(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006439
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】エレベーターのかご上運転システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230111BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109034
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友納 啓資
【テーマコード(参考)】
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA22
3F304BA24
3F304CA18
3F306AA02
3F306AA11
3F306CB02
3F306CB06
3F306CB60
(57)【要約】
【課題】エレベーターのかご上搭乗者数と、作業員が装着する安全器具のフックが取付られている数が一致する場合にのみ、かご上でのかご室の運転を許可するかご上運転システムを提供する。
【解決手段】エレベーターのかご上運転システム1は、エレベーターのかご室の運転を制御する制御盤10を有する。また、エレベーターのかご上運転システム1は、エレベーターのかご上に設置され、作業員が装着する安全器具30が備える安全フック31を取付け可能なフック取付装置20を備える。フック取付装置20は、安全フック31の取付けを検出する検出機構を有し、制御盤10は、秤装置70あるいはカメラ60によりかご上搭乗者数を検出する。制御盤10は、かご上搭乗者数と、安全フック31の取付け数が一致した場合に、かご上でのかご室の運転を許可する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかご室の運転を制御する制御盤と、
エレベーターのかご上に設置され、作業員が装着する安全器具が備える安全フックを取付け可能なフック取付装置と、
を有するエレベーターのかご上運転システムであって、
前記フック取付装置は、前記安全フックの取付けを検出する検出機構を有し、
前記制御盤は、かご上搭乗者数を検出する搭乗者数検出手段を有し、
前記制御盤は、前記搭乗者数検出手段が検出した前記かご上搭乗者数と、前記検出機構が検出した前記安全フックの取付け数が一致した場合に、かご上でのかご室の運転を許可する、
エレベーターのかご上運転システム。
【請求項2】
前記検出機構は、前記安全フックに連結された短絡コネクターと、この短絡コネクターが挿入可能なコネクターと、前記コネクターへの前記短絡コネクターの挿入を検出するフック取付確認装置とを有し、
前記コネクターは、前記フック取付装置に前記安全フックを取付けていない状態では、前記安全フックの重さにより、前記短絡コネクターの挿入を維持できず、
前記フック取付確認装置は、前記コネクターに前記短絡コネクターを挿入した状態で、前記コネクターが閉回路となることを検出して、前記安全フックが取付られたことを検出する、
請求項1に記載のエレベーターのかご上運転システム。
【請求項3】
前記搭乗者数検出手段は、秤装置で測定したかご室の総重量データの変化値に基づいて、前記かご上搭乗者数を検出する、
請求項1又は2に記載のエレベーターのかご上運転システム。
【請求項4】
前記搭乗者数検出手段は、カメラで撮影したかご上の映像を解析した結果に基づいて、前記かご上搭乗者数を検出する、
請求項1又は2に記載のエレベーターのかご上運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのかご上運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかご室上部での作業に際しては、作業員は安全器具を装着し、安全フックを掛け金等の支持物に固定して、安全を確認して作業を行っている。かご室上でのかご室の運転は、エレベーターの制御盤と連動しているかご上制御装置を介して行う。かご上制御装置が、安全フックの取付けを確認する機能を有していない場合、安全器具を装着していない状態でも、かご室の運転が可能となる。
【0003】
特許文献1には、安全フックが対象位置に検出されない場合に、エレベーターを運転停止状態とする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のエレベーターにおいては、安全フックの取付けを検出しているものの、実際のかご上への搭乗者数の確認は考慮されていないので、実際の安全器具の装着数とかご上搭乗者人数が一致しない場合でも、かご上運転が可能となるという課題がある。
【0006】
本開示の目的は、かご上搭乗者数と安全フックが取付られている数が一致する場合にのみ、かご上でのかご室の運転を許可するかご上運転システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベーターのかご上運転システムは、エレベーターのかご室の運転を制御する制御盤を有する。また、かご上運転システムは、エレベーターのかご上に設置され、作業員が装着する安全器具が備える安全フックを取付け可能なフック取付装置を有する。フック取付装置は、安全フックの取付けを検出する検出機構を有し、制御盤は、かご上搭乗者数を検出する搭乗者数検出手段を有する。制御盤は、搭乗者数検出手段が検出したかご上搭乗者数と、検出機構が検出した安全フックの取付け数が一致した場合に、かご上でのかご室の運転を許可することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るエレベーターのかご上運転システムは、かご上搭乗者数と安全フックの取付検出数とが一致した場合にのみ、かご上運転を許可するようにしたので、作業員が安全フックを掛け忘れた状態で、かご室を運転することが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のかご上運転システムの構成図である。
【
図2】秤装置のかご総重量の変化によるかご上搭乗者数の検出を説明する図である。
【
図3】実施形態のかご上運転システムのフック取付装置の構成を示す図である。
【
図4】フック取付装置が備える安全フックの取付け検出機構の構成例を示す図である。
【
図5】実施形態のかご上運転システムにおけるかご上へ乗り込むときの様子を示す図である。
【
図6】実施形態のかご上運転システムを使用して、かご上での点検作業を行うまでの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。また、以下で説明する実施形態および変形例の構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0011】
(かご上運転システム)
図1に本実施形態のかご上運転システム1の構成図を示す。かご上運転システム1は、エレベーターの各機器を制御する制御盤10と、かご上に設置されたフック取付装置20と、かご上でのかご室の運転操作するためのかご上制御装置40及びかご上運転装置50と、かご上の様子を撮影するためのカメラ60と、かご室の総重量を計測するための秤装置70及びかご室を昇降させるための巻上機80を有する。
【0012】
制御盤10は、エレベーターのかご室の速度や運行管理、扉の開閉等、様々の制御を行う装置であり、機械室或いは昇降路内に設置されている。制御盤10は、演算装置11及び映像処理装置12を有している。制御盤10は、演算装置11で演算した結果を送信して各機器の動作を制御する。制御盤10は、かご上制御装置40及びかご上運転装置50から、かご室の運転操作信号を受信し、受信した操作信号と運転許可の判断結果に基づいて、かご室の運転を制御する。更に制御盤10は、演算装置11及び映像処理装置12を使用した、かご上搭乗者数を検出する搭乗者検出手段を有している。
【0013】
演算装置11は、秤装置70からかご室の総重量データを受信し、かご室の総重量データの変化値に基づいて、かご上搭乗者数N1を検出する。更に、後述する映像処理装置12から受信したかご上搭乗者数N2とに基づいて、かご上搭乗者数Nを検出する機能とを有する。
【0014】
映像処理装置12は、カメラ60からかご上の映像を受信し、かご上の映像を解析して、かご上搭乗者数N2を検出し、かご上搭乗者数N2の値を、演算装置11に送る。
【0015】
フック取付装置20は、かご上の作業者が装着する安全器具30の安全フック31を取付けるための装置である。本実施形態のフック取付装置20は、かご上の躯体28(
図5参照)に固定される固定部21と、固定部21に収納可能で、安全フック31を掛けるための掛け金22と、掛け金22取付けられたコネクター25を有している。後述するように、コネクター25は、安全フック31に連結した短絡コネクター33と共に、安全フック31の取付け検出機構を構成し、フック取付確認装置27によって、安全フック31の取付け数を検出する。
【0016】
かご上制御装置40は、かご上でかご室の運転モードを設定するための装置である。かご上制御装置40は、複数の運転スイッチ群41を有する。運転スイッチ群41は、運転スイッチ41a、自動スイッチ41b、ドアスイッチ41cから構成されている。
【0017】
運転スイッチ41aは、かご室の運転と休止を切り替えるスイッチである。
【0018】
自動スイッチ41bは、かご室の自動運転と手動運転を切り替えるスイッチである。自動運転は、通常の全自動運転である。手動運転では、作業者がかご上運転装置50のUP/DNボタンの操作によって運転することが可能である。
【0019】
ドアスイッチ41cは、かご室のドアの開閉ONと開閉OFFを選択するスイッチである。
【0020】
かご上運転装置50は、かご室を昇降操作するためのUP(上昇)ボタンとDN(下降)ボタンを有している。かご上運転装置50は、かご上制御装置40と信号線で接続され、かご室の操作信号を送る。かご上運転装置50は、UPボタン又はDNボタンが押されている間だけ、かご上制御装置40に操作信号を送るように構成されている。かご上制御装置40は、かご上運転装置50から受信した操作信号を制御盤10に送り、制御盤10は、運転許可の状態であれば、操作信号に基づいてかご室を昇降させる。
【0021】
かご上においてかご室の運転を行う場合には、手動運転モード(運転スイッチ41a=運転、自動スイッチ41b=手動運転、ドアスイッチ41c=開閉OFF)として、かご上運転装置50のUPボタン又はDNボタンによって行う。後述するように、手動運転モードにおいて、かご上搭乗者数Nとフック取付け数Mとが一致する場合にのみ、制御盤10は運転許可と判断し、かご上運転装置50の操作によって、かご室の運転操作が可能となる。
【0022】
かご上で点検作業を行う場合は、停止モード(運転スイッチ41a=停止、自動スイッチ41b=手動運転、ドアスイッチ41c=開閉OFF)にして、かご室を停止して行う。
【0023】
秤装置70は、通常運転時に使用されるかご重量を計測するための秤装置を流用することができる。かご室の総重量データは、制御盤10の演算装置11に送信され、既に述べたように、演算装置11は、秤装置70から受信したかご室の総重量データの変化値に基づいて、かご上搭乗者数N1を検出する。
【0024】
巻上機80には、主ロープ81を介してかご室が吊り下げられている。巻上機80は、制御盤10からの信号によって、かご室の昇降を行う。主ロープ61の末端は、秤装置70に繋がっている。
【0025】
(かご上搭乗者数Nの検出)
次に、かご上搭乗者数Nの検出について説明する。本実施形態のかご上運転システム1は、複数の搭乗者数検出手段を有している。各搭乗者検出手段は、それぞれ単独でかご上搭乗者数Nを検出可能であるが、複数の搭乗者数検出手段の検出値に基づいて、総合的にかご上搭乗者数Nを検出することもできる。本実施形態のかご上運転システム1は、複数の搭乗者数検出手段を備えることによって、1つだけの場合に比べて、精度の高い検出を実現することができる。
【0026】
(かご室の総重量データに基づくかご上搭乗者数N1の検出)
本実施形態のかご上運転システム1は、複数の搭乗者数検出手段の1つとして、かご室の総重量データに基づいて検出する手段を有している。具体的には、演算装置11は、かご室の総重量データの変化値を所定値Wと比較して、所定値W以上の変化があったとき、かごに人が乗ったことを検出する。かご室の総重量データの変化値が、所定値W未満の場合は、人ではなく、荷物などの搭載と判断する。
【0027】
演算装置11は、かご室の総重量データをモニタしており、かご室の総重量データに所定値以上の変化がある毎にかご上搭乗者数N1を検出するように構成されている。
【0028】
図2によって、更に具体例で説明する。横軸は時間、縦軸は秤装置70の検出値を示し、時間を空けて二名の作業員がかご上に乗り込み、二名の搭乗の間に荷物の積み込みを行った場合を示している。
【0029】
まず、時間taにおいて、作業員がかご室上に乗り込む。このとき、演算装置11は、かご室の総重量データの変化値aを検出する。変化値aは所定値Wを超えているので、演算装置11は、かご上搭乗者数1名を検出する。
【0030】
次に、時間tbにおいて、作業員が荷物を積み込む。このとき、演算装置11は、かご室の総重量データの変化値bを検出する。変化値bは、所定値W未満であるので、演算装置11は、人ではないことを検出し、かご上搭乗者数の検出は1名を維持する。
【0031】
次に、時間tcにおいて、別の作業員がかご室上に乗り込む。このとき、演算装置11は、かご室の総重量データの変化値cを検出する。変化値cは所定値Wを超えているので、演算装置11は、更に1名の搭乗を検出し、合計かご上搭乗者数2名を検出する。
【0032】
以上説明したように、かご室の総重量データの変化値によって、かご上搭乗者数は検出可能である。しかし稀に誤って検出する可能性がある。例えば、作業員が二人同時にかごに乗り込んだ場合、かご上搭乗者数を1名と検出する可能性がある。作業員2名に相当する変化に対応する閾値を設定して、その値と比較することによって、同時に二人が乗り込んだことを検出することも考えられるが、人の体重のバラツキ範囲が大きく、閾値の設定は困難である。本実施形態の、かご上運転システム1は、かご室の総重量データの変化値に基づくかご上搭乗者数の検出値と、次に説明する映像によるかご上搭乗者数検出結果と総合して判断することで、正確なかご上搭乗者数を検出することができる。
【0033】
(カメラ映像によるかご上搭乗者数の検出)
本実施形態のかご上運転システム1は、更にカメラ60でかご上の状況を撮影し、その映像を映像処理装置12で解析することによって、かご上搭乗者数N2を検出している。映像による人の存在の解析手法については、一般的な技術であるので、説明は省略する。
【0034】
カメラ60による映像は、赤外映像と可視光映像を取得することが好ましい。赤外映像は、かご上の状況が暗い場合に有効である。可視光映像は、昇降路内が暑い場合や寒い場合で、赤外映像で人を検出し難い場合に有効である。
【0035】
映像処理装置12は、検出したかご上搭乗者数N2を、演算装置11に送信する。演算装置11は、かご室の総重量データの変化値に基づくかご上搭乗者数N1と、映像処理装置12から受信したかご上搭乗者数N2とに基づいて、かご上搭乗者数Nを総合的に判断する。上述した、作業員2名が同時に乗り込んだ場合、かご室の総重量データの変化値の大きさによって、演算装置11は、かご上搭乗者数の増加を1名乃至は2名と検出するようにする。かご室の総重量データに基づくかご上搭乗者数と、映像処理装置12が検出したかご上搭乗者数とが、一致する数を、かご上搭乗者数と検出することができる。
【0036】
尚、カメラ映像によるかご上搭乗者数検出手段は、一例であり、他の搭乗者検出手段を設け、総合的にかご上搭乗者数を検出することができる。また他の方法として、かご上制御装置40等に検出したかご上搭乗者数を表示するようにして、作業員が手動で訂正できるように構成してもよい。
【0037】
(フック取付装置)
図3にフック取付装置20の構成を示す。
図3(a)は、正面図であり、
図3(b)は、左側面図である。
図3(b)においては、安全器具30の安全フック31を掛け金22に掛けた様子を示している。
【0038】
フック取付装置20は、かご上に設置された躯体28に固定される固定部21と、固定部21に収納される掛け金22、丸棒23、掛け金受24を有している。
【0039】
固定部21は、厚い金属の板を曲げて形成される。固定部21の背板21aは、固定ボルト29aと固定ナット29bによって、躯体28に強固に固定されている。固定部21の2つの側板21bには、丸棒23が貫通し、固定されている。側板21bの一方には、丸棒23の軸方向と平行に突き出した掛け金受24が設けられている。掛け金受24は、掛け金22の使用状態において、掛け金22を載置して水平状態に保つために使用される。尚、
図3の掛け金受24は、平板で形成された例を示しているが、掛け金22を安定して載置するために、掛け金受24の端部を上方に曲げて形成してもよい。或いは、掛け金受24の中央部に溝を形成し、掛け金22が溝に嵌るように形成してもよい。
【0040】
掛け金22は、厚い金属の板で先端側に安全フック31を掛けるための引掛け孔22aが形成されている。掛け金22の他端側には、丸棒23が貫通する孔が形成され、丸棒23の軸回りに、
図3(b)のAの方向に回動可能に構成されている。掛け金22は、使用しないときは、破線に示されるように、固定部21内に収納されている。掛け金22は、安全フック31を掛けるときには、
図3(a)のBの方向に丸棒23の軸に沿って移動させて、掛け金受24の上に載置して水平状態で使用される。
【0041】
フック取付装置20は、更に掛け金22に取付けられたコネクター25とコネクター25から延びる検出線26を有しており、安全フック31と連結した短絡コネクター33と共に、安全フック31の取付け検出機構を構成している。
【0042】
コネクター25は、開回路を構成しており、安全器具30の安全フック31に連結紐34で連結された短絡コネクター33を挿入することで閉回路となる。フック取付確認装置27は、検出線26を介して、コネクター25が閉回路となることを検出して、安全器具30の安全フック31の取付けを検出できるようになっている。
【0043】
コネクター25の短絡コネクター33の挿入口は、掛け金22が掛け金受24に載置された状態において、鉛直下向きになるように配置されている。コネクター25は、ロック機構を有しておらず、挿入口を鉛直下向きにした状態で、短絡コネクター33を挿入した場合、安全フック31の重みで短絡コネクター33が外れるようになっている。即ち、安全フック31を掛け金22に掛けた状態でないと、コネクター25へ短絡コネクター33の挿入が維持できないように構成されている。フック取付確認装置27でコネクター25の閉回路を検出することで、安全フック31が掛け金22に取付られていることを検出することができる。
【0044】
本実施形態のかご上運転システム1において、フック取付装置20は、複数設置される。従って、複数の安全フック31の取付けが検出可能である。フック取付確認装置27は、複数のフック取付装置20の検出線26が接続され、それぞれの検出線26が接続されるコネクター25の閉回路状態を検出し、閉回路となったコネクター25の数を安全器具30の安全フック31が取付けられた数として検出することが可能である。
【0045】
(安全フックの取付け検出機構の構成例)
図4に安全フックの取付け検出機構の構成例を示す。コネクター25は、樹脂製の略角型の箱形状をしている。コネクター25は、一端に金属製の2つのメス端子25a、25bが収容され、短絡コネクター33を挿入可能な挿入口を有し、他端から2つのメス端子25a、25bと接続された検出線26が伸びている。2つのメス端子25a、25bは、電気的に接続されておらず、即ちコネクター25は開回路を構成している。コネクター25の2つのメス端子25a、25bに接続された検出線26は、フック取付確認装置27に電気的に接続されている。
【0046】
短絡コネクター33は2つのオス端子33a、33bを有しており、2つのオス端子33a、33bは内部で電気的に接続されている。2つのオス端子33a、33bは、コネクター25の挿入口から挿入して、メス端子25a、25bと嵌合するように形成されている。従って、オス端子33a、33bとメス端子25a、25bとが接触することで、2つのメス端子25a、25bは、電気的に接続状態(閉回路)となる。フック取付確認装置27は、検出線26によって、メス端子25a、25bが閉回路となったことを検出することができる。尚、コネクター25と短絡コネクター33の構成は、
図4の構成に限らず、一般的な技術であり様々な構成で実現可能である。
【0047】
上記のコネクター25が、複数のフック取付装置20のそれぞれに備えられ、複数のコネクター25への短絡コネクター33の挿入を検出可能に構成されている。
【0048】
次に、本実施形態のかご上運転システム1によって、かご上点検を行う場合について説明する。
図5は、かご上の様子を示している。
【0049】
図5に示すように、かご上に搭乗するときは、かご室101を下げて、かご上の天面と乗場200の床を同レベルに合わせてから乗り込む。かご上には、手すり103、躯体28、かご上制御装置40、かご上運転装置50が設置されている。躯体28は、かご上に強固に取付けられている。以上の構成は、通常のエレベーターにおいても備えられている装置である。
【0050】
本実施形態のかご上運転システム1においては、かご上には、更にフック取付装置20A、20Bとカメラ60が設置されている。尚、
図5では、フック取付装置20A、20Bは、2つ図示しているがこれに限らない。カメラ60は、躯体28の上部で、かご上の状況を撮影できるように設置されている。秤装置70は、かご上には無く、昇降路内に設置されている。
【0051】
次に、本実施形態のかご上運転システム1を使用して、複数の作業者が、かご上での点検作業を行う場合の一例のシーケンスについて説明する。
【0052】
図6は、2名の作業者が、順番に乗り込んだときの、制御盤10乃至は演算装置11、かご上制御装置40、フック取付確認装置27の動作シーケンスを示している。
【0053】
タイミングT1:作業者Aがかご上に搭乗する。演算装置11によって、秤装置70のかご室の総重量データの変化値を確認する。演算装置11は、変化値が所定値W以上であることを確認するので、かご上に搭乗者が1名乗車したことを検出する。
【0054】
タイミングT2:作業者Aは、フック取付装置20Aの掛け金22Aに、安全器具30Aの安全フック31Aを取付ける。その後に、作業者Aは、短絡コネクター33Aをコネクター25Aに挿入する。フック取付確認装置27は、当該コネクター25Aが、閉回路となったことを検出して、1名分の安全フックが取付けられたことを検出する。
【0055】
タイミングT3:作業者Aは、かご上に荷物を搭載する。演算装置11は、秤装置70のかご室の総重量データの変化値を確認する。演算装置11は、変化値が所定値W未満であることを確認するので、人ではなく荷物が搭載したと判断して、かご上搭乗者数は1名を維持する。
【0056】
タイミングT4:作業者Bがかご上に搭乗する。演算装置11は、秤装置70のかご室の総重量データの変化値を確認する。演算装置11は、変化値が所定値W以上であることを確認するので、かご上に搭乗者がもう1名乗車したことを検出し、かご上搭乗者数を2名と検出する。
【0057】
タイミングT5:作業者Bは、フック取付装置20Bの掛け金22Bに、安全器具30Bの安全フック31Bを取付ける。その後に、作業者Bは、短絡コネクター33Bをコネクター25Bに挿入する。フック取付確認装置27は、当該コネクター25Bが、閉回路となったことを検出して、合計2名分の安全フックが取付けられたことを検出する。
【0058】
タイミングT6:作業者Aが、作業場所までかご室を動かすために、かご上制御装置40の運転スイッチ群41を手動運転モードに設定する。手動運転モードが、かご上制御装置40を経由して、制御盤10に送られる。
【0059】
制御盤10は、手動運転モードを受信すると、運転前の確認として、かご上の状況を確認する。制御盤10は、演算装置11に映像処理装置12の映像解析結果に基づくかご上搭乗者数N2を入力し、秤装置70のかご室の総重量データの変化値の検出結果に基づくかご上搭乗者数N1とに基づいて、かご上搭乗者数Nを判断する。
図6の例では、N=2である。制御盤10は、演算装置11から、かご上搭乗者数Nのデータをかご上制御装置40に送信する。
【0060】
かご上制御装置40は、演算装置11からかご上搭乗者数Nを受信し、フック取付確認装置27からフック取付け数Mを受信する。
図6の例では、M=2である。かご上搭乗者数Nとフック取付け数Mとが一致するので、運転可能と判断し、制御盤10に伝送する。制御盤10は、運転を許可状態とする。
【0061】
タイミングT7:作業者Aが、かご上運転装置50のUPボタン又はDNボタンを押して、かご室を動かす方向の操作信号をかご上制御装置40に送る。かご上制御装置40は、受信した操作信号を制御盤10に送信し、制御盤10は、運転許可の判断に基づいて、運転方向に従って、巻上機80を制御して、かご室を動かす。UPボタン又はDNボタンを押している間、かご室は操作方向に動く。
【0062】
タイミングT8:かご室が所定の場所に到着したら、かご室を停止させて、運転スイッチ群41を停止モードにして、かご上で作業を行う。
【0063】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1 かご上運転システム、10 制御盤、11 演算装置、12 映像処理装置、20 フック取付装置、21 固定部、21a 背板、21b 側板、22 掛け金、22a 引掛け孔、23 丸棒、24 掛け金受、25 コネクター、26 検出線、27 フック取付確認装置、28 躯体、29a 固定ボルト、29b 固定ナット、30 安全器具、31 安全フック、33 短絡コネクター、34 連結紐、40 かご上制御装置、41 運転スイッチ群、50 かご上運転装置、60 カメラ、70 秤装置、80 巻上機、81 主ロープ、101 かご室、103 手すり、200 乗場