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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064319
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】樹木処理装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/00 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
A01G23/00 514Z
A01G23/00 514B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174529
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】千田 薫
(72)【発明者】
【氏名】小原 英樹
(57)【要約】
【課題】ソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を自動的に調整できるようにして、ソーチェーンの張力の点検や調整に掛かる手数を削減するとともに、ソーチェーンとガイドバーの脱着を工具不要で可能とし、ソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を常に適切な状態にすることにより、チェーンソーの故障を防止する。
【解決手段】樹木Wを切断する切断部50を備えた樹木処理装置100であって、切断部50は、ガイドバー55と、ガイドバー55の周囲に掛け回されるソーチェーン56と、ソーチェーン56を駆動させる駆動スプロケット59と、ガイドバー55を保持する保持部60とを備え、保持部60は、油圧力を用いてガイドバー55を挟持するとともに、油圧力を用いてソーチェーン56の張力を調整する、張力調整部80を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木を切断する切断部を備えた樹木処理装置であって、
前記切断部は、
ガイドバーと、
前記ガイドバーの周囲に掛け回されるソーチェーンと、
前記ソーチェーンを駆動させる駆動スプロケットと、
前記ガイドバーを保持する保持部とを備え、
前記保持部は、
油圧力を用いて前記ガイドバーを挟持するとともに、油圧力を用いて前記ソーチェーンの張力を調整する、張力調整部を有する、
樹木処理装置。
【請求項2】
前記張力調整部は、
前記駆動スプロケットを支持する保持部本体と、
前記駆動スプロケットから離れる方向に移動可能となるように前記保持部本体に取り付けられるとともに、前記保持部本体との間で前記ガイドバーの一端部を挟持し、かつ、前記ガイドバーに係合する、挟持部と、
油圧により、前記挟持部を前記駆動スプロケットから離れる方向に押圧する張力押圧部と、を有する、
請求項1に記載の樹木処理装置。
【請求項3】
前記張力調整部は、
前記保持部本体と前記挟持部との間で前記ガイドバーの一端部を挟持する挟持力を生じさせるように、油圧によって前記挟持部を押圧する挟持押圧部をさらに有する、
請求項2に記載の樹木処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造材作業を行う樹木処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハーベスタまたはプロセッサ等の樹木処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。樹木処理装置は、油圧ショベル等のベースマシンに設けられた作業アームに取り付けられて造材作業に用いられる。樹木処理装置のうちプロセッサを用いた造材作業では、伐採された樹木の枝払い作業と、枝払いされた樹木(材)を任意の長さに切断して丸太を形成する切断作業が連続して行われる。ハーベスタを用いた造材作業では、立木の伐倒作業を行うこともできる。
【0003】
樹木処理装置は、主に把持部、送材部、測長部、枝払い部、および切断部を有している。把持部は、造材作業の対象となる樹木に複数の送材部を押し付けて樹木を把持する。送材部は、樹木に押し付けられた状態でクローラチェーンを駆動走行させることにより、樹木を材長方向に送出する。
【0004】
測長部は、樹木(材)を送出させた長さ、つまり材の長さを計測(測長)する。測長部によって材の長さを計測し、予め設定した長さまで材を送出したところで送材部は材の送出を停止する。
【0005】
枝払い部は、送材部によって勢いよく送出される樹木の枝にカッタを当接させて枝払いを行う。切断部は、設定された長さまで送出された樹木(材)をチェーンソーで切断することにより、所望の長さの丸太を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-157075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、切断部に設けられているチェーンソーは、ガイドバーの周囲にソーチェーンが掛け回されている。ソーチェーンは使用に伴う磨耗等により伸びを生じるため、張力が低下してガイドバーに対して緩んだ状態になる場合がある。ソーチェーンが緩んだ状態のまま樹木処理装置を使用するとチェーンソーに故障が生じるおそれがある。このため、ソーチェーンの張力の点検や、張力の調整を行う必要があった。
【0008】
しかしながら、ソーチェーンの張力の点検は作業者が手作業で行っており、点検に手数を要していた。また、ソーチェーンの張力の調整も、作業者が手作業でガイドバーの位置を調整することによって行われており、張力の調整にも手数を要していた。さらに、ソーチェーンの点検や調整に手数が掛かるため省いてしまい、点検や調整が不十分になる場合があり、チェーンソーに故障が生じる場合があった。
【0009】
本発明の目的は、切断部のソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を自動的に調整できるようにして、ソーチェーンの張力の点検や調整に掛かる手数を削減するとともに、ソーチェーンとガイドバーの脱着を工具不要で可能とし、ソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を常に適切な状態にすることにより、チェーンソーの故障を防止することができる樹木処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹木処理装置は、
樹木を切断する切断部を備えた樹木処理装置であって、
前記切断部は、
ガイドバーと、
前記ガイドバーの周囲に掛け回されるソーチェーンと、
前記ソーチェーンを駆動させる駆動スプロケットと、
前記ガイドバーを保持する保持部とを備え、
前記保持部は、
油圧力を用いて前記ガイドバーを挟持するとともに、油圧力を用いて前記ソーチェーンの張力を調整する、張力調整部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹木処理装置によれば、切断部のソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を油圧によって自動的に調整することができ、ソーチェーンの張力の点検や調整に掛かる手数を削減することができる。また、ソーチェーンとガイドバーの脱着を工具不要で可能とし、ソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を常に適切な状態にすることにより、チェーンソーの故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係る樹木処理装置が取り付けられたベースマシンの側面図である。
図2図2は、樹木処理装置の側面図である。
図3図3は、樹木処理装置の上面図である。
図4図4は、樹木処理装置によって伐倒造材作業を行う状態を示す図である。
図5図5は、樹木処理装置によって造材作業を行う状態を示す図である。
図6図6は、樹木処理システムによって造材作業を行う状態を示す平面図である。
図7図7は、樹木処理装置の油圧回路の概略構成を示す図である。
図8図8は、切断部の後面図である。
図9図9は、張力調整部の概略構成を示す図である。
図10図10は、張力調整部の構成および動作を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる樹木処理装置は、樹木を切断する切断部を備えた樹木処理装置であって、
前記切断部は、
ガイドバーと、
前記ガイドバーの周囲に掛け回されるソーチェーンと、
前記ソーチェーンを駆動させる駆動スプロケットと、
前記ガイドバーを保持する保持部とを備え、
前記保持部は、
油圧力を用いて前記ガイドバーを挟持するとともに、油圧力を用いて前記ソーチェーンの張力を調整する、張力調整部を有する(第1の構成)。
【0014】
上記構成によれば、張力調整部は、油圧力を用いてガイドバーを挟持するとともに、油圧力を用いてソーチェーンの張力を調整する。
このため、ソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を油圧によって自動的に調整することができ、ソーチェーンの張力の点検や調整に掛かる手数を削減することができる。また、ソーチェーンとガイドバーの脱着を工具不要で可能とし、ソーチェーンの張力とガイドバーの挟持を常に適切な状態にすることにより、チェーンソーの故障を防止することができる。
【0015】
上記第1の構成において、
前記張力調整部は、
前記駆動スプロケットを支持する保持部本体と、
前記駆動スプロケットから離れる方向に移動可能となるように前記保持部本体に取り付けられるとともに、前記保持部本体との間で前記ガイドバーの一端部を挟持し、かつ、前記ガイドバーに係合する、挟持部と、
油圧により、前記挟持部を前記駆動スプロケットから離れる方向に押圧する張力押圧部と、を有してもよい(第2の構成)。
【0016】
上記構成によれば、張力押圧部は、ガイドバーに係合する挟持部を駆動スプロケットから離れる方向に油圧によって押圧する。
このため、油圧によって自動的にソーチェーンの張力を最適な張力に調整することができる。
【0017】
上記第2の構成において、
前記張力調整部は、
前記保持部本体と前記挟持部との間で前記ガイドバーの一端部を挟持する挟持力を生じさせるように、油圧によって前記挟持部を押圧する挟持押圧部をさらに有してもよい(第3の構成)。
【0018】
上記構成によれば、挟持押圧部は、保持部本体と挟持部との間でガイドバーの一端部を挟持する挟持力を油圧によって生じさせる。
このため、ソーチェーンの張力が最適となる位置で、油圧によってガイドバーを保持することができる。
【0019】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る樹木処理装置100を詳しく説明する。
【0020】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。図中、矢印Fは前方を示し、矢印Bは後方を示す。矢印Lは左方を示し、矢印Rは右方を示す。矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示す。
【0021】
本明細書では、立木または立木を伐倒した枝付きの木(全木材)を樹木Wとし、枝払いが行われた全幹材を材Wとし、材を玉切りしたものを丸太WLとするが、これらを区別せずに樹木W、または材Wとして説明する場合がある。
【0022】
[全体構成]
図1は、実施形態1に係る樹木処理装置100が取り付けられたベースマシン200の側面図である。図1に示すように、樹木処理装置100がベースマシン200に取り付けられることで樹木処理システム300が構成される。
【0023】
ベースマシン200は、油圧ショベルであり、下部走行体110、上部旋回体120、作業アーム130、および運転室150を備えている。なお、ベースマシンは油圧ショベルに限らない。例えばホイール式のベースマシンが用いられてもよい。
【0024】
下部走行体110は、無限軌道装置112を有している。無限軌道装置112は、駆動輪で履帯を循環させて走行するための装置である。
【0025】
上部旋回体120は、下部走行体110に対して旋回自在に支持されている。上部旋回体120は、油圧アクチュエータを備えた旋回装置114により下部走行体110に対して旋回駆動される。
【0026】
作業アーム130は、上部旋回体120から延びて屈曲動作および伸長動作を行う多関節アームである。先端には、樹木処理装置100が取り付けられている。作業アーム130は、油圧制御で動作し、樹木処理装置100の方向や位置を変更させる。作業アーム130は、ブーム131、アーム133、および樹木処理装置100の先端アーム135を有している。
【0027】
ブーム131は、上部旋回体120の前側において起伏可能に支持されている。ブーム131は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ141によって起伏可能である。
【0028】
アーム133は、ブーム131の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。アーム133は、油圧アクチュエータであるアームシリンダ143によって揺動可能である。
【0029】
樹木処理装置100の先端アーム135は、アーム133の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。先端アーム135は、アーム133の先端の第1支持ピン136と、リンク部材138の一端に設けた第2支持ピン137とに連結されている。リンク部材138の他端はアーム133の先端に連結されている。リンク部材138には、バケットシリンダ145の先端が連結されている。
【0030】
ブーム131、アーム133、および先端アーム135は、ブームシリンダ141、アームシリンダ143、およびバケットシリンダ145によって起伏が可能である。また、ブーム131、アーム133、および先端アーム135の旋回は、旋回装置114により上部旋回体120を旋回させることによって行われる。
【0031】
運転室150は、上部旋回体120に設けられている。オペレータは、運転室150に搭乗して、運転室150内の操作機器を操作することで、下部走行体110の走行操作、上部旋回体120の旋回操作、作業アーム130の駆動操作、および樹木処理装置100の操作などを行う。
【0032】
樹木処理装置100は、ハーベスタであり、立木である樹木Wを把持して伐倒するとともに、樹木Wを材長方向に送り出しながら造材作業を行う装置である。樹木処理装置100は、樹木Wの枝を切断する枝払い機能や、樹木Wを所定長さで切断する切断機能を備えている。樹木処理装置100の駆動を制御する制御部95は、ベースマシン200の運転室150に配置されている。
【0033】
図2は、樹木処理装置100の側面図である。図3は、樹木処理装置100の上面図である。図2および図3に示すように、樹木処理装置100は、樹木処理装置本体11、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、切断部50、および制御部95を有している。
【0034】
樹木処理装置本体11は、樹木処理装置100の基体をなす部分である。樹木処理装置本体11は、チルト部25のチルトアーム27、およびローテータ13を介して、先端アーム135に取り付けられている。
【0035】
把持部20は、複数の送材部30を開閉させて、樹木Wを把持または開放する部分である。把持部20は、開閉機構21を有している。開閉機構21は、開閉用油圧シリンダ23(図7参照)によって作動し、複数の送材部30を開閉させて、樹木Wを把持または開放する。
【0036】
チルト部25は、立木Wの伐倒および樹木Wの把持を行うために樹木処理装置100の姿勢を切り換える部分である。チルト部25は、チルトアーム27を有している。チルトアーム27には、樹木処理装置本体11が起倒可能に取り付けられている。チルト部25は、チルト用油圧シリンダ28(図5図7参照)によって作動し、チルトアーム27に対して樹木処理装置本体11を起倒させる。樹木処理装置本体11は、チルト部25によって、上下方向に向けた第1姿勢P1(図4a参照)と、水平方向に向けた第2姿勢P2とに姿勢を切り換えることができる(図2および図4b参照)。
【0037】
送材部30は、把持した樹木Wを材長方向に送出する部分である。本実施形態では、送材部30は2基設けられている。2基の送材部30は、図3に示すように、相互に対向するように把持部20の開閉機構21に設けられている。送材部30は、それぞれフレーム31、送材用駆動モータ34、およびクローラチェーン35を有している。
【0038】
フレーム31は、開閉機構21に取り付けられている。クローラチェーン35は、フレーム31に支持された駆動スプロケットおよび従動スプロケットに掛け回されている。送材用駆動モータ34は、駆動スプロケットを回転駆動させることによりクローラチェーン35を走行させる。2基の送材部30を樹木Wに押し付けるようにして樹木Wを把持し、2基のクローラチェーン35を同方向に駆動走行させることにより、把持した樹木Wを材長方向に送出することができる。
【0039】
2基の送材部30の間隔は変化させることが可能である。樹木Wを送出する際、樹木Wの位置によって樹木Wの径が変化するため、樹木Wの径の大きさに対応して送材部30の間隔が油圧力によって変化する。また、樹木Wの径が大きくなって送材部30を押し広げる力が作用した場合には、送材部30が開閉機構21の油圧力に抗して外側に開くことが可能になっている。
【0040】
送材部30には測長部(図示せず)が取り付けられており、樹木Wの送出量を計測する。測長部は、エンコーダによって駆動スプロケット(送材用駆動モータ34)の回転を検知することにより、クローラチェーン35の走行量を検知する。
【0041】
枝払い部40は、送材部30によって送出される樹木Wの枝払いを行う部分である。枝払い部40は、開閉体41およびカッタ43を有している。開閉体41は、開閉可能であり、閉じた状態では把持部20によって把持された樹木Wの外周面を取り囲むように配置される。開閉体41は、開閉体用油圧シリンダ42(図7参照)によって作動する。カッタ43は、開閉体41の一方の側部に取り付けられている。カッタ43は、送材部30によって送出される樹木Wの表面に摺接して樹木Wの枝を切断する。なお、開閉体41の動作は、制御部95から入力される制御信号に応じて開閉動作を行ってもよいが、把持部20に連動して動作するようにしてもよい。
【0042】
切断部50は、送材部30によって所定長さ送出された材Wを切断して玉切りする部分である。切断部50は、送材部30に対して、枝払い部40とは反対側の端部に設けられている。切断部50は、チェーンソー51を有している(図5参照)。切断部50は、制御部95から入力される制御信号に応じてチェーンソー51が駆動されて切断動作が実行される。
【0043】
図4は、樹木処理装置100によって伐倒造材作業を行う状態を示す図である。図4aは、樹木処理装置100によって立木Wを伐倒する状態を示している。図4bは、樹木処理装置100によって樹木Wを方向D1に向けて送材しながら枝払いを行う状態を示している。
【0044】
図4aに示すように、樹木処理装置100によって立木Wを伐倒する場合、チルト部25を作動させて、樹木処理装置本体11の姿勢を上下方向に向けた第1姿勢P1の状態にする。第1姿勢P1では、枝払い部40が上方となり、切断部50が下方となる。この第1姿勢P1のまま、把持部20を作動させて2基の送材部30で立木Wの根元付近を把持し、その状態で切断部50のチェーンソー51を作動させて立木Wの根元を切断する。
【0045】
続いて図4bに示すように、切断した樹木Wを2基の送材部30で把持した状態のまま、チルト部25を作動させて、樹木処理装置本体11の姿勢を水平方向に向けた第2姿勢P2に切り換える。これにより、樹木処理装置100によって立木Wを伐倒することができる。
【0046】
樹木処理装置100によって立木Wを伐倒した後、続いて2基の送材部30のクローラチェーン35を同一方向に駆動走行させ、樹木Wを方向D1に向けて送材する。このとき、枝払い部40のカッタ43を送材部30によって送り出される樹木Wの表面に摺接させて樹木Wの枝を切断する。
【0047】
送材部30の測長部は、送出された樹木Wの移動量を検知し、樹木Wの切り口WPから切断部50までの長さを計測(測長)する。そして、予め設定した長さまで材Wを送出したところで送材部30を停止させ、切断部50で材Wを切断することにより、所望の長さの丸太WLを形成する。
【0048】
図5は、樹木処理装置100によって造材作業を行う状態を示す図である。図5では、切断部50で材Wを切断する状態を示している。切断部50は、チェーンソー51、およびソー用油圧シリンダ52を有している。
【0049】
チェーンソー51は、ガイドバー55、ソーチェーン56、ソー用駆動モータ57を有している。ガイドバー55は、ソーチェーン56を案内する板状部材である。ガイドバー55は、支持軸58によって揺動可能に支持されている。ソーチェーン56は、ガイドバー55および駆動スプロケット59(図8参照)に掛け回されている。駆動スプロケット59には、ソー用駆動モータ57が連結されている。ソー用駆動モータ57は、油圧モータである。作動油によってソー用駆動モータ57が回転することにより、ソーチェーン56が回転駆動されて切断動作が実行される。
【0050】
なお、本実施形態では、チェーンソー51は張力調整部80(図8参照)を有している。張力調整部80は、油圧力を用いてガイドバー55を挟持するとともに、油圧力を用いてソーチェーン56の張力を調整する。張力調整部80については後に詳細に説明する。
【0051】
ソー用油圧シリンダ52は、チェーンソー51を材Wの径方向に進退するように揺動させるアクチュエータである。作動油によってソー用油圧シリンダ52が伸縮することにより、チェーンソー51が材Wの径方向に進退するように揺動されて切断動作が実行される。
【0052】
図5では、切断部50で玉切りされた丸太WLが、送材部30で把持された材Wから離脱している状態を示している。送材部30で把持された材Wには、新たな切り口WPが形成されている。次の丸太WLを形成する場合には、送材部30で材Wを送出させながら、測長部により新たな切り口WPから切断部50(チェーンソー51)までの長さを計測(測長)する。予め設定した長さまで材Wを送出したところで送材部30を停止させ、切断部50で材Wを切断することにより、所望の長さの丸太WLを形成する。
【0053】
図6は、樹木処理システム300によって造材作業を行う状態を示す平面図である。図6aに示すように、送材部30で材Wを送出させながら、切り口WPから切断部50までの長さを計測する。材Wには、先に切断部50で切断された切り口WPが形成されている。材Wの長さが予め設定した長さLPに到達したところで、送材部30を停止させる。
【0054】
図6aに示した状態において、切断部50で材Wを切断することにより、図6bに示すように、所望の長さの丸太WLを形成することができる。新たに形成された切り口WPの位置は、切断部50のチェーンソー51の位置に一致している。続いて同じ樹木Wから丸太WLを形成する場合には、新たに形成された切り口WPを基準にして、同様に材長LPの計測と玉切りを行うことにより、連続的に丸太WLを形成することができる。
【0055】
図7は、樹木処理装置100の油圧回路90の概略構成を示す図である。図7に示すように、油圧回路90では、作動油タンク91および油圧ポンプ部92から供給される作動油によって、ローテータ13、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部50の駆動が行われるように構成されている。本実施形態では、図示しない操作レバー等を操作することや、制御部95からの制御信号によって、ローテータ13、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部50の駆動制御を行うことが可能になっている。
【0056】
ローテータ13は、ローテータ用駆動モータ14を有している。作動油によってローテータ用駆動モータ14が正転、逆転、および停止することにより、樹木処理装置100の方向を制御することができる。
【0057】
把持部20は、開閉機構21を作動させる開閉用油圧シリンダ23を有している。作動油によって開閉用油圧シリンダ23が伸縮することにより、2基の送材部30を開閉させて、樹木Wを把持または開放する。
【0058】
チルト部25は、チルト用油圧シリンダ28を有している。作動油によってチルト用油圧シリンダ28が伸縮することにより、チルトアーム27に対して樹木処理装置本体11を起倒させ、樹木処理装置本体11の姿勢を第1姿勢P1(図4a参照)と第2姿勢P2とに切り換えることができる(図2および図4b参照)。
【0059】
送材部30は、2基の送材用駆動モータ34を有している。作動油によって送材用駆動モータ34を回転させることにより、クローラチェーン35を駆動させて樹木Wを送出する。また、材Wを所定長さ送出させた位置において材Wを切断部50で玉切りできるように、送材用駆動モータ34を駆動、減速、および停止させる駆動制御が行われる。
【0060】
枝払い部40は、開閉体41を開閉させる開閉体用油圧シリンダ42を有している。作動油によって開閉体用油圧シリンダ42が伸縮することにより、開閉体41を開閉させて、把持部20によって把持された樹木Wを抱持する。
【0061】
切断部50は、ソー用駆動モータ57、張力調整部80、およびソー用油圧シリンダ52を有している。ソー用駆動モータ57が作動油によって回転することにより、チェーンソー51が駆動されて切断動作が実行される。張力調整部80は、作動油の油圧力によってガイドバー55を挟持するとともに、作動油の油圧力によってソーチェーン56の張力を調整する。ソー用油圧シリンダ52は、作動油によって伸縮することにより、チェーンソー51を材Wの径方向に進退するように揺動させて切断動作を行わせる。
【0062】
[張力調整部]
続いて、切断部50の張力調整部80について詳細に説明する。図8は、切断部50の後面図である。図8に示すように、切断部50に設けられているチェーンソー51は、ガイドバー55、ソーチェーン56、ソー用駆動モータ57、駆動スプロケット59、および保持部60を有している。保持部60は、ガイドバー55を保持している。ソーチェーン56は、ガイドバー55および駆動スプロケット59に掛け回されている。駆動スプロケット59には、ソー用駆動モータ57が連結されている。ソー用駆動モータ57が回転することにより、駆動スプロケット59を介してソーチェーン56が回転駆動されて切断動作が実行される。
【0063】
保持部60は、張力調整部80を有している。張力調整部80は、油圧力を用いてガイドバー55を挟持するとともに、油圧力を用いてソーチェーン56の張力を調整している。張力調整部80は、保持部本体61、挟持部65、張力押圧部71(図9および図10a参照)、および挟持押圧部75(図9および図10b参照)等から構成されている。
【0064】
保持部本体61は、保持部60の基体となる部分である。保持部本体61は、樹木処理装置本体11に対して回動可能に取り付けられている。保持部本体61には、ソー用駆動モータ57の駆動軸が貫通しており、ソー用駆動モータ57の駆動軸に連結された駆動スプロケット59が支持されている。
【0065】
挟持部65は、保持部本体61の端部を抱持するように取り付けられており、駆動スプロケット59から離れる方向に沿って進退可能である。挟持部65と保持部本体61の間には、ガイドバー55の基端部が差し込まれて配置されている。挟持部65と保持部本体61とでガイドバー55の基端部を挟持することにより、張力調整部80は、ガイドバー55を保持している。挟持部65と保持部本体61とでガイドバー55の基端部を挟持する挟持力は、挟持押圧部75が生じさせている(図10b参照)。挟持押圧部75については後に詳細に説明する。
【0066】
挟持部65の内面側には、係合部66が形成されている。係合部66は、挟持部65と保持部本体61の間隙にガイドバー55の基端部が配置されている状態において、ガイドバー55の基端部に形成されているスリット551に係合している。このため、挟持部65を駆動スプロケット59から離れる方向に押圧することにより、駆動スプロケット59から離れる方向への押圧力は、係合部66を介してガイドバー55に伝達されることとなる。これにより、ガイドバー55および駆動スプロケット59に掛け回されているソーチェーン56に張力を付与することができる。挟持部65を駆動スプロケット59から離れる方向に押圧する押圧力は、張力押圧部71が生じさせている。張力押圧部71については後に詳細に説明する。
【0067】
図9は、張力調整部80の概略構成を示す図である。図9aは、保持部本体61、挟持部65、およびガイドバー55が組み立てられた状態を示しており、図9bは、保持部本体61、挟持部65、およびガイドバー55が分解された状態を示している。
【0068】
図9aに示すように、挟持部65は、保持部本体61の端部を抱持するように取り付けられている。ガイドバー55の基端部は、挟持部65と保持部本体61との間に挟持されることで保持されている。
【0069】
図9bに示すように、挟持部65には、係合部66が形成されており、ガイドバー55の基端部に形成されているスリット551に係合する(図9a参照)。また、保持部本体61には、案内溝62が形成されている。案内溝62は、駆動スプロケット59から離れる方向に沿って延びるように形成されている。挟持部65が保持部本体61に取り付けられた状態で、係合部66は案内溝62に案内されるように配置されている(図9a参照)。つまり、係合部66は、ガイドバー55のスリット551に係合するとともに、案内溝62により、駆動スプロケット59から離れる方向に沿って案内される。このため、挟持部65およびガイドバー55は、保持部本体61に対して駆動スプロケット59から離れる方向に沿って移動可能である。
【0070】
図9bに示すように、保持部本体61には、張力押圧部71および挟持押圧部75が設けられている。
【0071】
張力押圧部71は、張力スプール保持孔72および張力スプール73を有している。張力スプール保持孔72は、張力スプール73を案内する管状の孔であり、保持部本体61に形成されている。張力スプール保持孔72は、駆動スプロケット59から離れる方向に軸線が延びるように形成されており、案内溝62の内側に開口するように配置されている。張力スプール保持孔72は、保持部本体61の内部の作動油流路63を介して油圧回路90に接続されている。
【0072】
張力スプール73は、油圧によって作動することにより、駆動スプロケット59から離れる方向に挟持部65(係合部66)を押圧する部材である。張力スプール73は、張力スプール保持孔72において、駆動スプロケット59から離れる方向に沿って移動可能となるように配置されている。張力スプール73は、油圧回路90から供給される油圧によって張力スプール保持孔72から突出する方向に作動し、挟持部65を押圧する。この押圧力は、係合部66を介してガイドバー55に伝達され、ガイドバー55を駆動スプロケット59から離れる方向に押圧する。これにより、ガイドバー55および駆動スプロケット59に掛け回されているソーチェーン56に張力を付与することができる。
【0073】
挟持押圧部75は、挟持スプール保持孔76および挟持スプール77を有している。挟持スプール保持孔76は、挟持スプール77を案内する管状の孔であり、保持部本体61に2本形成されている。挟持スプール保持孔76は、駆動スプロケット59から離れる方向と直交する方向(保持部本体61と挟持部65との間でガイドバー55を挟持する方向)に軸線が延びるように形成されており、保持部本体61の側面に開口するように配置されている(図10b参照)。挟持スプール保持孔76は、保持部本体61の内部の作動油流路63を介して油圧回路90に接続されている。
【0074】
挟持スプール77は、油圧によって作動することにより、駆動スプロケット59から離れる方向と直交する方向(保持部本体61と挟持部65との間でガイドバー55を挟持する方向)に挟持部65を押圧する部材である(図10b参照)。挟持スプール77は、挟持スプール保持孔76において、駆動スプロケット59から離れる方向と直交する方向に沿って移動可能なように配置されている。挟持スプール77は、油圧回路90から供給される油圧によって挟持スプール保持孔76から突出する方向に作動し、保持部本体61との間でガイドバー55を挟持する方向に向けて挟持部65を押圧する。これにより、保持部本体61と挟持部65との間でガイドバー55の一端部を挟持する挟持力を生じさせることができる。
【0075】
図10は、張力調整部80の構成および動作を示す簡略図である。図10aは、主に張力押圧部71の構成および動作を示しており、図10bは、主に挟持押圧部75の構成および動作を示している。
【0076】
図10aに示すように、張力押圧部71の張力スプール73は、油圧回路90から供給される油圧によって張力スプール保持孔72から突出する方向に作動し、挟持部65を介してガイドバー55を駆動スプロケット59から離れる方向に押圧している。これにより、ガイドバー55および駆動スプロケット59に掛け回されているソーチェーン56に張力を付与することができる。
【0077】
張力押圧部71によってソーチェーン56に付与される張力は、油圧によるものであるため、ソーチェーン56が摩耗等によって伸びた場合は、ソーチェーン56の伸びに対応するようにガイドバー55を押し出すことができる。このため、油圧によって自動的にソーチェーン56の張力を最適な張力に調整することができる。
【0078】
なお、油圧回路90から供給される油圧は、油圧調整弁(図示せず)を介して供給されている。このため、油圧調整弁によって油圧を制御して挟持スプール77の押圧力を制御することにより、ソーチェーン56に付与する張力を制御することができる。
【0079】
図10bに示すように、挟持押圧部75の挟持スプール77は、油圧回路90から供給される油圧によって挟持スプール保持孔76から突出する方向に作動し、保持部本体61との間でガイドバー55を挟持する方向に向けて挟持部65を押圧する。これにより、保持部本体61と挟持部65との間でガイドバー55の一端部を挟持する挟持力を生じさせることができる。
【0080】
本実施形態では、挟持部65は、第1挟持部651および第2挟持部652を有しており、第1挟持部651および第2挟持部652によって保持部本体61を抱持している。ガイドバー55は、第2挟持部652と保持部本体61との間に配置されている。挟持スプール77によって第1挟持部651を押圧することにより、第2挟持部652と保持部本体61との間にガイドバー55を挟持する挟持力を生じさせることができる。挟持スプール77を直接ガイドバー55に当接させずに、第2挟持部652の面と保持部本体61の面の両面によってガイドバー55を挟持することにより、ガイドバー55との接触面積が大きくなり、ガイドバー55を強固に保持することができる。
【0081】
ソーチェーン56およびガイドバー55を脱着して交換等を行う場合には、油圧回路90から張力押圧部71および挟持押圧部75に供給される油圧を減圧または遮断する。これにより、張力押圧部71による挟持部65を駆動スプロケット59から離れる方向に押圧する押圧力を低下させるとともに、挟持押圧部75による挟持部65と保持部本体61とでガイドバー55の基端部を挟持する挟持力を低下させることができ、ソーチェーン56およびガイドバー55を脱着して交換等を行うことができる。交換等が完了した後は、油圧回路90から張力押圧部71および挟持押圧部75に油圧を供給することにより、自動的にソーチェーン56の張力を最適な張力に調整し、ソーチェーン56の張力が最適となる位置で、油圧によってガイドバー55を保持することができる。
【0082】
以上説明した本実施形態に係る樹木処理装置100の張力調整部80によれば、油圧力を用いてガイドバー55を挟持するとともに、油圧力を用いてソーチェーン56の張力を調整することができる。このため、ソーチェーン56の張力とガイドバー55の挟持を油圧によって自動的に調整することができ、ソーチェーン56の張力の点検や調整に掛かる手数を削減することができる。また、ソーチェーン56とガイドバー55の脱着を工具不要で可能とし、ソーチェーン56の張力とガイドバー55の挟持を常に適切な状態にすることにより、チェーンソー51の故障を防止することができる。
【0083】
また、張力押圧部71は、ガイドバー55に係合する挟持部65を駆動スプロケット59から離れる方向に油圧によって押圧する。このため、油圧によって自動的にソーチェーン56の張力を最適な張力に調整することができる。
【0084】
また、挟持押圧部75は、保持部本体61と挟持部65との間でガイドバー55の一端部を挟持する挟持力を油圧によって生じさせる。このため、ソーチェーン56の張力が最適となる位置で、油圧によってガイドバー55を保持することができる。
【0085】
[変形例]
本発明に係る樹木処理装置は、上記説明した実施形態に限定されない。例えば切断部に設けた張力調整部の構成や形状は、上記説明した実施形態に限定されない。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、造材作業を行う樹木処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
100 樹木処理装置
200 ベースマシン
300 樹木処理システム
50 切断部
51 チェーンソー
55 ガイドバー
56 ソーチェーン
59 駆動スプロケット
60 保持部
80 張力調整部
W 樹木、材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10