(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006449
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】駆動装置および入浴装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61H33/00 310G
A61H33/00 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109049
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000182373
【氏名又は名称】酒井医療株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中村 康二
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和博
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BB04
4C094BB06
4C094BB07
4C094BB10
4C094BB12
4C094CC02
4C094CC03
4C094CC04
4C094CC09
4C094CC12
4C094DD14
4C094GG02
4C094GG07
4C094GG14
(57)【要約】
【課題】小型化、低価格化に寄与し、偏荷重や捻れ等の応力の発生を抑制する。
【解決手段】駆動対象を保持するホルダと、シリンダ部およびロッド部を有する駆動部と、ホルダとロッド部に固定されたガイド軸と、ホルダに対向して配置された対向壁部と、ガイド軸が嵌合するガイド孔を有するガイド板と、ガイド板とシリンダ部に固定されたシリンダ固定軸とを備える。駆動部、ガイド軸、ガイド板、シリンダ固定軸は、第2方向に間隔をあけて複数組設けられ、ガイド板は貫通孔を有し、貫通孔に挿通されたネジ部材により対向壁部に取り付けられる。対向壁部とガイド板との間には弾性変形する弾性部材が設けられる。対向壁部は、ガイド軸が挿通する挿通孔を有する。ガイド軸と挿通孔との隙間量、およびネジ部材と貫通孔との隙間量は、複数組のガイド軸の第2方向の距離と、複数組のロッド部の最大同期ずれ量とで求められるガイド軸の最大傾きに応じた隙間量である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象を第1方向に駆動する駆動装置であって、
前記駆動対象を前記第1方向の一方側で保持するホルダと、
シリンダ部および前記シリンダ部に対して前記第1方向に駆動されるロッド部を有する駆動部と、
前記第1方向に延び、一端が前記ホルダに固定され他端が前記ロッド部に固定されたガイド軸と、
前記ホルダの前記第1方向の一方側に対向して配置された対向壁部と、
前記対向壁部の前記第1方向の一方側に取り付けられ、前記ガイド軸が前記第1方向に移動自在に嵌合するガイド孔を有するガイド板と、
前記第1方向に延び、一端が前記ガイド板に固定され他端が前記シリンダ部の前記第1方向の他方側に固定され、前記シリンダ部を前記ガイド板の前記第1方向の一方側に位置させるシリンダ固定軸と、を備え、
前記駆動部、前記ガイド軸、前記ガイド板および前記シリンダ固定軸は、前記第1方向と交差する第2方向に間隔をあけて複数組で設けられ、
前記ガイド板は、
前記ガイド孔を挟んだ前記第2方向の両側にそれぞれ配置され前記第1方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に挿通されたネジ部材により前記対向壁部に取り付けられ、
前記対向壁部と前記ガイド板との間には、前記貫通孔の位置に前記第1方向に弾性変形する弾性部材がそれぞれ設けられ、
前記対向壁部は、前記第1方向に貫通し前記ガイド軸が挿通する挿通孔を有し、
前記ガイド軸と前記挿通孔との隙間量は、および前記ネジ部材と前記貫通孔との隙間量は、それぞれ前記複数組の前記ガイド軸の前記第2方向の距離と、前記複数組の前記ロッド部の最大同期ずれ量とで求められる前記ガイド軸の最大傾きに応じた隙間量であることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記対向壁部は、下端の位置から前記第1方向の他方側に延出し、前記ホルダの前記第1方向の移動を下側からガイドするガイド壁部を有する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記シリンダ部の前記第1方向の一方側の端部は、非拘束に設けられている、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記ネジ部材が挿通する皿ばねである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動対象、前記駆動部、前記ガイド軸、前記ガイド板および前記シリンダ固定軸は、前記第2方向に延びる中心線を挟んで線対称にそれぞれ設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
車椅子に載せた入浴者を入出位置に傾けた浴槽内に移送し、前記車椅子を保持した浴槽に湯を満たすことで入浴者を入浴させるようにした入浴装置において、
前記浴槽の一端部から内部に延びて形成されていて前記車椅子の着座部を支持する支持部材を浴槽内に移動可能な切欠と、
前記切欠を開閉可能なシール部材と、
前記シール部材を駆動し、支持部材を液密に挟んで前記切欠を閉鎖させる請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動装置と、
を備えたことを特徴とする入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置および入浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、体が不自由で介助が必要な者(以下、要介助者と記す。)を車椅子に載せて浴槽に入浴させる装置として、例えば下記特許文献1に記載された入浴装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された入浴装置は、可動浴槽の一端から内部に延びる切欠を設け、車椅子の着座部を支持する支持ロッドを切欠に通して可動浴槽内に移動させる構成を有している。切欠には、開閉可能な一対のシール部材が設けられている。各シール部材は、シール部材の長手方向に離れてフレームに設けられた二つの一軸の駆動装置により移動して互いに当接し、支持ロッドを液密に挟んで切欠を閉鎖可能である。
【0004】
例えば、油圧等の一軸アクチュエータで構成される一対の駆動装置を用いて駆動対象(シール部材)を同期して移動させることは容易ではない。一対の駆動装置の同期がずれた場合には、駆動装置のシリンダ軸や、シリンダ軸と駆動対象とを連結する連結軸に偏荷重や捻れ等の応力が生じ、シール部材による切欠の開閉が不安定になる可能性がある。
【0005】
特許文献2には、複数の油圧シリンダロッドの傾き応力を吸収するダンパー機構を有する昇降装置が開示されている。特許文献3には、複数の油圧アクチュエータを同時にかつ小刻みな作動を可能とした定量給油機構を備えた同期制御昇降装置が開示されている。特許文献4には、小ストローク移動+移動量フィードバック制御による複数油圧シリンダの同期を制御した高精度同期方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-231947号公報
【特許文献2】実用新案登録第3204753号公報
【特許文献3】特開2000-027806号公報
【特許文献4】特開2004-035138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された駆動装置は、複数のうち1つの油圧シリンダロッドが傾いたとき、または小ストローク側が停止したときに、長ストローク側のシリンダは、リリーフ弁(安全装置)により、所望の傾きに見合った角度まで押し切れない可能性がある。特許文献3に記載された駆動装置は、複数の油圧アクチュエータを同時にかつ小刻みな作動を可能とした定量給油機構が必要であり、装置の大型化、高価格化を招く可能性がある。特許文献4に記載された駆動装置は、センサおよび電気配線制御回路を用いるため小スペース化の妨げになるとともに、水を多く使用する場所での使用には適さないという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、小型化、低価格化に寄与し、偏荷重や捻れ等の応力の発生を抑制できる駆動装置および当該駆動装置を有する入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、駆動対象を第1方向に駆動する駆動装置であって、前記駆動対象を前記第1方向の一方側で保持するホルダと、シリンダ部および前記シリンダ部に対して前記第1方向に駆動されるロッド部を有する駆動部と、前記第1方向に延び、一端が前記ホルダに固定され他端が前記ロッド部に固定されたガイド軸と、前記ホルダの前記第1方向の一方側に対向して配置された対向壁部と、前記対向壁部の前記第1方向の一方側に取り付けられ、前記ガイド軸が前記第1方向に移動自在に嵌合するガイド孔を有するガイド板と、前記第1方向に延び、一端が前記ガイド板に固定され他端が前記シリンダ部の前記第1方向の他方側に固定され、前記シリンダ部を前記ガイド板の前記第1方向の一方側に位置させるシリンダ固定軸と、を備え、前記駆動部、前記ガイド軸、前記ガイド板および前記シリンダ固定軸は、前記第1方向と交差する第2方向に間隔をあけて複数組設けられ、前記ガイド板は、前記ガイド孔を挟んだ前記第2方向の両側にそれぞれ配置され前記第1方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に挿通されたネジ部材により前記対向壁部に取り付けられ、前記対向壁部と前記ガイド板との間には、前記貫通孔の位置に前記第1方向に弾性変形する弾性部材がそれぞれ設けられ、前記対向壁部は、前記第1方向に貫通し前記ガイド軸が挿通する挿通孔を有し、前記ガイド軸と前記挿通孔との隙間量は、および前記ネジ部材と前記貫通孔との隙間量は、それぞれ前記複数組の前記ガイド軸の第2方向の距離と、前記複数組の前記ロッド部の最大同期ずれ量とで求められる前記ガイド軸の最大傾きに応じた隙間量であることを特徴とする駆動装置が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様に従えば、車椅子に載せた入浴者を入出位置に傾けた可動浴槽内に移送し、前記車椅子を保持した可動浴槽を略水平状態の入浴位置に回動させて湯を満たすことで入浴者を入浴させるようにした入浴装置において、前記可動浴槽の一端部から内部に延びて形成されていて前記車椅子の着座部を支持する支持部材を可動浴槽内に移動可能な切欠と、前記切欠を開閉可能なシール部材と、前記シール部材を駆動し、支持部材を液密に挟んで前記切欠を閉鎖させる第1の態様の駆動装置と、を備えたことを特徴とする入浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、駆動装置および入浴装置において、小型化、低価格化に寄与し、偏荷重や捻れ等の応力の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による駆動装置および入浴装置を示すものであり、入浴用の車椅子と入出位置に傾斜させられた浴槽とを示す側面図である。
【
図2】可動浴槽が水平状態で入浴状態にある入浴装置を示す側面図である。
【
図3】入出位置にある可動浴槽内に車椅子が進入した状態を示す側断面図である。
【
図4】可動浴槽に設けた支持ロッドのシール部材付き切欠の斜視図である。
【
図5】可動浴槽のシール部材付き切欠を可動浴槽の裏面側から見た要部斜視図である。
【
図6】シール部材付き切欠に車椅子の支持ロッドが進入して正規の保持位置に保持された状態を示す斜視図である。
【
図7】可動浴槽のシール部材付き切欠を可動浴槽の裏面側から見た要部斜視図である。
【
図9】車椅子を収納した可動浴槽が入出位置から基準位置に至る途中工程を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の駆動装置および入浴装置の実施の形態を、
図1ないし
図9を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0014】
図1及び
図2に示す入浴装置1は、床面に設置された回動可能な浴槽2と浴槽2内に移送可能な入浴用の車椅子3とが設けられている。
車椅子3は、例えば四角形枠に形成された台座5とこの台座5の四隅に設けられたキャスター6とを備えている。台座5の進行方向の端部には支持部材として支持ロッド7が支持され、その上部には入浴者が着座するための着座部8と背もたれ部9及び頭部載せ部9aとが設けられている。着座部8の前方には足を載せるフットレスト10が連結されて設けられ、着座部8の両側部には肘掛け部11が形成されている。着座部8の中央部分にはコロ12が回転可能に支持されている。
【0015】
また、浴槽2は、床面に支持される固定台13と固定台13に対して回動可能で車椅子3を受け入れ可能な可動浴槽14とが設けられている。固定台13の下部には可動浴槽14内の湯を排出する排湯ペダル15が設けられている。
【0016】
次に、
図3乃至
図8により浴槽2の内部構造を説明する。
図3に示す浴槽2には、固定台13の外筺が省略された内部構造と可動浴槽14の断面とが開示されている。可動浴槽14の下部には側面視略L字形状に形成された基部16が設けられ、その背面側(図中、右側)には湯を溜めるタンク17が設けられている。基部16の起立支柱の上端部には可動浴槽14の回転軸18が取り付けられ、この回転軸18には支持部19を介して板状の基台20が前方(図中、左側)に向けて配設されており、この基台20は平板部分とその先端側の上方へ屈曲する屈曲部分とで断面視略への字状に屈曲して形成されている。なお、基台20は屈曲に代えて湾曲する板状でもよいし、屈曲しない単一の平板でもよい。
【0017】
基台20の上面には可動浴槽14が取り付けられている。可動浴槽14は側断面視で略V字状に形成されており、一方の内壁21aと他方の内壁21bとの交差角が90度を超えた鈍角に設定されている。可動浴槽14の一方の内壁21aには、車椅子3を
図3中、左右方向の右側に可動浴槽14内に移送させた際に車椅子3の頭部載せ部9aの背面に設けた第一当接軸23が当接可能な第一当接面24が設けられている。
また、可動浴槽14内の正規の保持位置に車椅子3が収容されると、他方の内壁21bに着座部8が当接し載置されることになる。
また、基部16には、駆動手段として油圧等の駆動シリンダ28が取り付けられ、駆動シリンダ28の進退可能なロッド29は基台20に連結されている。そのため、駆動シリンダ28を駆動させてロッド29を進退させることで基台20を押動させて回転軸18周りに可動浴槽14を回動可能としている。
【0018】
浴槽2は、固定台13内の回転軸18に対して可動浴槽14が回動可能とされている。例えば、可動浴槽14の上面14aが、水平面に対して反時計回りに所定角度(例えば28度)傾斜させられた
図3に示す位置を、車椅子3が移送して可動浴槽14内に入出可能な入出位置とする。また、浴槽2は、入出位置から回転軸18を中心に可動浴槽14が時計回りに例えば8度回転した位置、即ち可動浴槽14の上面14aが水平面に対して反時計回りに-20度傾斜した位置を、基台20が水平状態にある基準位置とする。更に、基準位置から回転軸18を中心に可動浴槽14が時計回りに20度回転した水平位置を、可動浴槽14の上面14aが水平状態にある入浴位置とする。
【0019】
基台20の他方の内壁21bには、その前端側(
図3で左端側;一端部)から可動浴槽14の一方の内壁21aとの交差部に向けて途中まで車椅子3の支持ロッド(支持部材)7を移動可能な切欠31が形成されている。切欠31は、
図3において左右方向に略直線状に延びている。
図4乃至
図6に示す切欠31の拡大図において、切欠31を形成する両側面には、駆動対象としてのシール部材32、32が配設されている。シール部材32、32は、切欠31の幅方向(
図4乃至
図6の略左右方向、以下第1方向と称する)に対向して開閉可能に配設されている。シール部材32、32は、切欠31に沿って第1方向と直交する第2方向(
図3において略左右方向)に略直線状に延びている。切欠31の内奧部には、支持ロッド7を受け入れて保持するための正規の保持位置として略半円形の嵌合凹部33がそれぞれ形成されている。
【0020】
また、基台20の下面には、車椅子3の台座5が浴槽2の固定台13の下側に進入した際に、支持ロッド7が嵌合凹部33に到達する少し前の仮保持位置で台座5によってON作動させられるリミットスイッチ38が設けられている。リミットスイッチ38のONによって駆動シリンダ28が作動させられ、基台20及び可動浴槽14を、下方に傾斜した入出位置から基準位置まで例えば8度上昇させることになる。
【0021】
また、基台20において、嵌合凹部33近傍の上面には例えば断面略直角三角形で長辺の斜面40aを設けたガイド部40が設けられている。可動浴槽14が入出位置から回動して上昇する際、車椅子3の着座部8に設けたコロ12がガイド部40の斜面40aに当接して押されることで、車椅子3が可動浴槽14の奥側の正規の保護位置へ移動するようにガイドされる。
【0022】
図5において、シール部材32、32の両側には各シール部材32を開閉作動させるための開閉手段としての駆動装置35(詳細は後述)が複数、例えば2組ずつ配設されている。また、切欠31の最奧部の嵌合凹部33に支持ロッド7が到達して当接した位置でONするスイッチ36が検知手段として設けられている。このスイッチ36がONすると、
図6に示すように、駆動装置35の駆動によりシール部材32、32を互いに当接させて嵌合凹部33内に支持ロッド7を液密に挟んで切欠31を閉鎖する。支持ロッド7が嵌合凹部33内に位置しないスイッチOFFの状態では、駆動装置35の駆動によりシール部材32、32が開放状態に保持されて、切欠31内を支持ロッド7が進入及び退出可能とされている。
【0023】
図7は、可動浴槽14のシール部材32付き切欠31を可動浴槽14の裏面側から見た要部斜視図である。
図8は、
図7におけるA-A線視断面図である。
図7及び
図8に示すように、駆動装置35は、シリンダ部51及びロッド部52を有する駆動部50と、ガイド軸53と、シールボックス54と、ガイド板57と、シリンダ固定軸58と、ホルダ59とを備える。なお、
図4及び
図5においては、駆動装置35を簡略化して示している。
【0024】
駆動装置35は、一つのシール部材32に対して、第2方向に間隔をあけて複数組(本実施形態では二組)設けられている。また、シール部材32および駆動装置35は、切欠31の第1方向中心に位置し第2方向に延びる中心線を挟んで線対称にそれぞれ設けられている。
【0025】
図4に示すように、ホルダ59は、シール部材32毎に設けられている。各ホルダ59は、側板59aと底板59bとを有する。側板59aは、シール部材32の第1方向の外側(切欠31と逆側;第1方向の一方側)の側面と対向する。側板59aは、シール部材32の外側の側面を保持する。底板59bは、シール部材32の下側の底面と対向する。底板59bは、シール部材32の底面を保持する。底板59bは、側板59aの下端から第1方向の内側(切欠31側;第1方向の他方側)に延びている。各ホルダ59とシール部材32とは一定的に固定されている。ホルダ59の側板59aは、第1方向の外側に突出する筒部60を有している。筒部60は、円筒状である。筒部60は、ガイド軸53及びロッド部52と同軸である。
【0026】
図8に示すように、シリンダ部51は、例えば、油圧シリンダである。シリンダ部51は、油圧によるピストン(図示せず)の移動により、ロッド部52を第1方向に駆動する。ロッド部52は、第1方向に延びる軸状である。ロッド部52は、シリンダ部51の駆動により、第1方向に前進移動または後退移動する。
【0027】
ガイド軸53は、第1方向に延びる軸状である。ガイド軸53は、シールボックス54を第1方向に貫通している。ガイド軸53は、ガイド軸53の一端側(第1方向のシール部材32側)は、筒部60の内周面に嵌合して固定されている。ガイド軸53の他端側は、ロッド部52の先端に嵌合して固定されている。
【0028】
シールボックス54は、対向壁部55とガイド壁部56とを有している。対向壁部55は、ホルダ59の側板59aの第1方向の外側に間隔をあけて対向して配置されている。対向壁部55は、第1方向に貫通しガイド軸53が挿通する挿通孔55aを有している。ガイド壁部56は、
図4に示すように、対向壁部55の下端から第1方向の内側に延出している。ガイド壁部56は、ホルダ59の底板59bに下側から接する。ガイド壁部56は、ホルダ59の第1方向の移動を下側からガイドする。
【0029】
ガイド板57は、対向壁部55の第1方向の外側に対向壁部55とは離れて取り付けられている。ガイド板57は、ガイド孔57aと貫通孔57b、57cとを有している。ガイド孔57aは、ガイド板57の第2方向の中心に位置する。ガイド孔57aは、ガイド板57を第1方向に貫通する。ガイド孔57aは、ガイド軸53が第1方向に移動自在に嵌合する。ガイド孔57aは、ガイド軸53の第1方向の移動をガイドする。
【0030】
貫通孔57b、57cは、ガイド板57を第1方向に貫通する。貫通孔57b、57cは、ガイド孔57aを中心として第2方向に対称に配置されている。貫通孔57b、57cには、ネジ部材61b、61cがそれぞれ挿通される。ネジ部材61b、61cは、ヘッド部がガイド板57が第1方向の外側の面に係合する。
【0031】
ガイド軸53と挿通孔55aとの最小隙間量、およびネジ部材61b、61cと貫通孔57b、57cとの各最小隙間量は、二組のガイド軸53の第2方向の距離と、二組のロッド部の最大同期ずれ量とで求められるガイド軸53の最大傾きに応じた隙間量である。ガイド軸53の最大傾きは、後述するホルダ59及びシール部材32が第2方向に対して傾く角度θの最大量である。ガイド軸53と挿通孔55aとの最小隙間量は、ガイド軸53が最大傾きで傾いた際にも、ガイド軸53が挿通孔55aの内周面と干渉しない大きさに設定されている。ネジ部材61b、61cと貫通孔57b、57cとの各最小隙間量は、ガイド軸53が最大傾きで傾いた際にも、ネジ部材61b、61cが貫通孔57b、57cの内周面と干渉しない大きさに設定されている。
【0032】
ネジ部材61b、61cの先端は、シールボックス54はの対向壁部55を第1方向に貫通して第1方向の内側に突出する。ネジ部材61b、61cの先端は、対向壁部55の第1方向の内側においてナット62b、62cによりネジ止めされる。対向壁部55とガイド板57との間には、貫通孔57b、57cの位置に第1方向に弾性変形する弾性部材63b、63cがそれぞれ設けられている。弾性部材63b、63cは、例えば、皿バネである(以下、皿バネ63b、63c)。皿バネ63b、63cは、中心穴にネジ部材61b、61cが挿通されている。皿バネ63bのバネ定数と、皿バネ63cのバネ定数は同一である。
【0033】
シリンダ固定軸58は、第1方向に延びている。シリンダ固定軸58は、第1方向の一端がガイド板57に固定されている。シリンダ固定軸58は、第1方向の他端がシリンダ部51の第1方向の内側に固定されている。シリンダ固定軸58は、
図7に示すように、ロッド部52を挟んだ両側に対称に配置されている。シリンダ固定軸58は、シリンダ部51をガイド板57の第1方向の外側に位置させる。シリンダ部51は、第1方向の外側が非拘束に設けられている。
【0034】
次に、上記の駆動装置35によりシール部材32を駆動する動作について説明する。
2組の駆動装置35によりシール部材32を切欠31に向けて第1方向に移動させる際には、各駆動装置35においてシリンダ部51に対してロッド部52を第1方向の内側に駆動する。ロッド部52の第1方向の内側への駆動により、ガイド軸53及びホルダ59を介してシール部材32は第1方向の内側へ移動する。このとき、ガイド軸53はガイド孔57aに嵌合して第1方向の移動をガイドされ、ホルダ59は、底板59bがガイド壁部56によって第1方向の移動を下側からガイドされる。そのため、シール部材32は円滑に第1方向に移動できる。
【0035】
二組の駆動装置35においては、ロッド部52の第1方向の内側への駆動は同期して行われるが、駆動タイミングのずれ等によって二組の駆動装置35における一方のロッド部52と他方のロッド部52とで第1方向の位置がずれる場合がある。この場合、
図8に示すように、ホルダ59及びシール部材32が第2方向に対して角度θで傾く。
図8では、ホルダ59及びシール部材32が反時計回りに角度θで傾いた状態が示されている。
角度θの最大値は、二組のガイド軸53の第2方向の距離と、二組のロッド部で想定される最大同期ずれ量とで求められる。
【0036】
ホルダ59及びシール部材32が傾くことでホルダ59に連結されたガイド軸53と、このガイド軸53と繋がったガイド板57及びロッド部52に対しても反時計回り方向に傾く力が加わる。ここで、ガイド板57は、皿バネ63b、63cが設けられることで対向壁部55との間に隙間が形成されている。
【0037】
そのため、ホルダ59及びシール部材32が傾くことで生じた力により皿バネ63bが縮む方向に弾性変形し、ガイド板57は皿バネ63bの弾性力に抗して反時計回り方向に傾く。このとき、ガイド板57を対向壁部55にネジ止めするネジ部材61b、61cと、ガイド板57の貫通孔57b、57cとの各最小隙間量は、ガイド軸53が最大傾きで傾いた際にも、ネジ部材61b、61cが貫通孔57b、57cの内周面と干渉しない大きさに設定されている。従って、ガイド板57は貫通孔57b、57cの内周面とネジ部材61b、61cとが干渉することなく円滑に傾くことができる。また、ガイド板57が反時計回り方向に傾いた際に、ガイド板57と一体的に傾いたガイド軸53は、ガイド軸53と挿通孔55aとの最小隙間量がガイド軸53が最大傾きで傾いた際にも、ガイド軸53が挿通孔55aの内周面と干渉しない大きさに設定されていることで、挿通孔55aの内周面と干渉することなく円滑に傾くことができる。さらに、ガイド軸53及びガイド板57が傾くことで、ガイド板57にシリンダ固定軸58を介して固定されたシリンダ部51と、ガイド軸53に固定されたロッド部52とが傾くことができる。特に、シリンダ部51は、第1方向の外側の端部が非拘束に設けられ、第1方向の内側の端部がシリンダ固定軸58で固定されているため、円滑に傾くことができる。
【0038】
従って、ホルダ59が反時計回り方向に傾いた場合でも、ガイド軸53、ガイド板57、シリンダ部51及びロッド部52がホルダ59に倣って傾くことになる。すなわち、ホルダ59が傾いた場合でも、ガイド軸53、ロッド部52及びシリンダ部51が一直線上に配置されることになり、偏加重及び捻れ等の応力が発生することを抑制できる。
【0039】
この後、ホルダ59及びシール部材32が切欠31の閉鎖位置へ達し、2組の駆動装置35におけるロッド部52の同期ずれが解消すると、ホルダ59及びシール部材32の第2方向に対する傾きが解消される。また、縮む方向に弾性変形していた皿バネ63bの弾性復元力により、ガイド板57の傾きも解消される。これにより、ガイド軸53、ガイド板57、シリンダ部51及びロッド部52は、第1方向に並んだ正規の位置に戻ることになる。
【0040】
以上のように、本実施形態の駆動装置35では、ロッド部52の駆動時に同期ずれが生じた場合でも、ガイド軸53、ロッド部52及びシリンダ部51が一直線上に配置されることになり、偏加重及び捻れ等の応力が発生することを抑制できる。また、本実施形態の駆動装置35では、センサおよび電気配線制御回路を用いていないため、小スペース化及び水を多く使用する場所でも支障なく使用することができる。さらに、本実施形態の駆動装置35では、偏加重、捻じれを抑制できるため、耐加重設計の軽減が可能となり、軽量化、低コストに寄与する。また、本実施形態の駆動装置35では、油圧変動、構成部品のばらつきを考慮した制御、調整機能が不要となり、メンテナンスの軽減も含めた大きな効果をもたらすことになる。
【0041】
また、本実施形態の駆動装置35では、シール部材32および駆動装置35は、切欠31の第1方向中心に位置し第2方向に延びる中心線を挟んで線対称にそれぞれ設けられているため、切欠31を閉鎖する際に一対のシール部材32を剪断ではなく圧縮状態で効果的に閉鎖することができる。
【0042】
続いて、上記駆動装置35を有する本実施形態による入浴装置1は上述の作用として入浴方法を説明する。
要介助者を入浴させる場合、
図1に示す入浴装置1の可動浴槽14は固定台13に対してタンク17と反対側、例えば左側が下方に傾斜した入出位置にある。この状態で、可動浴槽14は上面14aが水平面に対して例えば-28度傾斜した状態にある。この状態で、可動浴槽14はシール部材32、32が開いていて切欠31が開放された状態にあるため、図示しない入浴者が着座された車椅子3を後ろ向きにして介助者が可動浴槽14に誘導する。
【0043】
車椅子3を可動浴槽14内に移動させると、台座5が固定台13の下側に潜り込み、着座部8及び背もたれ部9は可動浴槽14内に進入し、支持ロッド7は切欠31内を最奧部に向けて進入する。そして、
図3に示すように、車椅子3の着座部8と背もたれ部9が可動浴槽14内に進入して、背もたれ部9に設けた第一当接軸23が可動浴槽14の一方の内壁21aの第一当接面24に当接した位置で止まる。
この位置で、支持ロッド7は切欠31の最奧部の嵌合凹部33に到達していない位置にあり、車椅子3の着座部8の背部は一方の内壁21aとの間に隙間Kが形成されている。車椅子3のこの位置を仮保持位置とする。
【0044】
そして、車椅子3の台座5が固定台13の下方に潜り込んで進入することで、仮保持位置で台座5の先端が基台20の下方に垂下するリミットスイッチ38を押すことになる。これにより、図示しない制御手段を介して駆動シリンダ28が駆動して伸張するロッド29に押され、基台20及び可動浴槽14は回転軸18を中心にして時計回りに微少角度、例えば8度回動する。
基台20とその上に設置された可動浴槽14とが回転軸18を中心に時計回りに回転することで、
図9に示すように、基台20に設けたガイド部40の斜面40aが着座部8のコロ12に当接して押動させて、車椅子3を可動浴槽14内の奥側に移動させて押し込む。
【0045】
これによって、車椅子3が切欠31の内奧部側に進んで、支持ロッド7が切欠31の最奧部である嵌合凹部33、33内に到達して保持される。支持ロッド7が嵌合凹部33、33に到達すると切欠31の最奧部に設けたスイッチ36を押すため、図示しない制御手段を介して駆動装置35が動作して、シール部材32、32が切欠31を液密に閉鎖させて嵌合凹部33、33で支持ロッド7を液密に保持することになる。車椅子3のこの位置を正規の保持位置とする。駆動装置35においては、ロッド部52の駆動時に同期ずれが生じても、上述したように、ガイド軸53、ロッド部52及びシリンダ部51が一直線上に配置されることになり、偏加重及び捻れ等の応力が発生することを抑制できる。
【0046】
可動浴槽14の奧側に車椅子3が押し込まれた正規の保持位置で、可動浴槽14の回動を伴って、第一当接軸23が第一当接面24から離間する。この位置で、基台20が水平に保持され、可動浴槽14の上面14aが水平面に対して例えば約20度傾斜した基準位置にある。
この状態で、
図8に示すように、車椅子3の着座部8は、可動浴槽14内の他方の内壁21bに当接した基準位置に保持される。しかも、車椅子3は、当接するシール部材32、32と支持ロッド7が凹部33、33によって嵌合保持されることで可動浴槽14に液密に固定保持される。この状態で、車椅子3は可動浴槽14内の正規の保持位置に位置決めされて保持される。
【0047】
次に、可動浴槽14の上面14aに設けた図示しないパネルスイッチ内の作動スイッチを押すことで、駆動シリンダ28が更にロッド29を伸張させて、基台20及び可動浴槽14を回転軸18を中心に時計回りに20度回動させ、可動浴槽14の上面14aを略水平にする。
これによってシール部材32、32によって挟持された車椅子3も可動浴槽14と一体に持ち上げられて回動する。このとき、回転中心をなす回転軸18が基台20及び可動浴槽14の背面側(図中、右側)に位置するため、可動浴槽14に保持された車椅子3は時計回りに持ち上げ方向に回動するため、固定台13の下方に位置する台座5及びキャスター6が床面に衝突することはなく、スムーズに回動して持ち上げられる。
【0048】
可動浴槽14の上面14aが略水平に保持された入浴位置で、タンク17から湯を可動浴槽14内に供給することで車椅子3の着座部8に着座した入浴者は入浴状態になる。このとき、可動浴槽14の他方の内壁21bに設けた切欠31と支持ロッド7はシール部材32,32及びその嵌合凹部33、33によって液密にシールされているため、湯漏れを生じない。
【0049】
そして、入浴終了後に、入浴者を可動浴槽14から退出させるには、上述の動作と逆の動作を行えばよい。即ち、可動浴槽14内の湯をタンク17に戻し、基台20及び可動浴槽14を駆動シリンダ28によって基準位置まで反時計回りに回動させる。そして、更に可動浴槽14を入出位置まで反時計回りに回動させ、シール部材32、32を開いて切欠31を開放させることで、回動する可動浴槽14の一方の内壁21aの第一当接面24で車椅子3の第一当接軸23が押されて、車椅子3は支持ロッド7が嵌合凹部33、33に保持された保持位置から切欠31に沿って仮保持位置に移動させられる。
その後、介助者が車椅子3を押して、切欠31を通して可動浴槽14の外部に移動させる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の入浴装置1では、車椅子3の可動浴槽14内への移動を可能とする切欠31を開閉するための駆動装置35に偏加重及び捻れ等の応力が発生することを抑制できる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、一つのシール部材32に対して二組の駆動装置35が第2方向に間隔をあけて配置される構成を例示したが、この構成に限定されず三組以上の駆動装置35を配置する構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、弾性部材が皿バネである構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、コイルバネやゴム材等である構成であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、浴槽2が可動浴槽14を有する構成を例示したが、この構成に限定されず、固定浴槽であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、駆動装置35が入浴装置1に用いられる構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、昇降装置等、駆動対象を複数の駆動装置で駆動する装置等に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…入浴装置、 2…浴槽、 3…車椅子、 7…支持ロッド(支持部材)、 32…シール部材(駆動対象)、 35…駆動装置、 50…駆動部、 51…シリンダ部、 52…ロッド部、 53…ガイド軸、 54…シールボックス、 55…対向壁部、 56…ガイド壁部、 57…ガイド板、 58…シリンダ固定軸、 59…ホルダ