(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064262
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】打継面処理判定システム、及び打継面処理判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20230501BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20230501BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G01N33/38
E04G21/02 103Z
E04G21/02 ESW
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174430
(22)【出願日】2021-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・令和3年度全国大会 第76回年次学術講演会 講演概要(令和3年8月2日) ・令和3年度全国大会 第76回年次学術講演会(令和3年9月9日)
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間 康隆
(72)【発明者】
【氏名】和辻 総一郎
【テーマコード(参考)】
2E172
2G051
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DD00
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA08
2G051EA16
2G051ED04
2G051ED08
2G051ED11
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、コンクリート表面における骨材の分布状況を推定したうえで、客観的に打継面処理の良否を判定することができる打継面処理判定システム、及び打継面処理判定方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の打継面処理判定システムは、コンクリート表面を撮影した原画像に基づいて打継面処理の良否を判定するシステムであって、平滑化処理手段と骨材抽出手段を備えたものである。このうち平滑化処理手段は、原画像を平滑化処理することによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する手段であり、一方の骨材抽出手段は、第1平滑化画像と第2平滑化画像との画素値差分を求めるとともに画素値差分が骨材閾値を上回る部分を骨材部分として抽出する手段である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面を撮影した原画像に基づいて、打継面処理の良否を判定するシステムであって、
前記原画像を平滑化処理することによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する平滑化処理手段と、
前記第1平滑化画像と前記第2平滑化画像との画素値差分を求めるとともに、該画素値差分が骨材閾値を上回る部分を骨材部分として抽出する骨材抽出手段と、を備え、
前記第1平滑化画像は、前記第2平滑化画像よりも骨材が強調されるように平滑化処理されて生成された画像であり、
前記原画像に対応する対象領域に占める前記骨材部分の割合に基づいて、打継面処理の良否を判定し得る、
ことを特徴とする打継面処理判定システム。
【請求項2】
前記対象領域のうち前記骨材部分が占める骨材分布割合を算出するとともに、該骨材分布割合と処理度閾値とを照らし合わせることによって当該対象領域における打継面処理の程度を判定する処理度判定手段と、をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の打継面処理判定システム。
【請求項3】
あらかじめ段階的に2以上の前記処理度閾値が設定されることによって、打継面処理の処理の程度を表す打継処理度が3以上の段階で設定され、
前記処理度判定手段は、前記骨材分布割合と2以上の前記処理度閾値とを照らし合わせることによって、当該対象領域における前記打継処理度を判定する、
ことを特徴とする請求項2記載の打継面処理判定システム。
【請求項4】
前記処理度判定手段は、前記対象領域が分割された複数の分割対象領域ごとに、前記骨材分布割合を算出するとともに、当該分割対象領域における打継面処理の程度を判定する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の打継面処理判定システム。
【請求項5】
前記平滑化処理手段は、前記原画像をメディアンフィルタ処理することによって前記第1平滑化画像を生成し、
また前記平滑化処理手段は、前記第1平滑化画像の生成に用いたフィルタサイズよりも大きなフィルタサイズを用いて、前記原画像をメディアンフィルタ処理することによって前記第2平滑化画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の打継面処理判定システム。
【請求項6】
前記第1平滑化画像の生成に用いるフィルタサイズは、抽出しようとする最小の骨材を網羅するように設定され、
前記第2平滑化画像の生成に用いるフィルタサイズは、抽出しようとする最大の骨材よりも大きな範囲で設定される、
ことを特徴とする請求項5記載の打継面処理判定システム。
【請求項7】
コンクリート表面を撮影した原画像に基づいて、打継面処理の良否を判定する方法であって、
試験施工で形成された試験コンクリートの表面に対して打継面処理を行ったうえで該試験コンクリートの表面を撮影した指標画像を取得するとともに、該指標画像を平滑化処理することによって第1平滑化指標画像と第2平滑化指標画像を生成する指標画像取得工程と、
前記第1平滑化指標画像と前記第2平滑化指標画像との画素値差分を求めるとともに、該画素値差分と前記指標画像とを対比することによって骨材部分として抽出するための骨材閾値を設定する骨材閾値設定工程と、
実施工で形成された本設コンクリートの表面に対して打継面処理を行ったうえで該本設コンクリートの表面を撮影して前記原画像を取得するとともに、該原画像を平滑化処理することによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する原画像取得工程と、
前記第1平滑化画像と前記第2平滑化画像との画素値差分を求めるとともに、該画素値差分が前記骨材閾値を上回る部分を骨材部分として抽出する骨材抽出工程と、を備え、
前記第1平滑化指標画像は前記第2平滑化指標画像よりも骨材が強調されるように平滑化処理されて生成された画像であって、前記第1平滑化画像は前記第2平滑化画像よりも骨材が強調されるように平滑化処理されて生成された画像であり、
前記原画像に対応する対象領域に占める前記骨材部分の割合に基づいて、打継面処理の良否を判定する、
ことを特徴とする打継面処理判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリートの打継面処理に関するものであり、より具体的には、コンクリート表面を撮影した画像に基づいて打継面処理の良否を判定することができる打継面処理判定システムと打継面処理判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは鋼材とともに最も重要な建設材料のひとつであり、ダム、トンネル、橋梁といった土木構造物や、集合住宅、オフィスビルなどの建築構造物をはじめ、様々な構造物に用いられている。このコンクリート構造物は、あらかじめ工場等で製作されて所定の場所まで運搬されることもあるが、土木構造物や建築構造物の場合、所定の場所(現場)で直接構築されることが多い。いずれにしろ、セメントと水、骨材、混和剤等を練り混ぜた状態のコンクリート(フレッシュコンクリート)を型枠の中に投入し、コンクリートの硬化を待って型枠を外すことでコンクリート構造物は構築される。
【0003】
フレッシュコンクリートは、アジテータ車からシュートを介して流し込んだり、コンクリートポンプ車によってホースから落下させたり、事前に設置された配管を通じて所定位置に流し込んだり、場合によっては作業者がスコップではねたりすることによって型枠内に投入される。型枠内に投入されたフレッシュコンクリートは、振動機(振動バイブレータ)を利用した振動が与えられ、この振動に伴って液状化が進行するとコンクリート内の気泡が上昇して外部に抜けだすとともに内部の骨材とモルタルが再配置され、その結果、コンクリートは締め固められる。
【0004】
ダムや大型擁壁などある程度の高さを有するコンクリート構造物を構築するにあたっては、コンクリートの供給能力やコンクリートポンプの配置上の制約といった施工条件から一度に(つまり、全高さを同時に)コンクリートを打込むことが難しいこともある。この場合、コンクリート供給能力などの条件を下に、あらかじめ高さ方向のブロック割(いわゆる、リフト割)を計画したうえでコンクリートを打込むのが一般的である。ただし、このように時間をおいて上下層ブロックのコンクリートを打ち継ぐ(打ち重ねる)と、上下層ブロック間には打継目(特に、水平打継目)が生ずることとなる。
【0005】
型枠内にフレッシュコンクリートが打込まれると、材料のうち骨材など比較的重い粒子は下方へ沈んでいく一方、セメントなどの比較的軽い粒子はブリーディング水と共に浮上していく傾向にある。また、浮上してきた軽い粒子がある程度コンクリート表面に溜まると、レイタンスと呼ばれる弱層や、品質の悪いコンクリート、あるいは緩んだ骨材の層が形成されることがある。そして、下層ブロックのコンクリート表面にこのようなレイタンス層などが形成された状態のまま上層ブロックのコンクリートを打込む(打ち継ぐ)と、いわば不連続面であるコールドジョイントが形成されるわけである。このコールドジョイントは、外観の点で劣るうえ、ひび割れの原因となるなど構造上の弱点となり、さらに止水の面においても弱点となる。
【0006】
そこで「コンクリート標準示方書-施工編-(以下、単に「標準示方書」という。)」では、「コンクリートを打ち継ぐ場合には、既に打ち込まれたコンクリートの表面のレイタンス、品質の悪いコンクリート、緩んだ骨材粒等を完全に取り除き、コンクリート表面を粗にした後、十分に吸水させなければならない。」と規定している。さらに標準示方書では、下層コンクリートと上層コンクリートとの境界面(以下、「打継面」という。)を処理するための手法を示している。例えば、既に打ち込まれた下層コンクリートの凝結が終了した後に、高圧の空気や水でコンクリート表面の薄層(レイタンスなど)を除去し、粗骨材粒を露出させる処理手法(グリーンカット)を挙げている。また、広い打継面に対してグリーンカットを実施する場合、一部のコンクリートで硬化が始まってしまうため処理が難しくなることから、あらかじめコンクリート表面にグルコ酸ナトリウム等を主成分とする凝結遅延剤等を散布することも推奨している。そのほか、水をかけながらワイヤブラシで表面を削る手法や、表面にサンドブラストを行った後に水洗する手法など、コンクリート強度に応じた種々の打継面処理の手法を示している。
【0007】
ところで、時間をかけて入念に打継面処理を行うと当然ながら打継面は良好となるが、粗雑に打継面処理を行ってしまうと打継面には適当な粗面が形成されずコールドジョイントを誘発する結果となり、また過度に打継面処理を行うと打継面には極端な凹凸面が形成され余計な労力と材料が失われる結果となる。そのため、打継面の状況を確認しながら打継面処理を行うことが求められる。従来、この打継面の良否判断は、豊富な経験をもとに熟練技術者が行っていた。しかしながら近年の建設業界は慢性的な人手不足という問題を抱えており、このような熟練技術者を確保することは容易ではない。とはいえ経験が十分でない技術者が打継面の良否を判断すると、誤った判断を行う結果、打継面の処理不足や過処理に伴う不都合が生じるおそれもある。
【0008】
そこで、技術者に頼ったいわば定性的な判断を必要とすることなく、判断する者の主観に依存することなくいわば定量的(客観的)に、コンクリートの打継面処理の良否を判断する種々の技術がこれまで提案されている。例えば特許文献1では、コンクリート表面を撮影した画像を利用することによって打継面処理の評価を行う技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示される技術は、打継面を撮像した画像データを複数の画像ブロックに分割するとともに、この画像ブロックごとに作成される輝度ヒストグラムと所定の閾値を対比することによって打継面処理の評価を行うものであり、いわば画像ブロックの輝度ヒストグラムに基づいてコンクリート表面における骨材の占有割合を推定する評価手法である。この技術によれば、技術者の主観に依存することなく客観的に打継面処理の評価が得られるため好適である。
【0011】
しかしながら特許文献1に開示される技術は、輝度ヒストグラムを基礎として骨材の存在を推定する手法であるものの、直接的に骨材の分布を推定するものではない。すなわち、コンクリート表面に分布された骨材を把握(あるいは推定)することなく、打継面処理の評価を行う手法である。そのため、判定結果を得た者はその判定結果の是非に関して直感的に判定することができず、仮に実際の状況からその判定結果に対して懐疑的であったとしても確認すべき手段はない。
【0012】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、コンクリート表面における骨材の分布状況を推定したうえで、客観的に打継面処理の良否を判定することができる打継面処理判定システム、及び打継面処理判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、原画像を平滑化処理することによって2種類の平滑化画像、すなわち骨材を強調した平滑化画像と骨材が目立たない平滑化画像を生成するとともに、これら2種類の平滑化画像の差分に基づいてコンクリート表面における骨材の分布状況を推定する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0014】
本願発明の打継面処理判定システムは、コンクリート表面を撮影した原画像に基づいて打継面処理の良否を判定するシステムであって、平滑化処理手段と骨材抽出手段を備えたものである。このうち平滑化処理手段は、原画像を平滑化処理することによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する手段であり、一方の骨材抽出手段は、第1平滑化画像と第2平滑化画像との画素値差分を求めるとともに画素値差分が骨材閾値を上回る部分を骨材部分として抽出する手段である。なお第1平滑化画像は、第2平滑化画像よりも骨材が強調されるように平滑化処理されて生成された画像である。そして、原画像に対応する対象領域に占める骨材部分の割合に基づいて、打継面処理の良否を判定することができる。
【0015】
本願発明の打継面処理判定システムは、処理度判定手段をさらに備えたものとすることもできる。この処理度判定手段は、対象領域のうち骨材部分が占める骨材分布割合を算出するとともに、骨材分布割合と処理度閾値とを照らし合わせることによって対象領域における打継面処理の程度を判定する手段である。
【0016】
本願発明の打継面処理判定システムは、打継面処理の処理の程度を表す打継処理度が3以上の段階で設定されるものとすることもできる。この場合、あらかじめ段階的に2以上の処理度閾値が設定され、また処理度判定手段は、骨材分布割合と2以上の処理度閾値とを照らし合わせることによって対象領域における打継処理度を判定する。
【0017】
本願発明の打継面処理判定システムは、分割対象領域(対象領域が分割された複数の領域)における打継面処理の程度を判定するものとすることもできる。この場合、処理度判定手段は、分割対象領域ごとに骨材分布割合を算出するとともに打継面処理の程度を判定する。
【0018】
本願発明の打継面処理判定システムは、原画像をメディアンフィルタ処理することによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成するものとすることもできる。なお第2平滑化画像を生成するにあたっては、第1平滑化画像の生成に用いたフィルタサイズよりも大きなフィルタサイズが用いられる。
【0019】
本願発明の打継面処理判定システムは、所定のフィルタサイズを用いたメディアンフィルタ処理を行うことによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成するものとすることもできる。例えば、第1平滑化画像の生成に用いるフィルタサイズは抽出しようとする最小の骨材を網羅するように設定され、第2平滑化画像の生成に用いるフィルタサイズは抽出しようとする最大の骨材よりも大きな範囲で設定される。
【0020】
本願発明の打継面処理判定方法は、コンクリート表面を撮影した原画像に基づいて打継面処理の良否を判定する方法であって、指標画像取得工程と骨材閾値設定工程、原画像取得工程、骨材抽出工程を備えた方法である。このうち指標画像取得工程では、打継面処理を施した試験コンクリート(試験施工で形成されたコンクリート)の表面を撮影した指標画像を取得するとともに、指標画像を平滑化処理することによって第1平滑化指標画像と第2平滑化指標画像を生成する。また骨材閾値設定工程では、第1平滑化指標画像と第2平滑化指標画像との画素値差分を求めるとともに、これら画素値差分と指標画像とを対比することによって骨材閾値(骨材部分として抽出するための閾値)を設定する。原画像取得工程では、打継面処理を施した本設コンクリート(実施工で形成されたコンクリート)の表面を撮影して原画像を取得するとともに、原画像を平滑化処理することによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する。骨材抽出工程では、第1平滑化画像と第2平滑化画像との画素値差分を求めるとともに、これら画素値差分が骨材閾値を上回る部分を骨材部分として抽出する。なお、第1平滑化指標画像は第2平滑化指標画像よりも骨材が強調されるように平滑化処理されて生成された画像である。そして、原画像に対応する対象領域に占める骨材部分の割合に基づいて、打継面処理の良否を判定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の打継面処理判定システム、及び打継面処理判定方法には、次のような効果がある。
(1)評価者の主観に依存することなく客観的に打継面処理の評価を行うことができる。その結果、力学性能と耐久性能に優れ、また止水性に優れ、さらに外観にも優れたコンクリート構造物を構築することができる。
(2)客観的な評価が可能となることから、豊富な経験を有する熟練技術者を確保する困難さを回避することができる。
(3)客観的な評価に加えて、評価の再現性、すなわち評価に対するトレーサビリティを確保することができることから、打継面処理の評価に対する信頼性が向上するとともに、説明責任を果たすことができるため顧客からの信頼も獲得することができる。
(4)試験的に本願発明を実施した結果に基づけば、コンクリート表面が乾燥している状態、湿潤している状態、いずれの状態であっても変わらず良好な判定結果が得られ、さらに正対することなく斜方向(例えば、正対角度45°)で撮影した原画像を用いても良好な判定結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本願発明の打継面処理判定システムの主な構成を示すブロック図。
【
図2】メディアンフィルタ処理における「フィルタ」を模式的に示すモデル図。
【
図3】「第1平滑化画像」と「第2平滑化画像」との画素値差分に基づく「差分画像」を模式的に示すモデル図。
【
図4】差分画像を分割して形成された「分割対象領域」を模式的に示すモデル図。
【
図5】本願発明の打継面処理判定システムの主な処理の流れを示すフロー図。
【
図6】本願発明の打継面処理判定システムの処理のうち、骨材閾値と処理度閾値を決定するまでの主な処理の流れを示すフロー図。
【
図7】本願発明の打継面処理判定方法の主な工程を示すフロー図。
【
図8】(a)は打継面処理判定システムを用いて乾燥状態のコンクリート表面の打継面処理度を判定した結果を示すモデル図、(b)は打継面処理判定システムを用いて湿潤状態のコンクリート表面の打継面処理度を判定した結果を示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明の打継面処理判定システム、及び打継面処理判定方法の実施の例を図に基づいて説明する。
【0024】
1.打継面処理判定システム
はじめに本願発明の打継面処理判定システムについて詳しく説明する。なお本願発明の打継面処理判定方法は、本願発明の打継面処理判定システムを用いて打継面処理の良否を判定する方法である。したがって、まずは本願発明の打継面処理判定システムについて説明し、その後に本願発明の打継面処理判定方法について説明することとする。
【0025】
図1は、本願発明の打継面処理判定システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の打継面処理判定システム100は、平滑化処理手段101と骨材抽出手段102を含んで構成され、さらに処理度判定手段103や出力手段104、原画像記憶手段105などを含んで構成することもできる。
【0026】
打継面処理判定システム100を構成する主な要素のうち平滑化処理手段101と骨材抽出手段102、処理度判定手段103は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、マウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを具備するもので、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。また出力手段104は、ディスプレイやプリンタなど画像等を出力するものであり、例えばパーソナルコンピュータのディスプレイを利用することができる
【0027】
本願発明では、コンクリート表面(つまり、打継面)に対してグリーンカットなど打継処理を施し、その状態のコンクリート表面を撮影した画像(以下、「原画像」という。)を利用することを一つの特徴としている。なお原画像は、人(例えば、作業者など)によって撮影することもできるし、移動可能な台車などに搭載されたデジタルカメラやデジタルビデオ等によって撮影することもできるし、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)に搭載されたデジタルカメラ等によって撮影することもできる。原画像記憶手段105は、この原画像を記憶するものであり、汎用的コンピュータの記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0028】
以下、打継面処理判定システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0029】
(平滑化処理手段)
平滑化処理手段101は、原画像記憶手段105から読み出した原画像を平滑化処理することによって、「第1平滑化画像」と「第2平滑化画像」を生成する手段である(
図1)。ここで平滑化処理とは、画像のうち目的とする物体を明確化したり、画像中のノイズを除去したりする目的で実行される処理であり、メディアンフィルタ処理や、平均化フィルタ、加重平均フィルタ、ガウシアンフィルタなどの手法を例示することができ、本願発明の打継面処理判定システム100においてもこれらの平滑化処理をはじめ従来用いられている種々の手法を採用することができる。
【0030】
平滑化処理のうちメディアンフィルタ処理は、
図2示すようにフィルタ(カーネルともいう。)を設定し、このフィルタを移動させながらそれぞれの画素における「画素値」を変換する処理である。ここで画素値とは、濃淡を表すグレースケールをはじめ、RGBやCMYKといった色情報、あるいはグレースケールと色情報の組み合わせによる値、つまり描画する際の基礎となる物性値である。このメディアンフィルタ処理は、フィルタ内に含まれる画素のうち中央値となる画素値(以下、「中央画素値」という。)を抽出することを特徴としており、その中央画素値がフィルタのうち特定の画素(例えば、フィルタ中心にある画素)に与えられる。例えば
図2のケースでは、フィルタ内に9個の画素(No23~25と、No33~35、No43~45)が含まれており、これら9個の画素値から中央画素値を求めるとともに、フィルタ中心の画素(No34)の元の画素をこの中央画素値に変換する。メディアンフィルタ処理は、フィルタ内の画素値から変換後の画素値を求めるため、当然ながらフィルタの大きさ(以下、「フィルタサイズ」という。)によって平滑化処理後の画像は異なる結果となる。
【0031】
第1平滑化画像は、原画像に含まれる骨材が強調されるように平滑化処理を行って得られる画像である。一方の第2平滑化画像は、原画像に含まれる骨材がむしろ強調されないように、換言すれば画像全体が原画像の背景色に近づくように平滑化処理を行って得られる画像である。したがって第1平滑化画像は、第2平滑化画像よりも骨材が強調されるように平滑化処理されて生成された画像といえる。例えば、平滑化処理としてメディアンフィルタ処理を用いる場合、フィルタサイズを変えることによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成することができる。より具体的には、第1平滑化画像の生成に用いるフィルタを「第1フィルタ」、第2平滑化画像の生成に用いるフィルタを「第2フィルタ」とすると、平滑化処理手段101は、第2フィルタよりも小さなフィルタサイズの第1フィルタを用いて第1平滑化画像を生成するとともに、第1フィルタよりも大きなフィルタサイズの第2フィルタを用いて第2平滑化画像を生成する。
【0032】
平滑化処理手段101は、後述するように原画像から骨材(特に、粗骨材)を抽出するために平滑化処理を実行する。ところでコンクリートには、大小様々な径の粗骨材が含まれている。他方、打継面処理の良否を判定するうえでは、必ずしも極端に小径(あるいは大径)の粗骨材を抽出する必要はなく、つまり所定のレンジにある径(例えば、5~20mmなど)の粗骨材を抽出すれば足りることもある。そこで、抽出したい粗骨材の最小径(例えば、5mm)と最大径(例えば、20mm)に応じて、第1フィルタと第2フィルタそれぞれのフィルタサイズを設定することが考えられる。発明者らは、抽出したい最小径の粗骨材を網羅するように第1フィルタのフィルタサイズを設定し、抽出したい最大径の粗骨材よりも大きな範囲となるように第2フィルタのフィルタサイズを設定すると、より明確に粗骨材を抽出することができることを見出した。具体的には、最小径の粗骨材の投影面積を分解能(1画素の面積)で除すことによってフィルタサイズ(つまり、構成する画素数)を設定し、最大径の粗骨材の投影面積を分解能で除すとともに所定の倍率(例えば、1.5倍など)を乗じたうえでフィルタサイズを設定するわけである。
【0033】
なお平滑化処理手段101は、原画像ごとに平滑化処理を行って第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成することもできるし、複数の原画像をつなぎ合わせた合成画像に対して平滑化処理を行って第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成することもできるし、複数の原画像からなる正射変換画像(オルソ画像)に対して平滑化処理を行って第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成することもできる。
【0034】
(骨材抽出手段)
骨材抽出手段102は、第1平滑化画像と第2平滑化画像との画素値の差分(以下、単に「画素値差分」という。)を求め、この画素値差分があらかじめ定めた閾値(以下、「骨材閾値」という。)を上回る部分を「骨材(特に、粗骨材)が撮影された部分(以下、単に「骨材部分」という。)」として抽出する手段である(
図1)。画素値差分を求めるにあたっては、当然ながら第1平滑化画像の画素とその画素に対応する第2平滑化画像の画素、換言すればそれぞれの画像において同じ位置にある画素どうしを照らし合わせたうえで、画素値の差を求める。なお画素値差分は、正負を伴う値として求めることもできるし、絶対値として求めることもできる。また、画像を構成する全ての画素の画素値差分を求めることで、
図3に示すように画素値差分に基づく画像(以下、「差分画像」という。)を生成することもできる。
【0035】
骨材抽出手段102は、差分画像を生成すると、画素ごとに画素値差分と骨材閾値を照らし合わせ、この骨材閾値を上回る画素値差分に係る画素を「骨材部分」として抽出する。このとき、画素単位で骨材部分を抽出する仕様としてもよいし、所定数以上の画素による塊(クラスタ)が形成された部分を骨材部分として抽出する仕様としてもよいし、骨材部分と判定された画素に囲まれた画素が骨材部分と判定されていないときはその画素を骨材部分とするように補正して抽出する仕様としてもよい。また骨材抽出手段102は、必ずしも差分画像を生成する必要はなく(もちろん生成してもよい)、求められた画素値差分のみによって骨材部分として抽出する仕様としてもよい。
【0036】
適切に骨材部分を抽出するためには、いわば基準となる骨材閾値が重要になる。この骨材閾値は、経験的に設定することもできるし、あらかじめ試験施工を行ったうえで設定することもできる。また、コンクリート表面が乾燥状態とされたケースと湿潤状態とされたケースを分けて設定することもできるし、そのほか撮影状況(例えば、晴天時と曇天時など)やコンクリート配合(特に、使用するセメント種や粗骨材種)に応じて異なる骨材閾値を設定することもできる。以下、試験施工を行ったうえで骨材閾値を設定する例について詳しく説明する。まず、試験的にコンクリート(以下、単に「試験コンクリート」という。)を構築するとともに、試験コンクリート表面に対して打継面処理を行ったうえで画像(以下、「指標画像」という。)を取得する。そして、指標画像に基づいて第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成するとともに、骨材閾値を種々変更しながら差分画像を生成し、それぞれの差分画像と指標画像を照らし合わせることによって最も適切な骨材閾値を採用する。
【0037】
このように、骨材が強調された第1平滑化画像と、いわば原画像の背景色とされた第2平滑化画像との画素値差分を求めたうえで骨材部分を抽出することから、例えば第1平滑化画像のみから判断するよりもさらに明確に骨材部分を抽出することができるわけである。なお骨材抽出手段102は、原画像ごとに生成された第1平滑化画像と第2平滑化画像に基づいて骨材部分を抽出することもできるし、複数の原画像をつなぎ合わせた合成画像に対して生成された第1平滑化画像と第2平滑化画像に基づいて骨材部分を抽出することもできるし、複数の原画像からなる正射変換画像(オルソ画像)に対して生成された第1平滑化画像と第2平滑化画像に基づいて骨材部分を抽出することもできる。
【0038】
(処理度判定手段)
骨材抽出手段102によって骨材部分が抽出されると、原画像に対応するコンクリート表面の範囲(以下、「対象領域」という。)に占める骨材部分の割合を把握することができ、これによって人(例えば、作業者など)が打継面処理の良否を判定することができる。あるいは、対象領域のうち骨材部分が占める割合(以下、「骨材分布割合」という。)を算出したうえで、いわば定量的に打継面処理の良否を判定する仕様とすることもできる。
【0039】
処理度判定手段103は、差分画像(原画像でもよい)の面積(あるいは、総画素数)と骨材部分の面積(あるいは、画素数)に基づいて骨材分布割合を算出するとともに、その骨材分布割合とあらかじめ定めた閾値(以下、「処理度閾値」という。)を照らし合わせることによって対象領域における打継面処理の程度(以下、単に「打継面処理度」という。)を判定する手段である(
図1)。具体的には、骨材部分の面積を差分画像の面積で除すことによって骨材分布割合を算出し、その骨材分布割合と処理度閾値を比較することで打継面処理度を判定する。例えば、「打継面処理が不十分」と「打継面が良好」との境界として処理度閾値が設定された場合は、骨材分布割合が処理度閾値を下回るときは打継面処理度を「不十分」として判定し、逆に骨材分布割合が処理度閾値を上回るときは打継面処理度を「良好」として判定する。あるいは、「打継面が良好」と「打継面が過処理」との境界として処理度閾値が設定された場合は、骨材分布割合が処理度閾値を下回るときは打継面処理度を「良好」として判定し、逆に骨材分布割合が処理度閾値を上回るときは打継面処理度を「過処理」として判定する。もちろん、「打継面処理が不十分」と「打継面が良好」との境界として第1の処理度閾値を設定するとともに、「打継面が良好」と「打継面が過処理」との境界として第2の処理度閾値を設定するなど、あらかじめ2以上の処理度閾値を設定することによって3以上の段階(例えば、「不十分」と「良好」、「過処理」など)で打継面処理度を判定する仕様とすることもできる。
【0040】
処理度判定手段103は、原画像の単位で(例えば、差分画像を一単位としたうえで)、骨材分布割合を算出して打継面処理度を判定することもできるし、
図4に示すように原画像(あるいは、差分画像)を分割した領域(以下、「分割対象領域」という。)ごとに骨材分布割合を算出して打継面処理度を判定することもできる。具体的には、分割対象領域に含まれる骨材部分の面積を、その分割対象領域の面積で除すことによって、当該分割対象領域に係る骨材分布割合を算出する。例えば
図4では、差分画像を分割した6つの分割対象領域が形成されており、この場合の処理度判定手段103は6つの分割対象領域ごとにそれぞれ骨材分布割合を算出するとともに、それぞれ打継面処理度を判定する。
【0041】
適切に打継面処理度を判定するためには、いわば基準となる処理度閾値が重要になる。この処理度閾値は、骨材閾値と同様、経験的に設定することもできるし、あらかじめ試験施工を行ったうえで設定することもできる。また、コンクリート表面が乾燥状態とされたケースと湿潤状態とされたケースを分けて設定することもできるし、そのほか撮影状況やコンクリート配合に応じて異なる骨材閾値を設定することもできる。以下、試験施工を行ったうえで骨材閾値を設定する例について詳しく説明する。まず、試験コンクリートを構築するとともに、試験コンクリート表面に対して打継面処理を行う。このとき、例えば「打継面処理が不十分」や「打継面が良好」、「打継面が過処理」となるように、異なる打継面処理度となるように打継面処理を行い、すなわち複数種類のテストピースを用意する。そして、それぞれのテストピースに対して指標画像を取得すると、それぞれの指標画像に基づいて差分画像を生成するとともに骨材分布割合を算出し、差分画像に係る打継面処理度に応じて適切な処理度閾値を設定する。例えば、指標画像を確認することで「打継面が良好」となる領域を把握し、その領域に対応する分割対象領域に係る骨材分布割合を抽出したうえで、「打継面が良好」とすべき骨材分布割合の上限と下限を処理度閾値として設定するとよい。なお、複数(ここでは、n個とする)の試験コンクリートを構築するとともに、複数段階(ここでは、m段階とする)の打継面処理度の処理を行うことによって、複数(n×m)のテストピースを用意(つまり、n×m枚の指標画像を取得)したうえで処理度閾値を設定すると、より現状に合った処理度閾値を設定することができて好適となる。
【0042】
(処理の流れ)
図5を参照しながら本願発明の打継面処理判定システム100を使用したときの主な処理の流れについて説明する。
図5は、打継面処理判定システム100の主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要な入力情報を、右列にはその処理から生まれる出力情報を示している。
【0043】
ある程度硬化したコンクリ―ト表面に対して打継面処理が行われると、例えばUAVに搭載されたデジタルカメラによってそのコンクリ―ト表面を撮影して原画像を取得する(
図5のStep101)。原画像が原画像記憶手段105(
図1)に記憶されると、平滑化処理手段101が原画像を読み出し、その原画像に対してメディアンフィルタ処理といった平滑化処理を行うことによって第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する(
図5のStep102)。
【0044】
第1平滑化画像と第2平滑化画像が生成されると、骨材抽出手段102が画素値差分を求めて差分画像を生成するとともに(
図5のStep103)、画素値差分と骨材閾値を照らし合わせることによって骨材部分を抽出した画像(以下、「骨材分布画像」という。)を生成する(
図5のStep104)。骨材分布画像が生成されると、処理度判定手段103が分割対象領域を設定するとともに(
図5のStep105)、差分画像(分割対象領域の差分画像)の面積と骨材部分(分割対象領域に含まれる骨材部分)の面積に基づいて分割対象領域ごとに骨材分布割合を算出し(
図5のStep106)、さらに骨材分布割合と処理度閾値を比較することで分割対象領域ごとに打継面処理度を判定する(
図5のStep107)。
【0045】
既述したとおり骨材閾値や処理度閾値は、試験施工を行うことで設定することができ、この場合も打継面処理判定システム100を使用することができる。
図6は、打継面処理判定システム100の処理のうち、骨材閾値と処理度閾値を決定するまでの主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要な入力情報を、右列にはその処理から生まれる出力情報を示している。以下、
図6を参照しながら、打継面処理判定システム100を使用して骨材閾値と処理度閾値を設定するまでの処理の流れについて説明する。
【0046】
まず、試験コンクリートを構築するとともに、試験コンクリート表面に対して打継面処理を行う。このとき、例えば「打継面処理が不十分」や「打継面が良好」、「打継面が過処理」となるように、異なる打継面処理度となるように打継面処理を行い、すなわち複数種類のテストピースを用意する。そして複数種類のテストピースが用意されると、それぞれのテストピースに対して指標画像を取得する(
図6のStep111)。指標画像が原画像記憶手段105に記憶されると、平滑化処理手段101が指標画像を読み出し、その指標画像に対してメディアンフィルタ処理といった平滑化処理を行うことによって第1平滑化画像(以下、特に「第1平滑化指標画像」という。)と第2平滑化画像(以下、特に「第2平滑化指標画像」という。)を生成する(
図6のStep102)。
【0047】
第1平滑化指標画像と第2平滑化指標画像を生成されると、骨材抽出手段102が画素値差分を求めて差分画像(以下、特に「差分指標画像」という。)を生成する(
図6のStep103)。次いで、暫定的に定めた骨材閾値((以下、単に「暫定骨材閾値」という。)がオペレータによって入力され(
図6のStep112)、骨材抽出手段102が差分指標画像と暫定骨材閾値を照らし合わせることによって暫定的に骨材部分を抽出した画像(以下、「暫定骨材分布画像」という。)を生成する(
図6のStep104)。そして、暫定骨材分布画像と指標画像を照らし合わせ、骨材の分布が概ね一致すると判断できたとき(
図6のStep113のYes)は後続の処理に進み、骨材の分布が一致しないと判断したとき(
図6のStep113のNo)は異なる暫定骨材閾値を設定したうえで(
図6のStep112)所定の処理(
図6のStep104~Step113)を繰り返し実行する。
【0048】
正式に骨材閾値が決定すると(
図6のStep114)、改めて骨材抽出手段102が画素値差分を求めて打継面処理度ごとに取得された指標画像に基づいてそれぞれ差分画像を生成するとともに、骨材分布画像を生成する(
図6のStep104)。指標画像ごとに骨材分布画像が生成されると、処理度判定手段103がそれぞれ分割対象領域を設定するとともに、差分画像の面積と骨材部分の面積に基づいて分割対象領域ごとに骨材分布割合を算出する(
図6のStep106)。そして、差分画像に係る打継面処理度に応じて適切な処理度閾値を設定する(
図6のStep115)。
【0049】
2.打継面処理判定方法
続いて本願発明の打継面処理判定方法について
図7を参照しながら説明する。なお、本願発明の打継面処理判定方法は、ここまで説明した打継面処理判定システム100を用いて打継面処理の良否を判定する方法であり、したがって打継面処理判定システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の打継面処理判定方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.打継面処理判定システム」で説明したものと同様である。
【0050】
図7に示すように本願発明の打継面処理判定方法は、破線で囲まれた「試験施工」と「実施工」に大別することができる。このうち試験施工は、ここまで説明したように骨材閾値や処理度閾値を設定するために行われる工程である。したがって、骨材閾値や処理度閾値が既に得られているときは、試験施工を省略して打継面処理判定方法を実施することができるが、便宜上ここでは試験施工を含む例で説明する。
【0051】
(試験施工)
まず、試験コンクリートを構築するとともに、試験コンクリート表面に対して打継面処理を行う(
図7のStep211)。このとき、例えば「打継面処理が不十分」や「打継面が良好」、「打継面が過処理」となるように、異なる打継面処理度となるように打継面処理を行い、すなわち複数種類のテストピースを用意する。そして複数種類のテストピースが用意されると、それぞれのテストピースに対して指標画像を取得する(
図7のStep212)。指標画像を取得すると、平滑化処理手段101を用い、指標画像に対して平滑化処理(例えば、メディアンフィルタ処理)を行うことで第1平滑化指標画像と第2平滑化指標画像を生成する(
図7のStep213)。第1平滑化指標画像と第2平滑化指標画像を生成すると、骨材抽出手段102を用いて、差分指標画像を生成し(
図7のStep214)、さらに骨材抽出手段102を用いて、暫定骨材閾値を変えながら暫定骨材分布画像を生成するとともに、暫定骨材分布画像と指標画像を照らし合わせることで骨材閾値を決定する(
図7のStep215)。正式に骨材閾値が決定すると、骨材抽出手段102を用いて、打継面処理度ごとの指標画像に基づいてそれぞれ差分画像を生成するとともに、骨材分布画像を生成する。そして処理度判定手段103を用いて、分割対象領域ごとに骨材分布割合を算出したうえで、適切な処理度閾値を設定する(
図7のStep215)。
【0052】
(実施工)
まず、実際に本設のコンクリート(以下、「本設コンクリート」という。)を構築するとともに、本設コンクリート表面に対して打継面処理を行う(
図7のStep221)。そして打継面処理が行われた本設コンクリート表面を撮影して原画像を取得する(
図7のStep222)。原画像を取得すると、平滑化処理手段101を用いて、原画像に対して平滑化処理(例えば、メディアンフィルタ処理)を行うことで第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成する(
図7のStep223)。第1平滑化画像と第2平滑化画像を生成すると、骨材抽出手段102を用いて、差分画像を生成し(
図7のStep224)、さらに骨材抽出手段102を用いて、骨材部分を抽出した骨材分布画像を生成する(
図7のStep225)。骨材分布画像を生成すると、処理度判定手段103を用いて、分割対象領域ごとに骨材分布割合を算出するとともに(
図7のStep226)、分割対象領域ごとに打継面処理度を判定する(
図7のStep227)。
【0053】
3.実験結果
本願発明の発明者らは、本願発明を用いて打継面処理の良否を判定する実験を行った。
図8は、打継面処理判定システム100を用いてコンクリート表面の打継面処理度を判定した結果を示すモデル図であり、(a)は特に乾燥状態のコンクリート表面を対象として実施した結果であり、(b)は特に湿潤状態のコンクリート表面を対象として実施した結果である。なおこの実験では、コンクリート表面の打継面処理が、「不十分」となるテストピースと、「良好」となるテストピース、「過処理」となるテストピースを用いている。
【0054】
図8から分かるように、「不十分」とされたテストピースを取得した原画像を打継面処理判定システム100で処理すると打継処理度が「不十分」である分割対象領域が比較的多く出力され、「良好」とされたテストピースの原画像を打継面処理判定システム100で処理すると「良好」である分割対象領域が比較的多く出力され、「過処理」とされたテストピースの原画像を打継面処理判定システム100で処理すると「過処理」である分割対象領域が比較的多く出力される。また、打継面処理判定システム100によって処理された結果は、コンクリート表面の状態(乾燥状態や湿潤状態)に関わらず、現実の状態と概ね一致している。このように本願発明は、打継面処理の良否を極めて効果的に判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明の打継面処理判定システム、及び打継面処理判定方法は、ダム、トンネル、橋梁といった土木構造物や、集合住宅、オフィスビルなどの建築構造物のほか、様々なコンクリート構造物で利用することができる。本願発明が、適切な打継面処理を実現することによって力学性能と耐久性能、止水性、外観に優れたコンクリート構造物を構築することができ、すなわち高品質のインフラストラクチャーを提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0056】
100 本願発明の打継面処理判定システム
101 (打継面処理判定システムの)平滑化処理手段
102 (打継面処理判定システムの)骨材抽出手段
103 (打継面処理判定システムの)処理度判定手段
104 (打継面処理判定システムの)出力手段
105 (打継面処理判定システムの)原画像記憶手段