(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064342
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
B41M 5/46 20060101AFI20230501BHJP
B41M 5/28 20060101ALI20230501BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20230501BHJP
B41M 5/32 20060101ALI20230501BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B41M5/46 210
B41M5/28 220
B41M5/42 211
B41M5/32
B41M5/42 220
B41M5/44 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174574
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮太
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA24
2H026BB46
2H026DD02
2H026DD32
2H026DD46
2H026DD55
2H026DD57
2H026EE05
2H026FF11
2H026FF15
2H026FF22
(57)【要約】
【課題】赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストな画像が得られる感熱記録材料を提供する。
【解決手段】光透過性支持体上に、830nmにおけるモル吸光係数ε(830)と、365nmにおけるモル吸光係数ε(365)の比ε、(830)/ε(365)の値が4.0以上の赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩を含有し、且つ、感光性のハロゲン化銀を実質的に含有しない感熱記録層、および親水性粒子と疎水性樹脂を含有し、厚みが2.3~9.4μmである保護層とを少なくともこの順に有する感熱記録材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体上に、830nmにおけるモル吸光係数ε(830)と、365nmにおけるモル吸光係数ε(365)の比、ε(830)/ε(365)の値が4.0以上の赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩を含有し、且つ、感光性のハロゲン化銀を実質的に含有しない感熱記録層、および親水性粒子と疎水性樹脂を含有し、厚みが2.3~9.4μmである保護層とを少なくともこの順に有する感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストな画像が得られる感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
版下材料の作製に用いられる高画質な画像形成方法として、ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法が長く一般的に用いられてきた。しかしながら、湿式処理の画像形成方法では現像液や定着液等の廃液処理が必要で環境負荷が大きいことから、湿式処理を必要としない乾式の画像形成方法が種々検討されてきた。現在ではインクジェットプリンター、電子写真、染料熱転写方式等といった画像形成システムが実用化されている。しかしこれらの乾式の画像形成方法は、画像部における優れた遮光性および、非画像部における優れた光透過性を有する、いわゆる高コントラストな版下材料を得ることは困難である。
【0003】
ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法と同等の高いコントラストを得ることができる乾式の画像形成方法としては、支持体上に感熱記録層を有する感熱記録材料にサーマルヘッドあるいは赤外線レーザーを用いて画像形成する方法が挙げられる。その中でも、高密度記録、高画質記録の観点からは赤外線レーザーを用いた感熱記録方式が優位である。赤外線レーザーによって描画可能な感熱記録材料としては、例えば特開平6-194781号公報(特許文献1)には高濃度の画像を記録できる熱記録材料として、熱的に還元可能な銀源、銀イオン用還元剤、約500~1100nmの波長範囲のレーザー光を吸収する染料、およびポリマー状結合剤を含有する熱記録材料が開示され、特開平10-29377号公報(特許文献2)には高画質の画像を記録できる感熱記録材料として、有機銀塩、有機銀塩の現像剤、特定の構造を有するメロシアニン系赤外線吸収色素、および水溶性バインダーを含有する感熱層を有する感熱記録材料が開示されている。また特開2001-10229号公報(特許文献3)には非画像部の紫外線濃度が低く残色が少ない熱発色画像形成材料として、非感光性有機銀塩、銀イオン用還元剤、バインダー、色調調整剤および750~1100nmの波長範囲の放射線を吸収する吸収剤を含有する熱発色画像形成材料が開示されている。
【0004】
赤外線レーザーを用いた感熱記録方式は、赤外線レーザーを照射することで感熱記録材料を局所的に加熱し、感熱記録層を発色させて描画する。その際、赤外線レーザーは高エネルギーであるため、感熱記録材料の含有成分や感熱記録層の発色過程で生じる副生成物が感熱記録材料の表面から噴出物として揮発あるいは爆散して、感熱記録材料の表面や赤外線レーザー照射装置を汚染するという課題があった。
【0005】
上記課題を解決する方法として、感熱記録層の上に別の層を設けることが知られている。例えば特開2002-311535号公報(特許文献4)には、支持体上に熱現像可能な画像形成層と、特定の水不溶性芳香族ポリエステルを含むバリヤー層を有する熱現像可能な材料が開示され、該バリヤー層が該熱現像可能な材料からの脂肪酸および他の化学物質の拡散を有効に妨げるとの記載がある。特開2004-9583号公報(特許文献5)には、支持体上に非感光性の有機銀塩および還元剤を含有する画像形成層、および保護層がこの順に積層され、支持体から遠いほど架橋剤を多く含有する画像形成材料が開示され、該画像形成材料は像様に加熱あるいは露光後の潜像を加熱現像した際に、表面に浮き出す化合物を低減できるとの記載がある。しかし、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を低減する効果については、いっそうの向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-194781号公報
【特許文献2】特開平10-29377号公報
【特許文献3】特開2001-10229号公報
【特許文献4】特開2002-311535号公報
【特許文献5】特開2004-9583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストな画像が得られる感熱記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題は、以下の発明により解決される。
光透過性支持体上に、830nmにおけるモル吸光係数ε(830)と、365nmにおけるモル吸光係数ε(365)の比ε、(830)/ε(365)の値が4.0以上の赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩を含有し、且つ、感光性のハロゲン化銀を実質的に含有しない感熱記録層、および親水性粒子と疎水性樹脂を含有し、厚みが2.3~9.4μmである保護層とを少なくともこの順に有する感熱記録材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストな画像が得られる感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0011】
本発明の感熱記録材料は、光透過性支持体を有する。かかる光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、硝酸セルロース、ポリカーボネート等の樹脂フィルムや、ガラス等の無機材料等が挙げられる。なお、本発明において光透過性支持体とは、全光線透過率が60%以上である支持体を意味し、さらに好ましくは70%以上である。また該光透過性支持体のヘーズ値は10%以下であることが好ましい。該光透過性支持体は易接着層、ハードコート層、帯電防止層等の公知の層を有していてもよい。本発明における光透過性支持体の厚みは特に規定されるものではないが、ハンドリング性の観点から50~300μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の感熱記録材料が有する赤外線吸収層は、830nmにおけるモル吸光係数ε(830)と365nmにおけるモル吸光係数ε(365)の比、ε(830)/ε(365)の値が4.0以上の赤外線吸収色素を含有する。本発明における赤外線吸収色素とは、600~1500nmの波長領域に吸収を有する色素であることが好ましく、650~1200nmの波長領域に吸収極大を有することがより好ましく、750~1100nmの波長領域に吸収極大を有することがさらに好ましい。そして、本発明における赤外線吸収色素は、高圧水銀ランプやケミカルランプの紫外線領域における発光ピークが存在する350~450nmの波長領域における吸収が小さいこと、つまり上述したε(830)/ε(365)の値が4.0以上であることにより、赤外線レーザーの照射により高コントラストな画像が得られる感熱記録材料とすることができる。ε(830)/ε(365)の上限値は特に限定されない。このような赤外線吸収色素としてはスクアリリウム、シアニン、メロシアニン、ビス(アミノアリール)ポリメチンなどのポリメチン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には以下の一般式(1)~(3)で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
【0014】
一般式(1)~(3)においてR1~R10は置換基であり、該置換基としては、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基などが例示される。これらはそれぞれ同じ置換基でも異なる置換基であってもよく、また他の置換基と結合して環構造を形成していてもよい。また一般式(1)~(3)においてX-は負の電荷を有する原子または原子団を表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオンなどのオキソ酸、テトラフルオロボレート、ヘキサフロオロホスフェート、アルキルおよびアリールスルホナートなどが挙げられる。具体的には、以下の例示化合物(1)~(7)のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
【0016】
【0017】
前述したモル吸光度係数(ε(830)およびε(365))の測定方法としては、赤外線吸収色素の2-ブタノン溶液を調製し、紫外可視分光光度計UV-2600((株)島津製作所製)を用いて、光路長1cmの石英セルを使用して該溶液の吸収スペクトルを測定する方法を例示できる。
【0018】
なお、本発明において高コントラストな画像とは、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の紫外光透過濃度(Dmin)の差分Dmax-Dminが3.0以上であることを意味し、より好ましくは3.5以上である。紫外光透過濃度の測定方法としては、ビデオジェット・エックスライト(株)製X-Rite(登録商標)361Tを使用し、紫外光モードにて測定する方法が例示できる。
【0019】
赤外線吸収層における赤外線吸収色素の含有量は特に限定されないが、赤外線吸収層の全固形分に対して0.05~50質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0020】
本発明において赤外線吸収層は赤外線吸収色素を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0021】
本発明において赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素と共にバインダー成分を含有することが光透過性支持体に対する赤外線吸収層の密着性に優れることから好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えばヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂に代表されるポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が例示される。これらのバインダー成分は水や有機溶媒に溶解して用いるか、疎水性ポリマー固体が微粒子の状態で分散しているラテックスやポリマー分子がミセルを形成し分散しているものを用いてもよい。本発明の赤外線吸収層においては、上述したバインダー成分は乾燥後に光透過性の被膜を形成するものが好ましい。またこれらのバインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上併用してもよい。
【0022】
赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分以外に、種々目的に応じて、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0023】
本発明の感熱記録材料が有する赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分、および赤外線吸収層が含有可能な添加剤、さらに公知の溶剤を含有する赤外線吸収層塗布液を作製し、該赤外線吸収層塗布液を上述した光透過性支持体上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。また、該赤外線吸収層塗布液の塗布量は乾燥質量で0.01~8.0g/m2が好ましく、0.05~5.0g/m2がより好ましい。
【0024】
本発明の感熱記録材料が有する感熱記録層は、非感光性の有機銀塩を含有する。該有機銀塩は、後述する還元剤と共に加熱されることにより還元されて銀画像を形成する。具体的には、熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(II)項、第29963(XVI)項に記載されているような没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の有機酸の銀塩;1-(3-カルボキシプロピル)チオ尿素、1-(3-カルボキシプロピル)-3,3-ジメチルチオ尿素等のカルボキシアルキルチオ尿素の銀塩;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類とサリチル酸、安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、5,5-チオジサリチル酸等の芳香族カルボン酸との高分子反応生成物と銀との錯体;3-(2-カルボキシエチル)-4-ヒドロキシメチル-4-チアゾリン-2-チオン、3-カルボキシメチル-4-メチル-4-チアゾリン-2-チオン等のチオン類の銀塩または錯体;イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、3-アミノ-5-ベンジルチオ-1,2,4-トリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選ばれる含窒素複素環の銀塩または錯体;サッカリン、5-クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。これらのうち炭素数が10以上の脂肪酸銀が好ましく、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀が特に好ましい。
【0025】
本発明において感熱記録層が含有する非感光性の有機銀塩の含有量は、版下材料として使用するために必要な紫外光透過濃度によって適宜調整することが可能であり、銀換算値として0.2~3.0g/m2が好ましく、0.5~2.0g/m2がより好ましい。
【0026】
本発明の感熱記録材料が有する感熱記録層は、感光性のハロゲン化銀を実質的に含有しない。ここでいう実質的に含有しないとは、感熱記録層中に含有される感光性のハロゲン化銀が感熱記録層の全固形分量に対して1質量%未満であることを意味し、これによって本発明の感熱記録材料の保管時および通常使用時の非画像部における透過濃度の上昇が抑えられ、高コントラストな画像を形成可能な感熱記録材料が得られる。
【0027】
本発明の感熱記録材料が有する感熱記録層は、還元剤を含有することが好ましい。かかる還元剤としては、ハイドロキノン、カテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、クロロヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン化合物、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、没食子酸ステアリル、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル等のポリヒドロキシ安息香酸化合物、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール等のアミノフェノール化合物、1-フェニル-3-ピラゾリドンおよびその誘導体、ヒドロキシルアミン類、特開平6-317870号公報記載のポリヒドロキシインダン類や、特開2001-328357号公報記載のジヒドロキシ安息香酸誘導体が例示できる。上記した還元剤の中でも、高コントラストな画像が得られる観点から、ポリヒドロキシベンゼン化合物およびポリヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。
【0028】
感熱記録層における還元剤の含有量は、還元剤の種類や、有機銀塩の種類によって広範に変化しうるが、有機銀塩1モルあたり0.1~3.0モルであることが好ましく、0.5~2.0モルであることがさらに好ましい。また種々の目的のために、上述した還元剤は2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の感熱記録材料が有する感熱記録層は、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィの分野において知られている、いわゆる色調剤を含有することが好ましい。色調剤の例としては前出の熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(V)項、第29963(XXII)項等で公知であり、具体的にはフタルイミドに代表されるイミド類、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールに代表されるメルカプト化合物、フタラジン、フタラゾン、4-メチルフタル酸、テトラクロロフタル酸およびそれらの無水物に代表されるフタル酸誘導体、1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンに代表されるベンズオキサジン誘導体等が挙げられる。また種々の目的のために、上述した色調剤は2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の感熱記録材料が有する感熱記録層は画像銀の形成の抑制や促進、画像形成前後の感熱記録材料の保存性を向上させる等の目的で、様々な促進剤や安定剤およびそれらの前駆体を含有してもよい。具体的には写真用添加剤として知られているベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラザインデン、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-ベンツアミド-3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール等から選ぶことができる。また種々の目的のために、上述した促進剤や安定剤およびそれらの前駆体は2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の感熱記録材料が有する感熱記録層は、非感光性の有機銀塩を保持する目的でバインダー成分を含有することが好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えば上述した赤外線吸収層のバインダー成分と同様の熱可塑性樹脂を好ましく用いることができる。また、バインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上併用してもよい。
【0032】
感熱記録層が含有するバインダー成分の含有量としては、感熱記録層の全固形分に対して10~70質量%が好ましい。
【0033】
上述したバインダー成分は、塩化物イオンや臭化物イオン等の遊離のハロゲン化物イオンを含有しないことが好ましい。ハロゲン化物イオンは有機銀塩の銀イオンと反応し、感光性のハロゲン化銀を形成するため、本発明の感熱記録材料の耐光性を低下させる原因となる。具体的にはバインダー成分の含有量に対して100ppm以下であることが好ましい。
【0034】
感熱記録層は、上述した成分以外に紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0035】
本発明において感熱記録層は、上述した赤外線吸収層と隣接していることが好ましく、これにより赤外線レーザーの照射による画像の形成が効率的になり、とりわけ高コントラストな画像を得ることができる。感熱記録層を形成する方法としては、前述した有機銀塩、還元剤、色調剤、バインダー成分、および感熱記録層が含有可能な添加剤、さらに公知の溶剤を含有する感熱記録層塗布液を作製し、該感熱記録層塗布液を上述した赤外線吸収層上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。また、該感熱記録層塗布液の塗布量は乾燥質量で2.0~30.0g/m2が好ましく、5.0~20.0g/m2がより好ましく、7.0~15.0g/m2がさらに好ましい。
【0036】
本発明において感熱記録材料は、感熱記録層上に保護層を有する。かかる保護層の存在により、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を低減できる他、ハンドリング中の落下や擦過、汚れ等から感熱記録層を保護することもできる。
【0037】
本発明における保護層は、親水性粒子と疎水性樹脂を少なくとも含有する。かかる構成とすることにより、赤外線レーザー照射時の噴出物を効果的に低減できる。一方で、疎水性樹脂のみを含有する保護層、疎水性粒子と疎水性樹脂とを含有する保護層、親水性粒子と親水性樹脂とを含有する保護層では、赤外線レーザー照射時に感熱記録材料の表面に噴出物が発生する場合がある。本構成により噴出物が抑制できる機構は不明だが、疎水性樹脂と親水性粒子の親和性には限界があるため、疎水性樹脂と親水性粒子との間に微細な隙間が生じ、赤外線レーザー照射時に揮発した感熱記録材料の含有成分や発色過程で生じる副生成物が該隙間より緩やかに逃れることで、感熱記録材料の含有成分の爆散を回避し、その結果、噴出物を抑制できるものと推測する。
【0038】
本発明において親水性粒子とは、表面が水に濡れやすい性質を有する粒子を意味する。具体的には金、銀、銅等の金属、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物、層状ケイ酸塩、あるいはこれらの複合物等、水に濡れやすい性質を有する無機材料の粒子や、アクリル粒子、スチレン粒子、メラミン粒子等の有機材料の粒子で表面が水に濡れやすい性質を有するもの、有機・無機複合材料の粒子で表面が水に濡れやすい性質を有するもの、等を用いることができる。粒子が親水性か否かを判断する方法としては、ガラスビーカーに純水10mLを計量し、そこに粒子を0.1g加えて攪拌し10分間静置後、粒子が水面に浮いたまま分離していなければ親水性と判断する方法を例示できる。親水性粒子は公知の表面処理が施されていてもよい。親水性粒子は2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記した親水性粒子の中でも、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を低減する効果に優れることから親水性無機粒子が好ましい。
【0040】
親水性粒子の平均粒子径の下限は特に限定されないが、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を効果的に低減できることから1μm以上であることが好ましい。親水性粒子の平均粒子径の上限は特に限定されないが、高コントラストな画像が得られることから10μm以下であることが好ましい。平均粒子径としてはレーザー回折・散乱式粒度分布測定にて求められる体積基準の算出値を用いることができる。具体的には、マイクロトラック・ベル(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定器MT3000IIを用いて測定する方法が例示できる。
【0041】
本発明における保護層が含有する親水性粒子は、市販品を用いることができる。例えばシリカ粒子としては日本触媒(株)から販売されているシーホスター(登録商標)KEシリーズ、AGCエスアイテック(株)から販売されているサンスフェア(登録商標)シリーズ、富士シリシア化学(株)から販売されているサイリシア(登録商標)シリーズ等、アルミナ粒子としては日本軽金属(株)から販売されている微粒アルミナSA30シリーズ、SA40シリーズ、SMMシリーズ等、アクリル粒子としては綜研化学(株)から販売されているケミスノー(登録商標)MXシリーズ、積水化成品工業(株)から販売されているテクポリマー(登録商標)AQSシリーズ等、メラミン粒子としては日産化学(株)から販売されているオプトビーズ(登録商標)シリーズ、(株)日本触媒から販売されているエポスター(登録商標)シリーズ等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0042】
保護層における親水性粒子の含有量は特に限定されないが、保護層の全固形分に対して1.2~40質量%であることが好ましく、1.6~30質量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明の保護層は、親水性粒子の含有量以下の範囲で、疎水性粒子を含有していてもよく、好ましくは親水性粒子の含有量に対して50質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。
【0044】
疎水性樹脂は特に制限されず、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、エポキシ樹脂等、公知の疎水性樹脂を用いることができる。なお、本発明において疎水性樹脂とは、25℃の水100gに対する溶解度が1g未満である樹脂を意味する。疎水性樹脂は2種以上を併用してもよい。
【0045】
保護層は親水性粒子と疎水性樹脂を含有する限り、含有成分や形成方法は特に限定されないが、親水性粒子、多価イソシアネート化合物、ポリオール化合物を含有する保護層塗布液を塗布して形成することが、赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が効果的に低減可能な保護層が得られることから好ましい。多価イソシアネート化合物とポリオール化合物が架橋することで疎水性樹脂である各種ウレタン樹脂を生じる。上記した多価イソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、例えばジメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネート化合物や、トリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチルベンゾール-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート等の芳香族多価イソシアネート化合物や、これらのうち単独または2種類以上の多価イソシアネート化合物が2量体または3量体を形成したアダクト体、またはこれらの多価イソシアネート化合物と2価または3価のポリオールとが反応したアダクト体等が挙げられる。またこれらのうち、脂肪族多価イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネートおよびそのアダクト体が好ましく、芳香族多価イソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネートおよびそのアダクト体が好ましい。なお、これらの多価イソシアネート化合物は種々の目的によって単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのような多価イソシアネート化合物はイソシアネート系架橋剤として一般的に販売されている製品をそのまま用いることができ、具体的な製品名としてはDIC(株)製のバーノック(登録商標)シリーズや、東ソー(株)製のコロネート(登録商標)シリーズを挙げることができる。
【0046】
本発明における保護層塗布液が含有することができる多価イソシアネート化合物の含有量は、保護層塗布液の全固形分に対して59~95質量%であることが感熱記録材料の表面の耐アルコール性が優れることから好ましく、59~90質量%であることがより好ましく、59~80質量%であることがさらに好ましい。含有量が59質量%未満の場合は感熱記録材料の表面の耐アルコール性が不十分になる場合があり、含有量が95質量%より多い場合は指触乾燥時間が長くなり、生産性が低下する場合がある。
【0047】
本発明における保護層塗布液が含有することができるポリオール化合物としては、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体や、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等に代表される多価アルコールと種々モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は、種々の目的によって単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。またこれらのうち、アクリルポリオールを用いることがさらに好ましく、市販されているアクリルポリオールとしてはアクリディック(登録商標)シリーズ(DIC(株)製)や、#6000シリーズ(大成ファインケミカル(株)製)が例示される。従って、本発明における保護層はアクリルポリオールと多価イソシアネートが反応したアクリルウレタン樹脂を好ましく含有する。
【0048】
本発明の保護層は、疎水性樹脂の含有量以下の範囲で、親水性樹脂を含有していてもよく、好ましくは疎水性樹脂の含有量に対して50質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。
【0049】
本発明において保護層は、上述した親水性粒子、多価イソシアネート化合物、ポリオール化合物以外に、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0050】
本発明における保護層塗布液は、上述した親水性粒子、多価イソシアネート化合物、ポリオール化合物、および保護層が含有可能な添加剤を芳香族系および/またはグリコール系の揮発性成分中に溶解、または分散させて作製することが好ましい。芳香族系の揮発性成分とは芳香環を有する揮発性成分であり、具体的にはベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、スチレン等が挙げられる。グリコール系の揮発性成分とは2つ以上の炭素を有する脂肪族炭化水素の2つの炭素原子にそれぞれ1つずつ酸素原子が単結合で結合した構造を有する揮発性成分であり、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらのうち、芳香族系の揮発性成分を使用することが好ましく、その中でも良好な耐アルコール性が得られるという点からトルエン、о-キシレンを使用することがより好ましい。これらの揮発性成分は種々の目的によって単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明において親水性粒子を保護層塗布液中に十分に分散させるために、ホモディスパーのような高速攪拌機を用いることは好ましい態様の一つである。
【0052】
本発明において感熱記録材料が有する保護層は、上述した保護層塗布液を感熱記録層上に塗布、乾燥して形成する。保護層の厚みは2.3~9.4μmであることが必要であり、より好ましくは2.3~6.8μmである。保護層の厚みが2.3μm未満の場合、赤外線レーザー照射時に噴出物が生じ、9.4μm超である場合は赤外線レーザー照射で形成された画像のコントラストが低下する。保護層塗布液の塗布量は上記した保護層の厚みに対応するように適宜調整することができるが、乾燥質量で1.5~10g/m2が好ましく、2.0~8.0g/m2がより好ましい。
【0053】
保護層の厚みの測定方法としては、感熱記録材料の断面を走査型電子顕微鏡で観察して実測する方法を例示できる。なお、本発明において、親水性粒子が保護層の表面から飛び出して凸部を形成している場合、凸部以外の箇所にて実測した厚みを保護層の厚みとする。
【0054】
本発明において、上述した赤外線吸収層塗布液、感熱記録層塗布液、および保護層塗布液の塗布方法については特に制限はなく、E.D.Cohen,E.B.Gutoff,“Modern Coating and Drying Technology”,WILEY-VCH,Inc.New York,1992に記載されているような各種の塗布方法から選択することができる。さらにスリット型ダイコーターを用いたスライド塗布方式や、同種、あるいは異種のコーター装置を組み合わせて塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式によって複数の層を同時に塗布することは、生産性を向上させる意味でも特に好ましい。
【0055】
本発明において感熱記録材料はさらに必要に応じて、上記した赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層に加えて、光透過性支持体と赤外線吸収層との間に易接着層や断熱層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層のそれぞれの層の間に中間層等を設けたり、保護層上に易剥離層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層を有する光透過性支持体の面の反対の面に帯電防止層等を設けたりすることもできるが、上述したように高コントラストな画像を得る観点から赤外線吸収層と感熱記録層は隣接していることが好ましい。
【0056】
上述した感熱記録材料を用い、該感熱記録材料の保護層側から画像様に赤外線レーザーを照射することにより画像を得ることができる。該赤外線レーザーの光源としては、半導体レーザー、He-Neレーザー、Arレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー等が挙げられる。本発明における感熱記録材料は、照射する赤外線レーザーのエネルギーおよび露光時間を変えることにより、画像部の濃度を変化させることができる。赤外線レーザーを照射する方法としては、フレキソ印刷版やオフセット印刷版の製版等に用いられるサーマルCTPセッターを使用することができる。サーマルCTPセッターとしては、AURAシリーズ(Guangzhou Amsky Technology Co Ltd製)、Trendsetter(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、Achieve(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、等が例示される。
【0057】
上述した感熱記録材料にサーマルCTPセッター等を用いて赤外線レーザーを照射して得た画像部の紫外光透過濃度を測定する方法としては、透過濃度計を用いる方法が例示できる。紫外光透過濃度を測定する際は、画像部のうち網点や細線のように画像部と非画像部が狭い範囲に混在している部分ではなく、透過濃度計の受光部分に適した大きさの塗りつぶし部分を測定することが測定値の安定性を得る目的で好ましい。紫外光透過濃度を測定できる透過濃度計としては、前述したX-Rite361Tが例示される。
【0058】
本発明の感熱記録材料は上述のようにして画像を得た後、フレキソ印刷版やスクリーン印刷版等の印刷版を製版する際に用いられる遮光用のマスク材料、いわゆる版下材料として好適に用いることができるが、他の用途、例えばフォトリソグラフィーにおけるフォトマスクとして用いることもできる。なお、この記述により本発明が限定されるものではない。
【実施例0059】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、この記述により本発明が限定されるものではない。なお記述中「%」は質量基準である。
【0060】
<感熱記録材料1の作製>
<赤外線吸収層塗布液の調製および塗布>
2-ブタノン81.0g、メタノール24.0gに、ポリビニルブチラール(Butvar(登録商標)B-79、イーストマンケミカルジャパン(株)製)9.0g、赤外線吸収色素として例示化合物(5)(IRT、昭和電工(株)製、ε(830)/ε(365)=6.2)0.45gを加えて赤外線吸収層塗布液とした。厚さ100μmのPETベース(全光線透過率92%、ヘーズ値4%)上に、この赤外線吸収層塗布液を乾燥質量が1.0g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗布し、60℃にて1分間乾燥させ赤外線吸収層を形成した。
【0061】
<ベヘン酸銀分散液の調製>
ベヘン酸銀結晶20.0g、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)22.0gを175gの2-ブタノンに加え、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル装置(DYNO-MILL KD20B型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いてベヘン酸銀分散液(平均粒子径0.8μm)を得た。
【0062】
<感熱記録層塗布液の調製および塗布>
2-ブタノン45.0gに、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)4.2g、上述したベヘン酸銀分散液91.2g、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル5.0g、テトラクロロフタル酸無水物0.1g、フタラゾン1.9gを加えて感熱記録層塗布液とした。上述のようにして既に得られた赤外線吸収層上に、この感熱記録層塗布液を銀換算値として1.1g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させ感熱記録層を形成した。
【0063】
<保護層塗布液の調製および塗布>
トルエン25.7gに、アクリディックWBU-1218(DIC(株)製;アクリルポリオール溶液、固形分30質量%)15.2g、シーホスターKE-P250(日本触媒(株)製;親水性シリカ粒子、平均粒子径2.5μm)0.35gを加え、攪拌して全体を均一にした後、攪拌しながらコロネート2715(東ソー(株)製;ポリイソシアネート変性体溶液、固形分90質量%)12gを加えて保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上記感熱記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させたのち40℃にて5日間加温して保護層を形成した。このようにして感熱記録材料1を得た。得られた感熱記録材料1の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、保護層の厚みを実測した結果、4.0μmであった。
【0064】
<感熱記録材料2の作製>
保護層塗布液の塗布において、保護層塗布液の塗布量を変更し、保護層の厚みを1.9μmとした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料2を得た。
【0065】
<感熱記録材料3の作製>
保護層塗布液の塗布において、保護層塗布液の塗布量を変更し、保護層の厚みを2.7μmとした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料3を得た。
【0066】
<感熱記録材料4の作製>
保護層塗布液の塗布において、保護層塗布液の塗布量を変更し、保護層の厚みを5.5μmとした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料4を得た。
【0067】
<感熱記録材料5の作製>
保護層塗布液の塗布において、保護層塗布液の塗布量を変更し、保護層の厚みを8.1μmとした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料5を得た。
【0068】
<感熱記録材料6の作製>
保護層塗布液の塗布において、保護層塗布液の塗布量を変更し、保護層の厚みを10.7μmとした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料6を得た。
【0069】
<感熱記録材料7の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにサイリシア430(富士シリシア化学製;親水性シリカ粒子、平均粒子径4.1μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料7を得た。保護層の厚みは4.0μmであった。
【0070】
<感熱記録材料8の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにサイリシア450(富士シリシア化学製;親水性シリカ粒子、平均粒子径8.0μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料8を得た。保護層の厚みは4.2μmであった。
【0071】
<感熱記録材料9の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにサンスフェアNP-30(AGCエスアイテック製;親水性シリカ粒子、平均粒子径4.0μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料9を得た。保護層の厚みは4.0μmであった。
【0072】
<感熱記録材料10の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにサンスフェアH-121(AGCエスアイテック製;親水性シリカ粒子、平均粒子径12μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料10を得た。保護層の厚みは4.9μmであった。
【0073】
<感熱記録材料11の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにオルガノシリカゾルIPA-ST-ZL(日産化学製;親水性シリカ粒子の2-プロパノール分散液、固形分30質量%、平均粒子径0.08μm)を固形分として0.35g用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料11を得た。保護層の厚みは3.8μmであった。
【0074】
<感熱記録材料12の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりに微粒アルミナSA31B(日本軽金属製;親水性アルミナ粒子、平均粒子径4.0μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料12を得た。保護層の厚みは4.0μmであった。
【0075】
<感熱記録材料13の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにケミスノーMX500(綜研化学製;親水性アクリル粒子、平均粒子径5.0μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料13を得た。保護層の厚みは4.1μmであった。
【0076】
<感熱記録材料14の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにオプトビーズ3500M(日産化学製;親水性メラミン粒子、平均粒子径3.5μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料14を得た。保護層の厚みは4.0μmであった。
【0077】
<感熱記録材料15の作製>
2-ブタノン9.0gに、酢酸セルロース樹脂1.0gを溶解させ、シーホスターKE-P250を0.025g加えてさらに攪拌し、全体を均一にして保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上記感熱記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させて保護層を形成した以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料15を得た。保護層の厚みは3.7μmであった。
【0078】
<感熱記録材料16の作製>
2-ブタノン9.0gに、アクリディックWDL-787(DIC(株)製;アクリル樹脂溶液、固形分40質量%)を固形分で1.0g溶解させ、シーホスターKE-P250を0.025g加えてさらに攪拌し、全体を均一にして保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上記感熱記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させて保護層を形成した以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料16を得た。保護層の厚みは3.8μmであった。
【0079】
<感熱記録材料17の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250の代わりにサイロホービック(登録商標)200(富士シリシア化学製;疎水性シリカ粒子、平均粒子径3.9μm)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料17を得た。保護層の厚みは3.9μmであった。
【0080】
<感熱記録材料18の作製>
水18.0gに、クラレポバール60-98((株)クラレ製;ポリビニルアルコール、親水性樹脂)1.0gを溶解させ、シーホスターKE-P250を0.025g加えてさらに攪拌し、全体を均一にした後、攪拌しながらホウ酸0.05gを加えて保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上記感熱記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させて保護層を形成した以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料18を得た。保護層の厚みは4.0μmであった。
【0081】
<感熱記録材料19の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250を加えなかった以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料19を得た。保護層の厚みは3.9μmであった。
【0082】
<感熱記録材料20の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250を0.27gに減らした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料20を得た。保護層は4.0μmであった。
【0083】
<感熱記録材料21の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250を0.22gに減らした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料21を得た。保護層の厚みは4.1μmであった。
【0084】
<感熱記録材料22の作製>
保護層塗布液の調製において、シーホスターKE-P250を0.15gに減らした以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料22を得た。保護層の厚みは4.0μmであった。
【0085】
<感熱記録材料23の作製>
赤外線吸収層塗布液の調製において、赤外線吸収色素として例示化合物(1)(ε(830)/ε(365)=18.5)を用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料23を得た。保護層の厚みは3.9μmであった。
【0086】
<感熱記録材料24の作製>
赤外線吸収層塗布液の調製において、赤外線吸収色素としてIX-2-IR-14(日本触媒(株)製、ε(830)/ε(365)=2.6)を0.07g用いた以外は感熱記録材料1と同様にして感熱記録材料24を得た。保護層の厚みは3.9μmであった。
【0087】
<塗りつぶし画像の形成>
このようにして得られた感熱記録材料1~24を、サーマルCTPセッター(Guangzhou Amsky Technology Co Ltd製、AURA600E)を用いて赤外線レーザーで露光し、4000dpiの塗りつぶし画像(20mm(幅)×200mm(長さ))を得た。サーマルCTPセッターのドラム回転数は300rpmに固定し、レーザー出力は300mWとした。
【0088】
<紫外光透過濃度評価>
上述のようにして画像を得た後、感熱記録材料1~24における画像部、および非画像部の紫外光透過濃度をX-Rite361T(ビデオジェット・エックスライト(株)製)の紫外光モードでそれぞれ測定し、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の紫外光透過濃度(Dmin)を得た。Dmax-Dminの算出結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
<噴出物評価>
上述のようにして画像を得た後、感熱記録材料1~24における画像部の周辺を目視および顕微鏡で観察し、画像部周囲に噴出部による汚染が見られるか否かを調べた。以下の基準で判断した結果を表1に示す。
【0091】
<噴出物基準>
優:噴出物による汚染が全く見られない
良:画像部周囲に噴出物が極僅かに見られる(目視では見えず顕微鏡観察で見える)
可:画像部周囲に噴出物が目視で見えるが実用上の問題は無い
不可:画像部周囲に噴出物が多量に降り積もっており、実用不可
【0092】
表1の結果から明らかなように、本発明によって赤外線レーザーの照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストな画像が得られる感熱記録材料が得られることが分かる。