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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064597
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
H04R9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174953
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】江上 勝彦
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BA06
5D012BB01
5D012BB03
5D012BB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振動板を含む可動部の移動状態を検知してフィードバック制御を行うスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカは、振動部に、振動板とボイスコイル7を有するボビン6が含まれており、ボビン6の内周面6aに部分リング形状の可動磁石21が固定されている。フレームと磁気回路部とで構成されている支持部には、磁気センサ22が設けられている。磁気センサ22は、支持部に設けられた固定磁場発生部材(磁気回路部)からの固定磁場成分H1と、可動磁石21からの可動磁場成分H2を検知し、2つの磁場成分H1,H2の検知出力から振動部の振動位置を測定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイスコイルおよび前記ボイスコイルとともに振動する振動板とを有する振動部と、前記ボイスコイルに磁束を与える磁気回路部が固定された支持部と、が設けられたスピーカにおいて、
前記振動部に、互いに極性が反する2つの磁極端部を有する可動磁場発生部材が設けられ、
前記支持部に、前記支持部に設けられた固定磁場発生部材から発せられる第1方向に向く固定磁場成分と、前記可動磁場発生部材から発せられる第2方向に向く可動磁場成分とを、互いに交差する向きの磁場として検知する磁気センサが設けられており、
前記振動部の振動方向と直交する平面で見たときに、
2つの前記磁極端部は、前記磁気センサを通って第1方向に延びる第1基準線を挟む位置に配置され、それぞれの前記磁極端部が、第2方向に向けて前記第1基準線から等距離に位置していることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記振動部に、前記ボイスコイルが巻かれた円筒状のボビンが設けられ、前記可動磁場発生部材が、前記ボビンの内側の空間内に配置されており、
2つの前記磁極端部は、前記第1基準線と前記ボイスコイルの内面との交点よりも、前記ボビンの内側に向けて離れた位置に配置されている請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
2つの前記磁極端部は、前記ボビンの中心を取って第2方向に延びる第2基準線と前記交点との間に位置している請求項2記載のスピーカ。
【請求項4】
2つの前記磁極端部は、前記磁気センサが実装されたセンサ基板の前記交点側の端部を通って第2方向に延びる第3基準線と、前記第2基準線との間に位置している請求項3記載のスピーカ。
【請求項5】
前記可動磁場発生部材は、前記ボビンの内周面に沿う部分リング形状である請求項2ないし4のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項6】
前記磁極端部は、ボイスコイルが巻かれたボビンの中心から延びる半径線に沿う磁極端面である請求項1ないし5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項7】
前記磁極端部は、第2方向と平行な磁極端面である請求項1ないし5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記磁極端部は、第1方向と平行な磁極端面である請求項1ないし5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項9】
前記可動磁石に、前記磁気センサに向かう湾曲部が形成されており、前記湾曲部の端部に磁極端面が形成されている請求項8記載のスピーカ。
【請求項10】
前記磁極端部となる磁極端面は、ボイスコイルが巻かれたボビンの中心から延びる半径線に沿う向きから、第1方向と平行な向きまでの範囲内のいずれかの向きに設定されている請求項1ないし5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項11】
固定磁場発生部材は、前記磁気回路部と兼用されている請求項1ないし10のいずれに記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板とボイスコイルを有する振動部の動作を磁気センサで検知することができるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
音響装置における従来のスピーカは、アンプから出力されるオーディオ信号をそのまま受け入れて音圧を再生する処理を行うだけであり、スピーカ自らがオーディオ信号に合わせた制御動作を行っていなかった。そのため、発音に歪が発生しやすく、音質のばらつきが生じやすかった。さらには、振動板の振幅が過大になったときに、振動板やダンパーなどが破損することもあった。
【0003】
上記の問題を解決するために、特許文献1には、磁気センサによって振動板の動きを検知してフィードバック制御を行うスピーカシステムが記載されている。
【0004】
このスピーカシステムは、磁気回路部を構成するプレートを有し、このプレートにおけるボイスコイルとの対向部に磁気センサであるホール素子が支持されている。磁気回路部のギャップ内の有効磁束密度がホール素子により検出され、その検出信号が増幅されてパワーアンプにフィードバックされる。パワーアンプからボイスコイルに駆動電流が与えられボイスコイルとともにボビンが振動すると、ギャップ内の有効磁束密度が、ボイスコイルに流れる電流およびボイスコイルに生じる逆起電力によって変化する。この有効磁束密度の変化をホール素子で検知しパワーアンプにフィードバックすることで、ボイスコイルに与えられる駆動電流の歪分が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57-184397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたスピーカシステムのフィードバック制御には、検知素子として光学検知素子やコイルなどよりも小型の素子であるホール素子が使用されているため、スピーカの寸法が過大になるのを防止でき、消費電力が増大するのも防止することができる。しかしながら、磁気回路部のギャップの有効磁束密度の変化をホール素子で検出する方式は、ボイスコイルやボビンの動きを直接に検知できないため、音の歪や音質のばらつきなどを高精度に補正することが難しい。
【0007】
また、特許文献1のスピーカシステムは、プレートにおけるボイスコイルとの対面部にホール素子を埋め込む構造であるため、ホール素子の取付け構造が複雑であり、組み立て作業も非効率的である。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、振動部に可動磁場発生部材を設け、支持部に設けられた磁気センサで、可動磁場発生部材からの可動磁場成分と固定磁場発生部材からの固定磁場成分とを、互いに交差する方向の磁場として検知することで、振動部の振動を高精度に検知することができるスピーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ボイスコイルおよび前記ボイスコイルとともに振動する振動板とを有する振動部と、前記ボイスコイルに磁束を与える磁気回路部が固定された支持部と、が設けられたスピーカにおいて、
前記振動部に、互いに極性が反する2つの磁極端部を有する可動磁場発生部材が設けられ、
前記支持部に、前記支持部に設けられた固定磁場発生部材から発せられる第1方向に向く固定磁場成分と、前記可動磁場発生部材から発せられる第2方向に向く可動磁場成分とを、互いに交差する向きの磁場として検知する磁気センサが設けられており、
前記振動部の振動方向と直交する平面で見たときに、
2つの前記磁極端部は、前記磁気センサを通って第1方向に延びる第1基準線を挟む位置に配置され、それぞれの前記磁極端部が、第2方向に向けて前記第1基準線から等距離に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のスピーカは、前記振動部に、前記ボイスコイルが巻かれた円筒状のボビンが設けられ、前記可動磁場発生部材が、前記ボビンの内側の空間内に配置されており、
2つの前記磁極端部は、前記第1基準線と前記ボイスコイルの内面との交点よりも、前記ボビンの内側に向けて離れた位置に配置されているものとして構成できる。
【0011】
本発明のスピーカは、2つの前記磁極端部が、前記ボビンの中心を取って第2方向に延びる第2基準線と前記交点との間に位置していることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のスピーカは、2つの前記磁極端部が、前記磁気センサが実装されたセンサ基板の前記交点側の端部を通って第2方向に延びる第3基準線と、前記第2基準線との間に位置していることが好ましい。
【0013】
本発明のスピーカは、前記可動磁場発生部材が、前記ボビンの内周面に沿う部分リング形状である。
【0014】
本発明のスピーカは、前記磁極端部が、前記ボビンの中心から延びる半径線に沿う磁極端面である。
【0015】
または本発明のスピーカは、前記磁極端部が、第2方向と平行な磁極端面である。
【0016】
あるいは本発明のスピーカは、前記磁極端部が、第1方向と平行な磁極端面である。
【0017】
この場合に、前記可動磁石に、前記磁気センサに向かう湾曲部が形成されており、前記湾曲部の端部に磁極端面が形成されていることが好ましい。
【0018】
すなわち、本発明のスピーカは、前記磁極端部となる磁極端面が、ボイスコイルが巻かれたボビンの中心から延びる半径線に沿う向きから、第1方向と平行な向きまでの範囲内のいずれかの向きに設定されていることが好ましい。
【0019】
本発明のスピーカは、例えば、固定磁場発生部材が、前記磁気回路部と兼用されているものとして構成できる。あるいは、固定磁場発生部材を磁気回路部とは別個に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスピーカは、振動部に設けられた可動磁場発生部材からの可動磁場成分と、磁気回路部などで構成される固定磁場発生部材からの固定磁場成分とを、磁気センサにおいて互いに交差する磁場として検知して、振動部の動きを検知できるようにしている。可動磁場成分と固定磁場成分との相対的な強度変化を検知することで、外部ノイズの影響を受けにくくなり、振動部の動作を補正する高精度な制御が可能になる。
【0021】
また、可動磁場発生部材の2つの磁極端部が、磁気センサに対して第2方向の両側に離れた位置に配置されているため、磁気センサに作用する可動磁場成分の第2方向に向くベクトル成分の比率が高くなり、可動磁場発生部材の実際の位置と、磁気センサの検知出力に基づく可動磁場発生部材の位置の情報との間で直線性(リニアリティ)を高く維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態のスピーカの全体構造を示す半断面斜視図、
図2】(A)は、図1に示されるスピーカに設けられたボビンと可動磁場発生部材を示す分解斜視図、(B)は、ボビンに固定された可動磁場発生部材と磁気センサとの相対位置を示す斜視図、
図3】磁極端部の位置が相違する複数種類の可動磁場発生部材と磁気センサとの相対位置を、振動方向と直交する平面で比較して示した平面図、
図4図3に示される異なる種類の可動磁場発生部材を使用したときの磁気センサの検知出力の変化を比較して示す線図、
図5図3に示される複数種類の可動磁石のうちの磁石A,磁石D,磁石Hを用いたときの磁力線の分布を比較してシミュレーションした説明図、
図6】磁極端部の向きが相違する複数種の可動磁場発生部材と磁気センサとの相対位置を比較して示す平面図、
図7図6に示されたそれぞれの可動磁石を使用したときの磁気センサの検知出力の変化を比較して示す線図、
図8図6に示される複数種類の可動磁石を用いたときの磁力線の変化を比較してシミュレーションした説明図、
図9】可動磁場発生部材の変形例を示す平面図、
図10】可動磁場発生部材の変形例を示す平面図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示される本発明の第1実施形態のスピーカ1はZ1―Z2方向が前後方向であり、Z1方向が前方で、Z2方向が後方である。Z1方向とZ2方向のいずれかが主な発音方向である。また、Z1-Z2方向は振動部の振動方向である。図1に、前後方向(Z1-Z2方向)に延びる中心軸Oが示されている。スピーカ1の主要部は、中心軸Oを中心とするほぼ回転対称な構造である。図1には、中心軸Oと直交する平面において互いに直交するX軸とY軸が示されている。X方向は第1方向で、Y方向は第2方向である。
【0024】
図1に示されるスピーカ1はフレーム2を有している。フレーム2は、非磁性材料または磁性材料で形成されており、前方(Z1方向)に向けて直径が徐々に広がるテーパ形状である。フレーム2の後方(Z2方向)に磁気回路部10が接着やねじ止めなどの手段で固定されている。フレーム2と磁気回路部10とで「支持部」が構成されている。
【0025】
磁気回路部10は、中心軸Oを中心とするリング状の駆動用磁石11と、駆動用磁石11の前方に接合されたリング状の対向ヨーク12と、駆動用磁石11の後方に接合された後方ヨーク13を有している。後方ヨーク13にはセンターヨーク14が一体に形成されている。センターヨーク14は、駆動用磁石11と対向ヨーク12の内側に位置し、後方ヨーク13から前方(Z1方向)に隆起して形成されている。なお、センターヨーク14が後方ヨーク13と別体に形成され、後方ヨーク13とセンターヨーク14とが接合されていてもよい。センターヨーク14には、前後方向(Z1-Z2方向)に向けて貫通する穴15が形成されている。対向ヨーク12と後方ヨーク13およびセンターヨーク14は磁性材料、すなわち軟磁性の金属材料で形成されている。
【0026】
センターヨーク14は円柱状であり、その外周面と、対向ヨーク12の内周面との間に、中心軸Oを中心とする円周に沿って磁気ギャップGが形成されている。磁気回路部10では、駆動用磁石11から発せられた駆動用磁束Fdが、対向ヨーク12から磁気ギャップGを横断してセンターヨーク14と後方ヨーク13を周回する。このスピーカ1は、磁気回路部10が「固定磁場発生部材」として機能し、磁気回路部10からの洩れ磁界が、後に説明する磁気センサ22に対して第1方向(X方向)に作用する固定磁場成分H1として検知される。
【0027】
フレーム2の前方部分の内側に振動板3が設けられている。振動板3は円錐状のいわゆるコーン形状である。フレーム2の前端周囲部2aと振動板3の外周端3aは、弾性変形可能なエッジ部材4を介して接合されている。エッジ部材4と前端周囲部2aおよびエッジ部材4と外周端3aとは接着剤で固定されている。フレーム2の中腹部の内面に内周固定部2bが形成されており、断面がコルゲート形状の弾性変形可能なダンパー部材5の外周部5aが内周固定部2bに接着剤により固定されている。
【0028】
フレーム2の内部にボビン6が設けられている。ボビン6は、中心軸Oを中心とする円筒形状である。振動板3の内周端3bはボビン6の外周面に接着剤で固定されており、ダンパー部材5の内周部5bも接着剤によってボビン6の外周面に固定されている。振動板3の中心部には前方に向けて隆起するドーム形状のキャップ8が設けられている。キャップ8は、ボビン6の前方の開口部を覆っており、キャップ8の周縁部8aが振動板3の前面に接着剤を介して固定されている。
【0029】
図2にも示されるように、ボビン6の後方(Z2方向)に向く後端部では、その外周面にボイスコイル7が設けられている。ボイスコイル7を構成する被覆導線は、ボビン6の外周面において所定のターン数で巻かれている。図1に示されるように、ボイスコイル7は、磁気回路部10の磁気ギャップG内に位置している。磁気回路部10とボイスコイル7とで、磁気駆動部が構成されている。
【0030】
振動板3とボビン6は、エッジ部材4とダンパー部材5の弾性変形により、フレーム2に対して(支持部に対して)前後方向(Z1-Z2方向)に振動自在に支持されている。振動板3とキャップ8およびボビン6とボイスコイル7が、フレーム2を含む「支持部」に対して前後方向に振動する「振動部」を構成している。Z1-Z2方向は、「振動部」の振動方向である。
【0031】
スピーカ1には、可動部の振動を検知する検知部(振動検知部)が設けられている。検知部は、「振動部」を構成するボビン6の前端部の内側の空間に設けられた可動磁石21と、「支持部」に設けられた磁気センサ22と、磁気回路部10とで構成されている。可動磁石21が「可動磁場発生部材」として機能し、磁気回路部10が「固定磁場発生部材」として機能している。固定磁場発生部材である磁気回路部10からの漏れ磁束が磁気センサ22に作用する。図1図2(B)に示されるように、磁気センサ22では主に、この漏れ磁束の磁場のうちの第1方向(X方向)に作用する固定磁場成分H1の強度が検知される。また、可動磁場発生部材である可動磁石21からの洩れ磁束が磁気センサ22に作用する。磁気センサ22では主に、この洩れ磁束の磁場のうちの第2方向(Y方向)に作用する可動磁場成分H2の強度が検知される。なお、「固定磁場発生部材」として、磁気センサ22の直近に磁気回路部10の駆動用磁石11とは別個の固定磁石を設け、この固定磁石から発せられる磁場のうち、第1方向(X方向)に向く成分が、固定磁場成分H1として、磁気センサ22で検知されてもよい。
【0032】
図1に示されるように、検知部を構成する磁気センサ22は、ボビン6の内側の空間内に設けられている。センターヨーク14の前端面14aに基台27が接着されて固定されている。基台27は、合成樹脂などの非磁性材料で形成されたブロック形状である。この基台27の前面にセンサ基板28が固定されており、センサ基板28の前面に磁気センサ22が実装されている。センサ基板28には、磁気センサ22に導通する配線ケーブル25が接続されている。配線ケーブル25は、基台27の中心部に形成された穴およびセンターヨーク14の穴15の内部を通過して、磁気回路部10の後方の外部に引き出されている。
【0033】
図2に可動磁場発生部材として機能する可動磁石21が示されている。可動磁石21はボビン6の内周面6aに沿う部分リング形状、すなわちリングの一部を構成する湾曲形状である。可動磁石21の外周面の曲率は、ボビン6の内周面6aの曲率にほぼ一致しており、可動磁石21は内周面6aに隙間なく接合され、接着剤で固定されている。
【0034】
可動磁場発生部材である可動磁石21には2つの磁極端部21a,21bが設けられている。図2に示される可動磁石21は全体が磁石となる材料すなわち硬磁性体で形成されており、磁極端部21a,21bは、着磁された磁極端面すなわち着磁面である。磁極端部21aと磁極端部21bは互いに逆極性であり、磁極端部21aがN極であり、磁極端部21bがS極である。図9に、変形例となる可動磁場発生部材21Aが示されている。この可動磁場発生部材21Aは、部分リング形状である。可動磁場発生部材21Aは、永久磁石121と2つのヨーク122,123とを有している。ヨーク122,123は、鉄、あるいは鉄を主体とした合金である軟磁性体で形成されている。ヨーク122は永久磁石121のN極の着磁面に接合され、ヨーク123は永久磁石121のS極着磁面に接合されている。その結果、ヨーク122の他方の端部がN極の磁極端部(磁極端面)21aで、ヨーク123の他方の端部がS極の磁極端部(磁極端面)21bとなる。
【0035】
図2(A)(B)に示されるように、ボビン6の前方の端部の内周面6aに、可動磁石21と共にバランサ23が接着されて固定されている。バランサ23は非磁性材料であることが好ましい。非磁性材料で形成されたバランサ23は、可動磁石21の磁極端部21a,21bとの間に隙間が形成されないように、可動磁石21に接触している形状であることが好ましい。
【0036】
図2(B)に、第1基準線L1が示されている。振動部の振動方向である前後方向(Z1-Z2方向)と直交する平面(X-Y平面)に投影して見た平面視において、第1基準線L1は、磁気センサ22を通って第1方向(X方向)に延びる仮想線である。第1基準線L1は、磁気センサ22の中心、即ち磁気センサ22の感知部の中心を通過する仮想線として設定されることが好ましい。前記平面視において、可動磁石21の2つの磁極端部21a,21bは、第1基準線L1を挟んで両側に位置し、磁極端部21aと磁極端部21bは、第1基準線L1から第2方向(Y方向)に等距離に位置している。
【0037】
図1は、スピーカ1を、中心軸Oを含むX-Z平面で切断した断面図である。磁気センサ22の中心および図2(B)に示される第1基準線L1は、中心軸Oを含む同じ断面内に位置している。磁気回路部10は固定磁場発生部材を構成しており、磁気回路部10の内部を周回する駆動用磁束Fdのうちの磁気回路部10の前方に現れる漏れ磁束の一部が、磁気センサ22に固定磁場として作用する。また、可動磁場発生部材である可動磁石21の磁極端部21aと磁極端部21bとの間に現れる漏れ磁束の一部が、磁気センサ22に対して可動磁場として作用する。
【0038】
磁気センサ22は、X-Y平面において、第1方向(X方向)の磁場の強度と、第2方向(Y方向)の磁場の強度変化を検知できる。そのため、磁気センサ22によって、磁気回路部10からの漏れ磁束によって第1方向(X方向)に作用する固定磁場成分H1の強度と、可動磁石21からの漏れ磁束によって第2方向(Y方向)に作用する可動磁場成分H2の強度を検知することができる。磁気センサ22と磁気回路部10との相対位置は変化しないため、磁気センサ22に作用する固定磁場成分H1の強度は基本的には一定である。一方で、可動磁石21は振動部に設けられ、発音動作時にボビン6と共にZ1-Z2方向へ振動するため、可動磁石21と磁気センサ22との距離の変化に応じて、磁気センサ22に作用する可動磁場成分H2の強度は常に変化する。スピーカ1に付随する制御部による制御動作としては、磁気センサ22で検知される固定磁場成分H1の強度と可動磁場成分H2の強度の比などから、可動磁石21の位置の変化すなわち振動部の位置の変化を知ることができる。固定磁場成分H1の強度と可動磁場成分H2の強度の相対値を使用することで、外部ノイズの影響を受けにくい高精度な振動検知が可能になる。
【0039】
磁気センサ22は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を有している。磁気抵抗効果素子は、固定磁性層とフリー磁性層を有するGMR素子またはTMR素子である。GMR素子またはTMR素子は、固定磁性層の磁化の向きが固定され、フリー磁性層の磁化の向きが外部から作用する磁場に応じて変化し、固定磁性層の固定磁化の向きとフリー磁性層の磁化の向きとの相対角度の変化に応じて電気抵抗値が変化する。図2(B)に示されるように、磁気センサ22に固定磁場成分H1と可動磁場成分H2が作用すると、フリー磁性層の磁化の向きは、固定磁場成分H1と可動磁場成分H2の合成ベクトルである検知磁場Hdの向きに一致するように変化する。固定磁場成分H1の強度はほぼ一定で、可動磁場成分H2の強度が可動磁石21の前後方向(Z1-Z2方向)の位置に応じて変化するため、可動磁石21の位置の変化に応じて検知磁場Hdの角度θが変化する。磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化を検知することで、検知磁場Hdの角度θの変化を知ることができ、可動磁石21の前後方向の位置の変化を知ることができる。磁気センサ22が磁気抵抗効果素子で構成されている場合には、前記角度θの変化を検知することで、固定磁場成分H1と可動磁場成分H2との相対的な強度の比を知ることができる。
【0040】
磁気センサ22は、第1方向(X方向)の磁場の強度と第2方向(Y方向)の磁場の強度を検知できるものであれば、磁気抵抗効果素子以外の素子で構成することが可能である。例えば、磁気センサ22は2個のホール素子を備えたものであってもよい。一方のホール素子が、第1方向(X方向)の磁場強度の変化を検知できる指向性を有し、他方のホール素子が、第2方向(Y方向)の磁場強度の変化を検知できる指向性を有するものとする。この2つのホール素子により、第1方向に向く固定磁場成分H1の強度と、第2方向に向く可動磁場成分H2の強度を検知することができ、2つの強度の比から、可動磁石21の前後方向での位置の変化を検知することができる。
【0041】
次に、スピーカ1の発音動作を説明する。
発音動作では、オーディオアンプから出力されたオーディオ信号に基づいてボイスコイル7に駆動電流が与えられる。磁気回路部10から発せられる駆動用磁束Fdがボイスコイル7を横断するため、駆動用磁束Fdと駆動電流とで励起される電磁力により、ボビン6と振動板3を含む振動部が前後方向に振動して、駆動電流の周波数に応じた音圧が発生し、前方または後方に向けて音が発せられる。
【0042】
スピーカ1に併設された制御部では、磁気センサ22からの検知出力に基づいてフィードバック制御が行われる。磁気センサ22から検知磁場Hdの平面内での角度θの変化に基づく検知出力を得ることにより、あるいは、固定磁場成分H1の強度と可動磁場成分H2の強度の比を得ることにより、制御部では、振動板3を含む振動部の前後方向の位置およびその変化に関する情報を得ることができる。例えば、制御部では、オーディオ信号の印加により想定される振動部の前後方向の理想的な位置およびその変化と、磁気センサ22の検知出力から判定される振動部の実際の位置およびその変化とのずれ量が演算され、ずれ量がしきい値を超えたら、ずれ量を補正する補正信号(オフセット信号)が生成される。ボイスコイル7に与えられる駆動信号(ボイス電流)に前記補正信号が重畳され、このフィードバック制御により、スピーカ1による発音の歪みや音ずれなどが補正され、さらには、振動板3が前後方向に過振動するのが防止される。
【0043】
磁気センサ22は、固定磁場発生部材である磁気回路部10からの洩れ磁束による固定磁場成分H1と、可動磁場発生部材からの洩れ磁束による可動磁場成分H2の、相対的な強度の比に基づいて振動部の位置の変化を検知している。そのため、外部ノイズの影響を受けにくい高精度なフィードバック制御を行なうことができる。
【0044】
次に、可動磁石21の形状すなわち磁極端部21a,21bの位置および向きと磁気センサ22からの検知出力との関係を説明する。以下では、可動磁場発生部材として可動磁石21を例として説明するが、磁極端部21a,21bの位置および向きと磁気センサ22からの検知出力との関係については、図9に示した永久磁石121とヨーク122,123とから構成された可動磁場発生部材21Aを用いた場合においても同じである。
【0045】
図3に、寸法が相違する複数種類の可動磁石21と磁気センサ22との相対位置が、中心軸Oと直交するX-Y平面に投影した平面視で示されている。図3には、磁気センサ22の中心を通って第1方向(X方向)に延びる第1基準線L1とボビン6の内周面6aとの交点Pが示されている。図3には、比較例となる磁石Aが示されている。比較例の磁石Aは平面形状が矩形状の磁石221である。この磁石221は、N極に着磁された着磁面221aとS極に着磁された着磁面221bが、第1方向(X方向)と平行でありX-Z平面と平行な面である。
【0046】
図3に示される磁石B,C,D,E,F,G,Hは、本発明の実施形態の部分リング状の可動磁石21であり、それぞれ、円周方向の長さが相違し、磁極端部21a,21bの位置が相違している。図3では、磁石の長さの違いを示すB,C,D,E,F,G,Hの符号が、それぞれの可動磁石21の磁極端部21bの付近に記されている。磁石B,C,D,E,F,G,Hは、それぞれの磁極端部21a,21bが、ボビン6の中心に位置する中心軸Oを中心として半径方向に延びる半径線Rに沿う磁極端面である。すなわち、それぞれの磁極端部21a,21bは、それぞれの半径線RとZ軸とを含む平面に沿って形成された磁極端面である。
【0047】
図3では、B,C,D,E,F,G,Hで分類されるそれぞれの可動磁石21の磁極端部21a,21bの交点Pに向く縁部の位置がb,c,d,e,f,g,hで示されている。b,c,d,e,f,g,hは、いずれも前記交点Pよりも、第1の方向(X方向)において、ボビン6の内側に向けて離れて位置している。すなわち、B,C,D,E,F,G,Hで分類されるそれぞれの可動磁石21の磁極端部21a,21bは、いずれも前記交点Pよりもボビン6の内側に向けて第1方向へ離れて位置している。また磁極端部21a,21bは、比較例の磁石Aの着磁面221a,221bよりも、第1方向においてボビン6の内側に向けて離れて位置している。そのため、B,C,D,E,F,G,Hで分類されるそれぞれの可動磁石21の磁極端部21aから磁極端部21bに向かう洩れ磁束によって磁気センサ22に作用する磁場の第2方向(Y方向)のベクトル成分の比率は、比較例となる磁石Aの着磁面221aから着磁面221bに向かう洩れ磁束によって磁気センサ22に作用する磁場の第2方向(Y方向)のベクトル成分の比率よりも高くなる。
【0048】
また、比較例となる磁石Aの着磁面221a,221bは第1基準線L1と平行な面であるのに対し、B,C,D,E,F,G,Hで分類されるそれぞれの可動磁石21の磁極端部21aは、平面視において磁石Aの着磁面221aよりも時計方向へ傾いており、磁極端部21bは、磁石Aの着磁面221bよりも反時計方向へ傾いている。すなわち、可動磁石21の磁極端部21a,21bは、ボビン6の円周に沿って回転するように傾いている。これによっても、それぞれの可動磁石21の磁極端部21aから磁極端部21bに向かう洩れ磁束によって磁気センサ22に作用する磁場の第2方向(Y方向)のベクトル成分の比率が、比較例となる磁石Aの着磁面221aから着磁面221bに向かう洩れ磁束によって磁気センサ22に作用する磁場の第2方向(Y方向)のベクトル成分の比率よりも高くなる。
【0049】
図5には、磁気センサ22を含むX-Y平面で見たときの、磁石からの洩れ磁束による磁力線の向きおよび分布のシミュレーション結果が示されている。(A-1)には、比較例となる磁石Aが使用されたときの磁力線の分布が示され、(A-2)には、(A-1)の分布における磁気センサ22の領域が拡大して示されている。(B-1)には、図3においてDで示される実施形態の可動磁石21が使用されたときの磁力線の分布が示され、(B-2)には、(B-1)の分布における磁気センサ22の領域が拡大して示されている。(C-1)には、図3においてHで示される実施形態の可動磁石21が使用されたときの磁力線の分布が示され、(C-2)には、(C-1)の分布における磁気センサ22の領域が拡大して示されている。
【0050】
図5に示されるように、本発明の実施形態の可動磁石21を使用したスピーカ1では、可動磁石21の磁極端部21aから磁極端部21bに向かう洩れ磁束によって磁気センサ22に作用する磁場の第2方向(Y方向)のベクトル成分の比率が、比較例の磁石Aを使用したときよりも高くなる。そのため、磁気センサ22による検知精度を高くできる。また、振動部と共に可動磁石21が前後方向(Z1-Z2方向)に移動したときの、磁気センサ22の検知出力の変化の直線性(リニアリティ)も高精度に維持できるようになる。
【0051】
図4には、比較例の磁石AおよびB,C,D,E,F,G,Hで分類されるそれぞれの実施形態の可動磁石21を使用したスピーカ1において、磁石の位置と、磁気センサ22で検知された磁石の位置の情報との関係を示した線図が示されている。横軸に、ボビン6の支持中立位置をゼロとして、可動磁石が前方へ向けてプラス10mmまでの移動する距離と、後方へ向けてマイナス10mmまでの移動する距離が示され、縦軸に磁気センサ22で検知される可動磁石21の位置情報が示されている。図4は、A,B,C,D,E,F,G,Hで分類される各磁石の着磁量を0.2Tとし、固定磁場発生部材である磁気回路部10の駆動用磁石11の着磁量を0.4Tとしたときのシミュレーション結果である。
【0052】
図4のシミュレーション結果によると、比較例となる磁石Aを使用したときには、実際の磁石の位置の変化と、磁気センサ22で検知された磁石の位置情報の変化との間で直線性を確保するのが難しいことが解る。一方で、本発明の実施形態の可動磁石21である磁石B,C,D,E,F,G,Hを使用したスピーカでは、実際の磁石の位置の変化と、磁気センサ22で検知された磁石の位置情報の変化との間で直線性に関して、比較例の磁石Aを使用したときに比べて大幅に改善できることが解る。
【0053】
図4のシミュレーション結果によると、G,Hで分類される可動磁石21を用いたときには、前記直線性に関しては改善されるが、実際の磁石の位置の変化率に対し、磁気センサ22で検知された磁石の位置情報の変化率が低下し、磁気センサ22の検知感度が実質的に低下しているのが解る。これは、図5(C-1),(C-2)に示されるように、磁極端部21a,21bが、磁気センサ22から離れた位置で接近するため、磁極端部21aと磁極端部21bとの対向部で磁束密度が高く、その分、磁気センサ22付近での磁束密度が低下するためと予測される。一方で、B,C,D,E,Fで分類される可動磁石21を使用したスピーカ1では、検知出力の直線性に優れ、また磁気センサ22による検知感度も比較的高くなっている。
【0054】
図3に示されるB,C,D,E,Fで分類される可動磁石21を得るためには、磁気センサ22が、第1基準線L1とボビン6の内周面との交点Pと、ボビン6の中心Oとの間に位置していることを前提にして、2つの磁極端部21a,21bが、ボビン6の中心Oを通って第2方向(Y方向)に延びる第2基準線L2と、前記交点Pとの間に位置していることが必要である。また、B,C,D,E,Fで分類される可動磁石21を得るためには、センサ基板28の交点Pに向く端部を通って第2方向に延びる仮想線を第3基準線L3とし、あるいは磁気センサ22の交点Pに向く端部を通って第2方向に延びる仮想線を第3基準線L3としたときに、2つの磁極端部21a,21bが、第2基準線L2と第3基準線L3との間に位置していることが必要である。図4によるとB,C,D,Eで分類される可動磁石21を使用したスピーカが、検知出力の直線性と感度の双方においてさらに良好になる。B,C,D,Eで分類される可動磁石21を得るためには、2つの磁極端部21a,21bおよび磁気センサ22が、共に第2基準線L2と交点Pとの間に位置し、且つ第2方向(Y方向)において、2つの磁極端部21a,21bが、磁気センサ22とほぼ対向する位置に配置されていることが必要である。
【0055】
図6に、可動磁石21のさらなる変形例が示されている。図6(A)に磁石Dが示されている。この磁石Dは図3において分類されたものと同じである。磁石Dで示されている可動磁石21は、磁極端部21a,21bが、ボビン6の中心Oから延びる半径線Rに沿って形成された磁極端面である。図6(B)に示されている磁石Jは、磁極端部21a,21bと磁気センサ22との相対位置が磁石Dとほぼ同じである。ただし、磁石Jでは、磁極端部21a,21bが、第2方向(Y方向)と平行である。すなわち、磁極端部21a,21bは、Y-Z平面と平行な磁極端面である。図6(C)に示される磁石Kおよび図6(D)に示される磁石Lは、共に磁極端部21a,21bが磁気センサ22に対して第2方向(Y方向)から対向する位置に形成されている。また磁石Kと磁石Lでは、磁極端部21a,21bが、第1方向(X方向)と平行である。すなわち、磁極端部21a,21bは、X-Z平面と平行な磁極端面である。さらに図6(D)に示されている磁石Lでは、部分リング形状の可動磁石21の両端部に、磁気センサ22に向けて曲げられた湾曲部21c,21dが形成されており、磁極端部21a,21bが湾曲部21c,21dの端面となっている。
【0056】
図7には、D,J,K,Lで分類されるそれぞれの可動磁石21を使用したスピーカ1において、磁石の位置と、磁気センサ22で検知された磁石の位置の情報とを示した線図が示されている。図7は、図4と同じ線図であるが、図7の縦軸のレンジは、図4の縦軸よりもやや拡大して示されている。図8は、磁気センサ22を含むX-Y平面において、磁気センサ22に作用する洩れ磁束による磁力線の向きおよび分布をシミュレーションした説明図であり、図5と同様の説明図である。図8(A)は磁石Dの磁力線の分布を示し、図8(B)(C)(D)は、それぞれ磁石J,K,Lの磁力線の分布を示している。
【0057】
図7のシミュレーション結果では、D,J,Lで分類される可動磁石21を使用したスピーカ1は、可動磁石21の前後方向の位置の変化に対し、磁気センサ22で検知された可動磁石21の位置の情報の変化の直線性(リニアリティ)が優れ、検出感度も高いことが解る。磁石Kは、可動磁石21が磁気センサ22に接近していくときに検知出力が反転する結果となっている。図8(C)に示されるように、磁石Kは、第1の方向(X方向)に平行な磁極端部21a,21bから可動磁石21のリング形状部に巻きこむように吸引される磁束の密度が高くなっている。そのため、磁石Kが磁気センサ22に接近すると、リング形状部に巻き込まれて吸引される磁束が磁気センサ22の検知部に影響を与えるためであると予測できる。
【0058】
図7に示したシミュレーション結果から、磁極端部21a,21bとなる磁極端面の向きは、図6(A)に示される中心Oから延びる半径線Rと平行な面を起点として、磁気センサ22に向く方向へ傾いていき、図6(B)に示される第2方向(Y方向)と平行な向きの面となり、さらには、図6(C)(D)に示されるように、第1方向(X方向)に平行で磁気センサ22に向けられる面となるまでの回転角度の範囲内で、いずれか任意の角度の向きとなるように設定されることが好ましい。また、磁気端面が第1方向(X方向)と平行な場合には、図6(D)に示されるように、可動磁石21の両端部に湾曲部21c,21dが形成されることが好ましい。
【0059】
また、本発明では、磁極端部21a,21bの位置や磁極端面の向きが前記各実施の形態の磁石B,C,D,E,F,G,H,J,K,Lと同じであれば、可動磁石の平面形状がコの字形状やV字形状であってもよい。また、図10に示されるように、中心軸Oに垂直な平面で見た平面視において、磁気センサ22を挟む両側に対称形状の可動磁石221A,221Bが配置されてもよい。この場合に、第2方向(Y方向)において、可動磁石221Aと可動磁石221Bとで同じ極性の磁極端部が位置し、可動磁石221Aと可動磁石221Bは、磁気センサ22を挟んで第1方向(X方向)で左右対称に配置される。
【符号の説明】
【0060】
1 スピーカ
2 フレーム
3 振動板
6 ボビン
7 ボイスコイル
10 磁気回路部(固定磁場発生部材)
11 駆動用磁石
12 対向ヨーク
13 後方ヨーク
14 センターヨーク
21 可動磁石(可動磁場発生部材)
21a,21b 磁極端部
21A 可動磁場発生部材
22 磁気センサ
28 センサ基板
Fd 駆動用磁束
H1 固定磁場成分
H2 可動磁場成分
Hd 検知磁場
L1 第1基準線
L2 第2基準線
L3 第3基準線
O 中心軸
P 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10