(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064341
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】インクジェット記録用粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
B41M5/52 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174573
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】志野 成樹
【テーマコード(参考)】
2H186
【Fターム(参考)】
2H186BA12
2H186BA15
2H186BB14Z
2H186BB30X
2H186BC26Z
2H186BC34Z
2H186BC52Z
2H186DA09
(57)【要約】
【課題】剥離紙を用いずとも、ロール状に巻かれた状態で接する記録面と粘着剤層が容易に剥離でき、かつ、印字した画像の均一性に優れたインクジェット記録用粘着ラベルを提供する。
【解決手段】支持体の一方の面に、インク受容層と、該インク受容層上に切断時伸びが200%以上のシリコーン樹脂を含有する離型層とを有し、該支持体の他方の面上に粘着剤層を有するインクジェット記録用粘着ラベル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に、インク受容層と、該インク受容層上に切断時伸びが200%以上のシリコーン樹脂を含有する離型層とを有し、該支持体の他方の面上に粘着剤層を有するインクジェット記録用粘着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙を用いずとも、ロール状に巻かれた状態で接する記録面と粘着剤層が容易に剥離でき、かつ、印字した画像の均一性に優れたインクジェット記録用粘着ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用粘着ラベルは、フルカラー化や高速化が容易であり、また小ロット印刷が可能であることから近年急速に普及している。一般に該粘着ラベルは、インク受容層を有さない裏面側の支持体上に粘着層と、該粘着層上に剥離紙を設けることにより構成される。剥離紙はラベルを被着体に貼り付けた後は不要となるが、通常の古紙回収設備での再生パルプ化ができないため処分が困難である。また、剥離紙の分だけ製品厚みが増すことにより、ロール形状に巻かれた状態では単位長さあたりのロール直径が大きくなるため、ハンドリング面で改善が求められている。
【0003】
上記剥離紙を有することに起因する課題を解決するため、記録層表面に離型層を設けることにより剥離紙を不要とすることが一般に行われる。しかしながら、特にインク吸収性に優れたインク受容層を有するインクジェット記録用粘着ラベルの場合には、記録面のインク受容層が嵩高で多孔質であるため、離型剤をそのままインク受容層表面に塗布しただけでは離型剤がインク受容層中に吸収されてしまい十分な剥離性能を得ることができない。また、離型性能を発現させるために多量の離型剤を塗布すると、インク受容層中の空隙が埋められてしまいインク吸収性が損なわれる上に、表面が強い疎水性状態となり、着弾したインクの広がりを妨げるため画質が低下する等の問題が生じる。
【0004】
上記問題を解決するため、離型層が含有する離型剤として、長鎖アルキル基含有ポリビニルアルコール、長鎖アルキル基含有アミノアルキド樹脂及び長鎖アルキル基含有ポリエチレンイミンから選ばれる化合物を用いたインクジェット記録用粘着ラベルが提案されている(特許文献1)。しかしながら、空隙径の小さな光沢タイプのインク受理層の場合には、やはりインク吸収性の低下が問題となる。一方、離型剤としてスチレン系重合体とシリコーン系離型剤との混合物、またはスチレン系重合体とパーフルオロ系離型剤との混合物を用いたインクジェット記録用粘着ラベルが提案されている(特許文献2)。しかしながら該粘着ラベルは、非水性インクでの出力を対象としたものであり、一般的な水性インクにて画像形成することができない。
【0005】
他方、シリコーン樹脂を含有する離型層を被覆率20~70%となるように、インク受容層表面を被覆した、水性インクでの出力を対象とするインクジェット記録用粘着ラベルが提案されている(特許文献3)。しかしながら、離型層を上記被覆率で均一に表面被覆することは困難であり、局所的に連続層となった箇所においてインク吸収ムラや画質低下が生じるため、特に高画質な画像を印字する際には粒状感や光沢ムラ等の画像の均一性が問題となる場合があった。また、インク受容層の表面に粘着剤層の厚さより厚い剥離部を離散的に設けたインクジェット記録用粘着ラベルが提案されている(特許文献4)。しかしながら、たとえ離散的に設けたとは言え剥離部はインク吸収能が乏しいことから、特に高画質な画像を印字する際には同様に画像の均一性の面で劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-139900号公報
【特許文献2】特開2005-29718号公報
【特許文献3】特開2014-195994号公報
【特許文献4】特開2019-199504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、剥離紙を用いずとも、ロール状に巻かれた状態で接する記録面と粘着剤層が容易に剥離でき、かつ、印字した画像の均一性に優れたインクジェット記録用粘着ラベルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成のインクジェット記録用粘着ラベルによって解決できることを見出した。
【0009】
支持体の一方の面に、インク受容層と、該インク受容層上に切断時伸びが200%以上のシリコーン樹脂を含有する離型層とを有し、該支持体の他方の面上に粘着剤層を有するインクジェット記録用粘着ラベル。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、剥離紙を用いずとも、ロール状に巻かれた状態で接する記録面と粘着剤層が容易に剥離でき、かつ、印字した画像の均一性に優れたインクジェット記録用粘着ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のインクジェット記録用粘着ラベルについて詳細に説明する。
【0012】
本発明のインクジェット記録用粘着ラベルが有するインク受容層は、良好な発色性が得られる観点から、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体として含有することが好ましい。ここで主体として含有するとは、インク受容層の全固形分に対して無機微粒子を50質量%以上含有することを意味し、好ましくは該無機微粒子を60~96質量%含有する。インク受容層が含有する無機微粒子としては、親水性の無機微粒子が好ましく、例えば、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種無機微粒子が挙げられるが、高い印字濃度、及び優れた画像鮮鋭性が得られる点で非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物が好ましい。
【0013】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカはケイ酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシール(登録商標)として市販されている。ゲル法シリカはケイ酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。ゲル法シリカとしては、例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲル(登録商標)として市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学(株)からスノーテックス(登録商標)として市販されている。
【0014】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からAEROSIL(登録商標)、(株)トクヤマからレオロシール(登録商標)として市販されている。
【0015】
本発明のインクジェット記録材料が有するインク受容層には、気相法シリカが好ましく使用できる。インク受容層が含有する気相法シリカの平均一次粒子径は、発色性の点から30nm以下が好ましく、平均一次粒子径が3~15nmでかつBET法による比表面積が200m2/g以上のものがより好ましく、平均一次粒子径が3~10nmでかつBET法による比表面積が250~500m2/gのものが特に好ましい。なお、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径としてその平均値を求めたものである。また本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0016】
気相法シリカは、カチオン性化合物の存在下で分散したものが好ましく使用できる。本発明で用いる気相法シリカは、前述の通り、発色性の点から平均二次粒子径500nm以下に分散したものが好ましいが、10~300nmの範囲がより好ましい。気相法シリカの分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。なお、本発明でいう平均二次粒子径とは、レーザー散乱式の粒度分布計(例えば(株)堀場製作所製LA920)を用いて、個数メジアン径として測定したものを指す。
【0017】
本発明では、湿式法シリカも好ましく使用できる。インク受容層が含有する湿式法シリカとしては発色性の点から沈降法シリカあるいはゲル法シリカが好ましく、特に沈降法シリカが好ましい。本発明に用いられる湿式法シリカとしては、発色性の点から平均二次粒子径が500nm以下であることが好ましく、20~300nmの範囲がより好ましい。また、本発明に用いられる湿式法シリカの平均一次粒子径は50nm以下であることが好ましく、3~40nmであることがより好ましい。
【0018】
湿式法シリカは、カチオン性化合物の存在下で分散・粉砕したものが好ましく使用できる。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。本発明に用いられる湿式法シリカを粉砕する好ましい方法について説明する。まず、水を主体とする分散媒中にシリカ粒子とカチオン性化合物を混合し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも一つを用いてシリカ予備分散液を得る。必要であれば水分散媒中に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。シリカ予備分散液の固形分濃度は高い方が好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15~40質量%、より好ましくは20~35質量%である。次に、シリカ予備分散液をより強い剪断力を持つ機械的手段にかけてシリカ粒子を粉砕することが好ましい。機械的手段としては公知の方法が採用でき、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機及び薄膜旋回型分散機等を使用することができる。
【0019】
上記気相法シリカ及び湿式法シリカの分散あるいは粉砕に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーを好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59-20696号公報、特開昭59-33176号公報、特開昭59-33177号公報、特開昭59-155088号公報、特開昭60-11389号公報、特開昭60-49990号公報、特開昭60-83882号公報、特開昭60-109894号公報、特開昭62-198493号公報、特開昭63-49478号公報、特開昭63-115780号公報、特開昭63-280681号公報、特開平1-40371号公報、特開平6-234268号公報、特開平7-125411号公報、特開平10-193776号公報等に記載された1~3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の安定性の点で、これらのカチオン性ポリマーの質量平均子量は2000~10万程度が好ましく、特に2000~3万程度が好ましい。
【0020】
インク受容層が含有するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ-アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ-アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕したものが使用できる。本発明では発色性の点から平均二次粒子径が500nm以下のアルミナを使用することが好ましく、20~300nmの範囲のものがより好ましい。
【0021】
インク受容層が含有するアルミナ水和物はAl2O3・nH2O(n=1~3)の構成式で表される。本発明に使用されるアルミナ水和物はアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物についても、発色性の点から平均二次粒子径は500nm以下であることが好ましく、より好ましくは20~300nmである。
【0022】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散されたものが好ましく用いられる。
【0023】
上記した無機微粒子の中から2種以上の無機微粒子を併用することもできる。例えば、微粉砕した湿式法シリカと気相法シリカとの併用、微粉砕した湿式法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用、気相法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用が挙げられる。
【0024】
本発明のインクジェット記録用粘着ラベルが有するインク受容層は水溶性バインダーを含有することが好ましい。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル系やそれらの誘導体が使用されるが、中でも完全ケン化または部分ケン化のポリビニルアルコールが好ましく、特にケン化度が80%以上のものが特に好ましい。また、ポリビニルアルコールの平均重合度は500~6000が好ましく、1000~5000がより好ましい。
【0025】
前記ポリビニルアルコールとしては、一般的なポリビニルアルコールに加え、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール及びその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
インク受容層中における水溶性バインダーの含有量は、少ないほどインク受容層中の空隙容積が大きくなりインク吸収性が高くなる面で好ましいが、少なすぎるとインク受容層が脆弱となりひび割れ等の表面欠陥の発生や、光沢の低下の原因となるため、無機微粒子の総量に対して3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。これにより、インク受容層をインク吸収性に優れた多孔質なインク受容層とすることができる。
【0027】
インク受容層は、上記した水溶性バインダーに加えて架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を含有させることで、ひび割れ等の表面欠陥の発生を抑制でき、インク吸収性も向上する。架橋剤としては、水溶性バインダーの架橋剤として公知のものが使用できるが、水溶性バインダーとしてポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸またはほう酸塩が特に好ましい。また、ポリビニルアルコールが活性の高い変性基を含有する場合には、変性基に応じて公知の架橋剤を使用してもよい。架橋剤の添加量は水溶性バインダーに対して0.1~40質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%である。
【0028】
本発明においてインク受容層は、前述の非晶質合成シリカのカチオン化に使用されるものと同様のカチオン性ポリマーを、更に添加剤として含有してもよい。また、インク受容層は、耐水性向上等のため水溶性多価金属化合物を含有してもよい。水溶性多価金属化合物としては水溶性アルミニウム化合物が好ましく利用できる。
【0029】
水溶性アルミニウム化合物としては例えば、無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られている。
【0030】
これらの水溶性アルミニウム化合物の中でも、インク受容層を形成する塗布液に安定に添加できるものが好ましく、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。この化合物は、主成分が下記の式1、2または3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0031】
[Al2(OH)nCl6-n]m ・・式1
[Al(OH)3]nAlCl3 ・・式2
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n ・・式3
【0032】
これらのものは、多木化学(株)からポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学工業(株)からポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンからピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードのものが容易に入手できる。
【0033】
上記した水溶性多価金属化合物の含有量は、インク受容層が含有する無機微粒子に対して0.1~10質量%の範囲が好ましい。
【0034】
インク受容層は、更に着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0035】
また、インク受容層には、チオエーテル化合物、カルボヒドラジド及びその誘導体を含有させることによって印字後の保存性を改良することができる。
【0036】
本発明で用いられるカルボヒドラジド誘導体は、同一分子中にカルボヒドラジド構造を一つまたは二つ以上有する化合物であっても、あるいはカルボヒドラジド構造を分子主鎖または側鎖に有するポリマーであってもよい。
【0037】
本発明に用いられるチオエーテル化合物には、硫黄原子の両側に芳香族基が結合した芳香族チオエーテル化合物、硫黄原子を挟んだ両端にアルキル基を有する脂肪族チオエーテル化合物等がある。これらの中でも特に親水性基を有する脂肪族チオエーテル化合物が好ましい。
【0038】
本発明において、インク受容層の乾燥後の塗布量は10~60g/m2であることが好ましく、支持体が樹脂被覆紙のような非吸収性支持体である場合には、乾燥後の塗布量は20~60g/m2であることが好ましい。
【0039】
インク受容層の塗布方式としては、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式等の各種塗布方式が例示される。
【0040】
次に、離型層について説明する。本発明において離型層は切断時伸びが200%以上のシリコーン樹脂を含有する。切断時伸びとはJIS K 6251:2017にて定義されており、試験片が切断した際の伸びを示す。本発明において離型層が切断時伸び200%以上のシリコーン樹脂を含有することにより印字した画像の均一性に優れた離型層を構成することができる。シリコーン樹脂形成液としては、単独で硬化する1液タイプ、硬化剤を配合する2液タイプ、水性エマルジョンタイプがあるが、本発明においては製造時の希釈媒体として環境負荷の小さい水を使用できるという点、及びインク吸収性への悪影響が少ないという点において水性エマルジョンタイプを用いることが好ましい。
【0041】
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョンは、主剤(ベースポリマー)と架橋剤、必要に応じスズ化合物等の触媒の組み合わせからなる1液タイプである。主剤(ベースポリマー)は、1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサンであり、水中に乳化分散されている。硬化反応性基としては、水酸基、アルコキシ基等の加水分解性基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。架橋剤としては、エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランを例示することができる。これら主剤(ベースポリマー)と架橋剤、必要に応じ添加される触媒により、縮合反応が進行しシリコーン樹脂が形成される。
【0042】
上記、シリコーン樹脂形成用水性エマルジョンとしては、例えば信越化学工業(株)からPOLON-MF-56、KM-9749、KM-2002-T、KM-2002-L-1、KM-9772として、ダウ・東レ(株)からIE-7170として市販されている。
【0043】
離型層の乾燥後の塗布量は0.01~0.2g/m2であることが好ましく、0.03~0.1g/m2がより好ましく、0.04~0.09g/m2であることが特に好ましい。0.2g/m2を超えるとインク吸収性が悪化する場合がある。
【0044】
離型層は、シリコーン樹脂形成用水性エマルジョンに加え、更にインク受容層の項で述べた公知の各種添加剤を含有することができる。
【0045】
離型層の塗布方式としては、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式、インクジェット方式等の各種塗布方式が例示される。中でも、リバースグラビアロール方式が好ましく、塗布の均一性の観点から、ロールの直径が100mm以下(より好ましくは20~80mm)の斜線グラビアロール(斜線の溝を有するグラビアロール)を用いるリバースグラビアロール方式が好ましい。
【0046】
本発明のインクジェット記録用粘着ラベルが有する支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、ポリプロピレン樹脂に無機充填剤を配合して、二軸延伸フィルム成形法によって製造された合成紙(例えば、ユポ(登録商標)、(株)ユポ・コーポレーション製)、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の非吸収性支持体、上質紙、アート紙、コート紙等の吸収性支持体等が例示される。中でも、非吸収性支持体は高い光沢が得られる点で好ましいが、その反面、インク中の溶媒成分を吸収しない。このような非吸収性支持体上にはインク吸収性に優れる多孔質なインク受容層が好ましく設けられるが、本発明はこのような構成のインクジェット記録材料に特に有用である。これらの支持体の厚みは、約50~300μm程度のものが好ましく使用される。
【0047】
非吸収性支持体であるフィルムやポリオレフィン樹脂被覆紙を使用する場合に、インク受容層を設ける面上には、コロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことができる。
【0048】
支持体としてフィルムやポリオレフィン樹脂被覆紙を使用する場合、支持体はインク受容層を設ける面上にゼラチンや各種ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等を含有する公知の下塗層を設けることや、予め接着性を改善するための層が設けられた易接着処理品(例えば易接着処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いることが好ましい。また、コロナ処理あるいはプラズマ処理により非吸液性支持体の濡れ性を改善することも好ましい。
【0049】
下塗層の塗布量としては特に制限はないが、乾燥後の塗布量で0.005~2.0g/m2の範囲が好ましく、0.01~1.0g/m2の範囲がより好ましく、0.02~0.5g/m2の範囲が特に好ましい。
【0050】
本発明の粘着剤層は支持体のインク受容層を設ける面とは他方の面上に設けられる。粘着剤層に用いられる粘着剤は、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤等の各種粘着剤を用いることができる。粘着剤層の乾燥後の塗布量は1~30g/m2が好ましく、2~20g/m2がより好ましい。乾燥後の塗布量が1g/m2未満であるとラベルとして使用する際に十分な接着力が得られない場合があり、一方30g/m2を超えると接着力が飽和する場合がある。
【0051】
粘着剤層の塗布方式としては、メイヤーバーコーター、キスロールコーター、リップコーター、ダイレクトロールコーター、オフセットロールコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、コンマダイレクトコーター、コンマリバースコーター、エアーナイフコーター、スリットダイコーター等が好適である。更に、粘着剤を支持体のインク受容層を設ける面とは他方の面に塗布せず、一旦工程紙に塗布し、乾燥後粘着剤を支持体のインク受容層を設ける面とは他方の面に転写し、その後工程紙を剥離させる方法で粘着剤層を塗設することも可能である。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。また、実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形分あるいは実質成分の質量部及び質量%を示す。
【0053】
(実施例1)
支持体として、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル(株)製、全光線透過率89%)に、下記組成のインク受容層塗布液1を乾燥後の塗布量として25g/m2となるようにスライドビードを用いた塗布装置にて塗布しインク受容層を形成した。その後10℃で20秒間冷却後、30~55℃の加熱空気を吹き付けて乾燥した。更に該インク受容層上に下記組成の離型層塗布液1を、斜線グラビアロールを用いた塗布装置にて乾燥後の塗布量として0.02g/m2となるように斜線グラビアロールの回転数を調整して塗布を行い、45℃の温風を吹き付けて乾燥し離型層を形成した。次いで、支持体のインク受容層が塗布されていない側の面に市販の水系アクリル樹脂タイプ(エマルジョンタイプ)粘着剤(SE-6101、昭和電工(株)製)を乾燥後の塗布量が6g/m2となるようにコンマダイレクトコーターにて塗布し乾燥して粘着剤層を形成し、50℃で8時間のエージング処理を行い、実施例1のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。
【0054】
<気相法シリカ分散液の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、BET法による比表面積300m2/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザー処理して、固形分濃度20%の気相法シリカ分散液を作製した。該分散液が含有する気相法シリカの平均二次粒子径は135nmであった。この気相法シリカ分散液を用い、下記組成のインク受容層塗布液1を作成した。
【0055】
<インク受容層塗布液1>
気相法シリカ分散液 (気相法シリカの固形分として)100部
ほう酸 4部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 23部
塗布液の固形分濃度が13%になるように水で調整した。
【0056】
<離型層塗布液1>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 0.33部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 99.67部
【0057】
(実施例2)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液2に代えた以外は実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.03g/m2とした。
【0058】
<離型層塗布液2>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 0.5部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 99.5部
【0059】
(実施例3)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液3に代えた以外は実施例1と同様にして実施例3のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.05g/m2とした。
【0060】
<離型層塗布液3>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 0.83部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 99.17部
【0061】
(実施例4)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液4に代えた以外は実施例1と同様にして実施例4のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.08g/m2とした。
【0062】
<離型層塗布液4>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 1.35部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 98.65部
【0063】
(実施例5)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液5に代えた以外は実施例1と同様にして実施例5のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.1g/m2とした。
【0064】
<離型層塗布液5>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 1.66部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 98.34部
【0065】
(実施例6)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液6に代えた以外は実施例1と同様にして実施例6のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.15g/m2とした。
【0066】
<離型層塗布液6>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 2.5部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 97.5部
【0067】
(実施例7)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液7に代えた以外は実施例1と同様にして実施例7のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.08g/m2とした。
【0068】
<離型層塗布液7>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 1.35部
(KM-9772 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
水 98.65部
【0069】
(実施例8)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液8に代えた以外は実施例1と同様にして実施例8のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.08g/m2とした。
【0070】
<離型層塗布液8>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 1.13部
(IE-7170 ダウ・東レ(株)製 固形分濃度48%)
水 98.87部
【0071】
(比較例1)
実施例1において、離型層塗布液1を塗布しない以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。
【0072】
(比較例2)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液9に代え、更に離型層塗布・乾燥後に100℃で10分間加熱した以外は実施例1と同様にして比較例2のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。離型層の乾燥後の塗布量は0.08g/m2とした。ここで用いた離型層形成用シリコーンエマルジョンは硬化用の触媒を必要とし、付加反応により硬化する。
【0073】
<離型層塗布液9>
離型性シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 1.3部
(KM-3951 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
シリコーン樹脂硬化触媒 0.07部
(CAT-PM-10A 信越化学工業(株)製 固形分濃度20%)
水 98.63部
【0074】
(比較例3)
実施例1の離型層塗布液1を下記の離型層塗布液10に代え、更に離型層塗布・乾燥後に100℃で10分間加熱した以外は実施例1と同様にして比較例3のインクジェット記録用粘着ラベルを得た。斜線グラビアロールの回転数の調整により離型層の乾燥後の塗布量は3.0g/m2とした。
【0075】
<離型層塗布液10>
離型性シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 47.6部
(KM-3951 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
シリコーン樹脂硬化触媒 2.4部
(CAT-PM-10A 信越化学工業(株)製 固形分濃度20%)
水 50部
【0076】
上記のようにして作製したインクジェット記録用粘着ラベルについて下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
<画像均一性>
市販の水性インクジェットプリンター(EP-881A、セイコーエプソン(株)製)でシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのベタ印字を行い、ベタ画像部の均一性(粒状感や光沢ムラ)を観察し、下記基準にて官能評価した。
◎:画像の均一性が非常に高い。
○:「◎」より画像の均一性が劣るが、注視しないと判らないレベル。
△:「○」より画像の均一性が劣るが、実用上問題とならないレベル。
×:「△」より画像の均一性が劣り、実用上問題となるレベル。
【0078】
<易剥離性>
インクジェット記録用粘着ラベルを、粘着剤層面が記録面(実施例1~8及び比較例2、3は離型層面、比較例1はインク受容層面)と接するようにしてロール状に巻き取った後、再度剥離した際の剥離後の記録面の状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:記録面への粘着剤の付着は観察されず、光沢の変化も無い。
○:記録面への粘着剤の付着は観察されないが、光沢の変化が僅かに発生する。
△:記録面への粘着剤の付着が僅かに観察され、光沢の変化も発生するが実用上問題ないレベル。
×:記録面への粘着剤の付着が非常に多く観察される、あるいはきれいに剥離しない。
【0079】
<シリコーン樹脂の切断時伸び>
離型層塗布液1から10の作製に用いたシリコーン樹脂形成用水性エマルジョン3種類及び離型性シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン1種類を、下記の水性エマルジョン1から4として、乾燥時の厚みが2mmとなるように易接着処理がなされていない厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル(株)製、全光線透過率89%)上に塗布した。水性エマルジョン1から3は室温乾燥後50℃で8時間の加熱を行った。また、水性エマルジョン4は室温乾燥後100℃で10分加熱し、次いで50℃で8時間の加熱を行った。乾燥後のシリコーン樹脂からなる被膜をJIS K 6251:2017に従い切断時伸びの測定を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
<水性エマルジョン1>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 100部
(POLON-MF-56 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
【0081】
<水性エマルジョン2>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 100部
(KM-9772 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
【0082】
<水性エマルジョン3>
シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 100部
(IE-7170 ダウ・東レ(株)製 固形分濃度48%)
【0083】
<水性エマルジョン4>
離型性シリコーン樹脂形成用水性エマルジョン 95.2部
(KM-3951 信越化学工業(株)製 固形分濃度40%)
シリコーン樹脂硬化触媒 4.8部
(CAT-PM-10A 信越化学工業(株)製 固形分濃度20%)
【0084】
【0085】
表1の結果から、本発明のインクジェット記録用粘着ラベルは、剥離紙を用いずとも、ロール状に巻かれた状態で接する記録面と粘着剤層が容易に剥離でき、かつ、印字した画像の均一性に優れることがわかる。