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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064322
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】車室内構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20230501BHJP
   B60R 22/18 20060101ALI20230501BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20230501BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230501BHJP
【FI】
B62D25/08 Z
B60R22/18
B60N2/30
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174536
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 英生
(72)【発明者】
【氏名】竹添 日登志
【テーマコード(参考)】
3B087
3D018
3D203
【Fターム(参考)】
3B087DA05
3B087DA09
3B087DE06
3D018CA04
3D018CB03
3D203AA18
3D203BB12
3D203BB17
3D203BB22
3D203BB25
3D203BB55
3D203BB63
3D203BB74
3D203CA53
3D203DA51
3D203DA55
(57)【要約】
【課題】シート周辺におけるフロアの凹凸を抑制することで、円滑な車椅子移動を可能にする。
【解決手段】隔壁210は、車室内に、フロアに対して垂直に立設される。シート機構100は、隔壁210にシートバック110が沿う様に設けられる。隔壁210は、柱12,14,16,18と梁20,30,40,50,60が井桁状に組まれた骨格部10を備える。シート機構100及びシートベルト機構80は、当該骨格部10にのみ固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に、フロアに対して垂直に立設される隔壁と、
前記隔壁にシートバックが沿う様に設けられるシートと、
前記シート用のシートベルト機構と、
を備え、
前記隔壁は、柱と梁が井桁状に組まれた骨格部を備え、
前記シート及び前記シートベルト機構は、前記骨格部にのみ固定される、
車室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両のシート及びシートベルトの支持機構を備えた車室内構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
車室内にはシート及びシートベルトの支持機構が設けられる。例えば特許文献1では、シート支持フレームがフロアから突設され、このフレームにシートベルトのリトラクタ及びアンカが支持される。
【0003】
また特許文献2では、後部座席と荷室を隔てるパーテーションパネルにシートベルトのリトラクタが支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-068840号公報
【特許文献2】特開2016-088157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばシートバックを跳ね上げ式にして、座席スペースを車椅子スペースとして利用する場合がある。このような場合、シートやシートベルト用の固定部材が、シートバック下等の、フロアのシート周辺領域に取り付けられていると、当該領域に凹凸が生じて車椅子移動の妨げとなるおそれがある。
【0006】
そこで本明細書では、シート周辺におけるフロアの凹凸を抑制することで、円滑な車椅子移動を可能にする、車室内構造が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、車室内構造が開示される。当該車室内構造は、隔壁、シート、及び当該シート用のシートベルト機構を備える。隔壁は、車室内に、フロアに対して垂直に立設される。シートは、隔壁にシートバックが沿う様に設けられる。隔壁は、柱と梁が井桁状に組まれた骨格部を備える。シート及びシートベルト機構は、当該骨格部にのみ固定される。
【0008】
上記構成によれば、シート及びシートベルト機構は、フロアに立設される隔壁の骨格部にのみ固定される。このような構造を備えることで、シートやシートベルト用の固定部材を隔壁以外に設けずに済み、その結果、シート周辺におけるフロアの凹凸が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示される車室内構造によれば、シート周辺におけるフロアの凹凸が抑制されることで、円滑な車椅子移動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る車室内構造を備える車両の骨格構造を例示する斜視図である。
図2】本実施形態に車室内構造が備える隔壁の骨格部を例示する斜視図である。
図3】隔壁の骨格部にシート機構及びシートベルト機構が固定された状態を例示する斜視図である。
図4】隔壁の骨格部に車椅子用の固縛装置が固定された状態を例示する斜視図である。
図5】隔壁の骨格部にシートブラケットが固定された状態を例示する斜視図である。
図6】隔壁の骨格部にシートベルト機構が固定された状態を例示する斜視図である。
図7】シートベルト機構を例示する斜視図である。
図8】隔壁の骨格部にシートクッションが支持された状態を例示する斜視図である。
図9】シートバックの背面を例示する斜視図である。
図10】隔壁の骨格部にシートクッションが固定された状態を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態に係る車室内構造が図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、車室内構造の仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0012】
また、図1図10では、各構成の位置や方向を表すために、FR軸、RW軸、及びUP軸からなる直交座標系が用いられる。FR軸は車両前方を正方向とする車両前後方向軸である。RW軸は車両右側を正方向とする車幅方向軸である。UP軸は上方を正方向とする車両上下方向軸である。
【0013】
図1には、本実施形態に係る車室内構造が搭載された車両300の骨格構造が例示される。図1では、紙面奥が車両前面となっている。車両300は例えばバス等の乗合車両である。車両300の利用者には車椅子ユーザが含まれる。
【0014】
車両300の骨格構造として、車両前方からフロントバンパリーンフォース200が設けられる。フロントバンパリーンフォース200は車幅方向に延設され、その両端から車両後方に一対のロアサイドメンバ201,201が延設される。さらにロアサイドメンバ201,201の後端はフロントサイドメンバ202,202に接続され、フロントサイドメンバ202,202の後端はロアサイドメンバ203,203に接続される。さらにロアサイドメンバ203,203の後端はリアバンパリーンフォース204の車幅方向端部に接続される。
【0015】
一対のフロントサイドメンバ202,202から上方(UP軸正方向)に柱状の骨格部材であるAピラー205、Bピラー206、Cピラー207が設けられる。Aピラー205、Bピラー206、Cピラー207は車両前方から順に設けられる。
【0016】
例えばAピラー205、Bピラー206、Cピラー207はアーチ状に形成される。Aピラー205及びBピラー206の天井部分であるピラールーフ部205A,206Aに掛け渡すようにして、補強部材である一対のルーフリーンフォース209,209が車両前後方向に延設される。ルーフリーンフォース209,209には、隔壁210の骨格部10の一部である柱14,16の上端が、図示しないブラケット等によって締結固定される。
【0017】
また、一対のフロントサイドメンバ202,202に掛け渡されるようにして、骨格部材であるフロアクロス208,208が車幅方向に延設される。一対のフロアクロス208,208は、車両前後方向に離隔される。
【0018】
図1図2を参照して、隔壁210の骨格部10の一部である柱12,18の下端が、ブラケット70,70を介して一対のフロアクロス208,208に掛け渡されるようにして締結固定される。例えばフロアクロス208,208は断面ハット形状をしており、その鍔に当たるフランジ208A、208Aに、ブラケット70,70の前後端が締結固定される。
【0019】
図1を参照して、隔壁210は、車室内に、フロアに対して垂直に(言い換えると鉛直に)立設される。例えば隔壁210は車両前後方向軸(FR軸)に対して垂直に配置される。
【0020】
隔壁210は、例えば運転席領域と乗客領域とを隔てる。また例えば隔壁210はいわゆる左寄り配置であって、車幅方向右側が開口される。この開口を利用して、例えば運転者が乗客領域から運転席領域に移動可能となっている。
【0021】
図2には、隔壁210の骨格部10が例示される。骨格部10は複数の柱12,14,16,18と複数の梁20,30,40,50,60が井桁状に組まれた井桁構造を有する。
【0022】
縦材である柱12,14,16,18は、例えばいずれも金属製の中空角パイプから構成され、車幅方向に離隔配置される。これら4本の柱12,14,16,18のうち、車幅方向両端の柱12,18は、その下端はフロアクロス208,208に締結固定され、その上端は車室空間の車高寸法の中途まで延設される。また柱12,18に挟まれる柱14,16は、その上端はルーフリーンフォース209,209(図1参照)に締結固定され、その下端は車室空間の車高寸法の中途まで延設される。
【0023】
横材である梁20,30,40,50,60は高さ方向に離隔配置される。梁20,30,40,50,60は例えばいずれも側面視(RW軸視)でコ字状の溝形鋼(チャンネル)から構成される。また例えばいずれの梁20,30,40,50,60においても、溝形鋼の開口は車両前方に向けられる。
【0024】
梁20,30は、柱12,14,16,18に掛け渡されるようにしてこれらの柱に固定される。梁40,50,60は柱12,18にその両端部が固定される。柱12,14,16,18に梁20,30,40,50,60を固定させるための構造として、例えば梁20,30,40,50,60は、溝形鋼の側壁に、柱12,14,16,18を嵌め込むための切欠23が形成される。切欠23は柱12,14,16,18の形状に沿った各溝形状であってよい。
【0025】
梁20,30,40,50,60の各切欠23が柱12,14,16,18に嵌め込まれた状態で、切欠23に沿って梁20,30,40,50,60及び柱12,14,16,18が溶接される。例えば切欠23を設けずに、梁20,30,40,50,60の直線状の一辺を柱12,14,16,18に当接させ、当該当接領域を溶接する場合と比較して、切欠23に沿って溶接を行う場合、車両前方(FR軸方向)に延設される切欠辺23Aを有する分、溶接代を長く取ることが出来る。
【0026】
また、梁20,30,40,50,60の切欠23を柱12,14,16,18に嵌め込む構造とすることで、このような嵌め込み構造を採らない場合と比較して、骨格部10の車両前後方向寸法を短く(薄く)することができ、その分、車室内の移動空間を広く取ることが出来る。
【0027】
図2に例示される骨格部10に、図3に例示されるシート機構100及び当該シート機構100用のシートベルト機構80が取り付けられる。シート機構100はシートクッション105、シートバック110及びヘッドレスト120を含む。シートバック110はその背面が隔壁210に沿うように設けられる。また図7を参照して、シートベルト機構80はリトラクタ81、ショルダアンカ82、ベルトバックル83、及びベルトアンカ84を含む。
【0028】
後述されるように、シート機構100及びシートベルト機構80はどちらも骨格部10にのみ固定される。言い換えると、シート機構100及びシートベルト機構80は、車室のフロアからは「浮いた」状態となる。
【0029】
なお本実施形態に係る車室内構造では、3座のシート機構100が骨格部10に固定されるが、骨格部10の車幅方向寸法に応じて、任意の座数のシート機構100が骨格部10に固定可能となっている。
【0030】
シート機構100及びシートベルト機構80を固定するための構造が、梁20,30,40,50,60に設けられる。図2図3を参照して、梁20には、ヘッドレストブラケット125を締結固定するためのヘッドレスト孔21と、ショルダアンカ82を締結固定するためのアンカ孔22が、梁20の厚さ方向に穿孔される。例えばヘッドレスト孔21は車両前後方向に穿孔され、アンカ孔22は車両高さ方向に穿孔される。
【0031】
梁30には、シートバック110(図9参照)の係合爪111,112が差し込まれる爪受31,32が設けられる。爪受31,32は例えば梁30の車両後方面に溶接固定される。
【0032】
梁40には、ブラケット孔41,44、シート孔42、リトラクタ孔43が厚さ方向に穿孔される。後述されるように、ブラケット孔41,44にはシートブラケット91,94(図5参照)が締結固定される。シート孔42にはシートバック110(図3参照)が締結固定される。さらにリトラクタ孔43にはシートベルト機構80(図7参照)のリトラクタ81が締結固定される。
【0033】
梁50には、ブラケット孔51,54及び固縛装置孔52が設けられる。後述されるように、ブラケット孔51,54にはシートブラケット91,94(図5参照)が締結固定される。固縛装置孔52には車椅子固定用の固縛装置75(図4参照)が締結固定される。さらに梁60には、固縛装置孔62が厚さ方向に穿孔される。固縛装置孔62には、固縛装置75が締結固定される。
【0034】
図3図4を参照して、隔壁210の骨格部10には、シートクッション105の下方に、車椅子固定用の固縛装置75が取り付けられる。後述されるようにシートクッション105は跳ね上げ式であって、上方にシートクッション105を跳ね上げることで固縛装置75へのアクセスが可能となる。固縛装置75は例えばベルトリトラクタであってよく、その先端には車椅子のストライカ(図示せず)に挿入可能なフック(図示せず)が設けられている。
【0035】
固縛装置75は、ブラケット76,77を介して梁50,60に固定される。例えばブラケット76,77のボルト孔(図示せず)と梁50,60の固縛装置孔52,62(図2参照)とが軸合わせされ、ブラケット76,77が梁50,60に締結される。なお以下では、図示を簡略化するために固縛装置75の図示が適宜省略される。
【0036】
図5を参照して、梁40,50にシートブラケット91,94が固定される。シートブラケット91,94は梁40,50に当接するフランジ91A,94Aと当該フランジ91A,94Aから垂直に延設される本体部91B,94Bを備える。本体部91Bにはシャフト孔93及びバックル孔92が厚さ方向に穿孔される。また本体部94Bにはシャフト孔93及びアンカ孔95が厚さ方向に穿孔される。後述されるように、一対のシートブラケット91,94によってシートクッション(図3参照)が梁40,50に取り付けられる。
【0037】
例えば図2及び図5を参照して、シートブラケット91のフランジ91Aの上下端に設けられたボルト孔(図示せず)と梁40,50のブラケット孔41,51とが軸合わせされ、シートブラケット91が梁40,50にネジ締結される。同様にして、シートブラケット94のフランジ94Aの上下端に設けられたボルト孔(図示せず)と梁40,50のブラケット孔44,54とが軸合わせされ、シートブラケット94が梁40,50にネジ締結される。
【0038】
図6及び図7には、シートベルト機構80が骨格部10に固定された例が示される。図2図5図7を参照して、シートブラケット91のバックル孔92とベルトバックル83の末端にあるボルト孔(図示せず)が軸合わせされベルトバックル83がシートブラケット91にネジ締結される。さらにシートブラケット94のアンカ孔95とベルトアンカ84のボルト孔(図示せず)が軸合わせされ、ベルトアンカ84がシートブラケット94にネジ締結される。
【0039】
また梁40のリトラクタ孔43には、リトラクタ81の末端に設けられたボルト孔(図示せず)が軸合わせされ、リトラクタ81が梁40にネジ締結される。さらに梁20のアンカ孔22には、ショルダアンカ82の末端に設けられたボルト孔(図示せず)が軸合わせされ、ショルダアンカ82が梁20にネジ締結される。
【0040】
リトラクタ81から引き出されたシートベルト85の先端は、ショルダアンカ82を経由してベルトアンカ84に固定される。またシートベルト85にはタングプレート86が挿し通される。
【0041】
図5図8を参照して、シートブラケット91,94のシャフト孔93,93にシートクッション105のシャフト107が挿入される。シートクッション105はシャフト107周りに回動可能、つまり跳ね上げ可能となっている。
【0042】
図9にはシートバック110の背面、つまり乗客の背中を受ける表面とは逆側の面が例示される。シートバック110の背面上方部には一対の係合爪111,112が設けられる。例えば係合爪111,112は背面から突設しその後端から下方に延設される、断面鉤形状となっている。さらに係合爪111に車幅方向に隣接して位置合わせピン113が設けられる。位置合わせピン113は例えば係合爪と同様に断面が下向きの鉤形状となるように形成される。またシートバック110の背面下方部には、その厚さ方向に貫通孔114が穿孔される。
【0043】
図8図9を参照して、爪受32の切欠き35に位置合わせピン113が嵌まり込むようにシートバック110が位置合わせされ、さらに係合爪111,112が爪受31,32内に挿入される。その後、シートバック110の貫通孔114とシート孔42とが軸合わせされ、図10に例示されるように、シートバック110が梁40にネジ締結される。
【0044】
さらに、図2図3を参照して、ヘッドレストブラケット125のボルト孔(図示せず)と梁20のヘッドレスト孔21が軸合わせされ、ヘッドレストブラケット125及びヘッドレスト120が梁20にネジ締結される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る車室内構造によれば、シート機構100(図3参照)及びシートベルト機構80が、隔壁210の骨格部10にのみ固定される。したがって、例えば車室内フロアの、シートクッション105の下方領域には、シート機構100及びシートベルト機構80の固定部材を設けずに済み、当該下方領域において車椅子の円滑な移動が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
10 隔壁の骨格部、12,14,16,18 柱、20,30,40,50,60 梁、75 固縛装置、80 シートベルト機構、81 リトラクタ、82 ショルダアンカ、83 ベルトバックル、84 ベルトアンカ、85 シートベルト、86 タングプレート、91,94 シートブラケット、100 シート機構、105 シートクッション、107 シャフト、110 シートバック、120 ヘッドレスト、210 隔壁、300 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10