(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006427
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】嵌合具及び嵌合具付き袋体
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20230111BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20230111BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20230111BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230111BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D75/58
B65D33/25 A
C08L67/02
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109017
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼川 新
【テーマコード(参考)】
3B098
3E064
3E067
4J002
【Fターム(参考)】
3B098AA02
3B098AA10
3B098AB07
3B098CB02
3E064AA05
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3E064BB03
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3E064EA17
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3E067BA12A
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3E067CA24
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3E067EA25
3E067EB07
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3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
4J002AC082
4J002BP012
4J002CF041
4J002CF051
4J002CF061
4J002GG00
(57)【要約】
【課題】薬効成分やフレーバー成分の吸着性が小さく、ポリエステルフィルムを最内層とする袋本体にも溶着でき、開閉可能な柔軟性を有する嵌合具、及び嵌合具付き袋体を提供することを目的とする。
【解決手段】袋本体の開口部の内面に取り付けられて前記開口部を開閉自在に閉じる嵌合具10において、嵌合具10を非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマとからなる樹脂組成物によって形成し、前記樹脂組成物の総質量に対し、前記非晶性ポリエステル樹脂の割合を80質量%超99質量%以下、前記スチレン系エラストマの割合を1質量%以上20質量%未満とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋本体の開口部の内面に取り付けられて前記開口部を開閉自在に閉じる嵌合具であって、
前記嵌合具は非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマとからなる樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物の総質量に対し、前記非晶性ポリエステル樹脂の割合が80質量%超99質量%以下であり、前記スチレン系エラストマの割合が1質量%以上20質量%未満である、嵌合具。
【請求項2】
前記非晶性ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸から選択される少なくとも1種であり、ジオール成分がエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項3】
前記スチレン系エラストマのスチレン単位の含有量が40質量%以下である、請求項1又は2に記載の嵌合具。
【請求項4】
D-リモネン10%エタノール溶液中に浸漬し、25℃で7日間静置したときのD-リモネンの単位面積あたりの吸着量が80μg/cm2以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の嵌合具。
【請求項5】
内容物を収容する袋本体と、前記袋本体の内面に取り付けられた請求項1~4のいずれか一項に記載の嵌合具と、を具備する、嵌合具付き袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合具及び嵌合具付き袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品、雑貨等の様々な分野において、袋本体の開口部近傍の内面に、開口部を開閉自在に閉じる嵌合具が取り付けられた嵌合具付き袋体が広く用いられている。嵌合具としては、一対の帯状の基材のそれぞれの対向面に、互いに着脱自在に嵌合する第1嵌合部と第2嵌合部が、それら基材の長手方向に沿ってそれぞれ設けられたものが挙げられる。
【0003】
嵌合具付き袋体には一般にオレフィン樹脂が用いられている。しかし、オレフィン樹脂は薬効成分やフレーバー成分を吸着しやすい。そのため、袋本体の最内層として、薬効成分やフレーバー成分を吸着しにくいポリエステル樹脂を採用することが増えてきている。しかし、ポリエステルフィルムを最内層とする袋本体にはオレフィン樹脂製嵌合具を溶着することはできない。
特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートとポリエステルエラストマとからなる嵌合具を用いた嵌合具付き袋体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の嵌合具は硬すぎるため開閉が困難であり、実用には適さない。また、特許文献1の嵌合具において柔軟性を向上させるためにエラストマの配合量を上げると、薬剤吸着性が増大してしまう。
【0006】
本発明は、薬効成分やフレーバー成分の吸着性が小さく、ポリエステルフィルムを最内層とする袋本体にも溶着でき、開閉可能な柔軟性を有する嵌合具、及び嵌合具付き袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]袋本体の開口部の内面に取り付けられて前記開口部を開閉自在に閉じる嵌合具であって、前記嵌合具は非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマとからなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物の総質量に対し、前記非晶性ポリエステル樹脂の割合が80質量%超99質量%以下であり、前記スチレン系エラストマの割合が1質量%以上20質量%未満である、嵌合具。
[2]前記非晶性ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸から選択される少なくとも1種であり、ジオール成分がエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールから選択される少なくとも1種である、[1]に記載の嵌合具。
[3]前記スチレン系エラストマのスチレン単位の含有量が40質量%以下である、[1]又は[2]に記載の嵌合具。
[4]D-リモネン10%エタノール溶液中に浸漬し、25℃で7日間静置したときのD-リモネンの単位面積あたりの吸着量が80μg/cm2以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の嵌合具。
[5]内容物を収容する袋本体と、前記袋本体の内面に取り付けられた[1]~[4]のいずれかに記載の嵌合具と、を具備する、嵌合具付き袋体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薬効成分やフレーバー成分の吸着性が小さく、ポリエステルフィルムを最内層とする袋本体にも溶着でき、開閉可能な柔軟性を有する嵌合具、及び嵌合具付き袋体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態の嵌合具付き袋体の概略正面図である。
【
図3】
図2の嵌合具付き袋体を開封した様子を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[嵌合具]
本発明の嵌合具は、袋本体の開口部の内面に取り付けられて前記開口部を開閉自在に閉じる嵌合具である。本発明の嵌合具は、非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマとからなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物の総質量に対し、前記非晶性ポリエステル樹脂の割合が80質量%超99質量%以下であり、前記スチレン系エラストマの割合が1質量%以上20質量%未満である。
【0011】
以下、本発明の嵌合具の一例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
図1に示すように、実施形態例の嵌合具10は、一対の帯状の第1嵌合部材12と第2嵌合部材14とを備える。
第1嵌合部材12は、帯状の第1基材16と、第1基材16の対向面16aに長手方向に沿って設けられた突条の第1嵌合部18とを備える。第1基材16と第1嵌合部18は一体に成形されている。
第2嵌合部材14は、帯状の第2基材20と、第2基材20の対向面20aに長手方向に沿って設けられ、第1嵌合部18と着脱自在に嵌合する第2嵌合部22とを備える。第2基材20と第2嵌合部22は一体に成形されている。
【0013】
第1嵌合部18は、第1基材16の対向面16aに、第1基材16の長手方向に延在している。第1嵌合部18は、第1基材16の対向面16aから立ち上がる幹部18aと、幹部18aの先端部に設けられ、幹部18aよりも大きい断面略半円形状の頭部18bとを備える。すなわち、この例の第1嵌合部18は雄側嵌合部である。
【0014】
第2嵌合部22は、第2基材20の対向面20aに、第2基材20の長手方向に延在している。第2基材20は、第2基材20の長手方向に垂直な方向に切断した断面において対向面20aから互いの先端部が近づくように円弧状に立ち上がる第1アーム部22aと第2アーム部22bからなる。第2基材20の第1アーム部22aと第2アーム部22bの内側には、第1嵌合部18の頭部18bを受け入れる凹部22cが形成されている。すなわち、この例の第2嵌合部22は雌側嵌合部である。
【0015】
嵌合具10は、第1嵌合部18の頭部18bを第2嵌合部22の凹部22cに嵌め込むことで、着脱自在に嵌合できる。
第1嵌合部18及び第2嵌合部22の長手方向に垂直な方向に切断したときの断面形状は、第1嵌合部18と第2嵌合部22を互いに着脱することで、袋本体の開口部の開閉が繰り返し行えるものであればよく、公知の断面形状を制限なく採用できる。
【0016】
第1基材16の厚さは、適宜設定でき、0.1mm以上0.4mm以下が好ましく、0.12mm以上0.3mm以下がより好ましい。第1基材16の厚さが下限値以上であれば、嵌合具10を袋本体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1基材16の厚さが上限値以下であれば、充分な柔軟性が得られる。
第2基材20の厚さの好ましい態様は、第1基材16の厚さの好ましい態様と同じである。第1基材16と第2基材20の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
第1基材16の幅は、2mm以上60mm以下が好ましく、3mm以上40mm以下がより好ましい。第1基材16の幅が下限値以上であれば、嵌合具10を袋本体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1基材16の幅が上限値以下であれば、取り扱いが容易であり、流通及び保管時に嵌合具の変形が生じにくい。
第2基材20の幅の好ましい態様は、第1基材16の幅の好ましい態様と同じである。第1基材16の幅と第2基材20の幅は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
嵌合具10を構成する材料は、非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマとからなる樹脂組成物である。なお、「非晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて-100℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温した際に、融解ピークを持たないことを意味する。
【0019】
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重合させて得られる非晶性ポリエステル樹脂を例示できる。
ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸を例示できる。なかでも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。ジカルボン酸成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールを例示できる。なかでも、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。ジオール成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
非晶性ポリエステル樹脂としては、成形性の点から、ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸から選択される少なくとも1種であり、ジオール成分がエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールから選択される少なくとも1種である非晶性ポリエステル樹脂が好ましく、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
スチレン系エラストマとしては、スチレンを重合して得られる構造単位(スチレン単位)を含むエラストマを用いることができる。スチレン系エラストマとしては、例えば、スチレンとスチレン以外のモノマを共重合して得られる共重合体を例示できる。前記共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、本発明の効果が得られやすい点から、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0023】
スチレン系エラストマのスチレン単位の含有量は、スチレン系エラストマの全構成単位の合計質量に対して、40質量%以下が好ましく、5質量%以上35質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。スチレン単位の含有量が上限値以下であれば、柔軟性に優れ、撓みが大きいため、嵌合具の嵌合或いは嵌合を解除した際に嵌合部の折れ欠けが発生しにくい。スチレン単位の含有量が下限値以上であれば、耐薬品性、熱融着性が高い。
【0024】
スチレン系エラストマとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(SEP)、水添スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-(エチレン/ブチレン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)、酸変性水添スチレン-(エチレン/ブチレン)-スチレンブロック共重合体(A-SEBS)、スチレン-(エチレン-エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、スチレン-(エチレン/ブチレン)-疑似ポリエチレンブロック共重合体(SEBC)、部分水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエン共重合樹脂(SBC)等のスチレン系熱可塑性エラストマを例示できる。スチレン系エラストマとしては、ゼネラルパーパスポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等を用いてもよい。なかでも、柔軟性の点から、SEPS或いはSEBS或いはSBBSが好ましい。スチレン系エラストマとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
スチレン系エラストマのメルトフローレート(MFR)は、1g/10min以上20g/10min以下が好ましく、2g/10min以上18g/10min以下がより好ましい。スチレン系エラストマのMFRが下限値以上であれば、ポイントシール工程での基材フィルム割れが発生しにくい。スチレン系エラストマのMFRが上限値以下であれば、Tダイ押出成形時にドローダウンが起きにくい。
なお、MFRは、JIS K 6924-1に準拠し、温度190℃、荷重2.16Nの条件で測定される。
【0026】
スチレン系エラストマのショアA硬度は、30以上、80以下が好ましく、30以上、70以下がより好ましい。スチレン系エラストマのショアA硬度が下限値以上であれば、軟化温度が十分高く、熱に安定であり、形状を保つことができる。スチレン系エラストマのショアA硬度が上限値以下であれば、ポイントシール性が良好であり、基材フィルム割れが発生しにくい。
なお、ショアA硬度は、JIS K 6253に従ってデュロメータ タイプAによって測定される。
【0027】
スチレン系エラストマとしては、市販品を使用してもよい。具体的には、SEPSとしてはセプトン2063、2104(クラレ株式会社製)等、SBSとしてはタフプレン126S(旭化成株式会社製)等、SBBSとしてはタフテックP1500(旭化成株式会社製)等、SEBSとしてはタフテックH1221、H1043(旭化成株式会社製)等、A-SEBSとしてはタフテックM1943、M1911(旭化成株式会社製)等、SBCとしてはクリアレンMB910、880L(デンカ株式会社製)等、GPPSとしてはトーヨースチロールG210C(東洋スチレン株式会社製)等、HIPSとしてはトーヨースチロールE640N(東洋スチレン株式会社製)等を例示できる。
【0028】
嵌合具10を構成する樹脂組成物は、樹脂組成物の総質量に対し、非晶性ポリエステル樹脂の割合が80質量%超99質量%以下であり、スチレン系エラストマの割合が1質量%以上20質量%未満である。これにより、薬効成分やフレーバー成分の吸着性を小さくしつつ、ポリエステルフィルムを最内層とする袋本体にも溶着することができ、袋本体の開口部を開閉可能な十分な柔軟性も得られる。
【0029】
樹脂組成物中の非晶性ポリエステル樹脂の割合は、樹脂組成物の総質量に対し、81質量%以上97質量%以下が好ましく、85質量%以上95質量%以下がより好ましい。
樹脂組成物中のスチレン系エラストマの割合は、樹脂組成物の総質量に対し、3質量%以上17質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0030】
嵌合具10をD-リモネン10%エタノール溶液中に浸漬し、25℃で7日間静置したときのD-リモネンの単位面積あたりの吸着量は、80μg/cm2以下が好ましく、60μg/cm2以下がより好ましく、50μg/cm2以下がさらに好ましい。
前記D-リモネンの単位面積あたりの吸着量は、実施例に記載の方法によって測定される。
【0031】
(製造方法)
嵌合具10の製造方法としては、特に限定されず、例えば、第1基材16、第1嵌合部18、第2基材20及び第2嵌合部22の形成材料として前記した樹脂組成物を使用する以外は公知の方法を採用できる。例えば、非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマとを溶融混練し、得られた樹脂組成物を成形して第1嵌合部材12又は第2嵌合部材14を得る方法を例示できる。
【0032】
溶融混練方法としては、例えば、原料を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機に供給して溶融混練する方法を例示できる。
成形方法としては、押出成形法、射出成形法、インフレーション成形法、真空成形法等が挙げられる。
なお、本発明の嵌合具は、前記した嵌合具10には限定されない。例えば、嵌合具10は、第1基材16及び第2基材20を複層とすることができる。
【0033】
[嵌合具付き袋体]
本発明の嵌合具付き袋体は、内容物を収容する袋本体と、前記袋本体の内面に取り付けられた本発明の嵌合具とを具備する。本発明の嵌合具付き袋体は、本発明の嵌合具を備える以外は公知の態様を採用できる。
【0034】
以下、本発明の嵌合具付き袋体の一例として、前述した嵌合具10を備えた嵌合具付き袋体1(以下、「袋体1」という。)について説明する。
図2に示すように、本実施形態の袋体1は、内容物を収容する密封された状態の袋本体50と、袋本体50内の上部の内面に、横方向に沿って取り付けられた嵌合具10とを具備している。なお、袋体1における「横方向」とは、袋体1の開口を形成する側の辺を上、開口を形成する側とは反対側を下にした扁平状態の袋体1における、水平方向と平行で、かつ袋本体50の第1のフィルム材52と第2のフィルム材54の面方向と平行な方向を意味し、
図2では紙面の横方向と一致する。
【0035】
袋本体50は、第1のフィルム材52と第2のフィルム材54が重ね合わされ、それらの周縁部56が全てヒートシールされることで形成されており、密封された状態になっている。また、袋本体50における嵌合具10よりも上部側には、横方向に沿って切断補助線58が設けられており、その端部にノッチ60が形成されている。
【0036】
嵌合具10は、嵌合具10の第1基材16の外側面16dが袋本体50の第1のフィルム材52に溶着され、嵌合具10の第2基材20の外側面20dが袋本体50の第2のフィルム材54に溶着されている。また、嵌合具10は、第1基材16の第1の側縁16b及び第2基材20の第1の側縁20bが開口部側、第1基材16の第2の側縁16c及び第2基材20の第2の側縁20cが内容物側となるように取り付けられている。
【0037】
袋本体50の形状は、本実施形態では矩形である。ただし、袋本体50の形状は矩形には限定されない。また、袋本体50の大きさも特に限定されず、袋本体50に収容する内容物によって適宜選定すればよい。
【0038】
袋本体50を形成する第1のフィルム材52と第2のフィルム材54は、ヒートシールにより嵌合具10を溶着できるものであればよく、例えば、ポリエステルフィルムからなる単層フィルム、最内層であるポリエステルフィルムの外側に基材層が積層された積層フィルムを例示できる。前記積層フィルムは、バリア層等の機能層をさらに有していてもよい。
【0039】
ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムを例示できる。
ポリエステルフィルムの厚さは、5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが下限値以上であれば、袋体にしわが寄りにくい。ポリエステルフィルムの厚さが上限値以下であれば、ヒートシールしやすい。
【0040】
基材層としては、例えば、紙、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレンを例示できる。基材層としては、袋体1の合成樹脂含有量の削減の観点から、パルプを含む紙が好ましい。パルプを含む紙としては、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、片艶晒クラフト紙、特殊両晒クラフト紙、晒クラフト紙を例示できる。
紙の坪量は、40g/m2以上100g/m2以下が好ましく、50g/m2以上70g/m2以下がより好ましい。
紙を基材層とする積層フィルムの例としては、ラミネート紙を例示できる。
【0041】
切断補助線58は、袋本体50における嵌合具10よりも上部を切断して開封するのを補助する線である。切断補助線58としては、例えば、袋本体50の第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54における切断補助線58の部分をそれ以外の部分に比べて薄肉化した弱化線、ミシン目からなる弱化線、列状に形成された細孔からなる弱化線が挙げられる。また、切断補助線58は、前記弱化線には限定されず、ハサミやカッター等で切断する位置を示す、印刷等で形成した線であってもよい。
切断補助線58は、本実施形態では袋本体50の横方向に沿って形成されているが、この形態には限定されず、袋本体50の横方向に対して傾斜して設けられていてもよい。
【0042】
ノッチ60の形状は、この例では三角形状であるが、特に限定されず、半円形状、直線状等であってもよい。
袋体1は、嵌合具10を用いる以外は公知の方法で製造できる。
【0043】
袋体1の開封時には、ノッチ60から切断補助線58に沿って袋本体50の上部を切断して除去することで、
図3に示すように、上部に開口部62を形成して開封することができる。袋体1に形成した開口部62は、嵌合具10の第1嵌合部18と第2嵌合部22を着脱することで繰り返し開閉できる。
【0044】
なお、本発明の嵌合具付き袋体は、前述した袋体1には限定されない。例えば、本発明の嵌合具付き袋体は、前記したような嵌合具10以外の本発明の嵌合具を具備する嵌合具付き袋体であってもよい。
嵌合具付き袋体の袋本体は特に限定されず、嵌合具付き袋体の袋本体として知られる様々な形態の袋本体を採用できる。例えば、袋体1は切断補助線58を利用して開封するまでは密封状態の袋体であるが、予め開口部が形成された袋本体を有する嵌合具付き袋体であってもよい。その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0046】
[略号]
PETG-1:グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(商品名「SKYGREEN P-SF」、SKケミカル株式会社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸100モル%、ジオール成分:エチレングリコール68モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール22モル%、ジエチレングリコール10モル%)
PET-1:ポリエチレンテレフタレート(商品名「A-12」、Eastman Chemical社製)
SBBS-1:スチレン系熱可塑性エラストマ(商品名「タフテックP1500」、旭化成株式会社製、スチレン-ブタジエン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の部分水素添加物)、密度:0.94g/cm3、スチレン単位の含有量:30質量%、MFR(温度190℃、荷重2.16kg):4.0g/10min、ショアA硬度:69、引張強度:3.3MPa、引張伸び:780%、引張応力:2.1MPa、溶液粘度(15質量%トルエン):35mPa・s)
TPEE-1:熱可塑性ポリエステルエラストマ(商品名「ペルプレンP-30B」、東洋紡株式会社製)
【0047】
[実施例1]
図1で例示した嵌合具10と同様の態様の嵌合具を成形するための複合異形ダイを用意した。口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、成形温度180~250℃の条件でPETG-1とSBBS-1とを質量比99:1で溶融混錬して樹脂組成物とし、前記複合異形ダイに導いて押出成形した。その後、冷却水槽に導いて冷却固化させることで、第1基材及び第2基材の幅が6mm、厚さが0.1mmの嵌合具を得た。
【0048】
[実施例2~5]
樹脂組成物の組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして嵌合具を得た。
【0049】
[比較例1~7]
樹脂組成物の組成を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして嵌合具を得た。
【0050】
[成形性]
各例の押出成形における成形性ついて以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
〇:嵌合具の形状が安定して成形された。
△:嵌合具の形状が不安定であるか、又は、基材の厚さにムラが生じた。
×:嵌合具の形状が不安定であり、かつ、基材に破れが生じた。
【0051】
[熱融着性]
<熱融着方法>
各例の嵌合具の第1嵌合部材の第1基材から第1嵌合部(雄側嵌合部)を切除し、第1基材から幅6mm、長さ25cmの試料片を切り出した。前記試料片と幅6mm、長さ27cmのポリエステルフィルム(株式会社フレックス製「DE046」、厚さ30μm)とを、前記試料片の雄側嵌合部が設けられていた側とは反対側の面がポリエステルフィルムに接するように重ね合わせた。次いで、東洋精機製作所製熱傾斜試験機を用い、試料片とポリエステルフィルムの長手方向の一方の端部側の8.5cm分を残して幅6mm、長さ10cmの領域を融着して試験片を得た。熱傾斜試験機の融着条件は、融着温度130℃、融着圧力1.0kgf/cm2(98kPa)、融着時間1.0秒とした。同様の作業を繰り返し、20個の試験片を得た。
<融着強度測定>
東洋精機製作所製ストログラフ引張試験機を用いて、試験片の基材とポリエステルフィルムの未融着部分をそれぞれチャックに挟み、引張速度200mm/minでT型剥離試験を行って融着強度を測定した。20個の試験片のそれぞれについて最大剥離力(gf/6mm)を求め、その算術平均を融着強度とした。
各例で測定した融着強度に基づき、以下の評価基準でポリエステルフィルムに対する熱融着性を評価した。
<評価基準>
〇:300gf/6mm以上。
×:300gf/6mm未満。
【0052】
[柔軟性]
各例の嵌合具の第1嵌合部材から第1基材の長手方向に沿って長さ120mmの試料を切り出し、東洋精機製作所製引張試験機を用い、引張試験機のチャック間を50mm、引張速度を1mm/minとして伸張量が1.0mmになるまで引張り、その間の引張荷重を測定した。測定された引張荷重を試料の断面積で除して応力σ(MPa)を求めた。前記断面積は、光学顕微鏡を用いて第1嵌合部材の断面積(cm2)を測定することで代用した。さらに伸張量ΔL(mm)をチャック間距離L(mm)で除してひずみεを求め、応力σ(MPa)をひずみεで除して引張弾性率E(MPa)を求めた。
各例で測定した引張弾性率Eに基づき、以下の評価基準で柔軟性を評価した。
<評価基準>
〇:適度な柔軟性と剛性を有し取り扱いが良好である。(100MPa以上2000MPa未満)
×:剛性が高く、嵌合部材としては不向きである。(2000MPa以上)
【0053】
[吸着性(耐薬品性)]
各例の嵌合具における雄側嵌合部を有する第1嵌合部材から第1基材の長手方向に沿って長さ3cmの試験片を3個切り出した。20mLサンプル瓶に薬品としてD-リモネン10%エタノール溶液を入れ、薬品中に試験片を浸漬し、25℃で7日間静置させた。試験片を取り出し、余分な溶液を紙ワイパー(日本製紙クレシア製、製品名キムワイプ)でふき取り、別の試験管内のエタノール10mL中に浸漬し、40kHzの超音波発生装置によって試験片の表面に付着した薬品をエタノール中に抽出した。次いで、GC/MS(サーモフィッシャー製「ITQ-1100」)によって抽出液中のD-リモネンを同定し、FID検出器にてD-リモネンの量を特定した。前記抽出液中のD-リモネンの量(μg)を試験片の表面積(cm2)で除して、単位面積あたりの吸着量を計算した。試験片の表面積は、表面積(cm2)=試験片の周囲長(cm)×試験片の長さ(cm)で計算した。ただし、光学顕微鏡を用いて試験片の長手方向に直交する断面を観察し、その輪郭の長さを測定し、試験片周囲長(cm)とした。
各例で測定したD-リモネンの単位面積あたりの吸着量に基づき、以下の評価基準で吸着性を評価した。
<評価基準>
〇:単位面積あたりの吸着量が80μg/cm2以下。
×:単位面積あたりの吸着量80μg/cm2超。
【0054】
各例の樹脂組成物の組成及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表1及び表2に示すように、非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマを特定の割合で組み合わせた樹脂組成物を用いた実施例1~5では、成形性、ポリエステルフィルムに対する熱融着性、柔軟性に優れており、D-リモネンの吸着性が低かった。
一方、PET-1のみを用いた比較例1では、嵌合具を成形できなかった。非晶性ポリエステル樹脂のみを用いた比較例2では、柔軟性が劣っていた。非晶性ポリエステル樹脂とスチレン系エラストマの割合が本発明の範囲外の比較例3、4、6、7では、D-リモネンの吸着量が多かった。さらに比較例3、4ではポリエステルフィルムに対する熱融着性が劣り、比較例5~7では成形性が劣っていた。
1…嵌合具付き袋体、10…嵌合具、12…第1嵌合部材、14…第2嵌合部材、16…第1基材、18…第1嵌合部、20…第2基材、22…第2嵌合部、50…袋本体。