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特開2023-64532蛍光体およびそれを用いた太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064532
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】蛍光体およびそれを用いた太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20230501BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20230501BHJP
【FI】
H01L31/04 620
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174866
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】森山 莉穂
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151HA13
5F151JA02
5F151JA04
5F151JA06
5F251HA13
5F251JA02
5F251JA04
5F251JA06
(57)【要約】
【課題】太陽電池モジュールに用いた場合に光電変換素子まで届く可視光量を増加させることができる蛍光体を提供する。
【解決手段】蛍光体は、母材がシリカ粒子であって、シリカ粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下であり、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、0.01~15モルのEuと、0.5~25モルのAlと、0.5~10モルのSrと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材がシリカ粒子であって、
前記シリカ粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下であり、
前記シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、
0.01~15モルのEuと、
0.5~25モルのAlと、
0.5~10モルのSrと、
を含む、
蛍光体。
【請求項2】
前記シリカ粒子の平均粒径は8μm以上20μm以下であり、
前記シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、
1.5~4.0モルの前記Euと、
10~20モルの前記Alと、
0.5~10モルの前記Srと、
を含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
バックシートと、
第一の充填材層と、
電極と前記電極に接続された光電変換素子と、
紫外線吸収剤含有樹脂と請求項1又は2に記載の前記蛍光体とを有する第二の充填材層と、
保護ガラスと、
を備える、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光体およびそれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般に短波長領域において感度特性が低く、太陽光に含まれる紫外線などの短波長領域の光を有効に利用できていない。この短波長領域の光を吸収し、例えば可視光などの長波長領域の蛍光を発する蛍光体を波長変換材料として利用し、光電変換素子の感度特性の高い長波長領域の光量を増加させ、太陽電池モジュールの効率を向上させる取り組みが従来から行われてきた。
【0003】
一方、太陽電池モジュールの光電変換素子は、波長が350nm以下で高エネルギーの紫外領域の光(以下、「紫外線」と呼ぶ、)に長時間照射されることにより劣化する。このため、光電変換素子に届く光からは紫外線ができるだけ除去されていることが望ましく、一般に光電変換素子前面の充填材層には紫外線吸収剤が配合されている。蛍光体のみで十分に紫外線を吸収できれば、紫外線吸収剤を使用する必要はないが、多くの場合、蛍光体のみでは十分に紫外線を吸収できず、そのような場合には、蛍光体と紫外線吸収剤を併用する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、紫外線吸収剤を含む充填材層の上部に、蛍光体を含む透明な樹脂からなる蛍光体シート材を配置する構造にすることにより、まず上部の蛍光体を含む蛍光体シート材層で紫外線を吸収し、蛍光発光させ、吸収しきれなかった紫外線を下部の充填材層で吸収させている。これにより、蛍光体による高効率化と紫外線吸収剤による紫外線吸収を両立させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-182074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体と蛍光体を埋め込む樹脂は、透明性を担保させるために屈折率の近い材料を使用しているが、屈折率は完全に一致しないため、蛍光体を樹脂に埋めこんだ影響で樹脂の透明性が低下し、光電変換素子に届く太陽光の光量が減少する。これにより、太陽電池モジュールの変換効率は低下する。そのため、太陽電池モジュールの変換効率の向上には、蛍光体を樹脂に埋めこんだ影響で樹脂の透明性が低下することによって生じる、光電変換素子に届く太陽光の光量減少を上回る発光を有する蛍光体が必要であるが、特許文献1で用いられる蛍光体の発光は十分でない。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の課題を解決するもので、太陽電池モジュールに用いた場合に光電変換素子まで届く可視光量を増加させることができる蛍光体を提供すし、高効率な太陽電池モジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示に係る蛍光体は、母材がシリカ粒子であって、シリカ粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下であり、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、0.01~15モルのEuと、0.5~25モルのAlと、0.5~10モルのSrと、を含む。
【0009】
また、本開示に係る太陽電池モジュールは、バックシートと、第一の充填材層と、電極と電極に接続された光電変換素子と、紫外線吸収剤含有樹脂と上記蛍光体とを有する第二の充填材層と、保護ガラスと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本開示に係る蛍光体によれば、非常に高い発光を有するため、太陽電池に用いた場合、光電変換素子の感度特性が高い可視光をより多く届けることができる。また、蛍光体の母体がシリカ粒子なので樹脂との屈折率差が小さいため、樹脂の透明性を担保できる。従って、光電変換素子まで透過する可視光量が増加し、高効率な太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る蛍光体に365nmの励起光源を照射時の発光スペクトルを示す図である。
図2】実施の形態1に係る太陽電池モジュール10の断面構造を示す模式断面図である。
図3A】実施の形態1に係る太陽電池モジュール10の製造方法において、蛍光体を紫外線吸収剤含有樹脂に均一に付着させた状態の断面構造を示す模式断面図である。
図3B】実施の形態1に係る太陽電池モジュール10の製造方法において、蛍光体を紫外線吸収剤含有樹脂に埋め込んだ状態の断面構造を示す模式断面図である。
図4】実施例1~13の蛍光体における元素含有量、シリカ粒子の平均粒径、相対出力、評価を示す表1である。
図5】比較例1~7の蛍光体における元素含有量、シリカ粒子の平均粒径、相対出力、評価を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様に係る蛍光体は、母材がシリカ粒子であって、シリカ粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下であり、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、0.01~15モルのEuと、0.5~25モルのAlと、0.5~10モルのSrと、を含む。
【0013】
第2の態様に係る蛍光体は、上記第1の態様において、シリカ粒子の平均粒径は8μm以上20μm以下であり、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、1.5~4.0モルの前記Euと、10~20モルのAlと、0.5~10モルのSrと、を含んでもよい。
【0014】
第3の態様に係る太陽電池モジュールは、バックシートと、第一の充填材層と、電極と電極に接続された光電変換素子と、紫外線吸収剤含有樹脂と上記蛍光体とを有する第二の充填材層と、保護ガラスと、を備える。
【0015】
以下、実施の形態に係る蛍光体および太陽電池モジュールについて添付図面を参照しながら詳述する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る蛍光体に365nmの励起光源を照射時の発光スペクトルを示す図である。蛍光体は、356nmの紫外線領域の光を照射すると、450nm付近にピークをもつ青色発光を示す。
蛍光体は、母材がシリカ粒子であって、シリカ粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下である。また、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で、0.01~15モルのEuと、0.5~25モルのAlと、0.5~10モルのSrと、を含む。
実施の形態1に係る蛍光体によれば、非常に高い発光を有するため、太陽電池に用いた場合、光電変換素子の感度特性が高い可視光をより多く届けることができる。また、蛍光体の母体がシリカ粒子なので樹脂との屈折率差が小さいため、樹脂の透明性を担保できる。従って、光電変換素子まで透過する可視光量が増加し、高効率な太陽電池モジュールを提供することができる。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る太陽電池モジュール10の断面構造を示す模式断面図を示す。図2に関しては太陽電池モジュール構造の一例である。
この太陽電池モジュール10は、バックシート2と、第一の充填材層3と、光電変換素子5と、第二の充填材層6と、保護ガラス7と、が、上記順で積層された構造を有する。第一の充填材層3によって光電変換素子5の背面を保護する。光電変換素子5は電極4と電気的に接続されている。第二の充填材層6は、蛍光体1と紫外線吸収剤含有樹脂8とから構成されており、蛍光体1は、第二の充填材層6の上端に配置された構造を有する。
【0018】
図2の太陽電池モジュール10を例にして、太陽光が太陽電池モジュール10に入射して光電変換素子5に届くまでの過程を説明する。
i)太陽光はまず保護ガラス7を透過し、第二の充填材層6に到達する。
ii)第二の充填材層6の上端に配置された蛍光体1に太陽光があたり、紫外線を可視光に変換し、変換しきれなかった紫外線は第二の充填材層6を構成する紫外線吸収剤含有樹脂8に含まれる紫外線吸収剤によって吸収され、可視光は第二の充填材層6を透過して光電変換素子5に届く。
本実施の形態1に係る蛍光体1では、蛍光体1に太陽光が当たり紫外線を可視光に変換できる量が多いため、光電変換素子5の感度特性が高い可視光をより多く届けることができる。
【0019】
<蛍光体>
蛍光体1は、短波長領域の光を吸収し、長波長領域の蛍光を発する波長変換材料である。蛍光体1は、シリカ粒子を母材とするものであり、発光中心であるEuと、Alと、Srを含む。
【0020】
Euの含有量は、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で0.01~15モルである。なお、Euが多すぎても発光強度は飽和する一方で、Euの濃度が高くなることによる濃度消光によって、発光強度の低下等が生じることがある。より好ましくは1.5~4.0モルである。これにより、発光強度をより十分に発揮することができる。
【0021】
Alの含有量は、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で0.5~25モルである。Alが多すぎても発光強度は飽和する一方で、蛍光体母材の結晶構造変化による発光強度の低下等が生じる場合がある。またAlが少なすぎても発光中心周りの結晶構造に影響を与えることができず、十分な発光強度を発揮できない。より好ましくは、10~20モルである。これにより、発光強度をより十分に発揮することができる。
【0022】
Srの含有量は、シリカ粒子100モルに対し金属元素換算で0.5~10モルである。なお、Srが多すぎると、蛍光体母体の結晶構造変化による発光強度の低下等が生じる。
【0023】
シリカ粒子は、主成分がシリカすなわち二酸化珪素であるため、その屈折率が1.49より大きく、1.51より小さい。従って、紫外線吸収剤含有樹脂8の母体となる充填材樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体やポリエチレンの場合に、それらに近い屈折率を有することになり、透明性を向上させることが可能である。
【0024】
蛍光体1のシリカ粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下であることが好ましい。5μmより小さい場合には、粒子が凝集しやすく、凝集した場合には、その粒子間に空気を噛み込むことになり、その界面で光が散乱する。また50μmより大きい場合には、粒子による光の散乱が大きくなる。光の散乱が大きくなるほど、第二の充填材層6の透明性が損なわれ、効率向上が妨げられることになる。より好ましくは8μm以上20μm以下である。本実施の形態において、蛍光体1のシリカ粒子の平均粒径は、個数基準の粒度分布から算出するものとし、メジアン径D50の値とした。また、蛍光体1は均一に分散させるという観点から、球状粒子であることが好ましい。
【0025】
この蛍光体1としては、光電変換素子5の感度特性の低い短波長領域の光を吸収し、感度特性の高い長波長領域の光を蛍光として発し、効率を向上させるという観点から、400nm以下の紫外光を吸収し、400nmより長い波長の蛍光を発することが好ましい。
【0026】
<バックシート>
バックシート2は、太陽電池モジュール10の裏面から内部への水や異物の浸入を防止するための保護部材であり、例えばポリエチレンテレフタラートフィルムなどを用いることができる。
【0027】
<紫外線吸収剤含有樹脂>
紫外線吸収剤含有樹脂8は、紫外線吸収剤が配合された透明樹脂で構成される。
【0028】
<透明樹脂>
透明樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、メタクリルスチレン重合体、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエステル、PET、三フッ化ビニリデン、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィン、トリアセテートなどを単独で使用することもでき、これらを2種類以上混合して使用することもできる。
【0029】
透明樹脂の厚みとしては100μm以上1000μm以下が好ましい。100μmより薄いと、蛍光体1により吸収されなかった紫外線を十分に吸収することが出来ず、光電変換素子5への紫外線による損傷を抑制することができない。1000μmより厚い場合には、透明樹脂自体による可視領域光の吸収が増大し、光電変換素子5による変換効率の低下の原因となり、好ましくない。
【0030】
<紫外線吸収剤>
透明樹脂中に含有される紫外線吸収剤としては組成、系統共に限定されるものではないが、吸収波長のピークが波長300nm以上400nm以下のものを用いることができる。吸収波長のピークが波長300nmより短波長側にあると、蛍光体1により吸収されなかった紫外線の波長を十分吸収することができず、光電変換素子5への紫外線による損傷が大きくなる。吸収波長のピークが波長400nmより長波長側にあると、蛍光体1を通過した紫外線の波長領域を外れることにより光電変換素子5を紫外線から保護しにくくなる。さらに蛍光体1が発した長波長領域の光をも吸収することとなってしまい、蛍光体1の変換による出力向上の妨げとなる。紫外線吸収剤としては、透明性が高いという観点からトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等に代表される有機系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
紫外線吸収剤の添加量としては、300nmから400nmの吸収波長における透過率が5%未満となるように配合量を決定すればよい。
【0032】
<電極>
光電変換素子5は、電極4により電気的に接合されている。電極4としては、公知の金属材料や合金金属を用いることができる。電極4は、一対の電極4を含んでもよい。この一対の電極4によって光電変換素子5からの出力を得ることができる。また、複数の光電変換素子5を相互的に接続する場合には、直列又は並列のそれぞれの場合についても出力が得られるように一対の電極4と接続する。
【0033】
<光電変換素子>
光電変換素子5は、単結晶シリコン系、多結晶シリコン系、アモルファスシリコン系などのシリコン半導体や、ガリウム砒素、カドミウムテルルなどの化合物半導体を用いることができる。光電変換素子5は、電気的に接続された複数の光電変換素子5を含んでもよい。複数の光電変換素子5を用いる場合には、直接接続するか、あるいは、並列に接続するか、いずれであってもよい。
【0034】
<保護ガラス>
保護ガラス7は、透光性および遮水性を有する公知の板状ガラスを用いることができる。
【0035】
<第一の充填材層>
光電変換素子5を保護する背面の第一の充填材層3としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、ビスフェノールエポキシ樹脂硬化物、ポリエチレン、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂などを単独で使用することもできる。また、これらを2種類以上混合して使用することもできる。
【0036】
<第二の充填材層>
第二の充填材層6は、紫外線吸収剤含有樹脂8中に複数の蛍光体1が偏在化されたシートである。紫外線吸収剤含有樹脂8の保護ガラス7側、つまり、光の入射面側に蛍光体1を偏在化させた構成が好ましい。
【0037】
(蛍光体の製造方法)
実施の形態1に係る蛍光体1の製造プロセスを説明する。
(1)まず、所望濃度のEu、AlおよびSrを含む水溶液を準備し、シリカ粒子に各水溶液を、シリカ粒子100モルに対して所望のモル量を添加し、ビーカー内でかき混ぜて1分ほど混合し2時間放置する。シリカ粒子はポーラス構造であるため、浸透圧により水溶液が内部へ浸透し、各元素がシリカ粒子の周囲から内部へ浸み込んでいく。
(2)次に、各元素が浸み込んだシリカ粒子を、真空ろ過装置を用いてろ過し、取り出した粒子を乾燥炉に入れ120℃乾燥させ水分を飛ばす。その後、還元雰囲気の焼成炉にて1000℃で4時間焼成する。焼成温度は1100℃以下で行う。好ましくは900℃以上、より好ましくは900℃以上である。
これにより、短波長領域の光を吸収し、長波長領域の蛍光を発する波長変換機能を有する蛍光体1を製造することができる。
【0038】
(太陽電池モジュールの製造方法)
実施の形態1に係る太陽電池モジュール10の製造プロセスを説明する。
(a)まず、紫外線吸収剤含有樹脂8を作製する。熱溶解させた透明樹脂に紫外線吸収剤を配合し、混練するといった公知の方法によりあらかじめ紫外線吸収剤を溶解あるいは分解させ、ロール延伸や熱プレスによりシート状にした紫外線吸収剤含有樹脂8を作製する。例えば、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤1gを、エチレン酢酸ビニル共重合体200gに添加し、120℃に加熱したプラネタリミキサ内で、100rpmで約30分混合する。さらに混合物を120℃に加熱した熱プレス機で一定厚みのステンレススペーサでギャップ調整し、プレスし冷却することにより紫外線吸収剤含有樹脂8を作製する。
【0039】
(b)次に、粒子状の蛍光体1と紫外線吸収剤含有樹脂8とを用意し、蛍光体1が偏在化された第二の充填材層6を製造する。適当量の蛍光体1を、紫外線吸収剤含有樹脂8に付着させて、例えばヘラ状の板の端やスキージ、あるいは刷毛などで均一に分布させる(図3A)。このとき、蛍光体1は静電気力や物理吸着などで安定して紫外線吸収剤含有樹脂8の付着することとなる。さらに、蛍光体1がその表面に均一に付着し保持されている紫外線吸収剤含有樹脂8をスペーサなどで一定のギャップを維持しながら熱プレスする。これによって、表面に付着していた粒子状である蛍光体1を紫外線吸収剤含有樹脂8に埋め込むことができ、第二の充填材層6とすることができる(図3B)。また、加熱しながら、蛍光体1を紫外線吸収剤含有樹脂8内に埋め込むという観点からは、熱プレスに限定される必要はなく、熱ロール工法などを用いることもできる。
【0040】
(c)次いで、第二の充填材層6を他部材と共にラミネートして、太陽電池モジュールを得る工程を説明する。この工程では、バックシート2と、第一の充填材層3と、電極4により電気的に接続された光電変換素子5と、上記のように作製した第二の充填材層6と、保護ガラス7と、を上記順に重ねてラミネート処理して、太陽電池モジュール10を作製する。
【0041】
以下、実施例および比較例について具体的に説明する。
【0042】
(実施例1)
実施例1は、母材を平均粒径が10μmのシリカ粒子とし、Eu、AlおよびSrを含有した蛍光体1を作製した。
(1)まず、Euを含む硝酸ユウロピウムと、Alを含む硝酸アルミニウムと、Srを含む硝酸ストロンチウムとをイオン交換水に溶解させ、それぞれ1mol/Lの硝酸塩水溶液を調製した。
(2)平均粒径が10μmのシリカ粒子に、1mol/Lの硝酸ユウロピウム水溶液、1mol/Lの硝酸アルミニウム水溶液および1mol/Lの硝酸ストロンチウム水溶液を、それぞれシリカ100モルに対して、2.0モル、15モルおよび5.0モル添加し、ビーカー内でかき混ぜて1分ほど混合し、2時間放置することで、Eu、Al、およびSrをシリカ粒子の内部まで浸み込ませた。
(3)その後、Eu、AlおよびSrが浸み込んだシリカ粒子を、真空ろ過装置を用いてろ過し、取り出した粒子を乾燥炉にて120℃で乾燥し、水分を飛ばした。
(4)その後、還元雰囲気の焼成炉にて1000℃で4時間焼成することで、Eu、AlおよびSrがそれぞれシリカ100モルに対して、2.0モル、15モルおよび5.0モル含有された蛍光体1を製造した。
【0043】
次に、上記で作製した蛍光体を使用し評価用の太陽電池モジュールを作製した。
(a)紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤である2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン1gを、低密度ポリエチレン200gに添加し、150℃に加熱したプラネタリミキサ内で、100rpmで約30分混合し、混合物を150℃に加熱した熱プレス機で550μmのステンレススペーサでギャップ調整し、プレスし、冷却することで紫外線吸収剤含有樹脂8とした。
(b)紫外線吸収剤含有樹脂8に1cm2あたり500μgの量で蛍光体1を付着させ、150℃に加熱した熱プレス機を用いて、ステンレススペーサでギャップ調整し、複数の粒子状の蛍光体1を紫外線吸収剤含有樹脂8の表面近傍に埋め込んだ。これによって第二の充填材層6とした。
(c)また、保護ガラス7、蛍光体1の偏在領域を保護ガラス7側に配置した第二の充填材層6、電極4で互いに接続された光電変換素子5、第一の充填材層3、バックシート2の順に重ねてラミネートすることにより、評価用モジュールを作成した。
【0044】
(実施例2~13)
実施例2は、蛍光体1のSr含有量が0.5モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例3は、蛍光体1のSr含有量が10モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例4は、蛍光体1のEu含有量が1.5モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例5は、蛍光体1のEu含有量が4.0モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例6は、蛍光体1のEu含有量が0.01モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例7は、蛍光体1のEu含有量が15モルである点を除いて、実施例1と同様である。
【0045】
実施例8は、蛍光体1のAl含有量が10モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例9は、蛍光体1のAl含有量が20モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例10は、蛍光体1のAl含有量が0.5モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例11は、蛍光体1のAl含有量が25モルである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例12は、蛍光体1のシリカ粒子の平均粒径が5μmである点を除いて、実施例1と同様である。
実施例13は、蛍光体1のシリカ粒子の平均粒径が50μmである点を除いて、実施例1と同様である。
【0046】
(比較例1~7)
比較例1は、Srが含有されていない点を除いて、実施例1と同様である。
比較例2は、蛍光体1のSr含有量が0.45モルである点を除いて、実施例1と同様である。
比較例3は、蛍光体1のSr含有量が10.5モルである点を除いて、実施例1と同様である。
比較例4は、蛍光体1のEu含有量が0.008モルである点を除いて、実施例1と同様である。
比較例5は、蛍光体1のEu含有量が15.5モルである点を除いて、実施例1と同様である。
比較例6は、蛍光体1のAl含有量が0.45モルである点を除いて、実施例1と同様である。
比較例7は、蛍光体1のAl含有量が25.5モルである点を除いて、実施例1と同様である。
【0047】
(出力値)
作製したそれぞれの太陽電池モジュール評価用モジュールについて、ソーラーシミュレーションによるXeランプ光照射時の出力を測定し、比較例1の出力値に対する相対出力値を求めた。相対出力値の算出は、相対出力値=測定した出力値/比較例1の出力値、の式から算出した。
判定基準 評価
出力値向上が非常に優れた範囲として 1.5以上 ・・・ ◎
出力値向上が優れた範囲として 1.2以上1.5未満 ・・・ ○
出力値向上が劣る範囲として 1.2未満 ・・・ ×
相対出力値が1.5以上の場合、太陽電池モジュールを商品として実用化可能のため、出力値が非常に優れた範囲とし、1.2以上1.5未満の場合、蛍光体を樹脂に埋めこんだ影響で樹脂の透明性が低下することによって生じる、光電変換素子に届く太陽光の光量減少を、上回る発光を示すため、出力値が優れた範囲とし、1.2未満を出力値向上が劣る範囲とした。
【0048】
図4は、実施例1~13の蛍光体における元素含有量、シリカ粒子の平均粒径、相対出力、評価を示す表1である。図5は、比較例1~7の蛍光体における元素含有量、シリカ粒子の平均粒径、相対出力、評価を示す表1である。
【0049】
表1の実施例および表2の比較例の結果から次のことが分かる。
実施例1、2、3と比較例1との対比により、Srを含有させた場合に、太陽電池モジュール10の出力値が向上することがわかる。
【0050】
実施例1、2、3と比較例2、3との対比により、Srを0.5~10モル含有させた場合に、太陽電池モジュール10の出力値が向上することがわかる。
【0051】
実施例1、4、5、6、7と比較例4、5との対比により、Euを0.01~15モル含有させた場合に、太陽電池モジュール10の出力値が向上することがわかる。更に実施例1、4、5と実施例6、7との対比により、Euを1.5~4.0モル含有させた場合に、太陽電池モジュール10の出力値がより向上することがわかる。
【0052】
実施例1、8、9、10、11と比較例6、7との対比により、Alを0.5~25モル含有させた場合に、太陽電池モジュール10の出力値が向上することがわかる。更に実施例1、8、9と実施例10、11との対比により、Euを10~20モル含有させた場合に、太陽電池モジュール10の出力値がより向上することがわかる。
【0053】
実施例1、12、13より、シリカ粒子の平均粒径が5μm以上50μm以下である場合に、太陽電池モジュール10の出力値が高くなることがわかる。シリカ粒子の平均粒径5μmよりも小さい場合、粒子同士が凝集してしまい、樹脂と混合させた際に透明度が下がり出力値が低下する要因となる。更に、50μmよりも大きい場合、樹脂と混合させた場合に乱反射が発生し、透明度が下がり出力値が低下する要因となる。そのため、シリカ粒子の平均粒径が5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0054】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上、説明したように、本開示に係る蛍光体は、非常に高い発光を有し、かつ樹脂との屈折率差が小さいことから、太陽電池モジュールの波長変換材料として優れているため、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0056】
1 蛍光体
2 バックシート
3 第一の充填材層
4 電極
5 光電変換素子
6 第二の充填材層
7 保護ガラス
8 紫外線吸収剤含有樹脂
10 太陽電池モジュール
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5