(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064315
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ミツバチが生活する容器、補充ミツバチ容器及びミツバチ情報管理システム
(51)【国際特許分類】
A01K 47/00 20060101AFI20230501BHJP
A01K 47/06 20060101ALI20230501BHJP
A01K 53/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A01K47/00
A01K47/06
A01K53/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174523
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】518400217
【氏名又は名称】グレイス商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】弁理士法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【弁理士】
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】森本 悦央
(72)【発明者】
【氏名】森本 淑美
(72)【発明者】
【氏名】柚木 紗后
(57)【要約】
【課題】
容器外に出ることなくミツバチの飼育を継続できる容器を提供することを課題とする。
【解決手段】
ミツバチが容器外に出ることなく生活する容器であって、第1室と第2室を備える容器とし、第1室にはミツバチが蜜を蓄える巣礎又は巣脾を置き、第2室にはミツバチの餌を置く。ミツバチが第1室と第2室間を往来する巣門を設け、この巣門を閉じる機構と開ける機構を設ける。容器の掃除をする際と餌を追加する際はミツバチを第1室に追いやって巣門を閉じる。採蜜の際はミツバチを第2室に追いやって巣門を閉じる。ミツバチを補充する際には、ミツバチが外部に出ないようにされた補充ミツバチ容器を飼育容器に予め設けたキャップに取り付けて行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミツバチが容器外に出ることなく生活する容器であって、
前記容器は、
第1室及び第2室と、
ミツバチが第1室と第2室間を往来する第1室第2室間巣門と、
第1室第2室間巣門を連通と非連通のいずれかに設定する機構と、
第1室と第2室を分離不能とする第1室第2室連結機構と、
第1室と第2室の分離不能を解除する第1室第2室連結解除機構
を備えるミツバチが生活する容器。
【請求項2】
前記容器に補充するミツバチを収納した補充ミツバチ容器の出口開口が取り付くキャップと、
ミツバチが蜜を蓄える巣礎又は巣脾と、
ミツバチに餌をあてがう給餌器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のミツバチが生活する容器。
【請求項3】
前記第1室の一壁面と前記第2室の一壁面が接しており、
前記第1室の一壁面に備わる第1室巣門と、前記第2室の一壁面に備わる第2室巣門を、双方合致させることにより第1室第2室間巣門が連通し、
前記第1室巣門と前記第2室巣門を合致させないことにより第1室第2室間巣門が非連通となることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項4】
前記第1室第2室連結機構は、
前記第1室と前記第2室を貫通するロッドと、
第1室から外部に突出する第1室側ロッド端部に設けた第1室の室内方向に向けたロッドの移動を遮る第1室側ロック機構と、
第2室から外部に突出する第2室側ロッド端部に設けた第2室の室内方向に向けたロッドの移動を遮る第2室側ロック機構と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項5】
前記巣礎または巣脾が第1室に備わり、前記給餌器が第2室に備わる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項6】
前記第1室及び前記第2室はいずれも壁面に空気孔を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項7】
ミツバチに与える餌が、蜂蜜、砂糖、氷砂糖、カラメル、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の糖類のいずれか単体又はこれらを組み合わせたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項8】
ミツバチに与える餌にフレーバーを混合することを特徴とする請求項2から請求項7に記載のミツバチが生活する容器。
【請求項9】
人工合成の女王蜂フェロモン及び/又は人工合成の蜂児フェロモンが
容器内に施されることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項10】
前記容器内に施されたフェロモンと同一のフェロモンが補充ミツバチ容器に施される
ことを特徴とする請求項9に記載のミツバチが生活する容器。
【請求項11】
前記容器が透明な素材で成る箇所を備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項12】
前記第2室側ロック機構が、
ロッドを挿通可能なロッド用貫通孔を有し、
前記ロッドを所定の位置で固定可能にするロック機構であって、
前記ロッドの周囲に並んで設けられ前記ロッドの延伸方向に沿った一方側方向又は他方側方向に移動可能な複数の球部と、
前記一方側方向に移動した際に前記複数の球部同士の距離が縮まることで前記ロッドを固定し、
前記他方側方向に移動した際に前記複数の球部同士の距離が広がることで前記ロッドの固定を解除するように前記複数の球部の動きを案内するテーパ状の案内部と、
前記複数の球部を前記一方側方向に移動するように付勢する付勢部とを備える
ことを特徴とする請求項4に記載のミツバチが生活する容器。
【請求項13】
前記ロック機構が、
第1キーであって、
前記球部に至る通路に挿入された前記第1キーが前記球部を押し動かすことにより
前記複数の球部を前記他方側方向に移動せしめる第1キーと、
前記球部に至る通路を塞ぎ前記第1キーの通路への挿入を妨げる第2キーを備える
ことを特徴とする請求項12に記載のミツバチが生活する容器。
【請求項14】
第2室と隣り合う第3室を備え、
前記第2室側ロック機構は第3室の室内に備わる
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のミツバチが生活する容器。
【請求項15】
請求項2に記載の補充ミツバチ容器であって、
補充ミツバチ容器本体と、
補充ミツバチ容器本体の出口開口に設けた容器外フタと、
容器外フタの内側に備わる容器内フタを備え、
前記出口開口は、前記ミツバチが生活する容器の前記キャップに取り付く形態であり、
前記補充ミツバチ容器本体には補充用のミツバチが収納されており、
補充用のミツバチは補充ミツバチ容器の前記出口開口が前記ミツバチが生活する容器の前記キャップに取り付いた後に補充ミツバチ容器の出口から前記ミツバチが生活する容器に移動するものであり、
容器外フタが取り外された後、補充ミツバチ容器の前記出口が前記ミツバチが生活する容器の前記キャップに取り付くまでの間、前記補充用のミツバチが補充ミツバチ容器の出口から出ることを遮る機構を備えることを特徴とする
補充ミツバチ容器。
【請求項16】
前記補充ミツバチ容器本体と前記容器外フタと前記容器内フタを分離不能とする容器本体容器フタ連結機構と、
容器本体と容器フタの分離不能を解除する容器本体容器フタ連結解除機構と、
を備えることを特徴とする請求項15に記載の補充ミツバチ容器。
【請求項17】
温度センサーと
容器内を冷やすクーラー装置と、
容器内を温めるヒーター装置と、
送気ファンを備え、
容器内の温度が所定温度に保たれることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項18】
湿度センサーと、
容器内を加湿する加湿装置を備え、容器内が所定湿度に保たれることを特徴とする請求項1から請求項14、又は請求項17のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項19】
容器内を撮影するカメラと、
容器内にブラックライトを照射するブラックライト照明装置を備えた
請求項1から請求項14、又は請求項17のいずれかに記載のミツバチが生活する容器。
【請求項20】
請求項1に記載のミツバチが生活する容器に係る生活容器端末装置又は請求項15に記載の補充ミツバチ容器に係る補充ミツバチ容器端末装置と、
前記生活容器端末装置又は前記補充ミツバチ容器端末装置と情報通信が可能なシステム管理者装置を備え、
生活容器端末装置又は補充ミツバチ容器端末装置が取得した、温度情報、湿度情報、照明情報又は画像情報のいずれかがシステム管理者装置に送信され、
システム管理者装置が受信した温度情報、湿度情報、照明情報又は画像情報は、システム管理者装置の記憶装置に記録されるミツバチ情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
容器外に出ることなくミツバチの飼育を継続し蜂蜜を得ることができ、ミツバチの生活を観察できる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
人類はミツバチを養いハチミツや蜜ろうや花粉を採取することを古くから行っており、人類とミツバチのつきあいは長い。人類はこれまで、野生のミツバチの習性を探りながら養蜂の技術を発展させてきた。
【0003】
現在、全世界の養蜂技術は、屋外に設けられた養蜂場における養蜂箱内に家畜化されたミツバチを飼育し、自然界の花の蜜や樹液を採取させることを基本にしている。このため、自然界で放射能や農薬に汚染された花の蜜、樹液、花粉又は水が採取される問題があった。
また、ミツバチの法定伝染病や届出伝染病の学術研究、薬剤開発を屋外飼育で行うと、更なる伝染病拡大につながるおそれがある。
【0004】
また、ハチミツは、一般的には専門知識を備えた養蜂業者がミツバチを養って採取し、容器に入れて販売し、最終消費者の手にわたる。このため、最終消費者の手にわたるまでには採蜜からある程度の日数を要するところ、採蜜から日数を経過するとハチミツの香りが減じられるため、採取して間もない新鮮なハチミツを容易に入手することができると好ましい。
【0005】
また、養蜂は、ハチミツや蜜ろうや花粉を得ることに加えて、ミツバチという野生の昆虫の生き方に深く触れるという楽しみを得ることができる。現在、養蜂におけるミツバチの巣作りは次の通りである。ミツバチは、パラフィンやプラスチックで成る薄い板の両面に連続する六角形の刻印を施した人工の巣礎に天然の蜜ろうを薄く施したもの、又は天然素材100%の蜜ろうから作った巣礎を用い、六角形の刻印に沿って、ミツバチの身体から分泌した蜜ろうに唾液を混ぜながら、単房を完成させる。複数の単房が集まった板状のものを巣脾と呼ぶ。自然界では、例えば日本ミツバチでは巣脾は楕円形の板状であり、複数の板状の巣脾が重力方向に平行に並んで半球状の一つの塊を形成する。人工または、自然の巣脾のいずれにおいても、女王バチは半球状の巣の中心部から卵を産み始め、周辺部や下方に産み進んでいく。結果的に一枚の巣脾の中央部から下方にかけては、一つの単房に一つの蜂児(幼虫)が納められ、一枚の巣脾の上方には、花粉やハチミツが蓄えられ、寒い時期の摂食や花がたくさん咲く前の蜂児の餌として使われる。
【0006】
人類は、そのようなミツバチの営みを利用してハチミツや蜜ろうや花粉を採取している。子供時代にミツバチを飼ってミツバチの営みを知ることができれば、自然界と人間との関係を学ぶ一助となり、有意義である。
【0007】
一方、ミツバチは外敵から身を守るための毒針を持っており、身の危険を察知すると人を刺す場合がある。このため、ミツバチは危険な昆虫であるというイメージが持たれており、一般家庭でミツバチをペットのように飼うということは、これまでほとんど考えられなかった。また、ミツバチの寿命は、夏は1~2ヶ月、冬は3~6ヶ月である。従って、ミツバチを観察したりハチミツを採取したり、といったことを継続するためには、死んだミツバチを取り除く作業や新たなミツバチを補充する作業が必要となる。しかし前述のとおりミツバチは人を刺す場合があることから、それらの作業を安全に行うことは困難と考えられていた。
【0008】
特許文献1に、小型化して扱いを簡易にした養蜂箱が記載されている。特許文献1の養蜂箱では、養蜂箱に、開閉自在の蓋を設け、養蜂箱を槌床に固定するにはコ字状の固定具を用いている。特許文献1には、養蜂箱の小型化という着想はあるものの、あくまでも屋外に設ける養蜂箱であり、屋内で蜂を飼うという思想、一般家庭で蜂を飼うという思想はみられない。
【0009】
特許文献2に、アシナガバチ類用飼育容器が記載されている。特許文献2の飼育容器では、上部及び下部に開口部を有する円錐台形の本体と、本体の外側を被覆し、本体に対してスライド可能なカバー部と、本体上部に着脱自在に連結する天板と、本体の下部に着脱自在に連結する底面部を備え、本体及びカバー部には一又は複数の出入り穴が設けられている。特許文献1には、飼育容器を小型にするという着想はあるものの、あくまでも屋外に設ける飼育容器であり、屋内で蜂を飼うという思想、一般家庭で蜂を飼うという思想はみられない。
【0010】
非特許文献1に、閉鎖系飼育室内でのミツバチの飼育に関し、ミツバチ養蜂箱をフライトルームなる網で取り囲み屋内又は屋外で飼育する研究施設について記載がある。非特許文献1には、ミツバチを室内で飼育する着想はあるものの、養蜂箱は従来のものを用いている。また、一般家庭でミツバチを飼う、またはハチミツの生産効率化という思想はみられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000-295937
【特許文献2】特許6808866号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】中村晃・杉本忠美・岡山敦子・迫川朋子・中島千絵著、「閉鎖系飼育室内のフライトルームにおけるミツバチ飼育管理(ミツバチ科学17巻2号:第61頁-第66頁)」、発行:玉川大学ミツバチ科学研究センター、1996年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
容器外に出ることなくミツバチの飼育を継続できる容器を提供することを課題とする。ミツバチの飼育を継続するために、容器の清掃、給餌、採蜜及びミツバチの補充を行うにあたりミツバチを外に出すことなく行うことができる容器を提供することを課題とする。
【0014】
容器外に出ることなく生活したミツバチが作ったハチミツを得る手段を提供することを課題とする。また、容器外に出ることなく飼育できる結果、外敵に襲われることがなく、伝染病や放射線や農薬などの悪影響がない養蜂手段を提供することを課題とする。また、温度、湿度、照明、給餌・給水、貯蜜、ミツバチの状態、等の情報を情報通信網を介して管理者端末に収集し、管理することができるシステムを提供することを課題とする。
【0015】
ミツバチの生活を観察できる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)ミツバチが容器外に出ることなく生活する容器であって、前記容器は、第1室及び第2室と、ミツバチが第1室と第2室間を往来する第1室第2室間巣門と、第1室第2室間巣門を連通と非連通のいずれかに設定する機構と、第1室と第2室を分離不能とする第1室第2室連結機構と、第1室と第2室の分離不能を解除する第1室第2室連結解除機構を備えるミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(2)前記容器に補充するミツバチを収納した補充ミツバチ容器の出口開口が取り付くキャップと、ミツバチが蜜を蓄える巣礎又は巣脾と、ミツバチに餌をあてがう給餌器と、を備えることを特徴とする(1)に記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(3)前記第1室の一壁面と前記第2室の一壁面が接しており、前記第1室の一壁面に備わる第1室巣門と、前記第2室の一壁面に備わる第2室巣門を、双方合致させることにより第1室第2室間巣門が連通し、前記第1室巣門と前記第2室巣門を合致させないことにより第1室第2室間巣門が非連通となることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(4)前記第1室第2室連結機構は、前記第1室と前記第2室を貫通するロッドと、第1室から外部に突出する第1室側ロッド端部に設けた第1室の室内方向に向けたロッドの移動を遮る第1室側ロック機構と、第2室から外部に突出する第2室側ロッド端部に設けた第2室の室内方向に向けたロッドの移動を遮る第2室側ロック機構とを備えることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(5)前記巣礎または巣脾が第1室に備わり、前記給餌器が第2室に備わることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(6)前記第1室及び前記第2室はいずれも壁面に空気孔を備えることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(7)ミツバチに与える餌が、蜂蜜、砂糖、氷砂糖、カラメル、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の糖類のいずれか単体又はこれらを組み合わせたものであることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(8)ミツバチに与える餌にフレーバーを混合することを特徴とする(2)から(7)に記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(9)人工合成の女王蜂フェロモン及び/(又は人工合成の蜂児フェロモンが容器内に施されることを特徴とする(2)から(8)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(10)前記容器内に施されたフェロモンと同一のフェロモンが補充ミツバチ容器に施されることを特徴とする(9)に記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(11)前記容器が透明な素材で成る箇所を備えることを特徴とする(1)から(10)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(12)前記第2室側ロック機構が、ロッドを挿通可能なロッド用貫通孔を有し、前記ロッドを所定の位置で固定可能にするロック機構であって、前記ロッドの周囲に並んで設けられ前記ロッドの延伸方向に沿った一方側方向又は他方側方向に移動可能な複数の球部と、前記一方側方向に移動した際に前記複数の球部同士の距離が縮まることで前記ロッドを固定し、前記他方側方向に移動した際に前記複数の球部同士の距離が広がることで前記ロッドの固定を解除するように前記複数の球部の動きを案内するテーパ状の案内部と、前記複数の球部を前記一方側方向に移動するように付勢する付勢部とを備えることを特徴とする(4)に記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(13)前記ロック機構が、第1キーであって、前記球部に至る通路に挿入された前記第1キーが前記球部を押し動かすことにより前記複数の球部を前記他方側方向に移動せしめる第1キーと、前記球部に至る通路を塞ぎ前記第1キーの通路への挿入を妨げる第2キーを備えることを特徴とする(12)に記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(14)第2室と隣り合う第3室を備え、前記第2室側ロック機構は第3室の室内に備わることを特徴とする(12)又は(13)に記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(15)(2)に記載の補充ミツバチ容器であって、補充ミツバチ容器本体と、補充ミツバチ容器本体の出口開口に設けた容器外フタと、容器外フタの内側に備わる容器内フタを備え、前記出口開口は、前記ミツバチが生活する容器の前記キャップに取り付く形態であり、前記補充ミツバチ容器本体には補充用のミツバチが収納されており、補充用のミツバチは補充ミツバチ容器の前記出口開口が前記ミツバチが生活する容器の前記キャップに取り付いた後に補充ミツバチ容器の出口から前記ミツバチが生活する容器に移動するものであり、容器外フタが取り外された後、補充ミツバチ容器の前記出口が前記ミツバチが生活する容器の前記キャップに取り付くまでの間、前記補充用のミツバチが補充ミツバチ容器の出口から出ることを遮る機構を備えることを特徴とする補充ミツバチ容器によって課題を解決する。
(16)前記補充ミツバチ容器本体と前記容器外フタと前記容器内フタを分離不能とする容器本体容器フタ連結機構と、容器本体と容器フタの分離不能を解除する容器本体容器フタ連結解除機構と、を備えることを特徴とする(15)に記載の補充ミツバチ容器によって課題を解決する。
(17)温度センサーと容器内を冷やすクーラー装置と、容器内を温めるヒーター装置と、送気ファンを備え、容器内の温度が所定温度に保たれることを特徴とする(1)から(14)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(18)湿度センサーと、容器内を加湿する加湿装置を備え、容器内が所定湿度に保たれることを特徴とする(1)から(14)、又は(17)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(19)容器内を撮影するカメラと、容器内にブラックライトを照射するブラックライト照明装置を備えた(1)から(14)、又は(17)のいずれかに記載のミツバチが生活する容器によって課題を解決する。
(20)(1)に記載のミツバチが生活する容器に係る生活容器端末装置又は(15)に記載の補充ミツバチ容器に係る補充ミツバチ容器端末装置と、前記生活容器端末装置又は前記補充ミツバチ容器端末装置と情報通信が可能なシステム管理者装置を備え、生活容器端末装置又は補充ミツバチ容器端末装置が取得した、温度情報、湿度情報、照明情報又は画像情報のいずれかがシステム管理者装置に送信され、システム管理者装置が受信した温度情報、湿度情報、照明情報又は画像情報は、システム管理者装置の記憶装置に記録されるミツバチ情報管理システムによって課題を解決する。
【0017】
ミツバチが容器外に出ることなく、与えられた無害の餌によってハチミツを作ることにより、得られるハチミツは、ミツバチが外界の放射能や農薬に汚染された花の蜜、樹液、花粉又は水から採取することによる影響、更には有毒蜜源による影響、ダニの影響、ボツリヌス菌やウイルスの混入がなくなる。また、ツヅリガやスズメバチやクマの被害もない。
【0018】
屋外に載置した養蜂箱でハチミツを得る場合には、作業者は防御のための対策を行ってもなおミツバチに刺されるが、この出願に係る手段によれば、ミツバチが容器外に出ることがないためそのような心配がない。
【0019】
ミツバチに与える餌に好みのフレーバーを混ぜることにより、様々なハチミツを作ることができる。
【0020】
出願に係る飼育容器を、子供がミツバチの生活の観察に用いる場合、子供が容器を開けようとしても開かない、という状況を作る必要がある。そのために、数段階の操作を経なければ解くことのできないキーを備える構造とした。
【0021】
飼育容器の壁面に設けた空気孔は、ミツバチの呼吸のための空気流入に用いるのみならず、ミツバチを一つの部屋に追いやる際に、内部に風を送り込んだり、内部に二酸化炭素を送り込んだり、容器を水没させて内部に水を流入させる際にも用いる。更に、空気孔は、飼育容器内の温度制御の際の通気口としても用いられる。すなわち、飼育容器内外に電子クーラーや電子ヒーターによる温度制御機器を用いた際の通気孔としても用いられる。
【0022】
容器に、透明な素材で成る箇所を設けることによって、容器内を外部から観察することができる。容器全体を透明にしてもよい。
【0023】
第3室を設け、第3部屋をロック機構が収まる部屋とすることができる。ロック機構はある程度重量があるため、第3部屋を最下段にすることにより、飼育装置全体が安定する。
【発明の効果】
【0024】
容器外に出ることなくミツバチの飼育を継続できる容器を提供することができる。
ミツバチの飼育を継続するために、容器の清掃、給餌、採蜜及びミツバチの補充を行うにあたりミツバチを外に出すことなく行うことができる容器を提供することができる。容器外に出ることなく生活したミツバチが作ったハチミツを得る手段を提供することができる。ミツバチの生活を観察できる容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】実施例に係るロック機構の組立構造図を示す。
【
図4】実施例に係るロック機構の(a)正面図、(b)平面図、(c)横断面図、(d)縦断面図を示す。
【
図9】実施例に係るミツバチを補充する際の飼育容器を示す。
【
図10】実施例に係るミツバチを補充する際の飼育容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照し説明する。
【実施例0027】
[飼育容器の全体構造]
図1及び
図2により、飼育容器の全体構造を説明する。
【0028】
図1及び
図2に示すとおり、飼育容器1は三つの容器が上下に重なって構成されている。すなわち上段容器5、中段容器6、下段容器7が上下方向に並んで構成されている。各容器は、飼育容器1の内部を外から観察できるよう、透明の素材を用いる。上段容器5は上段容器の上フタ8と上段容器の下フタ9を備え、中段容器6は中段容器の上フタ10と中段容器の下フタ11を備え、下段容器7は下段容器の上フタ12と下段容器の下フタ13を備える。上段容器5、中段容器下及び6段容器7は、それぞれの上フタと下フタを閉じた状態で、互いが重なって並んでいる。また、上段容器の上フタ8と上段容器5、下段容器の下フタ13と下段容器7は接着等により一体となっていてもよい。更に上段容器の上フタ8がなく、上段容器5の上部は平たんな面により封じられ連結用孔20aが備わり、また下段容器の下フタ13がなく、下段容器7の下部が平たんな面により封じられていてもよい。
【0029】
図2に示す通り、上段容器の上フタ8には連結用孔20aが備わり、上段容器の下フタ9には連結用孔20bが備わり、中段容器の上フタ10には連結用孔20cが備わり、
中段容器の下フタ11には連結用孔20eが備わり、下段容器の上フタ12には連結用孔20fが備わる。各連結用孔はいずれもフタの中央付近に配置され、上下方向に延びる一本の仮想軸線3(
図2の一点鎖線)上に並んでいる。
【0030】
図1及び
図2に示す通り、上段容器5には巣礎または、巣脾45が配置される。巣脾45は内部に上下方向に延びる貫通管47を備える。巣脾45は、連結ロッド25が貫通管47を貫通し、下方から巣脾留具46で位置決めすることにより、上段容器5に配置される。
【0031】
図1及び
図2に示す通り、中段容器の上フタ10の裏側に、キャップ39が配される。キャップ39には連結用孔20dが備わる。連結用孔20dは一点鎖線で示す中心線3上に並ぶ。キャップ39は、連結ロッド25が連結用孔20dを貫通し、キャップ留具37で止められることにより位置決めされる。キャップ39は、後述のとおりミツバチを補充する際に、補充ミツバチ容器80の出口開口を取り付けて用いる。
【0032】
図1及び
図2に示す通り、中段容器6には給餌器15が備わる。給餌器15の中央付近には中空の突出管16が備わる。連結ロッド25を、給餌器15の突出管16に貫かせ、給餌器15が中段容器内で任意の高さに配置されるよう位置決めする。
図1及び
図2では給餌器15は一つ配置されているが、複数の給餌器を連結ロッド25に貫かせ、複数個の給餌器が縦方向に並ぶように配置してもよい。給餌器を複数個配置した場合、糖分を含む餌、花粉又は代用花粉の餌、水、フレーバー原料を、個々に給餌器に入れることができる。
図1及び
図2に示す通り給餌器15が一つの場合には、上記餌等を一つの給餌器にまとめて入れる。
【0033】
図1及び
図2に示す通り、下段容器7には固定具50が収まる。固定具50には中央付近に案内管56が設けてある。固定具50は、連結ロッド25が固定具50の案内管56を貫通することにより、下段容器7内に配置される。
【0034】
図1及び
図2に示す通り、連結ロッド25が、上方から下方に向けて、上段容器の上フタ8の連結用孔20aから固定具50の案内管56までを貫いて通る。
図1に示す通り、連結ロッド25の上端は、リング26と連結用孔20aの係合により上段容器の上フタ8の上方で留まる。連結ロッド25の下端は、後述のとおり、固定具50との係合により、下段容器内で留まる。連結ロッド25は、上方から順に、連結用孔20a,貫通管47,巣脾留具46,連結用孔20b,連結用孔20c,連結用孔20d,キャップ留具37、突出管16,連結用孔20e,連結用孔20f、案内管56、固定具50の順に、孔や管を貫いて、各部材を連結する。このように連結ロッド25が各部材の孔や管を貫いて各部材を連結し、上端はリング26によって互いが外れないように留め、下端は固定具50によって互いが外れないように留める。これにより、連結ロッド25を固定具50から容易に外すことができない機構とすることにより、連結ロッド25が連結する各部材はバラバラになることがない。また、一方、連結ロッド25から固定具50を取り外すことにより、連結ロッド25により連結していた各部材をバラバラに分割することができる。
【0035】
上段容器の下フタ9には巣門孔30と巣門孔32が開けてある。中段容器の上フタ10には巣門孔34と巣門孔36が開けてある。キャップ39には巣門孔38が開けてある。
【0036】
上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させることにより巣門孔30と巣門孔34を一致させ、一つの孔とすることができる。巣門孔30と巣門孔34を一致させて一つの孔とすることにより、上段容器5と中段容器6の間でミツバチが移動できるようになる。また、上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させて巣門孔30と巣門孔34が不一致となるようにし、これに加えて、上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させることにより、巣門孔32と巣門孔36と巣門孔38の内、3つの巣門が一致しないようにする。これにより、上段容器と中段容器の間でミツバチが移動できないようにできる。
【0037】
上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10とキャップ39を回転させることにより、巣門孔32巣門孔36と巣門孔38を一致させ、一つの孔とすることができる。巣門孔32と巣門孔36と巣門孔38を一致させて一つの孔とすることにより、キャップ39に取り付けた補充ミツバチ容器80と上段容器5の間でミツバチが移動できるようになる。
【0038】
上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させることにより、巣門孔32と巣門孔36と巣門孔38の内、3つの巣門が一致しないようにし、これに加えて、上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させて巣門孔30と巣門孔34が不一致となるようにすることにより、キャップ39に取り付けた補充ミツバチ容器80と上段容器5の間でミツバチが移動できないようにできる。
【0039】
図1及び
図2に示す通り、上段容器5は空気穴40を備え、中段容器6は空気穴41を備え、下段容器7は空気穴42を備える。これらの空気穴は、飼育容器1内のミツバチの呼吸のために開けてある。これらの空気穴は、上段や中段の容器に水を入れてミツバチを上段と中段の容器間で移動させる際に、容器への水の流入口としても機能する。また、これらの空気穴は容器に風を送り込んだり、容器に二酸化炭素を送り込んだりする際にも用いる。
【0040】
[ロック機構とロック解除機構]
図3及び
図4により、固定具50によるロック機構とロック解除機構を説明する。
【0041】
固定具50は、連結ロッド25を挿通可能な貫通孔58を案内管56に備え、連結ロッド25を所定の位置で固定する。固定具50は、複数の球62a,62b,62cと、空所53と、付勢部65とを含むハウジング51とを備えている。ハウジング51は、略円筒状形状であり、付勢部65によって付勢される。球容器60に収納される球62a,62b,62cが空所53に案内される。
【0042】
複数の球62a,62b,62cは、球容器60のガイド孔61a,61b,61cに収容される。球容器60は、略円柱状の部材に上下に貫通孔59が形成されており、かつ、ガイド孔が側面部から中央部に向かうように形成されて貫通孔59と連通している。3つの球は、ガイド孔により、3つの球の距離が縮んだり広がったりするように移動することができる。ガイド孔の中心部には、貫通孔59が形成されている。
【0043】
空所53は、略円錐台の形状であり、側面視では略台形形状である。空所53は、連結ロッド25の延伸方向の一方側方向に向かうにつれて先細りとなるテーパ形状である。このテーパ形状により、3つの球62a,62b,62cが内径側に移動するように案内される。
【0044】
すなわち、空所53は、連結ロッド25の延伸方向の一方側方向に移動した際に複数の球62同士の距離が縮まることで連結ロッド25を固定するように複数の球62a,62b,62cの動きを案内する。また、空所53は、連結ロッド25の延伸方向の他方側方向に移動した際に複数の球62a,62b,62c同士の距離が広がることで連結ロッド25の固定を解除するように複数の球62a,62b,62cの動きを案内する。
【0045】
付勢部65は、3つの球62a,62b,62cを連結ロッド25の延伸方向の一方側方向に移動するように付勢するばね部材である。付勢部65は、一方側端部は3つの球62a,62b,62cを収容する球容器60に固定され、他方側端部は空所53の底面側の付勢部受具66によって固定される。
【0046】
固定具50の作用について説明する。連結ロッド25を貫通孔59に通して、ハウジング51を固定した状態で連結ロッド25を延伸方向の一方側方向に引き上げると、連結ロッド25の周囲に並んで設けられる3つの球62a,62b,62cが従動して引き上げられるとともに空所53の案内テーパ52に押されて互いの距離が縮まるように移動する。これにより、連結ロッド25が3つの球62a,62b,62cに拘束されて固定され、この状態で一方側方向への連結ロッド25の動きを止めることができる。
【0047】
また、上記のようにハウジング51を固定した状態で、連結ロッド25の延伸方向の他方側方向に引き下げると、3つの球62a,62b,62cを収容する球容器60、すなわち、付勢部65の付勢力に抗する方向に力が加わる。そして、付勢部65のコイルばねが縮んで連結ロッド25の延伸方向の他方側方向に移動すると、3つの球62a,62b,62cが従動して引き下げられるとともに空所53が広がるため、3つの球62a,62b,62cの距離が広がって連結ロッド25の固定が解除されることとなる。
【0048】
ハウジング51は、第1キー孔54と第2キー孔55を備える。第1キー孔54にはL字型の第1キー57を挿入できる。第2キー孔55には、第2キー70のシャックル71を挿入できる。
【0049】
第1キー孔54に第1キー57を挿入すると、挿入された第1キー57の先端が球容器60に到達する。第1キー57の挿入を続けると、第1キー57の先端は球容器60をハウジング51内で押し下げる。球容器60はハウジング内で案内テーパ52に沿って互いの距離を広げながら下降するため、複数の球62a,62b,62cによる連結ロッド25の締め付けが解かれ、連結ロッド25の抜き差しが自由にできるようになる。
【0050】
第2キー孔55は、第1キー孔54と交差しており、第2キー孔55に第2キー70のシャックル71を挿入することにより、第1キー57を第1キー孔54に挿入した際に、第1キー57の先端が球容器60に到達するのを妨げる。従って、連結ロッド25の、固定具50との係合を解く際は、まず第2キー70を外し、シャックル71を抜き取る。次に第1キー57を第1キー孔54に挿入し、前述の通り連結ロッド25の、固定具50との係合を解く。なお、シャックル71は金属ロッドではなくワイヤー構造でもよい。
【0051】
[平常時]
図5に、平常時の飼育容器1の状態を示す。平常時、巣門孔30と巣門孔34を一致させてあり、ミツバチは開かれた巣門孔により上段容器5と中段容器6を往来できる。上段容器の上フタ8と中段容器の下フタ11が閉じられているため、ミツバチが飼育容器1から外部に出ることはない。また、空気穴40と空気穴41があるため、飼育容器の内外で空気の出入りもある。飼育容器1の上段容器5又は中段容器6には、女王蜂フェロモン又は蜂児フェロモンを染み込ませた小片が入れてある(図示せず)。これらのフェロモンは、容器に塗布するかあるいは容器に浸み込ませてもよい。なお、後述の補充ミツバチ容器80には、飼育容器のフェロモンと同じフェロモンを施す。ミツバチは給餌器15に置いた餌を食べ、主に中段容器6で排泄する。またミツバチは、女王蜂フェロモンと蜂児フェロモンの作用により、巣脾45にハチミツを作る。
【0052】
[飼育容器の清掃時と餌の補充時]
図6により飼育容器1の清掃と餌の補充について説明する。ミツバチを飼育容器1に入れて日数が経つと、飼育容器1はミツバチの死骸や排泄物で汚れてくる。このため飼育容器1の清掃が必要になる。また、給餌器15の餌を補充する必要もある。清掃時や餌の補充時は、ミツバチを上段容器5に移動させ、上段容器5から出ることができないよう閉じ込める。
【0053】
ミツバチを上段容器5に移動させるには、巣門孔30と巣門孔34を一致させて開通させた状態で、ドライヤーを利用して空気穴41から温風を送るか、あるいは飼育容器1のうち中段容器6と下段容器7を水没させて、中段容器6に空気穴41から水が入るようにする。その際、下段容器7は下段容器の上フタ12と共に取り外してもよい。ミツバチは、風や水を嫌うので、巣門孔を介して、徐々に上段容器5に移動する。全てのミツバチが上段容器5に移動したのを見届けてから、中段容器の上フタ10を回して巣門孔30と巣門孔34を不一致にして巣門孔を閉じる。更に、上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させることにより、巣門孔32と巣門孔36と巣門孔38の内、3つの巣門が一致しないようにする。その結果、ミツバチは上段容器5に閉じ込められる。上段容器5は上段容器の上フタ8と上段容器の下フタ9によって閉じられているのでミツバチは上段容器5から外部に出ることがない。
【0054】
図示しないが、下段容器7内にファンを設け、更に下段容器の上フタ12と中段容器の下フタ11にファンの風が通る通気孔と、下段容器7の下部に空気孔を設けてもよい。ファンからの強い風を中段容器6に送り、中段容器6のミツバチを上段容器5に移動させることができる。また、ファンから弱い風を送り、飼育容器1内の温度を制御することができる。更にはファンを逆回転させることで、上段容器5と中段容器6のゴミを吸引させ、掃除に用いることができる。
【0055】
次に、前述の、固定具50のロックを解除する操作を行い、連結ロッド25を固定具50から取り外す。これにより、中段容器6を中段容器の上フタ10に上段容器の下フタ9を連結した状態で取り外すことができる。この結果、中段容器6内の清掃や餌の補充ができる。尚、通常の餌の補充は、空気穴41を通すことが出来る注射器やスポイトを用いてもよい。
【0056】
中段容器6を清掃し、餌を補充し終えたら、中段容器6を中段容器の上フタ10に回し付けて固定し、連結ロッド25に固定具50を取り付ける。これにより、上段容器5から中段容器6を外すことができなくなる。その後、巣門孔30と巣門孔34を一致させて巣門孔を開通させ、ミツバチが中段容器5と上段容器6を往来できるようにし、平常時の使用状態に戻す。
【0057】
[採蜜時]
図7により、採蜜について説明する。ミツバチを飼育容器1に入れて日数が経つと、巣脾45にハチミツが溜まる。ミツバチの数にもよるが、20匹から30匹のミツバチをコンスタントに飼う場合、数日で採蜜に適した状態になる。また、巣礎の状態からスタートした場合、採蜜に要する期間は、約1ケ月から2ケ月である。採蜜の際には、ミツバチを中段容器6に移動させ、中段容器から出ることができないよう閉じ込める。
【0058】
ミツバチを中段容器6に移動させるには、清掃時と同様、ドライヤーの風や水を利用する。巣門孔30と巣門孔34を一致させて開通させた状態で、上段容器5の空気穴40から風を送るか、あるいは上段容器を水没させて、ミツバチを巣門孔を介して上段容器5から中段容器6に向けて追い出す。全てのミツバチが中段容器6に移動したのを確認した後、上段容器の下フタ9を回して巣門孔30と巣門孔34を不一致にして巣門孔を閉じる。更に、上段容器の下フタ9と中段容器の上フタ10を回転させて巣門孔32と巣門孔36と巣門孔38の内、3つの巣門が一致しないようにする。
【0059】
次に、前述の、固定具50のロックを解除する操作を行い、連結ロッド25を固定具50から取り外す。これにより、上段容器の下フタ9から、上段容器5を取り外すことができる。次に、ハチミツのたまった巣脾45を連結ロッド25から引き抜き、巣脾45に溜まったハチミツを手で押し付けたり、ローラーを用いて絞る。また、天然素材100%の蜜ろうから作った巣礎を用いた場合は、巣脾45だけを切り抜いて巣蜜として食用に利用できる。また、巣脾45を低温加熱して垂れ蜜を抽出することができる。更には、巣脾45をフローハイブ方式(外部操作で直接ハニカム部からハチミツを抽出する方法)にすれば、ハチミツだけを抽出することができる。
【0060】
[ミツバチの補充時]
図8から
図10により、ミツバチの補充について説明する。働きバチの寿命は数カ月であるので、働きバチのみを飼育し、働きバチのみのコロニーとする場合には、順次、補充が必要となる。女王蜂を共に飼育し、女王蜂もいるコロニーとした場合には、働きバチが順次更新されるので、補充が不要である。
【0061】
図8により、補充ミツバチ容器80について説明する。(a)は輸送時の補充ミツバチ容器を示す。(b)は飼育容器1にミツバチを移送する直前の補充ミツバチ容器80を示す。
【0062】
図8の(a)に示す通り、補充ミツバチ容器80は、本体容器81と、中フタ84と、外フタ83を備える。補充するミツバチは本体容器81に入れてある。中フタ84と外フタ83が本体容器81から容易に外れないよう、連結ロッド93によって、フタ(中フタ84と外フタ83)と本体容器81が連結されている。連結ロッド93は、フタ(中フタ84と外フタ83)側の一端がカギ型端部94になっており、本体容器81側の一端には固定具90が取り付けてある。固定具90の構造は、固定具50(
図3等)と同じであるので省略する。第1キー孔96にキー(
図3等に示す第一キー57と同様のキー)を差し込みやすくするために、本体容器81には凹部82が設けてあり、また、固定具90は延長部92を備える。固定具90は、固定具50(
図3等)と同様、第2ロック具95を備え、固定具50を本体容器81から容易に取り外すことができないようにしてある。本体容器81には空気穴87が開けてあり、輸送中にミツバチが呼吸できるようにしている。
【0063】
図8の(b)に示す通り、飼育容器1にミツバチを移送する際には固定具90のロックを解除し、固定具90をロッド93から取り外す。固定具90をロッド93から取り外した結果、本体容器81とフタ(中フタ84と外フタ83)を分離できる状態となっている。飼育容器1にミツバチを移送する際には、まず、外フタ83のみを外す。
【0064】
図9と
図10により、補充ミツバチ容器80から飼育容器1へのミツバチの移送を説明する。
図9の(a)(b)(c)と
図10の(d)(e)は、2つの図面により(a)から(e)の一続きの手順を示している。
【0065】
(a)補充ミツバチ容器80から飼育容器1にミツバチを移送するにあたり、まず、飼育容器1の残存ミツバチを上段容器5に閉じ込める。飼育容器1の残存ミツバチを上段容器5に閉じ込める方法は、
図6で説明した通りである。連結ロッド25は、飼育容器1において、上段容器5と、上段容器5の上フタ8と、上段容器5の下フタ9と、キャップ39を連結し、飼育容器1から突出している。連結ロッド25に、固定具50を挿入し、固定具50を補充ミツバチ容器80の本体容器81の上部開口に挿入する。補充ミツバチ容器80の本体容器81の上部開口の内径は、固定具50の外径がちょうど収まる大きさにしておく。固定具50が、補充ミツバチ容器80にある程度深く入り込むことができるよう、(a)に示す通り、長さ調節のための調整具99を用いる。
【0066】
(b)固定具50を、補充ミツバチ容器80の本体容器81にさらに差し入れる。固定具50が本体容器81の中フタ84を押し込み、本体容器81の中に落下させる。この時、固定具50が本体容器81の中フタ84に代わって本体容器81の上部開口を閉じているため、本体容器81の中のミツバチは外部に出てこない。
【0067】
(c)本体容器81の上端が飼育容器1のキャップ39に到達する。前述の調整具99は、本体容器81の上端が飼育容器1のキャップ39に到達するまで固定具50が本体容器81の上部開口を閉じ続けることができるように、固定具50の位置を調整するために用いるものである。
【0068】
(d)本体容器81をキャップ39にねじ込み、本体容器81をキャップ39で完全に閉じる。
【0069】
(e)飼育容器1の上段容器の下フタ9と、中段容器の上フタ10を回転させて、巣門孔32、巣門孔36、巣門孔38を一致させ、巣門孔を連通させる。本体容器81の中のミツバチを上段容器5に移動させる。スムーズに移動しない場合、本体容器81を水没させ、本体容器81に、空気穴87から水を入れる。本体容器81の中の全てのミツバチが上段容器5に移動した後、巣門孔32と巣門孔36と巣門孔38の内、3つの巣門が一致しないように連通を閉じ、本体容器81をキャップ39から外す。
【0070】
[ミツバチのフェロモンの利用]
出願に係るミツバチは、女王のいないコロニーと女王がいるコロニーのいずれも、容器内で外に出ることなく生活する。そのような環境下、女王のいないコロニーで採蜜行動を持続させるには、女王蜂フェロモンや、蜂児フェロモンが必要である。これらのフェロモンがあることにより、ミツバチは女王や蜂児がいると錯覚し、採蜜行動を持続する。女王蜂フェロモンと蜂児フェロモンは、いずれも複数種、人工合成されており、また、濃度の調整も可能である。よって季節や環境に応じて最適なフェロモンを調整し、ミツバチの生活環境に施す。フェロモンを施す手段は、例えば飼育容器1(上段容器5及び/又は中断容器6)にフェロモンを染み込ませた小片を入れる。また例えば容器に塗布するかあるいは容器に浸み込ませる。補充ミツバチ容器80にフェロモンを施す手段は、飼育容器1に施す場合と同様である。また、人工合成の女王蜂フェロモンの代替として、籠に閉じ込めた女王蜂を用いることや、人工合成の蜂児フェロモンの代替として、卵や幼虫が入った巣脾を用いても良い。
【0071】
ミツバチが生活する飼育容器1に施すフェロモンと、補充するミツバチを入れた補充ミツバチ容器80では、同じフェロモンを用いる必要がある。ミツバチを補充する際、それまで生活していたミツバチと、補充するミツバチにおいて同じフェロモンを用いる。補充するミツバチとそれまで生活していたミツバチとの間でフェロモンが異なると、それぞれのミツバチは、互いを異なる集団のミツバチであると判断し争う場合があるためである。また、補充するミツバチは、飼育容器に入る前の環境(補充ミツバチ容器内の環境)と飼育容器に入った後の環境が異なると、環境の変化により病気になる場合があるためである。さらに、フェロモンを使うことにより、ミツバチの落ち着きが見られ、長寿命化の効果がある。
【0072】
[ハチミツの生産量の維持向上]
図示しないが、次に述べるとおり、温度管理、湿度管理、ライトの照射により、飼育容器1においてミツバチが生産するハチミツの量を維持向上することができる。
【0073】
(1)温度管理
飼育容器1および補充ミツバチ容器80において、温度管理のために次の通りの温度制御システムを設ける。各容器の最下部に、ペルチェ素子を用いた電子クーラーと、電子ヒーターと、室内温度均一化のための撹拌用のファンを設ける。各容器の最上部に、熱電対式の温度センサーと、温度設定調節器と、全ての電力を賄うUSB充電式のバッテリー電源を設ける。
【0074】
上記温度制御システムによって容器内温度を22℃に維持したところ、ミツバチが活発に動き回ることが確認された。また、飼育容器1の巣脾45に代えて巣礎を置き、水、砂糖50%の砂糖水、ビール酵母に砂糖水を混ぜた練り餌を与えたところ、20匹の働きバチだけのミツバチコロニーで、約2週間で巣脾45が完成した。その後約2週間の貯蜜を行い、糖度80%のハチミツが生産された。
【0075】
容器内温度20℃から35℃までの範囲では、温度とハチミツ生産速度はほぼ比例関係にある。外気温の上昇で容器内温度が35℃を超えた場合、電子クーラーで冷やすことにより、容器内の温度を35℃に維持することができ、これによりハチミツの生産量も維持できる。
【0076】
通気性を向上させるために空気穴40の数を増やしてもよい。容器内の温度が35℃を超えた場合に空気孔40を開くバイメタル式のシャッターを付けてもよい。また、省エネルギーのために、容器の外側にウレタン樹脂や発泡スチロールの断熱材を用いるか、あるいは容器外壁を二重にして、容器内の温度の維持を補助してもよい。
【0077】
容器内部の温度が15℃まで下がると、ミツバチの活性が下がり、貯蜜もしないことが判明した。このようなミツバチの特性を利用してた容器内の温度をコントロールし、ハチミツの生産量をコントロールすることができる。
【0078】
外気温が高い夏場に、大型大容量の補充ミツバチ容器を運搬する場合、大容量バッテリーが必要となるため、クール便(約5℃)での輸送が適している。
【0079】
(2)湿度管理
飼育容器1および補充ミツバチ容器80において、湿度管理のために超音波式の加湿器と湿度センサーで構成する湿度制御システムを設ける。容器内湿度が60%から80%の間の任意湿度に制御することで、ミツバチの活性を維持できる。
【0080】
(3)ライトの照射
飼育容器1および補充ミツバチ容器80において照明装置を設置する、通気性のある布製黒色の暗室用のカバーを常時施し、容器内部に昆虫が好むブラックライトの照明を設置したところ、ブラックライトは1日のうち12時間だけ点灯させることで、貯蜜量が最大になることがわかった。
【0081】
[管理システム]
図示しないが、システム管理者のコンピュータと、飼育容器で成る端末のコンピュータと、補充ミツバチ容器で成る端末のコンピュータを、ネットワークまたはLAN等の情報通信網で接続する。
【0082】
図示しないが、飼育容器1および補充ミツバチ容器80において、温度センサー、湿度センサー、照明装置、に加えて、カメラによる撮影装置と、時計装置を設置する。撮影装置により、水や餌類の残量、貯蜜量、ミツバチの状態、等、容器内の状態を撮影し画像情報を得る。画像情報により、ミツバチの活性度合いを観察することができる。また、ミツバチの病気の発生等、ハチミツの生産を阻害する要因をみつけることができる。
【0083】
温度センサーにより温度情報を得る。湿度センサーにより湿度情報を得る。照明装置により照射した照明の種類の情報(照明情報)を得る。撮影装置により撮影画像に関する情報(画像情報)を得る。温度情報、湿度情報、照明情報、及び画像情報は、いずれも時計装置より得た時刻情報と共に、飼育容器で成る端末のコンピュータの記憶装置と補充ミツバチ容器で成る端末のコンピュータの記憶装置に記録される。
【0084】
飼育容器で成る端末のコンピュータの記憶装置に記録された温度情報、湿度情報、照明情報、画像情報及び時刻情報は、情報通信網を介してシステム管理者のコンピュータに送られ、システム管理者のコンピュータの記憶装置に記録される。補充ミツバチ容器で成る端末のコンピュータの記憶装置に記録された温度情報、湿度情報、照明情報、画像情報及び時刻情報は、情報通信網を介してシステム管理者のコンピュータに送られ、システム管理者のコンピュータの記憶装置に記録される。システム管理者のコンピュータに記録された各データは、ハチミツの生産量を調整するためのデータとして用いられる。
【0085】
システム管理者のコンピュータには、画像処理装置が備わり、端末から送られた水や餌類の残量の画像により、残量が判断される。残量がしきい値を下回った場合には自動的に給水給餌が行われる。
【0086】
システム管理者のコンピュータには、画像処理装置が備わり、端末から送られた貯蜜量の画像により、貯蜜量が判断される。また、端末に送られた容器内の状態の画像により、ダニ類発生の有無、ミツバチの動静、等が判断される。
【0087】
本発明は、外に出ることなくミツバチの飼育を継続できる容器を提供する。養蜂スペースは、飼育容器の容量のみで足りる。飼育容器のみにより、清掃、給餌、採蜜及びミツバチの補充、のすべてが行える養蜂が実現する。
【0088】
また、実施例に記載した通りの構成で成る飼育容器を、例えば100リットル程度の大型にすることができる。このような大型容器にした場合、一般的な養蜂と同等の最大数万匹まで、ミツバチを飼育することが可能である。すなわち、一般的な養蜂のような広大な蜜源や養蜂箱置場を用いることなく、本発明の飼育容器により、一般的な養蜂の数十倍以上の密度でミツバチを飼育できる。
【0089】
本発明の飼育容器により飼育すれば、ミツバチは外敵に襲われることがない。また、隔離された空間での飼育のため、伝染病や放射線や農薬などの悪影響がない。温度・湿度・照明・給餌・給水・採蜜を自動制御化できるので、世界中のどのような地域でも、ハチミツ生産が可能となる。さらに、給餌にフレーバーを加えることにより、顧客の多様なニーズに応えることができる。
【0090】
本発明技術は、将来、安全かつ衛生的な飼育環境で、高品質・多種類・24時間大量生産できるプラント建設により、ハチミツをリーズナブルに提供できる。
1 飼育容器、3 仮想軸線、5 上段容器、6 中段容器、7 下段容器、8 上段容器の上フタ、9 上段容器の下フタ、10 中段容器の上フタ、11 中段容器の下フタ、12 下段容器の上フタ、13 下段容器の下フタ、15 給餌器、16 突出管、20a~20f 連結用孔、25 連結ロッド、26 リング、30 巣門孔、32 巣門孔、34 巣門孔、36 巣門孔、37 キャップ留具、38 巣門孔、39 キャップ、40 空気穴、41 空気穴、42 空気穴、45 巣脾、46 巣脾留具、47 貫通管、50 固定具、51 ハウジング、52 案内テーパ、53 空所、54 第1キー孔、55 第2キー孔、56 案内管、57 第1キー、58 案内管の貫通孔、59 ガイド孔の貫通孔、60 球容器、61a~61c ガイド孔、62a~62c 球、65 付勢部、66 付勢部受具、70 第2キー、 71 シャックル、80 補充ミツバチ容器、81 本体容器、82 凹部、83 外フタ、84 中フタ、87 空気穴、90 固定具、92 延長部、93 連結ロッド、94 カギ型端部、95 第2ロック具、96 第1キー孔、99 調整具。