(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006443
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】好気性グラニュールの形成方法、好気性グラニュールの形成装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20230101AFI20230111BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20230111BHJP
【FI】
C02F3/10 A
C02F3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109041
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 將貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】若山 聖
(72)【発明者】
【氏名】古澤 和樹
【テーマコード(参考)】
4D003
4D028
【Fターム(参考)】
4D003AA12
4D003AB03
4D003EA14
4D003EA21
4D003EA38
4D003FA02
4D003FA05
4D028BB01
4D028BB02
4D028CA06
4D028CB02
4D028CB08
(57)【要約】
【課題】有機物含有排水中に遅分解性有機物が多く含まれる場合であっても、安定的に好気性グラニュールを形成することが可能な好気性グラニュールの形成方法を提供することにある。
【解決手段】本開示は、好気性グラニュールを形成する半回分式反応槽10を用いた好気性グラニュールの形成方法であって、前記有機物は、易分解性有機物及び遅分解性有機物を含み、半回分式反応槽10における前記易分解性有機物のBOD負荷量に対する半回分式反応槽10内のMLSS濃度の比に[前記運転サイクルの時間/前記生物処理工程の時間]を乗じた値が、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dayの範囲となるように、前記生物処理工程の時間を調整することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の有機物を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを有する運転サイクルを行って、好気性グラニュールを形成する半回分式反応槽を用いた好気性グラニュールの形成方法であって、
前記有機物は、易分解性有機物及び遅分解性有機物を含み、
前記半回分式反応槽における前記易分解性有機物のBOD負荷量に対する前記半回分式反応槽内のMLSS濃度の比に[前記運転サイクルの時間/前記生物処理工程の時間]を乗じた値が、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dayの範囲となるように、前記生物処理工程の時間を調整することを特徴とする好気性グラニュールの形成方法。
【請求項2】
前記半回分式反応槽に流入する前記有機物含有排水の総BOD濃度に対する、前記有機物含有排水中の前記易分解性有機物のBOD濃度の比が0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の好気性グラニュールの形成方法。
【請求項3】
前記半回分式反応槽の生物処理水排出口を排水流入口よりも上方に設け、前記有機物含有排水を前記排水流入口から前記半回分式反応槽内に流入させることにより、前記生物処理水を前記生物処理水排出口から排出することを特徴とする請求項1又は2に記載の好気性グラニュールの形成方法。
【請求項4】
有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の有機物を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを有する運転サイクルを行って、好気性グラニュールを形成する半回分式反応槽を備える好気性グラニュールの形成装置であって、
前記有機物は、易分解性有機物及び遅分解性有機物を含み、
前記半回分式反応槽における前記易分解性有機物のBOD負荷量に対する前記半回分式反応槽内のMLSS濃度の比に[前記運転サイクルの時間/前記生物処理工程の時間]を乗じた値が、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dayの範囲となるように、前記生物処理工程の時間を調整する手段を備えることを特徴とする好気性グラニュールの形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、好気性グラニュールの形成方法、好気性グラニュールの形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物等を含む有機物含有排水の生物学的排水処理には、フロックと呼ばれる微生物の集合体(好気性生物汚泥)を活用した活性汚泥法が用いられている。しかし、活性汚泥法では、沈殿池でフロック(好気性生物汚泥)と処理水とを分離する際、フロックの沈降速度が遅いために沈殿池の表面積を非常に大きくしなければならない場合がある。また、活性汚泥法の処理速度は、生物処理槽内の汚泥濃度に依存しており、汚泥濃度を高めることで処理速度を増加させることができるが、汚泥濃度を1500~5000mg/Lの範囲またはそれ以上に増加させると、沈殿池でのバルキング等により固液分離が困難となり、処理を維持することができなくなる場合がある。
【0003】
一方、嫌気性生物処理では、グラニュールと呼ばれる微生物が緻密に集合し粒状となった集合体(嫌気性生物汚泥)を活用することが一般的である。グラニュールは非常に沈降速度が速く、微生物が緻密に集合しているため、生物処理槽内の汚泥濃度を高くすることができ、排水の高速処理を実現することが可能である。しかし、嫌気性生物処理は、好気性処理(活性汚泥法)に比べて処理対象の排水種が限られていることや、処理水温を30~35℃程度に維持する必要がある等の問題点を有する場合がある。また、嫌気性生物処理単独では、処理水の水質が悪く、河川等へ放流する場合には、活性汚泥法等の好気性処理を別途実施することが必要となる場合もある。
【0004】
近年、排水を間欠的に反応槽に流入させる半回分式処理装置を用いて処理を行い、さらに生物汚泥の沈降時間を短縮することで、嫌気性生物汚泥に限られず、好気性生物汚泥でも沈降性の良いグラニュール化した生物汚泥を形成できることが明らかとなってきた(例えば、特許文献1~4参照)。好気性生物汚泥をグラニュール化させることで、平均粒径が0.2mm以上となり、沈降速度が5m/h以上とすることが可能となる。なお、半回分式処理では、1つの生物処理槽で(1)排水の流入、(2)有機物の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった4つの工程を繰り返し行うことが一般的である。
【0005】
また、特許文献5には、(1)排水の流入及び処理水の排出、(2)有機物の生物処理、(3)生物汚泥の沈降といった3つの工程を繰り返し行う半回分式の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/024638号
【特許文献2】特開2008-212878号公報
【特許文献3】特許第4975541号公報
【特許文献4】特許第4804888号公報
【特許文献5】特開2016-77931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、生物処理される有機物に、遅分解性有機物が多く含まれると、好気性グラニュールの形成が円滑に進まないことがあった。
【0008】
そこで、本開示の目的は、有機物含有排水中に遅分解性有機物が多く含まれる場合であっても、安定的に好気性グラニュールを形成することが可能な好気性グラニュールの形成方法、好気性グラニュールの形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の有機物を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを有する運転サイクルを行って、好気性グラニュールを形成する半回分式反応槽を用いた好気性グラニュールの形成方法であって、前記有機物は、易分解性有機物及び遅分解性有機物を含み、前記半回分式反応槽における前記易分解性有機物のBOD負荷量に対する前記半回分式反応槽内のMLSS濃度の比に[前記運転サイクルの時間/前記生物処理工程の時間]を乗じた値が、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dayの範囲となるように、前記生物処理工程の時間を調整することを特徴とする。
【0010】
また、前記好気性グラニュールの形成方法において、前記半回分式反応槽に流入する前記有機物含有排水の総BOD濃度に対する、前記有機物含有排水中の前記易分解性有機物のBOD濃度の比が0.5以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記好気性グラニュールの形成方法において、前記半回分式反応槽の生物処理水排出口を排水流入口よりも上方に設け、前記有機物含有排水を前記排水流入口から前記半回分式反応槽内に流入させることにより、前記生物処理水を前記生物処理水排出口から排出することが好ましい。
【0012】
また、本開示は、有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の有機物を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを有する運転サイクルを行って、好気性グラニュールを形成する半回分式反応槽を備える好気性グラニュールの形成装置であって、前記有機物は、易分解性有機物及び遅分解性有機物を含み、前記半回分式反応槽における前記易分解性有機物のBOD負荷量に対する前記半回分式反応槽内のMLSS濃度の比に[前記運転サイクルの時間/前記生物処理工程の時間]を乗じた値が、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dayの範囲となるように、前記生物処理工程の時間を調整する手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本開示は、有機物含有排水を連続的に流入させながら、前記有機物含有排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理槽に上記好気性グラニュールの形成方法により形成された好気性グラニュールを供給することを特徴とする排水処理方法である。
【0014】
また、本開示は、有機物含有排水を連続的に流入させながら、前記有機物含有排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理槽を備え、上記好気性グラニュールの形成装置により形成された好気性グラニュールを前記連続式生物処理槽に供給する手段を備えることを特徴とする排水処理装置である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、有機物含有排水中に遅分解性有機物が多く含まれる場合であっても、安定的に好気性グラニュールを形成することが可能な好気性グラニュールの形成方法、好気性グラニュールの形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る好気性グラニュールの形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る好気性グラニュールの形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る好気性グラニュールの形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る好気性グラニュールの形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る排水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【
図6】比較例におけるSVI及び汚泥平均粒径の経日変化を示す図である。
【
図7】実施例におけるSVI及び汚泥平均粒径の経日変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本開示を実施する一例であって、本開示は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<好気性グラニュールの形成方法および形成装置>
本開示の実施形態に係る好気性グラニュールの形成装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。グラニュール形成装置1は、半回分式反応槽10を備える。グラニュール形成装置1において、排水供給配管28が排水流入ポンプ12を介して半回分式反応槽10の排水流入口に接続されている。半回分式反応槽10の生物処理水排出口16に生物処理水配管30が生物処理水排出バルブ18を介して接続され、汚泥引抜口22に汚泥引抜配管32が汚泥引抜ポンプ24を介して接続されている。半回分式反応槽10の内部の下部には、曝気用ポンプ14に接続された曝気装置26が設置されている。
【0019】
グラニュール形成装置1は制御装置20を備える。制御装置20は、例えば、プログラムを演算するCPU、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAMから構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ROM等に記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行して、グラニュール形成装置1の動作を制御する。制御装置は、排水流入ポンプ12、生物処理水排出バルブ18、汚泥引抜ポンプ24、曝気用ポンプ14それぞれと、例えば電気的に接続されており、ポンプの作動・停止、バルブの開閉等を制御する。
【0020】
グラニュール形成装置1は、例えば、次のようなサイクルで運転される。
【0021】
(1)流入工程:排水流入ポンプ12が作動し、有機物含有排水が排水供給配管28を通して半回分式反応槽10に所定量流入される。
【0022】
(2)生物処理工程:排水流入ポンプ12が停止するとともに、曝気用ポンプ14から空気等の酸素含有気体が、曝気装置26を通して半回分式反応槽10に供給され、半回分式反応槽10内で有機物含有排水中の有機物等の処理対象物質が微生物汚泥により生物学的に処理される。生物反応は好気反応には限らず、空気等の供給は行わず、撹拌を行うことで無酸素反応を行うことも可能であるし、好気反応および無酸素反応を組み合わせてもいい。無酸素状態とは、溶存酸素は存在しないが、亜硝酸や硝酸由来の酸素等は存在している状態をいう。例えば、
図2に示すように、モータ34、撹拌翼36、モータ34と撹拌翼36を接続するシャフト等により構成される撹拌装置を半回分式反応槽10に設置して、曝気用ポンプ14を停止して撹拌装置により撹拌を行えばよい。なお、撹拌装置は上記構成に制限されるものではない。
【0023】
(3)沈降工程:曝気用ポンプ14が停止し、所定の時間、静置状態にすることで半回分式反応槽10内の汚泥を沈降させる。
【0024】
(4)排出工程:生物処理水排出バルブ18を開けることで、沈降工程で得られた上澄み水を生物処理水として生物処理水排出口16から生物処理水配管30を通して排出する。この場合、生物処理水排出バルブ18ではなく、ポンプを用いて生物処理水を排出してもいい。
【0025】
以上の(1)~(4)の工程を有する運転サイクルを繰り返すことにより、微生物が緻密に集合し粒状となった集合体である好気性グラニュール(以下、単にグラニュールと称する)が形成される。
【0026】
半回分式反応槽10で形成されるグラニュールとは、自己造粒が進んだ汚泥のことであり、例えば汚泥の平均粒径が0.2mm以上、もしくは沈降性指標であるSVI5が80mL/g以下の生物汚泥である。また、本実施形態では、グラニュールが形成されたか否かは、例えば汚泥の沈降性指標であるSVIを測定することにより判断される。具体的には、定期的に半回分式反応槽10内の汚泥の沈降性試験により測定されたSVI5の値が所定値以下(例えば80mL/g以下)となった段階で、グラニュールが形成されたと判断することが可能である。もしくは、半回分式反応槽10内の汚泥の粒径分布を測定し、その平均粒径が所定値以上(例えば0.2mm以上)となった段階で、グラニュールが形成されたと判断することが可能である(なお、SVI値が低いほど、平均粒径が大きいほど良好なグラニュールであると判断可能である)。
【0027】
ところで、半回分式反応槽10のBOD負荷量は、半回分式反応槽10に流入する有機物含有排水のBOD濃度と有機物含有排水量との積により求められる。BOD濃度は、5日間かけて微生物が有機物を分解する際に消費する酸素量から測定される値である。但し、有機物含有排水中の有機物には、微生物による生物分解におよそ数十時間~数日を要する遅分解性有機物と、微生物による生物分解におよそ数時間~数十時間を要する易分解性有機物とがある。したがって、BOD濃度は、遅分解性有機物及び易分解性有機物を含む有機物を分解する際に微生物が消費する酸素量に相当する総BOD濃度、遅分解性有機物を分解する際に微生物が消費する酸素量に相当する遅分解性有機物のBOD濃度、易分解性有機物を分解する際に微生物が消費する酸素量に相当する易分解性有機物のBOD濃度に分類することができる。そして、総BOD濃度は、遅分解性有機物のBOD濃度と易分解性有機物のBOD濃度との和である。
【0028】
したがって、半回分式反応槽10のBOD負荷量は、総BOD濃度に基づく総BOD負荷量(総BOD濃度×有機物含有排水量)、遅分解性有機物のBOD濃度に基づく遅分解性有機物のBOD負荷量(遅分解性有機物のBOD濃度×有機物含有排水量)、易分解性有機物のBOD濃度に基づく易分解性有機物のBOD負荷量(易分解性有機物のBOD濃度×有機物含有排水量)に分類することができる。そして、総BOD負荷量は、遅分解性有機物のBOD負荷量と易分解性有機物のBOD負荷量との和である。
【0029】
ここで、安定的なグラニュール形成には、半回分式反応槽10に流入した有機物含有排水中の有機物濃度が高い飽食状態の時間と、微生物汚泥による有機物の分解が進行して、有機物含有排水中の有機物濃度が低い飢餓状態の時間との比を制御することが重要である。この飽食状態の時間と飢餓状態の時間の関係は、半回分式反応槽10のBOD負荷量に対する半回分式反応槽10内のMLSS濃度の比を用いることで間接的に制御することができる。また、生物処理工程以外の工程は生物反応に大きく寄与はしないため、BOD負荷量に対するMLSS濃度の比に[運転サイクルの時間/生物処理工程の時間]を乗じた値で評価することで、より精緻に飽食時間/飢餓時間の比を制御することが可能である。ここで、「運転サイクルの時間」とは、上記(1)流入工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程、(4)排出工程の合計時間(下記、
図3,
図4の構成の場合は、(1)流入工程/排出工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程の合計時間)を指す。
【0030】
但し、有機物含有排水中に遅分解性有機物が多く含まれる場合、BOD負荷量に対するMLSS濃度の比として、総BOD負荷量に対するMLSS濃度の比を採用し、生物処理工程の時間を決定すると、運転サイクルにおける飽食状態と飢餓状態のバランスが崩れ、安定的なグラニュールの形成が困難となる。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、有機物含有排水中に遅分解性有機物が多く含まれる場合、易分解性有機物のBOD負荷量に対するMLSS濃度の比を採用して、生物処理工程の時間を決定することが、安定的なグラニュール形成の点で重要であることを見出した。具体的には、本発明者らは、半回分式反応槽10における易分解性有機物のBOD負荷量に対する半回分式反応槽10内のMLSS濃度の比(易分解性有機物のBOD負荷量/MLSS)に[運転サイクルの時間/生物処理工程の時間]を乗じた値(以下、「A値」と呼ぶ場合がある)を、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dayの範囲となるように、生物処理工程の時間を調整することで、安定的なグラニュールの形成が可能であることを見出した。
【0031】
「A値」としては、0.05~0.25kgBOD/kgMLSS/dの範囲であることが好ましく、0.075~0.2kgBOD/kgMLSS/dの範囲であることがより好ましい。この値が0.05kgBOD/kgMLSS/dよりも小さいと、適切な飽食状態及び飢餓状態を形成できず、グラニュールの安定形成が困難となる。また、この値が0.25kgBOD/kgMLSS/dよりも大きいと、飢餓状態の時間が短すぎることとなり、グラニュールの安定形成が困難となる。
【0032】
以下に、易分解性有機物のBOD負荷量の算出方法について説明する。以下の算出方法は例示であって、以下の例示に限定されない。
【0033】
<易分解性有機物のBOD負荷量の算出例1>
有機物含有排水中の微生物汚泥の酸素消費速度の経時変化を測定する。酸素消費速度は公知のOUR(Oxygen Uptake Rate)試験により求められる。OUR試験は、例えば、排水と微生物汚泥とを混合して回分的に反応させ、微生物汚泥の酸素消費速度を経時的に測定することにより実施される。OUR試験に用いる微生物汚泥は供試排水に十分に馴致されていることが好ましい。十分に馴致されている微生物汚泥を利用した場合、酸素消費速度の値は試験開始直後に最も高い値となり、その後徐々に低下する。これは、有機物含有排水中の易分解性有機物の分解速度が速いため、時間経過と共に易分解性有機物が減少し、遅分解性有機物の割合が増加するためである。
【0034】
そして、随時測定した酸素消費速度の値を供試汚泥の汚泥濃度で除することにより、微生物汚泥あたりの酸素消費速度の経時変化を求める。微生物汚泥あたりの酸素消費速度が、例えば、0.4kgO2/kgMLVSS/d以上に維持されている時間を易分解性有機物が残存していると判断し、それまでに利用された累積の酸素消費量が易分解性有機物のBOD濃度であると推察する。推察した易分解性有機物のBOD濃度に半回分式反応槽に投入する有機物含有排水量を乗じることにより、易分解性有機物のBOD負荷量を算出する。
【0035】
<易分解性有機物のBOD負荷量の算出例2>
遅分解性有機物の代表例として、固形性の有機物が挙げられるため、排水中に高濃度に有機性SS成分を含む場合には、予め求めた遅分解性有機物のBOD濃度と有機性SS成分との関係を規定した式(マップ、表等でもよい)から、当該遅分解性有機物のBOD濃度を算出してもよい。そして、別途測定した総BOD濃度から算出した遅分解性有機物のBOD濃度を差し引くことにより、易分解性有機物のBOD濃度を求め、易分解性有機物のBOD負荷量を算出してもよい。この場合、排水中の有機性SS成分を測定する手段(SS計ないし濁度計等)を設け、濃度をモニタすることで遅分解性有機物濃度をリアルタイムに求めることも可能である。この算出方法は、SS濃度が100mg/L以上を有する排水に適しており、対象排水として特に生下水(沈殿等の前処理していない流入下水)を扱う際に有効である。
【0036】
<易分解性有機物のBOD負荷量の算出例3>
排水中の遅分解性有機物と易分解性有機物との比が大きく変動しない排水の場合は、予め求めた易分解性有機物のBOD濃度(又は遅分解性有機物のBOD濃度)とCOD濃度やTOC濃度との関係を規定した式(マップ、表等でもよい)から、易分解性有機物のBOD濃度(又は遅分解性有機物のBOD濃度)を求め、易分解性有機物のBOD負荷量を算出してもよい。この場合、半回分式反応槽に流入する有機物含有排水のCOD濃度やTOC濃度を測定する手段を設けて濃度をモニタすることで易分解性有機物のBOD濃度(又は遅分解性有機物のBOD濃度)をリアルタイムで求めることができる。
【0037】
半回分式反応槽10における汚泥滞留時間(SRT:Srudge Retention Time)は、グラニュールの安定形成の点で、5~25日の範囲であることが好ましく、10~15日の範囲であることがより好ましい。例えば、SRTが5~25日の範囲となるように、
図1,2の汚泥引抜ポンプ24を作動して、汚泥引抜口22から汚泥引抜配管32を通して汚泥の引抜が行われる。なお、「A値」が0.05を下回る場合、増殖可能な微生物の割合が少なく、汚泥の引き抜き量を増やすことができないため、SRTを30日よりも長くすることが困難であり、25日程度が限界である。
【0038】
SRTは、以下の式で表される。
SRT[d]=槽内に存在する汚泥量[kg]/1日に系外へと排出される汚泥量[kg/d]
また、半回分式反応槽10におけるMLSS濃度としては、総BOD負荷量にもよるが、グラニュールの安定形成の点で1500~10000mg/Lの範囲であることが好ましく、3000~8000mg/Lの範囲であることが好ましい。
また、半回分式反応槽10における遅分解性有機物と易分解性有機物を含む総BOD負荷量に対するMLSS濃度の比に[前記運転サイクルの時間/前記生物処理工程の時間]を乗じた値は1.0kgBOD/kgMLSS/d以下の範囲とすることが好ましく、0.5kgBOD/kgMLSS/d以下の範囲とすることがより好ましい。1.0kgBOD/kgMLSS/d以上とすると未分解BOD成分が反応槽内の汚泥に蓄積して沈降性が悪化したり、汚泥の沈降不良を引き起こす糸状菌の出現等によりグラニュール形成および維持が困難になったりする場合がある。
【0039】
本実施形態に係るグラニュールの形成方法の処理対象となる有機物含有排水は、食品加工工場排水、化学工場排水、半導体工場排水、機械工場排水、下水、し尿等の生物分解性有機物を含有する有機性排水である。また、生物難分解性の有機物が含有されている場合、予めオゾン処理やフェントン処理等の物理化学的処理を施し、生物分解性の成分に変換することで処理対象とすることができる。また、本実施形態に係るグラニュールの形成方法はさまざまなBOD成分を対象としているが、油脂分に関しては、汚泥やグラニュールに付着して悪影響を及ぼす場合があるため、半回分式反応槽10へと導入される前に、予め浮上分離、凝集加圧浮上、吸着等の既存の手法にて例えば150mg/L以下程度にまで除去しておくことが好ましい。
【0040】
半回分式反応槽10内のpHは、一般的な微生物に適する範囲に設定されることが好ましく、例えば6~9の範囲とすることが好ましく、6.5~7.5の範囲とすることがより好ましい。pH値が前記範囲外となる場合は、酸、アルカリ等を添加してpH制御を実施することが好ましい。
【0041】
半回分式反応槽10内の溶存酸素(DO)は、好気条件では、0.5mg/L以上、特に1mg/L以上とすることが好ましい。
【0042】
微生物汚泥のグラニュール化を促進させる点で、半回分式反応槽10内の有機物含有排水または半回分式反応槽10に導入される前の有機物含有排水に、Fe2+、Fe3+、Ca2+、Mg2+等を含む、水酸化物が形成されるようなイオンを添加することが好ましい。通常の有機物含有排水には、グラニュールの核となるような微粒子が含まれているが、上記イオンの添加により、グラニュールの核形成をより促進させることが可能となる。
【0043】
本実施形態に係るグラニュール形成装置の他の例を
図3に示す。
図3のグラニュール形成装置1において、排水供給配管28が排水流入ポンプ12、排水流入バルブ38を介して半回分式反応槽10の下部の排水流入口40に接続されている。排水流入口40には、排水排出部42が接続されて、半回分式反応槽10の内部の下部に設置されている。半回分式反応槽10の生物処理水排出口16は排水流入口40よりも上方に設けられ、生物処理水排出口16に生物処理水配管30が生物処理水排出バルブ18を介して接続されている。生物処理水排出口16は排水流入口40よりも上方に設けられているが、流入する有機物含有排水の短絡を防ぎ、より効率的にグラニュールを形成させるためには排水流入口40からできるだけ離れて設置されていることが好ましく、沈降工程における水面位に設けられることがより好ましい。制御装置20は、排水流入ポンプ12、排水流入バルブ38、生物処理水排出バルブ18、汚泥引抜ポンプ24、曝気用ポンプ14、撹拌装置のモータ34それぞれと、例えば電気的に接続されている。その他は、
図2のグラニュール形成装置1と同様の構成である。
【0044】
図3のグラニュール形成装置1では、(4)排出工程において、排水流入バルブ38を開けて排水流入ポンプ12を作動し、有機物含有排水を排水流入口40から排水供給配管28を通して排水排出部42から半回分式反応槽10に流入させることにより、生物処理水を生物処理水排出口16から生物処理水配管30を通して排出する。
【0045】
このように、
図3のグラニュール形成装置1では、(1)流入工程/排出工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程を繰り返すことにより、グラニュールが形成される。この(1)~(3)の工程を繰り返す形態は、流入工程、生物処理工程、沈降工程及び排出工程を有する運転サイクルの一形態である。
【0046】
図3のグラニュール形成装置1では、有機物含有排水を半回分式反応槽10に流入させることにより生物処理水を生物処理水排出口16から排出させているため、粒径が比較的小さいグラニュールが生物処理水とともに排出され、粒径が比較的大きいグラニュールについて(1)~(3)の工程が繰り返される。その結果、より効率的にグラニュールを形成することができる。
【0047】
流入工程/排出工程における排水流入率は、例えば、10%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。排水の流入率とは、半回分式反応槽10内の有効容積に対する運転1サイクルにおける被処理水の流入量の比率である。ここで、半回分式反応槽10内に残存する処理対象物質の濃度を高めるには、被処理水の流入率はできるだけ高くとった方が良いが、その一方で、排水の流入率を高くすればするほど、被処理水の短絡による処理水悪化の懸念がある。そのため、これらを鑑みると、排水の流入率は20%以上80%以下の範囲とすることがより好ましい。ただし、半回分式反応槽10の後段に活性汚泥槽等の処理装置が設置され、後段処理装置後の最終処理水の水質が悪化しない範囲においては、排水の流入率に特に制限はなく、例えば100%超とすることも可能である。なお、排水の流入率を100%超とする場合には、運転サイクル数の低下を抑えるために、排水の流入率の上限を200%以下とすることが好ましい。
【0048】
流入/排出工程の時間は、例えば、排水の流入率、および半回分式反応槽10への被処理水の流量に応じて決められる。ところで、半回分式反応槽10への排水の流量を半回分式反応槽10の水平断面積で除した値である半回分式反応槽10の水面積負荷を高く設定すると、汚泥中の軽い汚泥画分を選択的に系外へ排出させ、沈降性の高い汚泥画分を槽内に残存させることが可能となるため、沈降性の高い生物汚泥の形成は促進されるが、汚泥の沈降性が高くない立上げ期間等においては、槽内の汚泥が流出し、生物処理機能の悪化が懸念される。一方、半回分式反応槽10の水面積負荷を低く設定すると、汚泥の選択効果が低くなり、さらに排水の流入率を高くした場合には、流入/排出工程時間が長くなり、沈降性の高い汚泥の形成が困難になることが懸念される。上記事情を鑑みると、半回分式反応槽10への水面積負荷は0.5m/h以上、20m/h以下とすることが好ましく、1m/h以上10m/h以下の範囲とすることが好ましい。また、槽内の生物汚泥の沈降性向上に伴い、半回分式反応槽10の水面積負荷を高く設定することが可能になった場合には、生物汚泥の沈降性に応じて、半回分式反応槽10の水面積負荷を上昇させ、水面積負荷と被処理水の流入率に応じて、流入/排出工程時間を短縮させることも可能である。
【0049】
本実施形態に係る好気性グラニュールの形成装置の他の例を
図4に示す。
図4のグラニュール形成装置1において、排水供給配管28が排水流入ポンプ12、排水流入バルブ38を介して半回分式反応槽10の下部の排水流入口40に接続されている。排水流入口40には、排水排出部42が接続されて、半回分式反応槽10の内部の下部に設置されている。半回分式反応槽10の生物処理水排出口16は排水流入口40よりも上方に設けられ、生物処理水排出口16に生物処理水配管30が生物処理水排出バルブ18を介して接続されている。生物処理水排出口16は排水流入口40よりも上方に設けられているが、流入する有機物含有排水の短絡を防ぎ、より効率的にグラニュールを形成させるためには排水流入口40からできるだけ離れて設置されていることが好ましく、沈降工程における水面位に設けられることがより好ましい。制御装置20は、排水流入ポンプ12、排水流入バルブ38、生物処理水排出バルブ18、汚泥引抜ポンプ24、曝気用ポンプ14それぞれと、例えば電気的に接続されている。その他は、
図1のグラニュール形成装置1と同様の構成である。
【0050】
図4のグラニュール形成装置1では、(4)排出工程において、排水流入バルブ38を開けて排水流入ポンプ12を作動し、有機物含有排水を排水流入口40から排水供給配管28を通して排水排出部42から半回分式反応槽10に流入させることにより、生物処理水を生物処理水排出口16から生物処理水配管30を通して排出する。なお、排水流入ポンプ12、汚泥引抜ポンプ24、曝気用ポンプ14の作動および停止、排水流入バルブ38、生物処理水排出バルブ18の開閉は、制御装置20により制御してもよい。
【0051】
このように、
図4のグラニュール形成装置1でも、(1)流入工程/排出工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程を繰り返すことにより、グラニュールが形成される。
【0052】
<排水処理方法および排水処理装置>
本実施形態に係る排水処理装置は、有機物含有排水を連続的に流入させながら、有機物含有排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理槽を備える。本実施形態に係る排水処理方法および排水処理装置では、有機物含有排水を連続的に流入させながら、有機物含有排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理槽に、上記好気性グラニュールの形成方法により形成されたグラニュールを供給する。
【0053】
本実施形態に係る排水処理装置の一例の概略構成を
図5に示す。排水処理装置3は、排水貯留槽50と、半回分式反応槽10と、連続式生物処理槽52と、固液分離装置54とを備える。
【0054】
排水処理装置3において、排水貯留槽50の出口と連続式生物処理槽52の排水入口とはポンプ56およびバルブ58を介して排水供給配管66により接続されている。連続式生物処理槽52の出口と固液分離装置54の入口とは配管70により接続されている。固液分離装置54の処理水出口には処理水配管72が接続されている。固液分離装置54の汚泥出口にはバルブ62を介して汚泥排出配管74が接続され、汚泥排出配管74のバルブ62の上流側と連続式生物処理槽52の返送汚泥入口とはポンプ64を介して汚泥返送配管76により接続されている。排水供給配管66のポンプ56とバルブ58との間と、半回分式反応槽10の排水流入口とは排水流入バルブ38を介して排水供給配管28により接続されている。半回分式反応槽10の生物処理水排出口と、連続式生物処理槽52の生物処理水入口とは、生物処理水排出バルブ18を介して生物処理水配管30により接続されている。半回分式反応槽10の汚泥排出口と、連続式生物処理槽52の汚泥入口とは、ポンプ60を介して汚泥配管68により接続されている。
【0055】
連続式生物処理槽52は、例えば撹拌装置、曝気用ポンプ、曝気用ポンプに接続される曝気装置等を備えており、撹拌装置により槽内の液が撹拌され、また曝気用ポンプから供給される空気等の酸素含有気体が曝気装置を通して槽内に供給されるように構成されている。
【0056】
固液分離装置54は、生物汚泥を含む処理水から生物汚泥と処理水とに分離するための分離装置であり、例えば、沈降分離、加圧浮上、濾過、膜分離等の分離装置が挙げられる。
【0057】
排水処理装置3において、まず、バルブ58を開け、ポンプ56が作動し、排水貯留槽50内の有機物含有排水が排水供給配管66を通して連続式生物処理槽52に供給される。連続式生物処理槽52において、好気条件下で、生物汚泥による排水の生物処理が実施される(連続式生物処理工程)。連続式生物処理槽52で処理された処理水は、連続式生物処理槽52の出口から配管70を通して固液分離装置54に供給される。固液分離装置54において、処理水から生物汚泥が分離される(固液分離工程)。固液分離処理された処理水は、固液分離装置54の処理水出口から処理水配管72を通して系外へ排出される。固液分離された生物汚泥は、バルブ62を開け、汚泥排出配管74を通して系外へ排出される。ポンプ64を作動し、汚泥返送配管76を通して、固液分離された生物汚泥の少なくとも一部を連続式生物処理槽52に返送してもよい。
【0058】
半回分式反応槽10を稼働させる場合には、排水流入バルブ38を開け、排水貯留槽50内の有機物含有排水の少なくとも一部を、排水供給配管28を通して半回分式反応槽10に供給する。半回分式反応槽10において、上記(1)流入工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程、(4)排出工程の運転サイクル(または、(1)流入工程/排出工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程の運転サイクル)を繰り返すことにより、グラニュールを形成し、ポンプ60を作動し、汚泥配管68を通して、形成したグラニュールを連続式生物処理槽52に供給すればよい。
【0059】
図5に示す連続式生物処理槽52では、有機物等を処理対象とした標準活性汚泥法により生物処理を行う形態を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、A2O(Anaerobic-Anoxic-Oxic Process)やAO(Anaerobic-Oxic Process)等の栄養塩除去型システム(無酸素処理槽や嫌気処理槽を設置するシステム)、オキシデーションディッチ法、ステップ流入型多段活性汚泥法等のシステムにより生物処理を行う装置であってもよい。また、ポリウレタン、プラスチック、樹脂等の担体の存在下で、生物処理を行う装置であってもよい。
【0060】
図5に示す排水処理装置3では、固液分離装置54を備える形態を例に説明したが、固液分離装置54を必ずしも備える必要はない。しかし、排水処理装置3は、グラニュールを循環させて、排水の処理効率を向上させる等の点で、連続式生物処理槽52から排出される処理水から生物汚泥を分離する固液分離装置54と、固液分離装置54から排出される生物汚泥を連続式生物処理槽52に返送する汚泥返送配管76を備えることが好ましい。
【実施例0061】
以下、実施例および比較例を挙げ、本開示をより具体的に詳細に説明するが、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
反応槽有効容積33L(125mm×438mm×有効水深600mm)の半回分式反応槽を用いて通水試験を実施した。グラニュール化の指標として、SVI5及びSVI30の値を用いて評価した。なお、SVIとは、生物汚泥の沈降性指標であり、以下の方法により求められる。まず、1Lのメスシリンダに1Lの汚泥を投入し、汚泥濃度ができるだけ均一となるように緩やかに撹拌した後、5分間静置したときの汚泥界面を測定する。そして、メスシリンダにおける汚泥の占める体積率(%)を計算する。次に、汚泥のMLSS(mg/L)を測定する。これらを下記式に当てはめて、SVI5を算出する。SVI5の値が小さいほど、沈降性が高い汚泥であることを示している。
SVI5(mL/g)=汚泥の占める体積率×10,000/MLSS
(なお、SVI30を算出する場合には、5分間静置を30分間静置に変更する。)
【0063】
使用した排水は、下水処理場に流入した生下水であり、沈殿処理せず目開き2mmの粗目スクリーンで前処理したものを用いた。試験期間中の生下水の総BOD濃度、易分解性BOD濃度、遅分解性BOD濃度を表1に示す。生下水の総BOD濃度に対する遅分解性BOD濃度の比は0.5以上であった。
【0064】
【0065】
半回分式反応槽の運転サイクルは下記のように行った。
(1)流入/排出工程:50分掛けて、排水を半回分式反応槽に導入すると共に、上澄水を処理水として排出した。排水の流入率は100%とした。
(2)生物処理工程:半回分式反応槽における易分解性有機物のBOD負荷量に対するMLSS濃度の比に[運転サイクルの時間/生物処理工程の時間]を乗じた値(化式のA値)が表2の値になるように、生物処理工程の時間を設定し、設定した時間の間、半回分式反応槽下部に設置した曝気装置より空気を供給し、生物処理工程を行った。
(3)沈降工程:曝気装置からの空気の供給を停止させて15分~30分間静置させ、半回分式反応槽内の汚泥を沈降させた。
以上(1)~(3)の運転サイクルを1サイクルとして繰り返した。
【0066】
半回分式反応槽における易分解性有機物のBOD負荷量に対するMLSS濃度の比に[運転サイクルの時間/生物処理工程の時間]を乗じた値(A値)は例えば以下のように求める。
A=(((B-C)/1000×(H×D/100×G))/(I/1000×H))
×(F/E)
ここで、
B=排水の易分解性BOD濃度 [mg/L]
C=処理後の易分解性BOD濃度 [mg/L]
D=1サイクルあたりの反応槽有効容積に対する排水の導入割合 [%]
E=1サイクルあたりの生物処理工程時間 [分]
F=1サイクルの全工程時間[分]
G=1日あたりのサイクル数 [回/日]
H=反応槽有効容積 [m3]
I=MLSS[mg/L]
【0067】
【0068】
表2の条件1~2(比較例)におけるSVI及び汚泥平均粒径の経日変化を
図6に示し、表2の条件3~4(実施例)におけるSVI及び汚泥平均粒径の経日変化を
図7に示す。
【0069】
条件1期間では、MLSSが3000-4000mg/Lの範囲となるように運転し、A値が0.04~0.05kgBOD/kgMLSS/day未満となるように生物処理工程の時間を設定したところ、通水開始から20日目までに、SVI30は80mL/g程度、SVI5は170mg/Lまで低下した。また、微生物汚泥の粒径も拡大し、平均粒径は200μmとなった。しかし、20日以後は、SVIの低下及び微生物汚泥の粒径の拡大が停滞した。
【0070】
条件2期間では、MLSSが5000-6000mg/Lの範囲となるように運転し、A値が0.02~0.05kgBOD/kgMLSS/day未満となるように生物処理工程の時間を設定したところ、通水開始から40日目くらいから、SVIの上昇が確認された。条件2期間では、微生物汚泥の粒径はほとんど変化しなかった。
【0071】
条件3期間において、MLSSが3500mg/L程度となるように運転し、A値が0.05~0.1kgBOD/kgMLSS/dayとなるように生物処理工程の時間を設定したところ、SVI5は100mL/g程度まで低下した。また、微生物汚泥の粒径も拡大し、平均粒径は300μmとなった。
【0072】
条件4期間において、MLSSが4000-5000mg/L程度となるように運転し、A値が0.075~0.125kgBOD/kgMLSS/dayとなるように生物処理工程の時間を設定したところ、SVI5は40mL/g程度まで低下し、SVI30は30mL/g程度まで低下した。また、微生物汚泥の粒径も拡大し、平均粒径は350μmとなった。
1 グラニュール形成装置、3 排水処理装置、10 半回分式反応槽、12 排水流入ポンプ、14 曝気用ポンプ、16 生物処理水排出口、18 生物処理水排出バルブ、20 制御装置、22 汚泥引抜口、24 汚泥引抜ポンプ、26 曝気装置、28,66 排水供給配管、30 生物処理水配管、32 汚泥引抜配管、34 モータ、36 撹拌翼、38 排水流入バルブ、40 排水流入口、42 排水排出部、50 排水貯留槽、52 連続式生物処理槽、54 固液分離装置、56,60,64 ポンプ、58,62 バルブ、68 汚泥配管、70 配管、72 処理水配管、74 汚泥排出配管、76 汚泥返送配管。