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特開2023-64326発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064326
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/34 20060101AFI20230501BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F01D25/34
F01D25/00 X
F01D25/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174545
(22)【出願日】2021-10-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 幸二
(57)【要約】
【課題】発電プラントにおけるタービンロータ等のロータを簡易に回転させることのできる発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法を提供する。
【解決手段】発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させるための装置であって、1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤと、1又は複数の歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤと、を具備している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させるための装置であって、
1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤと、
1又は複数の前記歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤと、
を具備したことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項2】
請求項1記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記仮設ギヤは、前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の仮設ギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記仮設ギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記仮設ギヤ台座の下方に位置するようにギヤ背面固定座が配置され、
前記仮設ギヤ台座を貫通するように螺合され、かつ、前記ギヤ背面固定座を貫通するように螺合されて先端部が前記バランスウエイト取付溝の底部に当接されるネジによって、前記ギヤ背面固定座が固定される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記ギヤ背面固定座は、前記バランスウエイト取付溝の軸方向に沿った断面形状と同様な断面形状を有し、前記ネジを締め付けることによって前記バランスウエイト取付溝の開口部側に移動し、前記バランスウエイト取付溝の入口側の内面に当接され支持される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記止めギヤは、
前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の止めギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記止めギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記回転防止キーは、前記止めギヤ台座の下方に位置するように配置されている
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記バランスウエイト取付溝に取り付けられたバランスウエイトの上部を跨ぎ、隣接する前記仮設ギヤに固定されるブリッジギヤ
を具備したことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項6】
発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させる方法であって、
1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤを前記バランスウエイト取付溝に配設し、
1又は複数の前記歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤを前記切り欠き部に配設し、
前記仮設ギヤ及び前記止めギヤを介して、前記ロータに回転動力を与える
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記仮設ギヤは、前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の仮設ギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記仮設ギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記仮設ギヤ台座の下方に位置するようにギヤ背面固定座が配置され、
前記仮設ギヤ台座を貫通するように螺合され、かつ、前記ギヤ背面固定座を貫通するように螺合されて先端部が前記バランスウエイト取付溝の底部に当接されるネジによって、前記ギヤ背面固定座が固定される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項8】
請求項7に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記ギヤ背面固定座は、前記バランスウエイト取付溝の軸方向に沿った断面形状と同様な断面形状を有し、前記ネジを締め付けることによって前記バランスウエイト取付溝の開口部側に移動し、前記バランスウエイト取付溝の入口側の内面に当接され支持される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記止めギヤは、
前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の止めギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記止めギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記回転防止キーは、前記止めギヤ台座の下方に位置するように配置されている
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか1項に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記バランスウエイト取付溝に取り付けられたバランスウエイトの上部を跨ぎ、隣接する前記仮設ギヤに固定されるブリッジギヤ
をさらに配設することを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所のガスタービンロータ等のタービン及び発電機ロータは、据付工事や定期点検工事の芯出し調整や、動翼の交換や点検作業のために、ロータが車室内に組み込まれた状態でロータ単体での回転作業が必要となる。このロータ回転作業はパワートレインとして具備されるターニング装置を用いる方法やロータ先端のカップリング端に仮設ボルトを挿入し回転動力を与える方法が一般的である。
【0003】
上述したロータ回転作業にターニング装置を用いるためには、この装置自体の仮組み立てが必要であり、一般にターニング装置は対象のロータ以外のロータに回転動力を与え回転させる方式をとっていることから、回転対象ロータとターニング装置の間に位置する複数のロータのカップリング部を仮接合する付帯作業が必要となる。
【0004】
また、一般に据付工事や定期点検工事期間中のロータの回転には、他のロータとのカップリング端に仮ボルトを挿入し、天井クレーンや油圧ジャッキにて回転動力を与え回転させる方法を用いるが、他のロータとのカップリング端は一般に軸受台内部となることから、隣接する他のロータが既に車室内に組み込まれている状態では、仮ボルトの使用が困難となる場合がある。また、仮に仮ボルトの使用ができた場合においても連続的な回転は困難である。
【0005】
なお、これら付帯作業は工事工程の遅延要素となっており、工程計画と作業の自由度も損なっている。したがって、据付工事や定期点検工事においては、具備されるターニング装置を用いず、軸受台内部のカップリング端面に仮設物を取付けることなく、ロータ単体を回転させる方法が必要となる。
【0006】
特にガスタービンロータにおいては、車室内に組み込まれた状態でガスタービンロータに回転動力を与える唯一の箇所がロードカップリングシャフトになる。その場合、ロードカップリングシャフトに対し駆動ローラーやスリングベルトを使った回転動力を与えるといった方法では、摩擦力が不足しガスタービンロータを安定的に回転させることは困難であった。
【0007】
従来、この回転用仮設ギヤの取付には次のような技術が公開されている。その一つは、タービンロータの軸継手にスプロケットギヤーを取付け、駆動用液圧モーターを動力源として当該液圧モーターの回転によりローラーチェーンを介してスプロケットギヤーを回転させ、同時にタービンロータを回転させる技術である。また、他の技術は、タービンロータ軸継手に、外周にギヤを備えるラチェットプレートを着脱可能に取付け、ギヤに噛み合う複数の歯を有する駆動プレートを油圧シリンダで駆動してロータを回転させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3057273号公報
【特許文献2】特開2000-337105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の技術では、軸継手(カップリング端フランジ)に対して仮設ギヤを取付けるものであり、タービンロータが車室内に組み立てられた状態では、軸継手は軸受台の内部に収められることから軸受台上半の開放が必要となり、タービンロータの回転に際し必要となる軸受への給油が制限されてしまう。また、下半軸受台壁面とカップリング端フランジの間が狭く、これらのギヤの取付けや固定作業ができない場合がある。
【0010】
本発明は、上述した従来の事情に対処してなされたもので、その目的は、発電プラントにおけるタービンロータ等のロータを簡易に回転させることのできる発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の発電プラントのロータ回転装置は、発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させるための装置であって、1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤと、1又は複数の歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤと、を具備したことを特徴とする。
【0012】
実施形態の発電プラントのロータ回転方法は、発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させる方法であって、1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤを前記バランスウエイト取付溝に配設し、1又は複数の歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤを前記切り欠き部に配設し、前記仮設ギヤ及び前記止めギヤを介して、前記ロータに回転動力を与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発電プラントにおけるタービンロータ等のロータを簡易に回転させることのできる発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態が適用される発電プラントの構成例を示す図。
図2】実施形態が適用される発電プランの他の構成例を示す図。
図3】ロードカップリングの構成を示す図。
図4】ロードカップリングに取り付けられるバランスウエイトの構成を示す図。
図5】ロードカップリングに対するバランスウエイトの取付構造を示す図。
図6】実施形態に係る仮設ギヤの構成を示す図。
図7】実施形態に係る仮設ギヤの構成を示す図。
図8】実施形態に係る止めギヤの構成を示す図。
図9】実施形態に係る止めギヤの構成を示す図。
図10】実施形態に係るブリッジギヤの構成を示す図。
図11】実施形態に係るブリッジギヤの構成を示す図。
図12】実施形態に係るブリッジギヤの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係る発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1図2は、実施形態に係る発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法が適用される発電プラントの概略構成の例を示す図である。
【0017】
図1に示す発電プラントでは、図中左側から順に、ガスタービン(GT)101、発電機(GEN)102、蒸気タービン(ST)103、蒸気タービン(ST(LP))104が配設されている。ガスタービン(GT)101と発電機(GEN)102との間には、ロードカップリング110が設けられ、これらが接続されている。また、各機器の間には、図中点線で囲んで示すように、これらのカップリングが行われるカップリング端111が設けられている。なお、図1において、112は、ロータを回転させるためのターニング装置を示している。
【0018】
また、図2は他の発電プラントの構成例を示しており、図1と対応する部分には、同一の符号が付してある。この図2に示す発電プラントでは、図中左側から順に、ガスタービン(GT)101、蒸気タービン(ST)103、蒸気タービン(ST(LP))104、発電機(GEN)102、が配設されている。この図2には、ロードカップリング110と蒸気タービン(ST)103とのカップリング端111の軸受台の内部113の様子を模式的に示している。この場合、ロードカップリング110を回転させるため、そのカップリング端(フランジ121)に仮ボルト114を設けようとすると、隣接する蒸気タービン(ST)103のロータのフランジ等と干渉する場合がある。
【0019】
次に、図3~5を参照してロードカップリング110の構成を説明する。ロードカップリング110は、ガスタービンロータとその他ロータの間に位置する継ぎシャフトであり、図3に示すように、シャフト両端にはカップリング端(フランジ)121を有する。
【0020】
シャフトの中間部には、タービン運転中の振動を抑えるためのバランスウエイト130が取付けられるよう円周上にアリ溝状に構成された、底部の幅が開口部の幅より広い形状のバランスウエイト取付溝122が掘られている。そのバランスウエイト取付溝122は、円周上の対角2箇所(180°毎)又は4箇所(90°毎)にバランスウエイト挿入用の切り欠き部123を有している。バランスウエイト取付溝122は、一般にバランスウエイト130が遠心力で飛散しないようにアリ溝状、つまり断面がフラスコ型(凸型溝)になっており、同様に断面形状がフラスコ型(凸型形状)のバランスウエイト130は、バランスウエイト130の開口部の幅よりも幅の大きいバランスウエイト挿入用の切り欠き部123からのみ挿入が可能となっている(図5参照。)。バランスウエイト取付溝122は、例えば、幅が約25mm程度、深さが約20mm程度とされている。
【0021】
バランスウエイト130は、切り欠き部123から挿入した後、バランスウエイト取付溝122に沿って円周上の任意の箇所に配置することができ、バランスウエイト130は、固定用ネジ131を使って固定される。バランスウエイトの固定用ネジ131は、六角穴付きストレートネジで、バランスウエイト130の中心部を貫通して設けられたねじ穴132に、ロードカップリング110のシャフトの径方向中心に向かってねじ込まれる。固定用ネジ131の先端が、バランスウエイト取付溝122の底部に達すると、バランスウエイト130は、径方向外側(ネジの進行方向とは逆)に移動し、バランスウエイト取付溝122の径方向(開口部側)の内壁面に当接されることで固定される。
【0022】
ここで、図1に示した発電プラントにおけるガスタービン101の点検時のガスタービンロータの条件を説明する。定期定検等においてガスタービンロータを回転させる必要が生じた場合、ガスタービンの芯出し調整のためガスタービンロータに付属するロードカップリング110と隣接する他のロータとのカップリング端111はロータのメンテナンスのため切り離されている。
【0023】
次に、実施形態に係る発電プラントのロータ回転装置及び発電プラントのロータ回転方法について説明する。以下の説明では、円周上の対角2箇所(180°毎)にバランスウエイト挿入用の切り欠き部123を有しているロードカップリング110を例に説明する。ロードカップリング110の中間部に位置するバランスウエイト取付溝122に沿ってロードカップリング110のシャフトに回転動力を与えガスタービンロータを回転させるための仮設ギヤ140を取付ける。
【0024】
図6図7に示すように、仮設ギヤ140は、1枚又は2枚の歯142を有する単体構成となっており、円周に対し、例えば、約340°程度の長さ分の数を組合せることでギヤ全体が構成され、バランスウエイト取付溝122に沿って取付けられるようになっている。仮設ギヤ140は、ロードカップリング110のシャフトに当接し、バランスウエイト取付溝122を跨ぐように配設される矩形の板状の仮設ギヤ台座141と、この仮設ギヤ台座141から外方向に向けて突出する歯142と、バランスウエイト取付溝122内に配置されるギヤ背面固定座143とを具備している。また、歯142及び仮設ギヤ台座141の略中央部には、ギヤ背面固定座143を固定するためのネジ穴144が設けられている。また、仮設ギヤ台座141には、歯142の両側に位置するように、夫々2つのネジ穴145が設けられている。
【0025】
ロードカップリング110のシャフトに対し仮設ギヤ140を固定するためのギヤ背面固定座143は、前述したバランスウエイト130と同様な形状、構造を有しており、通常のバランスウエイト130を代用することができる。そして、図6に示すようにギヤ背面固定座143を固定用ネジ146(例えば、六角穴付きストレートネジ)で歯142及び仮設ギヤ台座141に仮止めした状態で切り欠き部123からバランスウエイト取付溝122内に挿入し、バランスウエイト取付溝122内をスライドさせて所定位置に配置した後、固定用ネジ146を締め付ける。この場合も図7に示すように、固定用ネジ146の先端が、バランスウエイト取付溝122の底部に達すると、ギヤ背面固定座143は、径方向外側(ネジの進行方向とは逆)に移動し、バランスウエイト取付溝122の径方向(開口部側)の内壁面に当接されることで固定される。仮設ギヤ140の歯142の幅は、例えば、約70~80mm程度、山幅は、例えば、約15~25mm程度、谷幅も同様である。
【0026】
また、回転動力による仮設ギヤ140の、ロードカップリング110のシャフト周方向へのズレを防止するため、切り欠き部123の部分には、図8図9に示すように止めギヤ150が配置される。止めギヤ150は、矩形の板状の止めギヤ台座151と、この止めギヤ台座151から外方向に向けて突出する1枚又は2枚の歯152(図8図9に示す例では2枚)を有し、例えば、ロードカップリング110のシャフトにおける20°分程度の周方向長さを有し、これが2箇所に設けられることによって40°分の長さになり、仮設ギヤ140の320°分の長さと合わせて隙間なく密着し360°のリング状態で一体化する。
【0027】
止めギヤ150の背面は、バランスウエイト挿入用の切り欠き部123と同一形状の回転防止キー153を有したモノブロック構成となっている。止めギヤ台座151には、歯152の両側に位置するように、夫々中央1つのネジ穴154が設けられており、仮設ギヤ140と同様に、ギヤ背面固定座143を用いてバランスウエイト取付溝122に固定する。ギヤ背面固定座143の締付による摩擦力と回転防止キー153のバランスウエイト挿入用の切り欠き部123への嵌まり込みにより、仮設ギヤ140及び止めギヤ150に与えた回転動力は、ロードカップリング110のシャフトに直接伝わり、ガスタービンロータを回転させることが可能となる。回転動力は、仮設ギヤ140及び止めギヤ150に合わせチェーンを介しガスタービン重量等の諸条件から必要トルクを有した電動機により与えられる。また、仮設ギヤ140、止めギヤ150、及び後述するブリッジギヤ160は、この時電動機により与えられる必要トルクに耐えられる強度を有する材料、例えばステンレス鋼などによって作成する。
【0028】
以上のように、本実施形態では、一般的に用いられているチェーン駆動型の回転装置を使用することが可能となり、ある程度の回転速度で連続的にガスタービンロータを単独で回転させることができる。
【0029】
バランスウエイト取付溝122に既存のバランスウエイト130が存在する場合は、バランスウエイト130を避けるため、ブリッジギヤ160を使用する。図10図11に示すように、ブリッジギヤ160は、ロードカップリング110のシャフトに当接し、バランスウエイト取付溝122を跨ぐように配設される矩形の板状のブリッジギヤ台座161と、このブリッジギヤ台座161から外方向に向けて突出する1枚又は2枚の歯162と、歯162の両側にそれぞれ設けられ、隣接する仮設ギヤ140と固定するための固定板163とを具備している。また、固定板163には、隣接する仮設ギヤ140とネジ止めするための固定用のネジ穴164が設けられている。
【0030】
図12に示すように、ブリッジギヤ160は隣接する仮設ギヤ140の仮設ギヤ台座141に設けられたネジ穴145と固定用のネジ穴164を使って、径方向に対しネジで固定される。周方向に対しては、仮設ギヤ140の場合と同様に、隣接する仮設ギヤ140と密着することで固定され回転力を受け止める。ブリッジギヤ160は既存のバランスウエイト130の周方向の広がり角度に応じて、1枚歯と2枚歯を使い分け、バランスウエイト130を取り外すことなく、既存のバランスウエイト130の上方、下方のバランスウエイト挿入用の切り欠き部123からバランスウエイト130を挟む形で挿入されたと仮設ギヤ140の間を繋ぎ止める構造となっている。
【0031】
上記手順でロードカップリング110のシャフト中心を挟む左右の周方向に、仮設ギヤ140(既存のバランスウエイト130に応じてブリッジギヤ160)を取付けた後、バランスウエイト挿入用の切り欠き部123から回転防止キー153を挿入し、止めギヤ150を両端に設けられたネジ穴154によりネジで両側に配置された仮設ギヤ140の仮設ギヤ台座141に合計4箇所を固定する。止めギヤ150はロードカップリング110のシャフトの上下2箇所のバランスウエイト挿入用の切り欠き部123に取付ける。同様に切り欠き部123を3箇以上所有するシャフトについてはその数に合わせて止めギヤ150を用いる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、ロータシャフトに付属するバランスウエイト取付部に回転動力を与えることでターニング装置の仮組立や軸受台内部のカップリング端に仮ボルトを使うことなくロータ単体の回転を実現することができる。また、隣接するガスタービン以外のロータが既に車室内に挿入されている条件下では困難となっていたガスタービンロータ単体の安定的な回転を可能とすることで、他のタービン、発電機の分解組立状況に左右されずガスタービンロータを単体で回転させることができる。これによって、定期点検等、全体工程計画の自由度が向上する。また、ターニング装置の仮復旧や軸受台の開放、ガスタービン以外のロータの仮結合が不要となることで後戻り作業による工程遅延やコストの増加を抑えることができる。なお、実際の運転を行う場合は、上記した仮設ギヤ140などのギヤは取り外す。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
101……ガスタービン、102……発電機、103……蒸気タービン、104……蒸気タービン、110……ロードカップリング、111……カップリング端、113……軸受台の内部、114……仮ボルト、121……カップリング端(フランジ)、122……バランスウエイト取付溝、123……切り欠き部、130……バランスウエイト、131……固定用ネジ(六角穴付きストレートネジ)、132……ネジ穴、140……仮設ギヤ、141……仮設ギヤ台座、142……歯、143……ギヤ背面固定座、144……ネジ穴、145……ネジ穴、146……固定用ネジ(六角穴付きストレートネジ)、150……止めギヤ、151……止めギヤ台座、152……歯、153……回転防止キー、154……ネジ穴、160……ブリッジギヤ、161……ブリッジギヤ台座、162……歯、163……固定板、164……ネジ穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させるための装置であって、
1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤと、
1又は複数の前記歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤと、
を具備したことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項2】
請求項1記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記仮設ギヤは、前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の仮設ギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記仮設ギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記仮設ギヤ台座の下方に位置するようにギヤ背面固定座が配置され、
前記仮設ギヤ台座を貫通するように螺合され、かつ、前記ギヤ背面固定座を貫通するように螺合されて先端部が前記バランスウエイト取付溝の底部に当接されるネジによって、前記ギヤ背面固定座が固定される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記ギヤ背面固定座は、前記バランスウエイト取付溝の軸方向に沿った断面形状と同様な断面形状を有し、前記ネジを締め付けることによって前記バランスウエイト取付溝の開口部側に移動し、前記バランスウエイト取付溝の入口側の内面に当接され支持される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記止めギヤは、
前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の止めギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記止めギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記回転止め部は、前記止めギヤ台座の下方に位置するように配置されている
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の発電プラントのロータ回転装置であって、
前記バランスウエイト取付溝に取り付けられたバランスウエイトの上部を跨ぎ、隣接する前記仮設ギヤに固定されるブリッジギヤ
を具備したことを特徴とする発電プラントのロータ回転装置。
【請求項6】
発電プラントに設けられたタービン又は発電機のロータを回転させる方法であって、
1又は複数の歯を有し、前記ロータの周方向に沿って設けられたアリ溝状のバランスウエイト取付溝に、バランスウエイト挿入用の切り欠き部を介して取り付け可能とされた複数の仮設ギヤを前記バランスウエイト取付溝に配設し、
1又は複数の前記歯と、前記切り欠き部に挿入可能、かつ、前記バランスウエイト取付溝内に移動不能な回転止め部とを有し、前記バランスウエイト取付溝に前記仮設ギヤを配列させた状態で、前記回転止め部を前記切り欠き部に挿入して固定される止めギヤを前記切り欠き部に配設し、
前記仮設ギヤ及び前記止めギヤを介して、前記ロータに回転動力を与える
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記仮設ギヤは、前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の仮設ギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記仮設ギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記仮設ギヤ台座の下方に位置するようにギヤ背面固定座が配置され、
前記仮設ギヤ台座を貫通するように螺合され、かつ、前記ギヤ背面固定座を貫通するように螺合されて先端部が前記バランスウエイト取付溝の底部に当接されるネジによって、前記ギヤ背面固定座が固定される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項8】
請求項7に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記ギヤ背面固定座は、前記バランスウエイト取付溝の軸方向に沿った断面形状と同様な断面形状を有し、前記ネジを締め付けることによって前記バランスウエイト取付溝の開口部側に移動し、前記バランスウエイト取付溝の入口側の内面に当接され支持される
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記止めギヤは、
前記バランスウエイト取付溝の上を跨いで前記ロータの表面に当接される板状の止めギヤ台座を有し、
1又は複数の前記歯は、前記止めギヤ台座の外側面から外側に向けて延びるように配置され、
前記回転止め部は、前記止めギヤ台座の下方に位置するように配置されている
ことを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか1項に記載の発電プラントのロータ回転方法であって、
前記バランスウエイト取付溝に取り付けられたバランスウエイトの上部を跨ぎ、隣接する前記仮設ギヤに固定されるブリッジギヤ
をさらに配設することを特徴とする発電プラントのロータ回転方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
シャフトの中間部には、タービン運転中の振動を抑えるためのバランスウエイト130が取付けられるよう円周上にアリ溝状に構成された、底部の幅が開口部の幅より広い形状のバランスウエイト取付溝122が掘られている。そのバランスウエイト取付溝122は、円周上の対角2箇所(180°毎)又は4箇所(90°毎)にバランスウエイト挿入用の切り欠き部123を有している。バランスウエイト取付溝122は、一般にバランスウエイト130が遠心力で飛散しないようにアリ溝状、つまり断面がフラスコ型(凸型溝)になっており、同様に断面形状がフラスコ型(凸型形状)のバランスウエイト130は、バランスウエイト130の底部の幅よりも幅の大きいバランスウエイト挿入用の切り欠き部123からのみ挿入が可能となっている(図5参照。)。バランスウエイト取付溝122は、例えば、幅が約25mm程度、深さが約20mm程度とされている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
止めギヤ150の背面は、バランスウエイト挿入用の切り欠き部123と同一形状の回転止め部としての回転防止キー153を有したモノブロック構成となっている。止めギヤ台座151には、歯152の両側に位置するように、夫々中央1つのネジ穴154が設けられており、仮設ギヤ140と同様に、ギヤ背面固定座143を用いてバランスウエイト取付溝122に固定する。ギヤ背面固定座143の締付による摩擦力と回転防止キー153のバランスウエイト挿入用の切り欠き部123への嵌まり込みにより、仮設ギヤ140及び止めギヤ150に与えた回転動力は、ロードカップリング110のシャフトに直接伝わり、ガスタービンロータを回転させることが可能となる。回転動力は、仮設ギヤ140及び止めギヤ150に合わせチェーンを介しガスタービン重量等の諸条件から必要トルクを有した電動機により与えられる。また、仮設ギヤ140、止めギヤ150、及び後述するブリッジギヤ160は、この時電動機により与えられる必要トルクに耐えられる強度を有する材料、例えばステンレス鋼などによって作成する。