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特開2023-64304格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物
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  • 特開-格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物 図1
  • 特開-格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物 図2
  • 特開-格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物 図3
  • 特開-格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物 図4
  • 特開-格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064304
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】格子状構造物の風騒音低減装置、手摺子及び格子状構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20230501BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20230501BHJP
   E04H 17/16 20060101ALI20230501BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20230501BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20230501BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230501BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E04H9/14 G
E04F11/18
E04H17/16 104
E04B1/00 501J
E04B1/82 N
G10K11/168
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174509
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優輝
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
2E142
2E301
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF07
2E001FA09
2E001GA02
2E001GA12
2E001HB02
2E001HB04
2E001HC01
2E001HD11
2E001HE01
2E139AA05
2E139AC19
2E139BA24
2E142AA01
2E142AA03
2E142AA10
2E142HH01
2E301GG00
2E301GG06
2E301HH15
2E301HH18
2E301HH21
2E301JJ07
2E301JJ13
2E301NN06
5D061BB12
5D061BB18
(57)【要約】
【課題】格子状構造物の風騒音を低減するための新たな風騒音低減装置、風騒音低減装置が取り付けられた手摺子、及び手摺子を備える格子状構造物を提供すること。
【解決手段】矩形断面の複数の中空の手摺子12を備える格子状構造物10に適用される風騒音低減装置14は、手摺子の内部に配置される互いに相対する一対の板部材であって手摺子の内部において手摺子の伸長方向へ伸びる一対の板部材22と、両板部材間にこれらの長さ方向に互いに間隔をおいて配置されまた両板部材に固定され両板部材に手摺子の内壁面に当接するように押圧力を及ぼす複数のばね部材とを備える。両板部材は、格子状構造物が風を受けて手摺子に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じたとき、生じた振動における振幅のピークの箇所において手摺子の内壁面に当接可能である長さ寸法を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の断面形状を有する複数の中空の手摺子を備える手摺又は柵からなる格子状構造物に適用される風騒音低減装置であって、
各手摺子の内部に配置される互いに相対する一対の板部材であって前記手摺子の内部において前記手摺子の伸長方向へ伸びる一対の板部材と、
両板部材間に両板部材の長さ方向へ互いに間隔をおいて配置されまた両板部材に固定された複数のばね部材であって各手摺子の内部において両板部材に対して両板部材がそれぞれ各手摺子の内壁面に当接するように押圧力を及ぼす複数のばね部材とを備え、
両板部材は、前記格子状構造物が風を受けて各手摺子に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じたとき、生じた振動における振幅のピークの箇所において各手摺子の内壁面に当接可能である長さ寸法を有する、風騒音低減装置。
【請求項2】
両板部材はそれぞれ各手摺子の長さ寸法の10/12に相当する長さ寸法を有する、請求項1に記載の風騒音低減装置。
【請求項3】
両板部材は、その両端の一方及び他方が、それぞれ、前記手摺子の両端の一方及び他方から前記手摺子の長さ寸法の1/12に相当する間隔をおいて配置されている、請求項2に記載の風騒音低減装置。
【請求項4】
前記複数のばね部材は、両板部材の両端の近傍にそれぞれ位置する2つのばね部材と、前記2つのばね部材の位置の中間に位置する1つのばね部材とからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の風騒音低減装置。
【請求項5】
前記ばね部材は、圧縮コイルばねからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の風騒音低減装置。
【請求項6】
手摺又は柵からなる格子状構造物の製造に供される手摺子であって、
矩形の断面形状を有する管部材と、
前記管部材の内部に配置された、請求項1~5のいずれか1項に記載の風騒音低減装置を備える、手摺子。
【請求項7】
複数の手摺子を有する手摺又は柵からなる格子状構造物であって、
各手摺子が請求項6に記載の手摺子からなる、格子状構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓、ベランダ、バルコニー、屋上、非常階段等に設置される手摺又は土地、家屋等の境界に設置される柵からなる格子状構造物が風を受けて発する固体音(以下、風騒音という。)の大きさの低減に向けられている。
【背景技術】
【0002】
前記格子状構造物は互いに間隔をおいて配置され縦、横又は斜めに直線的に伸びる複数の手摺子を備える。前記風騒音は、前記格子状構造物の手摺子相互間を風が吹き抜けるときに発生するカルマン渦の卓越振動数と手摺子の固有振動数とが一致するとき、又は、カルマン渦の卓越振動数が手摺子の固有振動数に近いときに生じる共振現象(渦励振)により発生する。
【0003】
従来、前記格子状構造物の1つである縦格子手摺における前記風騒音の大きさを低減するために、矩形の断面形状を有する中空の手摺子内の下部に、互いに部分的に相対する一対の金属プレートを配置する試みがなされている。各金属プレートはボルトにより手摺子に固定され手摺子の下端から上方に向けて伸び、また手摺子の内壁面に接している。しかし、この試みは、風騒音の発生防止上、十分でないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-30364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、格子状構造物の風騒音を低減するための新たな風騒音低減装置、前記風騒音低減装置が取り付けられた手摺子、及び前記手摺子を備える格子状構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(第1の発明)は矩形の断面形状を有する複数の中空の手摺子を備える手摺又は柵からなる格子状構造物に適用される風騒音低減装置に係る。前記風騒音低減装置は、各手摺子の内部に配置される互いに相対する一対の板部材であって前記手摺子の内部において前記手摺子の伸長方向へ伸びる一対の板部材と、両板部材間に両板部材の長さ方向へ互いに間隔をおいて配置されまた両板部材に固定された複数のばね部材であって各手摺子の内部において両板部材に対して両板部材がそれぞれ各手摺子の内壁面に当接するように押圧力を及ぼす複数のばね部材とを備える。両板部材は、前記格子状構造物が風を受けて各手摺子に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じたとき、生じた振動における振幅のピークの箇所において各手摺子の内壁面に当接可能である長さ寸法を有する。
【0007】
本発明において、「前記格子状構造物が風を受けて各手摺子に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じたとき」とするのは、前記格子状構造物に日常的に作用する風の速度(風速)は5~15m/sの範囲内にあり、この風速の範囲内おける各手摺子の振動は1~3次振動モードのうちの1つ以上の振動モードの振動であるとの知見に基づく。
【0008】
本発明(第2の発明)は、手摺又は柵からなる格子状構造物の製造に供される手摺子に係る。前記手摺子は、矩形の断面形状を有する管部材と、前記管部材の内部に配置された前記風騒音低減装置とを備える。
【0009】
本発明(第3の発明)は、複数の手摺子を有する手摺又は柵からなる格子状構造物に係る。前記格子状構造物は、その手摺子が前記第2の発明に係る手摺子からなる。
【0010】
本発明に係る風騒音低減装置は、その一対の板部材を互いに他の一方に向けて圧迫して、両板部材間の複数のばね部材を圧縮した状態とし、製造前の格子状構造物の手摺子の両端の一方から他方に向けて前記手摺子の内部に差し込むことにより、前記手摺子の内部に配置することができる。両板部材は、前記手摺子の内部において、圧縮された複数のばね部材の弾性復帰力である押圧力を受けて前記手摺子の内壁面に当接し、前記手摺子の内壁面に対して密接した状態におかれる。
【0011】
本発明によれば、前記風騒音低減装置が取り付けられた複数の手摺子を備える格子状構造物が風を受けて各手摺子に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じると、各手摺子はこれに生じた振動に対応する弾性変形をする。このとき、各手摺子内の2つの板部材は、前記手摺子に生じた振動における振幅のピークの箇所において各手摺子の内壁面に当接した状態にあり、このために各手摺子からその弾性変形による外力を受けて前記手摺子の内壁面に沿った弾性変形をする。また、このとき、両板部材は各ばね部材を支点とした振動をし、前記手摺子の内壁面上を僅かに滑動する。その結果、前記手摺子の内壁面と両板部材との間に摩擦が生じ、この摩擦の発生により、前記手摺子の振動エネルギが消散し、前記手摺子の振動とこれに伴う風騒音とが低減される。
【0012】
前記板部材の長さ寸法は、好ましくは、各手摺子の長さ寸法の10/12に相当する大きさに設定される。ここにおいて、両板部材は、両板部材の両端の一方及び他方が、それぞれ、前記手摺子の両端の一方及び他方から前記手摺子の長さ寸法の1/12に相当する間隔をおいて配置される。これによれば、前記手摺子の振動時に前記風騒音低減装置がその自重により前記手摺子の内部を該手摺子の下端まで滑り落ちることがあっても、両板部材は、前記手摺子の振動における振幅のピークの箇所において各手摺子の内壁面に当接可能の状態にあるように維持される。
【0013】
また、前記複数のばね部材は、好ましくは、両板部材の両端の近傍にそれぞれ位置する2つのばね部材と、前記2つのばね部材の位置の中間に位置する1つのばね部材とからなる。前記ばね部材は、例えば圧縮コイルばねからなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る格子状構造物の1つである縦格子手摺の斜視図である。
図2】風騒音低減装置と、該風騒音低減装置が取り付けられた手摺子とを示す概略的な縦断面図である。
図3図2に示す風騒音低減装置及び手摺子の平面図である。
図4】(a)は非振動時における手摺子及びその内部の風騒音低減装置の概略的な縦断面図である。(b)は1次振動モードの振動時における手摺子及びその内部の風騒音低減装置の概略的な縦断面図である。(c)は2次振動モードの振動時における手摺子及びその内部の風騒音低減装置の概略的な縦断面図である。(d)は3次振動モードの振動時における手摺子及びその内部の風騒音低減装置の概略的な縦断面図である。
図5】風洞実験による風騒音低減の検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、建物の窓、ベランダ、バルコニー、屋上、非常階段等に設置される手摺(縦格子手摺、横格子手摺、斜め格子手摺等)、又は土地、家屋等の境界に設置される柵からなる格子状構造物の風騒音の低減に向けられている。
【0016】
図1を参照すると、本発明が適用された格子状構造物の一例である縦格子手摺が全体に符号10で示されている。縦格子手摺10は複数の手摺子12と、各手摺子12に取り付けられた風騒音低減装置14(図2及び図3)とを備える。
【0017】
図示の縦格子手摺10は、縦方向(上下方向)へ伸びる一対の支柱16と、両支柱16に固定され横方向へ伸びる上下2つの弦部材18とを備える。複数の手摺子12は両弦部材18間に互いに間隔をおいて配置され縦方向へ伸びている。各手摺子12、各支柱16、各弦部材18は、例えばアルミニウムの押出形材からなる。
【0018】
図2及び図3に示すように、手摺子12は矩形の断面形状を有する管部材からなる。手摺子12は互いに相対する上端12a及び下端12bを有し、上下両端12a、12bにおいて上下の両弦部材18に固定されている。また、手摺子12は、互いに相対する二対の外壁面(外側面)12c、12dと、互いに相対する二対の内壁面(内側面)12e、12fとを有する(図2及び図3参照)。手摺子12の一対の外壁面12cは、隣接する手摺子12又は支柱16に面している。また、他の一対の外壁面12dはそれぞれ縦格子手摺10の正面の側及び背面の側にそれぞれ面している。
【0019】
風騒音低減装置14は、手摺子12の内部に配置される互いに相対する一対の板部材22と、複数(図示の例において3つ)のばね部材24とを備える。両板部材22は手摺子12の内部において、手摺子12の伸長方向へ伸びまたばね部材24のばね力を受けて手摺子12の両内壁面12eに当接する。また、複数のばね部材24は、両板部材22間にこれらの長さ方向へ互いに間隔をおいて配置されている。
【0020】
風騒音低減装置14の一対の板部材22は、それぞれ、例えばアルミニウム製や鋼製のような金属製の平板、木製、合成樹脂製又はゴム製の平板からなる。板部材22は、手摺子12の長さ寸法L1より短い長さ寸法L2(L2<L1)を有する(図3参照)。また、手摺子12は、手摺子12の内壁面12eの幅寸法より小さい幅寸法を有する(図3参照)。また、板部材22は、その弾性変形性(湾曲性)を考慮して、好ましくは0.5~3.0mmの範囲の厚さ寸法を有する。なお、両板部材22の当接対象を一対の内壁面12eとする図示の例に代えて、他の一対の内壁面12dとすることができる。
【0021】
板部材22の長さ寸法L2は、縦格子手摺10が風を受けて、縦格子手摺10の手摺子12相互間を風が吹き抜け、これにより手摺子12に1次振動モード(図4(b))、2次振動モード(図4(c))及び3次振動モード(図4(d))のうちの1以上の振動モードの振動が生じたとき、生じた振動における山の頂又は谷の底である振幅のピークの箇所(1次振動モードにおける1つのピークP1の箇所、2次振動モードにおける2つのピークP2及びP3の箇所、3次振動モードにおける3つのピークP4~P6の箇所)において手摺12子の内壁面12eに当接可能である長さ寸法を有する。ここに、格子状構造物10が風を受けて各手摺子12に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じたときとするのは、格子状構造物10に日常的に作用する風の速度(風速)は5~15m/sの範囲内にあり、この風速の範囲内おける各手摺12子の振動は1~3次振動モードのうちの1以上の振動モードの振動であるとの知見に基づく。
【0022】
図示の例において、前記1次振動モードの振動における振幅の1つのピークの箇所P1は、手摺子12の上端12a及び下端12bから、手摺子12の長さ寸法L2の6/12=1/2(図4(b)参照)に相当する距離を隔てた位置、すなわち手摺子12の長さ方向における中央位置にある。また、前記2次振動モードの振動における振幅の2つのピークの箇所P2及びP3は、それぞれ、手摺子12の上端12a及び下端12bから、手摺子12の長さ寸法L2の3/12=1/4(図4(c)参照)に相当する距離を隔てた位置にある。さらに、前記3次振動モードの振動における振幅の3つのピークの箇所のうちの2つのピークの箇所P4及びP6は、それぞれ、手摺子12の上端12a及び下端12bから、手摺子12の長さ寸法L2の2/12=1/6(図4(d)参照)に相当する距離を隔てた位置にあり、また、残りのピークの箇所P5は、手摺子12の長さ寸法L2の6/12=1/2に相当する距離を隔てた位置すなわち手摺子12の長さ方向における中央位置にある。
【0023】
風騒音低減装置14の3つのばね部材24は、図示の例においては、両板部材22の両端の近傍にそれぞれ位置する2つのばね部材24と、1つのばね部材24とからなる。前記1つのばね部材24は、前記2つのばね部材24の位置の中間、すなわち手摺子12の長さ方向における中央(図4(b)参照)に位置する。図示のばね部材24は圧縮コイルばねからなり、その両端部24aにおいて両板部材22に固定されている。両板部材22は、これにより、3つのばね部材24を介して互いに連結されている。
【0024】
風騒音低減装置14は、その一対の板部材22を互いに他の一方に向けて圧迫し、両板部材22間の複数のばね部材24を圧縮した状態にして、縦格子手摺10の製造に供される手摺子12の上下両端12a、12bの一方から他方に向けて手摺子12の内部に差し込むことができ、これにより、手摺り子12の内部に配置することができる。両板部材22は手摺子12の内部において、圧縮された複数のばね部材24の弾性復帰力である押圧力を受けて、手摺子12の両内壁面12eにそれぞれ当接し、手摺子12の両内壁面12eに対してそれぞれ密接した状態におかれる。
【0025】
風騒音低減装置14が取り付けられた複数の手摺子12を備える縦格子手摺10が風を受けて手摺子12に1次振動モード、2次振動モード及び3次振動モードの振動のうちの1以上の振動モードの振動が生じ、手摺子12がこれに生じた振動に対応する弾性変形(湾曲状の変形)をすると、手摺子12の両内壁面12eに密接した状態にある両板部材22が、手摺子12からその弾性変形による外力を受けて湾曲した手摺子12の内壁面12eに沿った弾性変形をする。このとき、両板部材22は各ばね部材24を支点とする振動をし、また、手摺子12の両内壁面12e上を僅かに滑動する。その結果、手摺子12の内壁面12eと両板部材22との間に摩擦が生じる。この摩擦の発生により、手摺子12の振動エネルギが消散し、手摺子12の振動とこれに伴う風騒音とが低減される。
【0026】
図示の例において、板部材22の長さ寸法L2が各手摺子の長さ寸法L1の10/12に設定され(図4(a))、また、板部材22の上下両端12a、12bがそれぞれ手摺子12の上下両端12a、12bから手摺子12の長さ寸法L1の1/12の間隔をおいて配置されている。図示の例によれば、手摺子12の振動時に風騒音低減装置14がその自重により手摺子12の内部を該手摺子の下端12bまで滑り落ちることがあっても、両板部材22は、1次振動モードの1つのピークの箇所P1において、2次振動モードの2つのピークの箇所P2、P3において、また、3次振動モードの3つのピークの箇所P4、P5、P6において、手摺子12の内壁面12eに当接可能の状態に維持される。
【0027】
図5は、風騒音低減装置14による風騒音の低減の効果を検証するために行った3つの縦格子手摺についての風洞実験の結果についてのグラフを示す。各縦格子手摺は、矩形の断面形状を有する22本の手摺子12を備え、これらの手摺子12は25mmの相互間隔をおいて配置されている。前記風洞実験は、各縦格子手摺に対して、その正面の側からその背面の側に向けて、日常的に作用する風である風速5~15m/sの風を吹き当てることにより行った。
【0028】
図上、風騒音低減装置14が取り付けられていない1つの縦格子手摺について「対策なし」と標記されている。また、風騒音低減装置14が取り付けられた2つの縦格子手摺について、それぞれ、「対策あり(1mm)」及び「対策あり(2mm)」と標記されている。括弧内の1mm及び2mmは、それぞれ、風騒音低減装置14の板部材22の厚みを示す。
【0029】
前記縦格子手摺の手摺子12はアルミニウムの押出形材からなる。前記縦格子手摺の外壁面12c及び外壁面12dの幅寸法がそれぞれ30mm及び15mmであり、その長さ寸法L1が1055mmであり、また、その厚みが0.85mmである。
【0030】
風騒音低減装置14の各板部材22は鋼板からなり、15mmの幅寸法及び1000mmの長さ寸法L2を有する。また、各ばね部材24はピアノ線(SWP‐A)からなり、12mmの外径、1.2mmの線径及び5.05N/mmのばね定数を有する。風騒音低減装置14は、図4(a)に示すと同様に配置されている。
【0031】
図5のグラフは、「対策あり(1mm)」及び「対策あり(2mm)」のA特性音圧レベルが、風速6m/s及び風速8m/sにおいて、「対策なし」のA特性音圧レベルと同等以上であり、他の風速において、「対策なし」のA特性音圧レベルより低いことを示している。
【0032】
そこで、この原因を探ってみたところ、風速6m/s及び風速8m/sにおいては、図1で見て縦格子手摺10の左方の支柱16と該支柱に隣接する手摺子12との間を通り抜ける風により、前記固体音とは異なる笛吹き音が発生し、この笛吹き音がA特性音圧レベルを上昇させていることが判明した。
【0033】
以上のことから、「対策あり(1mm)」及び「対策あり(2mm)」のA特性音圧レベルが、5~15m/sのいずれの風速においても、「対策なし」のA特性音圧レベルより低く、風騒音低減効果が現れていることが確認された。
【符号の説明】
【0034】
10 縦格子手摺
12 手摺子
14 風騒音低減装置
22 板部材
24 ばね部材
P1~P6 振動のピークの箇所
図1
図2
図3
図4
図5