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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006435
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】内径測定装置及び内径測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 13/10 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G01B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109030
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】516243951
【氏名又は名称】株式会社A-tech
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰典
【テーマコード(参考)】
2F066
【Fターム(参考)】
2F066AA23
2F066BB07
2F066DD13
2F066FF07
2F066FF08
2F066FF09
2F066HH07
2F066HH16
2F066LL02
(57)【要約】
【課題】
ワークに形成された被測定穴の高精度内径測定を、短時間で行う。
【解決手段】
案内面21aを有するエアノズル21を備えたエアマイクロメータ20と、エアノズル21を略水平方向に移動させる水平移動機構32a,32b、及び、エアノズル21を略鉛直方向に移動させる鉛直移動機構33を備えたエアノズル支持手段30とを備えた内径測定装置1を用いて、エアノズル21を、案内面21aの一部が被測定穴2aに挿入される案内面一部挿入位置まで移動させる案内面一部挿入手順と、エアノズル21が案内面一部挿入位置に配されたタイミングで水平移動機構32a,32bの拘束を解放して、エアノズル21を、略水平方向に変位できる状態とするエアノズル解放手順と、水平移動機構32a,32bの拘束が解放された状態のまま、鉛直移動機構33によってエアノズル21を下降させるエアノズル下降手順とを含む内径測定方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された被測定穴の内径を測定するための内径測定装置であって、
ワークを支持するためのワーク支持手段と、
先端部に案内面を有するエアノズルを備えたエアマイクロメータと、
エアノズルを略水平方向に二次元的に移動させることができる水平移動機構、及び、エアノズルを略鉛直方向に移動させることができる鉛直移動機構を備えたエアノズル支持手段と、
エアノズル支持手段を制御することができる制御部と
を備え、
制御部は、
エアノズルを、案内面の一部が被測定穴に挿入される案内面一部挿入位置まで移動させる案内面一部挿入手段と、
エアノズルが案内面一部挿入位置に配されたタイミングで水平移動機構の拘束を解放することにより、エアノズルを、外力によって略水平方向に変位できる状態とするエアノズル解放手段と、
水平移動機構の拘束が解放された状態のまま、鉛直移動機構によってエアノズルを下降させるエアノズル下降手段と
を備えたものである
ことを特徴とする内径測定装置。
【請求項2】
エアノズル支持手段が、
略水平方向に揺動することができる第一アームと、
第一アームの先端部に接続され、略水平方向に揺動することができる第二アームと、
第二アームの先端部に取り付けられ、略鉛直方向に昇降することができるとともに、略鉛直な旋回軸線を中心として旋回することもできる旋回昇降体と
を備えた水平多関節ロボットとされ、
旋回昇降体にエアマイクロメータのエアノズルが取り付けられた
請求項1記載の内径測定装置。
【請求項3】
ワーク支持手段は、ワークに接触した状態で、かつ、ワークが外力によって略水平方向に変位できる状態で、ワークを支持するものである請求項1又は2記載の内径測定装置。
【請求項4】
内径測定時にワークが配される位置である測定位置に対して、ワークを略水平方向から搬入することができるワーク搬入手段をさらに備えた請求項3記載の内径測定装置。
【請求項5】
エアノズル下降手段によるエアノズルの移動速度は、案内面一部挿入手段によるエアノズルの移動速度よりも遅く設定された請求項1~4いずれか記載の内径測定装置。
【請求項6】
エアノズルの案内面が、耐摩耗加工を施されたものである請求項1~5いずれか記載の内径測定装置。
【請求項7】
ワークに形成された被測定穴の内径を測定するための内径測定方法であって、
ワークを支持するためのワーク支持手段と、
先端部に案内面を有するエアノズルを備えたエアマイクロメータと、
エアノズルを略水平方向に二次元的に移動させることができる水平移動機構、及び、エアノズルを略鉛直方向に移動させることができる鉛直移動機構を備えたエアノズル支持手段と
を備えた内径測定装置を用い、
エアノズルを、案内面の一部が被測定穴に挿入される案内面一部挿入位置まで移動させる案内面一部挿入手順と、
エアノズルが案内面一部挿入位置に配されたタイミングで水平移動機構の拘束を解放することにより、エアノズルを、外力によって略水平方向に変位できる状態とするエアノズル解放手順と、
水平移動機構の拘束が解放された状態のまま、鉛直移動機構によってエアノズルを下降させるエアノズル下降手順と
を含む
ことを特徴とする内径測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する内径測定装置と、この内径測定装置を用いた内径測定方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等の機械部品には、穴が加工されたものも多く、その穴に高い寸法精度が要求されることも多い。このような実状に鑑みて、これまでには、ワークに形成された穴の内径を高精度で測定するための種々の装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の図2等には、機械部品に精密加工された細穴の内径を高精度で測定するための内径非接触測定装置1が記載されている。この内径非接触測定装置1は、同図に示されるように、ワークを固定するテーブル50と、測定ステーション32とを備えている。測定ステーション32には、同文献の図6に示されるように、エアマイクロメータ362が設けられている。このエアマイクロメータ362のエアノズルを、同文献の図7に示されるように、ワーク80の穴84に挿入し、エアノズルから穴84の径方向(同図の矢印Pの方向)にエアを噴出したときのエアの流量や背圧を測定することで、穴84の内径を判別する。これにより、穴84の内径を高い精度で判別することが可能になるとされている。
【0004】
ところで、一般的に、エアマイクロメータを用いて高精度の内径測定を行う場合には、被測定穴の内径に極めて近い外径を有するエアノズルを使用する(被測定穴の内壁とエアノズルの外壁との距離を非常に短くする)ことが多い。このため、エアノズルを被測定穴に挿入する際には、エアノズルとワーク(被測定穴の上縁部)との衝突等によってエアノズルやワークに傷が付かないように注意する必要がある。この点、特許文献1の内径非接触測定装置1では、テーブル50やエアノズルを移動させるための手段として、位置精度の高いボールねじ式のリニアガイド(同文献の図2における第一のリニアガイド51、同文献の図3における第二のリニアガイド53、リニアガイドレール310及びボールネジ332を参照。)を採用している。このように位置精度の高い移動手段を採用し、エアノズル及びワークを高精度で位置決めした状態でエアノズルを穴84に挿入すれば、エアノズルが穴84の上縁部に衝突しないようにすることも可能であるように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-155794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の内径非接触測定装置1には、測定に長い時間を要するという欠点があった。というのも、テーブル50やエアノズルを移動させる手段として採用されているボールねじは、その機械的な特性上、移動速度が遅いからである。加えて、同装置においては、1つのワークの測定が終了し、ワークを別のものに交換する度に、テーブル50を大きく移動させる必要があるため、移動速度の遅さがより問題となりやすい。すなわち、同装置においては、同文献の図4に示されるように、テーブル(図4では省略)に積載されたワーク取付ヘッド530に対してワーク80を上側から嵌合して取り付けるようになっている。これにより、ワーク80が略水平方向に変位しないように固定されるため、ワーク80の位置決め精度を高めることができるように思われるが、その一方で、ワーク交換の際には、ワーク80を上方に引き抜く必要がある。ところが、同文献の図3に示されるように、テーブル50の上方には測定ステーション31,32,33が配されている。したがって、ワーク交換の際には、測定ステーション31,32,33が邪魔にならない位置までテーブル50を大きく移動させる必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ワークに形成された被測定穴の高精度内径測定を、短時間で行うことができる内径測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
ワークに形成された被測定穴の内径を測定するための内径測定方法であって、
ワークを支持するためのワーク支持手段と、
先端部に案内面を有するエアノズルを備えたエアマイクロメータと、
エアノズルを略水平方向に二次元的に移動させることができる水平移動機構、及び、エアノズルを略鉛直方向に移動させることができる鉛直移動機構を備えたエアノズル支持手段と
を備えた内径測定装置を用い、
エアノズルを、案内面の一部が被測定穴に挿入される案内面一部挿入位置まで移動させる案内面一部挿入手順と、
エアノズルが案内面一部挿入位置に配されたタイミングで水平移動機構の拘束を解放することにより、エアノズルを、外力によって略水平方向に変位できる状態とするエアノズル解放手順と、
水平移動機構の拘束が解放された状態のまま、鉛直移動機構によってエアノズルを下降させるエアノズル下降手順と
を含む
ことを特徴とする内径測定方法
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明に係る内径測定方法では、エアマイクロメータのエアノズルを支持するエアノズル支持手段として、エアノズルを略水平方向に二次元的に移動させることができる水平移動機構と、エアノズルを略鉛直方向に移動させることができる鉛直移動機構とを備えたものを採用している。これにより、エアノズルを三次元的に移動させることができるため、ボールねじ式のリニアガイドを用いた場合に比べて短時間でエアノズルを移動させることができる。したがって、測定に要する時間を短くすることができる。ただし、この場合には、リニアガイドを用いた場合に比べて、位置精度を高めにくくなる。このため、単に上記のエアノズル支持手段を採用しただけでは、エアノズルを被測定穴に挿入する際に、エアノズルを被測定穴の上縁部等に衝突させて(又は押し付けて)しまい、エアノズルやワークに傷を付けてしまうおそれがある。
【0010】
この点、本発明に係る内径測定方法においては、先端部に案内面を有するエアノズルを採用するとともに、エアノズルが案内面一部挿入位置に配されたタイミングでエアノズルを略水平方向に変位可能とし(エアノズル解放手順)、そのまま下降させる(エアノズル下降手順)ようにしている。これにより、もしエアノズルと被測定穴との水平方向における位置がずれており、案内面が被測定穴の上縁部に当接したとしても、案内面に案内されたエアノズルが略水平方向に自動的に変位することによって、被測定穴の内壁に沿いながら被測定穴に挿入されるようになる。したがって、エアノズル支持手段の位置精度がさほど高くなかったとしても、エアノズルやワークに傷が付きにくい状態で、エアノズルを被測定穴に挿入することができる。
【0011】
上記の内径測定方法は、
ワークに形成された被測定穴の内径を測定するための内径測定装置であって、
ワークを支持するためのワーク支持手段と、
先端部に案内面を有するエアノズルを備えたエアマイクロメータと、
エアノズルを略水平方向に二次元的に移動させることができる水平移動機構、及び、エアノズルを略鉛直方向に移動させることができる鉛直移動機構を備えたエアノズル支持手段と、
エアノズル支持手段を制御することができる制御部と
を備え、
制御部は、
エアノズルを、案内面の一部が被測定穴に挿入される案内面一部挿入位置まで移動させる案内面一部挿入手段と、
エアノズルが案内面一部挿入位置に配されたタイミングで水平移動機構の拘束を解放することにより、エアノズルを、外力によって略水平方向に変位できる状態とするエアノズル解放手段と、
水平移動機構の拘束が解放された状態のまま、鉛直移動機構によってエアノズルを下降させるエアノズル下降手段と
を備えたものである
ことを特徴とする内径測定装置
を用いて実現することができる。
【0012】
本発明に係る内径測定装置におけるエアノズル支持手段は、その具体的な種類を特に限定されない。エアノズル支持手段としては、例えば、略水平方向に揺動することができる第一アームと、第一アームの先端部に接続され、略水平方向に揺動することができる第二アームと、第二アームの先端部に取り付けられ、略鉛直方向に昇降することができるとともに、略鉛直な旋回軸線を中心として旋回することもできる旋回昇降体とを備えた水平多関節ロボットを採用することができる。この場合には、旋回昇降体にエアマイクロメータのエアノズルを取り付ける。これにより、エアノズルを速い速度で自由度高く、かつ、エアノズルの角度を精度よく一定に保ったまま移動させることができる。また、エアノズルを旋回させて、所望の角度にすることもできる。なお、水平多関節ロボットは、「Selective Compliance Assembly Robot Arm」と英語表記され、その頭文字を取って「SCARAロボット」や「スカラロボット」と表記されることもある。
【0013】
本発明に係る内径測定装置においては、ワークに接触した状態で、かつ、ワークが外力によって略水平方向に変位できる状態で、ワークを支持するものとすることが好ましい。これにより、エアノズルだけでなく、ワークも略水平方向における変位を許容した状態となるため、よりスムーズにエアノズルを被測定穴に挿入することができる。したがって、エアノズルやワークにより傷が付きにくくすることができる。加えて、本構成により、測定精度を高めることもできる。この理由については、後で詳しく説明する。
【0014】
ところで、従来の内径測定装置においては、ワークが略水平方向に変位しないようにしっかりと固定し、高精度で位置決めした状態で測定を行うことが技術常識であった。ワークを固定する固定手段としては、従来、例えば、特許文献1の図4に示されるように、ワーク80を上側から嵌合することができるワーク取付ヘッド530(嵌合手段)や、ワークを外側から把持することができる三つ爪チャック(把持手段)等が採用されていた。これらの固定手段にワークを固定するためには、固定手段に対して上方から(固定方向に対して略垂直方向から)ワークを搬入する必要がある。したがって、従来の内径測定装置においては、ワークを一旦持ち上げた状態で搬入作業を行わなければならず、エアノズルの移動だけでなく、ワークの搬入にも長い時間がかかっていた。
【0015】
この点、上記のように、ワーク支持手段として、ワークが略水平方向に変位できる状態でワークを支持するものを採用する場合には、固定手段を設ける必要がない。このため、内径測定時にワークが配される位置である測定位置に対して、ワークを略水平方向から搬入することができるワーク搬入手段をさらに備えることができる。これにより、ワークの搬入に要する時間を短くすることができ、測定をより短時間で行うことができる。
【0016】
本発明に係る内径測定装置においては、エアノズル下降手段によるエアノズルの移動速度を、案内面一部挿入手段によるエアノズルの移動速度よりも遅く設定することが好ましい。換言すると、エアノズルの移動速度を、案内面一部挿入位置付近で減速することが好ましい。これにより、エアノズルの案内面が被測定穴の上縁部に当接したとしても、その際の衝撃を抑えて、エアノズルやワークにより傷がつきにくくすることができる。
【0017】
本発明に係る内径測定装置においては、エアノズルの案内面を、耐摩耗加工を施されたものとすることが好ましい。これにより、エアノズルの耐久性を高めることができ、エアノズルにより傷がつきにくくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、ワークに形成された被測定穴の高精度内径測定を、短時間で行うことができる内径測定装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】内径測定装置の側面図である。
図2図1の内径測定装置における水平多関節ロボットの動作を説明するための模式図である。
図3図1の内径測定装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図であって、エアノズル挿入準備手順が完了した状態を示す図である。
図4図1の内径測定装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図であって、案内面一部挿入手順が完了した状態を示す図である。
図5図1の内径測定装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図であって、第一エアノズル下降手順において、エアノズルの案内面が被測定穴の上縁部に当接している状態を示す図である。
図6図1の内径測定装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図であって、第一エアノズル下降手順が完了した状態を示す図である。
図7図1の内径測定装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図であって、第二エアノズル下降手順が完了した状態を示す図である。
図8図1の内径測定装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図であって、エア噴出手順を行っている状態を示す図である。
図9図1の内径測定装置における制御部のブロック図である。
図10図1の内径測定装置を用いて内定測定を行う場合の手順例を示すフロー図である。
図11】内径測定装置のテーブルにワークを搬入するワーク搬入手段、及び、テーブルからワークを搬出するワーク搬出手段の動作を説明するための図である。
図12】ワーク支持手段の他の例を示した斜視図である。
図13図12のワーク支持手段を、同図におけるA-A面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.概要
本発明の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、内径測定装置1の側面図である。図2は、図1の内径測定装置1における水平多関節ロボット30の動作を説明するための模式図である。図3~8は、図1の内径測定装置1を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図である。図3は、後述するエアノズル挿入準備手順S1が完了した状態を示している。図4は、後述する案内面一部挿入手順S2が完了した状態を示している。図5は、後述する第一エアノズル下降手順S4において、エアノズル21の案内面21aが被測定穴2aの上縁部に当接している状態を示している。図6は、第一エアノズル下降手順S4が完了した状態を示している。図7は、後述する第二エアノズル下降手順S6が完了した状態を示している。図8は、後述するエア噴出手順S7を行っている状態を示している。図3~8においては、説明の便宜上、ワーク2及びテーブル10を、被測定穴2aの中心線Cを通る平面で切断した断面で示している。各図面に表示しているx軸、y軸、z軸は、後掲の図11~13も含めて、異なる図面間においても一致させている。また、図2には、z軸方向の周りを旋回するθ軸(旋回軸)も表示している。以下においては、説明の便宜上、z軸方向正側を「上」、負側を「下」と表現することがある。
【0021】
本実施態様の内径測定装置1は、円筒状のワーク2に形成された被測定穴2a(図3を参照。)の内径Dを高精度で測定するためのものである。この内径測定装置1を用いると、後で詳しく説明するように、±0.5μmという非常に高い繰り返し精度を実現することができる。以下においては、この内径Dの仕様値が45mm程度であるとして説明する。
【0022】
内径測定装置1は、図1に示すように、ワーク2を支持するためのテーブル10(ワーク支持手段)と、エアノズル21を備えたエアマイクロメータ20と、エアノズル21を3次元的に移動させることができるエアノズル支持手段30と、制御部100とを備えている。内径測定を行う際には、エアノズル支持手段30でエアノズル21を移動させて、図8に示すようにワーク2の被測定穴2aに挿入し、エアノズル21から噴出されるエアの流量又は背圧を測定することで、被測定穴2aの内径測定を行う。これにより、リニアガイド等でエアノズル21を移動させる従来の装置に比べて、圧倒的に短時間で内径測定を行うことができる。
【0023】
テーブル10は、その上面が、水平方向に略平行なワーク支持面11となっている。ワーク2は、このワーク支持面11の上に置いただけの状態で(治具等で固定されていない状態で)支持される。これにより、略水平方向におけるワーク2の変位を許容した状態でワーク2を支持することができる。この理由については、後で詳しく説明する。テーブル10における、測定時にワーク2が配される位置(以下、「測定位置」という。)には、図3に示すように、逃がし穴12が設けられている。この逃がし穴12は、図8に示すように、エアマイクロメータ20のエアノズル21がワーク2の被測定穴2aに挿入された際に、エアノズル21がテーブル10に干渉しないようにするためのものである。逃がし穴12の内径D図3)は、被測定穴2aの内径Dよりも1mm程度大きくなっている。
【0024】
エアノズル21は、図3に示すように、略円筒形を為しており、その先端部にテーパー状の案内面21aを有している。本実施形態の内径測定装置1は、高精度で内径測定を行うためのものであるため、エアノズル21の外径Dは、被測定穴2aの内径Dに非常に近くなっている。具体的には、内径Dと外径Dとの差が30μm程度となっている。
【0025】
エアノズル21の外周部には、複数個のエア噴出口21bが設けられている。これらのエア噴出口21bは、エアノズル21に放射状に(エアノズル21の中心線Cの周りに回転対称に)設けられる。エア噴出口21bは、通常3個以上とされる。本実施態様においては、90度の回転対称に配した4個のエア噴出孔21aを上下2段に配している。このため、エアノズル21には計8個のエア噴出口21bが設けられている。
【0026】
本実施形態においては、エアノズル支持手段30として、図1に示すように、シャフト31と、第一アーム32aと、第二アーム32bと、旋回昇降体33とを備えた水平多関節ロボット30を採用している。第一アーム32aは、図2に示すように、その一端側をシャフト31に支持されており、図示省略の第一アーム駆動手段によって、略鉛直な直線Lを回転中心として略水平方向(z軸に垂直な方向)に揺動することができるようになっている(同図における矢印Mを参照。)。第二アーム32bは、その一端側を、第一アーム32aの他端側に支持されており、図示省略の第二アーム駆動手段によって、略鉛直な直線Lを回転中心として略水平方向に揺動することができるようになっている(同図における矢印Mを参照。)。旋回昇降体33は、第二アーム32bの他端側に支持されており、図示省略の昇降体昇降駆動手段によって、略鉛直方向(z軸方向に平行な方向)に昇降することができるようになっている(同図における矢印Mを参照。)。また、旋回昇降体33は、図示省略の昇降体旋回駆動手段によって、略鉛直な直線Lを旋回中心として(θ軸方向正側及び負側に)旋回することもできるようになっている(同図における矢印Mを参照。)。エアノズル21は、旋回昇降体33の先端部(下端部)に取り付けられている。
【0027】
第一アーム32aと、第二アーム32bとのいずれかまたは両方を揺動させると、エアノズル21をx-y平面方向に移動させることができ、旋回昇降体33を昇降させると、エアノズル21をz軸方向に移動させることができる。すなわち、エアノズル21を3次元的に自由度高く移動させることができる。ただし、第一アーム32aや第二アーム32bを揺動させると、エアノズル21の回転位置(図2のθ軸方向における位置)が変わるため、何ら手当をしなければ、被測定穴2aに対するエアノズル21の回転位置精度を高めにくくなるおそれがある。この点、本実施形態においては、昇降体旋回駆動手段を設けているため、エアノズル21の回転位置を精度よく一定に保ったまま、エアノズル21をx-y平面方向に移動させることができる。したがって、位置精度だけでなく回転位置精度も高い状態でエアノズル21を被測定穴2aに挿入することができる。あるいは、エアノズル21の回転位置を所望の角度に調節することもできる。
【0028】
水平多関節ロボット30は、可搬重量がエアマイクロメータ20のエアノズル21の1.2倍以上であり、繰り返し位置精度が±20μm以下のものを選択すると好ましい。本実施態様においては、繰り返し位置精度が±10μmであるアイエイアイ社製のIXAシリーズを採用している。
【0029】
旋回昇降体33とエアノズル21との間には、フローティングユニット22が介在している。これにより、エアノズル21は、略水平方向(x-y平面に平行な方向)への変位が許容された状態となっている。本実施態様においては、400μm以内の変位を許容するフローティングユニット22を採用している。旋回昇降体33とフローティングユニット22との間には、オートツールチェンジャーを介在させてもよい。これにより、エアノズル21を自動で取り換えることができる。
【0030】
図9は、図1の内径測定装置1における制御部100のブロック図である。本実施形態における制御部100は、図9に示すように、エアノズル挿入準備手段110と、案内面一部挿入手段120と、エアノズル解放手段130と、第一エアノズル下降手段140と、エアノズル拘束手段150と、第二エアノズル下降手段160と、エア噴出手段170を備えている。これら各手段の機能については、後で説明する。
【0031】
2.内径測定方法
図10は、図1の内径測定装置1を用いて内定測定を行う場合の手順例を示すフロー図である。図1の内径測定装置1は、図10に示すように、エアノズル挿入準備手順S1と、案内面一部挿入手順S2と、エアノズル解放手順S3と、第一エアノズル下降手順S4と、エアノズル拘束手順S5と、第二エアノズル下降手順S6と、エア噴出手順S7とを経ることにより、被測定穴2aの内径測定を行うことができる。以下、これらの各手順について説明する。
【0032】
2.1 エアノズル挿入準備手順
エアノズル挿入準備手順S1は、水平多関節ロボット30(図1)を駆動して、図3に示すように、エアノズル21を、テーブル10に支持されたワーク2の被測定穴2aの略直上に配する手順である。エアノズル挿入準備手順S1における水平多関節ロボット30の動作は、制御部100のエアノズル挿入準備手段110によって制御されている。
【0033】
ところで、本実施形態においては、既に述べたように、被測定穴2aの内径Dとエアノズル21の外径Dとの差が30μm程度となっている。このため、図7図8に示すようにエアノズル21を被測定穴2aに挿入するためには、エアノズル21の中心線Cを、被測定穴2aの中心線Cに対して±15μmの誤差範囲で一致させる必要がある。ところが、本実施形態においては、後で詳しく説明するように、テーブル10上のワーク2の位置精度が±100μm程度となっている。また、エアノズル21を移動させる水平多関節ロボット30の位置精度は、上述したように、±10μm程度である。したがって、エアノズル挿入準備手順S1が完了した段階では、被測定穴2aとエアノズル21との略水平方向における位置が、エアノズル21の中心線Cと被測定穴2aの中心線Cとが、±15μmよりも大きくずれている場合がある。
【0034】
このため、図3に示す状態から単に旋回昇降体33を下降させるだけでエアノズル21を被測定穴2aに挿入しようとすると、エアノズル21が被測定穴2aの上縁部に衝突してしまい、エアノズル21やワーク2に傷が付くおそれがある。この点、本実施形態においては、後の案内面一部挿入手順S2~第一エアノズル下降手順S4を行うことによって、エアノズル21やワーク2に傷が付きにくい状態でエアノズル21を被測定穴2aに挿入することができる。
【0035】
2.2 案内面一部挿入手順
案内面一部挿入手順S2は、図3に示す位置から旋回昇降体33を下降させることによって、図4に示すように、エアノズル21を、案内面21aの一部が被測定穴2aに挿入される案内面一部挿入位置まで移動させる手順である。案内面一部挿入位置の高さ(z軸方向の位置)は、被測定穴2aとエアノズル21との略水平方向における位置が誤差範囲最大限にずれていたとしても、案内面21aが被測定穴2aの上縁部に当接しないギリギリの高さに設定される。
【0036】
案内面一部挿入手順S2におけるエアノズル21の移動速度は、特に限定されない。案内面一部挿入手順S2におけるエアノズル21の移動速度の最大値は、60mm/秒以上とすると好ましく、80mm/秒以上とするとより好ましい。これにより、測定時間をより短くすることができる。本実施形態においては、案内面一部挿入手順S2におけるエアノズル21の移動速度の最大値を、100mm/秒程度としている。案内面一部挿入手順S2における水平多関節ロボット30の動作は、制御部100の案内面一部挿入手段120によって制御されている。
【0037】
2.3 エアノズル解放手順
エアノズル解放手順S3は、エアノズル21が案内面一部挿入位置に配されたタイミングで(案内面一部挿入手順S2が完了したタイミングで)、それまで第一アーム駆動手段に動きを拘束(制御)されていた第一アーム32a(図1)と、第二アーム駆動手段に動きを拘束(制御)されていた第二アーム32bとを共に解放することにより、エアノズル21を、外力によって略水平方向に変位できる状態とする手順である。エアノズル解放手順S3における水平多関節ロボット30の動作は、制御部100のエアノズル解放手段130sによって制御されている。
【0038】
2.4 第一エアノズル下降手順
第一エアノズル下降手順S4は、第一アーム32a及び第二アーム32b(図1)の拘束が解放された状態のまま旋回昇降体33を下降させることによって、エアノズル21を、図4に示す案内面一部挿入位置から、図6に示すように、案内面21aの全部が被測定穴2aに挿入される案内面全部挿入位置まで下降させる手順である。案内面一部挿入位置(図4)からエアノズル21を下降させると、被測定穴2aとエアノズル21との略水平方向における位置が一定以上ずれていた場合には、図5に示すように、エアノズル21の案内面21aが被測定穴2aの上縁部に当接する。そこからさらにエアノズル21を下降させると、エアノズル21は、案内面21aに案内されて略水平方向に自動的に変位する。これにより、エアノズル21が、被測定穴2aの内壁に沿いながら被測定穴2aに挿入されるようにすることができ、案内面21aとワーク2との間に生じる衝撃を小さく抑えることができる。したがって、案内面21aやワーク2に傷が付きにくくすることができる。
【0039】
ところで、本実施形態においては、既に述べたように、水平方向に略平行なワーク支持面11にワーク2を載置することによって、ワーク2を略水平方向に変位可能な状態で支持している。このため、案内面21aが被測定穴2aの上縁部に当接した際には、エアノズル21だけでなく、ワーク2も略水平方向に自動的に変位することができる。これにより、案内面21aやワーク2により傷が付きにくくすることができる。
【0040】
第一エアノズル下降手順S4におけるエアノズル21の移動速度は、特に限定されない。第一エアノズル下降手順S4におけるエアノズル21の移動速度の最大値は、50mm/秒以下とすると好ましく、40mm/秒以下とするとより好ましい。これにより、案内面21aとワーク2との間に生じる衝撃をより小さく抑えることができる。本実施形態においては、第一エアノズル下降手順S4におけるエアノズル21の移動速度の最大値を、30mm/秒程度としている。第一エアノズル下降手順S4における水平多関節ロボット30の動作は、制御部100の第一エアノズル下降手段140によって制御されている。
【0041】
2.5 エアノズル拘束手順
エアノズル拘束手順S5は、エアノズル21が案内面全部挿入位置に配されたタイミングで(第一エアノズル下降手順S4が完了したタイミングで)、解放されていた第一アーム32a及び第二アーム32b(図1)を再び拘束(制御)する手順である。この手順を設けている理由は、後で説明する。エアノズル拘束手順S5における水平多関節ロボット30の動作は、制御部100のエアノズル拘束手段150によって制御されている。
【0042】
2.6 第二エアノズル下降手順
第二エアノズル下降手順S6は、図6に示す案内面全部挿入位置からエアノズル21をさらに下降させて、図7に示すように、被測定穴2a内における所定の高さ(z軸方向の位置)に配する手順である。このとき、エアノズル拘束手順S5を行わず、第一アーム32a及び第二アーム32b(図1)が解放されたままとしてもよいが、エアノズル拘束手順S5を設けて、第一アーム32a及び第二アーム32bが拘束された状態でエアノズル21を下降させることが好ましい。これにより、エアノズル21の略鉛直方向(z軸方向)における位置精度を高めることができる。第二エアノズル下降手順S6が完了した段階においては、図7に示すように、エアノズル21の中心線Cと被測定穴2aの中心線Cとがずれたままの場合があるが、これは、次のエア噴出手順S7で補正される。第二エアノズル下降手順S6における水平多関節ロボット30の動作は、制御部100の第二エアノズル下降手段160によって制御されている。
【0043】
2.7 エア噴出手順
エア噴出手順S7は、図示省略のエア供給手段によってエアノズル21にエアを供給し、エア噴出口21bから被測定穴2aの内壁に向かってエアを放射状に噴出する手順である。それぞれのエア噴出口21bにおけるエア流量又はエア背圧は、エアマイクロメータ20によって計測され、その計測結果に基づいて被測定穴2aの内径Dが算出される。
【0044】
このとき、エアノズル21の中心線Cと被測定穴2aの中心線Cとが大きくずれていると、内径測定の繰り返し精度を高めにくくなる。この点、本実施態様においては、フローティングユニット22によってエアノズル21が外力による略水平方向における変位を許容した状態となっている。加えて、上述したように、ワーク2も、略水平方向における変位を許容した状態となっている。このため、エア噴出口21bからエアが放射状に噴出されると、エアの圧力によって、エアノズル21とワーク2のいずれか又は両方が略水平方向に自動的に変位して(互いの位置が自動的に補正されて)、図8に示すように、エアノズル21の中心線Cと被測定穴2aの中心線Cとが高精度で一致するようになっている。したがって、ワーク2の位置決めが低精度であり、かつ位置精度がさほど高くない水平多関節ロボット30を用いていても、極めて高い繰り返し精度で内径測定を行うことができる。本実施態様の内径測定装置1は、±0.5μm程度の繰り返し測定精度を実現することができる。
【0045】
ここで、ワーク2の水平方向への変位を許容することだけを考慮すると、エア圧や磁力等でワーク2をテーブル10から浮かせる方法も採用し得るように思われるかもしれない。しかし、ワーク2を浮かせると、非常に小さな力でもワーク2が大きく変位するようになってしまい、ワーク2の位置がふらついて安定せず、却って測定精度が低下するおそれがある。このため、本実施態様においては、ワーク2をテーブル10(ワーク支持手段)に接触させた状態で測定を行うようにしている。ただし、ワーク2とテーブル10との摩擦が小さくなるように、ワーク支持面11を、滑らかな平面に形成している。
【0046】
エア噴出手順S7におけるエア供給手段やエアマイクロメータ20の動作は、制御部100のエア噴出手段170によって制御されている。エア噴出手順S7が完了すると、1つのワーク2の内径測定が終了する。以上のように、本実施態様の内径測定装置1を用いると、被測定穴2aの高精度内径測定を、短時間で行うことができる。
【0047】
エアマイクロメータ20及びエアノズル21は、被測定穴2aの形状や求められる測定精度に合わせて、適宜選択される。エアノズル21の案内面21aの形状は、エアノズル21を案内可能なものであれば、特に限定されない。案内面21aは、エアノズル21の先端部における外周の全部に連続的に設けてもよいし、断続的に設けてもよい。本実施形態における案内面21aは、図3に示すように、テーパー状に形成されている。
【0048】
案内面21aは、通常、旋回昇降体33の下降方向(すなわち、略鉛直方向)に対して傾斜して設けられる。旋回昇降体33の下降方向に対する案内面21aの傾斜角度φ図3)は、特に限定されないが、傾斜角度φが小さすぎるとエアノズル21を案内しづらくなる。一方、傾斜角度φが大きすぎると、案内面21aが被測定穴2aの上縁部に当接した際の衝撃が大きくなるおそれがある。このため、傾斜角度φは5~30°程度とすることが好ましく、10~20°程度とすることがより好ましい。本実施形態における傾斜角度φは、15°程度となっている。
【0049】
本実施形態においては、案内面21aに、耐摩耗加工を施している。具体的には、案内面21aを非常に硬い材料でコーティングしている。これにより、案内面21aが摩耗しにくくすることができる。また、本実施形態においては、案内面21aの表面を滑らかに研磨している。これにより、案内面21aが被測定穴2aの上縁部に当接した際の衝撃をより小さくすることができ、ワーク2により傷がつきにくくすることができる。
【0050】
エアノズル支持手段30は、エアノズル21を略水平方向に二次元的に移動させる水平移動機構(本実施形態においては、第一アーム32a及び第二アーム32bを採用)と、エアノズル21を略鉛直方向に移動させる鉛直移動機構(本実施形態においては、旋回昇降体33を採用)とを備えたものであれば、その具体的な種類を限定されない。エアノズル支持手段30としては、水平多関節ロボットのほかにも、例えば、円筒座標型ロボットや、直角座標型ロボット等を採用することができる。
【0051】
水平移動機構32a,32bを駆動する水平移動機構駆動手段(図示省略)は、その種類を特に限定されない。水平移動機構駆動手段としては、例えば、モータや、流体圧シリンダ等を採用することができる。水平移動機構駆動手段としてモータを採用した場合には、上述したエアノズル解放手順S3(図10)において、モータへの電力供給を切り、出力軸が自由に回転できるようにすることで、水平移動機構の拘束を解放することができる。同様に、エアノズル拘束手順S5においては、モータへの電力供給を再開することによって、水平移動機構を再度拘束することができる。一方、水平移動機構駆動手段として流体圧シリンダを採用した場合には、シリンダ室を開放し、ピストンが自由に移動できるようにすることで、水平移動機構の拘束を解放することができ、シリンダ室を再度閉鎖することで、水平移動機構を再度拘束することができる。
【0052】
鉛直移動機構33を駆動する鉛直移動機構駆動手段(図示省略)も、その種類を特に限定されない。鉛直移動機構駆動手段としては、例えば、流体圧シリンダや、モータ等を採用することができる。
【0053】
内径測定の精度を高めるためには、エアノズル21を被測定穴2aに対して真っ直ぐに挿入する(すなわち、エアノズル21の中心線C図3)を、被測定穴2aの中心線C図3)に対して平行に保ったままエアノズル21を下降させる)ことも重要である。フローティングユニット22は、エアノズル21の位置を補正するものであり、傾きまで補正するものではない。したがって、鉛直移動機構33の移動方向と、被測定穴2aの中心線C(すなわち、鉛直方向)との角度差は、1度以下とすることが好ましく、0.7度以下とすることがより好ましく、0.5度以下とすることがさらに好ましい。本実施態様においては、鉛直移動機構33(旋回昇降体)の移動方向と、被測定穴2aの中心線Cとの角度差を、0.3度以下としている。
【0054】
1つのワーク2の測定が終了すると、エアノズル21が上昇することによって被測定穴2aから退出する。そして、測定を終えたワーク2は測定位置から払い出されて、新たなワーク2が測定位置に搬入され、次の測定が行われる。多数のワーク2を効率よく測定するためには、ワーク2の搬出入に要する時間も短くすることが好ましい。以下、ワーク2を測定位置に搬入するためのワーク搬入手段、及び、ワーク2を測定位置から搬出するためのワーク搬出手段について説明する。
【0055】
3.ワーク搬入手段及びワーク搬出手段
図11は、内径測定装置1のテーブル10にワーク2を搬入するワーク搬入手段、及び、テーブル10からワーク2を搬出するワーク搬出手段の動作を説明するための図である。図11は、テーブル10を上方から見た状態を示している。また、図11においては、測定位置にあるワーク2を実線で示しており、搬入途中のワーク2及び搬出途中のワーク2を点線で示している。
【0056】
本実施態様においては、ワーク搬入手段及びワーク搬出手段として、V字状に形成されたワーク当接面44aと、ワーク当接面44aをワーク2に向かって進退移動させるシリンダ44bとを備えたプッシャー44を採用している。テーブル10の一側(x軸方向正側)には、新たに測定されるワーク2を運んでくるための搬入コンベア41が、テーブル10に隣接して設けられている。また、テーブル10の他側(x軸方向負側)には、測定後のワーク2のうち、所定の基準を満たしたものを運んでいくための良品搬出コンベア42と、測定後のワーク2のうち、所定の基準を満たさなかったものを運んでいくための不良品搬出コンベア43とが、テーブル10に隣接して設けられている。プッシャー44は、搬入コンベア41の一側に設けられている。
【0057】
以下、ワーク2を測定位置に搬入する手順について説明する。測定に供されるワーク2は、まず、図11の矢印Nで示すように、搬入コンベア41に乗って測定位置の側方まで搬送されてくる。次に、プッシャー44のワーク当接面44aが、同図の矢印αに示すように、搬入コンベア41上のワーク2を一側から測定位置に向かって(x軸方向負側に向かって)押す。これにより、同図の矢印Nで示すように、ワーク2が測定位置へと移動する。本実施態様においては、プッシャー44の駆動手段としてシリンダ44bを採用しているため、ボールねじ等を採用した場合に比べて、短時間でワーク2を搬入することができる。以上でワーク2の搬入が完了する。
【0058】
このとき、プッシャー44のワーク当接面44aがV字状に形成されていることにより、外形が円筒状であるワーク2がワーク当接面44aに対して毎回同じ位置におさまるため、搬入コンベア41によるワーク2の搬送位置(図11におけるy方向の位置)が測定位置に対して多少ずれていたとしても、ある程度の精度でワーク2を測定位置に配することができる。ワーク当接面44aの形状は、V字状に限定されず、測定しようとするワーク2の形状に合わせて、多角形状や、アーチ状や、突起状等としてもよい。
【0059】
続いて、ワーク2を測定位置から搬出する手順について説明する。測定を終えたワーク2のうち、内径Dが基準範囲内であったものは、図11の矢印Nに示すように、プッシャー44によって測定位置から良品搬出コンベア42上へと押し動かされ、同図の矢印Nに示すように、良品搬出コンベア42に乗って搬送されていく。一方、測定を終えたワーク2のうち、内径Dが基準範囲外であったものは、同図の矢印Nに示すように、プッシャー44によって測定位置から不良品搬出コンベア43上へと押し動かされ、同図の矢印Nに示すように、不良品搬出コンベア43に乗って搬送されていく。以上でワーク2の搬出が完了する。
【0060】
ところで、ワーク2の搬入及び搬出を行う際には、ワーク2やワーク搬入手段やワーク搬出手段がエアマイクロメータ20のエアノズル21と干渉しないようにする必要がある。この点、本実施態様において採用したプッシャー44は、エアノズル21がワーク2に近づいてくる方向(鉛直方向)に垂直な方向(水平方向)の動作のみによってワーク2を測定位置に搬入出することができるものであるため、エアノズル21を測定位置の上方からさらに側方に逃がさなくとも、エアノズル21に干渉することなくワーク2の搬入出を行うことができる。これにより、エアノズル21を測定位置の上方に上昇させるだけで、ワーク2等がエアノズル21と干渉しないようにすることができる。換言すると、ワーク2を搬入し、測定し、搬出するという一連の過程において、エアノズル21はz軸方向に昇降するだけで足り、x軸方向やy軸方向に移動する必要がない。これにより、エアノズル21の移動に要する時間をより短くすることができる。また、繰り返し精度をより高めることもできる。
【0061】
ワーク搬入手段は、上記のものに限定されず、ワーク2の形状等に合わせて種々のものを選択することができる。本実施態様の内径測定装置1においては、既に述べたように、ワーク2を高精度で位置決めする必要がない。したがって、ワーク搬入手段は、位置決め精度の低いものであっても足りる(すなわち、制約が少ない)。ワーク搬入手段は、±200μm以下の繰り返し誤差でワークを搬入できるものとすると好ましく、±100μm以下の繰り返し誤差でワークを搬入できるものとするとより好ましい。
【0062】
ワーク搬入手段としては、例えば、プッシャー44のほか、移載シリンダや、ロボット(多関節ロボットや、単軸ロボットや、直行ロボット等)や、ピックアンドプレース等を採用することができる。ワーク搬出手段も、特に限定されないが、ワーク搬入手段がワーク搬出手段も兼ねるようにすると、内径測定装置1をシンプルな構成とすることができるため好ましい。
【0063】
以上で説明した本実施態様の内径測定装置1においては、ワーク支持手段としてテーブル10を採用していたが、ワーク支持手段は、これに限定されない。以下、ワーク支持手段の他の例について説明する。
【0064】
4.他の実施形態
図12は、ワーク支持手段の他の例を示した斜視図である。図12に示すワーク支持手段51は、同図に示されるように、被測定穴3aを挟む位置に一対の穴3b(被測定穴3a以外の穴)を有する略四角柱状のワーク3を支持するためのものである。
【0065】
図12に示す実施態様においては、ワーク3を支持するワーク支持手段として、板状のパレット50上に立設されたワーク支持ピン51を採用している。ワーク支持ピン51は、2本を一組として、1枚のパレット50に4組設けられている。ワーク3は、一対の穴3bに1組のワーク支持ピン51をそれぞれ挿入された状態で支持される。すなわち、一枚のパレット50に、4個のワーク3を積載することができるようになっている。
【0066】
このワーク3は、パレット50ごと測定位置へ搬入出される。すなわち、別の場所でワーク3を積載されたパレット50は、ベルトコンベア等で側方から測定位置へと搬入される。パレット50(ワーク3)の搬入が完了すると、水平多関節ロボット30(図1を参照。)がエアノズル21を三次元的に移動させて、パレット50に積載された4個のワーク3の被測定穴3aを順に測定する。4個のワーク3全ての測定が終了すると、パレット50ごとワーク3が測定位置から搬出される。これにより、ワーク3を1個ずつ搬入出する場合に比べて、時間を大幅に節約することができる。4個のワーク3の測定に要する時間は、90秒以内となっている。
【0067】
図13は、図12のワーク支持手段を、同図におけるA-A面で切断した断面図である。ワーク支持ピン51の長手方向中間部分には、図13に示すように、フランジ51aが設けられている。ワーク3は、フランジ51a上に乗った状態で支持される。ワーク支持ピン51と、穴3bとの間には、図13の拡大部分に示すように、隙間が設けられている。換言すると、ワーク支持ピン51の直径は、穴3bの内径よりも小さくなっている。また、フランジ51aの上面は、水平方向に略平行で滑らかな平面状のワーク支持面51aとなっている。この隙間があることと、ワーク支持面51aが滑らかな平面状に形成されていることにより、ワーク3は、水平方向における変位が許容された状態でワーク支持ピン51に支持される。これにより、ワーク支持手段としてテーブル10を採用した場合と同様に、より高精度で被測定穴3aの内径を測定することができる。ワーク支持ピン51と穴3bとの隙間の幅Wは、通常、200μm以下とされる。図12に示す実施態様においては、幅Wを100μm程度としている。
【0068】
5.用途
本発明に係る内径測定装置は、精密測定用の装置として好適に用いることができる。より具体的には、±10μm以下の誤差が要求される精密測定に本発明を用いると、本発明の意義を高めることができるため好ましい。既に述べたように、本発明に係る内径測定装置は、繰り返し誤差±0.5μm程度という非常に高い測定精度を有するものであるため、要求される誤差範囲が±0.5μmよりも大きい場合であれば好適に用いることができる。すなわち、例えば、±6μm以下の誤差が要求される場合や、±4μm以下の誤差が要求される場合や、±2μm以下の誤差が要求される場合や、±1μm以下の誤差が要求される場合にも用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 内径測定装置
2 ワーク
2a 被測定穴
3 ワーク
3a 被測定穴
3b 穴
10 テーブル(ワーク支持手段)
11 ワーク支持面
12 逃がし穴
20 エアマイクロメータ
21 エアノズル
21a 案内面
21b エア噴出口
22 フローティングユニット
30 水平多関節ロボット(エアノズル支持手段)
31 シャフト
32a 第一アーム(水平移動機構)
32b 第二アーム(水平移動機構)
33 旋回昇降体(鉛直移動機構)
41 搬入コンベア
42 良品搬出コンベア
43 不良品搬出コンベア
44 プッシャー
44a ワーク当接面
44b シリンダ
50 パレット
51 ワーク支持ピン(ワーク支持手段)
51a フランジ
51a ワーク支持面
100 制御部
110 エアノズル挿入準備手段
120 案内面一部挿入手段
130 エアノズル解放手段
140 第一エアノズル下降手段
150 エアノズル拘束手段
160 第二エアノズル下降手段
170 エア噴出手段
エアノズルの中心線
被測定穴の中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13