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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006454
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】水素製造システムおよび水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/042 20210101AFI20230111BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230111BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20230111BHJP
   C25B 9/67 20210101ALI20230111BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/67
C01B3/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109055
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 宏之
(72)【発明者】
【氏名】中桐 基裕
(72)【発明者】
【氏名】小城 育昌
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA12
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】水素製造システムおよび水素製造方法において、二酸化炭素の発生を抑制すると共にエネルギコストの低減を図る。
【解決手段】600℃以上の熱エネルギーを発生可能な熱源と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、熱媒体で加熱された水蒸気を用いて水素を製造する高温水蒸気電解装置と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
前記熱媒体で加熱された水蒸気を用いて水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて前記高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置と、
を備える水素製造システム。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記高温水蒸気電解装置が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
水蒸気を生成して水蒸気供給経路により前記高温水蒸気電解装置に供給する蒸気発生器を有し、前記熱交換器は、前記水蒸気供給経路に設けられる第1熱交換器と、前記水蒸気供給経路における前記第1熱交換器より下流側に設けられる第2熱交換器とを有し、前記熱媒体は、前記第2熱交換器から前記第1熱交換器に供給される、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
水蒸気を生成して水蒸気供給経路により前記高温水蒸気電解装置に供給する蒸気発生器を有し、前記熱交換器は、前記水蒸気供給経路に設けられる第1熱交換器と、前記水蒸気供給経路における前記第1熱交換器より下流側に設けられる第2熱交換器とを有し、前記熱媒体は、前記第1熱交換器に供給されると共に、前記第2熱交換器から前記加熱装置に供給される、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記高温水蒸気電解装置は、電解質層と、水素ガス拡散電極層と、酸素ガス拡散電極層とを有し、前記加熱装置は、前記水素ガス拡散電極層および前記酸素ガス拡散電極層を加熱する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水素製造システム。
【請求項6】
気体を前記酸素ガス拡散電極層に供給する気体供給装置と、前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて前記酸素ガス拡散電極層に供給される気体を加熱する気体加熱装置とを有する、
請求項5に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記熱エネルギーを発生可能な熱源としては、高温ガス炉があり、前記熱交換器は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の水素製造システム。
【請求項8】
前記熱エネルギーを発生可能な熱源としては、高温ガス炉があり、前記加熱装置は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより高温水蒸気電解装置を加熱する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の水素製造システム。
【請求項9】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置を加熱する工程と、
前記熱媒体で加熱された水蒸気を用いて前記高温水蒸気電解装置により水素を製造する工程と、
を有する水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造システムおよび水素製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素製造技術の一つとして、高温水蒸気電解法がある。高温水蒸気電解法は、原料が安価であり、水素製造プロセスにおいて二酸化炭素(CO)が発生しないというメリットがある。しかし、高温水蒸気電解法は、電気分解により水素を生成するものであるため、電気エネルギーのコストが高いという課題がある。そこで、700℃以上の高温水蒸気を電気分解することで、電気分解に要する電気エネルギーを減少することが考えられる。
【0003】
ところが、700℃以上の高温水蒸気を生成することは困難であり、従来、ボイラや電気炉などにより水を昇温して水蒸気を生成し、この水蒸気を電気分解して水素を生成している。しかし、この場合の水蒸気の温度は、100℃~200℃であり、高温水蒸気電解法に必要な700℃以上の高温水蒸気をより低い。また、水の分解は、吸熱反応であり、1モルの水を電気分解するときに、外部から286ジュールの熱を供給する必要がある。そのため、従来、水の電気分解時の吸熱と水蒸気の顕熱を水電解セルのジュール熱で補いながら、水蒸気を700℃~900℃として電気分解している。このような従来の水素製造装置として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-537815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温水蒸気電解法による水素製造装置は、高温水蒸気を利用することによって水の電気分解にかかる電気エネルギーを減少させることができる。しかし、現実に、従来の水素製造装置は、必要な電気エネルギーを、水の電気分解の運転温度に相当する温度の高温水蒸気の生成エネルギーにより賄うと共に、水の電気分解の吸熱反応を電気エネルギーで賄っている。すなわち、従来の水素製造装置は、水電解の吸熱と水電解セルの発熱がバランスする熱中立点の電位、または、熱中立点の電位以上の電位で運転しており、電気エネルギーのコストが高い。水素製造装置は、コストの大半が電力であり、この電力が再生可能エネルギーであれば、二酸化炭素を削減することができる。しかし、再生可能エネルギーは、電力の供給が不安定であるため、水素製造装置に適用することは困難である。一方で、火力発電システムにより生成した電気エネルギーは、二酸化炭素の発生が伴ってしまう。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、二酸化炭素の発生を抑制すると共にエネルギコストの低減を図る水素製造システムおよび水素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の水素製造システムは、600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、前記熱媒体で加熱された水蒸気を用いて水素を製造する高温水蒸気電解装置と、前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて前記高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置と、を備える。
【0008】
また、本開示の水素製造方法は、600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する工程と、前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置を加熱する工程と、前記熱媒体で加熱された水蒸気を用いて前記高温水蒸気電解装置により水素を製造する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の水素製造システムおよび水素製造方法によれば、二酸化炭素の発生を抑制することができると共にエネルギコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
図2図2は、電気密度と熱エネルギーとの関係を表すグラフである。
図3図3は、第2実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
図4図4は、第3実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<水素製造システム>
図1は、第1実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
【0013】
第1実施形態において、図1に示すように、水素製造システム10は、熱源11と、熱交換器12と、高温水蒸気電解装置(SOEC)13と、加熱装置14とを備える。
【0014】
熱源11は、高温ガス炉であり、900℃以上の熱エネルギーを発生可能である。なお、熱源11は、高温ガス炉に限定されるものではなく、600℃以上の熱エネルギーを発生可能なものであればよい。熱源としては、例えば、電気炉、ヘリオスタット式太陽熱集光装置、ボイラ、ガスタービン排熱などを適用してもよい。
【0015】
熱源11としての高温ガス炉は、燃料の被覆にセラミックス材料を使用し、冷却材をヘリウムとし、減速材を黒鉛とする原子炉である。高温ガス炉は、900℃以上の熱媒体としてのヘリウムガスを生成可能である。熱源11としての高温ガス炉は、循環経路L11が連結される。循環経路L11は、熱源11の他に、中間熱交換器21が連結される。中間熱交換器21は、供給経路L12の一端部および戻り経路L13の一端部が連結される。
【0016】
中間熱交換器21は、循環経路L11を流れる1次ヘリウム(1次熱媒体)と供給経路L12のおよび戻り経路L13を流れる2次ヘリウム(2次熱媒体)との間で熱交換を行う。すなわち、中間熱交換器21は、循環経路L11を流れる、例えば、950℃の1次ヘリウムにより供給経路L12のおよび戻り経路L13を流れる2次ヘリウムを、例えば、900℃に加熱する。
【0017】
供給経路L12は、他端部に供給ヘッダ22が連結される。戻り経路L13は、他端部に戻りヘッダ23が連結される。戻り経路L13は、ファン24が設けられる。水素製造システム10は、熱源11で発生した900℃以上の熱エネルギーで加熱された熱媒体としての2次ヘリウムを用いて水素を製造するものである。
【0018】
高温水蒸気電解装置13は、固体酸化物形電気化学セルを用い、約700℃~800℃の高温で水電解により水素製造するものである。高温水蒸気電解装置13は、電解質層13aと、水素ガス拡散電極層13bと、酸素ガス拡散電極層13cとを有する。
【0019】
電解質層13aは、固体電解質からなる電解質層である。電解質層13aは、一方に水素ガス拡散電極層13bが配置され、他方に酸素ガス拡散電極層13cが配置される。ここで、水素ガス拡散電極層13bは、水素側の陰極電極であり、酸素ガス拡散電極層13cは、酸素側の陽極電極である。高温水蒸気電解装置13は、例えば、ケース13dの内部に電解質層13aと水素ガス拡散電極層13bと酸素ガス拡散電極層13cが配置されて構成される。
【0020】
蒸気発生器31は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより水を加熱して水蒸気を生成する。蒸気発生器31は、水供給経路L31が連結されると共に、第1水蒸気供給経路L32の一端部が連結される。熱交換器12は、第1熱交換器32と、第2熱交換器33とを有する。第1熱交換器32は、第1水蒸気供給経路L32の他端部が連結されると共に、第2水蒸気供給経路L33の一端部が連結される。第2熱交換器33は、第2水蒸気供給経路L33の他端部が連結されると共に、第3水蒸気供給経路L34の一端部が連結される。
【0021】
第1熱交換器32は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより水蒸気を過熱して過熱水蒸気を生成する。第2熱交換器33は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより過熱水蒸気を更に過熱する。水蒸気供給経路L32,L33,L34にて、水蒸気の流れ方向の上流側に第1熱交換器32が配置され、第1熱交換器32より下流側に第2熱交換器33が配置される。
【0022】
高温水蒸気電解装置13は、第3水蒸気供給経路L34の他端部が連結される。高温水蒸気電解装置13は、水素ガス排出経路L35と酸素ガス排出経路L36が連結される。また、高温水蒸気電解装置13は、電力供給経路L37が接続され、外部から電力(電気エネルギー)が供給可能である。
【0023】
高温水蒸気電解装置13は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された水蒸気を用いると共に、電力供給経路L37から供給された電気エネルギーを用いて水素を製造する。加熱装置14は、2次ヘリウムの熱エネルギーを用いて高温水蒸気電解装置13を加熱する。この場合、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置13が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う。
【0024】
供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33が連結される。第2熱交換器33は、熱媒体供給経路L15により第1熱交換器32が連結される。第1熱交換器32は、熱媒体供給経路L16により戻りヘッダ23が連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33に供給されて水蒸気を過熱し、第2熱交換器33から熱媒体供給経路L15により第1熱交換器32に供給されて水蒸気を過熱し、第1熱交換器32から熱媒体供給経路L16により戻りヘッダ23に戻される。
【0025】
また、供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L17により加熱装置14が連結される。加熱装置14は、熱媒体供給経路L18により蒸気発生器31が連結される。蒸気発生器31は、熱媒体供給経路L19により戻りヘッダ23が連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L17により加熱装置14に供給されて高温水蒸気電解装置13を加熱し、加熱装置14から熱媒体供給経路L18により蒸気発生器31に供給されて水を加熱し、蒸気発生器31から熱媒体供給経路L19により戻りヘッダ23に戻される。
【0026】
このとき、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置13のケース13dの内部に2次ヘリウムを導入し、水素ガス拡散電極層13bおよび酸素ガス拡散電極層13cを加熱する。
【0027】
高温水蒸気電解装置13は、第3水蒸気供給経路L34から高温の過熱水蒸気が水素ガス拡散電極層13bに供給される。高温水蒸気電解装置13は、電力供給経路L37から電力が供給され、水素ガス拡散電極層13bおよび酸素ガス拡散電極層13cに電圧が印加される。すると、水蒸気は、水素ガス拡散電極層13bで電気分解され、水素が発生する。発生した水素は、水素ガス排出経路L35に排出される。一方、水素ガス拡散電極層13bで電気分解されて発生した酸素イオンは、電解質層13aを透過し、酸素ガス拡散電極層13cの内部を拡散されながら透過し、酸素として酸素ガス排出経路L36に排出される。
【0028】
高温水蒸気電解装置13は、下記式に応じた電気分解反応に基づいて水素と酸素が生成される。
O→H+1/2O
【0029】
気体供給装置41は、気体(空気または水蒸気)を高温水蒸気電解装置13の酸素ガス拡散電極層13cに供給する。気体加熱装置42は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより酸素ガス拡散電極層13cに供給される気体を加熱する。気体供給経路L41は、気体供給装置41を構成するファン43が設けられる。酸素ガス排出経路L36は、熱交換器44が設けられる。気体供給経路L41は、熱交換器44に連結される。熱交換器44は、気体供給経路L42により気体加熱装置42に連結される。気体加熱装置42は、気体供給経路L43により酸素ガス拡散電極層13cに連結される。
【0030】
供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L20により気体加熱装置42が連結される。気体加熱装置42は、熱媒体供給経路L21により熱媒体供給経路L18を介して蒸気発生器31が連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L20により気体加熱装置42に供給されて気体を加熱し、気体加熱装置42から熱媒体供給経路L21により蒸気発生器31に供給される。
【0031】
ファン43が駆動すると、気体(空気)は、気体供給経路L41から熱交換器44に供給され、酸素ガス排出経路L36を流れる酸素により加熱される。加熱された気体は、気体供給経路L42により気体加熱装置42に供給され、2次ヘリウムの熱エネルギーにより加熱される。加熱された気体は、気体供給経路L43により酸素ガス拡散電極層13cに供給され、生成された酸素を酸素ガス排出経路L36に排出する。
【0032】
<水素製造方法>
本実施形態の水素製造方法は、600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する工程と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置13を加熱する工程と、熱媒体で加熱された水蒸気を用いて高温水蒸気電解装置13により水素を製造する工程とを有する。
【0033】
熱源11としての高温ガス炉は、例えば、950℃の1次ヘリウムを生成する。高温の1次ヘリウムは、循環経路L11を流れ、中間熱交換器21にて、戻り経路L13を流れる2次ヘリウムと交換を行い、2次ヘリウムを、例えば、900℃まで加熱する。中間熱交換器21で熱交換された2次ヘリウムは、供給経路L12を流れ、供給ヘッダ22に、例えば、900℃程度で供給される。
【0034】
ファン24が駆動すると、高温の2次ヘリウムが中間熱交換器21で加熱されながら循環する。供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33に供給されて水蒸気を過熱し、第2熱交換器33から熱媒体供給経路L15により第1熱交換器32に供給されて水蒸気を過熱する。また、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L17により加熱装置14に供給されて高温水蒸気電解装置13を加熱する。さらに、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L20により気体加熱装置42に供給されて気体を加熱する。
【0035】
蒸気発生器31は、水供給経路L31から供給された水を加熱して水蒸気を生成する。水蒸気は、第1水蒸気供給経路L32により第1熱交換器32に供給されて過熱され、第2水蒸気供給経路L33により第2熱交換器33に供給されてさらに過熱され、例えば、850℃の高温水蒸気として高温水蒸気電解装置13に供給される。高温水蒸気電解装置13は、加熱装置14の2次ヘリウムにより加熱され、電力供給経路L37から供給された電力により高温水蒸気を電気分解し、水素と酸素を生成する。
【0036】
高温水蒸気電解装置13で生成された水素は、水素ガス排出経路L35から排出され、酸素は、酸素ガス排出経路L36から排出される。このとき、ファン43が駆動すると、気体(空気)が気体供給経路L41から熱交換器44に供給されて加熱され、気体供給経路L42により気体加熱装置42に供給されて加熱され、気体供給経路L43により酸素ガス拡散電極層13cに供給される。高温水蒸気電解装置13で生成された酸素は、気体供給経路L43から供給された高温の気体により酸素ガス排出経路L36に排出される。
【0037】
<水素製造方法の原理>
図2は、電気密度と熱エネルギーとの関係を表すグラフである。
【0038】
図2は、燃料電池(SOFC)と高温水蒸気電解装置(SOEC)とにおける電気密度と熱エネルギーとの関係を表すものである。図2に示すように、高温水蒸気電解に伴う吸熱は、電気密度の上昇に応じて一次関数(比例)で下降する。高温水蒸気電解に伴って発生するジュール発熱は、電気密度の上昇に応じて二次次関数で下降してから上昇する。そのため、ジュール発熱と吸熱を合わせた熱は、電気密度の上昇に応じて二次次関数で下降してから上昇する。
【0039】
従来の水素製造システムは、第1実施形態のような熱源(高温ガス炉)11がないことから、高温水蒸気電解装置で発生するジュール発熱による熱により水を電気分解するときの吸熱反応を補っている。すなわち、従来の高温水蒸気電解装置は、熱中立点A以上の電位で運転している。
【0040】
一方、第1実施形態の水素製造システム10は、熱源(高温ガス炉)11を有することから、熱源11で発生した600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱することで、水を電気分解するときの吸熱反応を補うことができる。そのため、第1実施形態の水素製造システム10は、熱中立点A以下である運転点Bの電位で運転することができる。運転点Bでは、電気エネルギーを熱エネルギー(ジュール発熱)に変換することなく、電気エネルギーから熱エネルギーへの変換するときのエネルギーロスを低減することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
第2実施形態において、図3に示すように、水素製造システム10Aは、第1実施形態と同様に、熱源11と、熱交換器12と、高温水蒸気電解装置(SOEC)13と、加熱装置14とを備える。第2実施形態の水素製造システム10Aは、第1実施形態に対して、熱媒体供給経路の簡略化を図っている。
【0043】
供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33が連結される。第2熱交換器33は、熱媒体供給経路L51により加熱装置14が連結される。加熱装置14は、熱媒体供給経路L18により蒸気発生器31が連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33に供給されて水蒸気を過熱し、第2熱交換器33から加熱装置14に供給されて高温水蒸気電解装置13を加熱する。
【0044】
また、供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L52により第1熱交換器32が連結される。第1熱交換器32は、熱媒体供給経路L16により戻りヘッダ23が連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L52により第1熱交換器32に供給されて水蒸気を過熱する。
【0045】
そのため、水素製造システム10Aは、熱媒体供給経路L51,L52の長さを短くして簡略化することができ、水素製造システム10Aの簡素化を図ることができる。
【0046】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
第3実施形態において、図4に示すように、水素製造システム10Bは、熱源11と、熱交換器12と、高温水蒸気電解装置(SOEC)13と、加熱装置14Bとを備える。第3実施形態の水素製造システム10Bは、第1実施形態に対して、加熱装置14Bの構成が相違する。
【0048】
加熱装置14Bは、2次ヘリウムの熱エネルギーを用いて高温水蒸気電解装置13を加熱する。加熱装置14Bは、2次ヘリウムと3次ヘリウムとの間で熱交換を行う熱交換器である。加熱装置14Bは、2次ヘリウムの熱エネルギーにより3次ヘリウムを加熱し、3次ヘリウムの熱エネルギーを用いて高温水蒸気電解装置13を加熱する。このとき、加熱装置14Bは、高温水蒸気電解装置13のケース13dの内部に3次ヘリウムを導入し、水素ガス拡散電極層13bおよび酸素ガス拡散電極層13cを加熱する。
【0049】
すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L17により加熱装置14Bに供給される。加熱装置14Bは、2次ヘリウムの熱エネルギーにより3次ヘリウムを加熱する。加熱された3次ヘリウムは、熱媒体供給経路L61により高温水蒸気電解装置13のケース13dの内部に供給され、水素ガス拡散電極層13bおよび酸素ガス拡散電極層13cを加熱する。水素ガス拡散電極層13bおよび酸素ガス拡散電極層13cを加熱した3次ヘリウムは、熱媒体供給経路L62により戻される。一方、3次ヘリウムを加熱した2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L18により蒸気発生器31に供給される。
【0050】
そのため、水素製造システム10Bは、加熱装置14Bとして、2次ヘリウムと3次ヘリウムとの間で熱交換を行う熱交換器を設けたことで、2次ヘリウムの熱媒体供給経路L15,L18の簡素化を図ることができる。
【0051】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る水素製造システムは、600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器12と、熱媒体で加熱された水蒸気を用いて水素を製造する高温水蒸気電解装置13と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置13を加熱する加熱装置14とを備える。
【0052】
第1の態様に係る水素製造システムによれば、600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置13を加熱し、600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱し、高温水蒸気を高温水蒸気電解装置13に供給して電気分解により水素を製造する。そのため、火力発電システムなどにより生成した電気エネルギーの使用量を低減して二酸化炭素の発生を抑制することができると共に、エネルギコストの低減を図ることができる。
【0053】
第2の態様に係る水素製造システムは、加熱装置14,14Bが、高温水蒸気電解装置13が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う。これにより、外部から高温水蒸気電解装置13への熱エネルギーの供給量を減少させることができる。
【0054】
第3の態様に係る水素製造システムは、水蒸気を生成して水蒸気供給経路L32,L33,L34により高温水蒸気電解装置13,13Bに供給する蒸気発生器31を有し、熱交換器12は、水蒸気供給経路L32,L33に設けられる第1熱交換器32と、水蒸気供給経路L33,L34における第1熱交換器32より下流側に設けられる第2熱交換器33とを有し、熱媒体は、第2熱交換器33から第1熱交換器32に供給される。これにより、熱媒体は、下流側の第2熱交換器33から上流側の第1熱交換器32に供給することで、熱媒体の熱エネルギーを有効的に使用することができる。
【0055】
第4の態様に係る水素製造システムは、水蒸気を生成して水蒸気供給経路L32,L33,L34により高温水蒸気電解装置13,13Bに供給する蒸気発生器31を有し、熱交換器12は、水蒸気供給経路L32,L33に設けられる第1熱交換器32と、水蒸気供給経路L33,L34における第1熱交換器32より下流側に設けられる第2熱交換器33とを有し、熱媒体は、第1熱交換器32に供給されると共に、第2熱交換器33から加熱装置14に供給される。これにより、熱媒体供給経路L51,L52の長さを短くして簡略化することができる。
【0056】
第5の態様に係る水素製造システムは、高温水蒸気電解装置13として、電解質層13aと、水素ガス拡散電極層13bと、酸素ガス拡散電極層13cとが設けられ、加熱装置14は、水素ガス拡散電極層13bおよび酸素ガス拡散電極層13cを加熱する。これにより、外部から高温水蒸気電解装置13への熱エネルギーの供給量を減少させることができる。
【0057】
第6の態様に係る水素製造システムは、気体を酸素ガス拡散電極層13cに供給する気体供給装置41と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて酸素ガス拡散電極層13cに供給される気体を加熱する気体加熱装置42とを有する。これにより、高温水蒸気電解装置13の温度を低下させることなく、高温水蒸気電解装置13で生成された酸素を効率良く排出することができる。
【0058】
第7の態様に係る水素製造システムは、熱エネルギーを発生可能な熱源11としては、高温ガス炉があり、熱交換器12は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する。これにより、二酸化炭素の発生量を低減することができる。
【0059】
第8の態様に係る水素製造システムは、熱エネルギーを発生可能な熱源11としては、高温ガス炉があり、加熱装置14,14Bは、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより高温水蒸気電解装置13を加熱する。これにより、二酸化炭素の発生量を低減することができる。
【0060】
第9の態様に係る水素製造方法は、600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する工程と、熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて高温水蒸気電解装置13,13Bを加熱する工程と、熱媒体で加熱された水蒸気を用いて高温水蒸気電解装置13,13Bにより水素を製造する工程とを有する。これにより、火力発電システムなどにより生成した電気エネルギーの使用量を低減して二酸化炭素の発生を抑制することができると共に、エネルギコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
10,10A,10B 水素製造システム
11 熱源
12 熱交換器
13 高温水蒸気電解装置
14,14B 加熱装置
21 中間熱交換器
22 供給ヘッダ
23 戻りヘッダ
24 ファン
31 蒸気発生器
32 第1熱交換器
33 第2熱交換器
41 気体供給装置
42 気体加熱装置
43 ファン
44 熱交換器
L11 循環経路
L12 供給経路
L13 戻り経路
L14,L15,L16,L17,L18,L19,L20,L21,L51,L52,L61,L62 熱媒体供給経路
L31 水供給経路
L32 第1水蒸気供給経路
L33 第2水蒸気供給経路
L34 第3水蒸気供給経路
L35 水素ガス排出経路
L36 酸素ガス排出経路
L37 電力供給経路
L41,L42,L43 気体供給経路
図1
図2
図3
図4