(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064361
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
F21V 19/00 20060101AFI20230501BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20230501BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230501BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20230501BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230501BHJP
H05K 1/05 20060101ALI20230501BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F21V19/00 150
H01L25/04 Z
H01L23/12 S
H01L33/62
F21V19/00 170
F21S2/00 100
H05K1/05 A
H05K1/18 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174596
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石川 史朗
(72)【発明者】
【氏名】原 慎太郎
【テーマコード(参考)】
3K013
5E315
5E336
5F142
【Fターム(参考)】
3K013BA01
3K013CA05
3K013CA07
5E315AA03
5E315BB02
5E315BB03
5E315BB04
5E315BB16
5E315GG01
5E315GG22
5E336AA04
5E336AA12
5E336BB01
5E336BB19
5E336BC32
5E336CC02
5E336CC57
5E336GG03
5E336GG14
5F142AA42
5F142AA52
5F142AA58
5F142BA32
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD43
5F142CF02
5F142DB60
5F142EA32
5F142EA34
(57)【要約】
【課題】金属ベース基板の回路層にLED素子などの半導体チップを接合した半導体モジュールであって、半導体チップが離脱しにくく、金属ベース基板が変形しにくい半導体モジュールを提供する。
【解決手段】金属ベース基板と、コネクタと、複数個の半導体チップとを有し、前記金属ベース基板は、板厚が0.5~1.2mmの範囲内にある金属基板と、前記金属基板の少なくとも一方の表面に絶縁層を介して設けられた回路層とを含み、複数個の前記半導体チップは、一方向に沿って配列された半導体チップ配列部を形成して、前記回路層の上に配置され、前記コネクタは端子を備えるハウジング部を有し、前記ハウジング部は前記一方向に沿って、前記半導体チップ配列部に対向するように、前記回路層の上に配置され、前記半導体チップ配列部の前記一方向における長さAに対する前記ハウジング部の前記一方向における長さBの比B/Aが1以上である半導体モジュール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース基板と、コネクタと、複数個の半導体チップと、を有し、
前記金属ベース基板は、板厚が0.5mm以上1.2mm以下の範囲内にある金属基板と、前記金属基板の少なくとも一方の表面に絶縁層を介して設けられた回路層とを含み、
複数個の前記半導体チップは、一方向に沿って配列された半導体チップ配列部を形成して、前記回路層の上に配置され、
前記コネクタは端子を備えるハウジング部を有し、前記ハウジング部が前記一方向に沿って、前記半導体チップ配列部に対向するように、前記回路層の上に配置され、
前記半導体チップ配列部の前記一方向における長さAに対する前記ハウジング部の前記一方向における長さBの比B/Aが1以上である半導体モジュール。
【請求項2】
前記コネクタの前記ハウジング部の曲げ剛性が前記金属基板の曲げ剛性以上である請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記半導体チップ配列部に配列された前記半導体チップの数が3個以上である請求項1に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光源モジュールとして、回路基板の上に、複数個のLED素子(発光ダイオード素子)とその複数個のLED素子と接続したコネクタとを配置した構成のLEDモジュールが知られている(特許文献1)。この複数個のLED素子を用いたLEDモジュールは、例えば、自動車などの車両のヘッドライトなどの照明装置の光源として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数個のLED素子を用いたLEDモジュールは、長期間使用しても各LED素子を接合するはんだにクラックが入らないことが望ましい。しかしながら、LEDモジュールの回路基板として、金属基板を基材とする金属ベース基板を用いた場合、発光時のLED素子の発熱などによって、金属基板が膨張・収縮することにより、はんだに熱応力によるクラックが入りやすくなることがある。はんだに熱応力によるクラックが入いると、LED素子が基板から離脱しやすくなるおそれがある。金属基板の膨張・収縮によるはんだに付与される熱応力を抑えるために、金属基板の板厚を薄くすることが考えられる。しかし、熱応力を抑制できる程度にまで金属基板の板厚を薄くすると、金属ベース基板の曲げ剛性が低下して、LEDモジュールの製造時やLEDモジュールのねじ止め作業時に、金属ベース基板に反りなどの変形が起こりやすくなる。
【0005】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数個のLED素子などの半導体チップを金属ベース基板に接合した半導体モジュールであって、複数個の半導体チップがそれぞれ離脱しにくく、かつ金属ベース基板が変形しにくい半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体モジュールは、金属ベース基板と、コネクタと、複数個の半導体チップと、を有し、前記金属ベース基板は、板厚が0.5mm以上1.2mm以下の範囲内にある金属基板と、前記金属基板の少なくとも一方の表面に絶縁層を介して設けられた回路層とを含み、複数個の前記半導体チップは、一方向に沿って配列された半導体チップ配列部を形成して、前記回路層の上に配置され、前記コネクタは端子を備えるハウジング部を有し、前記ハウジング部が前記一方向に沿って、前記半導体チップ配列部に対向するように、前記回路層の上に配置され、前記半導体チップ配列部の前記一方向における長さAに対する前記ハウジング部の前記一方向における長さBの比B/Aが1以上である構成とされている。
【0007】
上記のような構成とされた半導体モジュールによれば、金属ベース基板の金属基板の板厚が0.5mm以上1.2mm以下の範囲内にあるので、半導体チップの発熱による金属基板の膨張・収縮による変形が抑えられる。このため、半導体チップの発熱による半導体チップの離脱や金属ベース基板の変形が抑制される。また、半導体チップ配列部とコネクタのハウジング部とが、一方向に沿って対向するように回路層の上に配置され、半導体チップ配列部の一方向における長さAに対するコネクタのハウジング部の一方向における長さBの比B/Aが1以上であるので、ねじ止め作業時での金属ベース基板の反りなどの変形も抑制される。
【0008】
ここで、本発明の半導体モジュールにおいては、前記コネクタの前記ハウジング部の曲げ剛性が前記金属基板の曲げ剛性以上である構成とされていてもよい。
この場合、コネクタによって金属ベース基板が補強されて、金属ベース基板が曲げにくくなるので、ねじ止め作業時での金属ベース基板の反りなどの変形もさらに抑制される。
なお、曲げ剛性は(断面二次モーメント)×(ヤング率)で算出でき、断面二次モーメントは、前記半導体チップ配列部の前記一方向に垂直な断面で算出する。また、断面二次モーメントやヤング率が個別に求められない場合は、コネクタのハウジング部および金属基板を試験片として、3点曲げ試験機を用いて同一条件の曲げ応力を掛け、その際の歪み量が小さい方を曲げ剛性が大きいとしてもよい。
【0009】
また、本発明の半導体モジュールにおいては、前記半導体チップ配列部に配列された前記半導体チップの数が3個以上である構成とされていてもよい。
本発明の半導体モジュールは、半導体チップ配列部に配列された半導体チップの数が3個以上であっても半導体チップの発熱による金属基板の膨張・収縮による変形が抑えられるため、複数個の半導体チップがそれぞれ離脱しにくく、かつ金属ベース基板が変形しにくい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数個の半導体チップがそれぞれ離脱しにくく、かつ金属ベース基板が変形しにくい半導体モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
【
図2】
図1に示す半導体モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図2は、
図1に示す半導体モジュールの平面図であり、
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
図1~
図3に示すように、半導体モジュール10は、金属ベース基板20と、コネクタ30と、7個の半導体チップ51a~51gが配列された半導体チップ配列部50と、を有する。
【0013】
金属ベース基板20は、金属基板21と、金属基板21の少なくとも一方の表面に絶縁層22を介して設けられた第1回路層23、第2回路層24とを含む。第1回路層23は、半導体チップ51a~51gと接合する回路配線23a~23hを含む。第2回路層24はコネクタ30と接合するコネクタ固定部24a、24bを含む。
【0014】
金属基板21は、金属ベース基板20のベースとなる部材である。
金属基板21は、板厚が0.5mm以上1.2mm以下の範囲内にある。板厚が0.5mm以上であることによって、金属基板21の強度が高くなるので、熱による反りなどの変形を抑えることができる。また、板厚が1.2mm以下であることによって、金属基板21の熱による膨張・収縮による体積変化量が小さくなる。
【0015】
金属基板21は、銅基板、アルミニウム基板または鉄基板であることが好ましい。銅基板は、銅または銅合金からなる。アルミニウム基板は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる。鉄基板は、鉄もしくは鉄合金からなる。鉄合金は、炭素鋼を含む。
【0016】
絶縁層22は、金属基板21と回路層(第1回路層23、第2回路層24)とを絶縁するための層である。また、絶縁層22は、半導体チップ51a~51gにて発生した熱を金属基板21に伝える伝熱機能と、熱による金属基板21の体積変化を吸収し、第1回路層23と半導体チップとを接合する接合材に付与される応力を緩和する応力緩和機能を有する。
【0017】
絶縁層22は、絶縁樹脂と無機物フィラーとを含む絶縁性樹脂組成物から形成されていることが好ましい。絶縁層22を、絶縁性が高い絶縁樹脂と、熱伝導度が高い無機物フィラーとを含む絶縁性樹脂組成物から形成することによって、絶縁性を維持しつつ、伝熱機能を向上させることができる。
【0018】
絶縁樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはこれらの混合物を用いることができる。これらの樹脂は、絶縁性、耐電圧性、化学的耐性及び機械特性などの特性に優れるので、金属ベース基板20のこれらの特性が向上する。
【0019】
無機物フィラーとしては、例えば、アルミナ(Al2O3)粒子、アルミナ水和物粒子、窒化アルミニウム(AlN)粒子、シリカ(SiO2)粒子、炭化珪素(SiC)粒子、酸化チタン(TiO2)粒子、窒化硼素(BN)粒子などを用いることができる。無機物フィラーの平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0020】
絶縁層22の無機物フィラーの含有量は、30体積%以上85体積%以下の範囲内にあることが好ましい。無機物フィラーの含有量が30体積%以上であることによって、絶縁層22の伝熱機能が向上する。一方、無機物フィラーの含有量が85体積%以下であることによって、絶縁層22の伝熱機能が向上する。絶縁層22の伝熱機能を向上させる観点では、無機物フィラーの含有量は、50体積%以上80体積%以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0021】
絶縁層22の膜厚は100μm以下であることが好ましい。絶縁層22の膜厚が100μm以下であることによって、絶縁層22の伝熱機能が向上し、半導体チップ51a~51gにて発生した熱を金属基板21に効率よく伝えることができる。絶縁層22の膜厚は、30μm以上であることが好ましい。絶縁層22の膜厚が30μm以上であることによって、金属基板21と回路層(第1回路層23、第2回路層24)とを確実に絶縁することができ、絶縁層22の応力緩和機能が向上し、接合材40に付与される応力を低減させることができる。絶縁層22の膜厚は、50μm以上であることが好ましく、80μm以下であることが好ましい。
【0022】
絶縁層22は、100℃における弾性率ER(単位:GPa)に対する膜厚TR(単位:mm)の比TR/ERが30以上1000以下の範囲内にあり、熱伝導度CR(単位:W/mK)に対する膜厚TR(単位:mm)の比TR/CRが2以上40以下の範囲内にあることが好ましい。TR/ERは、30以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましい。また、TR/ERは、300以下であることが好ましく、200以下であることが特に好ましい。TR/CRは、3以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましい。また、TR/CRは、30以下であることが好ましく、20以下であることがさらに好ましい。絶縁層22が2層以上の積層体である場合は、各層のTR/ERの合計が上記の範囲内にあり、各層のTR/CRが上記の範囲内にあることが好ましい。絶縁層22のTR/ERが上記の範囲内にあることによって、応力緩和機能が向上し、半導体チップ51a~51gの発熱による半導体チップ51a~51gの離脱が抑制されるので信頼性が向上する。また、TR/CRが上記の範囲内にあることによって、伝熱機能が向上し、半導体チップ51a~51gの発熱による熱を効率よく外部に放出できる。
【0023】
第1回路層23及び第2回路層24の材料としては、銅、アルミニウム、金などの金属を用いることができる。第1回路層23及び第2回路層24の膜厚は2μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。
【0024】
コネクタ30は、ハウジング部31と、ハウジング部31の両端に配置された支持部材33a、33bとを含む。支持部材33a、33bはハウジング部31の両端に配置された支持部材固定部32に固定されている。支持部材33a、33bは、接合材40を介して、コネクタ固定部24a、24bに接合されている。ハウジング部31は、端子部34を備える。端子部34は8個の端子34a~34hを有する。8個の端子34a~34hは、それぞれ8個の回路配線23a~23hと接合材40を介して接合している。接合材40としては、例えば、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-In系およびSn-Ag-Cu系などのはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)を用いることができる。
【0025】
ハウジング部31は、端子34a~34hと接続されている外部端子(不図示)を有する。コネクタ30のハウジング部31は、電源や制御装置と接続される。ハウジング部31の形状は、平面視で長手方向を有する長方形とされている。
【0026】
半導体チップ51a~51gとしては、LED素子、LEDチップ、LED-CSP(LED-Chip Size Package)、MOSFET(Metal-oxide-semiconductor field effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、LSI(Large Scale Integration)を用いることができる。
【0027】
半導体チップ51a~51gはそれぞれ2つの回路配線と接続している。半導体チップ51aは回路配線23a、23bに接続し、半導体チップ51bは回路配線23b、23cに接続し、半導体チップ51cは回路配線23c、23dに接続し、半導体チップ51dは回路配線23d、23eに接続し、半導体チップ51eは回路配線23e、23fに接続し、半導体チップ51fは回路配線23f、23gに接続し、半導体チップ51gは回路配線23g、23hに接続している。
【0028】
本実施形態の半導体モジュール10においては、半導体チップ51a~51gは、一方向(X方向)に沿って配列された半導体チップ配列部50を形成している(以下、半導体チップ51a~51gが配列されている方向を、配列方向ということがある)。
【0029】
一方、コネクタ30は、ハウジング部31が半導体チップ配列部50の配列方向(X方向)に沿って、半導体チップ配列部50に対向するように配置されている。コネクタ30は、ハウジング部31の長手方向の面が半導体チップ配列部50に対向するように配置されていることが好ましい。半導体チップ配列部50の配列方向における長さAに対するコネクタ30のハウジング部31の配列方向における長さB(ハウジング部31の長手方向の長さ)の比B/Aは1以上とされている(
図2参照)。比B/Aは、1.1以上2.0以下の範囲内にあることが好ましく、1.3以上1.7以下の範囲内にあることが特に好ましい。コネクタ30は、半導体チップ配列部50の近傍に配置されていることが好ましい。コネクタ30のハウジング部31と半導体チップ配列部50との最短距離は、例えば、0.1mm以上50mm以下の範囲内にあってもよく、好ましくは1mm以上30mm以下の範囲内にある。
なお、コネクタ30の配列方向における長さB(ハウジング部31の長手方向の長さ)は、支持部材33a、33b間の距離である。本実施形態においては、支持部材33a、33b間の距離とハウジング部31の長さは同じである。
【0030】
ハウジング部31の曲げ剛性は、金属基板21の曲げ剛性以上であることが好ましい。ハウジング部31の曲げ剛性に対する金属基板21の曲げ剛性の比は、2以上50以下の範囲内にあることが好ましく、3以上30以下の範囲内にあることがより好ましい。
コネクタ30としては、半導体モジュール用のコネクタとして利用されている市販のものを用いることができる。
【0031】
以上のような構成とされた本実施形態の半導体モジュール10によれば、金属ベース基板20の金属基板21の板厚が0.5mm以上1.2mm以下の範囲内にあるので、半導体チップ51a~51gの発熱による金属基板21の膨張・収縮による変形が抑えられる。このため、半導体チップ51a~51gの発熱による半導体チップ51a~51gの離脱や金属ベース基板20の変形が抑制される。また、半導体チップ配列部50とコネクタ30のハウジング部31とが、配列方向に沿って対向するように配置され、半導体チップ配列部50の配列方向における長さAに対するコネクタ30のハウジング部31の配列方向における長さBの比B/Aが1以上であるので、ねじ止め作業時での金属ベース基板の反りなどの変形も抑制される。
【0032】
本実施形態の半導体モジュール10において、コネクタ30のハウジング部31の曲げ剛性が金属基板21の曲げ剛性以上である場合は、コネクタ30によって金属ベース基板20が補強されて、金属ベース基板20が曲げにくくなるので、ねじ止め作業時での金属ベース基板の反りなどの変形もさらに抑制される。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態の半導体モジュール10において、半導体チップ配列部50に配列された半導体チップ51a~51gの数は7個とされているが、半導体チップ51a~51gの数に特に制限はない。ただし、半導体チップ配列部50に配列された半導体チップ51a~51gの数は3個以上であることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態の半導体モジュール10において、半導体チップ配列部50は1列とされているが、半導体チップ配列部50は複数列あってもよい。本実施形態の半導体モジュール10において、コネクタ30のハウジング部31は平面視で長方形の形状とされているが、半導体チップ配列部50の配列方向における長さAに対するハウジング部31の配列方向における長さBの比B/Aは1以上とされていれば、ハウジング部31の形状に制限はない。ハウジング部31の形状は、例えば、平面視で正方形の形状であってもよいし、丸や楕円など丸みを帯びた形状であってもよい。
【実施例0035】
[本発明例1]
(金属ベース基板の作製)
ポリイミドとNMP(N-メチル-2-ピロリドン)とを混合し、ポリイミドを溶解させることによって、ポリイミド濃度が10質量%のポリイミド溶液を調製した。また、α-アルミナ粉末(結晶構造:単結晶、平均粒子径:0.3μm)とNMPとを混合し、30分間超音波処理を行なうことによって、α-アルミナ粒子濃度が10質量%のα-アルミナ粒子分散液を調製した。
ポリイミド溶液とα-アルミナ粒子分散液とを、α-アルミナ濃度が60体積%となる割合で混合した。得られた混合物を、株式会社スギノマシン社製スターバーストを用い、圧力50MPaの高圧噴射処理を10回繰り返すことにより分散処理を行なって、α-アルミナ粒子分散ポリイミド溶液を調製した。なお、α-アルミナ濃度は、α-アルミナ粒子分散ポリイミド溶液を加熱して乾燥したときに生成する固形物中のα-アルミナ粒子の含有量である。
【0036】
板厚0.8mmで35mm×35mmの銅基板の表面に、α-アルミナ粒子分散ポリイミド溶液を、バーコート法により塗布して塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を形成した銅基板をホットプレート上に配置して、室温から3℃/分で60℃まで昇温し、60℃で100分間加熱した後、さらに1℃/分で120℃まで昇温し、120℃で100分間加熱して、塗布膜を乾燥させた。次いで、銅基板を250℃で1分間加熱した後、400℃で1分間加熱した。こうして、銅基板の表面に、α-アルミナ単結晶粒子が分散されたポリイミド樹脂からなる絶縁層が形成された絶縁層付き銅基板を作製した。なお絶縁層の膜厚は30μmとなるようにした。絶縁層の100℃における弾性率ER(単位:GPa)と熱伝導度CR(単位:W/mK)を測定し、TR/ERとTR/CRとを算出した結果、TR/ERは111で、TR/CRは15であった。
【0037】
得られた絶縁層付き金属基板の絶縁層の上に、厚み70μmの銅箔(T4X:福田金属箔粉工業(株)製)を重ね合わせて積層した。次いで、得られた積層体を、カーボン治具を用いて5MPaの圧力を付与しながら、真空中にて300℃の圧着温度で120分間加熱して、絶縁層と銅箔とを圧着した。こうして、銅基板と絶縁層と銅箔とがこの順で積層された金属ベース基板を作製した。
【0038】
(LEDモジュールの作製)
金属ベース基板の銅箔をエッチングしてパターンを作成して第1回路層と第2回路層を形成した。次いで、第1回路層と第2回路層の上に、半田レジストを塗布し、さらにその上に鉛フリー半田を100μm厚となるように塗布した。第1回路層に塗布した鉛フリー半田の上に7個のLED素子(Oslon compact)を、0.5mmの間隔を明けて、一方向に沿って配列された半導体チップ配列部(配列方向の長さA:20mm)を形成するように配置し、第2回路層に塗布した鉛フリー半田の上にコネクタ(型番SM08B1-CPTK-1A-TB、日本圧着端子製造株式会社製、長手方向の長さB:30mm)を、長手方向の面が半導体配列部と対向するように配置した。その後、リフローをして、LEDモジュールを作製した。なお、半導体チップ配列部を金属ベース基板の中央に配置し、コネクタと半導体チップ配列部との最短距離は3.3mmとした。
【0039】
[本発明例2~3、比較例1]
コネクタとして、長手方向の長さBが下記の表1に記載のサイズのものを用いたこと以外は、本発明例1と同様にしてLEDモジュールを作製した。
【0040】
[本発明例4]
銅基板として、板厚0.8mmで50mm×50mmのものを用いたこと以外は、本発明例1と同様にしてLEDモジュールを作製した。
【0041】
[本発明例5~7、比較例2~3]
銅基板として、板厚が下記の表1に記載のサイズのものを用いたこと以外は、本発明例1と同様にしてLEDモジュールを作製した。
【0042】
[本発明例8]
銅基板の代わりに、板厚1.0mmで35mm×35mmのアルミニウム基板を用いたこと以外は、本発明例1と同様にしてLEDモジュールを作製した。
【0043】
[評価]
本発明例1~8及び比較例1~3で得られたLEDモジュールの反りと、金属ベース基板の信頼性(耐クラック率)を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
(反り)
LEDモジュールを平面基板の上に配置して、室温にて隙間ゲージを用いて、基板とLEDモジュールの金属ベース基板との隙間の距離を測定した。隙間は、金属ベース基板の四つ角部について測定した。4つの角部で測定された隙間の最大値を反りとした。
【0045】
(信頼性)
上記LEDモジュール(試験体)に、1サイクルが-30℃×30分間~105℃×30分間の冷熱サイクルを3000サイクル付与した。冷熱サイクル付与後の試験体を、樹脂埋めし、断面を研磨によって出した試料を用いて観察し、はんだ層に生じたクラックの長さ(mm)を測定した。はんだ層の一辺の長さと、測定したクラックの長さとから下記式より耐クラック率を算出した。
耐クラック率(%)={(はんだ層の一辺の長さ(25mm)-2×クラックの長さ)/接合層の一辺の長さ(25mm)}×100
耐クラック率が80%以上であるものを信頼性が〇とし、耐クラック率が80%未満であるものを信頼性が×とした。
【0046】
【0047】
表1の結果から、金属基板の板厚と、半導体チップ配列部の配列方向における長さAに対するコネクタの長手方向の長さBの比B/Aが本発明の範囲内にある本発明例1~8は、反りが小さく、信頼性が良好であった。これに対して、B/Aが本発明の範囲よりも小さい比較例1は、反りが大きくなった。これは、コネクタによる金属ベース基板の補強が不十分で、LEDモジュール作製時のリフローによる加熱により銅基板が変形したためと考えられる。また、銅基板の板厚が本発明の範囲よりも薄い比較例2は、反りが大きくなった。これは、銅基板の板厚が薄くなりすぎて、コネクタでは金属ベース基板を十分に補強できず、LEDモジュール作製時のリフローによる加熱により銅基板が変形したためと考えられる。一方、銅基板の板厚が本発明の範囲よりも厚い比較例3は、信頼性が低下した。これは、銅基板の板厚が厚くなりすぎて、冷熱サイクルによる銅基板の変形量が大きくなり、はんだに付与される応力が大きくなったためであると考えられる。