(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064510
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ボーリングマシン
(51)【国際特許分類】
E21B 44/00 20060101AFI20230501BHJP
E21B 3/02 20060101ALI20230501BHJP
E21B 44/06 20060101ALI20230501BHJP
E21B 44/04 20060101ALI20230501BHJP
E21B 45/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E21B44/00 A
E21B3/02 Z
E21B44/06
E21B44/04
E21B45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174841
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
(72)【発明者】
【氏名】山根 千学
(72)【発明者】
【氏名】丸山 侑眞
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦志
(72)【発明者】
【氏名】野呂 秀明
(72)【発明者】
【氏名】門倉 敬三
(72)【発明者】
【氏名】奥津 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷川 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】圓山 航平
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129CA03
2D129CA04
2D129CA13
2D129CA18
2D129CA22
2D129CA29
2D129CA34
2D129CA35
2D129CB01
2D129CB05
2D129CB06
2D129CB13
2D129CB14
2D129CB15
2D129CB18
(57)【要約】
【課題】オペレータの技量や経験の如何に関わらず、地盤を精度よく削孔する。
【解決手段】ボーリングマシン10は、複数のロッドのうち最後端のロッドを把持して回転力を付与し、複数のロッド及び先端ロッドを軸回転させるドリルヘッド12と、ドリルヘッド12を削孔方向と平行な方向へ移動させて、複数のロッド及び先端ロッドへ給進力を付与する給進装置24と、ロッド80の各々の継ぎ足し及び切り離しを行うロッドハンドリング装置30と、削孔水を供給する送水ポンプ50と、マシン10全体の挙動を把握するための複数のセンサ52と、複数のセンサ52による検知結果を加味してマシン10全体の動作を制御する制御部56とを含んでいる。これにより、マシン10全体の動作を、オペレータが直接的に介入する必要なく、制御部56によって制御することができるため、オペレータの技量や経験の如何に関わらず、地盤を精度よく削孔することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側にビットが取り付けられた筒状の先端ロッドと、後端側から削孔水が供給される筒状の後端ロッドとの間に、筒状の複数のロッドを順次継ぎ足しながら地盤を削孔するボーリングマシンであって、
前記複数のロッドのうち最後端のロッドを把持して回転力を付与し、前記複数のロッド及び前記先端ロッドを軸回転させるドリルヘッドと、
該ドリルヘッドを削孔方向と平行な方向へ移動させて、前記複数のロッド及び前記先端ロッドへ給進力を付与する給進装置と、
前記複数のロッドの各々の継ぎ足し及び切り離しを行うためのロッドハンドリング装置と、
前記削孔水を供給するための送水ポンプと、
マシン全体の挙動を把握するための複数のセンサと、
該複数のセンサによる検知結果を加味しながら、マシン全体の動作を制御する制御部と、を含むことを特徴とするボーリングマシン。
【請求項2】
前記複数のセンサとして、前記ドリルヘッドによる把持力、前記ドリルヘッドによる回転の回転圧力、前記ドリルヘッドによる回転の回転数、前記給進装置による給進速度、前記給進装置による給進圧力、前記給進装置による前記ドリルヘッドの位置、マシンの振動、前記削孔水の送水量、及び前記削孔水の送水圧力のうち、少なくとも1つを計測するセンサを含むことを特徴とする請求項1記載のボーリングマシン。
【請求項3】
前記ドリルヘッド、前記給進装置、及び前記ロッドハンドリング装置を含む主要部を支えるベース部と、
前記主要部の姿勢を前記ベース部に対して一体的に変化させて、削孔方向を切り替えるための方向切替部と、
前記主要部の姿勢を計測するための姿勢センサと、を更に含むことを特徴とする請求項1又は2記載のボーリングマシン。
【請求項4】
前記方向切替部は、前記ベース部が水平に設置された状態において、水平方向と平行な回転軸で前記主要部を回転させる回転部と、前記主要部及び前記回転部を、前記回転軸と直交し且つ水平方向と平行な旋回軸で旋回させる起倒部と、を含むことを特徴とする請求項3記載のボーリングマシン。
【請求項5】
前記ドリルヘッドは、回転力を発生するモータと、前記最後端のロッドへ回転力を伝達するスピンドルギヤと、該スピンドルギヤに係合する高速ギヤと、該高速ギヤに係合する低速ギヤとを含み、前記モータからの回転力の入力先が、前記高速ギヤと前記低速ギヤとで切り替え可能になっていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のボーリングマシン。
【請求項6】
削孔の状況に応じて、削孔深度、削孔時間、削孔速度、前記ドリルヘッドの回転トルク、前記ビットへの荷重、前記削孔水の送水量、及び前記削孔水の送水圧力のうち、少なくとも1つを記録する施工記録装置を更に含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のボーリングマシン。
【請求項7】
前記制御部は、現在接続されている前記複数のロッドの重量を加味して、前記ビットへの荷重が一定になるように、前記給進装置を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のボーリングマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリングマシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボーリングマシンによる地盤の削孔では、目視による削孔状態の確認や各ゲージの値に基づいて、ロッドの回転圧力や給進圧力、削孔水の流量などをオペレータが調整していた。なお、特許文献1には、削孔水圧を調整する水圧調整弁を1箇所で操作可能としたボーリングマシンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来のボーリングマシンを使用した地盤の削孔は、上述したような理由から、オペレータに高い技量や豊富な経験が求められ、熟練者でなければ精度良く行うことが困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オペレータの技量や経験の如何に関わらず、地盤を精度よく削孔することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)先端側にビットが取り付けられた筒状の先端ロッドと、後端側から削孔水が供給される筒状の後端ロッドとの間に、筒状の複数のロッドを順次継ぎ足しながら地盤を削孔するボーリングマシンであって、前記複数のロッドのうち最後端のロッドを把持して回転力を付与し、前記複数のロッド及び前記先端ロッドを軸回転させるドリルヘッドと、該ドリルヘッドを削孔方向と平行な方向へ移動させて、前記複数のロッド及び前記先端ロッドへ給進力を付与する給進装置と、前記複数のロッドの各々の継ぎ足し及び切り離しを行うためのロッドハンドリング装置と、前記削孔水を供給するための送水ポンプと、マシン全体の挙動を把握するための複数のセンサと、該複数のセンサによる検知結果を加味しながら、マシン全体の動作を制御する制御部と、を含むボーリングマシン(請求項1)。
【0007】
本項に記載のボーリングマシンは、ドリルヘッド、給進装置、ロッドハンドリング装置、送水ポンプ、複数のセンサ、及び制御部を含んでいる。ドリルヘッドは、複数のロッドのうち最後端のロッド(後端ロッドへ接続されたロッド)を把持して回転力を付与することで、複数のロッド及びその先端側に接続された先端ロッドを軸回転させる。これによって、先端ロッドに取り付けられたビットも回転し、削孔に必要な回転力が加えられる。また、給進装置は、複数のロッドのうち最後端のロッドを把持するドリルヘッドを、削孔方向と平行な方向へ移動(前進や後退)させることで、複数のロッド及びその先端側に接続された先端ロッドへ給進力を付与する。これによって、ドリルヘッドにより回転された状態で、複数のロッド、先端ロッド、及びビットが、給進装置からの給進力を受けて、地盤を削孔しながら進んでいくことになる。
【0008】
ロッドハンドリング装置は、先端ロッドと後端ロッドとの間に接続される複数のロッドのうち、最後端のロッドの継ぎ足しと、最後端のロッドの切り離しとを行うものであって、これによって複数のロッドが後端側から1本ずつ継ぎ足し又は切り離しされる。送水ポンプは、後端ロッドの後端側へ削孔水を供給するためのものであり、送水ポンプから後端ロッドへ供給された削孔水は、筒状の後端ロッドの内部、筒状の複数のロッドの各々の内部、及び筒状の先端ロッドの内部を通って、ビットへ供給され、更にビットから削孔箇所へ流出する。複数のセンサは、上述した各部位の動作状況を含む、ボーリングマシン全体の挙動を把握するためのものであり、ボーリングマシンの随所に設置されている。
【0009】
そして、制御部は、そのような複数のセンサによる検知結果を加味しながら、ボーリングマシン全体の動作を制御するものである。すなわち、ドリルヘッドによる回転力の付与、給進装置による給進力の付与、ロッドハンドリング装置によるロッドの継ぎ足し及び切り離し、及び送水ポンプによる削孔水の供給といった、ボーリングマシン全体の動作が、オペレータなどが直接的に介入する必要なく、制御部によって制御されることになる。これにより、オペレータの技量や経験の如何に関わらず、本項に記載のボーリングマシンによって、地盤が精度よく削孔されるものとなる。また、常にボーリングマシンの動作状況などに気を配るといった、オペレータの精神的な負担が軽減される上に、ロッドの取り扱いなどの重労働も軽減されるものである。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記複数のセンサとして、前記ドリルヘッドによる把持力、前記ドリルヘッドによる回転の回転圧力、前記ドリルヘッドによる回転の回転数、前記給進装置による給進速度、前記給進装置による給進圧力、前記給進装置による前記ドリルヘッドの位置、マシンの振動、前記削孔水の送水量、及び前記削孔水の送水圧力のうち、少なくとも1つを計測するセンサを含むボーリングマシン(請求項2)。
本項に記載のボーリングマシンは、マシン全体の挙動を把握するための複数のセンサとして、下記の中の少なくとも1つを計測するセンサを含むものである。すなわち、ドリルヘッドによるロッドの把持力、ドリルヘッドにより付与される回転圧力、ドリルヘッドにより付与される回転数、給進装置により付与される給進速度、給進装置により付与される給進圧力、給進装置により移動されるドリルヘッドの位置、ボーリングマシンの振動、送水ポンプからの削孔水の送水量、及び送水ポンプからの削孔水の送水圧力である。これらの計測結果から、ドリルヘッド、給進装置、及び送水ポンプなどの挙動が把握されるため、そのような挙動に基づいてそれらの動作が制御部により制御され、結果として地盤の削孔が精度よく行われるものである。
【0011】
(3)上記(1)(2)項において、前記ドリルヘッド、前記給進装置、及び前記ロッドハンドリング装置を含む主要部を支えるベース部と、前記主要部の姿勢を前記ベース部に対して一体的に変化させて、削孔方向を切り替えるための方向切替部と、前記主要部の姿勢を計測するための姿勢センサと、を更に含むボーリングマシン(請求項3)。
本項に記載のボーリングマシンは、ベース部、方向切替部、及び姿勢センサを更に含むものであって、ベース部は、ドリルヘッドと給進装置とロッドハンドリング装置とを含む、ボーリングマシンの主要部を支えるものである。方向切替部は、前述のマシンの主要部の姿勢をベース部に対して一体的に変化させ、ドリルヘッドなどにより把持されるロッドの向きを変えることで、削孔方向を切り替えるためのものである。そして、姿勢センサは、そのように変化する主要部の姿勢を計測するものである。このような構成により、制御部による動作制御によって削孔の精度を高めながらも、様々な方向への削孔に対応するものである。
【0012】
(4)上記(3)項において、前記方向切替部は、前記ベース部が水平に設置された状態において、水平方向と平行な回転軸で前記主要部を回転させる回転部と、前記主要部及び前記回転部を、前記回転軸と直交し且つ水平方向と平行な旋回軸で旋回させる起倒部と、を含むボーリングマシン(請求項4)。
本項に記載のボーリングマシンは、方向切替部が、ベース部に対して主要部を回転させる回転部と、ベース部に対して主要部を回転部と共に起倒させる起倒部とを含むものである。すなわち、回転部は、ベース部が水平に設置された状態において、水平方向と平行な回転軸で主要部を回転させることで、その回転軸と直交する全方向へ削孔方向を変化させる。また、起倒部は、主要部及び回転部を、回転部の回転軸と直交し且つ水平方向と平行な旋回軸で旋回させることで、回転部による回転ではカバーされない範囲に削孔方向を変化させる。これにより、主要部を多様な掘削姿勢で支えながら、より多くの方向への削孔に対応するものとなり、また、トンネルなどの狭小場所での削孔にも対応するものとなる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)項において、前記ドリルヘッドは、回転力を発生するモータと、前記最後端のロッドへ回転力を伝達するスピンドルギヤと、該スピンドルギヤに係合する高速ギヤと、該高速ギヤに係合する低速ギヤとを含み、前記モータからの回転力の入力先が、前記高速ギヤと前記低速ギヤとで切り替え可能になっているボーリングマシン(請求項5)。
本項に記載のボーリングマシンは、ドリルヘッドが、回転力を発生するモータと、スピンドルギヤ、高速ギヤ、及び低速ギヤの3つのギヤとを含むものである。スピンドルギヤは、ドリルヘッドにより把持される最後端のロッドへ回転力を伝達するものであり、高速ギヤはスピンドルギヤに係合し、低速ギヤは高速ギヤに係合するものである。すなわち、スピンドルギヤと低速ギヤとの間に高速ギヤが介在している。
【0014】
そして、モータからの回転力の入力先は、高速ギヤと低速ギヤとで切り替え可能になっており、高速ギヤへ回転力が入力されると、それが直接スピンドルギヤへと伝わり、低速ギヤへ回転力が入力されると、それが高速ギヤを介してスピンドルギヤへと伝わる。このため、3つのギヤのギヤ比の調整などにより、高速ギヤから回転力を入力する場合の高速度回転域と、低速ギヤから回転力を入力する場合の低速度回転域との、2つの回転速度域での回転が実現されるものとなる。これにより、ドリルヘッドを分解してギヤの組み換えなどを行う必要なく、従来行っていたそのような作業の時間を短縮しながらも、様々な速度でロッドが回転されるものとなる。
【0015】
(6)上記(1)から(5)項において、削孔の状況に応じて、削孔深度、削孔時間、削孔速度、前記ドリルヘッドの回転トルク、前記ビットへの荷重、前記削孔水の送水量、及び前記削孔水の送水圧力のうち、少なくとも1つを記録する施工記録装置を更に含むボーリングマシン(請求項6)。
本項に記載のボーリングマシンは、更に施工記録装置を含むものであり、この施工記録装置は、削孔の状況に応じて、削孔深度、削孔時間、削孔速度、ドリルヘッドの回転トルク、ビットへの荷重、削孔水の送水量、及び削孔水の送水圧力のうち、少なくとも1つを記録する。それらの値は、ドリルヘッドや送水ポンプといった各部位から取得されたり、複数のセンサから取得されたり、制御部によって算出されたりするものである。
【0016】
これにより、従来はオペレータが紙媒体に記録していたために、記録忘れや間違いがあり、手間もかかっていた記録作業が、記録忘れや間違いをすることなく、施工記録装置によって実行されるものとなる。更に、その記録が作業日報などに流用されることで、より作業時間が短縮されるものである。また、地盤の状況に対応した削孔データが蓄積されることで、地盤の状況に対応した指標値が設定され、削孔の効率化が図られるものとなる。加えて、蓄積された削孔データが参考にされて、地盤に生じている亀裂などに対応して削孔データが変化する様子が読み取られることで、記録中の削孔データから亀裂などの発生が判断されるものとなる。
【0017】
(7)上記(1)から(6)項において、前記制御部は、現在接続されている前記複数のロッドの重量を加味して、前記ビットへの荷重が一定になるように、前記給進装置を制御するボーリングマシン(請求項7)。
本項に記載のボーリングマシンは、制御部が、現在接続されている複数のロッドの重量を加味して、削孔中にかかるビットへの荷重が一定になるように、給進装置を制御するものである。すなわち、ロッドハンドリング装置を制御する制御部は、現在接続されているロッドの数量を把握しており、そこから全ロッドの合計重量を算出して、ビットへかかる荷重が一定になるように、給進装置によりロッドへ付加される給進力などを調整する。このとき、ビットへかかる荷重は、例えば、給進装置において給進力を付加するシリンダのロッド側とピストン側との圧力差から求められる。また、ビットへの荷重が一定になるように制御されるため、ビットへの荷重の他の要因による変化も同時に加味されることになる。これにより、ビットに対して過度な荷重がかかることが防止されながら、安定して削孔が行われるものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記のような構成であるため、オペレータの技量や経験の如何に関わらず、地盤を精度よく削孔することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンの構成を例示するブロック図である。
【
図2】
図1のボーリングマシンを示す斜視図である。
【
図3】
図1のボーリングマシンを
図2と異なる角度から示す斜視図である。
【
図4】
図1のボーリングマシンのドリルヘッドの構造を例示する断面イメージ図である。
【
図5】
図1のボーリングマシンの主要部の姿勢及びロッドハンドリング装置の姿勢を変化させた状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンで使用するロッドの構成を例示する断面イメージ図である。
【
図7】
図1のボーリングマシンの主に上向きを削孔する場合の形態を示す斜視図である。
【
図8】
図1のボーリングマシンの制御部により表示する表示例を示す画面イメージ図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンによる地盤の削孔方法の手順の一例を示すフロー図である。
【
図10】
図9に引き続き、地盤の削孔方法の手順の一例を示すフロー図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンによりロッド1本分を掘削する際の手順の一例を示すフロー図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンによりロッドを継ぎ足す際の手順の一例を示すフロー図である。
【
図13】
図12に引き続き、ロッドを継ぎ足す際の手順の一例を示すフロー図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンによりロッド1本分を引き抜く際の手順の一例を示すフロー図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係るボーリングマシンによりロッドを切り離す際の手順の一例を示すフロー図である。
【
図16】
図15に引き続き、ロッドを切り離す際の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10の構成の一例を示し、
図2及び
図3は、ボーリングマシン10の外形の一例を概略的に示している。なお、ボーリングマシン10の構成や外形は、
図1~
図3に示されたものに限定されるものではなく、例えば、施工環境や状況などに応じて、
図1~
図3に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成や、別の外形であってもよいものである。
【0021】
図1~
図3に示すように、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、先端側にビットが取り付けられた筒状の先端ロッド(図示省略)、筒状の複数のロッド80、及び後端側にウォータースイベル88が取り付けられた筒状の後端ロッド84を利用して、地盤を削孔するものである。より詳しくは、先端ロッドの後端側に複数のロッド80を順次継ぎ足し、更に複数のロッド80のうち最後端のロッド80の後端側に後端ロッド84を接続し、ウォータースイベル88から後端ロッド84、複数のロッド80、及び先端ロッドの内部を通して削孔水を供給しながら、地盤を削孔する。ここで、後端ロッド84やそれに接続された複数のロッド80の中心軸を、以降では「ロッド軸S」と呼ぶこととする。具体的に、ボーリングマシン10は、ドリルヘッド12、給進装置24、ロッドハンドリング装置30、送水ポンプ50、複数のセンサ52、制御部56、ベース部58、方向切替部60、及び施工記録装置68を備えている。なお、
図2及び
図3では、送水ポンプ50、複数のセンサ52、制御部56、及び施工記録装置68の図示を省略している。
【0022】
ドリルヘッド12は、複数のロッド80のうち最後端のロッド80を把持して、ロッド軸Sを回転軸とした回転力を付与するものであって、正方向に軸回転させる正転と逆方向に軸回転させる逆転とが可能である。また、ドリルヘッド12は、詳しくは後述するが、ロッド80の継ぎ足し時や切り離し時に、ロッド駆動部32として、ロッド80や後端ロッド84を把持して軸回転させる役割も担っている。
図4に示すように、ドリルヘッド12は、チャックシリンダ13、モータ14、スピンドルギヤ15、スピンドル16、高速ギヤ17、低速ギヤ18、チャックピース19、及びチャックベアリング20を有している。なお、チャックシリンダ13は
図2及び
図3に、モータ14は
図2にも図示されている。チャックシリンダ13は、チャックピース19を作動させてロッド80(後端ロッド84)を把持させるものであり、チャックベアリング20は、チャックピース19をスピンドル16と共に回転させるためのものである。
【0023】
スピンドル16の図中上方側には、スピンドルギヤ15が共に回転するように取り付けられ、スピンドルギヤ15には高速ギヤ17が係合し、高速ギヤ17には低速ギヤ18が係合している。モータ14は、回転力を発生させるものであって、本実施形態ではオイルモータで構成され、高速ギヤ17と低速ギヤ18との何れか一方から回転力を入力するように、それらの双方へ取り付け可能になっている。このため、モータ14が高速ギヤ17へ取り付けられた場合は、モータ14の回転力が高速ギヤ17からスピンドルギヤ15へ直接伝わり、スピンドル16が高速度回転域で回転するようになる。また、モータ14が低速ギヤ18へ取り付けられた場合は、モータ14の回転力が低速ギヤ18から高速ギヤ17を介してスピンドルギヤ15へ伝わり、スピンドル16が低速度回転域で回転するようになる。なお、
図4では、低速ギヤ18に取り付けられたモータ14が実線で、高速ギヤ17に取り付けられたモータ14が破線で図示されている。
【0024】
図1~
図3に戻り、給進装置24は、上述したようにロッド80や後端ロッド84を把持するドリルヘッド12を、ロッド80や後端ロッド84の延在方向と平行な方向へと移動させて、給進力を付与するものであって、ガイドフレーム25、スライドテーブル26、及び給進シリンダ27を備えている。スライドテーブル26は、ドリルヘッド12を支えながら、本実施形態では油圧を利用した給進シリンダ27から付与される駆動力によって、ガイドフレーム25に沿ってスライド移動するようになっている。以降では、給進装置24によって、ロッド80、後端ロッド84、及びドリルヘッド12を、削孔方向(
図2及び
図3における下方)へ移動させることを「前進」、その反対方向へ移動させることを「後退」という。給進装置24は、削孔のためではなく給進装置24の位置替えなどのために、通常よりも早い速度で移動する早送り前進や早送り後退の機能を有している。なお、詳しくは後述するが、ドリルヘッド12と同様に、この給進装置24も、ロッド80の継ぎ足し時や切り離し時に、ロッド駆動部32として、ロッド80や後端ロッド84を移動させる役割も担っている。
【0025】
ロッドハンドリング装置30は、複数のロッド80の各々の継ぎ足し及び切り離しを行うものであって、ロッド駆動部32、ロッド移動部34、ロッド固定部42、複数のセンサ44、及びロッド制御部48を含んでいる。ロッド駆動部32は、後端ロッド84や継ぎ足し又は切り離しを行う対象ロッド80Tを把持して、それらの延在方向と平行な方向へ移動及び軸回転させるためのものであり、上述したようにドリルヘッド12及び給進装置24がロッド駆動部32として利用される。ロッド移動部34は、継ぎ足し又は切り離しを行う対象ロッド80Tを把持して、他のロッド80や後端ロッド84との接続又は接続解除を行う接続位置と、ロッド移動部34への対象ロッド80Tの補給又は切り離した対象ロッド80Tを回収するための退避位置とへ移動させるアーム状のものである。ここで、接続位置とは、
図2や
図3に示されるように、対象ロッド80Tの中心軸がロッド軸S上に配置される位置であり、退避位置とは、例えば
図5にロッド移動部34が倒れた状態で図示されるように、ロッド軸Sから離れた位置である。なお、
図5には、接続位置にあって対象ロッド80Tを把持した状態のロッド移動部34と、退避位置にあって対象ロッド80Tを把持していない状態のロッド移動部34とを図示している。
【0026】
より具体的に、ロッド移動部34は、対象ロッド80Tを把持するロッドチャック35と、ロッドチャック35の把持力を発生するための油圧式のチャックシリンダ36と、ロッド移動部34全体を回転させる回転機構37と、ロッドチャック35やチャックシリンダ36などを起倒させる起倒機構39と、を含んでいる。回転機構37は、スイングベアリング38を介して、ロッド軸Sを回転軸として、ロッド移動部34全体を回転させる。起倒機構39は、スイングベアリング40を介して、ロッド軸Sと直交する旋回軸で、ロッドチャック35やチャックシリンダ36などを旋回移動させ、本実施形態では、
図2や
図3、及び
図5の左側に示したような接続位置と、
図5の右側に示したような退避位置との間を含む範囲で移動させる。
【0027】
ロッド固定部42は、ロッド固定部42に挿通されているロッド80(対象ロッド80Tの接続先のロッド80など)を把持して固定するものであり、本実施形態では油圧式のクランプホルダである。ロッド固定部42によりロッド80が固定されると、そのロッド80に接続されている全てのロッド80や先端ロッドが、ロッド固定部42によって保持される状態になる。複数のセンサ44は、ロッドハンドリング装置30の全体の挙動を把握するためのものであって、詳しい設置場所などの図示は控えるが、ロッドハンドリング装置30の各部位の動作を計測可能な位置に設置されている。これらの複数のセンサ44には、例えば、ロッド駆動部32(ドリルヘッド12)によるロッド80の把持力、ロッド駆動部32(ドリルヘッド12)により付与される回転圧力、ロッド駆動部32(ドリルヘッド12)による回転数、ロッド駆動部32(給進装置24)による移動速度、ロッド駆動部32(給進装置24)による移動位置、ロッド移動部34による対象ロッド80Tの把持力、ロッド移動部34による移動位置、及びロッド固定部42によるロッド80の把持力などを計測するセンサが含まれる。なお、複数のセンサ44の構成は、上述したセンサに限定されるものではない。
【0028】
ロッド制御部48は、上述した複数のセンサ44による計測結果を加味しながら、ロッドハンドリング装置30全体の動作を制御するものであり、本実施形態ではボーリングマシン10の制御部56の一部として搭載されている。すなわち、ロッド制御部48は、詳しくは後述するが、ロッド80の継ぎ足しや切り離しのために、ロッド駆動部32(ドリルヘッド12及び給進装置24)による回転や給進、ロッド移動部34による対象ロッド80Tの移動、ロッド固定部42によるロッド80の固定などを制御する。ロッド制御部48を介したロッド80の継ぎ足しや切り離しのための制御は、本実施形態では電気的に行われる。ロッド制御部48は、任意のハードウェアやソフトウェアによって構成されてよい。
【0029】
ここで、
図6には、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10で使用され、上述したロッドハンドリング装置30によって継ぎ足しや切り離しが行われる、ロッド80及び後端ロッド84の接続構造を図示している。
図6(a)にはロッド間の接続が解除された状態、
図6(b)にはロッド間が接続された状態が示されている。図示のように、複数のロッド80同士の接続は、軸回転及び差し込みを要するねじ構造によって行われ、このねじ構造による接続は、図示しない先端ロッドとロッド80との間にも利用される。これに対し、後端ロッド84とロッド80との間の接続は、差し込みによってのみ行われる。具体的に、後端ロッド84は、ウォータースイベル88と反対側の先端側へ突出するインナパイプ90を備えており、そのインナパイプ90の先端近傍にパッキン92が取り付けられている。このため、後端ロッド84とロッド80との接続時には、インナパイプ90がロッド80の後端側へ挿入され、インナパイプ90とロッド80との間がパッキン92によって止水される。なお、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10で使用されるロッド80及び後端ロッド84の接続構造は、
図6の構成に限定されるものではなく、後端ロッド84とロッド80との間が、ねじ構造によって接続されてもよい。
【0030】
図1に示される送水ポンプ50は、後端ロッド84に取り付けられたウォータースイベル88へ削孔水を供給するものであって、任意のポンプが用いられる。ベース部58は、
図2及び
図3に示すように、ドリルヘッド12、給進装置24、及びロッドハンドリング装置30などを含む、ボーリングマシン10の主要部54を支えるものであり、本実施形態では方向切替部60を介して主要部54を支えている。ベース部58は、安定力の向上のために、エクステンションレッグやアウトリガが装着可能になっている。なお、詳しい説明は控えるが、ベース部58の上には、油圧を用いている各部位の制御を行うバルブユニット74が設けられており、このバルブユニット74は、電気系統の故障時に手動で操作可能に構成されている。
【0031】
方向切替部60は、上述したようなボーリングマシン10の主要部54の姿勢を、ベース部58に対して変化させるものであり、回転部61、起倒部63、及びスライド部65を含んでいる。回転部61は、ベース部58が水平に設置された状態で、主要部54を水平方向と平行な回転軸で回転させるものであり、そのためのスイングベアリング62を備えている。
図2及び
図3には、ロッド軸Sが真下(ベース部58の設置面と直交する方向)へ向けられた、回転部61による回転の初期位置が示されており、
図5には、ロッド軸Sが約45度傾くように、回転部61によって主要部54が回転された状態が示されている。
【0032】
起倒部63は、ベース部58が水平に設置された状態で、主要部54及び回転部61を、回転部61の回転軸と直交し且つ水平方向と平行な旋回軸で旋回させて起倒させるものであり、そのための油圧式の起倒シリンダ64を備えている。起倒部63による主要部54の旋回範囲は、例えば、
図2や
図3に示されたような、回転部61による回転が初期位置でロッド軸Sが真下を向くような位置から、回転部61による回転が初期位置のままでロッド軸Sがベース部58の設置面と平行になるような位置までを含む範囲である。スライド部65は、回転部61に対して主要部54をロッド軸Sと平行な方向へスライド移動させるためのものであり、そのための油圧式のスライドシリンダ65を備えている。
【0033】
また、本実施形態のボーリングマシン10は、方向切替部60による姿勢の変化に加えて、
図7に示すような削孔方向を上向きとする掘削姿勢にも対応する。すなわち、
図7のボーリングマシン10は、
図2や
図3のボーリングマシン10と比較して、ドリルヘッド12が給進装置24によって下方へ移動され、ウォータースイベル88が下端になるように後端ロッド84が上下逆向きでドリルヘッド12によって把持されている。更に、ロッド固定部42がガイドフレーム25の下方から上方へ付け替えられ、そのロッド固定部42によって上下逆向きでロッド80が固定されている。また、ロッド移動部34にエクテンションロッド78が取り付けられ、ドリルヘッド12により把持された後端ロッド84と、固定部42により把持されたロッド80との間に、上下逆向きで対象ロッド80Tが供給されるようになっている。加えて、ガイドフレーム25の上方に上向き専用のアッパーフット76が取り付けられている。このような上向き姿勢で、上述したような方向切替部60による姿勢変化を行ってもよい。
【0034】
図1に示される複数のセンサ52は、ボーリングマシン10全体の挙動を把握するためのものであって、詳しい設置場所などの図示は控えるが、ボーリングマシン10の各部位の動作を計測可能な位置に設置されている。これらの複数のセンサ52には、例えば、ドリルヘッド12によるロッド80の把持力、ドリルヘッド12により付与される回転圧力、ドリルヘッド12による回転数、給進装置24による給進速度、給進装置24による給進圧力、給進装置24により移動されるドリルヘッド12やロッド80の位置、ボーリングマシン10の振動、送水ポンプ50からの削孔水の送水量、及び送水ポンプ50からの削孔水の送水圧力などを計測するセンサが含まれる。更に、方向切替部60により変化されるボーリングマシン10の主要部54の姿勢(回転、起倒、スライド)、ドリルヘッド12による回転トルク、削孔深度、給進装置24のストロークエンドなどを検出するセンサを含んでもよい。なお、複数のセンサ52の構成は、上述したセンサに限定されるものではない。また、複数のセンサ52にロッドハンドリング装置30のセンサ44と役割が重複するセンサが含まれている場合は、重複するセンサの何れか一方のみを備えればよい。
【0035】
制御部56は、上述した複数のセンサ52による計測結果を加味しながら、ボーリングマシン10全体の動作を制御するものであり、上述したように本実施形態ではロッドハンドリング装置30のロッド制御部48を含んでいる。すなわち、制御部56は、詳しくは後述するが、上述したロッド制御部48によるロッド80の継ぎ足しや切り離しのための動作制御の他に、地盤を削孔するために、ドリルヘッド12によるロッド80の回転、給進装置24によるロッド80の給進、送水ポンプ50による削孔水の送水、方向切替部60による主要部54の姿勢変化などを制御する。このため、制御部56は、例えば
図8に示すような表示を、任意の表示装置の画面に表示させてもよい。なお、制御部56は、任意のハードウェアやソフトウェアによって構成される。
【0036】
図8を参照すると、画面の左側には、ボーリングマシン10の制御状態や削孔状態を示す様々な情報が表示され、画面の中央近傍には、ボーリングマシン10の動作状況が図で示されている。このように、削孔状況が見える化されている。また、画面の右側には、ボーリングマシン10の動作を制御するための様々な制御ボタンが表示されると共に、その下部にはメッセージが表示されるメッセージ表示部Wが設けられている。制御ボタンには、削孔開始ボタンB1、引き抜き開始ボタンB2、ロッド継ぎ足しボタンB3、ロッド切り離しボタンB4、確認ボタンB5、一時停止・解除ボタンB6、及び全停止ボタンB7が含まれている。一時停止・解除ボタンB6は、ボーリングマシン10の動作を一時停止又は一時停止解除するためのもの、全停止ボタンB7は、ボーリングマシン10の全ての動作を停止するためのものであるが、他の制御ボタンの用途については後述する。なお、画面の左側の様々な数値は、例えばバーグラフメータなどを利用して表示してもよい。
【0037】
図1に示される施工記録装置68は、ボーリングマシン10による削孔状況を記録するものであり、削孔の状況に応じて、削孔深度、削孔時間、削孔速度、ドリルヘッド12の回転トルク、ビットへの荷重、削孔水の送水量、削孔水の送水圧力などを記録する。記録されたデータは、任意の通信手段を介して関係者へ配信されてもよい。
なお、
図2及び
図3には、サブリーダ70及び電動ホイスト72が図示されているが、これらは、長距離にわたって接続された複数のロッド80の引き抜きを補助するものである。また、ボーリングマシン10は、図示は省略しているが、電動機、オイルタンク、オイルポンプなどを搭載したパワーユニットも含んでおり、このパワーユニットから各種の動力を提供している。更に、ボーリングマシン10は、山岳地や狭小なトンネルなどでの作業が考慮され、複数部位に分割されて運搬可能になっている。
【0038】
次に、
図9~
図16に示すフロー図を順次参照しながら、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10による地盤の削孔、ロッド80の継ぎ足し及び切り離しなどの各作業における、具体的な手順や制御の流れについて説明する。ボーリングマシン10の構成については、適宜、
図1~
図8を参照のこと。なお、
図9~
図16に示すフロー図は、具体的な手順や制御を説明するための手順の一例を示したものである。従って、各作業の手順は、これらのフロー図に限定されるものではなく、例えば、ボーリングマシン10の構成や状況等に応じて、
図9~
図16に示したステップの一部が削除、変更、ないし適宜追加されたフローであってもよいものである。
【0039】
まず、
図9及び
図10を参照して、制御部56によって様々な制御を行いながら、設計深度まで自動的に地盤を削孔する方法について説明する。なお、
図9のフロー図と
図10のフロー図とは、A~Dのポイントで接続されている。
S10(削孔準備):オペレータや作業員などにより、設計内容や現場の状況に合わせて、地盤を削孔するための様々な準備を行う。例えば、ビットを取り付けた先端ロッドのセット、ウォータースイベル88を取り付けた後端ロッド84のセット、ロッド80の用意、ボーリングマシン10の主要部54の姿勢の設定などを行う。
S20(回転・前進):制御部56によりドリルヘッド12及び給進装置24を制御して、複数のロッド80のうち最後端のロッド80へ回転力及び給進力を付与し、最後端のロッド80の先端側に接続されたロッド全体を回転及び前進させる。
【0040】
S30(着底判定):制御部56により、先端ロッドのビットが削孔すべき地盤へ到達したか、或いは既に削孔を開始している場合は削孔が未だ終わっていない深度まで到達したか否かを判定する。このような判定は、例えば、センサ52により計測される深度や、ビットへかかる荷重などを判定材料として行えばよく、ビットへの荷重は、給進装置24の給進シリンダ27におけるロッド側とピストン側との圧力差から判断すればよい。判定の結果、着底したと判定した場合(YES)はS50へ移行し、着底していないと判定した場合(NO)はS40へ移行する。
S40(ロッド継ぎ足し):現在接続されているロッド全体の長さでは着底しないため、後端ロッド84と複数のロッド80のうち最後端のロッド80との間にロッド80を1本継ぎ足し、上記S30へ復帰する。すなわち、S30において着底したと判定されるまで、ロッド80を1本ずつ継ぎ足していく。なお、ロッド80の継ぎ足しの詳しい方法については、別のフロー図で詳しく説明する。
【0041】
S50(削孔開始):削孔を開始する。すなわち、送水ポンプ50から削孔水を供給しながら、ドリルヘッド12及び給進装置24により、最後端のロッド80へ回転力及び給進力を付与して削孔する。このとき、制御部56により、現在接続されている複数のロッド80の重量を加味して、ビットへの荷重が一定になるように、給進装置24を制御する。削孔時のその他の詳しい方法については、別のフロー図で詳しく説明する。
S60(監視・記録):例えば、
図8に示したような画面を確認しながら、監視者などにより削孔状況やボーリングマシン10の動作を監視すると共に、制御部56によっても削孔状況やボーリングマシン10の動作を監視する。更に、施工記録装置68により、削孔時の様々なパラメータを記録する。これらの監視や記録は、地盤の削孔中は常に行われるものとする。なお、異なる施工箇所で使用されている複数のボーリングマシン10を、集中して管理するようなシステムを構築してもよい。
【0042】
S70(削孔状態判定):制御部56により、削孔状態が正常であるか否かを判定する。ここでは、複数のセンサ52の計測結果などから、ジャミングが発生する前兆はないか、ロッド80の振動はないかなどを判定する。その結果、削孔状態が正常であると判定した場合(YES)はS120へ移行し、削孔状態が正常でないと判定した場合(NO)はS80へ移行する。
S80(対応処理):制御部56により、削孔状態が正常でないと判定された要因を取り除くための対応処理を行う。
S90(掘進条件変更判定):上記S80での対応処理の一環などとして、現在使用している掘進条件に変更が必要か否かを判定する。その結果、変更が必要と判定した場合(YES)はS100へ移行し、変更が必要ではないと判定した場合(NO)はS110へ移行する。
【0043】
S100(掘進条件変更処理):現在使用している掘進条件を変更する。具体的には、ドリルヘッド12により付与している回転数や回転トルク、ビットへの荷重の設定値、送水ポンプ50からの削孔水の送水量や送水圧力、掘進速度や掘進力の設定値、マシン10やロッド80の振動の許容値といったパラメータを調整する。
S110(再開判定):制御部56により、上記S70で削孔状態が正常でないと判定された要因が取り除かれ、削孔作業の再開が可能か否かを判定する。その結果、再開が可能と判定した場合(YES)はS120へ移行し、再開が不可能と判定した場合(NO)はS180へ移行する。
【0044】
S120(パラメータ異常判定): 制御部56により、監視しているパラメータに異常がないか否かを判定する。そのようなパラメータの異常として、例えば、掘進率の極度の低下、回転不能などの回転数の極度の低下、トルク限度の超過、電動機の過負荷、油圧のオイル温度の超過、削孔水の送水圧力の超過、削孔水の送水量の極度の低下などが挙げられる。それらのパラメータは、複数のセンサ52による計測などによって把握される。そして、パラメータに異常があると判定した場合(YES)はS180へ移行し、パラメータに異常がないと判定した場合(NO)はS130へ移行する。
S130(掘進率低下判定):制御部56により、掘進率が極度にではないが低下しているか否かを判定する。その結果、掘進率が低下していると判定した場合(YES)はS140へ移行し、掘進率が定常であると判定した場合(NO)はS150へ移行する。
【0045】
S140(掘進条件変更処理):上記S100と同内容であるため、詳しい説明を省略する。
S150(地質変化判定):制御部56により、掘削中の地盤の地質が変化したか否かを判定する。地質の変化は、例えば掘進速度などに基づいて判定すればよい。その結果、地質が変化したと判定した場合(YES)はS160へ移行し、地質が変化していないと判定した場合(NO)はS170へ移行する。
S160(掘進条件変更処理):上記S100と同内容であるため、詳しい説明を省略する。
【0046】
S170(ビット摩耗判定):制御部56により、先端ロッドに取り付けられたビットが許容値以上に摩耗しているか否かを判定する。ビットの摩耗は、例えば掘進速度などに基づいて判定すればよい。その結果、ビットが摩耗したと判定した場合(YES)はS180へ移行し、ビットが摩耗していないと判定した場合(NO)はS200へ移行する。
S180(削孔停止):制御部56により、各部位の削孔に関する全ての動作を停止させて、地盤の削孔を停止する。
S190(異常内容表示):制御部56により、削孔が停止になった要因(削孔状態異常、異常となったパラメータ、ビット摩耗など)を、例えば
図8のメッセージ表示部Wなどに表示する。そして、このルートの場合は、異常停止の状態でこのまま削孔が終了となる。
【0047】
S200(削孔深度判定):制御部56により、設計深度まで削孔したか否かを判定する。その結果、設計深度まで削孔したと判定した場合(YES)はS230へ移行し、未だ設計深度まで削孔していないと判定した場合(NO)はS210へ移行する。
S210(ストローク判定):制御部56により、複数のセンサ52の計測結果などに基づいて、現在接続されているロッド80のストローク分の削孔が完了したか否かを判定する。そして、完了したと判定した場合(YES)はS220へ移行し、完了していないと判定した場合(NO)は上記S60へ復帰する。すなわち、上記S200で設計深度に到達したと判定されるまで、或いは本ステップで現在接続されているロッド80のストローク分の削孔が完了したと判定されるまで、上記S60以降の処理を繰り返し行う。
【0048】
S220(ロッド継ぎ足し):現在接続されているロッド全体の長さでは設計深度に到達しないため、後端ロッド84と複数のロッド80のうち最後端のロッド80との間にロッド80を1本継ぎ足し、上記S20へ復帰する。すなわち、上記S200で設計深度に到達したと判定されるまで、ロッド80を1本ずつ継ぎ足していく。なお、ロッド80の継ぎ足しの詳しい方法については、別のフロー図で詳しく説明する。
S230(削孔停止):制御部56により、各部位の削孔に関する全ての動作を停止させて、地盤の削孔を停止する。
S240(完了表示):制御部56により、設計深度までの削孔が完了したことを、例えば
図8のメッセージ表示部Wなどに表示し、削孔が終了となる。
【0049】
続いて、
図11を参照して、ロッド80の1本分の削孔を行う際の削孔動作について説明する。
S300(削孔開始ボタン押下):オペレータなどにより、
図8に示したような削孔開始ボタンB1を押下する。なお、設計深度までの自動削孔が設定されている場合は、本ステップでの削孔開始ボタンB1の押下を経ずに、後述するロッド80の継ぎ足し動作(
図12及び
図13)に続いて次のS310へ移行してもよい。
S310(送水ポンプ運転):制御部56の制御により送水ポンプ50の運転を開始し、ウォータースイベル88、後端ロッド84、複数のロッド80、及び先端ロッドを介して、ビットまで削孔水を供給する。
【0050】
S320(送水量判定):制御部56により、送水ポンプ50からの削孔水の送水量が、予め設定された設定値以上であるか否かを判定する。削孔水の送水量は、センサ52などによって計測される。そして、送水量が設定値以上であると判定した場合(YES)はS330へ移行し、送水量が設定値に満たないと判定した場合(NO)は、送水量が設定値に達するまで本ステップで待機する。
S330(正転・前進):制御部56の制御により、ドリルヘッド12によって最後端のロッド80を把持して正転させると共に、給進装置24によってドリルヘッド12を削孔方向へ前進させて、複数のロッド80及び先端ロッドを正転及び前進させる。この際の回転圧力や給圧力は、手動で設定されてもよい。このようにして、地盤の削孔を開始する。
【0051】
S340(上下反復ボタン押下判定):制御部56により、上下反復ボタン(図示省略)が押下されているか否かを判定する。その結果、押下されていると判定した場合(YES)は、上下反復動作を行うためにS350へ移行し、押下されていないと判定した場合(NO)はS370へ移行する。なお、上下反復ボタンは、
図8に示したような画面内に表示されてもよい。
S350(給進後退):制御部56の制御により、最後端のロッド80を把持しているドリルヘッド12を、給進装置24によって削孔方向と反対側へ後退させる。
【0052】
S360(設定量後退で再前進):制御部56により、ドリルヘッド12及びロッド80が予め設定された設定量まで後退したと判定したら、制御部56の制御により、最後端のロッド80を把持しているドリルヘッド12を、給進装置24によって削孔方向へと再度前進させる。ドリルヘッド12やロッド80の位置は、センサ52による計測などから把握される。なお、上記S350や本ステップの間も、ドリルヘッド12によるロッド80の正転は続けるものとする。
S370(送水圧判定):制御部56により、ビットの詰まりなどの判定のために、送水ポンプ50からの削孔水の送水圧が、予め設定された設定値を超えているか否かを判定する。削孔水の送水圧は、センサ52などによって計測される。そして、送水圧が設定値を超えていると判定した場合(YES)は、ビットの詰まりを回避するためにS380へ移行し、送水圧が設定値を超えていないと判定した場合(NO)はS400へ移行する。
【0053】
S380(前進停止):制御部56の制御により、給進装置24によるドリルヘッド12及びロッド80の前進を停止する。
S390(送水圧判定):制御部56により、送水ポンプ50からの削孔水の送水圧が、予め設定された設定値以下になったか否かを判定する。そして、送水圧が設定値以下になったと判定した場合(YES)はS400へ移行し、送水圧が未だ設定値以下になっていないと判定した場合(NO)は上記S350へ復帰する。
S400(ストロークエンド判定):制御部56により、給進装置24が前進側のストロークエンドに達し、且つ、上記S330での削孔開始からロッド80の1本分の長さの削孔まで達していないか否かを判定する。給進装置24の位置や削孔深度は、複数のセンサ52により計測や算出から把握すればよい。そして、上述の条件を満たしていると判定した場合(YES)は、ロッド80の掴み替えを行うためにS410へ移行し、上述の条件を満たしていないと判定した場合(NO)はS470へ移行する。
【0054】
S410(前進停止・回転停止):制御部56の制御により、ドリルヘッド12によるロッド80の回転と、給進装置24によるドリルヘッド12の移動とを停止する。
S420(ホルダ閉):制御部56により、ロッドハンドリング装置30のロッド固定部42を制御して、ロッド固定部42を構成するクランプホルダを閉じ、ロッド固定部42に現在挿通されている位置でロッド80を把持して固定する。
S430(チャック開):制御部56の制御により、ドリルヘッド12のチャックピース19を開き、ドリルヘッド12による最後端のロッド80の把持を解除する。これにより、全てのロッドが、ロッド固定部42によって支えられた状態になる。
【0055】
S440(早送り後退):制御部56の制御により、給進装置24によってドリルヘッド12を早送り後退させ、給進装置24の後退側のストロークエンドまで移動させた後に停止させる。
S450(チャック閉):制御部56の制御により、ドリルヘッド12のチャックピース19を閉じ、ドリルヘッド12によって最後端のロッド80を把持する。
S460(ホルダ開):制御部56の制御により、ロッド固定部42を構成するクランプホルダを開き、ロッド固定部42によるロッド80の把持を解除する。これにより、複数のロッド80及び先端ロッドは、ドリルヘッド12及び給進装置24によって再び回転及び給進可能になる。その後、上記S330へ復帰する。
【0056】
S470(削孔深度判定):制御部56により、上記S330での削孔開始からロッド80の1本分の長さの削孔まで達したか否かを判定する。その結果、達したと判定した場合(YES)はS480へ移行し、達していないと判定した場合(NO)は、上記S400での判定結果と併せて、給進装置24が前進側のストロークエンドに達していないと判断し、上記S330へ復帰する。
S480(前進停止・回転停止):制御部56の制御により、ドリルヘッド12によるロッド80の回転と、給進装置24によるドリルヘッド12の移動とを停止する。
S490(送水ポンプ停止):制御部56の制御により、送水ポンプ50からの削孔水の供給を停止する。ここまでの手順により、ロッド80の1本分の削孔が終了となる。
【0057】
次に、
図12及び
図13を参照して、ロッド80を1本継ぎ足す動作について説明する。なお、
図12のフロー図と
図13のフロー図とは、Eのポイントで接続されている。
S500(ロッド継ぎ足しボタン押下):オペレータなどにより、
図8に示したようなロッド継ぎ足しボタンB3を押下する。本ステップからは、後端ロッド84の接続を解除する下記のS510~S550と、継ぎ足す対象ロッド80Tを補給する下記のS560~S600とを、並行して行うものとする。なお、設計深度までの自動削孔が設定されている場合は、本ステップでのロッド継ぎ足しボタンB3の押下を経ずに、
図11に示した1本分のロッド80の削孔動作に続いて次のS510やS560へ移行してもよい。
【0058】
S510(ホルダ閉):ロッド制御部48によりロッド固定部42を制御して、ロッド固定部42を構成するクランプホルダを閉じ、現在接続されている複数のロッド80のうち最後端のロッド80を把持して固定する。
S520(後退開始):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12(ロッド駆動部32)によって後端ロッド84を把持させると共に、給進装置24(ロッド駆動部32)によってドリルヘッド12を後退させる。この際の後退速度は、手動で設定されてもよい。このようにして、ロッド固定部42により固定されている最後端のロッド80からの、差し込みで接続されている後端ロッド84の切り離しを開始する。
【0059】
S530(切り離し完了まで後退):ロッド制御部48により、最後端のロッド80から後端ロッド84が切り離されたと判定するまで、ロッド制御部48の制御により、給進装置24によってドリルヘッド12を後退させる。切り離しは、複数のセンサ44によるドリルヘッド12の位置の計測などから判定すればよい。
S540(早送り後退開始):切り離しが完了したら、ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12によって後端ロッド84を把持した状態で、給進装置24によってドリルヘッド12を更に早送り後退させる。
S550(後ストロークエンドで停止):ロッド制御部48の制御により、給進装置24の後退側のストロークエンドまでドリルヘッド12を移動させた後に停止させる。これにより、ロッド固定部42によって固定されている最後端のロッド80と、ドリルヘッド12によって把持されている後端ロッド84との間に、継ぎ足す対象ロッド80Tを移動させるためのスペースが確保される。そして、S600の完了を待ってS610へ移行する。
【0060】
S560(ハンドリングアーム寝位置確認):オペレータなどにより、ロッドハンドリング装置30のロッド移動部34が退避位置(
図5の右側のロッド移動部34のような位置)にあり、対象ロッド80Tの補給に問題がない状態かなどを確認する。ロッド移動部34の位置調整が必要な場合は、回転機構37や起倒機構39によって位置調整する。
S570(ロッドクランプ開):オペレータなどの操作により、ロッド移動部34のロッドチャック35を開いた状態にする。
S580(ロッド補給):オペレータなどにより、開いた状態のロッドチャック35に対して、継ぎ足す対象ロッド80Tを補給する。
【0061】
S590(確認ボタン押下判定):ロッド制御部48により、例えば
図8に示したような確認ボタンB5が押下されたか否かを判定する。そして、オペレータなどにより確認ボタンB5が押下されたと判定した場合(YES)はS600へ移行し、確認ボタンB5が未だ押下されていないと判定した場合(NO)は、確認ボタンB5が押下されるまで本ステップで待機する。
S600(ロッドクランプ閉):ロッド制御部48の制御により、ロッド移動部34のロッドチャック35を閉じ、対象ロッド80Tがロッドチャック35によって把持された状態にする。そして、S550の完了を待ってS610へ移行する。
S610(確認ボタン押下判定):ロッド制御部48により、確認ボタンB5が押下されたか否かを判定する。そして、オペレータなどにより確認ボタンB5が押下されたと判定した場合(YES)はS620へ移行し、確認ボタンB5が未だ押下されていないと判定した場合(NO)は、確認ボタンB5が押下されるまで本ステップで待機する。
【0062】
S620(ハンドリングアーム起動作):ロッド制御部48の制御により、起倒機構39によってロッド移動部34を退避位置から起き上がらせる。
S630(ドリリングセンタで停止):ロッド制御部48により、ロッド移動部34により把持されている対象ロッド80Tがロッド軸S上になる位置(ドリリングセンタ)まで移動されたと判定したら、ロッド制御部48の制御により、ロッド移動部34の起動作を停止する。この停止位置は、ロッド移動部34の接続位置(
図2及び
図3のような位置)である。ロッド移動部34や対象ロッド80Tの位置は、複数のセンサ44の計測などによって把握すればよい。
【0063】
S640(前進):ロッド制御部48の制御により、後端ロッド84を把持しているドリルヘッド12を、給進装置24によって前進させる。この際の前進速度は、手動で設定されてもよい。このようにして、ロッド移動部34により把持されている対象ロッド80Tに対する、差し込みによる後端ロッド84の接続を開始する。
S650(上側接続判定):ロッド制御部48により、後端ロッド84と対象ロッド80Tとの接続が完了したか否かを判定する。接続の完了は、複数のセンサ44によるドリルヘッド12の位置の計測などから判定すればよい。そして、接続が完了したと判定した場合(YES)はS700へ移行し、接続が未だ完了していないと判定した場合(NO)はS660へ移行する。
【0064】
S660(上側接続状態判定):ロッド制御部48により、後端ロッド84と対象ロッド80Tとの間の接続に異常が発生していないか否かを判定する。そのような異常には、例えば、差し込み位置のズレによるタイムアウトなどが挙げられる。そして、接続に異常が発生していると判定した場合(YES)はS670へ移行し、接続に異常が発生していないと判定した場合(NO)は、上記S640へ復帰して接続作業を続ける。
S670(一時停止・警報表示):ロッド制御部48の制御により、給進装置24の前進などの接続作業を一時停止し、一時停止の要因を示す警報表示を、例えば
図8のメッセージ表示部Wなどに表示する。
S680(対応処理):オペレータなどにより、一時停止の要因を除去するための対応処理を行う。
【0065】
S690(一時停止解除ボタン押下判定):ロッド制御部48により、例えば
図8に示したような一時停止・解除ボタンB6が、オペレータなどによって押下されたか否かを判定する。その結果、押下されたと判定した場合(YES)は、上記S640へ復帰して接続作業を再開し、押下されていないと判定した場合(NO)は、一時停止・解除ボタンB6が押下されるまで本ステップで待機する。
S700(チャック掴み替え):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12による後端ロッド84の把持を解除し、給進装置24によってドリルヘッド12を前進させて、後端ロッド84に接続された対象ロッド80Tの後端近傍をドリルヘッド12によって把持させる。
S710(ロッドクランプ開):ロッド制御部48の制御により、ロッド移動部34のロッドチャック35を開き、ロッド移動部34による対象ロッド80Tの把持を解除する。
【0066】
S720(確認ボタン押下判定):ロッド制御部48により、例えば
図8に示したような確認ボタンB5が押下されたか否かを判定する。そして、オペレータなどにより確認ボタンB5が押下されたと判定した場合(YES)はS730へ移行し、確認ボタンB5が未だ押下されていないと判定した場合(NO)は、確認ボタンB5が押下されるまで本ステップで待機する。
S730(ハンドリングアーム寝動作):ロッド制御部48の制御により、起倒機構39によってロッド移動部34を接続位置から退避位置へ移動させる。
S740(ハンドリングアーム寝位置確認):オペレータなどにより、ロッド移動部34が退避位置にあり、次の対象ロッド80Tの補給に問題がない状態かなどを確認する。ロッド移動部34の位置調整が必要な場合は、回転機構37や起倒機構39によって位置調整する。
【0067】
S750(正転・前進):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12によって対象ロッド80Tを正転させると共に、給進装置24によってドリルヘッド12を前進させる。この際の回転トルクや前進速度は、手動で設定されてもよい。このようにして、ロッド固定部42により固定されている最後端のロッド80に対する、対象ロッド80Tのねじ接続作業を開始する。
S760(下側接続判定):ロッド制御部48により、最後端のロッド80と対象ロッド80Tとのねじ接続が完了したか否かを判定する。接続の完了は、複数のセンサ44によるドリルヘッド12の位置の計測などから判定すればよい。そして、接続が完了したと判定した場合(YES)はS810へ移行し、接続が未だ完了していないと判定した場合(NO)はS770へ移行する。なお、ここでの接続が完了すると、接続された対象ロッド80Tが、複数のロッド80のうち最後端のロッド80になる。
【0068】
S770(下側接続状態判定):ロッド制御部48により、最後端のロッド80と対象ロッド80Tとの間の接続に異常が発生していないか否かを判定する。そのような異常には、例えば、ねじ込み位置のズレによるタイムアウトや、ねじ噛みによるトルク上昇及び給進速度低下などが挙げられる。そして、接続に異常が発生していると判定した場合(YES)はS780へ移行し、接続に異常が発生していないと判定した場合(NO)は、上記S750へ復帰して接続作業を続ける。
S780(一時停止・警報表示):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12の回転や給進装置24の前進などの接続作業を一時停止し、一時停止の要因を示す警報表示を、例えば
図8のメッセージ表示部Wなどに表示する。
S790(対応処理):オペレータなどにより、一時停止の要因を除去するための対応処理を行う。
【0069】
S800(一時停止解除ボタン押下判定):ロッド制御部48により、例えば
図8に示したような一時停止・解除ボタンB6が、オペレータなどによって押下されたか否かを判定する。その結果、押下されたと判定した場合(YES)は、上記S750へ復帰して接続作業を再開し、押下されていないと判定した場合(NO)は、一時停止・解除ボタンB6が押下されるまで本ステップで待機する。
S810(ホルダ開):ロッド制御部48の制御により、ロッド固定部42を開いてロッド固定部42によるロッド80の把持を解除する。これにより、複数のロッド80及び先端ロッドは、ドリルヘッド12及び給進装置24によって回転及び給進可能になる。ここまでの手順により、1本のロッド80の継ぎ足しが終了となる。
【0070】
続いて、
図14を参照して、ロッド80の1本分の引き抜きを行う際の動作について説明する。
S900(引き抜き開始ボタン押下):オペレータなどにより、
図8に示したような引き抜き開始ボタンB2を押下する。なお、深度0までの自動引き抜きが設定されている場合は、本ステップでの引き抜き開始ボタンB2の押下を経ずに、後述するロッド80の切り離し動作(
図15及び
図16)に続いて次のS910へ移行してもよい。
S910(ホルダ状態判定):制御部56により、ロッドハンドリング装置30のロッド固定部42が閉じているか否かを判定する。その結果、閉じていると判定した場合(YES)はS920へ移行し、閉じていないと判定した場合(NO)はS930へ移行する。
S920(ホルダ開):制御部56の制御により、ロッド固定部42を開いてロッド固定部42によるロッド80の把持を解除する。
【0071】
S930(正転・後退):制御部56の制御により、ドリルヘッド12によって最後端のロッド80を把持して正転させると共に、給進装置24によってドリルヘッド12を削孔方向と反対方向へ後退させて、複数のロッド80及び先端ロッドを正転及び後退させる。この際の回転圧力や給圧力は、手動で設定されてもよい。このようにして、ロッド80の引き抜きを開始する。
S940(ストロークエンド判定):制御部56により、給進装置24が後退側のストロークエンドに達し、且つ、上記S930での引き抜き開始からロッド80の1本分の長さの引き抜きまで達していないか否かを判定する。給進装置24の位置や引き抜き長さは、複数のセンサ52により計測や算出から把握すればよい。そして、上述の条件を満たしていると判定した場合(YES)は、ロッド80の掴み替えを行うためにS950へ移行し、上述の条件を満たしていないと判定した場合(NO)はS1010へ移行する。
【0072】
S950(後退停止・回転停止):制御部56の制御により、ドリルヘッド12によるロッド80の回転と、給進装置24によるドリルヘッド12の移動とを停止する。
S960(ホルダ閉):制御部56により、ロッドハンドリング装置30のロッド固定部42を制御して、ロッド固定部42を構成するクランプホルダを閉じ、ロッド固定部42に現在挿通されている位置でロッド80を把持して固定する。
S970(チャック開):制御部56の制御により、ドリルヘッド12のチャックピース19を開き、ドリルヘッド12による最後端のロッド80の把持を解除する。これにより、全てのロッドが、ロッド固定部42によって支えられた状態になる。
【0073】
S980(早送り前進):制御部56の制御により、給進装置24によってドリルヘッド12を早送り前進させ、給進装置24の前進側のストロークエンドまで移動させた後に停止させる。
S990(チャック閉):制御部56の制御により、現在位置でドリルヘッド12のチャックピース19を閉じ、ドリルヘッド12によってロッド80を把持する。
S1000(ホルダ開):制御部56の制御により、ロッド固定部42を構成するクランプホルダを開き、ロッド固定部42によるロッド80の把持を解除する。これにより、複数のロッド80及び先端ロッドは、ドリルヘッド12及び給進装置24によって再び回転及び移動可能になる。その後、上記S930へ復帰する。
【0074】
S1010(引き抜き深度判定):制御部56により、上記S930での引き抜き開始からロッド80の1本分の長さまで又は深度0まで引き抜いたか否かを判定する。その結果、引き抜いたと判定した場合(YES)はS1020へ移行し、引き抜いていないと判定した場合(NO)は、上記S940での判定結果と併せて、給進装置24が後退側のストロークエンドに達していないと判断し、上記S930へ復帰する。
S1020(後退停止・回転停止):制御部56の制御により、ドリルヘッド12によるロッド80の回転と、給進装置24によるドリルヘッド12の移動とを停止する。ここまでの手順により、ロッド80の1本分の引き抜きが終了となる。
【0075】
次に、
図15及び
図16を参照して、ロッド80を1本切り離す動作について説明する。なお、
図15のフロー図と
図16のフロー図とは、Fのポイントで接続されている。
S1100(ロッド切り離しボタン押下):オペレータなどにより、
図8に示したようなロッド切り離しボタンB4を押下する。本ステップからは、対象ロッド80Tをその接続先のロッド80から切り離す下記のS1110~S1210と、対象ロッド80Tを回収する準備作業の下記のS1220~S1230とを、並行して行うものとする。なお、深度0までの自動引き抜きが設定されている場合は、本ステップでのロッド切り離しボタンB4の押下を経ずに、
図14に示した1本分のロッド80の引き抜き動作に続いて次のS1110やS1220へ移行してもよい。
【0076】
S1110(ホルダ閉):ロッド制御部48によりロッド固定部42を制御して、ロッド固定部42を構成するクランプホルダを閉じ、現在接続されている複数のロッド80のうち、切り離す対象ロッド80Tが接続されているロッド80を把持して固定する。
S1120(チャック開):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12のチャックピース19を開き、ドリルヘッド12を対象ロッド80Tに対して移動可能にする。これにより、全てのロッドが、ロッド固定部42によって支えられた状態になる。
S1130(ドリルヘッド位置調整):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12を前進又は後退させ、切り離す対象ロッド80Tを掴む適切な位置へ移動させる。その際に移動させる位置は、予め設定されるものとする。
【0077】
S1140(チャック閉):ロッド制御部48の制御により、上記S1130で調整した位置でドリルヘッド12のチャックピース19を閉じ、ドリルヘッド12によって対象ロッド80Tを把持する。
S1150(逆転・後退):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12によって対象ロッド80Tを逆転させると共に、給進装置24によってドリルヘッド12を後退させる。このようにして、ロッド固定部42により固定されているロッド80と、対象ロッド80Tとの間のねじ接続を緩める。
【0078】
S1160(正転・前進):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12によって対象ロッド80Tを低トルクで僅かに正転させると共に、給進装置24によってドリルヘッド12を削孔方向へ僅かに前進させる。このようにして、ロッド固定部42により固定されているロッド80に対して、対象ロッド80Tを軽くねじ締め接続する。
S1170(チャック開):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12のチャックピース19を開き、ドリルヘッド12を対象ロッド80Tに対して再び移動可能にする。
S1180(早送り後退):ロッド制御部48の制御により、給進装置24によってドリルヘッド12を早送り後退させ、対象ロッド80Tの後端近傍をドリルヘッド12によって把持可能な位置まで移動させた後に停止させる。
【0079】
S1190(チャック閉):ロッド制御部48の制御により、上記S1180で移動させた位置でドリルヘッド12のチャックピース19を閉じ、ドリルヘッド12によって対象ロッド80Tを把持する。
S1200(逆転・後退):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12によって対象ロッド80Tを逆転させると共に、給進装置24によってドリルヘッド12を後退させる。このようにして、ロッド固定部42により固定されているロッド80から、対象ロッド80Tのねじ接続を解除して切り離す。
S1210(下側接続切り離し完了で停止):上記S1200での切り離しが完了したら、ドリルヘッド12による回転及び給進装置24による後退を停止する。そして、S1230の完了を待ってS1240へ移行する。
【0080】
S1220(ハンドリングアーム寝位置確認):オペレータなどにより、ロッドハンドリング装置30のロッド移動部34が退避位置にあり、ロッド80を把持していないことなどを確認する。
S1230(ロッドクランプ開):オペレータなどの操作により、ロッド移動部34のロッドチャック35を開いた状態にする。
S1240(確認ボタン押下判定):ロッド制御部48により、
図8に示すような確認ボタンB5が押下されたか否かを判定する。そして、オペレータなどにより確認ボタンB5が押下されたと判定した場合(YES)はS1250へ移行し、確認ボタンB5が未だ押下されていないと判定した場合(NO)は、確認ボタンB5が押下されるまで本ステップで待機する。
【0081】
S1250(ハンドリングアーム起動作):ロッド制御部48の制御により、起倒機構39によってロッド移動部34を退避位置から起き上がらせる。そして、ロッド移動部34のロッドチャック35に対象ロッド80Tが挿通される位置(ドリリングセンタ)まで移動されたと判定したら、ロッド移動部34の起動作を停止する。この停止位置は、ロッド移動部34の接続位置である。
S1260(ロッドクランプ閉):ロッド制御部48の制御により、ロッド移動部34のロッドチャック35を閉じ、ロッド移動部34によって対象ロッド80Tを把持させる。
【0082】
S1270(チャック掴み替え・後退):ロッド制御部48の制御により、ドリルヘッド12による対象ロッド80Tの把持を解除し、給進装置24によってドリルヘッド12を後退させて、後端ロッド84をドリルヘッド12によって把持させる。そして、この状態でドリルヘッド12を後退させ、ロッド移動部34によって把持された対象ロッド80Tからの、後端ロッド84の切り離しを開始する。
S1280(上側接続切り離し完了で停止):上記S1270で開始した切り離しが完了したら、給進装置24による後退を停止する。
S1290(確認ボタン押下判定):ロッド制御部48により、確認ボタンB5が押下されたか否かを判定する。そして、オペレータなどにより確認ボタンB5が押下されたと判定した場合(YES)はS1300へ移行し、確認ボタンB5が未だ押下されていないと判定した場合(NO)は、確認ボタンB5が押下されるまで本ステップで待機する。
【0083】
S1300(ハンドリングアーム寝動作):ロッド制御部48の制御により、起倒機構39によってロッド移動部34を接続位置から退避位置へ移動させる。
S1310(確認ボタン押下判定):ロッド制御部48により、確認ボタンB5が押下されたか否かを判定する。そして、オペレータなどにより確認ボタンB5が押下されたと判定した場合(YES)はS1320へ移行し、確認ボタンB5が未だ押下されていないと判定した場合(NO)は、確認ボタンB5が押下されるまで本ステップで待機する。
S1320(ロッドクランプ開):ロッド制御部48の制御により、ロッド移動部34のロッドチャック35を開き、ロッド移動部34による対象ロッド80Tの把持を解除する。
【0084】
S1330(ロッド回収):オペレータなどにより、切り離された対象ロッド80Tをロッド移動部34から回収する。
S1340(次ロッド判定):ロッド制御部48により、現在接続されているロッド80の数などに基づいて、次に引き抜かれるべきロッド80があるか否かを判定する。その結果、引き抜かれるべきロッド80があると判定した場合(YES)はS1350へ移行し、引き抜かれるべきロッド80がないと判定した場合(NO)は、そのままロッド80の切り離し作業が終了となる。
S1350(早送り前進):ロッド制御部48の制御により、給進装置24によってドリルヘッド12を早送り前進させて、後端ロッド84を早送り前進させる。
【0085】
S1360(次ロッド接続位置到達):ロッド制御部48により、後端ロッド84の先端が次に引き抜くロッド80の近傍に達したと判定するまで、後端ロッド84を早送り前進させる。後端ロッド84の位置は、複数のセンサ44による計測などから把握すればよい。
S1370(前進):ロッド制御部48の制御により、給進装置24によってドリルヘッド12を前進させて、ドリルヘッド12によって把持されている後端ロッド84の先端を、ロッド固定部42によって固定されている次に引き抜くロッド80の後端へ差し込む。これにより、後端ロッド84が次に引き抜くロッド80へ接続される。そして、ここまでの手順により、1本のロッド80の切り離しが終了となる。
【0086】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、
図1~
図3に示すように、ドリルヘッド12、給進装置24、ロッドハンドリング装置30、送水ポンプ50、複数のセンサ52、及び制御部56を含んでいる。ドリルヘッド12は、複数のロッド80のうち最後端のロッド80(後端ロッド84へ接続されたロッド80)を把持して回転力を付与することで、複数のロッド80及びその先端側に接続された先端ロッドを軸回転させる。これによって、先端ロッドに取り付けられたビットも回転し、削孔に必要な回転力が加えられる。また、給進装置24は、複数のロッド80のうち最後端のロッド80を把持するドリルヘッド12を、削孔方向と平行な方向へ移動(前進や後退)させることで、複数のロッド80及びその先端側に接続された先端ロッドへ給進力を付与する。これによって、ドリルヘッド12により回転された状態で、複数のロッド80、先端ロッド、及びビットが、給進装置24からの給進力を受けて、地盤を削孔しながら進んでいくことになる。
【0087】
ロッドハンドリング装置30は、先端ロッドと後端ロッド84との間に接続される複数のロッド80のうち、最後端のロッド80の継ぎ足しと、最後端のロッド80の切り離しとを行うものであって、これによって複数のロッド80が後端側から1本ずつ継ぎ足し又は切り離しされる。送水ポンプ50は、後端ロッド84に取り付けられたウォータースイベル88へ削孔水を供給するためのものであり、送水ポンプ50から後端ロッド84へ供給された削孔水は、筒状の後端ロッド84の内部、筒状の複数のロッド80の各々の内部、及び筒状の先端ロッドの内部を通って、ビットへ供給され、更にビットから削孔箇所へ流出する。複数のセンサ52は、上述した各部位の動作状況を含む、ボーリングマシン10全体の挙動を把握するためのものであり、ボーリングマシン10の随所に設置されている。
【0088】
そして、制御部56は、そのような複数のセンサ52による検知結果を加味しながら、ボーリングマシン10全体の動作を制御するものである。すなわち、ドリルヘッド12による回転力の付与、給進装置24による給進力の付与、ロッドハンドリング装置30によるロッド80の継ぎ足し及び切り離し、及び送水ポンプ50による削孔水の供給といった、ボーリングマシン10全体の動作を、オペレータなどが直接的に介入する必要なく、制御部56によって制御することができる。これにより、オペレータの技量や経験の如何に関わらず、ボーリングマシン10によって、例えば
図9~
図16に示すような手順に従って、地盤を精度よく削孔することが可能となる。また、常にボーリングマシン10の動作状況などに気を配るといった、オペレータの精神的な負担を軽減することができる上に、ロッド80の取り扱いなどの重労働も軽減することができる。
【0089】
また、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、マシン10全体の挙動を把握するための複数のセンサ52として、下記の中の少なくとも1つを計測するセンサを含むものである。すなわち、ドリルヘッド12によるロッド80の把持力、ドリルヘッド12により付与される回転圧力、ドリルヘッド12により付与される回転数、給進装置24により付与される給進速度、給進装置24により付与される給進圧力、給進装置24により移動されるドリルヘッド12の位置、ボーリングマシン10の振動、送水ポンプ50からの削孔水の送水量、及び送水ポンプ50からの削孔水の送水圧力である。これらの計測結果から、ドリルヘッド12、給進装置24、及び送水ポンプ50などの挙動を把握することができるため、そのような挙動に基づいてそれらの動作を制御部56により制御することができ、結果として地盤の削孔を精度よく行うことが可能となる。
【0090】
また、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、ベース部58、方向切替部60、及び複数のセンサ52の一部としての姿勢センサを更に含むものであって、ベース部58は、ドリルヘッド12と給進装置24とロッドハンドリング装置30とを含む、ボーリングマシン10の主要部54を支えるものである。方向切替部60は、例えば
図5に示すように、主要部54の姿勢をベース部58に対して一体的に変化させ、ドリルヘッド12などにより把持されるロッド80の向きを変えることで、削孔方向を切り替えるためのものである。そして、姿勢センサは、そのように変化する主要部54の姿勢を計測するものである。このような構成により、制御部56による動作制御によって削孔の精度を高めながらも、様々な方向への削孔に対応することが可能となる。
【0091】
更に、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、
図2、
図3、及び
図5に示すように、方向切替部60が、ベース部58に対して主要部54を回転させる回転部61と、ベース部58に対して主要部54を回転部61と共に起倒させる起倒部63とを含むものである。すなわち、回転部61は、ベース部58が水平に設置された状態において、水平方向と平行な回転軸で主要部54を回転させる(例えば
図5のように)ことで、その回転軸と直交する全方向へ削孔方向を変化させることができる。また、起倒部63は、主要部54及び回転部61を、回転部61の回転軸と直交し且つ水平方向と平行な旋回軸で旋回させることで、回転部61による回転ではカバーされない範囲に削孔方向を変化させることができる。これにより、主要部54を多様な掘削姿勢で支えながら、より多くの方向への削孔に対応することができ、また、トンネルなどの狭小場所での削孔にも対応することが可能となる。更に、
図7に示すような上下反転と、方向切替部60による姿勢制御とを組み合わせることで、バランスよく全方位の削孔を行うことができる。
【0092】
また、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、
図4に示すように、ドリルヘッド12が、回転力を発生するモータ14と、スピンドルギヤ15、高速ギヤ17、及び低速ギヤ18の3つのギヤとを含むものである。スピンドルギヤ15は、ドリルヘッド12により把持される最後端のロッド80へ回転力を伝達するものであり、高速ギヤ17はスピンドルギヤ15に係合し、低速ギヤ18は高速ギヤ17に係合するものである。すなわち、スピンドルギヤ15と低速ギヤ18との間に高速ギヤ17が介在している。そして、モータ14からの回転力の入力先は、高速ギヤ17と低速ギヤ18とで切り替え可能になっており、高速ギヤ17へ回転力が入力されると、それが直接スピンドルギヤ15へと伝わり、低速ギヤ18へ回転力が入力されると、それが高速ギヤ17を介してスピンドルギヤ15へと伝わる。このため、3つのギヤのギヤ比の調整などにより、高速ギヤ17から回転力を入力する場合の高速度回転域と、低速ギヤ18から回転力を入力する場合の低速度回転域との、2つの回転速度域での回転を実現することができる。これにより、ドリルヘッド12を分解してギヤの組み換えなどを行う必要なく、従来行っていたそのような作業の時間を短縮することができながらも、様々な速度でロッド80を回転させることが可能となる。更に、モータ14としてオイルモータを使用し、ドリルヘッド12の回転を油圧で制御することで、トルク調整や回転速度の微調整を行うことができる。
【0093】
加えて、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、
図1に示すように、更に施工記録装置68を含むものであり、この施工記録装置68は、削孔の状況に応じて、削孔深度、削孔時間、削孔速度、ドリルヘッド12の回転トルク、ビットへの荷重、削孔水の送水量、及び削孔水の送水圧力のうち、少なくとも1つを記録する。それらの値は、ドリルヘッド12や送水ポンプ50といった各部位から取得されたり、複数のセンサ52から取得されたり、制御部56によって算出されたりするものである。これにより、従来はオペレータが紙媒体に記録していたために、記録忘れや間違いがあり、手間もかかっていた記録作業を、記録忘れや間違いをすることなく、施工記録装置68によって実行することができる。更に、その記録を作業日報などに流用することで、より作業時間を短縮することが可能となる。また、地盤の状況に対応した削孔データを蓄積することで、地盤の状況に対応した指標値を設定することができ、削孔の効率化を図ることができる。加えて、蓄積された削孔データを参考にして、地盤に生じている亀裂などに対応して削孔データが変化する様子を読み取ることで、記録中の削孔データから亀裂などの発生を判断することが可能となる。
【0094】
また、本発明の実施の形態に係るボーリングマシン10は、制御部56が、現在接続されている複数のロッド80の重量を加味して、削孔中にかかるビットへの荷重が一定になるように、給進装置24を制御するものである。すなわち、ロッドハンドリング装置30を制御する制御部56は、現在接続されているロッド80の数量を把握しており、そこから全ロッドの合計重量を算出して、ビットへかかる荷重が一定になるように、給進装置24によりロッド80へ付加される給進力などを調整する。また、ビットへの荷重が一定になるように制御するため、ビットへの荷重の他の要因による変化も同時に加味することができる。これにより、ビットに対して過度な荷重がかかることを防止しながら、安定して削孔を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
10:ボーリングマシン、12:ドリルヘッド、14:モータ、15:スピンドルギヤ、17:高速ギヤ、18:低速ギヤ、24:給進装置、30:ロッドハンドリング装置、50:送水ポンプ、52:複数のセンサ、54:主要部、56:制御部、58:ベース部、60:方向切替部、61:回転部、63:起倒部、68:施工記録装置、80:複数のロッド、84:後端ロッド