(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064593
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】レーザ共振器及びレーザ共振器の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/137 20060101AFI20230501BHJP
H01S 3/091 20060101ALI20230501BHJP
H01S 3/08 20230101ALI20230501BHJP
【FI】
H01S3/137
H01S3/091
H01S3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174948
(22)【出願日】2021-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月26日、https://www.osapublishing.org/oe/fulltext.cfm?uri=oe-28-23-33994
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】長岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 亨
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅守
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172CC10
5F172EE01
5F172NN02
5F172NN24
5F172NN33
5F172NP04
5F172NQ09
(57)【要約】
【課題】主要な2つのモードの影響度が高いレーザ光を生成可能なレーザ共振器を提供する。
【解決手段】レーザ共振器1は、媒質容器11と、第1光学素子17と、第2光学素子20と、アクチュエータ(第1アクチュエータ18、第2アクチュエータ21)と、光計測器22と、処理装置30と、を備える。媒質容器11は、少なくとも第1モード、第2モードを含む光を発生させる。アクチュエータは、第1光学素子17及び第2光学素子20の少なくとも一方を共振光路に沿って移動させて共振器長を変化させる。光計測器22は、共振光路によって共振する光の出力を計測する。処理装置30は、光計測器22が計測した出力と計測時間の関係をフーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係に変換し、媒質容器11と第1光学素子17の距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に基づいて、アクチュエータを動作させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にレーザ媒質を有し、励起光が照射されることで誘導放出により、少なくとも第1モード、第2モードを含む光を発生させる媒質容器と、
前記媒質容器で発生した光を共振させる共振光路の第1端部に位置し、当該光を反射する第1光学素子と、
前記共振光路の第2端部に位置し、当該光を反射する第2光学素子と、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方を前記共振光路に沿って移動させ共振器長を変化させるアクチュエータと、
前記共振光路によって共振する光の出力を計測する光計測器と、
前記光計測器が計測した出力と計測時間の関係をフーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係に変換し、前記媒質容器と前記第1光学素子との距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に基づいて、前記アクチュエータを動作させる処理装置と、
を備えるレーザ共振器。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ共振器であって、
前記処理装置は、前記媒質容器と前記第1光学素子との距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に対する、第3モードに起因する周波数のパワースペクトルの値の割合が小さくなるように前記アクチュエータを動作させるレーザ共振器。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ共振器であって、
前記処理装置は、前記媒質容器と前記第1光学素子との距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に対する、前記第3モードに起因する周波数のパワースペクトルの値の割合である第3モード影響度を算出し、前記第3モード影響度が最小となるように前記アクチュエータを動作させるレーザ共振器。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ共振器であって、
前記処理装置は、前記アクチュエータを動作させて前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方を移動させながら前記第3モード影響度を断続的に算出し、前記第3モード影響度が最小である位置に前記第1光学素子及び前記第2光学素子を合わせるレーザ共振器。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のレーザ共振器であって、
前記光計測器は、前記媒質容器から前記第1光学素子又は前記第2光学素子に向かう光を分岐させた分岐光を計測するレーザ共振器。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のレーザ共振器であって、
前記媒質容器の光路方向の中心における、前記第1モードと前記第2モードの位相差が88度以上92度以下であるレーザ共振器。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のレーザ共振器であって、
前記レーザ媒質はセシウムであり、
前記媒質容器の内部の前記レーザ媒質の圧力が100kPa以下であるレーザ共振器。
【請求項8】
内部にレーザ媒質を有する媒質容器に励起光を照射することで誘導放出により、少なくとも第1モード、第2モードを含む光を発生させ、
前記媒質容器で発生した光が共振光路で共振した光の出力を計測し、
計測した出力と計測時間の関係をフーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係に変換し、
前記媒質容器と、前記媒質容器で発生した光を共振させる共振光路の第1端部に位置する第1光学素子と、の距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に基づいて、前記第1光学素子と、前記共振光路の第2端部に位置する第2光学素子と、の少なくとも一方を前記共振光路に沿って移動させるレーザ共振器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、レーザ共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、共振器長を調整可能なレーザ共振器を開示する。特許文献1には、共振器長を適切にすることにより、縦方向の2つのモードを有しつつ別のモードを抑制するため、ノイズ特性を改善できると記載されている。具体的には、特許文献1の共振器は、2モードになるよう設計された共振器と周波数倍化のための共振器を備え、周波数倍化のための共振器から出力されたレーザ光の出力に基づいて、当該レーザ光の出力の強度が最大となるように、2モードになるよう設計された共振器長を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、共振器長を制御する際に、出力されたレーザ光の強度にしか着目しておらず、その結果、2つのモードの影響度が高いレーザを生成できない場合があるため、改善の余地がある。
【0005】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、主要な2つのモードの影響度が高いレーザ光を生成可能なレーザ共振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本出願の第1の観点によれば、以下の構成のレーザ共振器が提供される。即ち、レーザ共振器は、媒質容器と、第1光学素子と、第2光学素子と、アクチュエータと、光計測器と、処理装置と、を備える。前記媒質容器は、内部にレーザ媒質を有し、励起光が照射されることで誘導放出により、少なくとも第1モード、第2モードを含む光を発生させる。前記第1光学素子は、前記媒質容器で発生した光を共振させる共振光路の第1端部に位置し、当該光を反射する。前記第2光学素子は、前記共振光路の第2端部に位置し、当該光を反射する。前記アクチュエータは、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方を前記共振光路に沿って移動させ共振器長を変化させる。前記光計測器は、前記共振光路によって共振する光の出力を計測する。前記処理装置は、前記光計測器が計測した出力と計測時間の関係をフーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係に変換し、前記媒質容器と前記第1光学素子との距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に基づいて、前記アクチュエータを動作させる。
【0008】
本出願の第2の観点によれば、以下のレーザ共振器の制御方法が提供される。即ち、内部にレーザ媒質を有する媒質容器に励起光を照射することで誘導放出により、少なくとも第1モード及び第2モードを含む光を発生させる。前記媒質容器で発生した光が共振光路で共振した光の出力を計測する。計測した出力と計測時間の関係をフーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係に変換する。前記媒質容器と、前記媒質容器で発生した光を共振させる共振光路の第1端部に位置する第1光学素子と、の距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に基づいて、前記第1光学素子と、前記共振光路の第2端部に位置する第2光学素子と、の少なくとも一方を前記共振光路に沿って移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本出願によれば、主要な2つのモードの影響度が高いレーザ光を生成可能なレーザ共振器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】レーザ光の各モードがレーザ共振器で干渉することを示す説明図。
【
図3】レーザ光の各モードの数値解析の結果を示すグラフ。
【
図7】位置調整処理による最適化の前後における内部出力、パルス出力、及びフーリエパワースペクトルを示すグラフ。
【
図8】複数のケースに対して主モードの出現周波数を算出した結果を示す表。
【
図9】レーザ媒質の圧力とSN比の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、レーザ共振器1の構成について説明する。
【0012】
レーザ共振器1は、誘導放出によりアルカリレーザを発生させてパルスレーザとして出力する。ただし、レーザ共振器1は、アルカリレーザ用に限られない。例えば、後述の二重縦モードが実現可能であれば、アルカリ金属以外の金属蒸気レーザ、気体レーザ、又は、固体レーザ等にも本技術が適用できる。また、パルスレーザに限られず、連続発振レーザにも本技術が適用できる。
【0013】
図1に示すように、レーザ共振器1は、光源10を備える。光源10は、例えばレーザダイオードであり、励起光101を発生させる。励起光とは、レーザ媒質を励起させる光である。本明細書において光とは、可視光に限られず、赤外光及び紫外光等を含む広義の光を意味する。光源10が発生させた励起光101の光路には、媒質容器11と、第1ダイクロイックミラー12と、第2ダイクロイックミラー13と、光ダンパ14と、が配置されている。光源10が発生させた励起光101は第2ダイクロイックミラー13、媒質容器11、第1ダイクロイックミラー12の順に透過し、光ダンパ14で吸収される。
【0014】
媒質容器11は、レーザ媒質を収容する容器である。本実施形態では蒸気状のアルカリ金属、具体的にはセシウム蒸気が封入されている。上述したようにレーザ共振器1は様々なレーザに適用でき、その場合は適用するレーザの種類に応じたレーザ媒質が媒質容器11に収容される。励起光101は媒質容器11の内部を通過する。これにより、媒質容器11内のレーザ媒質が励起されてエネルギー準位が高くなる。その後にレーザ媒質のエネルギー準位が下がることにより、差分のエネルギーに相当する光を放出する。媒質容器11から放出された光はレーザ共振器1によって共振する。以下では、誘導放出により媒質容器11で発生した光及びそれを共振させた光をまとめてレーザ光102と称する。
【0015】
第1ダイクロイックミラー12及び第2ダイクロイックミラー13は、第1波長域の光を反射し、第2波長域の光を透過させる。本実施形態では、第1波長域にレーザ光102の波長が含まれるように、かつ、第2波長域に励起光101の波長が含まれるような仕様の第1ダイクロイックミラー12及び第2ダイクロイックミラー13が選択されている。これにより、第1ダイクロイックミラー12及び第2ダイクロイックミラー13は、励起光101を透過させる。
【0016】
第1ダイクロイックミラー12は、反射面が媒質容器11を向くように、かつ第1ダイクロイックミラー12で反射したレーザ光102が偏光ビームスプリッタ15に照射されるような姿勢で、媒質容器11と偏光ビームスプリッタ15との間に配置される。第2ダイクロイックミラー13は、反射面が媒質容器11を向くように、かつ第2ダイクロイックミラー13で反射したレーザ光102がミラー19に照射されるような姿勢で、媒質容器11とミラー19との間に配置される。このため、レーザ光102は第1ダイクロイックミラー12及び第2ダイクロイックミラー13で反射する。第1ダイクロイックミラー12で反射したレーザ光102の光路には、レーザ光102が通過する順に、偏光ビームスプリッタ15と、ポッケルスセル16と、第1光学素子17と、が配置されている。
【0017】
偏光ビームスプリッタ15は、レーザ光102の偏光に応じて、レーザ光102の透過と反射が切り替わる光学素子である。例えば、偏光ビームスプリッタ15は、S偏光のレーザ光102を透過させて、P偏光のレーザ光102を反射する。S偏光とP偏光に対する偏光ビームスプリッタ15の性質は反対であってもよい。詳細は後述するが、偏光ビームスプリッタ15がレーザ光102を反射させることでレーザ光102が共振光路を往復し、偏光ビームスプリッタ15がレーザ光102を透過させることでレーザ光102が外部に出力される。偏光ビームスプリッタ15は、偏光ビームスプリッタ15で反射したレーザ光102がポッケルスセル16を透過し第1光学素子17に照射されるような姿勢で、第1ダイクロイックミラー12とポッケルスセル16の間に配置される。
【0018】
ポッケルスセル16は、レーザ光102を偏光させずに透過させる通常状態と、レーザ光102を偏光させて透過させる偏光状態と、を電圧の印加により切替可能である。ポッケルスセル16を偏光状態にしてレーザ光102を透過させることにより、レーザ光102が45度偏光する。
【0019】
第1光学素子17は、ミラー又はプリズムであり、レーザ光102を反射する。第1光学素子17がミラーである場合、平面鏡であってもよいし、凹面鏡であってもよい。第1光学素子17は、共振光路の第1端部である。第1光学素子17は、第1光学素子17で反射したレーザ光102が同じ経路を戻って媒質容器11に進行するような姿勢で配置されている。第1光学素子17で反射したレーザ光102は、同じ経路を戻って媒質容器11に向かって進行する。
【0020】
第1光学素子17には第1アクチュエータ18が取り付けられている。第1アクチュエータ18は、入力された駆動信号に応じて駆動される。第1アクチュエータ18は、例えば、ボールネジ、リニアモータ、又はソレノイド等の機構により直線運動する。これにより、第1光学素子17を共振光路に沿って、つまり第1光学素子17に入射するレーザ光102の光軸方向に沿って移動させることができる。第1光学素子17が共振光路に沿って移動することにより、共振器長が変化する。第1アクチュエータ18を動作させるタイミング及び移動量については後述する。
【0021】
偏光ビームスプリッタ15及びポッケルスセル16は、光スイッチング素子として機能する。具体的には、ポッケルスセル16に電圧を印加して偏光状態にさせることにより、レーザ光102がポッケルスセル16を往復する際に偏光が90度変化する。その結果、レーザ光102が偏光ビームスプリッタ15を透過する。偏光ビームスプリッタ15を透過したレーザ光102は、偏光ビームスプリッタ15を挟んでポッケルスセル16の反対側に配置される出力ミラー23によって案内されて出力される。つまり、ポッケルスセル16に電圧を印加している間にポッケルスセル16を透過したレーザ光102が外部に出力される。そして、ポッケルスセル16に高速で電圧値が変化するパルス信号を入力することにより、パルス状のレーザ光102が外部に出力される。
【0022】
このように、媒質容器11の外側に光スイッチング素子を設け、光スイッチング素子によりレーザ光102の方向を変えて外部に出力する方法がキャビティダンピング法である。キャビティダンピング法を用いることによりパルス状のレーザ光102を出力できる。なお、パルス状のレーザ光102を出力する方法としては、公知のQスイッチング法等がある。しかし、アルカリレーザではレーザ遷移の放射寿命が短いためQスイッチング法では十分なエネルギーが蓄積できない。そのため、本実施形態のようにキャビティダンピング法によりパルス状のレーザ光102を外部に出力することが好ましい。
【0023】
また、本実施形態で示した光スイッチング素子は一例であり、別の光学素子又はその組合せにより光スイッチング素子を構成してもよい。なお、アルカリレーザ以外を採用する場合は、Qスイッチング法等によりパルス状のレーザ光102を外部に出力してもよい。
【0024】
第2ダイクロイックミラー13で反射したレーザ光102の光路には、レーザ光102が通過する順に、ミラー19と、第2光学素子20と、が配置されている。
【0025】
ミラー19は、第2ダイクロイックミラー13と第2光学素子20の間に配置されている。ミラー19は、ミラー19に照射されたレーザ光102を第2光学素子20に向かって反射するような姿勢で配置されている。
【0026】
第2光学素子20は、共振光路の第2端部である。つまり、共振光路は、第1光学素子17と第2光学素子20の間のレーザ光102の光路である。従って、共振器長は、第1光学素子17と第2光学素子20の間の光路の長さである。第2光学素子20は、第1光学素子17と同様の構成であるため、説明を省略する。また、第2光学素子20には第2アクチュエータ21が取り付けられている。第2アクチュエータ21は第1アクチュエータ18と同様の構成であるため、説明を省略する。本実施形態では、第1光学素子17と第2光学素子20の両方にアクチュエータが取り付けられているが、何れか一方のみにアクチュエータが取り付けられていてもよい。
【0027】
ミラー19に照射されるレーザ光102は一部が透過する。つまり、ミラー19に照射されたレーザ光102は、ミラー19を透過するレーザ光102と、ミラー19で反射するレーザ光102と、に分岐する。ミラー19を透過したレーザ光102の分岐光は光計測器22によって計測される。光計測器22はレーザ光102の出力に応じた電流信号又はそれを変換した電圧信号を出力する。言い換えれば、光計測器22はレーザ光102の出力の時間変化を計測して出力する。なお、
図1では第2ダイクロイックミラー13からミラー19に照射され透過した光を光計測器22によって計測しているが、レーザ共振器1の内部であるならば、どの場所でレーザ光102を計測しても良い。例えば、ミラー19を挟んで第2光学素子20と反対側に光計測器22を配置し、第2光学素子20からミラー19に照射されてミラー19を透過した光を光計測器22によって計測しても良い。
【0028】
本実施形態のレーザ共振器1の共振光路は一例であり、光学素子の追加、変更、又は省略がされてもよい。
【0029】
レーザ共振器1は、処理装置30を備える。処理装置30は、光計測器22の計測結果に基づいて演算を行い、演算結果に基づいて第1アクチュエータ18及び第2アクチュエータ21の少なくとも一方を動作させることにより、共振器長が適切な値になるように変化させる制御を行う。
【0030】
次に、レーザ光102のモード、特に二重縦モードについて説明する。
【0031】
レーザ光102には、共振器長で決まる一つ以上の定在波が存在し、この定在波を縦モードと称する。縦モードのうち、エネルギー又は出力の主体となるモードを主モードと称し、それ以外の副次的なモードを副モードと称する。副モードは主モードに対するノイズと捉えることもできる。
【0032】
主モードが2つの場合を二重縦モードと称し、それぞれの主モードを第1モード及び第2モードと称する。第1モード及び第2モードは、学術的に定義された一次モード及び二次モードとは別の概念である。二重縦モードの場合の全ての副モードを第3モードと称する。第3モードは複数のモードの総称である。二重縦モードの場合、例えば、第1モード及び第2モードは、副モードと比較して内部強度(kW/cm2)が20倍以上になる。
【0033】
主モードが1つの場合を単一縦モードと称する。レーザ媒質が均一に広がっている場合は単一縦モードが発振し易いが、空間ホールバーニングという現象が原因で、二重縦モードが発振することもある。二重縦モードは、単一縦モードと比較してレーザ光102の出力が大きくなり易いが、発振が安定しない場合があり得る。本実施形態のレーザ共振器1は、共振器長等を適切な値に変更することにより、安定した二重縦モードでレーザを発振させる。
【0034】
以下、
図2を参照して、複数のモードの干渉について説明する。
【0035】
図2において、第1光学素子17をM1で示し、第2光学素子20をM2で示し、媒質容器11の中央から第1光学素子17までの距離をbで示し、媒質容器11の中央から第2光学素子20までの距離をaで示し、共振器長をLで示す。共振光路では、レーザ光102は、第1光学素子17と第2光学素子20の間の定在波として存在する。
【0036】
図2には、β、β+1、β+2の3つのモードの電場の変化及び出力が示されている。βは有理整数である。各モードで光の位相が異なるため、各モード間には位相差が存在する。そのため、出力を強め合う部分と打ち消し合う部分とが存在する。また、
図2の左上にはb/L=1/3のときの媒質容器の中央の位相差を示すグラフが示されている。
図2の右上にはb/L=1/2のときの媒質容器11の中央の位相差を示すグラフが示されている。
【0037】
ここで、レーザ共振器1で共振するレーザ光102のある瞬間の振動モードの空間電界分布は、以下の式(1)で記述される。
E
β(z)=2E
0sin(βπz/L) ・・・(1)
ただし、E
0は電界振幅、zは第1光学素子17から媒質容器11の中心までの距離である。また、媒質容器11の中央の位置では、β+j番目のモードは、β番目のモードと比較して、以下の式(2)に示す分だけ光の位相が進んでいる。なお、以下の式(2)及び式(3)において、Δφの単位はラジアンである。
Δφ=jπb/L ・・・(2)
Δφは2つのモード間の媒質容器11の中央の位置における位相差である。
図2に示すように、2つのモードの位相差が以下の式(3)を満たす場合、2つの縦モード間の干渉は最小になる。
Δφ=mπ/2 (m=1,3,5...) ・・・(3)
式(2)及び式(3)により、2つの縦モード間の干渉が最小となる場合の、媒質容器11の中央から第1光学素子17までの距離bと共振器長Lの関係を示す以下の式(4)が得られる。
b/L=m/2n (n=1,2,3... m=1,3,5...)・・・(4)
【0038】
次に、
図3から
図5を参照して、安定な二重縦モードが発生するときの位相差等の条件について説明する。以下の説明では、モードについて「位相差」と称した場合、「媒質容器11の中央の位相差」を指す。
【0039】
図3には、レーザ出力及び各モードの位相差を数値解析により算出した結果が示されている。
図3のグラフにおいて、丸印が付されたモードが主モードであり、それ以外のモードが副モードである。両グラフとも媒質容器11の中央から第1光学素子17までの距離bは1/3mとした。左のグラフは共振器長Lが2.0mの場合であり、b/L=1/6であるため、上記の式(4)を満たしている。つまり、2つの縦モード間の干渉は最小になっている。一方、右のグラフは共振器長Lが5.0mの場合であり、b/L=1/15であるため、上記の式(4)を満たさない。つまり、2つの縦モード間の干渉は最小ではない。Oddは位相差0度にモードを持つ状態で、Evenは位相差0度にモードを持たない状態である。今回の数値解析の条件では、共振器長が200nm変化するとOddとEvenが入れ替わる。
【0040】
図3の左のグラフのEvenのみ二重縦モードが発生しており、
図3の左のグラフのOdd、
図3の右のグラフのOdd及びEvenは二重縦モードが発生していない状態である。二重縦モードが発生している
図3の左のグラフのEvenに示すように、二重縦モードが発生し、かつ、主モード以外の副モードの出力が小さい場合にレーザ出力が大きくなることが分かる。また、二重縦モードが発生する場合、主モードである第1モード及び第2モードの位相差は約90度であること、二重縦モードを発生させるためにはEvenの状態にする必要があることが分かる。共振器長を常にEvenの状態にするため、第1アクチュエータ18又は第2アクチュエータ21の最小制御距離は200nm以下であることが必要になる。最小制御距離とは、処理装置30による第1アクチュエータ18又は第2アクチュエータ21の制御において、第1アクチュエータ18又は第2アクチュエータ21の移動量として処理装置30が指定できる距離の最小値である。
【0041】
図4は、位相差とSN比の関係を示すグラフである。位相差は、β、β+1のように隣り合う縦モード間の位相差を示す。SN比は、第1モード及び第2モードの振幅に対する第3モードの振幅である。つまり、SN比が低いほど、第3モードの影響が低い、言い換えれば二重縦モードのレーザ光102が発振する可能性が高い。
【0042】
図4に示すように、隣り合う縦モード間の位相差が15度及び30度の場合と比較して、位相差が90度の場合は、SN比が低く、二重縦モードのレーザ光102が発振する可能性が高いことが分かる。
【0043】
図5は、第1モードと第2モードの位相差が90度付近でのSN比を示すグラフである。
図5に示すように、第1モードと第2モードの位相差が90度のときにSN比が最小となる。また、位相差が88度以上92度以下の範囲にあるときは、その範囲外にあるときと比較してSN比が大幅に低いことが分かる。以上により、第1モードと第2モードの位相差は88度以上92度以下であることが好ましく、90度であることが更に好ましい。
【0044】
次に、
図6から
図8を参照して、アクチュエータ18,21を制御して共振器長を調整し、安定した二重縦モードのレーザ光102を発振させる処理について説明する。
図6は位置調整処理のフローチャートである。
図7は位置調整処理による最適化の前後における内部出力、パルス出力、及びフーリエパワースペクトルを示すグラフである。
図8は複数のケースに対して主モードの出現周波数を算出した結果を示す表である。
【0045】
以下では、アクチュエータ18,21を制御して共振器長を調整する処理を位置調整処理と称する。初めに、処理装置30は、光計測器22によるレーザ光102の計測結果を取得する(
図6のS101)。上述したように、この計測結果は、レーザ光102の出力と計測時間の関係を示す。計測時間とは、レーザ光102が計測された時間、言い換えれば計測時刻である。
図7に示す内部出力91は、光計測器22の計測結果に相当する。
【0046】
次に、処理装置30は、光計測器22の計測結果に対してフーリエ変換を行う(S102)。このフーリエ変換により、レーザ光102のパワースペクトルと周波数の関係が得られる。
図7に示すフーリエパワースペクトル93は、フーリエ変換により得られる、レーザ光102のパワースペクトルと周波数の関係に相当する。
【0047】
フーリエ変換により得られた周波数は、縦モードの発生周波数ではなく、レーザ共振器1で発生している多数の定在波の合成波の周波数である。これらの定在波は周波数が異なるため、定在波が干渉することにより、うなりが発生する。また、フーリエパワースペクトル93のうちパワースペクトルが高いピークが主モードに起因する。
図7のフーリエパワースペクトル93において、丸印が付されたモードが主モードである。二重縦モードの場合において、パワースペクトルが高いピークは、第1モード及び第2モードの合成波に相当する。例えば、
図7の左上のフーリエパワースペクトル93において主モードの周波数の逓倍で現れるピークは、フーリエ変換が原因で現れるピークであり、主モードに関連するピークである。主モードに関連するピークのうち最も小さい周波数を「主モードの出現周波数」と称する。また、主モードに関連するピーク以外の小さなピークは、副モード、言い換えれば第3モードを示す。
【0048】
次に、処理装置30は、主モードの出現周波数を処理装置30の記憶装置から読み出す(S103)。主モードの出現周波数は、予め以下の方法によって算出されて処理装置30の記憶装置に記憶されている。なお、主モードの出現周波数を予め算出して記憶することに代えて、位置調整処理を行う段階で主モードの出現周波数を算出してもよい。フーリエパワースペクトル93において、第1モードと第2モードの位相差が90度となる場合、つまり二重縦モードの場合の主モードの出現周波数は、以下に示す式(5)、式(6)、及び式(7)に基づいて算出できる。
Δφ=180・b/L ・・・(5)
Δv=c/2L ・・・(6)
vdual=Δv×90÷Δφ=(c/2L)×90÷Δφ=(c/2L)・L/2b=c/4b ・・・(7)
式(5)は、β番目のモードとβ+1番目のモードとの位相差を示す式であり、具体的には、式(2)のj=1のときの位相差である。なお、式(5)及び式(7)においてΔφの単位は度である。式(6)はモード間隔を示す式である。モード間隔とは、隣り合う縦モード又は定在波の周波数の差である。なお、式(6)のcは光速である。式(7)は、レーザ共振器1で発生している多数の定在波の合成波において、主モードの出現周波数を示す式である。式(7)が示す通り、第1モードと第2モードの位相差が90度となる場合、主モードの出現周波数は媒質容器11の中央から第1光学素子17までの距離b、及び光速cにより算出できる。
【0049】
例えば、光速c=30万km/sとすると、
図8に示すケース1~4においては、媒質容器11の中央から第1光学素子17までの距離bは1/3mであるため、主モードの出現周波数は光速c/(2×1/3)=約225MHzとして算出される。
【0050】
次に、処理装置30は、主モードのパワースペクトルの値と第3モードのパワースペクトルの値とを設定する(S104)。具体的には、処理装置30は、予め算出した主モードの出現周波数の近傍において最も高いパワースペクトルを抽出し、当該パワースペクトルの値を主モードのパワースペクトルの値として設定する。例えば、フーリエ変換により得られたデータ群に対してカーブフィッティングにより近似曲線を求め、主モードの出現周波数の近傍において最も高いピークのパワースペクトルの値を主モードのパワースペクトルの値として設定しても良い。次に、処理装置30は、第3モードに起因するピークに基づいて、第3モードのパワースペクトルの値を算出する。主モードのパワースペクトルの値に対する第3モードのパワースペクトルの値をパワースペクトル比と称する。パワースペクトル比は、上述したSN比と同じであり、かつ、第3モード影響度に相当する。パワースペクトル比は、レーザ光102における第3モードの影響を示しており、値が小さいほど第3モードの影響が小さく、主要な2つのモード(第1モードと第2モード)の影響度が高い。上述したように、レーザ光102に含まれる第3モードは、主モードと比較して出力が大幅に小さい。そのため、レーザ光102における第3モードをノイズと捉えることもできる。同様に、フーリエパワースペクトル93において第3モードに起因するパワースペクトルもノイズと捉えることができる。
【0051】
次に、処理装置30は、パワースペクトル比が最小となるようにアクチュエータ18,21を制御する(S105)。具体的には、処理装置30は、第1アクチュエータ18又は第2アクチュエータ21を制御することにより、第1光学素子17又は第2光学素子20を移動させながら、パワースペクトル比を断続的に算出して記憶する。その後、処理装置30は、パワースペクトル比が最小となった位置に第1光学素子17及び第2光学素子20を合わせる。以上の位置調整処理を行うことにより、第3モードの影響を小さくできるので、レーザ共振器1は、安定した二重縦モードのレーザ光102が発振できる。
【0052】
次に、共振器長を変化させたときのレーザ光102の出力を計測した実験について説明する。
図7の上の4つのグラフは、共振器長が0.69m,1.0m,2.0m,5.0m、媒質容器11の中央から第1光学素子17までの距離bが1/3mの条件でレーザ発振を行い、レーザ共振器1で共振されるレーザ光102の出力である内部出力91と、出力ミラー23の案内によって外部に出力されるパルス状のレーザ光102の出力であるパルス出力92と、を計測した結果を示す。更に、内部出力91に対してフーリエ変換を行って算出されるフーリエパワースペクトル93が、各グラフの右上に記載されている。
【0053】
図7の下部には、位置調整処理を行って、第1光学素子17及び第2光学素子20の位置を最適化したときの実験結果が示されている。
図7に示すように、位置調整処理を行うことにより、高いパルス出力92を実現できることが分かる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1光学素子17及び第2光学素子20の何れか一方を移動させるが、第1光学素子17及び第2光学素子20の両方を移動させてもよい。
【0055】
また、予め実験的又は数値計算により、パワースペクトル比が最小になるときの第1光学素子17及び第2光学素子20の位置を求めてもよい。この場合、求めた位置が第1光学素子17及び第2光学素子20の初期位置となる。この場合、処理装置30は、第1光学素子17及び第2光学素子20の位置を微調整するだけで、パワースペクトル比が最小になるときの第1光学素子17及び第2光学素子20の位置を探索できる。
【0056】
パワースペクトル比が最小になるときの第1光学素子17及び第2光学素子20の位置、つまり共振器長は、環境に応じて変化する可能性がある。環境の例としては、共振器周囲の温度、気圧、又はレーザ共振器1自体の姿勢がある。従って、レーザ共振器1の出荷時に位置合わせを行った場合でも、レーザ共振器1の設置後に再び位置調整処理を行うことが好ましい。また、その後も所定のタイミングで位置調整処理を行うことが好ましい。
【0057】
次に、レーザ媒質の圧力とSN比の関係について説明する。
図9には、レーザ媒質がセシウムの場合において、媒質容器11内のレーザ媒質の圧力、レーザ光102の出力、及びSN比の関係を計測した実験結果が示されている。
図9に示すように、レーザ媒質の圧力が360Torr、760Torr(=1kPa)、1520Torrの順番でSN比が高くなる。レーザ光102の使用用途及び他の条件にも依存するが、この実験結果により、レーザ媒質がセシウムの場合は媒質容器11の圧力が760Torr(=1kPa)以下であることが好ましいことが分かる。
【0058】
なお、本開示にて開示する処理装置30をはじめとする各要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態のレーザ共振器1は、媒質容器11と、第1光学素子17と、第2光学素子20と、アクチュエータ(第1アクチュエータ18、第2アクチュエータ21)と、光計測器22と、処理装置30と、を備える。媒質容器11は、内部にレーザ媒質を有し、励起光101が照射されることで誘導放出により、少なくとも第1モード、第2モードを含む光を発生させる。第1光学素子17は、媒質容器11で発生した光を共振させる共振光路の第1端部に位置し、光を反射する。第2光学素子20は、共振光路の第2端部に位置し、光を反射する。アクチュエータ18,21は、第1光学素子17及び第2光学素子20の少なくとも一方を共振光路に沿って移動させ共振器長を変化させる。光計測器22は、共振光路によって共振する光の出力を計測する。処理装置30は、光計測器22が計測した出力と計測時間の関係をフーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係に変換し、媒質容器11と第1光学素子17の距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に基づいて、アクチュエータ18,21を動作させる。
【0060】
これにより、第1モード及び第2モードが優勢であるレーザ光102を生成できる。特に、フーリエ変換によりパワースペクトルと周波数の関係を算出することにより、第1モード及び第2モードに対する第3モードの影響度を簡単に求めることができる。
【0061】
本実施形態のレーザ共振器1において、処理装置30は、媒質容器11と第1光学素子17の距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に対する、第3モードに起因する周波数のパワースペクトルの値の割合が小さくなるようにアクチュエータ18,21を動作させる。
【0062】
これにより、第1モード及び第2モードに対する第3モードの影響を具体的に見積もって、第1光学素子17及び第2光学素子20を適切な位置に合わせることができる。
【0063】
本実施形態のレーザ共振器1において、処理装置30は、媒質容器11と第1光学素子17の距離を基に算出される周波数のパワースペクトルの値に対する、第3モードに起因する周波数のパワースペクトルの値の割合である第3モード影響度を算出し、第3モード影響度が最小となるようにアクチュエータ18,21を動作させる。
【0064】
これにより、第1モード及び第2モードがより一層優勢であるレーザ光102を生成できる。
【0065】
本実施形態のレーザ共振器1において、処理装置30は、アクチュエータ18,21を動作させて第1光学素子17及び第2光学素子20の少なくとも一方を移動させながら第3モード影響度を断続的に算出し、第3モード影響度が最小である位置に第1光学素子17及び第2光学素子20を合わせる。
【0066】
簡単な処理により、第1モード及び第2モードが優勢であるレーザ光102を生成できる。
【0067】
本実施形態のレーザ共振器1において、光計測器22は、媒質容器11から第1光学素子17又は第2光学素子20に向かう光を分岐させた分岐光を計測する。
【0068】
媒質容器11を通過する光を計測する構成と比較して、簡単な構成で光を計測できる。
【0069】
本実施形態のレーザ共振器1において、媒質容器11の光路方向の中心における前記第1モードと前記第2モードの位相差が88度以上92度以下である。
【0070】
位相差を90度又はその近傍にすることにより、第1モード及び第2モードが優勢となり易い。
【0071】
本実施形態のレーザ共振器1において、レーザ媒質はセシウムである。媒質容器11の内部のレーザ媒質の圧力が100kPa以下である。
【0072】
圧力を上記の範囲に設定することにより、第1モード及び第2モードが優勢となり易い。
【0073】
以上に本出願の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0074】
上記実施形態の光計測器22は媒質容器11から第2光学素子20に向かうレーザ光102を計測するが、媒質容器11から第1光学素子17に向かうレーザ光102を計測してもよい。あるいは、媒質容器11を通る光を取り出して計測してもよい。
【0075】
これに代えて、処理装置30は、位置調整処理の前と比較してパワースペクトル比が小さくなるのであれば、パワースペクトル比の最小値を探索する必要は必ずしもない。
【0076】
上記実施形態では、モード間隔として周波数の間隔を用いたが、波長の間隔を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 レーザ共振器
11 媒質容器
17 第1光学素子
18 第1アクチュエータ
20 第2光学素子
21 第2アクチュエータ
22 光計測器
30 処理装置