(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064603
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】下枠補強構造
(51)【国際特許分類】
E06B 1/70 20060101AFI20230501BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E06B1/70 Z
E06B1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174965
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】桑山 裕次
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011AB03
2E011AC04
2E011AD02
2E011AF00
2E011MA04
(57)【要約】
【課題】組立作業が容易な下枠補強構造を提供すること。
【解決手段】下枠補強構造は、下枠22の中空部262内に配置される下枠補強材6を備える下枠補強構造であって、下枠補強材6は、上下方向に延びる縦補強面部61と、室内外方向の一方側に延びる横補強面部62と、を備え、縦補強面部61は、下枠22の被係合部264に係合して下枠補強材6を支持する補強材支持部63を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠の中空部内に配置される下枠補強材を備える下枠補強構造であって、
前記下枠補強材は、上下方向に延びる縦補強面部と、室内外方向の一方側に延びる横補強面部と、を備え、
前記縦補強面部及び前記横補強面部の少なくともいずれかは、前記下枠の被係合部に係合して前記下枠補強材を支持する補強材支持部を有する、下枠補強構造。
【請求項2】
前記被係合部は、前記中空部の内壁に設けられる凸部である、請求項1に記載の下枠補強構造。
【請求項3】
前記凸部は、タッピングホールである、請求項2に記載の下枠補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、下枠補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建具の下枠を補強する下枠補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。下枠補強構造は、中空部を有する下枠と、中空部内に配置されて下枠を補強する下枠補強材と、を有する。下枠補強材は、上下方向に延びる縦補強面部と、縦補強面部の上端部に接続され室内外方向の一方側に延びる横補強面部と、を有し、横補強面部が中空部の天井面にネジにより固定されている。
【0003】
下枠補強材を中空部内に設置する組立作業を行う場合には、まず、下枠補強材の横補強面部を中空部の天井面に沿って配置する。その後、下枠補強材の横補強面部を、ネジにより中空部の天井面に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、下枠の中空部の室内外方向の長さが大きい場合に、下枠補強材の横補強面部の室内外方向の長さが短いと、上記組立作業中に下枠補強材が中空部内で転んでしまい、組立作業の作業性が悪化することがあった。
【0006】
本開示は、組立作業が容易な下枠補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、下枠の中空部内に配置される下枠補強材を備える下枠補強構造であって、前記下枠補強材は、上下方向に延びる縦補強面部と、室内外方向の一方側に延びる横補強面部と、を備え、前記縦補強面部及び前記横補強面部の少なくともいずれかは、前記下枠の被係合部に係合して前記下枠補強材を支持する補強材支持部を有する、下枠補強構造に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の引き違い窓を室内側から見た正面図である。
【
図3】第1実施形態の下枠及び下枠補強材を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態の下枠及び下枠補強材を上方側から見た平面図である。
【
図6】第2実施形態の下枠及び下枠補強材を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態の下枠及び下枠補強材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。第1実施形態の建具を構成する引き違い窓1について説明する。本明細書において、「見付方向」とは、建物の壁に形成された開口部に納められた引き違い窓1における面材35,45の面方向を意味し、「見込方向」とは、上記面材35,45の厚さ方向(即ち、奥行き方向)を意味する。「見込方向」は室内外方向でもある。「見付面」は、引き違い窓1における室外側及び室内側に面するそれぞれの面を意味し、「見込面」は、引き違い窓1において室内外方向に延びる面を意味する。図面において、引き違い窓1の室外側を室外側X1とし、引き違い窓1の室内側を室内側X2とする。
【0010】
引き違い窓1は、
図1及び
図2に示すように、図示しない建物躯体の開口部に取り付けられる枠体2と、枠体2の内側に、室外側X1に配置される外障子3と、室内側X2に配置される内障子4と、外障子3の室外側X1に配置される1枚の網戸51と、をそれぞれ納めることによって構成される。外障子3及び内障子4は、枠体2内を見付方向の左右方向(横方向)にスライド移動可能である。
【0011】
枠体2は、上枠21、下枠22及び左右一対の縦枠23,24を矩形に枠組みすることによって構成される。
図2に示すように、上枠21は、室外側レール211、室内側レール212及び網戸レール213を有する。下枠22は、室外側レール221、室内側レール222及び網戸レール223を有する。
【0012】
下枠22において、室外側レール221は、下枠22の室外側に配置され、上方に突出する。室内側レール222は、下枠22の室内側X2に配置され、上方に突出する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、外障子3は、上框31、下框32、戸先側に配置される縦框33及び戸尻側に配置される縦框である外召し合わせ框34を矩形に框組した框体30の内側に、3枚のガラスからなる面材35が納められることによって構成される。外障子3は、上枠21及び下枠22の室外側レール211,221に左右方向に移動可能に係合している。外障子3の下框32には、下枠22の室外側レール221上を転動する戸車36が設けられる。
【0014】
内障子4は、上框41、下框42、戸先側に配置される縦框43及び戸尻側に配置される内召し合わせ框44を矩形に框組した框体40の内側に、3枚のガラスからなる面材45が納められることによって構成される。内障子4は、上枠21及び下枠22の室内側レール212,222に左右方向に移動可能に係合している。内障子4の下框42には、下枠22の室内側レール222上を転動する戸車46が設けられる。
【0015】
網戸51は、上枠21及び下枠22の網戸レール213,223に左右方向に移動可能に係合している。
【0016】
下枠22の構成についてさらに説明する。
図2に示すように、下枠22は、下枠本体である金属下枠25の内側表面に、樹脂カバー材224,225を取り付けた複合構造を有する。そのため、断熱性及び防露性に優れる。金属下枠25は、室外側レール221と室内側レール222との間で、室外側金属下枠26と室内側金属下枠27とに分割されている。室外側金属下枠26と室内側金属下枠27とは、樹脂連結材28によって連結されている。樹脂カバー材225の室内側X2の端部の上端には、L字状のアングル部226が取り付けられる。
【0017】
室外側金属下枠26は、
図3に示すように、中空部262を有するホロー構造に構成される。室外側金属下枠26の中空部262内には、断面視略L字状の下枠補強材6が配置される。
【0018】
下枠補強材6は、
図4に示すように、左右方向に延びて形成される。下枠補強材6の左右方向の長さは適宜設定される。本実施形態においては、下枠補強材6は、例えば、下枠22の室外側X1において、左右方向の一方側に配置される。
【0019】
下枠補強材6は、
図3に示すように、室外側金属下枠26の上部板部261の下面により構成される中空部262の天井面263にネジ22aにより固定されている。下枠補強材6は、下枠22が外障子3の荷重により撓んだ場合に、外障子3の荷重を受けることにより、室外側金属下枠26を補強する。
【0020】
中空部262の天井面263は、段差状に形成され、室外側X1に形成される第1天井面263aと、室内側X2に形成される第2天井面263bと、第1天井面263aと第2天井面263bとを接続する段差接続部263cと、を有する。
【0021】
中空部262の天井面263には、天井面263から下方に向けて突出するタッピングホール264(被係合部、凸部)が設けられている。タッピングホール264は、後述する下枠補強材6の引っ掛け係合部63(補強材支持部)に係合される。
【0022】
タッピングホール264は、下枠22の長手方向の端部を縦枠などの部材に組み付ける際にネジを挿入可能な孔部である。タッピングホール264は、
図3に示すように、中空部262の内壁に設けられ、室外側金属下枠26の室外側X1に形成される第1天井面263aの室内側X2の端部から下方に突出する。タッピングホール264は、下方に向けてC字状に開放して形成され、室外側金属下枠26の長手方向に延びる。
【0023】
図3に示すように、下枠補強材6は、ネジ22aにより第2天井面263bに固定されている。下枠補強材6は、上下方向に延びる縦補強面部61と、縦補強面部61の上端部から室内側X2に延びる横補強面部62と、を備える。縦補強面部61は、室外側金属下枠26のタッピングホール264に係合する引っ掛け係合部63(補強材支持部)を有する。
【0024】
縦補強面部61は、第2天井面263bの室外側X1の端部近傍から下方に延びて形成される。縦補強面部61の下端部611は、中空部262の底面262aに近接又は当接している。縦補強面部61は、下枠22が外障子3の荷重により撓んだ場合に、天井面263と底面262aとの間に挟み込まれることで、外障子3の荷重を支持する。
【0025】
横補強面部62は、縦補強面部61の上端部から室内側X2に水平に直線状に延びる。横補強面部62は、第2天井面263bに沿って配置され、ネジ22aにより第2天井面263bに固定されている。横補強面部62の上面は、下枠22が外障子3の荷重により撓んだ場合において、外障子3の荷重を面で受ける。横補強面部62の上面で受けた荷重は、横補強面部62の室外側X1の端部に接続される縦補強面部61に伝達される。
【0026】
引っ掛け係合部63は、縦補強面部61の上部から室外側X1に突出する。引っ掛け係合部63は、先端が上方に屈曲してL字状に形成される。L字状の引っ掛け係合部63と縦補強面部61の上端部とにより、全体として上方に開放したU字状の係合部を構成する。
【0027】
引っ掛け係合部63は、下枠22の組立作業の際には、中空部262内に配置した下枠補強材6をネジ22aにより固定する前にタッピングホール264に引っ掛けて係合させることができる。これにより、引っ掛け係合部63によって下枠補強材6は中空部262内で支持され、転んで倒れることがないため、組立作業が容易である。中空部262内に突出するタッピングホール264が室外側金属下枠26に設けられている場合には、引っ掛け係合部63が係合する構造を新たに設けなくてよい。従って、製造コストを削減できる。
【0028】
図3に示すように、下枠補強材6の縦補強面部61には、加熱発泡材8が固定される取付金具7が固定されている。取付金具7は、断面視L字状に形成され、下枠補強材6の縦補強面部61の上下方向の中間位置の室内側X2の面に固定されている。取付金具7の上面には、加熱発泡材8が固定されている。
【0029】
取付金具7は、
図3に示すように、縦板71と、横板72と、を有する。縦板71は、下枠補強材6の縦補強面部61の上下方向の中間位置の室内側X2の面に、ネジ73により固定される。横板72は、縦板71の上端部から室内側X2に延びる。
【0030】
横板72の上面には、加熱発泡材8が固定される。加熱発泡材8は、
図3及び
図4に示すように、下枠22の左右方向の一方側の端部側の中空部262内において、複数の水抜き孔227の下方に配置される。
【0031】
複数の水抜き孔227は、
図4及び
図5に示すように、室外側金属下枠26の左右方向の一方側に形成され、室外側金属下枠26の上面を流れる水を外部に排出する。複数の水抜き孔227は、室外側金属下枠26の上部板部261を上下方向に貫通する長方形状の複数の開口部により構成される。
【0032】
加熱発泡材8は、
図3に示すように、複数の水抜き孔227の下方に対向して配置される。これにより、加熱発泡材8は、火災等によって所定の温度に達した場合に発泡して、水抜き孔227の開口部を塞ぐことができる。
【0033】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態で説明しない点については、第1実施形態の説明を援用できる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を付けて、その説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、第2実施形態の中空部262の天井面263は、下枠22Aの室外側金属下枠26Aの上部板部261の下面により構成される。中空部262の天井面263には、室外側凸部265(被係合部、凸部)と、室内側凸部266(被係合部、凸部)とが設けられる。室外側凸部265は、中空部262の内壁に設けられ、室外側X1の第1天井面263aの室内側X2の端部に配置され下方に突出する。室内側凸部266は、中空部262の内壁に設けられ、室内側X2の第2天井面263bの室内外方向の途中に配置され下方に突出する。
【0035】
下枠22Aの室外側金属下枠26Aの中空部262内には、
図6に示すように、下枠補強材6Aが配置される。第2実施形態の下枠補強材6Aは、第1実施形態の下枠補強材6における縦補強面部61及び横補強面部62のみを備えており、第1実施形態の下枠補強材6における引っ掛け係合部63を備えていない。
【0036】
横補強面部62は、室内外方向に延びて形成される。横補強面部62の室外側X1の端部には、室外側係合部621(補強材支持部)が形成される。横補強面部62の室内側X2の端部には、室内側係合部622(補強材支持部)が形成される。
【0037】
横補強面部62は、室外側凸部265と室内側凸部266との間に配置され、室外側係合部621が室外側金属下枠26Aの室外側凸部265に係合すると共に、室内側係合部622が室外側金属下枠26Aの室内側凸部266に係合する。
【0038】
横補強面部62の室外側係合部621及び室内側係合部622は、下枠22Aの組立作業の際には、中空部262内に配置した下枠補強材6Aをネジ22aにより固定する前に室外側金属下枠26Aに形成された室外側凸部265及び室内側凸部266に引っ掛けて係合させることができる。これにより、横補強面部62の室外側係合部621及び室内側係合部622によって下枠補強材6Aは中空部262内で支持され、転んで倒れることがないため、組立作業が容易である。
【0039】
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態で説明しない点については、第1実施形態の説明を援用できる。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を付けて、その説明を省略する。
【0040】
図7に示すように、第3実施形態の中空部262の天井面263Aは、下枠22Bの中空部262内の下枠22Bの室外側金属下枠26Bの上部板部261の下面により構成される。中空部262の天井面263Aは、段差状に形成されておらず、室外側X1において水平面状に形成されると共に、室内側X2において緩やかに傾斜する湾曲面状に形成される。
【0041】
下枠22Bの中空部262内の室外側X1の内側面262bには、引っ掛け凸部267(凸部)が形成される。引っ掛け凸部267は、下方に開放するL字状に形成される。
【0042】
下枠22Bの室外側金属下枠26Bの中空部262内には、
図7に示すように、下枠補強材6Bが配置される。下枠補強材6Bは、第1実施形態と同様の縦補強面部61及び横補強面部62を備える。下枠補強材6Bの縦補強面部61は、更に、第1実施形態の下枠補強材6における引っ掛け係合部63(補強材支持部)に代えて、室外側突出引っ掛け係合部64(補強材支持部)を備える。
【0043】
室外側突出引っ掛け係合部64は、縦補強面部61の上下方向の途中から、下枠22Bの中空部262内の室外側X1の内側面262bまで延びる水平部641と、水平部641の室外側X1の端部から上方に突出する突起642と、を有する。
【0044】
室外側突出引っ掛け係合部64の突起642は、下枠22Bの中空部262内の室外側X1の内側面262bに形成された引っ掛け凸部267(被係合部、凸部)に係合する。引っ掛け凸部267は、中空部262の内壁に設けられる。
【0045】
室外側突出引っ掛け係合部64は、下枠22の組立作業の際には、中空部262内に配置した下枠補強材6Bをネジ22aにより固定する前に引っ掛け凸部267に引っ掛けて係合させることができる。これにより、室外側突出引っ掛け係合部64によって下枠補強材6Bは中空部262内で支持され、転んで倒れることがないため、組立作業が容易である。
【0046】
以上、本開示の好ましい一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0047】
例えば、前記実施形態においては、下枠補強材6の横補強面部62を、縦補強面部61の上端部から室内側X2のみに延びるように構成したが、これに限定されない。横補強面部62を、縦補強面部61の上端部から室外側X1のみに延びるように構成してもよい。
【0048】
また、前記第1実施形態においては、タッピングホール264を、中空部262の天井面263における下枠補強材6の室外側X1に設けたが、これに限定されない。タッピングホール264を、中空部262の天井面263における下枠補強材6の室内側X2に設けてもよいし、中空部262の室外側X1の内側面や室内側X2の内側面に設けてもよい。
【0049】
また、前記第2実施形態において下枠22Aの中空部262の天井面263に設けた室外側凸部265(被係合部、凸部)及び室内側凸部266(被係合部、凸部)のいずれか一方又は両方を、タッピングホールにより構成してもよい。前記第3実施形態において下枠22Bの中空部262の内側面262bに設けた引っ掛け凸部267(凸部)を、タッピングホールにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 引き違い窓(建具)、6 下枠補強材、22 下枠、61 縦補強面部、62 横補強面部、63 引っ掛け係合部(補強材支持部)、64 室外側突出引っ掛け係合部(補強材支持部)、262 中空部、264 タッピングホール(被係合部、凸部)、265 室外側凸部(被係合部、凸部)、266 室内側凸部(被係合部、凸部)、267 引っ掛け凸部(被係合部、凸部)