(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064506
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】音声処理装置、アンプ装置、及び音声処理方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230501BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174834
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 敏行
(72)【発明者】
【氏名】森本 善信
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA50
5D220AB01
(57)【要約】
【課題】信号の混合によって所望の周波数特性を有する音声信号を生成する。
【解決手段】音声処理装置は、音声信号が入力される第1LPFと、音声信号が入力される、第1HPF及びプリアンプを含む回路と、音声信号が入力される第2HPFと、回路の出力信号が入力される第2LPFと、第1LPFの出力信号、第2HPFの出力信号、及び第2LPFの出力信号の夫々を所定の割合で取り出す取り出し部と、取り出された第1LPFの出力信号、第2HPFの出力信号、及び第2LPFの出力信号をミキシングするミキサを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号が入力される第1のローパスフィルタと、
前記音声信号が入力される、第1のハイパスフィルタとプリアンプとを含む回路と、
前記音声信号が入力される第2のハイパスフィルタと、
前記回路の出力信号が入力される第2のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号の夫々を所定の割合で取り出す取り出し部と、
前記取り出し部によって取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号をミキシングするミキサと
を備える音声処理装置。
【請求項2】
前記音声信号が前記第1のハイパスフィルタに入力され、前記第1のハイパスフィルタの出力信号が前記プリアンプに入力され、前記プリアンプの出力信号が前記第2のローパスフィルタに入力される
請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記音声信号が前記プリアンプに入力され、前記プリアンプの出力信号が前記第1のハイパスフィルタに入力され、前記第1のハイパスフィルタの出力信号が前記第2のローパスフィルタに入力される
請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記第1のハイパスフィルタと、前記第2のハイパスフィルタと、前記第1のローパスフィルタと、前記第2のローパスフィルタとの少なくとも一つがオンオフ可能である
請求項1から3のいずれか一項に記載の音声処理装置。
【請求項5】
入力された音声信号に効果が付与された前記音声信号を、前記第1のローパスフィルタ及び前記第2のハイパスフィルタの夫々に入力する第1の効果付与部をさらに含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の音声処理装置。
【請求項6】
入力された音声信号に効果が付与された前記音声信号を、前記回路に入力する第2の効果付与部をさらに含む
請求項5に記載の音声処理装置。
【請求項7】
前記第2の効果付与部は、前記第1の効果付与部が付与する効果と異なる効果を付与する
請求項6に記載の音声処理装置。
【請求項8】
前記ミキサの代わりに、前記取り出し部によって取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号と、前記第2のハイパスフィルタの出力信号をミキシングする第2のミキサを備え、
前記第2のミキサの出力信号に対する音質調整を行う第1の音質調整部と、
前記取り出し部によって取り出された前記第2のローパスフィルタの出力信号に対する音質調整を行う第2の音質調整部と、
前記第1の音質調整部の出力信号と前記第2の音質調整部の出力信号とをミキシングする第3のミキサと
をさらに備える請求項1又は2に記載の音声処理装置。
【請求項9】
楽器から入力された音声信号の処理を行う音声処理装置と、
前記音声処理装置から出力された信号を増幅するパワーアンプと、
を含み、
前記音声処理装置が、
音声信号が入力される第1のローパスフィルタと、
前記音声信号が入力される、第1のハイパスフィルタとプリアンプとを含む回路と、
前記音声信号が入力される第2のハイパスフィルタと、
前記回路の出力信号が入力される第2のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号の夫々を所定の割合で取り出す取り出し部と、
前記取り出し部によって取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号をミキシングするミキサと
を備えることを特徴とするアンプ装置。
【請求項10】
音声処理装置が、
音声信号を第1のローパスフィルタに入力することと、
第1のハイパスフィルタとプリアンプとを含む回路に前記音声信号を入力することと、
第2のハイパスフィルタに前記音声信号を入力することと、
第2のローパスフィルタに前記回路の出力信号を入力することと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号の夫々を所定の割合で取り出すことと、
取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号をミキシングすることと、
を実行する音声処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声処理装置、アンプ装置、及び音声処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレキギターが接続され、ギターからの信号を増幅させて大きな音声を出力するアンプがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、信号の混合によって所望の周波数特性を有する音声信号を生成可能な音声処理装置、アンプ装置、及び音声処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、音声信号が入力される第1のローパスフィルタと、前記音声信号が入力される、第1のハイパスフィルタとプリアンプとを含む回路と、前記音声信号が入力される第2のハイパスフィルタと、前記回路の出力信号が入力される第2のローパスフィルタと、前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号の夫々を所定の割合で取り出す取り出し部と、前記取り出し部によって取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号をミキシングするミキサを備える音声処理装置である。
【0006】
本発明の態様の一つは、楽器から入力された音声信号の処理を行う音声処理装置と、前記音声処理装置から出力された信号を増幅するパワーアンプと、を含み、前記音声処理装置が、音声信号が入力される第1のローパスフィルタと、前記音声信号が入力される、第1のハイパスフィルタとプリアンプとを含む回路と、前記音声信号が入力される第2のハイパスフィルタと、前記回路の出力信号が入力される第2のローパスフィルタと、前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号の夫々を所定の割合で取り出す取り出し部と、前記取り出し部によって取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号をミキシングするミキサとを備えることを特徴とするアンプ装置である。
【0007】
本発明の態様は、音声処理装置が、音声信号を第1のローパスフィルタに入力することと、第1のハイパスフィルタとプリアンプとを含む回路に前記音声信号を入力することと、第2のハイパスフィルタに前記音声信号を入力することと、第2のローパスフィルタに前記回路の出力信号を入力することと、前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号の夫々を所定の割合で取り出すことと、取り出された前記第1のローパスフィルタの出力信号、前記第2のハイパスフィルタの出力信号、及び前記第2のローパスフィルタの出力信号をミキシングすることと、を実行する音声処理方法であってもよい。また、本発明の態様は、コンピュータを音声処理装置として動作させるプログラム、或いは当該プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、参考例1に係る音声信号のブレンド回路を示す図であり、
図1Bは、プリアンプ1の周波数特性を示すグラフであり、
図1Cは、参考例1のブレンド回路の出力信号の周波数特性を示すグラフである。
【
図2】
図2Aは、参考例2に係るブレンド回路の構成例を示す図であり、
図2Bは、参考例2のブレンド回路の出力信号の周波数特性を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施形態に係るブレンド回路(音声処理装置)を適用可能なギターアンプを示す図である。
【
図4】
図4は、ギターアンプの回路構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るブレンド回路の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るブレンド回路の出力信号の周波数特性を示すブラフである。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るブレンド回路の構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、トーン回路におけるブースト/カット周波数特性を示す図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態におけるブレンド回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アンプ装置(例えばギターアンプ)は、エレキギターなどの楽器からの演奏音の音声信号を歪ませて、興趣に富んだ音声を出力可能に構成される。そのため、アンプ装置は、音声信号を混合するブレンド回路を含む。
【0010】
図1Aは、参考例1に係る音声信号のブレンド回路を示す。
図1Aに示すブレンド回路では、オリジナルの音声信号(入力信号)の経路が第1の経路と第2の経路とに分岐され、第1の経路にプリアンプ(PREAMP)1が設けられている。プリアンプ1は、入力信号の増幅によって音声信号に歪みを与える増幅回路である。第2の経路はオリジナルの音声信号を流すように構成される。そして、オリジナルの音声信号とプリアンプ1からの出力信号とが、出力信号の大きさを調整する可変抵抗器2及び3の夫々を用いて所望の割合で取り出され、ミキサ4で混合される。これにより、ブレンド回路からは、オリジナルの音声とプリアンプ1からの出力信号とが所定の割合で混合された音声信号が出力される。
【0011】
図1Bは、プリアンプ1の周波数特性を示すグラフである。プリアンプ1は、好適な歪みサウンドを得るために、周波数の低域及び高域を適度にカットするフィルタを有し、
図1Bに示すような周波数特性を有する。
【0012】
図1Cは、参考例1のブレンド回路からの出力信号の周波数特性を示す。
図1Cに示すように、オリジナルの音声信号とプリアンプからの音声信号とをブレンドした場合、位相干渉によってフラットな特性にならない。このため、聴者が不快な音、或いは聴取を期待する低域の音声を聞き取れないことから品質の低い音声と認識する可能性があった。
【0013】
図2Aは、参考例2に係るブレンド回路の構成例を示す。参考例2では、参考例1の構成が以下のように変更されている。すなわち、二つに分岐する第1の経路において、プリアンプ1の前段にハイパスフィルタ(HPF)5が設けられている。HPF5は、入力された音声信号から周波数の高域成分を取り出す。また、第2の経路には、ローパスフィルタ(LPF)6が設けられる。LPF6は、入力された音声信号から周波数の低域成分を取り出す。LPF6の出力信号とプリアンプ1からの出力信号とが可変抵抗器2及び3によって所望の割合で取り出され、ミキサ4によってブレンドされる。
【0014】
参考例2では、HPF5により、プリアンプ1に入力される音声信号の低域成分がカッ
トされることで、プリアンプ1による低域成分に対する不適な増幅(音潰れ、或いは音割れなど原因となる)が回避される。一方で、オリジナルの音声信号の低域成分がブレンド回路の出力信号に含まれるように、LPF6からの低域成分がミキサ4によってプリアンプ1からの出力信号にブレンドされる。
【0015】
図2Bは、参考例2のブレンド回路の出力信号の周波数特性を示す。HPF5によって、低域成分がカットされた信号がプリアンプ1に入力され、高域成分がプリアンプ1によって適度にカットされる。このようなプリアンプ1の出力信号に対し、オリジナルの音声信号の低域成分がブレンドされる。これらによって、参考例1との比較(
図1C)との比較において、低域にフラットな特性が得られる。また、LPF6が高域成分をカットすることにより、高域における位相干渉による歪みが抑えられる。したがって、参考例2のブレンド回路によれば、楽器本来の低域の部分と高域の(プリアンプ1を用いた歪み処理による)倍音成分を調整することができ、音の太いオーバードライブサウンドを容易に得ることができる。
【0016】
しかしながら、参考例2には、以下の問題があった。すなわち、参考例2では、プリアンプ1において、オリジナルの音声信号の高域が適度にカットされる。このため、
図2Bに示したように、参考例2のブレンド回路の出力信号からは、オリジナルの信号に含まれていた高域成分がカットされてしまい、高域の音質がオリジナルから変質してしまう問題があった。以下の説明では、当該課題を解決するブレンド回路(音声処理装置)、及びブレンド回路を備えたアンプ装置について説明する。
【0017】
図3は、実施形態に係るブレンド回路を適用可能なギターアンプ10(アンプ装置)を示す。ギターアンプ10には、エレキギター7(例えばベースギター)が接続される。エレキギター7は楽器の一例であり、実施形態に係るブレンド回路は、ギター以外の楽器について適用可能である。
【0018】
図4は、ギターアンプ10の回路構成例を示す図である。
図4において、ギターアンプ10は、全体の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)11を有する。CP
U11は、バス8を介して、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)14、DS
P(Digital Signal Processor)15と接続されている。CPU11には、ユーザインタフェース(UI)16が接続されている。
【0019】
RAM13は、CPU11の作業領域、プログラムやデータの記憶領域として使用される。ROM12は、プログラムやデータの記憶領域として使用される。RAM13及びROM12は、記憶装置(記憶媒体)の一例である。UART14は、フットコントローラ30との通信に使用される。
【0020】
ギターアンプ10は、インプット(INPUT)端子21と、センド(SEND)端子22と、
リターン(RETURN)端子23とを有する。インプット端子21には、エレキギター7が接続され、エレキギター7の演奏により生じた電気信号(音声信号、又は楽音信号)が入力される。センド端子22は、外部機器(例えば外部エフェクタ)に、音声信号を送信するための端子であり、リターン端子23は、外部機器から出力された音声信号を入力するための端子である。
【0021】
インプット端子21及びリターン端子23に入力された音声信号は、ADC17でアナログ-ディジタル変換され、DSP15に入力される。DSP15は、プログラムの実行によって、エレキギター7から受信された信号に対するピッチ、フィルタ、アンプ処理や、効果付与などの制御を行う。また、DSP15は、プログラムの実行によって、後述す
るブレンド回路40として機能する。DSP15から出力される音声信号は、DAC18に入力されてアナログ信号に変換され、センド端子22及びパワーアンプ19に送られる。パワーアンプ19は信号を増幅してスピーカ20に接続し、スピーカ20からは、音声信号に応じた音声が放音される。
【0022】
UI16は、つまみ、スイッチ、表示器(ランプ、LEDなど)、ボタン、キーなどの、ギターアンプ10に対する複数の設定値(パラメータ)を入力及び設定する入力装置と、ギターアンプ10の状態や設定内容を表示する表示器とを含む。
【0023】
CPU11は、プログラムを実行することによって、UI16を用いて作成された、ギターアンプ10の設定に係るパラメータなどの情報をRAM13に記憶する処理、及び設定に係るパラメータをDSP15に設定する処理を行う。DSP15は、CPU11の制御下で、ROM12又はRAM13に記憶されたプログラムを実行することによって、ブレンド回路(音声処理装置)として動作することができる。すなわち、DSP15は、音声処理装置乃至コンピュータに該当する。
【0024】
図5は、第1実施形態に係るブレンド回路40の構成例を示す。ブレンド回路40は、参考例2に示したブレンド回路(
図2A)に対し、以下の改変を施すことによって構成されている。
【0025】
すなわち、
図5において、ブレンド回路40に含まれる、プリアンプ1、可変抵抗器2及び3、ミキサ4、HPF5、及びLPF6は、参考例2と同じものを適用可能である。このため、これらの説明は省略する。可変抵抗器2、43及び3は、「取り出し部」の一例である。可変抵抗器2、43及び3の夫々は、出力信号の大きさ(電流値又は電圧値)の調整に使用される。
【0026】
ブレンド回路40では、入力信号たるオリジナルの音声信号の経路が第1~第3の経路に分岐する。すなわち、オリジナルの音声信号がHPF5(第1のHPF)に入力される第1の経路と、オリジナルの音声信号がLPF6(第1のLPF)に入力される第2の経路と、オリジナルの音声信号がHPF41(第2のHPF)に入力される第3の経路とに分岐する。HPF41の出力信号は、可変抵抗器43に接続され、可変抵抗器43によって取り出された音声信号は、ミキサ4に入力される。
【0027】
また、ブレンド回路40では、プリアンプ1と可変抵抗器3との間には、LPF42(第2のLPF)が挿入されている。可変抵抗器2、3、及び43の夫々によって取り出す信号の大きさは、UI16に含まれるつまみなどによって調整可能である。
【0028】
なお、HPF5は、
図5に示すように、プリアンプ1の前段に配置されても後段に配置されてもよい。換言すれば、プリアンプ1及びHPF5の順序はどちらが先でもよい。例えば、
図6に示すように、HPF5とプリアンプ1とが、スイッチ44、45及び46を介して結線され、これらのスイッチ44、45及び46の切り替え動作によって、HPF5の位置がプリアンプ1の前段と後段との一方に変更可能な構成を採用してもよい。スイッチ44、45、及び46の設定は、例えばCPU11によって行われる。HPF5をプリアンプ1の前段に配置する場合、低域の歪み具合を調整することができる。これに対し、HPF5をプリアンプ1の後段に配置する場合、プリアンプ1によって歪んだ低域の倍音成分をHPF5で取り出すことができるため、適度な歪み感とサスティーン感を調整することができる。なお、LPF6、HPF41、HPF5、LPF42の夫々の次数、カットオフ周波数は適宜設定可能である。プリアンプ1及びHPF5は「回路」の一例である。
【0029】
ブレンド回路40によれば、ブレンド回路40の入力端子に入力された音声信号は、第1~第3の経路に分岐して、HPF5、LPF6及びHPF41に入力される。HPF5は、音声信号の周波数の低域成分をカットした信号を出力する。プリアンプ1は、HPF5の出力信号を増幅して歪ませるとともに、周波数の低域及び高域を適度にカットする。LPF42は、プリアンプ1の出力信号の周波数の高域成分をカットした信号を主筒力する。
【0030】
LPF6は、オリジナルの音声信号の周波数の低域成分(HPF5によりカットされる部分を含む)を通過させる。HPF41は、オリジナルの音声信号の周波数の高域成分(LPF6によりカットされる部分を含む)を通過させる。LPF6、HPF41及びLPF42からの出力信号は、UI16を用いた可変抵抗器2、43及び3の夫々の調整によって所望の(任意の)割合で取り出され、ミキサ4でミキシング(ブレンド)される。
【0031】
図7は、
図5に示したブレンド回路40の出力信号の周波数特性である。
図7に示すように、ブレンド回路40では、プリアンプ1からの出力信号の高域成分がLPF42でカットされ、代わりにHPF41からのオリジナルの音声信号の高域成分がミキシングされる。これによって、ミキサ4からの出力信号には、歪みのないオリジナルの高域成分が残る状態となる。これによって、高域成分に関して位相を合わせたブレンドが可能となることで、低域だけでなく高域成分についてもフラットな特性を得ることができる。換言すれば、プリアンプ1によってカットされる周波数領域についてフラットな特性を得ることができる。
【0032】
図8は、第2実施形態に係るブレンド回路40Aの構成例を示す。
図8において、ブレンド回路40Aは、ブレンド回路40と以下の点で異なっている。すなわち、オリジナルの音声信号が夫々入力される効果付与部(EFFECT)51、52が配置され、効果付与部51の出力信号はLPF6及びHPF41に入力される。また、効果付与部51の出力信号はHPF5に入力される。
【0033】
また、ミキサ4(第1のミキサ)の代わりにミキサ4a(第2のミキサ)が設けられている。ミキサ4aは、可変抵抗器2及び可変抵抗器43の夫々によって取り出された信号をミキシングする。ミキサ4aの出力信号は、トーン回路(TONE:音質調整部)53に接続(入力)される。また、可変抵抗器3は、LPF42からの出力信号を取り出す(出力信号の大きさを調整する)のに使用される。可変抵抗器3から取り出された信号は、トーン回路(TONE:音質調整部)54に接続(入力)される。トーン回路53及び54の出力信号は、ミキサ55によってミキシングされる。
【0034】
効果付与部51及び52の夫々は、音声信号に対して効果を付与する。効果付与部51及び52は、ギターアンプ10内で所望の効果を付与する構成であっても、音声信号をギターアンプ10の外部に出力し、外部の機器にて効果が付与された音声信号の入力を受け付ける構成であってもよい。効果は、例えば、歪み系(歪み付与)であれば、オーバードライブ、ディストーション、ファズなどを含む。また、効果は、ダイナミクス系(ダイナミクス感を整える)であれば、コンプレッサ、リミッタ、イコライザなどを含む。効果の種類はこれらの例示に制限されない。効果付与部51及び効果付与部52の夫々で付与される効果の種類は同じであっても異なっていてもよい。異なる効果を付与する場合、例えば、効果付与部51では、ダイナミクス系の効果が付与され、効果付与部52では歪み系の効果を付与する。但し、このような例示に制限されない。また、効果付与部51及び効果付与部52の少なくとも一方が音声信号をスルーさせる(効果を付与しない状態:効果付与オフ)に設定可能であってもよい。
【0035】
効果付与部51及び52がLPF6、HPF41及びHPF5の前段に設けられること
で、ミキサ4からの出力信号や可変抵抗器3から取り出された信号に効果を付与する場合に比べて好適な音質の音声信号を得ることができる。なお、歪系、ダイナミクス系の効果付与部は、一般的に プリアンプの前段に接続されることが多い。また、歪系やイコライ
ザの効果付与部をプリアンプの前段に用いることで、信号レベルを上げるブースターとして使用することができ、心地よいオーバードライブ・サウンドをプリアンプの出力から得ることができる。
【0036】
トーン回路53および54は、周波数の低域、中域、及び高域の音質調整を行う。すなわち、ギターアンプ10のユーザは、UI16を操作し、楽曲のジャンルやテンポなどに応じて、低域、中域、及び高域の夫々の音質を指定するパラメータ(ブースト/カット周波数特性)を設定することができる。
図9に、トーン回路53、54に設定されるブースト/カット周波数特性の一例を示す。トーン回路53及び54は、パラメータに従って、入力された音声信号に対する加工(低域、中域、高域の夫々に対するブースト乃至カット)を行い、音質を調整する。
【0037】
図10は、第3実施形態に係るブレンド回路40Bの構成例を示す。ブレンド回路40Bは、以下の点でブレンド回路40Aと異なっている。すなわち、効果付与部51からの出力信号と、LPF6の出力信号との一方を選択するスイッチ61が設けられている。また、効果付与部52からの出力信号と、HPF5の出力信号との一方を選択するスイッチ62が設けられている。また、効果付与部51からの出力信号と、HPF41の出力信号との一方を選択するスイッチ63が設けられている。プリアンプ1からの出力信号と、LPF42からの出力信号との一方を選択するスイッチ64が設けられている。スイッチ61~64の操作によって、LPF6、HPF5、HPF41、LPF42、トーン回路53のバイパスが可能となっている。換言すれば、スイッチ61~64の操作によって、LPF6、HPF41、HPF5、LPF42の夫々のオンオフを切り替え可能となっている。
【0038】
ブレンド回路40Bでは、さらに、ミキサ4からの出力信号と、トーン回路53の出力信号との一方を選択するスイッチ65が設けられている。このように、スイッチ65の操作によって、トーン回路53のバイパスが可能となっている。すなわち、オリジナルの音声信号の低域成分及び高域成分のミキシング信号に対する音質調整(トーン回路53)のオンオフが可能となっている。
【0039】
なお、実施形態では、ブレンド回路40、40A及び40BがDSP15を用いて構成される例について説明したが、ブレンド回路40、40A及び40Bはアナログ回路、アナログ回路とディジタル回路の組み合わせ、或いはDSP以外のディジタル回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)など)により構成されてもよい。
【0040】
実施形態に係る音声処理装置(ブレンド回路40、40A、40B)は、音声信号が入力される第1のLPF6と、音声信号が入力される、第1のHPF5及びプリアンプ1を含む回路と、音声信号が入力される第2のHPF41と、回路の出力信号が入力される第2のLPF42とを含む。また、音声処理装置は、第1のLPF6の出力信号、第2のHPF41の出力信号、及び前記第2のLPF42の出力信号の夫々を所定の割合で取り出す取り出し部(可変抵抗器2、43、3)と、取り出し部によって取り出された第1のLPF6の出力信号、第2のHPF41の出力信号、及び第2のLPF42の出力信号をミキシングするミキサ4とを備える。
【0041】
プリアンプ1は、入力された音声信号から、所定の周波数の低域成分及び高域成分をカットする。HPF5及び41の夫々は、プリアンプ1においてカットされる高域の周波数
帯の信号(高域成分)を通過させる。LPF6は、HPF5及び41の少なくとも何れか一方においてカットされる低域の周波数帯の信号(低域成分)を通過させる。LPF42は、HPF5及び41の少なくとも何れか一方においてカットされる低域の周波数帯の信号(低域成分)を通過させる。例えば、LPF6及び42の夫々は、HPF5及び41の夫々が通過させる高域成分をカットする。
【0042】
音声処理装置によれば、例えば、HPF5によってオリジナルの音声信号から周波数の低域成分がカットされた信号に対する増幅(歪み付与)と、所定の高域成分及び低域成分の周波数カット(
図1B)とが行われた信号がプリアンプ1から出力される。或いは、プリアンプ1によって、歪み付与の増幅と、周波数の高域成分及び低域成分の周波数カットとが行われ、プリアンプ1によって得られた信号に対して周波数の低域成分のカットが行われた信号がHPF5から出力される。LPF42は、プリアンプ1又はHPF5の出力信号に対して周波数の高域成分をカットした信号を生成する。
【0043】
そして、取り出し部たる可変抵抗器2,43,及び3によって、オリジナルの音声信号の低域の信号(低域成分、LPF6の出力信号)と、オリジナルの音声信号の高域の信号(高域成分、HPF41の出力信号)と、LPF42の出力信号とが所定の割合で取り出され、ミキシングされる。これによって、信号の低域及び高域の位相合わせが行われ、フラットな特性を有する信号を得ることができる。すなわち、音声処理装置によれば、参考例1及び2に比べて好適な周波数特性を有する信号を得ることができる。
【0044】
また、ブレンド回路40Aとして示したように、LPF6及びHPF41の入力信号が、第1の効果付与部(効果付与部51)によって効果が付与された信号であってもよい。また、回路(HPF5又はプリアンプ1)に入力される音声信号が、第2の効果付与部(効果付与部52)によって効果が付与された信号であってもよい。効果付与部52は、ブレンド回路40Aに設けられていなくてもよい。効果付与部52は、効果付与部51が付与する効果と同一の効果を付与してもよく、異なる効果を付与してもよい。
【0045】
また、ブレンド回路40Bとして示したように、ミキサ4の代わりに、可変抵抗器2によって取り出されたLPF6の出力信号と、可変抵抗器43によって取り出されたHPF41の出力信号をミキシングするミキサ4a(第2のミキサ)を備えてもよい。この場合、ミキサ4aの出力信号に対する音質調整を行うトーン回路53(第1の音質調整部)と、可変抵抗器3によって取り出されたLPF42の出力信号に対する音質調整を行うトーン回路54(第2の音質調整部)と、トーン回路53及び54の夫々の出力信号をミキシングするミキサ55(第3のミキサ)を備えてもよい。実施形態にて示した構成は、目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・プリアンプ
2,3,43・・・可変抵抗器
4,4a,55・・・ミキサ
5,41・・・ハイパスフィルタ
6,42・・・ローパスフィルタ
10・・・ギターアンプ
11・・・CPU
15・・・DSP
40,40A,40B・・・ブレンド回路(音声処理装置)
51,52・・・効果付与部
53,54・・・音質調整部