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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064356
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】敷板、パレットおよび作業用架台
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20230501BHJP
   B27N 3/00 20060101ALI20230501BHJP
   B65D 19/44 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E04F15/16 Z
B27N3/00 A
B65D19/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174591
(22)【出願日】2021-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人日本繊維機械学会が発行した繊維機械学会誌「月刊せんい」,June,2021,Vol.74,No.6(令和3年6月25日発行)
(71)【出願人】
【識別番号】502163155
【氏名又は名称】門倉貿易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107825
【弁理士】
【氏名又は名称】細見 吉生
(72)【発明者】
【氏名】門倉 建造
(72)【発明者】
【氏名】門倉 功一郎
(72)【発明者】
【氏名】堂本 修平
【テーマコード(参考)】
2B260
2E220
3E063
【Fターム(参考)】
2B260AA03
2B260AA04
2B260AA20
2B260BA15
2B260BA19
2B260CD30
2B260DA18
2B260EA05
2E220AA06
2E220AA25
2E220AA45
2E220AB10
2E220AC01
2E220AC20
2E220DA19
2E220DB03
2E220EA01
3E063AA03
3E063BA08
3E063FF20
3E063GG10
(57)【要約】
【課題】 溶剤、油または水を使用する工場等において床面や台の上に敷く好ましい敷板等について提案する。
【解決手段】 敷板1は、熱可塑性樹脂を含む繊維が加熱および圧縮されることによりボード状にされた繊維板からなり、溶剤、油または水で濡れる可能性がある床または台の上に敷かれるものである。その敷板1は、乾燥状態から液体を多量に吸収して保持し、かつ、一定の圧縮力を受けても当該液体を保持し続ける能力が高い。弾力性や圧縮強度等にも優れるため、床面A上に敷板1を敷いておくと、金属製の重い工作物Dを下ろすとき等にも床面Aを傷つける心配がなくなる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む繊維が加熱および圧縮されることによりボード状にされた繊維板からなり、溶剤、油または水で濡れる可能性がある床または台の上に敷かれることを特徴とする敷板。
【請求項2】
乾燥状態から溶剤、油または水を多量に吸収して保持し、かつ、一定の圧縮力を受けても当該溶剤、油または水を保持し続ける能力が、木質合板よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項3】
密度が0.3~0.9g/cmであり、
50mm×50mmの広さを有する試験片が、乾燥状態から溶剤、油または水に3日間漬けられることによってその溶剤、油または水を内部に6g以上吸収することができ、かつ、乾燥状態から溶剤、油または水に3日間漬けられたのち、上記広さに14kgの圧縮力が加えられたときその溶剤、油または水の排出量が1g以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の敷板。
【請求項4】
内部に吸収した水または水溶性油の水分を、自然乾燥によって全て排出できることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の敷板。
【請求項5】
密度が0.7~0.9g/cmであり、圧縮強度が100MPa以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の敷板。
【請求項6】
上記の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン繊維を5~40重量%含有し、それ以外の繊維が古着からの回収繊維であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の敷板。
【請求項7】
隣接して配置された敷板同士が、それらの敷板間に跨る長さを有するとともに各敷板の表面を露出させ得る通し孔を有する連結金具と、その連結金具の通し孔を通して各敷板にねじ込まれるビスとによって連結されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の敷板。
【請求項8】
溶剤、油または水が付着している工作物を載せるために、またはそのような工作物を載せた状態で移動するために使用するパレットであって、
請求項1~7のいずれかに記載の敷板が、交換可能に上面に取り付けられていることを特徴とするパレット。
【請求項9】
溶剤、油または水を使用する工場で作業員の通路または足場として使用する作業用架台であって、
請求項1~7のいずれかに記載の敷板が、通路または足場を構成する鋼板の上面に交換可能に取り付けられていることを特徴とする作業用架台。
【請求項10】
上記の鋼板が上面に凹凸を有するものであることを特徴とする請求項9に記載の作業用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工等を行うために溶剤、油または水(以下、これらを本明細書において「液体」と総称する)を使用する工場等において床面または各種の台の上に敷かれる敷板、およびそのような敷板を取り付けたパレットまたは作業用架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場等の床面上に機械類を設置したり、機械加工等した工作物(ワーク)を置いたりするとき、床面を保護する等の目的で床面上に何らかの板(敷板)が敷かれることが多い。その敷板としては、厚さが10mm前後の合板(ベニヤ板等を積層した木質系の板)がよく使用される。ゴムの板やシートが敷板とされることもある。また、油が使用される工場内には、軟らかい布状の油吸着マットが敷かれることもある。
機械類を設置するとき床面上に木質系のパネルを敷くことは、たとえば下記の特許文献に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-363461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場の床面等に工作物や機械類を設置する際、敷板として合板等を使用することについては、以下のような課題がある。
a) 合板は、設置する工作物等が高重量のものである場合や、工作物等を擦り動かすとき等に割れたり木屑を出したりしやすい。表裏間に温度差や湿度差があると反りを生じやすい。また、その工作物等が液体を付着したものであってその液体が滴下等する場合、合板はそれをある程度吸収することができるものの、湿った状態が長期間続くようなら、腐食してさらに割れやすくなる。液体を内部に吸収して保持する能力が低いため、合板の表面に液体が浮いたり床面上にその液体がしみ出したりしやすく、そのために作業員が滑って転倒する心配が生じるという不都合がある。
【0005】
b) 敷板としてゴムの板やゴムシートを使用する場合には、その上で工作物等を擦り動かしたときや回転させて向きを変えたとき等に、穴があいたり摩擦によって毟れたりしやすい。また、上記のように機械類から液体がこぼれることがあると、それを吸収することができないので液体が床面等の上に広がり、作業員がスリップしやすい状態になる。
c) 布状の油吸着マットが敷かれる場合には、工作物等の重量的負担から床面を保護することがほとんどできないうえ、短期間に千切れたり摩耗したりしやすいため、油等を吸収する作用も長続きしない。
【0006】
本発明は、以上のような不都合を考慮した好ましい敷板の使用について提案するものである。すなわち、液体を使用する工場等において床面や台の上に敷く好ましい敷板等について提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明による敷板は、熱可塑性樹脂を含む繊維(とくに化繊を主体とするもの)が加熱および圧縮されることによりボード状にされた繊維板からなり、液体で濡れる可能性がある床または台の上に敷かれることを特徴とする。
液体で濡れる可能性があるというのは、その敷板に載せる工作物に液体(溶剤、油または水)が付着していてそれらが滴下する場合や、付近の機械類から液体が飛散または滴下する場合等をさす。
【0008】
使用する敷板が、上記のとおり、熱可塑性樹脂を含む繊維が加熱・加圧等によりボード状に圧縮されてなるものであるため、つぎのように多くの利点をもたらす。
当該敷板は、繊維が絡み合っているうえ熱可塑性樹脂が接着剤の役目を果たして繊維間が強く結合したものであるため、圧縮強度が高く、割れにくい。合板と違って、ポリエステル等の化繊を主体とする繊維内には水分を含みにくいため、表裏間に温度差や湿度差がある場合にも反りを生じにくい。湿った状態が継続しても、合板のようには腐ることがない。繊維を原料とし、ランダムに配向する繊維間に適度な空隙が存在することからクッション性があり、緩衝材としても機能する。工作物等を擦り動かしたとき等に傷が付いて一部の繊維が切断されることがあっても、その繊維が敷板から分離しにくいために屑が発生しがたく、損傷が広がらない。
さらに、表面および内部において繊維間に気孔(空隙)があり、そこに液体を保持することができるため、上記繊維板からなる敷板には、液体を吸収し保持する能力が高い。そのため、液体で濡れる可能性がある床または台の上に上記の敷板を敷いておくと、その液体を敷板の内部に吸収して保持することができ、したがって、床面上に液体が広がって作業員等がスリップしやすくなる事態を未然に防止することができる。
【0009】
繊維板である上記敷板については、乾燥状態から液体を多量に吸収して保持し、かつ、一定の圧縮力を受けても当該液体を保持し続ける能力が、木質合板よりも高いものであるのが好ましい。
液体の吸収に関して上記の特性を有する繊維板製の敷板であれば、機械的強度に基づいてその上に工作物等を安定的に設置できることに加え、液体が滴下等したときも適切にそれを吸収して床面上に広がることを防止できる。しかも、一定の圧縮力を受けてもその吸収した液体を保持し続ける能力が高いため、液体を含んだ状態の敷板の上に工作物等を載せたり作業員がその敷板を踏んだりしても、液体がしみ出て床面上に広がることにはなりにくい。つまり、作業員が滑ったり転倒したりする不都合が避けられる。液体を吸収して保持する上記の能力が木質合板よりも高いことから、床面保護やスリップ防止のための従来の一般的な対策よりも有利だと言える。
【0010】
上記敷板についてはとくに、
・ 密度が0.3~0.9g/cmであり、
・ 50mm×50mmの広さを有する試験片(当該敷板と同一の繊維板にてなる試験片)が、乾燥状態から液体に3日間漬けられることによってその液体を内部に6g以上吸収することができ、かつ、乾燥状態から液体に3日間漬けられたのち上記広さに14kgの圧縮力が加えられたとき液体の排出量が1g以下である
との特徴をもつものであると好ましい。
なお、上にいう密度は、敷板の重さと、敷板内部の気孔を含む体積とから算出される見かけ密度をさす。繊維板の原料である繊維自体の密度は1を超えるため、繊維板である敷板の密度が上記の値であることは内部に気孔があることを意味する。また、上にいう広さは、床面上に敷かれた状態に相当する水平面における広がりの寸法をさしている。
密度が上記の範囲となることに相当する気孔を有していて、液体を吸収するとともにそれを保持することについて上記の能力を有する敷板であれば、床または台の上に木質合板を敷く場合に比べ、液体のしみ出しを抑えて床面等でのスリップを防止するうえできわめて有利である。また、密度が上記の範囲となる繊維板であれば、圧縮強度が高く十分な機械的強度を有するため、その上に工作物等を安定的に設置できて床面を十分に保護することができる。圧縮強度が高く、加圧されたときの圧縮変形が小さいことは、吸収した液体を保持する能力が高い理由の一つでもある。
【0011】
上記の敷板が、内部に吸収した水または水溶性油の水分を、自然乾燥によって全て排出できるものであると、とくに好ましい。
繊維板からなる敷板は、表面においても繊維の間に無数の気孔が存在するため、吸収した水または水溶性油中の水分を自然乾燥等によって速やかに排出する(乾かす)ことができる。自然乾燥にて全て排出できるなら、機械類が使用されない夜間や休日に元通りに乾燥させ、その後に再び水や水溶性油を吸収させるという使い方を繰り返して、水や水溶性油が床面上に広がるのを防止できる。繊維板からなる敷板は合板等と違って腐ることがなく、機械的強度の低下が生じにくいため、そのような使用を何年も継続することが可能である。
【0012】
上記の敷板は、密度(上記のとおり見かけ密度をさす)が0.7~0.9g/cmであり、圧縮強度が100MPa以上のものであるのがとくに好ましい。
密度がその程度の範囲内にある繊維板製の敷板は、液体についての上記した吸収特性を有するとともに、高い機械的強度を有している。圧縮強度が高く、上に機械類を設置したとき凹みにくいために、設置の安定性が高い。また、上に置いた機械類を擦り動かしたり向きを変えたりしても、穴があいたり摩耗したりすることが少ない。そのため、とくに高重量の機械類を設置する場合に適していると言える。
【0013】
上記の敷板は、とくに、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン繊維を5~40重量%含有し、それ以外の繊維が古着からの回収繊維であると好ましい。
敷板とする繊維板がポリプロピレン繊維を5~40重量%含有すると、加熱・圧縮されて製造された繊維板においてその繊維が他の繊維を結合させるバインダーとしての機能を十分に発揮するため、機械類の荷重等に耐える高強度の敷板となる。また、ポリプロピレン繊維は親油性を有し、液体を短時間のうちに繊維に付着等させて繊維板の空隙内に保持させるという、上記敷板の有利な特性を効果的に実現する。また、ポリプロピレン繊維以外の繊維が古着からの回収繊維であると、古着を有効活用できるうえ、敷板のコストを低減することができる。
同じ平面の上に敷板を複数枚並べて敷く場合は、隣接して配置される敷板(たとえば小さめの一定寸法にカットされた標準サイズの敷板)同士が、それらの敷板間に跨る長さを有するとともに各敷板の表面を露出させ得る通し孔を有する連結金具と、その連結金具の通し孔を通して各敷板にねじ込まれるビスとによって連結されるのが好ましい。そのようにして敷板が連結された例を図5に示す。同図では連結金具2が十字形状であるが、それには限らず、連結金具そのものと通し孔とが隣接の敷板1間に跨り得るものであれば、直線状のものでもよい。
繊維板でできた上記の敷板(とくに、平均繊維長が20mm以上の繊維が加熱・圧縮されて密度が0.3~0.9g/cmにされた繊維板にてなるもの)は、先の尖ったビスをねじ込めばそのビスのねじ部と強く結合するため、上記の方法により、敷板1同士を簡便にしかも強固に連結することができる。その後にビスを抜き出すことも、同じ箇所に再度挿入して結合させることも可能である。ビス3をねじ込むとき、合板とは違って繊維板製の敷板が割れることもない。
【0014】
発明によるパレットは、液体が付着している工作物を載せるために、またはそのような工作物を載せた状態で移動するために使用するパレットであって、上記した敷板が交換可能に上面に取り付けられていることを特徴とするものである。
そのパレットの一例を図7に示している。フォークリフト等で運搬可能とするために、下部に空間ができるように形成した木枠または樹脂等によってパレット本体が形成され、その上面に、熱可塑性樹脂を含む繊維がボード状に圧縮されてなる繊維板製の敷板が、交換可能に取り付けられている。
上記のような敷板を取り付けられたパレットであれば、洗浄や防錆、表面処理等のために液体が付着している工作物等を載せる場合にも、敷板がその液体を吸収・保持しやすいため、パレットの下に液体が滴下して工場等の床面上に広がってしまうという事態が生じにくい。床面上に液体が滴下しないということは、作業員等が滑って転倒等する危険を防止できることにほかならない。液体が敷板の内部に保持しきれない量となったときは、その敷板を交換することにより、床面上への滴下を継続して防止できる。
【0015】
発明による作業用架台は、液体を使用する工場で作業員の通路または足場(ステップ)として使用する作業用架台であって、上記した敷板が、通路または足場をなす鋼板の上面に交換可能に取り付けられていることを特徴とする。
そのような作業用架台の一例を図8(a)に示す。図示の架台は、作業員が作業のための足場として使用し、または、移動(もしくは上下に昇降)するための通路(もしくは階段)として使用するものである。架台本体は鋼板や形鋼によって形成され、通路または足場となる鋼板が上部に設けられている。その上部の鋼板の上面に、熱可塑性樹脂を含む繊維がボード状に圧縮されてなる繊維板製の敷板が、交換可能に取り付けられている。
液体を使用する工場内においては、通路または足場となる鋼板の上にもその液体が付着することがあり、それが作業員の靴の裏に付くとスリップしてその者が転倒等する危険性がある。しかし、液体を吸収・保持しやすい上記の敷板が当該鋼板の上面に取り付けられていると、液体がしみ出しにくいので、作業員の靴に液体が付くことが防止される。それにより、作業員がスリップすることが避けられる結果、工場内の安全性が保たれる。
【0016】
上記の作業用架台については、上記の鋼板が上面に凹凸を有するものであるととくに好ましい(図8(b)・(c)参照)。上面に凹凸を有する鋼板としては、たとえば、縞鋼板(チェッカープレート)やアンチスリップ鋼板(登録商標)がある。
通路または足場をなす鋼板の上面に凹凸があると、上記敷板が液体を多量に吸収して保持しきれない(つまり保持の限界を超えた)状態となったとき、敷板から排出される液体が、敷板の下に位置する上記鋼板の凹部に溜まり、そこから溢れるまで保持される。そのため、敷板を交換するタイミングが多少遅れたとしても、液体が敷板の上面にしみ出て作業員の靴に付着したり、下面から作業用架台の下に滴下して床面上に広がったりする事態が発生しがたい。上記鋼板の凹部から液体が溢れ出すまでに敷板を交換する(同時に上記鋼板上の液体を拭き取る)なら、スリップや転倒を防止して工場内の安全を維持できることになる。
【発明の効果】
【0017】
発明による敷板は、圧縮強度が高いうえクッション性があり、一部が損傷してもそれが拡大しない、湿った状態が継続しても腐らない、といった特性があるため、重量のある機械類や工作物等の敷板として適している。また、繊維間に気孔(空隙)があって液体を吸収し保持する作用があることから、液体を滴らすことがある機械類の下や工作物の置き場に敷いておくことにより、滴下等する液体が床面上に広がって作業員がスリップしやすくなるという不都合を未然に防止することができる。
繊維板である敷板の密度を調整することにより、液体に対する吸収性能を高めるとともに加圧時の保持性能を高くしておくと、液体で濡れる可能性がある床または台の上にその敷板を敷くとき、その液体が周囲の床面上に広がらず、したがって作業員のスリップや転倒が防止されるという有利な効果がある。
その敷板が、吸収した水または水溶性油の水分を、自然乾燥によって全て排出できるものであると、その吸収性能を頻繁に回復させながら長期間使用することができる。
敷板の密度を0.7~0.9g/cmと高めに設定すると、その機械的強度を高くして高重量の機械類を設置するに適したものとなる。
敷板とする繊維板にポリプロピレン繊維を適量含有させるとそれがバインダとして作用し、また、ポリプロピレン繊維以外の繊維を古着からの回収繊維とすると、コスト面で有利であるうえ資源の有効活用を図ることができる。
発明の敷板は連結金具とビスとを用いてしっかりと連結することができる。そのため、広い面積を有する床面等にも適切に敷くことが可能である。
【0018】
発明によるパレットであれば、液体が付着している工作物等を載せる場合にも、パレットの下に液体が滴下して工場等の床面上に広がってしまうことを防止できる。そのため、床面上で作業員が滑って転倒する等の危険を除去することができる。
また、発明の作業用架台によれば、液体を使用する工場内においても、作業員の靴の裏に液体が付くことが効果的に防止される。そのため、スリップや転倒が防止されて工場内の安全性が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】発明の実施例である敷板1の外観を示す斜視図である。
図2】敷板1として使用する繊維板の製造方法を示す説明図である。
図3】吸水量・吸油量の時間的変化を示す図である。図3(a)は厚さ10mm・密度約0.64g/cmのベニヤ板についてのもの、同(b)は厚さ8mm・密度0.6g/cmの繊維板製の敷板1についてのもの、同(c)は厚さ9mm・密度0.27g/cmの繊維板製の敷板1についてのものである。
図4】工場内での敷板1の使用例を示す斜視図である。
図5】敷板1同士の連結について例示する平面図である。
図6】重量物である工作物Dを敷板1上で移動等させる際の動きを示す斜視図(図6(a))、およびその詳細を示す正面図(同(b))である。
図7】上面に敷板1を取り付けたパレット10を示す斜視図である。
図8】上面に敷板1を取り付けた作業用架台20を示す斜視図(図8(a))、ならびに、とくに有利な鋼板21を使用する場合を示す断面図(同(b)・同(c))である。
図9】切削油を滴らすことがある工作物の置き場として2年間使用された敷板1の外観を示す図である。図9(a)はその敷板1の表面(機械類と接していた面)を、同(b)は当該表面のうち典型的な一部を、同(c)は当該表面にある凹み箇所を、同(d)は当該表面にある毟れ箇所をそれぞれ示す。また、同(e)・(f)は、同(c)の凹み箇所を横切るように切断したときの敷板1の断面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、発明の実施例である敷板1の外観を示す斜視図である。敷板1は繊維をボード状に圧縮してできた繊維板であるため、表面に繊維が観察され、また一定の光沢がある。機械類設置用の敷板1として使用するものは、5~15mmの範囲で厚さを定めている。
【0021】
敷板1とする繊維板の製造方法を図2に示す。
まず、一般家庭等から回収されるボロや繊維屑と、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(PP)繊維とを混合することにより、フェルトを成形する(ステップS10)。たとえば、回収繊維である衣類等の繊維製品を開繊し、適当な長さに切断しながら、バインダーとしての熱可塑性樹脂繊維を混合して、両繊維を充分にからみ合わせて積層し、ウェブ状もしくはフェルトに成形する。熱可塑性樹脂であるPP繊維の含有比率は5~40重量%とする。
【0022】
成形したフェルトは、加熱処理をしてフェルト中の熱可塑性樹脂繊維を溶融させる(ステップS11)。その際、熱風加熱等の方法により、バインダーとする熱可塑性樹脂繊維の融点(約160℃)よりも10℃ ~30℃高い温度に加熱する。
【0023】
加熱処理の後に直ちにプレス成形工程(ステップS12)に移行する。プレス成形工程では、まず加熱・加圧プレス工程(ステップS12-1)で、積層フェルトが所定の厚さおよび密度となるように、加圧ロールにてプレスする。続いて冷却・固化工程(ステップS12-2)で、送風冷却、ミスト噴霧、またはロールやベルトによる接触冷却といった方法により、積層フェルト中の熱可塑性樹脂が完全に固化するまで冷却する。加熱工程(ステップS11)での温度と加熱・加圧プレス工程(ステップS12-1)での圧力により、製造する繊維板の密度を設定する。
【0024】
以上の工程により、ボロ・繊維屑と熱可塑性樹脂繊維とを原料にして繊維板を製造することができる。その繊維板を、設置する機械類の大きさや使用場所に合わせて、適当な長さで裁断することにより、図1の敷板1が得られる。
そうして得た敷板1を工場等の床面上に敷き、その上に工作物や機械類を設置する。上記繊維板にてなる敷板1は圧縮強度等の機械的強度が高いので長期使用が可能であり、またクッション性もあるため、工作物や機械類の下に敷くと床面を保護することができる。発明者らは、この敷板1が、液体に対する優れた吸収能力および保持能力を有することに気付き、そのような液体を滴らせる工作物や機械類の下に敷くことを検討した。
【0025】
機械類等の下に敷いた敷板1の状態の変化を知るべく、機械類や工作物等から液体が滴る場合を想定して、発明者らはつぎのような試験を行った。
すなわち、密度(みかけ密度)と厚さが異なる上記繊維板製の5種類の敷板1(試験片1a~1e)と、機械類の下に敷かれることが多いベニヤ板(試験片2)とについて、吸水・吸油の能力を調べた。具体的には、下記表1の左欄に示す各製品について、乾燥状態にある50mm角(表面寸法が50mm×50mm)の試験片2および1a~1eを用意し、表1の各項目に示す液体(常温の水または各種油)に接触させて重量の変化を調査した。試験は、各試験片が乾燥状態にあるとき(試験開始時)と、上記各液体に5分間浮かべた後と、重しを載せて試験開始1時間後まで各液体中に沈めた後と、同様にして試験開始3時間後まで各液体中に沈めた後と、さらに同様にして試験開始24時間後まで各液体中に沈めた後とに、それぞれ試験片の重量を計測した。各計測時には、各試験片の表面にのみ付着した液体が除かれるよう、金網上に5分間放置した後に重量計測をした。そしてその後、直射日光の当たらない25℃~40℃の屋内で、風を当てない自然乾燥状態に各試験片を放置し、放置開始から8時間後、24時間後、30時間後、72時間後、120時間後、360時間後にそれぞれ試験片の重量を計測した。
なお、表1の製品欄に記した「リフモ」は繊維板の商品名(登録商標)である。また、「モレスコツールメイトカッティングスター7700S(10倍希釈)」は水溶性切削油の商品名、「ダフニースーパーハイドロ32A」は非水溶性の油圧作動油の商品名、「ハイドールHAW」はやはり非水溶性の水グリコール系油圧作動油の商品名である。
【0026】
【表1】
【0027】
表1には、上記計測の結果から、各試験片が吸収した各液体(水または油)の重量、すなわち計測重量から乾燥状態の試験片の重量を減算した値(単位:g)を示している。太字の数値は、各試験片の、各液体に対する最大吸収量を示す。表中の「#N/A」は計測できなかったことを表している。
【0028】
表1に示す計測結果を、試験片2(ベニヤ板)および1a・1b(繊維板)についてそれぞれグラフに示すと図3(a)~(c)のようになる。図3および表1から、つぎのことが分かる。
1) ベニヤ板にてなる試験片2も繊維板製の試験片1a~1d(つまり密度が約0.27~0.84g/cmの繊維板にてなるもの)も、水および油を吸収する能力がある。すなわち、いずれの試験片も、乾燥状態から、水または油を24時間以内に8g以上吸収している。ただし、吸収の速さ(一定量を短時間内吸収する能力)については、試験片1a~1dの方が試験片2よりも優れている。また、密度を約0.95g/cmに高めた繊維板にてなる試験片1eについては吸収能力がない。
【0029】
2) 水または水溶性油(切削油「モレスコツールメイトカッティングスター7700S(10倍希釈))を短時間内に吸収することに関しては、繊維板にてなる試験片1a・1bの能力は、ベニヤ板にてなる試験片2のそれよりも格段に優れている。水または水溶性油を約10g吸収するのに試験片2は24時間程度を要したのに対し、試験片1a・1bは、同じ10gを5分~1時間のうちに吸収している。
【0030】
3) 試験片1a・1bにおいても試験片2においても、吸収した水または水溶性油を、その後の24時間~120時間の自然乾燥によって全て蒸発(排出)させることができている。
【0031】
以上の点から、試験片1a~1dと同様の繊維板製の敷板1を、水や油等の液体をこぼすことがある機械類や工作物等の下に敷くなら、床面4を適切に保護できることに加え、上記液体をその敷板1に吸収させて周辺に広げない(床面でのスリップを防止する)、という効果を得られるといえる。とくに、切削油のような水溶性油または水を滴下等してこぼすことがある機械類の下に、試験片1a・1bと同等の性能を有する敷板1を敷くなら、水や水溶性油が滴下したとき等にそれを速やかに吸収して床面上に広がるのを防止することができ、しかもその後に自然乾燥して再度の吸収を可能にするため、床面のスリップ防止という効果が繰り返しもたらされることになる。
【0032】
約0.95g/cmの密度を有する繊維板製の試験片1eは、上述のように水や油を吸収することができなかったが、密度を0.7~0.85g/cmにした繊維板(試験片1c・1dの相当品)は、水または油の吸収能力を有するうえに機械的強度が高いことから、高重量の機械類の下に敷く敷板1として有利である。そのような繊維板にてなる敷板1の特性を、合板(ベニヤ板)またはゴム板等を敷板とする場合と比較した一覧を表2に示す。表2において、「リフモ」は前記したように繊維板の商品名(登録商標)であり、「ソフトタイプ」は密度が0.3g/cm程度、「通常」は密度が0.7~0.8g/cm、「ハード」は密度が0.9~1.0g/cmの、それぞれ繊維板製の敷板1を示している。
【0033】
【表2】
【0034】
上述の敷板1と合板等について、液体を吸収する能力とともにその保持能力を調べる目的で、つぎのような試験をさらに行った。すなわち、
1) 繊維板(リフモ)製の前記した試験片1aと1b、油吸着マット(商品名「オルソーブ」)の試験片3、および厚さ10mmの合板の試験片2を、表1の試験と同様にそれぞれ50mm角にカットし、
2) 乾燥状態の各試験片を、3日以上、非水溶性の油圧作動油であるダフニースーパーハイドロ32A(常温)に漬ける(沈没させる。表面に気泡が出る場合は容器ごと振る)ことによりその油を各試験片に吸収させ、
3) 液体を吸収しやすい段ボール紙の上に各試験片を重ねて置き、それぞれの試験片の上面に金属板(油を上へ逃がさないもの)を重ね、その上から14kgの重しを10秒間載せる(加圧する)。なお、その荷重は、試験片1a・1bはもちろん、試験片2(合板)であっても、それぞれが潰れるほどの大きさではない。
4) 上記1)・2)・3)の各処置の直後に各試験片(ウエスで表面を拭き取って)の重量を計測する。沈没後の重量から乾燥時の重量を減じて上記油の吸収量を算出し、沈没後の重量から加圧後の重量を減じて上記油の放出量を算出する。また、吸収量に対する放出量の割合を、加圧放出割合として算出する。
【0035】
その結果を表3に示す。この表から下記の点が明らかになる。
・ 試験片1a(リフモ8mm厚)は、荷重による染み出し(放出量)が量的にも割合的にも少なく、油を保持する能力が高いといえる。圧縮強度が高く、加圧されたときの沈み込みが小さいことが理由の一つと推定される。上記3)の荷重は、機械工作物等の一般的な重量に該当するため、この結果から、上記油を限界まで吸収した試験片1a相当の敷板1の上に工作物等を載せても、敷板1の上を人が歩行しても、油の染み出しがほとんどないものと考えられる。
・ 試験片1b(リフモ9mm厚ソフト)は染み出しがやや多いものの、試験片3(油吸着マット)よりは少ない。
・ 試験片3(油吸着マット)は膨潤することで吸収量が増えているので、加圧されることにより漏出しやすく、放出量が多い。
・ 試験片2(合板)は、染み出し量は試験片1a(リフモ8mm厚)と同じくらい少ないが、吸収量自体が試験片1aよりも格段に少ない。したがって、加圧放出割合は高いものとなっている。
【0036】
【表3】
【0037】
液体を吸収して保持する能力に優れる繊維板製の敷板1に関して、有利な使用態様を図4図8に示す。
まず図4は、液体を使用する(したがってそれらが滴下等して床面上に広がる可能性がある)工場内での敷板1の使用例を示している。金属加工を行う工場の床面Aには、通路Bに隣接した箇所に、マシニングセンタや五面加工機のような金属加工機械類Cが設置されている。その機械類Cの付近に、作業時の足場となる作業用架台20や、加工ずみの工作物D1・D2等の置き場があり、工作物の取扱い作業区域が形成されている。機械類Cによって加工された工作物D(D1・D2等)は、ワイヤEを介しクレーン(図示省略)で昇降されることにより、この区域内の床面Aまたはパレット10の上に置かれる。
【0038】
図4の例では、工作物Dが置かれる上記区域内の床面A上に、上記試験片1aと同じ繊維板(リフモ8mm厚・密度約0.6g/cm)、またはそれとは密度のみ異なる繊維板(リフモ8mm厚・密度0.7~0.85g/cm)からなる敷板1を敷いている。隣接する敷板1同士は、双方の縁部付近にまたがって食い込むステープラー状の金具を打ち込んだり、縁部付近に設けた連結孔に紐やワイヤを通して結び付けたりして連結するとよい。さらには、図5のように、薄い金属板でできた十字形状の連結金具2を用い、その連結金具2の通し孔に、先端の尖ったビス3を通して各敷板1にねじ込むことにより連結するのが好ましい。繊維が加熱圧縮されてランダムに絡み合っている繊維板製の敷板1には、ビス3のねじ部が挿し入れられて強く結合する(抜き出すことも再度挿入して結合することも可能である)ため、この方法により、敷板1同士を簡便にしかも強固に連結することができる。先の尖ったビスを用いると、敷板1に事前に孔をあけておく必要もない。また、ビス3をねじ込むことによって敷板1(繊維板)が割れる恐れもない。図には十字形状の連結金具2を用いる例を示したが、直線状もしくは他の形状の連結金具(両端部付近にビス用の通し孔を有するもの)とビスとを使用するのもよい。
工作物Dには加工時に使用された切削油や冷却水等が付着しており、加工後もその液体が滴下しがちであるが、敷設した敷板1がその液体を吸収し保持することから、床面Aや通路Bの上に液体が広がって滑りやすくなることが防止される。
【0039】
床面A上に敷板1を敷いておくと、金属製の重い工作物DをワイヤEによって下ろすときや、下ろした工作物Dを図6(a)のように移動させるとき等に、床面Aを傷つける心配もなくなる。移動等のために工作物Dを傾ける場合には、図6(b)のように工作物Dの重量がその隅角部分Dxに集中するが、敷板1を敷いた場合には、敷板1が弾性的に凹むことによって床面Aの損傷を防止することができる。
【0040】
図4中に示したパレット10についても、図7に示すように上面に敷板1を取り付けておくと有利である。パレット10は、フォークリフト等で運搬しやすいよう、下部に空間を設けた木枠等で本体部分ができている。その上面に、床面Aに敷いた上記と同様の繊維板製の敷板1を取り付ける。敷板1は、パレット10の上でずれないようにし、また容易に交換できるようにするために、縁部付近の複数箇所に孔を設けたうえその孔に通した紐などでパレット10の本体に結び付けておくとよい。縁部付近の各孔に下から入る突出片をパレット10の上面に形成しておくのもよい。図5に示した十字形状の連結金具2(またはそれに準じた直線状もしくは他の形状の連結金具)を用い、いずれかの通し孔に通すビス3を敷板1にねじ込むとともに、他の通し孔に通すビスをパレット10にねじ込む等すれば、パレット10への敷板1の固定は強固で確実なものとなる。
【0041】
そのようなパレットを使用すると、液体が付着している工作物Dを載せた場合にも、敷板1がその液体を吸収・保持するため、パレットの下に液体が滴下しがたい。図4では床面Aに敷かれた敷板1の上にパレット10があるが、フォークリフト等で運搬されて敷板1のない床面上に工作物Dとパレット10とが置かれた場合にも、その床面上に液体が滴下して広がることが防止される。床面上に液体が広がらないため、作業員がスリップすることが防止され、作業の安全が保たれる。
【0042】
図4において機械類Cの横に設けられた作業用架台20についても、図8(a)に例示するように上面に繊維板製の敷板1を取り付けるとさらに好ましい。作業用架台20は上部に鋼板21が水平に設けられていて作業員の足場となるが、その鋼板21の上面に、上記のとおり床面Aに敷いたのと同様の繊維板製の敷板1を取り付ける。鋼板21上でずれることがなく、また容易に交換できるよう、敷板1は、図7のパレット10に取り付けた場合と同様に、複数の孔を設けて作業用架台20に紐などで結び付けたり、鋼板21上に設ける突出片をそれぞれの孔に挿し入れたり、または図5に例示した連結金具2(もしくはそれに準じた他の形状の連結金具)とビス3とを用いたりして取り付けるとよい。
【0043】
作業用架台20の上に敷板1を取り付けると、その架台20上に付着する可能性のある液体を敷板1が吸収して内部に保持することから、作業員の靴の裏等にその液体が付きにくい。また、繊維板製の敷板1が取り付けられた架台20上を歩く場合は、鋼板21のみの架台20上を歩く場合よりも靴底の設置面積が広くなる。それらの点から、当該架台20の上にいる間に、または架台20を通った後に、作業員がスリップすることが避けられる。
【0044】
作業用架台20に敷板1を取り付けることに関し、架台20の足場として敷板1を載せる鋼板21については、図8(b)または(c)に示すように、上面に凹凸を有するものを使用すると有利である。
同(b)は、鋼板21としてアンチスリップ鋼板(登録商標)21Aを使用した例を示す。当該鋼板21Aは、円形の多数の孔Aaを有するとともに、それぞれの孔Aaの周縁に上向きに盛り上がった凸部Abを形成したものである。この鋼板21Aの上に敷板1を取り付けると、敷板1が保持しきれなくなった液体が、その鋼板21Aにおける凸部Abに囲まれた凹部に溜まって保持されるため、敷板1上に染み出たり架台20の下に滴下したりすることがさらに長期間防止される。液体をたっぷり吸収した敷板1はその間に交換すればよい。
【0045】
図8(c)は、鋼板21として縞鋼板(チェッカープレート)21Bを使用した例である。縞鋼板21Bも、滑り止めのための凸部Baが表面に多数形成されたものである。そのため、この鋼板21Bの上に敷板1を取り付けると、敷板1が保持しきれなくなった液体が、凸部Baの回りの凹部に溜まって保持されるため、図8(b)の場合と同様、敷板1上に染み出たり架台20の下に滴下したりすることがさらに長期間防止される。
【0046】
図9には、切削加工直後の高重量の金属工作物を置くための敷板として2年間使用された直後の繊維板製の敷板1につき、外観等を示している。図9(a)は、当該工作物と接していた表面(上面)の全体を示す外観写真であり、同(b)はその一部の拡大写真である。双方から、敷板1の表面が全体的に摩耗していてザラザラしていること、大小さまざまな凹みがあること、複数の切粉が付着しまたは刺さっていること、吸収した切削油や付着した黒いカスのようなもののために黒色化していることが見てとれる。
図9(c)には、上記工作物の向きを変えるとき等に工作物の角が当たってできたと思われる凹みが写っている。同(d)には、同様にしてできたと思われる毟れ箇所が示されている。毟れ箇所は、敷板1の本体部分と繊維がつながっているため、手でつまんでも千切れない。
図9(e)・(f)は、同(c)のような凹みを横切るように切断した敷板1の断面写真である。切れ込んだ状態の凹みであるが、表面から深さ2mm程度で留まっていて、裏面までは達していない。
【0047】
図9の敷板1は重量が12.8kgであり、新品(未使用)のものに比べて4.8kg重くなっているため、同等量の油分を吸収し含有していると考えられる。硬さ等の機械的性質にほとんど変化はなく、圧縮強度についても新品時と同様に100MPa以上を有していた。
【符号の説明】
【0048】
1 敷板
2 連結金具
10 パレット
20 作業用架台
21 鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9