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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064537
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】折り畳み式椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/04 20060101AFI20230501BHJP
   A47C 5/10 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A47C3/04
A47C5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174871
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森田 凌伍
(72)【発明者】
【氏名】池越 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】江連 晴洋
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091BA04
(57)【要約】
【課題】シンプルでスッキリとした外観の折り畳み式椅子において、座の展開するに当たって静粛性を確保できる等の品質を向上させる。
【解決手段】脚装置2は左右の脚枠体7を有する。脚枠体7は、水平状の上フレーム6を有する4本足方式で、左右の上フレーム6はその後部がビーム材8で連結されている。座1を項背するアウターシェル20が、ビーム材8に支持ブラケット29を介して連結されている。上フレーム6には前後長手のカバー部材16が装着されており、アウターシェル2つの左右側部には、カバー部材16に載る軟質材製の当たり部材26を設けている。座1の倒し回動に際して衝撃をカバー部材16で緩衝できるため、上フレーム6の傷つきや衝撃音の発生を防止できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座がその後部を支点にして起こし回動されるように脚装置に連結されており、前記座を起こし回動させた折り畳み状態で複数台を前後にネスティングできる椅子であって、
前記脚装置は、上端が前後長手の上フレームで構成された左右の脚枠体を有して、前記上フレームはその全体が前記座の左右両端よりも内側のエリアに位置しており、前記左右の上フレームに、当該上フレームに上から重なるカバー部材が配置されている、
折り畳み式椅子。
【請求項2】
前記座は、水平状に倒した展開状態で前記左右の上フレームによって支持される、
請求項1に記載した折り畳み式椅子。
【請求項3】
前記カバー部材は前後長手に形成されており、前記座の下面のうち平面視で前記カバー部材と重なる部位に、展開状態で前記カバー部材に当たる弾性体製の当たり部材を設けている、
請求項2に記載した折り畳み式椅子。
【請求項4】
前記左右の上フレームはその後部が左右長手のビーム材で連結されており、前記座は前記ビーム材に回動自在に連結されている一方、
前記カバー部材は前記ビーム材よりも前の部位に配置されて、前記カバー部材の後端部には、前記ビーム材の左右端部に重なる内向き部を設けている、
請求項2又は3に記載した折り畳み式椅子。
【請求項5】
前記座のうち前寄り部位の左右両側部に、展開状態で前記カバー部材に内側から近接する振れ止め突起が下向きに突設されている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した折り畳み式椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、座を上向きに起こし回動(跳ね上げ回動)させて折り畳みできる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
折り畳み式椅子は、座を起こし回動して折り畳むと多数台を前後に嵌め合わせできるようになっており、格納スペースを有効利用できるため、ミーティング用や聴講用などに多用されている。
【0003】
折り畳み式椅子において、座を支持する脚装置は左右の脚枠体を有しており、例えば特許文献1,2に示すように、脚枠体は側面視逆y形(人字形、入字形)に形成されていることが多い。この場合は、脚枠体はその全体が座の左右外側に露出しており、左右の前足に装架したビーム材で座を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-90792号公報
【特許文献1】特開2019-63166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のような従来の折り畳み状態は、左右の脚枠体はその全体が座の左右外側に露出するため、全体の左右幅は座の左右幅よりもかなり大きくならざるを得ず、このためコンパクト化できないという問題がある。また、脚枠体が目立ち過ぎるため、折り畳み機能が表に出過ぎて仰々しい印象を人に与えてしまって、場所によっては周囲の環境や雰囲気にそぐわずに使用しにくくなるという状況も懸念される。
【0006】
本願発明はこのような現状を背景にして成されたものであり、着座面積は従来と変えることなくコンパクト化できると共にデザイン性にも優れた折り畳み式椅子を基本として、更に保護機能等について改良された構成を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明に係る折り畳み式椅子は、
「座がその後部を支点にして起こし回動されるように脚装置に連結されており、前記座を起こし回動させた折り畳み状態で複数台を前後にネスティングできる」
という基本構成において、
「前記脚装置は、上端が前後長手の上フレームで構成された左右の脚枠体を有して、前記上フレームはその全体が前記座の左右両端よりも内側のエリアに位置しており、前記左右の上フレームに、当該上フレームに上から重なるカバー部材が配置されている」
という特徴を備えている。この場合、カバー部材は、上フレームの上方部にそれぞれ1つずつ配置してもよいし、複数個を前後に並べて配置してもよい。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記座は、水平状に倒した展開状態で前記左右の上フレームによって支持される」
という構成になっている。
【0009】
請求項2の発明の展開例として、請求項3では、
「前記カバー部材は前後長手に形成されており、前記座の下面のうち平面視で前記カバー部材と重なる部位に、展開状態で前記カバー部材に当たる弾性体製の当たり部材を設けている」
という構成になっている。
【0010】
この場合、当たり部材は座の下面の前後複数箇所に設けてよいし、1か所だけに設けてもよい。1か所だけに設ける場合は、カバー部材の前寄り部位に当たるように配置すると好適である(座を倒すに際して、座の前に行くほどモーメントが大きくなるため。)。また、本願発明では、請求項2とは異なって、カバー部材に当たり部材を設けることも可能である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は3において、
「前記左右の上フレームはその後部が左右長手のビーム材で連結されており、前記座は前記ビーム材に回動自在に連結されている一方、
前記カバー部材は前記ビーム材よりも前の部位に配置されて、前記カバー部材の後端部には、前記ビーム材の左右端部に重なる内向き部を設けている」
という構成になっている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1~4のうちのいずれかにおいて、
「前記座のうち前寄り部位の左右両側部に、展開状態で前記カバー部材に内側から近接する振れ止め突起が下向きに突設されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
脚枠体の大部分が座の下方に隠れるため、着座面積は減らさずに椅子の機能は確保しつつ椅子をコンパクト化できると共に、折り畳みの機能が強調され過ぎることを防止して、折り畳み式でありながら非常にシンプルですっきりとしたデザインを実現できる。
【0014】
そして、上フレームにカバー部材を設けているため、使用状態で座をカバー部材に当てることにより、カバー部材を緩衝材として利用することができる。また、折り畳み状態ではカバー部材が露出するため、折り畳み状態で他の物品が上フレームに当たっても、カバー部材で衝撃を緩和して上フレームの変形を防止可能になる。座の下面と上フレームとの間に隙間が空いている場合、着座した人が隙間に外側から指を差し込むことが有り得るが、本願発明では、隙間をカバー部材で塞ぐことができるため、指の挿入を阻止して指詰めを防止できる利点もある。
【0015】
脚枠体は強度を確保するためスチールパイプのような金属部材で作られるが、本願発明では上フレームが広い範囲に亙ってカバー部材で覆われるため、折り畳み状態での美観の向上にも貢献できる。
【0016】
請求項2のように左右の上フレームで材を支持すると、座は左右の上フレームによって両端支持の状態で支持されるため、座を支持するためのビーム材は不要であり、それだけ構造を簡単化できると共に、折り畳み状態でもシンプルな外観を呈して商品性向上に貢献できる。また、上フレームは座の下方に位置していて上フレームの左右間隔は座の左右幅よりも小さいため、座は金属製の補強枠を設けるといった特別の対策を取らなくても安定的に支持できる。従って、構造の複雑化を防止しつつ、必要な強度を確保できる。
【0017】
そして、座はカバー部材で支持されるため、座を展開する途中で手を離しても衝撃をカバー部材で吸収できる。従って、衝撃音の発生や上フレームの傷付きを防止又は著しく抑制できる。また、カバー部材は前後方向に長いため、左右の上フレームに1本ずつ配置しつつ必要な緩衝機能を確保できる。従って、取り付けの手間をできるだけ抑制しつつ、高い緩衝機能を享受できる。
【0018】
請求項3のように弾性体製の当たり部材を設けると、座を展開するに際しての緩衝機能を格段に向上できる。また、着座した状態で当たり部材をクッション材として機能させ得るため、座り心地の向上にも貢献できる。
【0019】
請求項4の構成では、座の連結部をその左右両端よりも内側に配置できるため、連結部材を隠してシンプル性を確保することが確実化される。そして、カバー部材はビーム材の端部まで覆っているため、ビーム材と上フレームとの接続箇所(溶接箇所)をカバー部材で隠すことができて、美観の向上に貢献できる。更に、カバー部材は、その後部が曲がっていることによって変形しにくくなるため、カバー部材の強度アップにも貢献できる。
【0020】
請求項5の構成では、椅子を人が使用している状態で身体を左右にずらしたりしても座を安定的に保持できるため、左右方向のガタ付きを無くして品質を向上できる。そして、振れ止め突起をカバー部材に当てることによってずれを抑制するものであるため、振れに対する緩衝性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る椅子の外観図であり、(A)は展開状態の斜視図、(B)は折り畳み状態の斜視図、(C)は部分的な後方斜視図である。
図2】(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は底面図、(D)は図1(B)の部分拡大図である。
図3】分離斜視図である。
図4】(A)は座及び緩衝材を分離した斜視図、(B)は緩衝材を裏返した状態の斜視図である。
図5】(A)は座の連結構造を示す分離斜視図、(B)は軸受部の斜視図、(C)はアウターシェルの後部の斜視図である。
図6】(A)はVIA-VIA 視断面図、(B)はビーム材を省略した状態での座の連結部の斜視図である。
図7】(A)は図4(A)の VIIA-VIIA視方向から見た断面図、(B)はネスティング状態を示す平面図である。
図8】他の実施形態を示す図で、(A)はネスティング途中の側面図、(B)は椅子単体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1).概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1~7に示す第1実施形態説明する。
【0023】
図1に示すように、椅子は、座1とこれを支持する脚装置2、及び背もたれ3を備えている。脚装置2は、前足4と後足5の上端間に前後長手で水平状の上フレーム6が繋がった形態の左右の脚枠体7と、左右脚枠体7の上フレーム6をその後端寄り部位のみにおいて連結する左右長手の1本のビーム材8とを備えており、座1はビーム材8に上下回動可能に連結されている。
【0024】
前足4と上フレーム6とは、1本の金属パイプ(スチール管又はアルミ管)を曲げることによって一体に形成されており、上フレーム6の後端が後足5に溶接されている。後足5には上向きに延びた背支柱9が一体に形成されており、左右の背支柱9の上端は連結杆9aを介して一体に繋がっている。背もたれ3は合板製又は樹脂製等であり、上下2本ずつのビス10で背支柱9に固定されている。なお、樹脂製の背もたれ3の場合は、図1(C)に一点鎖線で示すように、その背面に、内周部又は外周部若しくは両方を後ろ向きに突出させた合成樹脂製の位置決め部3aを設けることができる。
【0025】
左右の前足4及び左右の後足5は、正面図でハ字の形態を成すように鉛直線に対して若干の角度で傾斜している。また、前足4と後足5とは、側面視でハ字の形態を成すように鉛直線に対して若干の角度で傾斜している(前足4は後傾し、後足5は前傾している。)。そして、左右の前足4の間隔を左右の後足5の間隔よりも広くすることにより、座1を起こし回動させた状態で、複数の椅子を前後にネスティングできるようになっている。従って、左右の上フレーム6は、平面視で前広がりのハ字の姿勢を成している。
【0026】
各足4,5の下端に、水平旋回可能なキャスタ11を取り付けている。従って、各足4、5の下端部は鉛直姿勢になっている。なお、本願発明はキャスタ11を備えていない椅子に適用できる。
【0027】
本実施形態の椅子は、オプション品としてメモ台12を備えている。図1(B)に示すように、メモ台12は、右の上フレーム6に溶接で固定されたフレーム材13に取り付けられている。フレーム材13はクランク状に曲がっていて上端は水平部13aになっており、水平部13aを下方から抱持する軸受キャップ14を、メモ台12のうち1つのコーナー部の近くにビスで固定することにより、メモ台12を回動可能に構成し、更に、フレーム材13の水平部13aに、軸受キャップ14を下方から囲うコ字形の姿勢保持体15を溶接で固定している。
【0028】
従って、メモ台12は、その下面が姿勢保持体15に当たることによって水平姿勢が保持される。鉛直状に起こした姿勢は、メモ台12の一部がフレーム材13の起立部に当たることによって保持されている。また、フレーム材13の水平部13aは、平面視で前にいくに従って左右内側にずれるように傾斜している。このため、図7(B)に示すように、メモ台12を備えた椅子でありながらネスティングできる。
【0029】
なお、図2(C)に示すように、メモ台12は、水平姿勢に倒した状態で、回動支点から離れるに従って背もたれ3との間隔が広がるように、平面視(及び底面視)で傾斜させている。そして、座1及びメモ台12を倒した展開状態で、椅子の使用者はメモ台12が設置されていない側(左側)から身体を横移動させて着座・離席するが、実施形態では、メモ台12と背もたれ3との間の空間が人の出入りする側に向けて広がっているため、人が身体を横移動させる際にメモ台12が邪魔になることを防止して、着座・離席をスムースに行える。
【0030】
また、メモ台12は着座した人の右寄り部位にあるため、使用者は身体を少し横向きにねじった姿勢でノートパソコンなどを使用するが、実施形態のように、メモ台12を、その左端部が背もたれ3から遠ざかるように傾斜させると、使用者の身体とメモ台12とが正対するため、人は自然な姿勢でノートパソコン等を使用できて、ノートパソコン等を使用しやすい利点もある。
【0031】
図2(C)(D)に明示するように、左右の上フレーム6の大部分は座1の下方に配置されており、座1は、左右の上フレーム6によって支持されている。上フレーム6の上面には、座1の当たりを柔らかくするために、前後に長く断面円弧状に形成されたカバー部材(緩衝材、バンパー部材)16が、前後のビス17で固定されている。
【0032】
図7(A)に明示するように、カバー部材16は、上フレーム6の上面を覆って上フレーム6の内側部に入り込んでおり、カバー部材16の下端は上フレーム6の軸心と同じ程度の高さになっている。カバー部材16は、ポリプロピレン等の合成樹脂で作られている。
【0033】
カバー部材16の前端部、前足4の上端を覆うように下向き部16aになっており、カバー部材16の後端部は、16bはビーム材8の端部を覆うように内向き部16bになっている。また、図4(B)に示すように、カバー部材16には、上フレーム6に当たる左右一対ずつのリブ18の群が、前後に複数対ずつ形成されている。
【0034】
(2).座とその取り付け構造
図3に示すように、座1は、上下に開口した合成樹脂製のアウターシェル20と、その上面に装着された合成樹脂製のインナーシェル21と、インナーシェル21の上面に重ね配置されたクッション材22とを備えており、クッション材22は表皮材によって覆われている。インナーシェル21には、着座による荷重で下向きに撓む(膨れる)ことを許容するため、前後長手や傾斜姿勢の多数のスリット23が形成されている。
【0035】
また、詳細は明示していないが、インナーシェル21は、前後左右に設けた係合爪をアウターシェル20の係合穴に嵌め込むことにより、アウターシェル20に取り付けられている。アウターシェル20には角形の大きな開口24が空いているため、折り畳んだ状態で人はインナーシェル21の下面を開口24から視認できる。従って、折り畳んだ状態で、人は開口24を通じてインナーシェル21のスリット23を視認できる。
【0036】
図3に明示するように、アウターシェル20は、外周を構成する壁部と内周を構成する壁部とを有する浅いトレー状を成しており、その内部に、左右方向及び前後方向に長く延びる個数本の補強リブ25を形成している。
【0037】
図4及び図7(A)に示すように、後足5の左右側部には、カバー部材16に載る当たり部材26を装着している。当たり部材26はゴム又はエラストマのような軟質材から成っており、図7(A)のとおり、アウターシェル20に設けた取り付け穴27に押し込み装着している。また、アウターシェル20の前部に位置した当たり部材26の内側には、カバー部材16に近接する振れ止め突起28を下向きに突設している。当たり部材26は前後2か所に設けているが、前部のみに設けたり、前後3か所以上に設けたりすることも可能である。
【0038】
インナーシェル21及びクッション材22は、着座者の臀部を下方から包むように下向きに膨れた(下向きに凹んだ)形状を成しており、このため、アウターシェル20の下面も正面視で下向きに膨れた形態を成している。そこで、図4から理解できるように、ビーム材8は、アウターシェル20の下面に形状に倣って下向きに膨れるように曲がっている。
【0039】
そして、ビーム材8に、水平状の支軸29aと側面視後傾姿勢の左右のアーム部29bとを有するコ字形の支持ブラケット29を溶接によって固定し、支持ブラケット29の支軸29aに座1のアウターシェル20を連結している。支持ブラケット29は、ビーム材8や脚枠体7よりも小径の丸棒材で作られており、座1は、支持ブラケット29の支軸29aを支点にして上下に回動する。支持ブラケット29は、支軸29aがビーム材8よりも後ろに位置するように、アーム部29bを側面視で後傾させている。
【0040】
図2(C)や図4(A)から理解できるように、座1とその後端に近い部位が支軸29aに連結されているが、支軸29aはビーム材8よりも高い位置でかつ後ろにあるため、座1は、その後端縁をアウターシェル20に当てることなく起こし回動させることができる。
【0041】
(3).連結構造の詳細
図4,5に示すように、座1は、金属板製の上部軸受キャップ31と合成樹脂製の下部軸受キャップ32とを介して支軸29aに連結されている。下部軸受キャップ32は、支持ブラケット29における左右アーム部29bとの間に僅かの隙間を持って嵌まる左右幅である一方、上部軸受キャップ31は下部軸受キャップ32よりもかなり小さい左右幅であり、これら上部軸受キャップ31と下部軸受キャップ32とにより、支軸29aを上下から半分ずつ挟んでいる。
【0042】
上部軸受キャップ31は、支軸29aを囲う部分の前後にフランジ31a,31bを設けており、これらフランジ31a,31bが下部軸受キャップ32と重なっている。下部軸受キャップ32と下方に膨れた形態であり、内部に多数のリブ33を形成している。また、上部軸受キャップ31の後部フランジ31bには角形の位置決め穴34aが形成されて、下部軸受キャップ32には、位置決め穴34aに下方から嵌入する位置決め突起34bを形成している。位置決め突起34bはリブの群で形成されている。
【0043】
図4,5に示すように、アウターシェル20に、下部軸受キャップ32が入り込む凹所36が形成されており、かつ、凹所36には、上部軸受キャップ31の軸受部と下部軸受キャップ32の位置決め突起34bとの干渉を防止するための逃がし穴37が空いており、逃がし穴37を囲う段部に、下部軸受キャップ32が上部軸受キャップ31を介して重なっている。
【0044】
図5(A)に示すように、下部軸受キャップ32の前部には左右に並んだ3つの筒部34cが形成されており、筒部34cに下方から挿通した上向きビス38が、上部軸受キャップ31の前部フランジ31aを貫通している。図5(A)から理解できるように、上向きビス38は、アウターシェル20に設けた左右一対の雌ねじ穴38aにねじ込まれている。上部軸受キャップ31において、上向きビス38が貫通する挿通穴に符号38bを付している。
【0045】
上向きビス38は左右に3本並んでいるが、左端と右端の2本の上向きビス38が上下軸受キャップ31,32とアウターシェル20とを共締めするものであり、中間のビス38は、上下軸受キャップ31,32を支持ブラケット29に仮保持するために使用されている。従って、上部軸受キャップ31の前部フランジ31aには、中間の上向きビス38がねじ込まれるタップ穴38c(例えば図6(A)参照)を形成している。
【0046】
下部軸受キャップ32の後部は、図5(C)に示す左右2本の下向きビス39によってアウターシェル20及び上部軸受キャップ31に共締めされている。このため、図5(A)(B)に示すように、アウターシェル20の後端部と上部軸受キャップ31の後部フランジ31bには、ビス挿通穴40が空いている。また、図5(A)の右端部に示すように、下部軸受キャップ32には、下向きビス39がねじ込まれる左右一対の雌ねじ穴41が空いている。
【0047】
図6(A)に明示するように、支持ブラケット29の支軸29aには、C形のスリーブ42が嵌められてビス43で固定されている。スリーブ42は座1の回動をスムースにするためのものであり、POM樹脂のように摩擦係数が小さい合成樹脂製で作られている。スリーブ42は支軸29aの左右長さよりも短い長さであり、そこで、下部軸受キャップ32には、スリーブ42が左右ずれ不能に嵌まる第1凹部46が形成されている。
【0048】
第1凹部46はリブ33の群に形成されているが、第1凹部46の左右外側には、同じくリブ33の上端を円弧状に切欠くことにより、支軸29aを下方から囲う第2凹部45が形成されている。本実施形態では、下部軸受キャップ32が支持ブラケット29に対して左右ずれ不能に保持されていることにより、座1の後部は左右ずれ不能に保持されている。
【0049】
本実施形態では、図6(B)(図5(A)も参照)に示すように、アウターシェル20における凹所36の左右側部に、座1を起こした状態で支持ブラケット29のアーム部29bが当たるストッパー部49を形成して、座1の起こし回動姿勢を規定している。
【0050】
図6(A)(図3も参照)に示すように、インナーシェル21の後端には、上部軸受キャップ31の上端部が入り込む左右長手の逃がし溝穴50を形成している。すなわち、上部軸受キャップ31の上端部をインナーシェル21に入り込ませることにより、支軸29aをできるだけ上に配置している。
【0051】
(4).まとめ
椅子において座が固定された4本足の態様は最もポピュラーな形態であり、様々なところで使用されているが、本実施形態の椅子は、座1を倒し回動させた展開状態においてこのようなポピュラーな椅子の外観を呈しており、折り畳み式には見えない外観を呈している(折り畳みのための部材が露出していない。)。従って、折り畳み式椅子でありながら「折り畳み式椅子らしさ」は無くし、シンプルでスッキリとした外観を呈している。
【0052】
そして、折り畳み式の機能が外観から判ると、機能的過ぎて場所によっては環境や雰囲気にそぐわずに使用しづらいこともあるが、本実施形態では、使用状態では折り畳み式としての機能は外部に全く現れていないため、様々な場所で違和感なく使用できる。従って、商品価値を向上できる。
【0053】
また、展開状態では、座1は左右の上フレーム6によって両端支持の状態で支持されるが、左右の上フレーム6の間隔は座1の左右間隔よりも狭いため、金属製の支持フレームのような特別の部材を要することなく、合成樹脂製のアウターシェル20であっても補強リブ25を設けるだけの簡単な対応で必要な支持強度を確保できる。従って、コスト面でも有益である。
【0054】
そして、上フレーム6にカバー部材16を装着しているため、座1を倒し回動させるに際して途中で手を離しても、衝撃をカバー部材16で緩衝できるため、上フレーム6に打痕がつくような問題はないと共に、衝撃音の発生も防止できる。特に、軟質材製の当たり部材26を設けると、緩衝機能を格段に向上できる。
【0055】
そして、本実施形態のカバー部材16は前後に長く延びているため、アウターシェル20の上フレーム6との間の隙間を塞ぐ機能も有しており、人が外側から指先を上フレームに上方に当てても、指を詰めるようなことはない。折り畳み状態で、誤って物を上フレーム6に落としても、カバー部材16で緩衝されるため上フレーム6の傷付きを防止できる。また、カバー部材16は美粧機能も持つため、折り畳み状態での見栄えの向上にも貢献できる。
【0056】
また、アウターシェル20に振れ止め突起28を設けているため、使用者が着座状態で身体を作用にずらしても、座1が左右に振れ動くことを防止できるが、振れ止め突起28のカバー部材16に当たって衝撃が緩衝されるため、異音が発生したり上フレーム6に打痕が発生したりすることはない。
【0057】
(5).他の実施形態
第1実施形態では、上フレーム6は高さが一定の水平姿勢になっていたが、図8(A)(B)に示す第2実施形態では、上フレーム6のうちビーム材8よりも前の部位が、若干の角度で前下がりに傾斜している。従って、左右の上フレーム6を平行な姿勢にしつつネスティングできる。上フレーム6が傾斜していることにより、座1の前寄り部位には、座1を所定の姿勢に保持するために、上フレーム6の傾斜部に載る下向きリブ51を設けている。
【0058】
ネスティングのためには、前足4の左右間隔と後足5の左右間隔とを異ならせる必要があるが、この実施形態では、第1実施形態とは異なって、前足4の左右間隔を後足5の左右間隔よりも小さい寸法に設定している。上フレーム6のうちビーム材8よりも前の部位を段落ちさせて、上フレーム6を側面視で階段状に形成してもネスティング可能である。また、上フレーム6の全体を前下がりに傾斜させてもよい。
【0059】
本願発明は上記した形態の他にも様々に具体化できる。例えば、カバー部材はビーム材の後ろまで延ばして、上フレームの全長を覆うことも可能である。カバー部材の上面にエラストマ等の弾性層を設けることも可能である。前後の足や上フレームを合成樹脂製とすることも可能である。アウターシェルは上下に開口していないタイプであってもよい。座は(アウターシェル)は、3か所以上の複数箇所において上フレームで支持することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は、折り畳み式椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 座
2 脚装置
4 前足
5 後足
6 上フレーム
7 脚枠体
8 ビーム材
16 カバー部材
16b 内向き部
20 アウターシェル
21 インナーシェル
26 当たり部材
28 振れ止め突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8