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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064365
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】体位変換装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/057 20060101AFI20230501BHJP
   A61G 7/07 20060101ALI20230501BHJP
   A61G 7/12 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A61G7/057
A61G7/07
A61G7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174602
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】513195112
【氏名又は名称】株式会社昭和
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】黒木 保善
(72)【発明者】
【氏名】戸田 英樹
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA01
4C040AA04
4C040HH04
4C040JJ02
(57)【要約】
【課題】使用時にベッド周りの特定のスペースを占有してしまうことがなく、かつ、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることを可能にする体位変換装置を提供する。
【解決手段】体位変換装置1は、ベッド2の短手方向に亘って当該ベッド2を跨ぐように配置可能な装置本体部3と、装置本体部3に設けられ、ベッド2の短手方向に沿って往復スライド可能なスライド部材4と、ベッド2の上面に敷設配置可能な、柔軟性を有する略矩形状のシート部材5と、一端がシート部材5の四隅にそれぞれ連結され、他端がスライド部材4を介して装置本体部3に連結された4つの吊下げ部材6と、を備えている。そして、スライド部材4の往復スライド動作に同期して、シート部材5の、ベッド2の長手側の左右両端部のいずれかが、吊下げ部材6を介して内方斜め上方に引っ張られる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドの短手方向に亘って当該ベッドを跨ぐように配置可能な装置本体部と、
前記装置本体部に設けられ、前記ベッドの短手方向に沿って往復スライド可能なスライド部材と、
前記ベッドの上面に敷設配置可能な、柔軟性を有する略矩形状のシート部材と、
一端が前記シート部材の四隅にそれぞれ連結され、他端が前記スライド部材を介して前記装置本体部に連結された4つの吊下げ部材と、を備え、
前記スライド部材の往復スライド動作に同期して、前記シート部材の、前記ベッドの長手側の左右両端部のいずれかが、前記吊下げ部材を介して内方斜め上方に引っ張られることを特徴とする体位変換装置。
【請求項2】
前記4つの吊下げ部材の一端は、前記シート部材の四隅にそれぞれ着脱可能に連結される、請求項1に記載の体位変換装置。
【請求項3】
前記装置本体部は、キャスタ付きの門型構造体である、請求項1又は2に記載の体位変換装置。
【請求項4】
前記スライド部材の、前記ベッドの長手側の左右両端部のそれぞれの前後に、プーリがさらに設けられ、前記4つの吊下げ部材の他端側が、それぞれ、対応する前記プーリに掛けられた後、その他端が前記装置本体部の前記対応するプーリ側と同じ側の端部に連結された、請求項1~3のいずれか1項に記載の体位変換装置。
【請求項5】
前記スライド部材に固定されたナットと、前記スライド部材のスライド方向に延び、前記ナットに螺合するボールねじと、前記装置本体部に固設され、前記ボールねじに回転力を与える正逆回転モータと、をさらに備えた、請求項1~4のいずれか1項に記載の体位変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体位変換装置に関する。さらに詳細には、本発明は、介護施設の高齢の被介護人や寝たきりの入院患者の褥瘡(床ずれ)の発生を防止するために用いられる体位変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の体位変換装置としては、例えば、特許文献1,2等に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示された体位変換装置は、移動自在の台車と、該台車に設けられた支柱と、該支柱に設けられた片持梁と、該片持梁に設けられたアームと、を有し、該支柱及び該片持梁の少なくとも一方を水平方向回動自在にすることにより該片持梁を回動自在に設けるとともに、少なくとも1本の紐状体又は帯状体により当て片(敷布)の少なくとも一方の側を着脱自在にして連結可能に設け、該紐状体又は帯状体の該当て片に連結しない他端側を上記片持梁及び上記アームの少なくとも該アームを介して上記台車に導いて吊り持ちし、かつ、該台車に駆動部を設けて該他端側を往復動移動可能とすることにより上記紐状体又は帯状体をそれぞれ同時又は別々に上下動可能に設けたことを特徴としている。
かかる構成によれば、施設等におけるベッド間のスペースが狭い場合等被介護人の傍で操作できない体位変換装置をスペースの広い所で操作することが可能となる。
【0003】
また、特許文献2に開示された体位変換装置は、脚部を有する支柱をベッドの各短辺に接して1本ずつ立設し、上記2本の支柱の上端部を連結するガイドレールを渡設し、該ガイドレールに該ガイドレールを摺動する摺動部を装着し該摺動部の下にウィンチ機構を有する駆動部を固着し、該駆動部の底面に穿設された孔より該駆動部の上記機構により上下動する鋼索を吊設し、該鋼索の下端に水平方向に360°回動可能な2本のアームを一方のアームが他方のアームに対して水平方向に180°の角度をなすように装着し、上記2本のアームの先端に夫々フックを固着した体位変換用リフト装置と、
2本のパイプの間に布、皮革、軟質合成樹脂等の柔軟な素材よりなる略長方形状のシート部(敷布)が2箇所の短辺を上記2本のパイプに夫々繋着されて上記2本のパイプの間に装架され、上記2本のパイプの内側に上記2本のパイプの長さより長いロープが挿通され、該ロープの両端にループが形成された、上記体位変換用リフト装置のフックに掛着される補助具と、を備えたことを特徴としている。
かかる構成によれば、安価かつ省スペースで、普通の家庭や病院の大部屋にも設置することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-135868号公報
【特許文献2】特開2002-136556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された体位変換装置では、移動自在の台車が必須の構成要素となっており、該台車内に、一端が当て片に連結された紐状体又は帯状体の他端側を往復動移動させる駆動部が設けられているため、体位変換装置の使用時に台車がベッド周りのかなりのスペースを占有してしまい、他の作業の邪魔になるという課題があった。また、紐状体又は帯状体が上下動可能に設けられたものであるため、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることができないという課題があった。
また、特許文献2に開示された体位変換装置でも、シート部に連結される鋼索が上下動するものであるため、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることができないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究を重ね、その結果、使用時にベッド周りの特定のスペースを占有してしまうことがなく、かつ、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることを可能にする体位変換装置の構成に着想し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、使用時にベッド周りの特定のスペースを占有してしまうことがなく、かつ、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることを可能にする体位変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る体位変換装置の構成は、
(1)ベッドの短手方向に亘って当該ベッドを跨ぐように配置可能な装置本体部と、
前記装置本体部に設けられ、前記ベッドの短手方向に沿って往復スライド可能なスライド部材と、
前記ベッドの上面に敷設配置可能な、柔軟性を有する略矩形状のシート部材と、
一端が前記シート部材の四隅にそれぞれ連結され、他端が前記スライド部材を介して前記装置本体部に連結された4つの吊下げ部材と、を備え、
前記スライド部材の往復スライド動作に同期して、前記シート部材の、前記ベッドの長手側の左右両端部のいずれかが、前記吊下げ部材を介して内方斜め上方に引っ張られることを特徴とする。
【0009】
本発明の体位変換装置の上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、ベッドの短手方向に亘って当該ベッドを跨ぐように配置可能な装置本体部を備えている。そして、被介護人等の下に敷設配置され、当該被介護人等を右方向あるいは左方向に回動(寝返り)させるためのシート部材を動かすスライド部材、吊下げ部材等の他の部材が前記装置本体部に組み込まれているため、体位変換装置がその使用時にベッド周りの特定のスペースを占有してしまうことはない。その結果、体位変換装置がその使用時に他の作業の邪魔になるという課題を解決することができる。また、スライド部材の往復スライド動作に同期して、シート部材の、ベッドの長手側の左右両端部のいずれかが、吊下げ部材を介して内方斜め上方に引っ張られるように構成されているため、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることが可能となる。
このように、上記(1)の構成によれば、使用時にベッド周りの特定のスペースを占有してしまうことがなく、かつ、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることを可能にする体位変換装置を提供することができる。
【0010】
本発明の体位変換装置の上記(1)の構成においては、以下の(2)~(5)のような構成にすることが好ましい。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記4つの吊下げ部材の一端は、前記シート部材の四隅にそれぞれ着脱可能に連結される。
【0012】
上記(2)の好ましい構成によれば、例えば、被介護人等を右方向あるいは左方向に回動(寝返り)させる場合等、必要な場合にのみ、4つの吊下げ部材の一端をシート部材の四隅にそれぞれ連結することが可能となる。このため、4つの吊下げ部材が通常の介護作業等の邪魔になることはない。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記装置本体部は、キャスタ付きの門型構造体である。
【0014】
上記(3)の好ましい構成によれば、当該装置本体部を、簡単に移動させ、ベッドの短手方向に亘って当該ベッドを跨ぐように配置することができる。
【0015】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの構成において、前記スライド部材の、前記ベッドの長手側の左右両端部のそれぞれの前後に、プーリがさらに設けられ、前記4つの吊下げ部材の他端側が、それぞれ、対応する前記プーリに掛けられた後、その他端が前記装置本体部の前記対応するプーリ側と同じ側の端部に連結されている。
【0016】
上記(4)の好ましい構成によれば、スライド部材を右方向にスライドさせることにより、シート部材の前左隅と後左隅に連結される吊下げ部材を、対応するプーリを介して内方斜め上方に移動させ、シート部材の左端部を内方斜め上方に引っ張って、被介護人等を右方向に回動(寝返り)させることができる。また、スライド部材を左方向にスライドさせることにより、シート部材の前右隅と後右隅に連結される吊下げ部材を、対応するプーリを介して内方斜め上方に移動させ、シート部材の右端部を内方斜め上方に引っ張って、被介護人等を左方向に回動(寝返り)させることができる。
【0017】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの構成において、前記スライド部材に固定されたナットと、前記スライド部材のスライド方向に延び、前記ナットに螺合するボールねじと、前記装置本体部に固設され、前記ボールねじに回転力を与える正逆回転モータと、をさらに備えている。
【0018】
上記(5)の好ましい構成によれば、正逆回転モータを正回転又は逆回転させることにより、ボールねじとナットとの協働作用によってスライド部材を簡単に左右往復スライドさせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用時にベッド周りの特定のスペースを占有してしまうことがなく、かつ、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることを可能にする体位変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における体位変換装置を前方斜め下方から見た斜視図
図2】本発明の一実施形態における体位変換装置をベッド周りに設置した状態を、前方斜め下方から見た斜視図
図3】本発明の一実施形態における体位変換装置をベッド周りに設置した状態を、前方斜め上方から見た部分斜視図
図4】本発明の一実施形態における体位変換装置の使用状態を、後方斜め上方から見た斜視図
図5】本発明の一実施形態における体位変換装置の動作を説明するための模式図((a)は被介護人を右方向に回動(寝返り)させている状態、(b)は被介護人を左方向に回動(寝返り)させている状態)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
[体位変換装置の構成]
まず、本発明の一実施形態における体位変換装置の構成について、図1図3を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における体位変換装置を前方斜め下方から見た斜視図、図2は、当該体位変換装置をベッド周りに設置した状態を、前方斜め下方から見た斜視図、図3は、当該体位変換装置をベッド周りに設置した状態を、前方斜め上方から見た部分斜視図である。
【0024】
図1図3に示すように、本実施形態における体位変換装置1は、ベッド2の短手方向(左右方向)に亘って当該ベッド2を跨ぐように配置可能な装置本体部3と、当該装置本体部3に設けられ、ベッド2の短手方向に沿って往復スライド可能なスライド部材4と、ベッド2の上面に敷設配置可能な、柔軟性を有する略矩形状のシート部材(敷布)5と、一端が当該シート部材5の四隅にそれぞれ連結され、他端がスライド部材4を介して装置本体部3に連結された4つの吊下げ部材6と、を備えている。
そして、本実施形態の体位変換装置1においては、スライド部材4の往復スライド動作に同期して、シート部材5の、ベッド2の長手側の左右両端部のいずれかが、吊下げ部材6を介して内方斜め上方に引っ張られるように構成されている(図5を参照)。
【0025】
以下、4つの吊下げ部材6のうち、一端がシート部材5の前右隅,後右隅,前左隅,後左隅に連結される吊下げ部材6を、それぞれ、「吊下げ部材6a1」,「吊下げ部材6b1」,「吊下げ部材6a2」,「吊下げ部材6b2」ともいう。
【0026】
本実施形態の体位変換装置1のかかる構成は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、ベッド2の短手方向(左右方向)に亘って当該ベッド2を跨ぐように配置可能な装置本体部3を備えている。そして、被介護人等の下に敷設配置され、当該被介護人等を右方向あるいは左方向に回動(寝返り)させるためのシート部材5を動かすスライド部材4、吊下げ部材6等の他の部材が装置本体部3に組み込まれているため、体位変換装置1がその使用時にベッド2周りの特定のスペースを占有してしまうことはない。その結果、体位変換装置1がその使用時に他の作業の邪魔になるという課題を解決することができる。また、スライド部材4の往復スライド動作に同期して、シート部材5の、ベッド2の長手側の左右両端部のいずれかが、吊下げ部材6を介して内方斜め上方に引っ張られるように構成されているため、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることが可能となる。
このように、かかる構成によれば、使用時にベッド2周りの特定のスペースを占有してしまうことがなく、かつ、被介護人等を右方向あるいは左方向にうまく回動(寝返り)させることを可能にする体位変換装置1を提供することができる。
【0027】
以下、さらに詳細に説明する。
シート部材5の大きさは、例えば、約60~70cm×約50~60cmである。シート部材5の材料としては、例えば、2枚重ねのナイロンツイルメッシュ、旭化成株式会社製のフュージョン(登録商標 三次元立体編物)等を用いることができる。なお、シート部材5の形状を安定させるために、例えば、その左右両端縁部に合成樹脂製のパイプを縫い込むようにしてもよい。また、シート部材5の周縁部に、例えば、ナイロンオックス生地からなる縁テープを縫合するようにしてもよい。
【0028】
吊下げ部材6としては、例えば、ワイヤロープにスパイラルチューブを巻き付けたもの等を用いることができる。
【0029】
4つの吊下げ部材6の一端は、シート部材5の四隅にそれぞれ着脱可能に連結される。より具体的には、シート部材5の四隅に、それぞれ、フック5aが取り付けられており、4つの吊下げ部材6の一端には、それぞれ、フック5aを掛けるためのフック用掛止部材6cが取り付けられている(特に、図1を参照)。
かかる構成によれば、例えば、被介護人等を右方向あるいは左方向に回動(寝返り)させる場合等、必要な場合にのみ、4つの吊下げ部材6の一端をシート部材5の四隅にそれぞれ連結することが可能となる。このため、4つの吊下げ部材6が通常の介護作業等の邪魔になることはない。
【0030】
装置本体部3は、キャスタ付きの門型構造体である。
より具体的には、装置本体部3は、ベッド2の長手方向に略平行に配置される左右一対のキャスター付き脚部7,8と、当該脚部7,8のそれぞれに固着立設された縦長で直方体板状の支柱9,10と、当該支柱9,10の上端部に渡設された横長で略直方体板状のガイドレール部材11と、により構成されている。
かかる構成によれば、当該装置本体部3を、簡単に移動させて、ベッド2の短手方向(左右方向)に亘って当該ベッド2を跨ぐように配置することができる。
【0031】
なお、装置本体部3の枠材としては、軽量化のために、アルミフレームを使用することが好ましい。また、キャスタは、体位変換装置1が移動しないようにすることができる機構を備えることが好ましい。具体的には、キャスタは、例えば、セルフブレーキ機構等を備えるとよい。ここで、セルフブレーキ機構とは、上から荷重がかかることで自動的にキャスタにブレーキがかかる機構のことである。
【0032】
ガイドレール部材11の上面には、上記したスライド部材4が左右往復スライド可能に設けられている。スライド部材4は、左右方向に若干長く形成されており、その左右両端部には、前後に若干突出した状態で左右一対のプーリ取付け部材12,13が固着されている。プーリ取付け部材12の前後端には、それぞれ、プーリ12a,12bが取り付けられている。また、プーリ取付け部材13の前後端には、それぞれ、プーリ13a,13bが取り付けられている。
そして、4つの吊下げ部材6の他端側は、それぞれ、スライド部材4の対応するプーリ13a,13b,12a,12bに掛けられた後、その他端が装置本体部3の前記対応するプーリ13a,13b,12a,12b側と同じ側の端部に連結されている。より具体的には、一端がシート部材5の前右隅に連結される吊下げ部材6a1の他端側は、プーリ13aに掛けられた後、その他端がガイドレール部材11の前右部に連結されている。また、一端がシート部材5の後右隅に連結される吊下げ部材6b1の他端側は、プーリ13bに掛けられた後、その他端がガイドレール部材11の後右部に連結されている。また、一端がシート部材5の前左隅に連結される吊下げ部材6a2の他端側は、プーリ12aに掛けられた後、その他端がガイドレール部材11の前左部に連結されている。また、一端がシート部材5の後左隅に連結される吊下げ部材6b2の他端側は、プーリ12bに掛けられた後、その他端がガイドレール部材11の後左部に連結されている。
【0033】
かかる構成によれば、スライド部材4を右方向にスライドさせることにより(図5(a)の矢印イを参照)、吊下げ部材6a2,6b2を、プーリ12a,12bを介して内方斜め上方に移動させ(図5(a)の矢印ロを参照)、シート部材5の左端部を内方斜め上方に引っ張って、被介護人等を右方向に回動(寝返り)させることができる。また、スライド部材4を左方向にスライドさせることにより(図5(b)の矢印二を参照)、吊下げ部材6a1,6b1を、プーリ13a,13bを介して内方斜め上方に移動させ(図5(b)の矢印ホを参照)、シート部材5の右端部を内方斜め上方に引っ張って、被介護人等を左方向に回動(寝返り)させることができる。
【0034】
本実施形態の体位変換装置1は、スライド部材4の右側部に固定されたナット14と、スライド部材4のスライド方向(左右方向)に延び、ナット14に螺合するボールねじ15と、ガイドレール部材11上の右端部に固設され、ボールねじ15に回転力を与える正逆回転モータ16と、をさらに備えており、これらの部材によってスライド部材4のスライド機構が構成されている。ここで、正逆回転モータ16は、例えば、リモコン(図示せず)を用いて遠隔操作することが可能となっている。
かかる構成によれば、正逆回転モータ16を正回転又は逆回転させることにより、ボールねじ15とナット14との協働作用によってスライド部材4を簡単に左右往復スライドさせることができる。
【0035】
[体位変換装置の使用方法及び動作]
次に、本発明の一実施形態における体位変換装置の使用方法及び動作について、図4図5をも参照しながら説明する。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態における体位変換装置の使用状態を、後方斜め上方から見た斜視図、図5は、当該体位変換装置の動作を説明するための模式図((a)は被介護人を右方に回動(寝返り)させている状態、(b)は被介護人を左方に回動(寝返り)させている状態)である。
【0037】
最初、ベッド2の上面にシート部材5が敷設配置され、当該シート部材5の上に被介護人等(被介護人や入院患者)17が仰向けに寝た状態となっている。この場合、被介護人等17の腰部から太腿部あたりがシート部材5の上に位置するようにされている(以上、図4を参照)。
【0038】
被介護人等17は、寝たきりになると、持続的な圧迫等によって褥瘡(床ずれ)を発生することが多い。褥瘡(床ずれ)の発生を防止するためには、被介護人等17の体位を定期的に変換する(被介護人等17を回動(寝返り)させる)必要がある。
被介護人等17を回動(寝返り)させる場合には、まず、図4に示すように、体位変換装置1の装置本体部3を、ベッド2の短手方向(左右方向)に亘って当該ベッド2を跨ぐように配置する。この場合、被介護人等17の腰部から太腿部あたりの直上にガイドレール部材11が来るようにする。
ここで、装置本体部3は、キャスタ付きの門型構造体であり、キャスタは、セルフブレーキ機構を備えているため、装置本体部3を、簡単に移動させて、ベッド2の短手方向(左右方向)に亘って当該ベッド2を跨ぐように配置し、ガイドレール部材11が被介護人等17の腰部から太腿部あたりの直上に来る位置にしっかりと固定することができる。
【0039】
次いで、同じく図4に示すように、4つの吊下げ部材6の一端を、それぞれ、シート部材5の四隅に連結する。より具体的には、スライド部材4の前右部のプーリ13aに掛けられた吊下げ部材6a1の一端のフック用掛止部材6c(特に、図1を参照)を、シート部材5の前右隅のフック5a(特に、図1を参照)に掛ける。また、スライド部材4の後右部のプーリ13bに掛けられた吊下げ部材6b1の一端のフック用掛止部材6cを、シート部材5の後右隅のフック5aに掛ける。また、スライド部材4の前左部のプーリ12aに掛けられた吊下げ部材6a2の一端のフック用掛止部材6cを、シート部材5の前左隅のフック5aに掛ける。また、スライド部材4の後左部のプーリ12bに掛けられた吊下げ部材6b2の一端のフック用掛止部材6cを、シート部材5の後左隅のフック5aに掛ける。
以上により、被介護人等17を右方向あるいは左方向に回動(寝返り)させるための準備が完了する。
【0040】
被介護人等17を右方向に回動(寝返り)させる場合には、正逆回転モータ16を遠隔操作して正回転させることにより、ボールねじ15(図3図4を参照)に正方向の回転力を与える。すると、ボールねじ15とナット14との協働作用によってスライド部材4が右方向にスライドする(図5(a)の矢印イを参照)。そして、これにより、吊下げ部材6a2,6b2がプーリ12a,12bを介して内方斜め上方に移動し(図5(a)の矢印ロを参照)、シート部材5の左端部が内方斜め上方に引っ張られる。一方、吊下げ部材6a1,6b1は緩んだ状態となり(図5(a)の矢印ハを参照)、シート部材5の右端部が上方に引っ張られることはない。
以上により、被介護人等17を右方向に回動(寝返り)させることができる。
【0041】
被介護人等17を左方向に回動(寝返り)させる場合には、正逆回転モータ16を遠隔操作して逆回転させることにより、ボールねじ15(図3図4を参照)に逆方向の回転力を与える。すると、ボールねじ15とナット14との協働作用によってスライド部材4が左方向にスライドする(図5(b)の矢印二を参照)。そして、これにより、吊下げ部材6a1,6b1がプーリ13a,13bを介して内方斜め上方に移動し(図5(b)の矢印ホを参照)、シート部材5の右端部が内方斜め上方に引っ張られる。一方、吊下げ部材6a2,6b2は緩んだ状態となり(図5(b)の矢印ヘを参照)、シート部材5の左端部が上方に引っ張られることはない。
以上により、被介護人等17を左方向に回動(寝返り)させることができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、スライド部材4がガイドレール部材11の上面に設けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。スライド部材は、例えば、ガイドレール部材の下面に設けられていてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、4つの吊下げ部材6の他端側が、それぞれ、スライド部材4に設けられた対応するプーリ13a,13b,12a,12bに掛けられた後、その他端が装置本体部3の前記対応するプーリ13a,13b,12a,12b側と同じ側の端部に連結されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。吊下げ部材の他端は、スライド部材を介して装置本体部に連結されていればよい。例えば、スライド部材にプーリを設ける代わりに、スライド部材に吊下げ部材を通すための溝を設けるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、吊下げ部材6の他端がガイドレール部材11に連結されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。吊下げ部材6の他端は、例えば支柱9,10等の装置本体部3の他の構成部材に連結されていてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、スライド部材4のスライド機構が、スライド部材4に固定されたナット14と、スライド部材4のスライド方向(左右方向)に延び、ナット14に螺合するボールねじ15と、ガイドレール部材11上の左端部(装置本体部3)に固設され、ボールねじ15に回転力を与える正逆回転モータ16と、により構成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。スライド部材のスライド機構は、例えば、リニアアクチュエータ等を用いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 体位変換装置
2 ベッド
3 装置本体部
4 スライド部材
5 シート部材(敷布)
5a フック
6,6a1,6b1,6a2,6b2 吊下げ部材
6c フック用掛止部材
7,8 キャスター付き脚部
9,10 支柱
11 ガイドレール部材
12,13 プーリ取付け部材
12a,12b,13a,13b プーリ
14 ナット
15 ボールねじ
16 正逆回転モータ
17 被介護人等(被介護人や入院患者)
図1
図2
図3
図4
図5