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特開2023-64503磁性壁取付け物品および磁性壁取付けシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064503
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】磁性壁取付け物品および磁性壁取付けシステム
(51)【国際特許分類】
   A47G 29/00 20060101AFI20230501BHJP
   A47B 96/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A47G29/00 J
A47B96/02 G
A47B96/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174830
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】笠原 修
【テーマコード(参考)】
3K100
【Fターム(参考)】
3K100AA14
3K100AD07
3K100AE01
3K100AF03
3K100AG03
3K100AH30
3K100AJ05
(57)【要約】
【課題】取外しの際の作業性を損なうことなく磁性壁への磁気吸着力を強くできる磁性壁取付け物品および磁性壁取付けシステムを提供すること。
【解決手段】強磁性体層12を有する磁性壁1に着脱自在に取り付けることのできる磁性壁取付け物品2であって、磁性壁1への取付け対象となる本体部20と、本体部20の背面板22に固着して設けられるマグネットシート3とを備え、マグネットシート3は、本体部20の背面板22よりも広いサイズであり、背面板22から外方にはみ出たオーバーフレーム領域3Vを有するように背面板22に固着したことを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体層を有する磁性壁に着脱自在に取り付けることのできる磁性壁取付け物品であって、磁性壁への取付け対象となる本体部と、本体部の背面板に固着して設けられるマグネットシートとを備え、マグネットシートは、本体部の背面板よりも広いサイズであり、背面板から外方にはみ出たオーバーフレーム領域を有するように背面板に固着したことを特徴とする磁性壁取付け物品。
【請求項2】
オーバーフレーム領域は、背面板の高さ方向上側にはみ出る形で形成され、その高さ方向の長さは、背面板の高さ方向の長さの2分の1以上である請求項1に記載の磁性壁取付け物品。
【請求項3】
マグネットシートは、弾性体からなるクッション材を介して背面板に固着される請求項1または請求項2に記載の磁性壁取付け物品。
【請求項4】
オーバーフレーム領域は、磁性壁の表面と同種または類似の装飾が表面に施されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁性壁取付け物品。
【請求項5】
強磁性体層を有する磁性壁と、磁気吸着力によって磁性壁に着脱自在に取り付けることのできる磁性壁取付け物品とを有する磁性壁取付けシステムであって、磁性壁取付け物品は、磁性壁への取付け対象となる本体部と、本体部の背面板に固着して設けられるマグネットシートとを備え、マグネットシートは、本体部の背面板よりも広いサイズであり、背面板から外方にはみ出たオーバーフレーム領域を有するように背面板に固着したことを特徴とする磁性壁取付けシステム。
【請求項6】
磁性壁は、着磁ラインが水平方向に平行となるように取り付けられた壁面マグネットシートが壁材とされ、磁性壁取付け物品のマグネットシートは壁面マグネットシートのマグネットシートと同一の着磁ピッチとされる請求項5に記載の磁性壁取付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性壁取付け物品および磁性壁取付けシステムに関する。より詳しくは、磁性壁に磁気吸着力により着脱自在に取付けられる磁気吸着型の取付け物品、および磁性壁取付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、猫ブームにより、自宅で猫を飼う人が増えている。そのような状況の下、室内の壁にマグネットの吸着するパネルを施工することで、マグネット着脱式の猫用踏み台を設置できるようにしたシステムが人気を呼んでいる。猫用踏み台には、例えば下記特許文献1に示すような、L字棚の背面板にマグネットシートを固着した構成のものが用いられる。このシステムでは、L字棚はマグネット着脱式となっているため、壁面に複数のL字棚を自由な配置で設置することができる。例えば階段状に設置することで、猫が昇り降りする遊び空間を室内に実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-61285号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したシステムにおいて、隣り合う踏み台間の落差を大きく配置した場合や、猫が成長に伴い体重を増した場合でも、壁面から踏み台が脱落しないように、マグネットシートにはある程度強い磁気吸着力が必要とされる。しかし、磁気吸着力を強くすることは、取外しの際にも大きな力が必要となることを意味し、配置換えなどの作業性に支障をきたすという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、取外しの際の作業性を損なうことなく磁性壁への磁気吸着力を強くできる磁性壁取付け物品および磁性壁取付けシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段をとる。
なお、以下に記す手段の説明では、後述する発明を実施するための形態の説明及び図面で使用した符号の一部を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素はこれに限定されるものではない。
【0007】
本発明の一の態様では、強磁性体層(12,6)を有する磁性壁(1,1A)に着脱自在に取り付けることのできる磁性壁取付け物品(2)であって、磁性壁(1,1A)への取付け対象となる本体部(20)と、本体部(20)の背面板(22)に固着して設けられるマグネットシート(3)とを備え、マグネットシート(3)は、本体部(20)の背面板(22)よりも広いサイズであり、背面板(22)から外方にはみ出たオーバーフレーム領域(3V,3W)を有するように背面板(22)に固着したことを特徴とする。
【0008】
本態様によると、マグネットシート(3)は、オーバーフレーム領域(3V,3W)を有さなかった場合に比べてオーバーフレーム領域(3V,3W)の分だけ、磁気吸着力が増すので、より大きな耐荷重を達成できる。また、オーバーフレーム領域(3V,3W)は可撓性を有するため、磁性壁取付け物品(2)を磁性壁(1,1A)から取り外すにあたり、オーバーフレーム領域(3V,3W)の例えば上端角部(T1)を手前に引いて捲ることでマグネットシート(3)を剥がしながら取り外すことができる。このため、弱い力での取外しが可能となる。つまり、例えば載置板(21)の左右端をそれぞれ左右の手でもって手前に一気に引っ張って取り外す場合に比べると、無理なく取り外しができ、配置換えが楽である。
【0009】
本発明の他の態様では、オーバーフレーム領域(3V)は、背面板(22)の高さ方向(Z)上側にはみ出る形で形成され、その長さ(L1)は、背面板(22)の高さ方向(Z)の長さ(L2)の2分の1以上であることが好ましい。
【0010】
磁性壁取付け物品(2)において、負荷荷重が作用する作用重心(25)は、一般には磁性壁(1)の壁面から一定距離だけ離れたところにあるため、磁性壁取付け物品(2)を回動させようとするモーメント(M)が作用する。
このモーメント(M)はマグネットシート(3)を剥がし取ろうとする作用を有する。
一方、マグネットシート(3)を剥がそうとする作用に抗する作用は、マグネットシート(3)の磁気吸着力(P)とその作用重心(35)の腕(h)との積により決まる。
オーバーフレーム領域(3V)を背面板(22)の上方に形成することで、作用重心(35)は上方に移動し、長い腕(h1)が確保でき、マグネットシート(3)を剥がそうとする作用を軽減できる。
【0011】
本発明の他の態様では、マグネットシート(3)は、弾性体からなるクッション材(4)を介して背面板(22)に固着される。
【0012】
本態様によると、本体部(20)に一時的に過大な負荷が作用した場合でも、そのときの衝撃はクッション材(4)で吸収・緩和されてマグネットシート(3)に伝わるため、磁性壁取付け物品(2)の脱落が防止される。
【0013】
本発明の他の態様では、オーバーフレーム領域(3V,3W)は、磁性壁(1,1A)の表面と同種または類似の装飾が表面に施されている。
【0014】
本態様によると、オーバーフレーム領域(3V,3W)が磁性壁(1,1A)の表面と視覚的に適合し、違和感がなくなる。
【0015】
本発明の他の態様では、強磁性体層(12,6)を有する磁性壁(1,1A)と、磁気吸着力によって磁性壁(1,1A)に着脱自在に取り付けることのできる磁性壁取付け物品(2)とを有する磁性壁取付けシステム(100,200,300,400)であって、磁性壁取付け物品(2)は、磁性壁(1,1A)への取付け対象となる本体部(20)と、本体部(20)の背面板(22)に固着して設けられるマグネットシート(3)とを備え、マグネットシート(3)は、本体部(20)の背面板(22)よりも広いサイズであり、背面板(22)から外方にはみ出たオーバーフレーム領域(3V,3W)を有するように背面板(22)に固着したことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様では、磁性壁(1A)は、着磁ライン(63)が水平方向に平行となるように取り付けられた壁面マグネットシート(5)が壁材とされ、磁性壁取付け物品(2)のマグネットシート(3)は壁面マグネットシート(5)のマグネットシート(6)と同一の着磁ピッチとされる。
【0017】
本態様によると、マグネットシート(3)の着磁ライン(33)が横向きとなるように、磁性壁取付け物品(2)を磁性壁(1A)に磁気吸着させた場合、マグネットシート(3)と壁面マグネットシート(5)とは、それぞれの縞状の磁極の異極同士が磁気吸着しあうようになる。これにより、マグネットシート(3)は水平方向から傾くことなく磁性壁(1A)に磁気吸着できる。その結果、磁性壁取付け物品(2)は真っ直ぐな状態で磁性壁(1A)に固定される。また、マグネットシート(3)の磁気吸着面全体にわたり異極同士が磁気吸着しあうため、強い固定が行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、取外しの際の作業性を損なうことなく磁性壁への磁気吸着力を強くできる磁性壁取付け物品および磁性壁取付けシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の磁性壁取付けシステムの斜視図である。
図2図1における一点鎖線部の拡大図である。
図3】マグネットシートの2面図である。
図4】第1実施形態の磁性壁取付けシステムに作用する力を説明するための側面図である。
図5】L字棚を磁性壁から取り外すときの手順を説明するための斜視図である。
図6】第2実施形態の磁性壁取付けシステムの側面図である。
図7】第3実施形態の磁性壁取付けシステムの側面図である。
図8】第4実施形態の磁性壁取付けシステムの側面図である。
図9】マグネットシートの2面図である。
図10図8における一点鎖線部の拡大図である。
図11】L字棚の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、添付図面に図示した部材などの縮尺や角度は、必ずしも実物と一致するものではなく、適宜明示しやすい大きさに調整している。
【0021】
図1は第1実施形態の磁性壁取付けシステム100の斜視図、図2図1における一点鎖線部の拡大図である。図3はマグネットシート3の2面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。なお後述の各図を含めたこれらの図において、直交座標系の3軸をXYZとし、磁性壁1はXY平面に垂直で且つZX平面に平行であるものとする。また、以下の説明では磁気吸着のことを単に磁着と記すことがある。
【0022】
図1に示すように、磁性壁取付けシステム100は、一般家庭の室内に設置された磁性壁1と、磁性壁1に取り付けられた複数のL字棚2とを有し、猫の遊び場空間として機能する。すなわち、室内で飼われている猫が、階段状に配置されたL字棚2を昇り降りできるようになっている。各L字棚2は、裏側に設けられたマグネットシート3により、磁性壁1に着脱自在に取り付けられている。従って、ビス等の固定部品を要することなく自由にL字棚2の取付け取外しが可能であり、配置パターンやアイテムの種類を適宜変えることができるようになっている。
【0023】
次に磁性壁取付けシステム100の各構成要素について説明する。
図2に示すように、磁性壁1は、軟磁性ボード10と壁材フィルム13を有する。
【0024】
軟磁性ボード10は、石膏ボード11と、石膏ボード11の片面に塗布により積層された軟磁性層12とを備える。このような軟磁性ボード10の具体例として、吉野石膏株式会社製のタイガーFeボード(登録商標)を挙げることができる。なお、上記した軟磁性層付きの石膏ボードに代えて、マグピタボード(商標登録)を用いることもできる。マグピタボードは、無機ボードの片面に化粧鋼板層を積層させたものである。また、鋼板、または鋼板に表装シート若しくは機能性シートをラミネートしたボードを用いてもよい。
【0025】
壁材フィルム13は、厚さ数十μ~数百μとされたフィルム状の装飾壁面材であり、ベースフィルム(図示せず)の上面に絵柄や模様が印刷されたインキ層を備える。ベースフィルムとしては、表面にインキ受理層を形成したポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂、または薄い紙材などを使用することができる。このインキ受理層に用途に応じた印刷によりインクを定着させる。印刷方式には、オフセット印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などを挙げることができる。
【0026】
磁性壁1は、軟磁性ボード10に壁材フィルム13を例えばウレタン系の接着剤を介して積層させた構成とされ、その壁材フィルム13を表側、すなわち室内空間に向けた状態で、合板、コンクリート、または軽金属などを基材とした壁下地(図示せず)に対し、釘、ビス、接着剤、ステープルなどで留付け固定される。
【0027】
L字棚2は、図2に示すように、本体部20とマグネットシート3を備える。
本体部20は、木材または合成樹脂を材質とした長方形状の剛体からなる二枚の板を、側面視がL字型となるように接合させた構成とされ、載置板21と背面板22を備える。
載置板21は、猫が載るための載せ台として機能する。
背面板22は、取付けの相手方となる磁性壁1への対向部となる部分であり、その裏面はマグネットシート3を接着剤により固着させることのできるフラット面となっている。
【0028】
マグネットシート3は、背面板22よりも縦方向(Z方向)に一回り大きなサイズの可撓性シート状の磁石体であり、背面板22の裏面に背面板22から上方にオーバーフレームさせた状態で固着される。すなわち、背面板22の上端縁22Uから距離L1のところにマグネットシート3の上端縁3Uが位置し、背面板22からのオーバーフレーム領域3Vを有するように背面板22に固着される。
より具体的には、オーバーフレーム領域3Vは、背面板22の高さ方向Zの上側にはみ出る形で形成され、その高さ方向Zの長さL1は、背面板22の高さ方向Zの長さL2の2分の1以上である。これは、磁性壁1からの取外しの容易さや磁着力の強さに基づいている。
【0029】
このようなマグネットシート3は、硬磁性材料の微粉末と、粘結材となる少量の有機高分子エラストマーとの混合体を、圧延または押出しなどの方式により成形したシート状体の表面に着磁を施して製作される。マグネットシート3は、両面多極着磁型となっている。すなわち、図3に示すように、表裏各面に、互いに極性の異なる一定幅の磁極31,32(N極とS極)が交互に等間隔の縞状に形成され、一定ピッチの着磁ライン33を有する。マグネットシート3の厚さは1mm~5mmとされる。なお、十分な磁着力を得るために、異方性の硬磁性材料を用いることが好ましい。また、マグネットシート3の磁着面に剥離自在の粘着剤層を設け、磁性壁面との固着をより強固にすることもできる。
【0030】
次に、磁性壁取付けシステム100に特有な作用効果を、図4を用いて説明する。
図4は第1実施形態の磁性壁取付けシステム1に作用する力を説明するための側面図であり、載置板21に負荷Dを載せたL字棚2が磁性壁1に磁着されている状態を示す。
(a)はマグネットシート3がオーバーフレーム領域3Vを有する形態(本発明)を示し、(b)はマグネットシート3がオーバーフレーム領域3Vを有さない形態(従来)を示す。(a)(b)ともに、負荷Dは各システムが保持できる最大重量であるとする。つまりこの重量を超えると、L字棚2は脱落してしまう。
【0031】
(a)(b)の各状態では、Z軸方向について下記の力の釣合式が成立する。
(a)について、
Q1=μ×P1=W1
P1=S1×P0
(b)について、
Q2=μ×P2=W2
P2=S2×P0
【0032】
ここで、QはL字棚2に作用するZ方向上向きの力、μはマグネットシート3と磁性壁1との間の静止摩擦係数、Pはマグネットシート3と磁性壁1との間に働く磁気吸着力、Sはマグネットシート3の磁着面の面積、P0はマグネットシート3と磁性壁1との間に働く単位面積あたりの磁着力、WはL字棚2と負荷Dとの総荷重である。各アルファベット符号の後ろに添えられた「1」「2」は、(a)(b)のどちらの形態であるかを区別するものであり、「1」は(a)の形態を示し、「2」は(b)の形態を示す。
【0033】
(a)については、マグネットシート3がオーバーフレーム領域3Vを有するため、S1>S2である。よってP1>P2であることから、W1>W2となる。
つまり、(a)では(b)よりも大きな耐荷重が得られることになる。
これはマグネットシートが、点でなく面で磁着することで強い保持力を得られるという優れた特性を活用した技術思想である。
【0034】
また、L字棚2の載置板21において、荷重Wの作用重心25のY方向位置は、磁性壁1の壁面から一定距離だけ離れたところにあるため、図4において時計回り方向のモーメントMが生じる。すなわちマグネットシート3の最下部34を軸として時計回り方向に回動させようという作用が働く。このモーメントMはL字棚2におけるマグネットシート3を磁性壁1から引き剥がすように作用する。
【0035】
この作用の強さは、マグネットシート3の最下部34とL字棚2における荷重Wの作用重心25との間のY方向距離rと、荷重Wとの積で決まる、
また、これに抗する作用の強さは、マグネットシート3と磁性壁1との間に働く磁着力Pと、マグネットシート3における磁着力Pの作用重心35とマグネットシート3の最下部34との間のZ方向距離hとの積により決まる。そして両作用が釣り合っている。
【0036】
式で表せば、
(a)については、M1=W1×r1=P1×h1となる。
(b)については、M2=W2×r2=P2×h2となる。
上側にオーバーフレーム領域3Vを設けることにより、Pの作用重心35は上に移動し長い腕h1が確保できる。腕h1が長いほど、マグネットシート3を剥がそうとする作用に抗する作用が強くなる。つまり、オーバーフレーム領域3Vは背面板22の上方に形成されることが好ましい。
【0037】
次に、磁性壁取付けシステム100に特有なもう一つの作用効果を、図5を用いて説明する。図5はL字棚2を磁性壁1から取り外すときの手順を説明するための斜視図である。
マグネットシート3は、オーバーフレーム領域3Vにおいて可撓性を有するため、L字棚2を取り外すにあたり、図5(a)に示すように、オーバーフレーム領域3Vの上端角部T1を力F1で手前に引いて捲ることで、磁性壁1に磁着したマグネットシート3を徐々に剥がしていくことができる。
【0038】
そして図5(b)に示すように、オーバーフレーム領域3Vの最下部(背面板22とマグネットシート3との境界部)T3まで剥がれたところで一気に力を加えて外す。上端角部T1からマグネットシート3の最下部T4まではL3という長い距離が確保できるため、てこの原理を利用することができ、弱い力での取外しが可能となる。例えば載置板21の左右端をそれぞれ左右の手でもって一気に引っ張って取り外す場合に比べると、楽に作業ができ、比較的に力の弱い子供や女性でも無理なく取り外しができる。
【0039】
〔第2実施形態〕
図6は第2実施形態の磁性壁取付けシステム200の側面図である。図6に示すように、磁性壁取付けシステム200では、L字棚2におけるオーバーフレーム領域3Vの非磁着面側に壁材フィルム13Vが貼着されている。それ以外の構成は第1実施形態と同一であり、同一の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。壁材フィルム13Vは、壁材フィルム13の表面と同種または類似の装飾が表面に施されている。このため、オーバーフレーム領域3Vが磁性壁1の表面と視覚的に適合し、違和感がなくなる。なお、オーバーフレーム領域3Vの外形形状を意匠性のあるもの、例えば動物や花の一部、或いは曲線状に形成してもよい。
【0040】
〔第3実施形態〕
図7は第3実施形態の磁性壁取付けシステム300の側面図である。図7に示すように、磁性壁取付けシステム300では、L字棚2における背面板22とマグネットシート3との間にクッション材4を備える。それ以外の構成は第1実施形態と同一であり、同一の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0041】
クッション材4は、背面板22の面領域と同じ面サイズを有する扁平直方体状の弾性体である。厚さは1mm~5mmとされ、材質は、例えば発泡スチレン、発泡ウレタン、ゴムシートなどからなる。一方の面は、マグネットシート3の非磁着面に接着剤を介して固定され、他方の面は、背面板22の裏面に接着剤を介して固定される。
【0042】
磁性壁取付けシステム300によると、高所に配置された別のL字棚2から猫が載り移ってきたときなどでも、L字棚2に加わる衝撃はクッション材4で吸収・緩和されてマグネットシート3に伝わるため、L字棚2の脱落が防止される。
【0043】
〔第4実施形態〕
図8は第4実施形態の磁性壁取付けシステム400の側面図、図9はマグネットシート6の2面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。図10図8における一点鎖線部の拡大図である。図8に示すように、磁性壁取付けシステム400では、第1実施形態の磁性壁1に替えて磁性壁1Aを有する。それ以外の構成は第1実施形態と同一であり、同一の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0044】
磁性壁1Aは、次の点で磁性壁1と異なる。すなわち、第1実施形態の磁性壁1は、軟磁性ボード10に接着剤を介して壁材フィルム13を積層させた構成であったが、壁材ボード1Aは、軟磁性ボード10に壁面マグネットシート5を磁着させた構成とされる。
壁面マグネットシート5は、図8に示すように、マグネットシート6に接着剤を介して壁材フィルム13を積層させてある。マグネットシート6は、図9に示すように、一定ピッチの着磁ライン63を有する両面着磁型とされる。着磁ライン63のピッチ幅はL字棚2のマグネットシート3のピッチ幅と同じである。
この壁面マグネットシート5は、マグネットシート6の着磁ライン63が水平方向に平行となるように軟磁性ボード10に磁着されている。
【0045】
図8において、L字棚2は、磁性壁1Aのマグネットシート6とL字棚2のマグネットシート3との間に働く磁着力により、磁性壁1に保持されている。このとき、マグネットシート3とマグネットシート6とは、図10に示すように、互いに異極同士(N極31とS極62、S極32とN極61)が磁着した状態となっている。
これにより、L字棚2は水平方向から傾くことなく、真っ直ぐな状態で磁性壁1Aに固定される。したがって、L字棚2の水平状態を保持して磁性壁1Aに取り付ける際の作業労力が軽減される。
【0046】
また、マグネットシート3の磁着面全体にわたり異極同士が磁着しあうため、第1実施形態と比べて強い磁着力で固定が行われる。
なお、マグネットシート3及びマグネットシート6は、等方性磁性材料で製作されたものを使用しても、N極とS極同士が磁着しあうため、安定した半固定、つまり着脱が繰り返し何度でもできる機能を有する。
【0047】
〔変形例〕
上述の各実施形態において、L字棚2のマグネットシート3は上方だけにオーバーフレーム領域3Vを有する形のものを示したが、図11(a)に示すように、左右上下の全てにはみ出るオーバーフレーム領域3Wを有してもよい。なお左右下の少なくとも一つにオーバーフレーム領域を有するものでもよい。また本体部20はL字形状に限らず、例えば図11(b)に示すように、左右端に出入口を有するとともに正面に開口窓2Hを有する窓付きのトンネル型のアイテムとしてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、上に開示した実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【0049】
すなわち、磁性壁取付けシステム100,200,300,400の各部または全体の構成、構造、形状、サイズ、個数、材質、配置などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。また、用途についても、猫の踏み台に限らず、本や食器用の各種棚、各種家具類、壁面磁着用テレビなど様々な対象に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
磁性壁に磁気吸着力により着脱自在に取付けられる磁着型の取付け物品、および磁性壁取付けシステムとして幅広く活用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 磁性壁
1A 磁性壁
2 L字棚(磁性壁取付け物品)
3 マグネットシート
3V オーバーフレーム領域
3W オーバーフレーム領域
4 クッション材
6 マグネットシート(強磁性体層)
10 軟磁性ボード
11 石膏ボード
12 軟磁性層(強磁性体層)
13 壁材フィルム
20 本体部
21 載置板
22 背面板
100 磁性壁取付けシステム
200 磁性壁取付けシステム
300 磁性壁取付けシステム
400 磁性壁取付けシステム
L1 長さ
L2 長さ
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11