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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064436
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】プライマー塗布装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/165 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
E04F21/165 C
E04F21/165 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174721
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】松下 翼
(72)【発明者】
【氏名】堤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】冨永 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智雄
(57)【要約】
【課題】外壁の目地にプライマーを塗布する作業をより簡便な構成で行うことのできる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プライマー塗布装置は、第1支持体の先端に塗布部材が設けられ塗布部材にプライマー組成物が供給されるプライマー塗布ユニットと、第2支持体の先端に洗浄部材が設けられ洗浄部材に洗浄液が供給される洗浄ユニットと、プライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットを支持する本体と、本体を建築物の壁面に吊り下げた状態で上下方向に移動させる駆動ユニットと、を有する。プライマー塗布ユニットは、塗布部材の位置を壁面から離れた第1待機位置と壁面の目地に挿入する第1作業位置とに変位するように第1支持体を前後に駆動する第1駆動機構を含み、洗浄ユニットは、洗浄部材の位置を壁面から離れた第2待機位置と壁面の目地に挿入する第2作業位置とに変位するように第2支持体を前後に駆動する第2駆動機構を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持体の先端に塗布部材が設けられ、前記塗布部材にプライマー組成物が供給されるプライマー塗布ユニットと、
第2支持体の先端に洗浄部材が設けられ、前記洗浄部材に洗浄液が供給される洗浄ユニットと、
前記プライマー塗布ユニット及び前記洗浄ユニットを支持する本体と、
前記本体を建築物の壁面に吊り下げた状態で上下方向に移動させる駆動ユニットと、を有し、
前記プライマー塗布ユニットは、前記塗布部材の位置を、前記壁面から離れた第1待機位置と前記壁面の目地に挿入する第1作業位置とに変位するように前記第1支持体を前後に駆動する第1駆動機構を含み、
前記洗浄ユニットは、前記洗浄部材の位置を、前記壁面から離れた第2待機位置と前記壁面の目地に挿入する第2作業位置とに変位するように前記第2支持体を前後に駆動する第2駆動機構を含む、
ことを特徴とするプライマー塗布装置。
【請求項2】
前記本体に、前記壁面に接地するキャスターが設けられている、
請求項1に記載のプライマー塗布装置。
【請求項3】
前記本体に吸引手段が設けられ、前記吸引手段が、前記壁面に吸引力を作用させる、
請求項2に記載のプライマー塗布装置。
【請求項4】
前記吸引手段が、前記壁面との間に間隙を持って対向するように配置されている、
請求項3に記載のプライマー塗布装置。
【請求項5】
前記吸引手段が磁石である、
請求項4に記載のプライマー塗布装置。
【請求項6】
前記駆動ユニットが、ウインチと、前記ウインチに巻かれたワイヤと、前記建築物の上端で前記ワイヤが掛け回される滑車と、を含み、
前記本体が、前記ワイヤによって吊り下げられている、
請求項5に記載のプライマー塗布装置。
【請求項7】
前記洗浄ユニットが、前記プライマー塗布ユニットに対し、下側に配置されている、
請求項6に記載のプライマー塗布装置。
【請求項8】
前記本体が前記建築物に吊り下げられた状態で、前記壁面の上側から下側に向けて移動し、前記目地に対し、前記洗浄ユニットによる洗浄と、前記プライマー塗布ユニットに対するプライマーの塗布が連続して行われる、
請求項7に記載のプライマー塗布装置。
【請求項9】
前記プライマー塗布ユニット及び前記洗浄ユニットが、揺動可能及び水平方向への変位可能に吊設されている、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【請求項10】
前記第1支持体及び前記第2支持体の先端に円弧状のガイドが設けられている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【請求項11】
前記塗布部材及び前記洗浄部材が、メラミンスポンジと、前記メラミンスポンジを覆うネル生地で形成されている、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【請求項12】
前記本体に、前記壁面の目地に沿って前記プライマー塗布ユニット及び前記洗浄ユニットの位置を調整するガイドが設けられている、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【請求項13】
前記本体に、上端検出の第1変位センサと下端検出用の第2変位センサと、を有する、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【請求項14】
前記プライマー塗布ユニットが、支点を中心に回動する2つの第1支持体によって構成され、前記2つの第1支持体の作用点に前記塗布部材がそれぞれ設けられ、2つの前記塗布部材の間隔が変位可能にされている、
請求項1乃至13のずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【請求項15】
前記プライマー塗布ユニットが、水平に移動する2つの第1支持体によって構成され、前記2つの第1支持体の作用点に前記塗布部材がそれぞれ設けられ、2つの前記塗布部材の間隔が変位可能にされている、
請求項1乃至13のずれか一項に記載のプライマー塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁の施工に使用するプライマー塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁をカーテンウォール工法で施工する場合、外壁パネルの繋ぎ目に形成される目地にプライマーを塗布し、シーリング材で充填する作業が必要となる。このような作業を人手によって行う際には外壁に足場を架設したり、ゴンドラを吊り下げたりする必要がある。これに対し、外壁の目地を自動的にシーリング可能とするために、建築物の高さに相当する架台にプライマー及びシーリング材を供給する装置を搭載し、当該装置を昇降用レールで上下に走行可能とした自動化装置が開示されている(特許文献1参照)。また、外壁に沿って上下方向に延びるレールに沿って移動する稼働部にシーリング手段を設けたシーリング材充填装置が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-268973号公報
【特許文献2】特開2002-121889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるシーリングのための自動化装置は、建築物の外側に同じ高さの架台を設置する必要があり、建築物の高層化に適応することが難しいという問題を有している。また、特許文献2に開示されるようなシーリング材充填装置でも、施工に当たってレールを設置する必要があり、そのための労力が必要となる。また、レールが曲がっているとシーリング材充填装置がスムーズに移動できないという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、外壁の目地にプライマーを塗布する作業をより簡便な構成で行うことのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプライマー塗布装置は、第1支持体の先端に塗布部材が設けられ塗布部材にプライマー組成物が供給されるプライマー塗布ユニットと、第2支持体の先端に洗浄部材が設けられ洗浄部材に洗浄液が供給される洗浄ユニットと、プライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットを支持する本体と、本体を建築物の壁面に吊り下げた状態で上下方向に移動させる駆動ユニットと、を有する。プライマー塗布ユニットは、塗布部材の位置を壁面から離れた第1待機位置と壁面の目地に挿入する第1作業位置とに変位するように第1支持体を前後に駆動する第1駆動機構を含み、洗浄ユニットは、洗浄部材の位置を壁面から離れた第2待機位置と壁面の目地に挿入する第2作業位置とに変位するように第2支持体を前後に駆動する第2駆動機構を含む。
【0007】
本発明において、プライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットは揺動可能及び水平方向への変位可能に吊設されていてもよく、第1支持体及び第2支持体の先端に円弧状のガイドが設けられていてもよい。塗布部材及び洗浄部材は、メラミンスポンジとメラミンスポンジを覆うネル生地で形成されていてもよい。
【0008】
本発明において、本体には、壁面に接地するキャスターが設けられていてもよく、本体に吸引手段が設けられ、吸引手段が壁面に吸引力を作用させて本体が壁面から離れないように安定化させてもよい。吸引手段は、壁面との間に間隙を持って対向するように配置されていてもよい。吸引手段は磁石であってもよい。本体には、上端検出の第1変位センサと下端検出用の第2変位センサとが設けられていてもよい。
【0009】
本発明において、プライマー塗布装置の駆動ユニットは、ウインチ、ウインチに巻かれたワイヤ、及び建築物の上端でワイヤが掛け回される滑車を含み、本体がワイヤによって吊り下げられる構成を有していてもよい。洗浄ユニットはプライマー塗布ユニットに対し下側に配置されていることが好ましく、本体には、壁面の目地に沿ってプライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットの位置を調整するガイドが設けられていてもよい。本体が建物に吊り下げられた状態で、壁面の上側から下側に向けて移動し、目地に対し、洗浄ユニットによる洗浄と、プライマー塗布ユニットに対するプライマーの塗布が連続して行われてもよい。
【0010】
本発明において、プライマー塗布ユニットが、支点を中心に回動する2つの第1支持体によって構成され、2つの第1支持体の作用点に塗布部材がそれぞれ設けられ、2つの塗布部材の間隔が変位可能にされていてもよい。プライマー塗布ユニットが、水平に移動する2つの第1支持体によって構成され、2つの第1支持体の作用点に塗布部材がそれぞれ設けられ、2つの前記塗布部材の間隔が変位可能にされていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るプライマー塗布装置は、プライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットが本体に取り付けられ、本体が駆動ユニットにより外壁に吊り下げられた状態で作業を行うことができるので、レールなどを事前に施工する必要がなく、簡便な構成で作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るプライマー塗布装置の概要を示す図である。
図2】本発明に係るプライマー塗布装置の構成を示す正面図である。
図3】本発明に係るプライマー塗布装置の構成を示す側面図である。
図4】本発明に係るプライマー塗布装置の構成を示す上面図である。
図5】本発明に係るプライマー塗布装置におけるプライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットの取り付け構造示す斜視図である。
図6】本発明に係るプライマー塗布装置における塗布部材の構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は目地に塗布部材が挿入された状態を示す。
図7】本発明に係るプライマー塗布装置におけるプライマー塗布ユニットの動作を説明する図であり、(A)は塗布部材が待機位置にある場合、(B)は塗布部材が作業位置にある場合を示す。
図8】本発明に係るプライマー塗布装置におけるプライマー塗布ユニットの構成を示す上面図であり、(A)はプライマー塗布ユニットを目地に挿入する前の状態を示し、(B)はプライマー塗布ユニットを目地に挿入された後の状態を示し、(C)は塗布部材の正面図を示す。
図9】本発明に係るプライマー塗布装置におけるプライマー塗布ユニットの動作を説明する図であり、(A)乃至(C)は、力点の側でカムを使って動作を制御するときのバリエーションを示す。
図10】本発明に係るプライマー塗布装置におけるプライマー塗布ユニットの構成を示す上面図であり、(A)はプライマー塗布ユニットを目地に挿入する前の状態を示し、(B)はプライマー塗布ユニットを目地に挿入された後の状態を示す。
図11】本発明に係るプライマー塗布装置の機能的な構成を示す。
図12】本発明に係るプライマー塗布装置の動作フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0014】
図1は、本実施形態に係るプライマー塗布装置100の概要を示す。プライマー塗布装置100は、本体102に設けられたプライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108と、駆動ユニット104とを含む。図1は、プライマー塗布装置100を側面からみたときの構成を模式的に示し、図中に建築物の外壁200の正面から本体102を見たときの模式図を挿入図で示す。
【0015】
本体102は、例えば、箱形に組まれたフレームによって構成され、一部のフレームによってプライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108を支持する構造を有する。また、本体102は、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108を収納可能な筐体によって構成され、後述されるように、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108の先端部分が筐体から突出するように設けられていてもよい。本体102は、外壁200の壁面に沿って上下にスムーズに移動できるように、キャスター1021が設けられていることが好ましい。
【0016】
駆動ユニット104は、ウインチ1041、滑車1042、及びワイヤ1043を含む。ウインチ1041は、ワイヤ43の巻上げ及び巻下げのため用いられる。滑車1042は支柱1044によって外壁200の上側に配置される。また、滑車1042はクレーンによって吊られた状態で外壁200の上方に配置されてもよい。ワイヤ1043は、滑車1042に掛け回されて本体102に連結される。ワイヤ1043は、本体102の上部に設けられた連結具1022によって本体102と連結される。
【0017】
ウインチ1041は滑車1042より低い位置に設置される。例えば、ウインチ1041は地面に設置される。また、ウインチ1041は建築物の屋上に設置されてもよい。ウインチ1041の動力源としては、電動モータ又は油圧モータが用いられる。プライマー塗布装置100が作業を行うとき、本体102は滑車1042の下に配置され、ワイヤ1043で吊られた状態で外壁200の壁面に沿って上部から下部へ移動する。ウインチ1041は、ワイヤ1043の巻下げを行うことで、本体102を外壁200の壁面に沿って上部から下部へ移動させる。また、ウインチ1041によってワイヤ1043を巻上げることで、本体102を外壁200の上部へ引き上げることができる。なお、図1は、滑車1042として1つの定滑車を示すが、滑車1042の構成はこれに限定されず、本体102を外壁200の壁面に沿って上下に駆動することができる構成であれば図示される構成に限定されない。例えば、滑車1042は、定滑車と動滑車が適宜組合わされていてもよい。また、ウインチ43の巻上げ及び巻下げはウインチ1041と呼ばれるものに限定されず、他のワイヤ巻き取り機構が用いられてもよい。
【0018】
プライマー塗布装置100は外壁200の目地202にプライマー組成物を塗布する用途に用いられる。目地202は縦目地である。図1の挿入図に示されるように、本体102はワイヤ1043で吊られた状態で目地202に沿って上から下へ移動する。プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108は、本体102共に目地202に沿って移動する。プライマー塗布装置100の作業は、目地202の洗浄とプライマー組成物の塗布である。プライマー塗布装置100が目地202に沿って外壁200の上から下へ移動する過程で、洗浄ユニット108によって目地202の洗浄を行い、プライマー塗布ユニット106によって目地202へのプライマー組成物の塗布が行われる。洗浄ユニット108及びプライマー塗布ユニット106は、本体102の移動方向に直列に配置される。洗浄ユニット108とプライマー塗布ユニット106とが上下に直列に配置されることで、プライマー塗布装置100により目地202の洗浄とプライマー組成物を塗布する作業が連続的に行うことができる。
【0019】
図2乃至図4を参照して本実施形態に係るプライマー塗布装置100の詳細な構成を説明する。ここで、図2はプライマー塗布装置100の正面図を示し、図3は同側面図を示し、図4は同上面図を示す。以下の説明ではこれらの図面を適宜参照するものとする。
【0020】
図2乃至図4に示すプライマー塗布装置100は、本体102が複数のフレームにより箱形に組まれた構造を有する。本体102には、外壁200に接地するキャスター1021、外壁200に吸引力を作用させる吸引手段110、外壁200の上端(作業開始位置)を検出する第1変位センサ112、外壁200の下端(作業終了位置)を検出の第2変位センサ113、制御盤114、プライマー組成物を供給する第1ディスペンサ116、洗浄液を供給する第2ディスペンサ117、プライマー組成物を貯留する第1容器118、洗浄液を貯留する第2容器119が設けられる。
【0021】
キャスター1021は、本体102が外壁200と対向する面に設けられる。本体102が外壁200の壁面をスムーズに移動するために、キャスター1021は本体102の上下左右の4箇所に設けられることが好ましい。吸引手段110も同様に、本体102が外壁200と対向する面に設けられる。プライマー塗布装置100が作業状態にあるとき、プライマー塗布ユニット106の先端(塗布部材1061)が外壁200の目地に挿入される。このとき反作用により本体102が外壁200から離れる力が作用するため、本体102が外壁200から離れて不安定にならないようにする必要がある。
【0022】
吸引手段110は、本体102が外壁200から離れないようにするために設けられる。例えば、吸引手段110は本体102のフレームに取り付けられ、キャスター1021の先端より外側へ突出しないように配置される。本体102を外壁200の壁面に沿ってスムーズに移動させるために、吸引手段110は外壁200との間に間隙ができるようにフレームに取り付けられていることが好ましい。また、吸引手段110は、本体102の移動を阻害しない程度で外壁200の表面を摺動するように取り付けられていてもよい。外壁200が鋼板などの強磁性材で形成される場合、吸引手段110として磁石を用いることができる。磁石としては、永久磁石、又は電磁石が用いられる。外壁200がプレキャストコンクリートの場合でも内部に鉄筋が含まれるため、磁石を用いた吸引手段110により吸引力を作用させることができる。また、吸引手段110は、磁力に代えて真空ポンプによる吸引力を利用することができる。
【0023】
第1変位センサ112は本体102の上部に設けられ、第2変位センサ113は本体102の下部に設けられる。第1変位センサ112は、本体102の取り付け位置から外壁200までの距離を計測するように設けられる。第2変位センサ113は本体102の取り付け位置から地面までの距離を計測するように設けられる。第1変位センサ112及び第2変位センサ113としては、例えば、光学式の変位センサが用いられる。例えば、第1変位センサ112及び第2変位センサ113として、レーザ変位センサが用いられる。
【0024】
第1変位センサ112及び第2変位センサ113は、プライマー塗布装置100による作業の始点及び終点を検知するために設けられる。第1変位センサ112は、本体102が外壁200の上端(作業開始点)を検出するために設けられる。本体102が外壁200の上端に達しない場合、第1変位センサ112は本体102から外壁200までの距離を計測する。第1変位センサ112(本体102のフレーム部分)から外壁200までの距離は、キャスター1021が外壁200に当接することにより一定に保たれる。このとき第1変位センサ112によって計測される距離は一定であり、又は規定の範囲内にある。
【0025】
第1変位センサ112は、本体102の高い位置(上側のキャスター1021より高い位置)に設けられる。このような配置により、本体102が外壁200の上端に達した場合には第1変位センサ112が外壁200までの距離を計測しない状態となり、第1変位センサ112で計測される値が大きく変化する。すなわち、本体102が外壁200の上端に達した場合には、第1変位センサ112の計測値が既定値から大きく変化するため、本体102が外壁200の上端に達したことを検知することができる。
【0026】
第2変位センサ113は、本体102の取り付け位置から地面までの距離を計測する。本体102が外壁200の下端(作業の終点)にあるとき、第2変位センサ113が計測する距離は、本体102から地面までの距離であり、その距離は既定値として知ることができる。本体102が駆動ユニット104により引き上げられた状態では、第2変位センサ113で計測される距離はその既定値よりも大きくなる。したがって、第2変位センサ113の計測値を既定値と比較すれば、本体102が下端に達したか否かを判断することができる。
【0027】
なお、本体102の位置を検出する第1変位センサ112及び第2変位センサ113はレーザ変位センサに限定されず、同様の機能を有する他の検出手段を用いることができる。例えば、レーザ変位センサを、撮像素子を用いた変位センサに置き換えることができる。
【0028】
制御盤114は、本体102の背面(外壁200に対抗する面とは反対側)に設けられる。制御盤114には、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108を駆動する制御回路が収納される。プライマー組成物を供給する第1ディスペンサ116、洗浄液を供給する第2ディスペンサ117、プライマー組成物を貯留する第1容器118、洗浄液を貯留する第2容器119は、本体102の適当な位置に配置される。例えば、これらの機器は本体102の上部に配置される。
【0029】
プライマー塗布ユニット106は、塗布部材1061と、塗布部材1061を支持する第1支持体1063と、第1支持体1063と共に塗布部材1061の前後の位置を変位させる第1駆動機構1062を含む。第1支持体1063の形状は任意であるが、塗布部材1061を外壁の目地に挿入するために、棒状体又は板状体が前方に突出する構造を有する。塗布部材1061は、この棒状体又は板状体の先端に取り付けられる。プライマー組成物の塗布は、塗布部材1061を外壁の目地の側壁に擦りつけるようにして作業が行われるため、第1支持体1063の突出する先端部分の形状はヘラ(篦)のように平たい形状を有していてもよい。
【0030】
塗布部材1061には第1ディスペンサ116によって第1容器118に貯留されたプライマー組成物が供給される。プライマー組成物が塗布部材1061に第1ディスペンサ116によって定量的に供給されることで、目地に沿って均一にプライマー組成物を塗布することができる。
【0031】
プライマー塗布ユニット106の下側にはトレー109が設けられていてもよい。トレー109は塗布部材1061から染み出して滴下したプライマー組成物を回収する用途に用いることができる。トレー109がプライマー塗布ユニット106の下に設けられることで、洗浄ユニット108がプライマー組成物で汚れないようにすることができる。
【0032】
洗浄ユニット108は、洗浄部材1081と、洗浄部材1081を支持する第2支持体1083と、第2支持体1083と共に洗浄部材1081の前後の位置を変位させる第2駆動機構1082を含む。第2支持体1083の形状は任意であるが、第1支持体1063と同様に棒状体又は板状体が前方に突出する構造を有する。洗浄部材1081は、この棒状体又は板状体の先端に取り付けられる。第2駆動機構1082は、洗浄部材1081の位置を前後に変位させる機能を有する。
【0033】
洗浄部材1081には第2ディスペンサ117によって第2容器119に貯留された洗浄液が供給される。洗浄液が洗浄部材1081に第2ディスペンサ117によって定量的に供給されることで、目地の洗浄を行うことができる。洗浄液は中性洗剤を用いることができる。目地202の洗浄は、洗剤を使わずに水のみで洗浄処理を行ってもよい。また、図示されないが、洗浄ユニット108にはエアガンが装着され、目地202をエアブローする機能が付加されていてもよい。
【0034】
第1駆動機構1062及び第2駆動機構1082は、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、又は空圧シリンダなどのアクチュエータで構成される。本実施形態は、第1駆動機構1062及び第2駆動機構1082として2つの独立した駆動機構を示すが、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108の駆動機構を共通化し、塗布部材1061及び洗浄部材1081が同時に変位する構成を有していてもよい。
【0035】
本実施形態に係るプライマー塗布装置100は、洗浄ユニット108によって外壁200の目地202の洗浄が行われ、プライマー塗布ユニット106によって目地にプライマー組成物の塗布が行われる。図1を参照して説明したように、プライマー組成物の塗布は、本体102が駆動ユニット104によって外壁200の上部に引き上げられ、外壁200の上方から下方に向けて降下する過程で行われる。プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108は本体102に取り付けられるので、洗浄ユニット108による目地202の洗浄と、プライマー塗布ユニット106によるプライマー組成物の塗布が連続して行うことができる。したがって、相対的な位置関係では、洗浄ユニット108がプライマー塗布ユニット106の下側に配置される。別言すれば、本体102の進行方向に対し、洗浄ユニット108がプライマー塗布ユニット106よりも前方に配置される。このような配置を有するプライマー塗布装置100により、目地の洗浄を行ってから間を置かずにプライマー組成物を塗布することが可能となり、それにより、プライマー組成物を塗布する作業が容易となり、作業時間に短縮を図ることでき、外壁200の目地202に確実にプライマー組成物を塗布することができる。
【0036】
図5は、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108の取り付け構造を斜視図によって示す。なお、図5を参照する説明において、前後方向とは図中に示す[A]の方向を指し、水平方向とは図中に示す[B]の方向を指し、揺動する方向を[C]の方向を指すものとする。
【0037】
プライマー塗布ユニット106は、塗布部材1061、第1駆動機構1062、第1支持体1063を含んで構成される。第1支持体1063は第1駆動機構1062によって前後に変位可能となるように設けられる。第1支持体1063は、前方(図5では紙面の下方に相当)に突出する棒状体又は板状体で形成される部分を有し、その部分に塗布部材1061が取り付けられる。塗布部材1061は、第1駆動機構1062の動作により第1支持体1063と共に変位可能となっている。
【0038】
洗浄ユニット108は、洗浄部材1081、第2駆動機構1082、第2支持体1083を含んで構成される。第2支持体1083は第2駆動機構1082によって前後に変位可能となるように設けられる。第2支持体1083は、前方(図5では紙面の下方に相当)に突出する棒状体又は板状体で形成される部分を有し、その部分に洗浄部材1081が取り付けられる。洗浄部材1081は、第2駆動機構1082の動作により第2支持体1083と共に変位可能となっている。
【0039】
プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108は、第1支持板120に取り付けられる。第1支持板120は、一端が回転軸124に接続され、他端は自由端となっている。回転軸124は、第2支持板122に取り付けられた軸受け125により回動可能に支持される。軸受け125は、すべり軸受け又は転がり軸受けで構成され、例えば、ベアリングホルダが用いられる。また、第2支持板122は、水平方向にスライドするリニアガイド126に取り付けられる。第1支持板120は、このような取り付け構造により、振り子のように揺動し(図5に示す[C]の方向)、さらに水平方向(図5に示す[B]の方向)にも変位可能とされている。プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108は、第1支持板120に取り付けられることで、本体102の中の定位置に固定されるのではなく、揺動可能及び水平方向に変位可能な状態で設置されている。
【0040】
このようにプライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108は、片持ちされた第1支持板120によって保持され、揺動可能及び水平方向に変位可能に取り付けられる。このよう取り付け構造により本体102が外壁200の目地202に沿って降下するときに、塗布部材1061及び洗浄部材1081は、目地202に挿入した状態で、目地202から外れることなくスムーズに移動することができる。すなわち、本体102が外壁200の上から下に移動するとき、本体102の位置が水平方向(左右方向)に揺らいだとしても、プライマー塗布ユニット106の塗布部材1061及び洗浄ユニット108の洗浄部材1081が外壁200の目地202から外れないようにすることができる。
【0041】
第1支持板120の先端には、目地202に沿うようにガイド128aが設けられていてもよい。ガイド128aは、第1支持板120から前方(図5では紙面の下方に相当)に突出し、目地に挿入する位置に設けられる。図2の正面図に示すように、ガイド128aは、洗浄部材1081より下方側に設けられる。すなわち、本体102が外壁200の上側から下側に移動するとき、ガイド128aは、洗浄部材1081及び塗布部材1061の移動方向の前方であり、第1支持板120の自由端の側に設けられる。また、塗布部材1061、洗浄部材1081、及びガイド128aは、それぞれの縦方向の中心線が同一線上に並ぶように第1支持板120に取り付けられる。このような構成により、ガイド128aによって第1支持板120の角度及び水平方向の位置を目地202に沿うように調整することができ、塗布部材1061及び洗浄部材1081が目地202から外れないようにすることができる。ガイド128aは1つでもよいが、第1支持板120の揺動角及び水平方向の位置を微調整する機能を確実に発現するために、縦方向に複数個配列されていてもよい。図5は、一例をして、ガイド128aが縦方向に2つ配置される例を示す。
【0042】
第1支持板120に設けられるガイド128aに加え、図2に示すように、本体102の側にもガイド128bが設けられていてもよい。可動板である第1支持板120のガイド128aと本体102の側のガイド128bは縦方向の配置において直線状に配置されていることが好ましい。このような取り付け位置の異なる2種類のガイド(ガイド128a及びガイド128b)により、塗布部材1061及び洗浄部材1081の位置を目地に沿うように正確に調整することができる。
【0043】
図6(A)及び(B)は、塗布部材1061の詳細を示す。図6(A)は塗布部材1061の上面図を示し、図6(B)は塗布部材1061の正面図を示す。塗布部材1061は柔軟性を有する1つ又は複数の部材を組み合わせて構成される。図6(A)及び(B)は、塗布部材1061が、柔軟性を有する発泡樹脂材10611と布状材10612を組み合わせて構成される例を示す。
【0044】
図6(A)及び(B)に示すように、塗布部材1061は第1支持体1063の先端を覆うように設けられる。第1支持体1063は金属、プラスチックなどの硬質の素材で形成されるのに対し、塗布部材1061は柔軟性、吸水性を有する素材で形成される。塗布部材1061は、第1支持体1063の先端を覆うように発泡樹脂材10611が設けられ、その外側を覆うように布状材10612が設けられる。図示されないが、プライマー組成物は発泡樹脂材10611に供給される。プライマー組成物はアクリル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系、エポキシ系の塗料であり液状体である。発泡樹脂材10611は吸水性を有し、十分な量のプライマー組成物が供給されると、布状材10612に染み出して目地202に塗布することができる。
【0045】
発泡樹脂材10611としては、例えば、メラミンスポンジが用いられる。また、布状材10612としてネル生地(フランネル生地)が用いられる。メラミンスポンジは吸水性を有し、ネル生地は適度な透水性を有するため、これらの素材で形成される塗布部材1061にプライマー組成物を供給することで、目地にプライマー組成物を均一に塗布することができる。
【0046】
このように、発泡樹脂材10611を布状材10612で覆うことで、発泡樹脂材10611の摩耗を抑えることができ、丈夫な塗布部材1061を形成することができる。ネル生地は、弾力性を有し、丈夫であり、表面に起毛を有するので、メラミンスポンジを保護し、刷毛の代用品として用いることができる。
【0047】
第1支持体1063の先端には、円弧状のガイド10613が設けられていてもよい。円弧状のガイド10613は外部に露出されていてもよいが、発泡樹脂材10611及び布状材10612に覆われるように設けられていてもよい。円弧状のガイド10613を用いることで、塗布部材1061を目地202に挿入した状態で目地から外れないようにしてプライマー組成物を塗布することができる。
【0048】
図6(C)は、塗布部材1061が外壁200の目地202に挿入された状態を示す。外壁200は、各種カーテンウォールで形成されるものであり、パネル間の目地202にはシーリング材が充填されるが、図6(C)はシーリング材が充填される前のプライマー組成物が塗布される段階を示す。塗布部材1061は、目地202の側壁に接し、バックアップ材204が填装される部分の手前まで目地202に挿入される。円弧状のガイド10613が設けられることで、第1支持板120の揺動及び水平位置の変位機構と相まって、第1支持体1063の先端の位置を精密に調整しなくても、目地202の中に容易に挿入することが可能となる。塗布部材1061は、目地202の幅と同程度か、目地202の幅より少し大きめであることが好ましい。いずれにしても、塗布部材1061が目地202に挿入された状態で作業が自動的に行われるので、外壁200をマスキングテープなどで養生しなくても目地202にプライマー組成物を塗布することができる。
【0049】
なお、図示されないが、洗浄ユニット108の洗浄部材1081も、図6(A)乃至(C)に示す塗布部材1061と同様の構成を有する。また、本実施形態では図示されないが、塗布部材1061及び洗浄部材1081は、発泡樹脂材及び布状材に代えて刷毛が用いられてもよい。
【0050】
図7(A)及び(B)は、プライマー塗布ユニット106の動作を示す。図7(A)は、塗布部材1061が第1待機位置にある場合を示し、図7(B)は、塗布部材1061が第1作業位置にある場合を示す。第1待機位置は、塗布部材1061が本体102に収納される位置(別言すれば、本体102から突出しない位置)であり、第1作業位置は、塗布部材1061が本体102から突出し、外壁200の目地202に挿入される位置である。塗布部材1061の第1待機位置及び第1作業位置の制御は、第1駆動機構1062の動作により制御される。なお、図示されないが、洗浄ユニット108の洗浄部材1081の第2待機位置及び第2作業位置も同様である。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るプライマー塗布装置100によれば、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108が本体102に取り付けられ、本体102はウインチ1041、滑車1042、及びワイヤ1043で構成される駆動ユニット104により吊り下げられた状態で、作業が行われるので、レールなどを事前に施工する必要がなく、簡便な構成で作業を行うことができる。本体102には、キャスター1021が設けられ、さらに本体102が外壁200から離れないようにする吸引手段110が設けられることで、安定した状態で外壁200の表面を移動し、作業を行うことができる。本体102の上下方向の移動に対し、待機位置及び作業位置の少なくとも2つの前後に変位する位置に制御されるプライマー塗布ユニット及び洗浄ユニットを有することで、本体102が移動時するときに不慮の衝突による各ユニットの破損を防ぐことができ、作業時には本体102を外壁表面で移動させながら洗浄及びプライマー組成物の塗布をスムーズに行うことができる。
【0052】
図8(A)及び(B)は、プライマー塗布ユニット106の他の構成を示す。ここで、図8(A)は、プライマー塗布ユニット106を目地202に挿入する前の状態を示す上面図であり、図8(B)は、プライマー塗布ユニット106を目地202に挿入したときの状態を示す。
【0053】
図8(A)及び(B)に示すプライマー塗布ユニット106は、第1支持体が、第1支持体1063Aと第1支持体1063Bとの2つに分かれた構成を有する。第1支持体1063Aと第1支持体1063Bとは支点140の位置で回動自在に留められており、支点140を中心に塗布部材1061の側が作用点、その反対側が力点として機能するように構成されている。具体的に、第1支持体1063A及び第1支持体1063Bの先端には発泡樹脂材10611及び布状材10612で形成される塗布部材1061が設けられ、その反対側の端部にはカムフォロア134(134A、134B)が設けられている。このような構成を有するプライマー塗布ユニット106は、シリンダ130によって前後に動作するカム132によって、塗布部材1061が目地202の側面に、密着するように制御することができる。
【0054】
図8(A)に示すように、プライマー塗布ユニット106を目地202に挿入する前の状態では、カムフォロア134Aとカムフォロア134Bとの間にカム132の幅広部分が介在している。カムフォロア134Aとカムフォロア134Bとの間にはバネ136で引張力が作用しているが、カム132が介在することにより、第1支持体163Aと第1支持体163Bとは平行な状態を保っている。
【0055】
図8(B)に示すように、プライマー塗布ユニット106が目地202に挿入された状態では、シリンダ130によってカム132の位置が変位して、カムフォロア134Aとカムフォロア134Bの間隔が狭まるように変化する。第1支持体1063Aと第1支持体1063Bは、支点140を中心に回動するので、先端に位置する塗布部材1061は角度θ1だけ変位する。別言すれば、第1支持体1063Aと第1支持体1063Bは、カムフォロア134Aとカムフォロア134Bの間隔が狭まることで、塗布部材1061の間隔が両側に広がるように変位する。なお、変位する角度θ1の大きさは適宜設定することができ、例えば、角度θ1は0.5~5度の範囲に設定することができる。
【0056】
図8(A)及び(B)に示すプライマー塗布ユニット106によれば、塗布部材1061を目地202の側壁(外壁200の側端)に密接させることができ、目地202の側壁にプライマーを均一に塗布することができる。塗布部材1061が広がる幅は、カム132によって調整可能であり、目地202の幅が異なる外壁200に対して柔軟に対応することができる。
【0057】
図8(C)は、プライマー塗布ユニット106の塗布部材1061を正面からみたときの断面構造を示す。プライマー塗布ユニット106は、塗布部材1061が目地202に挿入された状態で建築物の上から下に向けて移動する。この場合、第1支持体1063A及び第1支持体1063Bの進行方向の先頭部分(下側部分)が内側に向くように屈曲されていることが好ましい。このような構成を有することで、塗布部材1061が目地202の中で引っかからないようにすることができ、スムーズにプライマーを塗布することができる。
【0058】
図9(A)乃至(C)は、作用点に塗布部材1061を置き、力点の側でカムを使って動作を制御するときのバリエーションを示す。図9(A)は、図8(A)及び(B)に示す動作と同じ動作を示し、プライマー塗布ユニット106の目地202へ挿入前の状態から、挿入時には第1支持体1063Aが角度θ1だけ変位(第1支持体1063Bも同様)する動作を示す。
【0059】
図9(B)は、プライマー塗布ユニット106が目地202に挿入される前の状態において、第1支持体1063Aが角度θ2だけ内側に変位(第1支持体1063Bも同様)しており、目地202に挿入された後に第1支持体1063A及び第1支持体1063Bの先端が平行になるように広がる動作を示す。このような動作によれば、塗布部材1061の間隔を狭めた状態で目地202へ挿入することができ、比較的幅の狭い目地202に対しても容易に挿入することができる。そして、目地202の中で第1支持体1063A及び第1支持体1063Bが広がることにより、目地202の側壁に確実に塗布部材1061を当接させることができる。
【0060】
図9(C)は、目地202の側壁が角度θ4だけ傾いている場合を示す。この場合、プライマー塗布ユニット106が目地202に挿入される前の状態において、第1支持体1063Aが角度θ3だけ内側に変位(第1支持体1063Bも同様)しており、目地202に挿入された後に第1支持体1063A及び第1支持体1063Bの先端が広がり角度θ4の状態で塗布部材1061が目地202の側壁に当接する状態を示す。ここで、角度θ4は角度θ3より小さいか又は等しい角度である(θ4≦θ3)。このように、目地202の側壁が傾いている場合でも、第1支持体1063A及び第1支持体1063Bの広がる角度を調節することで塗布部材1061を目地202の側壁に密接させることができる。
【0061】
図10(A)及び(B)は、プライマー塗布ユニット106の上面図を示し、第1支持体1063A及び第1支持体1063Bが水平に移動することで、塗布部材1061を目地202の側壁に密接させる動作を示す。
【0062】
図10(A)は、プライマー塗布ユニット106が目地202に挿入される前の状態を示す。第1支持体1063A及び第1支持体1063Bは、スライダ142によって水平に(横方向に)移動可能な状態に配置されている。カムフォロア134Aとカムフォロア134Bとの間にはバネ136が設けられているが、初期状態ではバネ136の弾性力が作用していなくてもよい。この状態で第1支持体1063A及び第1支持体1063Bの先端部に設けられた塗布部材1061の間隔は目地202の幅より狭くなっていることが好ましい。
【0063】
図10(B)は、プライマー塗布ユニット106が目地202に挿入された後の状態を示す。シリンダ130によってカム132がカムフォロア134Aとカムフォロア134Bとの間に挿入されると、第1支持体1063A及び第1支持体1063Bがスライダ142によって水平方向に移動して両者の間隔が広がる方向に動作する。この動作によって塗布部材1061を目地202の内壁に当接させることが可能となる。図示されるように、平面視で台形のカム132を用いることで、カム132を挿入することで、第1支持体1063A及び第1支持体1063Bが広がる幅を調節することができるので、目地202の幅に応じて柔軟に適応することができる。
【0064】
図8(A)及び(B)、並びに図10(A)及び(B)に示すプライマー塗布ユニット106の構成によれば、目地202の側壁に十分な広さをもってプライマーを塗布することができる。なお、図8(A)及び(B)、並びに図10(A)及び(B)は、プライマー塗布ユニット106の構成を説明したが、同様の構成を洗浄ユニット108に適用することができる。
【0065】
図11は、本実施形態に係るプライマー塗布装置100の機能的な構成を示す。プライマー塗布装置100は、目地を洗浄しプライマーを塗布する本体102と、本体102を外壁に沿って上下させる駆動ユニット104と、本体102を起動させ停止させる操作部152とを含む。
【0066】
本体102は、プライマー塗布ユニット106、洗浄ユニット108、第1駆動機構1062、第2駆動機構1082、第1ディスペンサ116、第2ディスペンサ117、第1変位センサ112、第2変位センサ113、制御部150を有する。
【0067】
プライマー塗布ユニット106は、目地にプライマーを塗布する機能を有し、洗浄ユニット108は目地を洗浄する機能を有する。第1駆動機構1062はプライマー塗布ユニット106の機械的な動作を制御する機能を有し、第2駆動機構1082は洗浄ユニット108の機械的な動作を制御する機能を有する。プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108の機械的な動作は図7を参照して説明したとおりである。第1ディスペンサ116はプライマー塗布ユニット106にプライマーを供給する機能を有し、第2ディスペンサ117は洗浄ユニット108に洗浄液を供給する機能を有する。
【0068】
第1変位センサ112は本体102が外壁の上端(作業開始位置)に達したことを検出し、検出信号を制御部150に出力する機能を有する。また、第2変位センサ113は本体102が外壁の下端(作業終了位置)に達したことを検出し、検出信号を制御部150に出力する機能を有する。
【0069】
制御部150は、第1駆動機構1062、第2駆動機構1082、第1ディスペンサ116、第2ディスペンサ117の動作を制御する命令を出力する機能を有する。制御部150は、中央処理ユニット(CPU)、メモリ、インターフェースを含んで構成される。制御部150には、本体102に備えられる各機器の動作を制御する制御プログラムがメモリに格納されている。本体102が起動されると、制御部150に格納されている制御プログラムが実行され、各機器の動作を制御する命令が出力される。制御部150は、第1変位センサ112、第2変位センサ113の検出信号に基づき本体102の状態が判断され、その状態に応じた制御命令を制御プログラムに基づいて第1駆動機構1062、第2駆動機構1082、第1ディスペンサ116、第2ディスペンサ117に出力する機能を有する。
【0070】
駆動ユニット104は、ウインチ1041の巻上げ及び巻下げの動作を制御する機能を有する。別言すれば、駆動ユニット104は、ウインチ1041を介して本体102の外壁に沿った上下の移動を制御する機能を有する。駆動ユニット104は、制御部150の命令に従いウインチ1041の巻上げ及び巻下げの動作を制御する。本体102及び駆動ユニット104の動作が制御部150で集中制御されることにより、本体102の移動と、外壁の目地の洗浄及びプライマー塗布の動作が連動し、スムーズが作業を行うことが可能となっている。
【0071】
操作部152は、作業者が直接的に操作する部分であり、本体102の起動、停止を出力する機能を有する。また、操作部152は、作業者がマニュアルで本体102及び駆動ユニット104の動作を制御する機能を有していてもよい。例えば、操作部152は、緊急時に駆動ユニット104を制御部150から切り離して、作業員の操作により操作する機能を有していてもよい。
【0072】
図12は、プライマー塗布装置100の動作フロー図を示す。図12に示すように、プライマー塗布装置100は、本体102、駆動ユニット104、操作部152が連動して動作する。以下においては、図11を併せて参照しながら、プライマー塗布装置100の動作を、図12に示す動作フロー図に従い説明する。
【0073】
まず、プライマー塗布装置100を起動する前に、本体102を外壁の前(縦目地の前)に配置し、各部の状態を作用者が目視で確認する(S201)。例えば、作業者が地上で、プライマー塗布ユニット106及び洗浄ユニット108が待機位置にあるか、第1ディスペンサ116、第2ディスペンサ117に処理用の溶液が充填されているか、第2変位センサ113が下端を検出しているかを確認する。各部位の条件が初期状態になっていない場合は、本体102の起動前に作業者がリセット状態に調整する。
【0074】
操作部152の起動スイッチがオンになると(S202)、制御部150に格納された制御プログラムに従い、駆動ユニット104の自動運転が開始される(S204)。
【0075】
本体102では、第1ディスペンサ116及び第2ディスペンサ117がオンになり(S206)、制御部150がウインチ1041の巻上げ速度を設定し(S208)、駆動ユニット104へウインチ巻上げ命令を出力する(S210)。駆動ユニット104は、ウインチ巻上げ命令を受信するとウインチ1041を駆動してワイヤの巻上げを開始する。これにより本体102が外壁面に沿って上方に持ち上げられる(図1参照)。そして、本体102が外壁の上端に達したことを第1変位センサ112が検出すると(S214)、制御部150はウインチ1041の停止命令を駆動ユニット104に出力する。駆動ユニット104はウインチ停止命令を受信するとウインチ1041の巻上げ動作を停止する。
【0076】
その後、本体102では、制御部150から第1駆動機構1062及び第2駆動機構1082を駆動する命令が出力される(S220)。具体的には、制御部150から第1駆動機構1062に対しプライマー塗布ユニット106の塗布部材1061が第1作業位置になるようにシリンダを駆動する命令が出力され、第2駆動機構1082に対し洗浄ユニット108の洗浄部材1081が第2作業位置になるようにシリンダを駆動する命令が出力される(図7参照。)
【0077】
制御部150から駆動ユニット104にウインチ巻下げ命令が出力されると(S222)、駆動ユニット104はウインチ1041を駆動してワイヤの巻出しを開始する(S224)。ウインチ1041の巻下げ動作により本体102は下降し、その過程で縦目地の洗浄及びプライマー塗布の処理が行われる(S226)。
【0078】
第2変位センサ113が下端を検知すると(S228)、制御部150はウインチ停止命令を駆動ユニット104に出力し(S230)、その命令を受けた駆動ユニット104はウインチ1041を停止する(S232)。その後、本体102では、制御部150から第1駆動機構1062及び第2駆動機構1082を駆動する命令が出力される(S234)。具体的には、制御部150から第1駆動機構1062に対しプライマー塗布ユニット106の塗布部材1061が第1待機位置に移動するようにシリンダを駆動する命令が出力され、第2駆動機構1082に対し洗浄ユニット108の洗浄部材1081が第2待機位置に移動するようにシリンダを駆動する命令が出力される(図7参照。)また、制御部150は、第1ディスペンサ116及び第2ディスペンサ117をオフにし(S236)、自動運転が停止される(S238)。そして、操作部152で起動スイッチS240をオフにするとプライマー塗布装置100が停止する。
【0079】
その後、別の縦目地にプライマーを塗布する場合には、本体102を移動させて同様の処理が繰り返される。
【0080】
以上のように、プライマー塗布装置100を構成する各要素が連携して動作することにより、建物の外壁の縦目地にプライマーを自動で塗布することができる。作業者は滑車で本体102を吊り下げ縦目地の位置に配置すればよく、それ以降は図12を参照して説明したように制御部150が制御プログラムに従って各部の機能を制御して目地の洗浄及びプライマーの塗布が行われるので、作業にかかる労力が低減し、高所の作業が少なくなるので安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0081】
100:プライマー塗布装置、102:本体、1021:キャスター、1022:連結具、104:駆動ユニット、1041:ウインチ、1042:滑車、1043:ワイヤ、1044:支柱、106:プライマー塗布ユニット、1061:塗布部材、10611:発泡樹脂材、10612:布状材、10613:ガイド、1062:第1駆動機構、1063:第1支持体、108:洗浄ユニット、1081:洗浄部材、1082:第2駆動機構、1083:第2支持体、109:トレー、110:吸引手段、112:第1変位センサ、113:第2変位センサ、114:制御盤、116:第1ディスペンサ、117:第2ディスペンサ、118:第1容器、119:第2容器、120:第1支持板、122:第2支持板、124:回転軸、125:軸受け、126:リニアガイド、128:ガイド、130:シリンダ、132:カム、134:カムフォロア、136:バネ、140:支点、142:スライダ、150:制御部、152:操作部、200:外壁、202:目地、204:バックアップ材
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10
図11
図12