管理システムは、仕掛量が大きいステーションに対して遠くから棚が搬送されるように決定する(平準化のための時間かせぎ)。
(3)搬送管理システムは、仕掛量が小さいステーションに対して近くから棚が搬送されるように決定する(同上)。
(4)搬送管理システムは、一旦決定した搬送先のステーションを見直すことができる(平準化の徹底)。
【0061】
(5)搬送管理システムは、一旦決定したステーションに対して個別の棚が課する仕掛量に応じてステーションを見直すことができる(同上)。
(6)搬送管理システムは、一旦決定したステーションの近辺にあるステーションに搬送先を変更することができる(搬送経路延長の制限)。
(7)搬送管理システムは、各ステーションにおいてピッキングが行われる棚の順番を変更することができる。
(8)搬送管理システムは、物品側の属性及び作業者側の属性に応じてステーションを決定することができる(平準化の精度向上)。
(9)搬送管理システムは、ヒット率に基づきステーションを決定することができる(同上)。
【0062】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 搬送管理装置
2 搬送車制御装置
3 搬送車
4 ネットワーク
5 保管スペース
6 柵
7 ステーション
8 作業員
9 棚
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 入出力処理部
22 ステーション管理部
31 物品情報
32 注文情報
33 搬送順情報
34 棚情報
35 ステーション情報