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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000644
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】耐火被覆梁
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
E04B1/94 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101588
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】金森 誠治
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA12
2E001HA03
2E001HA21
2E001LA01
(57)【要約】
【課題】耐火被覆梁の施工後に、木製梁の状態を目視検査するための作業を簡単に行える構成を備えた耐火被覆梁を提供する。
【解決手段】本発明に係る耐火被覆梁1は、柱10に接合された木製梁2と、当該木製梁2の表面3を覆う耐火被覆4とを備えた耐火被覆梁1において、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41が、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42とは分離した状態で、木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けられたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱に接合された木製梁と、当該木製梁の表面を覆う耐火被覆とを備えた耐火被覆梁において、
木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆が、木製梁の梁端部以外の表面を覆う耐火被覆とは分離した状態で、木製梁の梁端部に着脱可能に取付けられたことを特徴とする耐火被覆梁。
【請求項2】
耐火被覆は、耐火性能を有した板材により構成され、
木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆は、木製梁の梁端部、木製梁の梁端部以外の表面を覆う耐火被覆、柱側には接着されておらず、かつ、ねじ状固定部材により木製梁の梁端部に着脱可能に取付けられたことを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆梁。
【請求項3】
ねじ状固定部材が金属製のねじ状固定部材であり、
耐火被覆の外面に露出する金属製のねじ状固定部材の露出部を覆う熱橋防止手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の耐火被覆梁。
【請求項4】
耐火被覆は、耐火性能を有した板材が積層された積層体により構成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の耐火被覆梁。
【請求項5】
木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆は、柱の表面を被覆した耐火被覆材により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱に接合された木製梁の表面が耐火被覆で覆われて構成された耐火被覆梁に関する。
【背景技術】
【0002】
柱に接合されて荷重を支持する荷重支持部としての木製梁と、当該木製梁の表面を覆うように設けられた耐火被覆としての燃え止まり層及び燃え代層とを備えた耐火被覆梁が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6126832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような、柱に接合された耐火被覆梁の施工後に、例えば地震後の状況確認等において、木製梁の状態を目視検査したい場合があるが、当該木製梁の状態を目視検査するには、耐火被覆を除去して木製梁の表面を露出させる必要がある。
しかしながら、上述した従来の耐火被覆梁においては、燃え止まり層が荷重支持部としての木製梁に接着剤等で接合されており、かつ、燃え代層が燃え止まり層に接着剤等で接合されているため、耐火被覆を除去して木製梁の表面を露出させる作業が困難である。
また、木製梁の状態を目視検査した後、再び、木製梁の表面を新たな耐火被覆で覆う必要があるため、新たな耐火被覆の施工コストもかかる。
即ち、従来の耐火被覆梁においては、耐火被覆梁の施工後に、木製梁の状態を目視検査するための作業を簡単に行えないという課題があった。
本発明は、上述した課題に鑑みて、耐火被覆梁の施工後に、木製梁の状態を目視検査するための作業を簡単に行える構成を備えた耐火被覆梁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る耐火被覆梁は、柱に接合された木製梁と、当該木製梁の表面を覆う耐火被覆とを備えた耐火被覆梁において、木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆が、木製梁の梁端部以外の表面を覆う耐火被覆とは分離した状態で、木製梁の梁端部に着脱可能に取付けられたことを特徴とするので、耐火被覆梁の施工後に、木製梁の状態を目視検査するための作業を簡単に行える。また、木製梁の梁端部以外の表面に対する耐火被覆の施工と、接合部材や接合手段等の部材が入り組んだ複雑な構造部分となりやすい木製梁の梁端部の表面に対する耐火被覆の施工と、を分けて行うことが可能となるため、複雑な構造部分となりやすい木製梁の表面を覆う耐火被覆の施工を、簡単かつ正確に行えるようになる。
また、耐火被覆は、耐火性能を有した板材により構成され、木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆は、木製梁の梁端部、木製梁の梁端部以外の表面を覆う耐火被覆、柱側には接着されておらず、かつ、ねじ状固定部材により木製梁の梁端部に着脱可能に取付けられたことを特徴とするので、耐火被覆梁の施工後に、ねじ状固定部材を外すだけで、木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆を、木製梁の梁端部の表面から簡単を取り外すことができて木製梁の梁端部の表面を露出させることができ、木製梁の状態を目視検査できる。また、木製梁の梁端部の表面から取り外した耐火被覆を、木製梁の状態を目視検査した後に、再び、ねじ状固定部材を用いて木製梁の梁端部に簡単に取付けることができる。即ち、耐火被覆梁の施工後に、木製梁の状態を目視検査するための作業を簡単に行えるようになる。
また、ねじ状固定部材が金属製のねじ状固定部材であり、耐火被覆の外面に露出する金属製のねじ状固定部材の露出部を覆う熱橋防止手段を備えたので、熱が金属製のねじ状固定部材を介して木製梁に伝達される熱橋現象を防止できて、耐火被覆梁の耐火性能をより向上できる。
また、耐火被覆は、耐火性能を有した板材が積層された積層体により構成されたので、耐火被覆梁の耐火性能をより向上できる。
また、木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆は、柱の表面を被覆した耐火被覆材により構成されたので、木製梁の梁端部の表面に対する耐火被覆の着脱作業をより簡単に行うことができるようになり、耐火被覆梁の施工後に、木製梁の状態を目視検査するための作業をより簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】柱に接合された耐火被覆梁の横断面図(実施形態1)。
図2】柱に接合された耐火被覆梁の分解斜視図(実施形態1)。
図3】柱に接合された耐火被覆梁の横断面図(実施形態2,3)。
図4】柱に接合された耐火被覆梁の横断面図(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1図2に示すように、実施形態1に係る耐火被覆梁1は、柱10に接合された木製梁2と、当該木製梁2の表面3を覆うように設けられた耐火被覆4とを備え、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41が、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42とは分離した状態となっていて、木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けられた構成となっている。
【0008】
木製梁2は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された梁である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0009】
柱10は、例えば鉄骨柱等の金属製柱、又は、鉄筋コンクリート柱、又は、木製柱である。
柱10の一側面10a側と木製梁2の梁端部21とが図外の接合部材を介して接合されることにより、柱10と木製梁2とが接合される。
柱10が金属製柱の場合には、例えば、金属製柱の一側面から突出するように設けられた接合部材としてのガセットプレートを、木製梁2の梁端面に開口するように形成された溝に挿入して、当該接合部材と木製梁2の梁端部21とをドリフトピンなどの接合手段を用いて接合することにより、柱10と木製梁2とが接合される。
柱10が鉄筋コンクリート柱の場合には、例えば、木製梁2の梁端面から接合部材としてのアンカー筋を突出させておき、鉄筋コンクリート柱を形成するための型枠内に設けた配筋と当該アンカー筋とを組付けた後に、型枠内にコンクリートを打設して鉄筋コンクリート柱を構築することにより、柱10と木製梁2とが接合される。
柱10が木製柱の場合には、例えば、接合部材としての接合金具を用いて、柱10と木製梁2とが接合される。
【0010】
耐火被覆4は、木製梁2の表面3、即ち、木製梁2の両方の側面(梁側面)、木製梁2の下面(梁下面)を覆うように設けられる。尚、木製梁2の上面(梁上面)には、図外の床が設けられる。
当該耐火被覆4は、耐火性能を有した板材、即ち、石こうボード、ケイ酸カルシウム板、火山性ガラス質複層板などの耐火板45により構成され、好ましくは、複数の耐火板45,45…を積層した積層体で構成されることにより、耐火性能をより向上できる。
尚、図1,2では、3枚の耐火板45,45,45を積層した積層体により構成された耐火被覆4を例示しているが、耐火被覆4は、必ずしも3層構造である必要はなく、2層構造、多層構造の積層体により構成されていてもかまわない。
また、耐火被覆4が、複数枚の耐火板45を積層した積層体により構成される場合には、各層を形成する耐火板の種類は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、耐火被覆4は、必ずしも積層体により構成される必要はなく、耐火性能を有した板材、即ち、1層以上の耐火板45により構成されていればよい。
【0011】
尚、耐火被覆4が、複数枚の耐火板45を積層した積層体により構成される場合、各層において互いに隣り合う耐火板45,45の端面同士の突き合せ部である目地の位置が、木製梁2の表面3に沿った方向にずれるように構成されている。
即ち、積層体の積層方向において積層体の各層の目地が一致しないように、各層の目地が、木製梁2の表面3に沿った方向に互いにずれるように構成され、耐火被覆4の外面から木製梁2の表面3まで目地が一直線状に連続しないように、耐火被覆4が構成されている。このため、火災時において、目地が拡がって、当該拡がった目地を火炎が通過しても下層の耐火板45に遮断されるので、耐火性能が向上する。
【0012】
実施形態1においては、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火板45の積層体により構成された耐火被覆42は、例えば、まず、木製梁2の梁端部21以外の表面32と当該表面32に対向する最下層の耐火板45の板面とが接着剤で接着されるとともに、当該最下層の耐火板45が例えば図外のビスなどのねじ状固定部材により木製梁2に取付けられる。次に、最下層の耐火板45の板面と最下層の上の層の耐火板45の板面とが接着剤で接着されるとともに、当該上の層の耐火板45がねじ状固定部材により木製梁2に取付けられる。以下、同様に、下層の耐火板45の板面と上層の耐火板45の板面とが接着剤で接着されるとともに、当該上層の耐火板45がねじ状固定部材により木製梁2に取付けられることにより、所望の層分の積層体により構成された耐火被覆42が木製梁2に取付けられた構成となっている。このため、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42は、ねじ状固定部材を外したとしても、接着剤によって木製梁2の梁端部21以外の表面32に接着されているため、木製梁2の梁端部21以外の表面32から簡単には取れないようになっている。
【0013】
一方、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火板45の積層体により構成された耐火被覆41は、木製梁2の梁端部21の表面31、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42、柱10側には接着されておらず、当該積層体により構成された耐火被覆41は、例えばビスなどのねじ状固定部材11により、木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けられた構成となっている。
尚、柱10側の意味は、例えば、柱10が木製柱であって、当該木製柱の表面を覆う耐火板による耐火被覆が先行して施工される場合には、当該柱10の一側面10aを被覆する耐火被覆の面を含むことを意味するものである。
また、積層体により構成された耐火被覆41を形成する各耐火板45,…の板面同士は、接着剤により接着された構成としてもよいし、接着剤により接着されていない構成としてもよい。
【0014】
つまり、実施形態1では、耐火被覆41と耐火被覆42との境界面は、各層において互いに突き合わされる耐火被覆41を構成する耐火板45の端面と耐火被覆42を構成する耐火板45の端面、及び、積層される耐火被覆42を構成する耐火板45の板面と耐火被覆41を構成する耐火板45の板面により形成され、当該耐火被覆41と耐火被覆42との境界面同士が、接着剤により接着されていない。
換言すれば、実施形態1では、耐火被覆41と耐火被覆42との境界面は、耐火板45,…の積層方向及び木製梁2の梁の延長方向に沿って段差の付いた段差面に形成され、当該段差面同士が、接着剤により接着されていない。
また、木製梁2の梁端部21の表面31と当該表面31に対向する耐火被覆41の対向面とが、接着剤により接着されていない。
また、耐火被覆41を構成する耐火板耐火板45,…の端面と柱10の一側面10aとが、接着剤により接着されていない。
即ち、図1図2において、太線a1で示した互いに対向する耐火被覆41の面と木製梁2の梁端部21の表面31、太線a2で示した互いに対向する耐火被覆41の面と耐火被覆42の面、太線a3で示した互いに対向する耐火被覆41の面と柱10の一側面10a(あるいは柱10の一側面10aを被覆する耐火被覆の面)は、接着剤により接着されていない。
【0015】
従って、実施形態1においては、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41は、ねじ状固定部材11を外すことによって、木製梁2の梁端部21の表面31から簡単に取れるようになっており、これにより、木製梁2の梁端部21の表面31が露出して目視可能となる。
尚、耐火被覆41が取り外されることにより露出する木製梁2の梁端部21の表面31の寸法は、例えば、木製梁2の梁の延長方向(梁の材軸方向)に沿った長さ5cm~30cm程度に設定すればよい。
【0016】
実施形態1に係る耐火被覆梁1によれば、柱10に接合された耐火被覆梁1の施工後に、木製梁2の状態を目視検査したい場合、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41を簡単に取り外すことができて、木製梁2の梁端部21の表面31を露出させることができるため、当該目視検査を簡単に行うことができるようになる。
即ち、柱10に接合された耐火被覆梁1の施工後において、例えば、地震が発生した後や、一定期間毎、あるいは、所定期間経過後に、木製梁2の状態、例えば、木製梁2の撓み、歪み、割れ、めり込み等を目視検査したい場合に、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41を、木製梁2の梁端部21の表面31から取り外して、当該木製梁2の目視検査を簡単に行うことができるようになる。
また、取り外した耐火被覆41を、木製梁2の状態を目視検査した後、再び、木製梁2の梁端部21の表面31を覆うように、ねじ状固定部材11により木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けることにより、簡単に、元の耐火被覆梁1の状態に戻すことができるようになる。
即ち、実施形態1によれば、木製梁2の状態を目視検査するための作業を簡単に行える構成を備えた耐火被覆梁1を提供できるようになった。
【0017】
また、一般に、柱と木製梁との接合部近傍、即ち、木製梁の梁端部の表面は、図外の接合部材や接合手段等の部材が入り組んだ複雑な構造部分となりやすい。従って、木製梁の表面を覆う耐火被覆の施工を一括して行うよりも、木製梁の梁端部以外の表面に対する耐火被覆の施工と、当該入り組んだ複雑な構造部分となる木製梁の梁端部の表面に対する耐火被覆の施工と、を分けて行うようにした方が、木製梁の表面を覆う耐火被覆の施工を、簡単かつ正確に行ない易い。
実施形態1に係る耐火被覆梁1においては、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42の施工を行った後に、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41の施工を行うことが可能となる。
つまり、実施形態1に係る耐火被覆梁1によれば、木製梁2の梁端部21の表面31が図外の接合部材や接合手段等の部材の入り組んだ複雑な構造部分になったとしても、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42の施工を行った後に、当該入り組んだ複雑な構造部分となる木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41の施工を行うことができる。
従って、実施形態1に係る耐火被覆梁1によれば、木製梁2の梁端部21の表面31に対する耐火被覆の施工を簡単かつ正確に行うことができ、木製梁2の表面3を覆う耐火被覆4の施工を簡単かつ正確に行えるようになる。
【0018】
実施形態2
実施形態1に係る耐火被覆梁1においては、耐火被覆41を構成する耐火板45の端面と耐火被覆42を構成する耐火板45の端面との突き合せ部、即ち、耐火被覆41と耐火被覆42との境界面が、互いに対応する段差面(各層の目地のずれに対応した段差面)となるように構成されたものを例示したが、図3に示すように、耐火被覆41と耐火被覆42との境界面(太線a2で示した互いに対向する耐火被覆41の面と耐火被覆42の面)が、木製梁2の表面3に対して直交する面に構成されていてもよい。
尚、図3において、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
即ち、実施形態2に係る耐火被覆梁1においては、耐火被覆41と耐火被覆42との境界面は、各層において互いに突き合わされる耐火被覆41を構成する各耐火板45の端面と耐火被覆42を構成する各耐火板45の端面とで構成される。そして、耐火被覆41は、木製梁2の梁端部21の表面31、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42、柱10側には接着されておらず、当該積層体により構成された耐火被覆41は、例えばビスなどのねじ状固定部材11により、木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けられた構成となっている。
【0019】
実施形態2に係る耐火被覆梁1によれば、耐火被覆4が複数の耐火板45を積層した積層体により構成される場合において、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41を構成する各耐火板45として、板面の縦横寸法が同じ耐火板45を用意して使用すればよいため、耐火被覆41の施工が容易となる。
【0020】
実施形態3
図1に示すように、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41を、ねじ状固定部材11により木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けられた構成とした場合において、ねじ状固定部材11として金属製のねじ状固定部材11を用いた場合には、耐火被覆41の外表面側に当該金属製のねじ状固定部材11の一端側(例えばビスの頭)が露出し、火災時において、熱が金属製のねじ状固定部材11を介して木製梁2に伝達される熱橋現象が生じる可能性がある。
そこで、この熱橋現象を防止するために、図3に示すように、耐火被覆41の外表面に露出する金属製のねじ状固定部材11の一端側の露出部(例えばビスの頭)を覆う熱橋防止手段5を備えた構成とすることが好ましい。
尚、熱橋防止手段5としては、例えば、グラスウール、石綿、耐火塗料等の耐火物を使用すればよい。
【0021】
また、図示しないが、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42をビス等の金属製のねじ状固定部材11で木製梁2に取付けた場合も、耐火被覆42の外表面側に当該金属製のねじ状固定部材11の一端側(例えばビスの頭)が露出し、火災時において、熱が金属製のねじ状固定部材11を介して木製梁2に伝達される熱橋現象が生じる可能性があるので、同様に、耐火被覆42の外表面に露出する金属製のねじ状固定部材11の一端側の露出部(例えばビスの頭)を覆う熱橋防止手段5を備えた構成とすることが好ましい。
【0022】
実施形態3に係る耐火被覆梁1によれば、耐火被覆4を木製梁2に取付けるための取付部材として、ビス等の金属製のねじ状固定部材11を用いたことに伴う熱橋現象を防止できて、耐火性能をより向上できる。
【0023】
尚、図1,2に示した実施形態1の耐火被覆梁1において、ねじ状固定部材11として金属製のねじ状固定部材11を用いた場合は、実施形態3と同様に、耐火被覆4の外表面に露出する金属製のねじ状固定部材11の一端側の露出部を覆う熱橋防止手段5を備えた構成とすることが好ましい。
【0024】
実施形態4
実施形態3に係る耐火被覆梁1においては、金属製のねじ状固定部材11を用いた例を示したが、金属製のねじ状固定部材11の代わりに、例えばセラミックにより形成されたセラミック製のねじ等の非金属製のねじ状固定部材を用いても構わない。
このような非金属製のねじ状固定部材を用いれば、熱橋現象が抑制され、熱橋防止手段5を用いる必要がなくなるので、好ましい。
【0025】
実施形態5
実施形態1乃至実施形態4に係る耐火被覆梁1においては、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41を、耐火性能を有した板材、即ち、耐火板45により構成したものを例示したが、図4に示すように、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41は、柱10の表面を被覆した耐火被覆材15により構成された耐火被覆41としてもよい。
柱10の表面を被覆する当該耐火被覆材15としては、可撓性を有した耐火被覆材、例えば巻付けタイプのロックウール等を用いればよい。
可撓性を有した耐火被覆材15の具体的な一例としては、例えばニチアス株式会社製「マキベエ(登録商標)」等がある。
例えば、図4に示すように、耐火被覆材15を用いて柱10の表面を覆うように被覆し、かつ、柱10の表面を被覆した耐火被覆材15の端部15a側で木製梁2の梁端部21の表面31を容易に剥離可能なように覆うとともに、当該耐火被覆材15の端部15aを、図外の取付部材を用いて、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42に着脱可能に取付けるようにすればよい。
実施形態5によれば、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41が、木製梁2の梁端部21以外の表面32を覆う耐火被覆42とは分離した状態で、木製梁2の梁端部21に着脱可能に取付けられた構成を実現するために、柱10の表面を被覆した耐火被覆材15の端部15a側を、木製梁2の梁端部21の表面31を覆う耐火被覆41として利用したので、木製梁2の梁端部21の表面31に対する耐火被覆41の着脱作業をより簡単に行うことができるようになり、耐火被覆梁1の施工後に、木製梁2の状態を目視検査するための作業をより簡単に行えるようになる。
【0026】
尚、各図においては、木製梁2の一端側の梁端部21と柱10との接合部分における耐火被覆41のみを図示したが、木製梁2の図示していない他端側の梁端部と柱との接合部分における耐火被覆も同様に構成されることは言うまでもない。
【0027】
また、上述した実施形態1乃至実施形態4においては、複数枚の耐火板45を積層した積層体により構成された耐火被覆4を例示したが、当該耐火被覆4は、必ずしも積層体により構成される必要はなく、耐火性能を有した板材、即ち、1層以上の耐火板45により構成されていればよい。
【0028】
また、各実施形態においては、木製梁2の梁端部21の表面31、即ち、木製梁2の梁端部21の両方の側面、及び、木製梁2の梁端部21の下面を覆うように設けられる耐火被覆41を例示したが、当該耐火被覆41は、木製梁2の梁端部21の両方の側面、及び、木製梁2の梁端部21の下面のうちの、少なくとも1つの面に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0029】
1 耐火被覆梁、2 木製梁、3 木製梁の表面、4 耐火被覆、
5 熱橋防止手段、10 柱、15 耐火被覆材、21 木製梁の梁端部、
31 木製梁の梁端部の表面、32 木製梁の梁端部以外の表面、
41 木製梁の梁端部の表面を覆う耐火被覆、
42 木製梁の梁端部以外の表面を覆う耐火被覆、
45 耐火板(耐火性能を有した板材)。
図1
図2
図3
図4