(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064622
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】光学フィルタ、フォトダイオードモジュール、及び光学フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230501BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20230501BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L31/02 D
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174997
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】高田 昭夫
【テーマコード(参考)】
2H148
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA12
2H148AA18
5F149AA01
5F149AB09
5F149AB16
5F149BA09
5F149BB20
5F149GA02
5F149HA06
5F149HA07
5F149LA03
5F149XB05
5F149XB17
5F149XB45
5F849AA01
5F849AB09
5F849AB16
5F849BA09
5F849BB20
5F849GA02
5F849HA06
5F849HA07
5F849LA03
5F849XB05
5F849XB17
5F849XB45
(57)【要約】
【課題】波長280nm以下の光を選択的に透過させつつ、波長約300nm以上の光との分離性能が向上した、しかも簡便に製造可能である光学フィルタを提供する。
【解決手段】透明基板と、前記透明基板上に配置されたアルミニウム系膜とを備え、前記アルミニウム系膜は、複数のホールを有し、隣接する前記ホールの中心間の距離が200nm以下であり、前記透明基板は、前記アルミニウム系膜のホールの直下に複数のキャビティを有し、前記透明基板表面を基準とする前記キャビティの深さが5nm以上である、ことを特徴とする、光学フィルタ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に配置されたアルミニウム系膜とを備え、
前記アルミニウム系膜は、複数のホールを有し、隣接する前記ホールの中心間の距離が200nm以下であり、
前記透明基板は、前記アルミニウム系膜のホールの直下に複数のキャビティを有し、前記透明基板表面を基準とする前記キャビティの深さが5nm以上である、ことを特徴とする、光学フィルタ。
【請求項2】
前記アルミニウム系膜のホールは、平面視で円形状であり、一方の膜表面におけるホール径と他方の膜表面におけるホール径とが異なる、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記アルミニウム系膜は、ケイ素(Si)又は銅(Cu)を10質量%以下の割合で含む、請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記透明基板の材質が、石英又はサファイアである、請求項1~3のいずれかに記載の光学フィルタ。
【請求項5】
基材上に半導体層を有するフォトダイオードと、請求項1~4のいずれかに記載の光学フィルタとを備える、ことを特徴とする、フォトダイオードモジュール。
【請求項6】
前記光学フィルタが、前記基材の、前記半導体層が形成されていない面に接触して配置されている、請求項5に記載のフォトダイオードモジュール。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法であって、
複数のホールを有するアルミニウム系膜を透明基板上に形成する膜形成工程と、
その後、前記複数のホールを介して透明基板上に複数のキャビティを形成する基板加工工程と、を備え、
前記膜形成工程では、ブロックコポリマーの自己組織化又は二光束干渉露光によりホールのパターニングを行い、
前記基板加工工程では、プラズマエッチングを行う、
ことを特徴とする、光学フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタ、フォトダイオードモジュール、及び光学フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長280nm以下の光(深紫外線、又はUV-Cとも称される)用の半導体受光素子の需要が、近年高まっている。その使用目的は、火災探知用の炎センサ(参考:炎は、一般にUV-Cを含む。)、殺菌モニタ(参考:UV-Cは、殺菌効果があるとされている。)などである。特に炎センサは、セキュリティ用途の小型センサとしてのニーズが高い。
【0003】
上述したような半導体受光素子において実用上重要な性能となるのは、300nm付近の光を含む太陽光スペクトルとの分離性能であり、そのため、UV-Cの感度の指標を示すRejection Ratioを高くすることが求められる。このような背景により、半導体構造に関する研究が盛んに行われている(非特許文献1)。
【0004】
また、半導体受光素子の受光感度を向上させる技術に、透過フィルタを組み合わせる方法もあり、かかるフィルタとして、誘電体多層膜を用いる方法が数多く提案されている(特許文献1,2)。しかし、かかるフィルタにおいては、狭帯域特性を求めると、層数を増やす必要が生じるため、そのような多層化は生産的でない。
【0005】
特許文献3には、金属薄膜に周期的に開口部を設けたフィルタが開示されている。これは、波長よりも小さい開口部を導電材料薄膜に設け、表面プラズモンに起因した異常透過現象による伝播光を利用した透過型フィルタである。このような透過型フィルタの原理の詳細は、非特許文献2に記載されている。また、該フィルタの透過特性は、開口部の周囲の材料の光学定数にも影響され、非特許文献2に記載されるように、例えばアルミニウム膜の基板をシリカ基板とした場合、開口部と空間側での共鳴と、開口部とシリカ側での共鳴とによる2つの透過ピーク(メインピーク及びサブピーク)が存在する。また、アルミニウム膜上にシリカ膜を形成することで、これらのピーク強度が変化することも記載されている。
【0006】
一方、上述したようなサブピークを除去し所望の波長域のみを透過させるための技術として、特許文献4には、開口部の積層構造が記載されている。また、非特許文献3では、メタルメッシュフィルタについて層数を増やしかつ中空部を設けることで、狭帯域フィルタを実現している。但し、これらの従来技術では、サブピークの調整や除去のため、構造の工夫がなされているものの、かかる構造は複雑になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】吉川 陽ら著「高感度な深紫外線センサの開発-光電子増倍管から固体素子へ-」 OPTRONICS、2020年
【非特許文献2】Jinlian Hu et al., Dual-channel extraordinary ultraviolet transmission through an aluminum nanohole array: Nanotechnology 28 215205 (2017)
【非特許文献3】上塚 貴史ら、長中間赤外線用高耐久メタルメッシュフィルタの開発、第三回可視赤外線観測装置ワークショップ、2013年
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-080782号公報
【特許文献2】特開2008-021460号公報
【特許文献3】特開平11-072607号公報
【特許文献4】特開2015-031856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、従来における上記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、波長280nm以下の光を選択的に透過させつつ、波長約300nm以上の光との分離性能が向上した、しかも簡便に製造可能である光学フィルタを提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した光学フィルタを備えるフォトダイオードモジュールを提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した光学フィルタを簡便に製造することが可能な、光学フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、狭帯域性の度合いはアプリケーションに依存し得ることを念頭に置き、まず、非特許文献2で示される2つの透過ピークのうち、サブピーク(シリカピーク)を低下させることに着目した。そして、本発明者が更に鋭意検討した結果、アルミニウム膜が配置される透明基板に対し、表面加工により所定態様のキャビティを形成することで、波長約300nm以上の位置にあるサブピークの低減、及び、波長280nm以下の位置にあるメインピークの高まりの一方又は両方が図れることを見出し、本発明をするに至った。
【0011】
前記目的を達成するための手段としては、以下の通りである。
【0012】
<1> 透明基板と、前記透明基板上に配置されたアルミニウム系膜とを備え、
前記アルミニウム系膜は、複数のホールを有し、隣接する前記ホールの中心間の距離が200nm以下であり、
前記透明基板は、前記アルミニウム系膜のホールの直下に複数のキャビティを有し、前記透明基板表面を基準とする前記キャビティの深さが5nm以上である、ことを特徴とする、光学フィルタ。
【0013】
<2> 前記アルミニウム系膜のホールは、平面視で円形状であり、一方の膜表面におけるホール径と他方の膜表面におけるホール径とが異なる、<1>に記載の光学フィルタ。
【0014】
<3> 前記アルミニウム系膜は、ケイ素(Si)又は銅(Cu)を10質量%以下の割合で含む、<1>又は<2>に記載の光学フィルタ。
【0015】
<4> 前記透明基板の材質が、石英又はサファイアである、<1>~<3>のいずれかに記載の光学フィルタ。
【0016】
<5> 基材上に半導体層を有するフォトダイオードと、<1>~<4>のいずれかに記載の光学フィルタとを備える、ことを特徴とする、フォトダイオードモジュール。
【0017】
<6> 前記光学フィルタが、前記基材の、前記半導体層が形成されていない面に接触して配置されている、<5>に記載のフォトダイオードモジュール。
【0018】
<7> <1>~<4>のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法であって、
複数のホールを有するアルミニウム系膜を透明基板上に形成する膜形成工程と、
その後、前記複数のホールを介して透明基板上に複数のキャビティを形成する基板加工工程と、を備え、
前記膜形成工程では、ブロックコポリマーの自己組織化又は二光束干渉露光によりホールのパターニングを行い、
前記基板加工工程では、プラズマエッチングを行う、
ことを特徴とする、光学フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、波長280nm以下の光を選択的に透過させつつ、波長約300nm以上の光との分離性能が向上した、しかも簡便に製造可能である光学フィルタを提供することができる。
また、本発明によれば、上述した光学フィルタを備えるフォトダイオードモジュールを提供することができる。
また、本発明によれば、上述した光学フィルタを簡便に製造することが可能な、光学フィルタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の光学フィルタの概略平面図である。
【
図2】
図1の光学フィルタの、A-A線に沿った概略断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態の光学フィルタの概略平面図である。
【
図4】本発明のまた別の実施形態の光学フィルタの概略断面図である。
【
図5】本発明の更に別の実施形態の光学フィルタの概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の光学フィルタの製造方法を説明するための、工程フロー図である。
【
図7】本発明の一実施形態のフォトダイオードモジュールの概略側面図である。
【
図8】本実施例における、キャビティの有無による透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図9】本実施例における、ホールピッチによる透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図10】本実施例における、キャビティ深さによる透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図11】本実施例における、キャビティ深さによる特定波長の透過率の比較を示す図である。
【
図12】本実施例における、キャビティの有無による透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図13】本実施例における、キャビティの有無による透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図14】本実施例における、キャビティの有無による透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図15】本実施例における、ホールの大きさによる透過スペクトルの比較を示す図である。
【
図16】本実施例における、アルミニウム系膜以外の金属膜を備える比較例の光学フィルタの透過スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。なお、説明に用いる各図は、発明の理解の向上のために示すものであり、各図における部材の縮尺、寸法関係、及び形状等の詳細構造については、実際とは異なって示されている場合があることに留意されたい。
【0022】
(光学フィルタ)
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本実施形態の光学フィルタ」と称することがある。)は、透明基板と、前記透明基板上に配置されたアルミニウム系膜とを備える基本構造を有する。そして、本実施形態の光学フィルタは、前記アルミニウム系膜が複数のホールを有し、隣接する前記ホールの中心間の距離(以下、「ホールピッチ」と称することがある。)が200nm以下であること、並びに、前記透明基板が、前記アルミニウム系膜のホールの直下に複数のキャビティを有し、前記透明基板表面を基準とする前記キャビティの深さが5nm以上であること、をそれぞれ特徴とする。
【0023】
図1に、本実施形態の光学フィルタの概略平面図を示し、
図2に、
図1の光学フィルタの、A-A線に沿った概略断面図を示す。特に
図2に示すように、光学フィルタ100は、透明基板11と、アルミニウム系膜21とを少なくとも備え、アルミニウム系膜21が、透明基板11の上に配置された構造を有する。なお、光学フィルタ100は、
図2に示すように、透明基板11とアルミニウム系膜21とが、直接接触していることが好ましい。
【0024】
また、光学フィルタ100は、アルミニウム系膜21に、複数のホール22(膜厚に亘って貫通した箇所)が形成されている。このように、透明基板上に配置されたアルミニウム系膜に複数のホールが形成されてなる構造体は、一般的には、光の透過スペクトルにおいて、低波長側のメインピーク及び高波長側のサブピークが観察され得る。なお、
図1等では、説明の便宜の観点から、ホール22の数が4個のみ示されているが、典型的には、ホール22は無数にアルミニウム系膜21上に形成される。
【0025】
ホール22の平面視形状は、特に限定されない。例えば、
図1に示すように円形状(真円、楕円を含む)であってもよく、或いは、多角形状(三角形状、四角形状を含む)、特定されないランダム形状などであってもよい。更に、1つの光学フィルタ100に形成された複数のホール22は、平面視形状がそれぞれ互いに同じであっても異なってもよく、また、大きさ(径など)がそれぞれ互いに同じであっても異なってもよい。
【0026】
また、アルミニウム系膜21に形成される複数のホール22は、規則的なパターンで配置されていてもよく、ランダムに配置されていてもよい。
【0027】
更に、光学フィルタ100は、特に
図2に示すように、透明基板11の、アルミニウム系膜21に形成されたホール22直下の箇所に、複数のキャビティ12(透明基板11を貫通していないが空洞となっている箇所)が形成されている。このため、光学フィルタ100全体としては、アルミニウム系膜21におけるホール22と、透明基板11におけるキャビティ12とによって1つのキャビティが構成されているものと認識することができる。従来、基板上に積層された金属膜に複数の開口を設けてなるフィルタは既知であったが、本実施形態の光学フィルタ100のように、更に基板(透明基板11)自体にもキャビティ12を設けたことは、少なくとも新規であると考えられる。
【0028】
そして、本実施形態の光学フィルタ100は、アルミニウム系膜21における隣接するホール22の中心間の距離、即ち、
図1にも示されるホールピッチP1が、200nm以下であることを要する。ホールピッチP1が200nm超となる箇所が存在すると、光の透過スペクトルにおけるメインピークの位置が300nm付近にまで高波長側にシフトして、太陽光などといった不所望な光を多量に透過することなる結果、波長約300nm以上の光との分離性能が低下する。また、波長約300nm以上の光との分離性能をより向上させる観点から、アルミニウム系膜21におけるホールピッチP1は、180nm以下であることが好ましい。一方、アルミニウム系膜21におけるホールピッチP1は、特に限定されないが、120nm以上とすることができる。
なお、ホール22の平面視形状が円形状以外の形状である場合、「ホールの中心」は、ホールの平面視形状の重心とする。
【0029】
また、
図1では、中心点を結ぶと矩形を構成するように配置されている4個のホールのうち対角線上の2個のホール間のピッチをP1として示しているが、これは、
図1において最も距離が長いピッチをP1と示したにすぎない。即ち、本実施形態の光学フィルタは、任意に選択される隣接する2個のホールのいずれも、中心間の距離が200nm以下であることを要する。
【0030】
更に、本実施形態の光学フィルタ100は、透明基板11表面を基準としたときの、当該透明基板11に形成されたキャビティ12の深さ(
図2に示されるD1)を、5nm以上とする。これにより、メインピークがよりシャープになり(半値幅が小さくなり)、また、サブピークの高さを低下させることができる。即ち、本実施形態の光学フィルタ100においては、上述したホールピッチP1の適正化と、透明基板11に形成されたキャビティ12深さD1の適正化とが相まって、有意に、低波長側(波長280nm以下)の光の透過性を高めつつ、高波長側(波長約300nm以上)の光の透過性を低下させることができる。また、上記キャビティ12の深さD1は、波長約300nm以上の光との分離性能をより十分に向上させる観点から、10nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましく、75nm以上が一層好ましく、100nm以上が特に好ましい。また、上記キャビティ12の深さD1は、特に限定されないが、製造プロセス及び生産性の観点から、150nm以下とすることができる。
なお、
図2では、1つのキャビティ12が一定の深さを有しているが、深さが一定でない場合には、最深部の深さをキャビティ12の深さD1とする。
【0031】
本実施形態の光学フィルタ100においては、
図2に示すように、ホール22及びキャビティ12の間に段差がなく、これらがスムーズに連通していることが好ましい。換言すると、本実施形態の光学フィルタ100においては、ホール22の平面視形状と、キャビティ12の平面視形状とが実質的に同じであることが好ましい。
【0032】
透明基板11の材質としては、透明性を有するものであれば特に限定されず、例えば、無機材料、プラスチック材料などが挙げられる。また、無機材料としては、石英などのシリカ、サファイア、ダイヤモンド等が挙げられる。これらの中でも、透明基板の材質としては、市場流通性、加工性、安定性などの観点から、無機材料が好ましく、また、石英又はサファイアがより好ましく、石英が更に好ましい。
【0033】
透明基板11の厚みは、特に限定されないが、製造上の取り扱い性及び機械的安定性の観点からは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0034】
アルミニウム系膜21は、アルミニウム又はアルミニウム化合物を少なくとも含有する膜である。また、アルミニウム系膜21は、合金であってもよい。但し、アルミニウム系膜21におけるアルミニウム又はアルミニウム化合物の割合は、所望の透過特性を得る観点から、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0035】
また、アルミニウム系膜21は、ケイ素(Si)又は銅(Cu)を10質量%以下の割合で含むことが好ましい。アルミニウム又はアルミニウム化合物に対し、ケイ素(Si)又は銅(Cu)を上述した割合となるように添加してアルミニウム系膜21を作製することで、アルミニウムの粒子サイズを小さくすることができ、所望の形状(複数のホール22の態様)を有するアルミニウム系膜21の作製が、より容易となる。
【0036】
アルミニウム系膜21の厚み(
図2に示されるT1)は、特に限定されないが、より十分なフィルタリング効果を得る観点からは、50nm以上であることが好ましく、生産性の観点からは、100nm以下であることが好ましい。
【0037】
アルミニウム系膜21に形成されるホール22の大きさ(
図1に示されるW1)は、特に限定されないが、ホール形成の容易性の観点からは、20nm以上であることが好ましく、また、サブピーク高さをより低減する観点からは、120nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることが更に好ましい。
なお、ホール22の平面視形状が円形状以外の形状である場合、「ホールの大きさW1」は、当該ホールの輪郭線上の2点を結んだ線分のうち最長の長さとする。また、本明細書において、ホールの平面視形状が円形状である場合には、ホールの大きさW1を、ホール径φ1と称することがある。
【0038】
図3は、本発明の別の実施形態の光学フィルタの概略平面図である。本発明の光学フィルタ100においては、
図3に示すように、アルミニウム系膜における複数のホール22の大きさW1が、異なっていてもよい。
【0039】
図4は、本発明のまた別の実施形態の光学フィルタの概略断面図である。本発明の光学フィルタ100においては、アルミニウム系膜21のホール22が、平面視で円形状であり、
図4に示すように、アルミニウム系膜21の一方の膜表面におけるホール径φ11と他方の膜表面におけるホール径φ12とが異なることが好ましい。この場合、波長280nm以下の光の透過に際し、波長約300nm以上の光との分離性能をより向上させることができる。また、ホール径φ11及びφ12が異なるホール22は、ホール径φ11及びφ12が同じであるホール22に比べて、作製の難度が低い。更に、同様の観点からは、アルミニウム系膜21の最外面側のホール径φ11が、透明基板11側のホール径φ12よりも大きいことが好ましい。
【0040】
図5は、本発明の更に別の実施形態の光学フィルタの概略断面図である。本発明の光学フィルタ100においては、
図5に示すように、アルミニウム系膜21の上に、更に1つ又は2つ以上の金属膜が配置されていてもよい。この場合、かかる金属膜においても、アルミニウム系膜21と同じ箇所に、複数のホール22が形成される。
【0041】
図5に示す光学フィルタ100において、アルミニウム系膜21の直上に形成される第1積層膜31の材質としては、例えば、シリカ、アルミナなどの酸化物、フッ化マグネシウムなどのフッ化物等が挙げられ、また、第1積層膜31の直上に形成される第2積層膜41の材質としては、例えば、酸化ガリウム(GaO
3)、窒化ガリウム(GaN)等が挙げられる。これら積層膜の厚みはそれぞれ、目的に応じて適宜調整することができる。
【0042】
(光学フィルタの製造方法)
本発明の一実施形態の光学フィルタの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と称することがある)は、上述した光学フィルタを製造する方法であり、複数のホールを有するアルミニウム系膜を透明基板上に形成する膜形成工程と、その後、前記複数のホールを介して透明基板上に複数のキャビティを形成する基板加工工程と、を備える。そして、本実施形態の製造方法は、前記膜形成工程では、ブロックコポリマーの自己組織化又は二光束干渉露光によりホールのパターニングを行い、前記基板加工工程では、プラズマエッチングを行う、ことをそれぞれ特徴とする。かかる本実施形態の製造方法によれば、簡便に、上述した光学フィルタを製造することができる。
【0043】
図6は、本実施形態の製造方法の一例を説明するための、工程フロー図である。かかる製造方法は、膜形成工程において、ブロックコポリマーの自己組織化を行うものである。
【0044】
<膜形成工程>
まず、透明基板11を準備し(
図6の(a))、この透明基板11上に、中性層51を形成する(
図6の(b))。この中性層51は、例えば、ランダムコポリマーを溶剤に溶かしてなる溶液を塗布し、加熱することで、ランダムコポリマー層として形成することができる。なお、この中性層51は、後述するブロックコポリマーの密着性向上を目的として形成するものであり、また、ブロックコポリマーのような相分離が生じないことから、「中性」と称している。
【0045】
次いで、中性層51の上に、ジブロックコポリマーを溶剤に溶かしてなる溶液(ジブロックコポリマー溶液52)を塗布する(
図6の(c))。その後、かかる溶液を加熱することで、ジブロックコポリマーが相分離により、自己組織化的にポリマー成分ごとに基板上で分離し、この結果、周期性を有する2つのポリマーの配列となる。更に、ポリマー成分によるエッチング耐性の違いを利用して、他方のポリマーをプラズマエッチングや薬液により除去することで凹凸状になり、所定の形状及び配置パターンを有する自己組織化ドット53が形成する(
図6の(d))。なお、自己組織化ドット53の形状及び配置パターンは、最終的な光学フィルタにおけるホールの形状及び配置パターンに対応する。このとき、使用するジブロックコポリマーの組成や分子量などを適宜変更することで、自己組織化ドット53の形状(ひいては、最終的な光学フィルタにおけるホールの形状、ホールの大きさW1、ホールピッチP1など)を調整することができる。
【0046】
次いで、露出している中性層51を除去する(
図6の(e))。除去方法としては、例えば、プラズマ処理、溶剤によるウエットエッチング等が挙げられる。
【0047】
次いで、露出している面上に、アルミニウム系膜21を形成する(
図6の(f))。アルミニウム系膜の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。このとき、形成条件を適宜変更することで、アルミニウム系膜21の厚みT1を調整することができる。
【0048】
次いで、自己組織化ドット53及びその下部の中性層51を除去する(
図6の(g))。これにより、自己組織化ドット53が除去された箇所が、ホール22となる。除去方法としては、例えば、溶剤による表面処理、溶剤を併用したリフトオフプロセス等が挙げられる。
【0049】
<基板加工工程>
次いで、膜形成工程で形成した複数のホール22を介して、透明基板11を加工する(
図6の(h))。かかる加工には、プラズマエッチングを用いる。これにより、透明基板11の、アルミニウム系膜21に形成されたホール22直下の箇所に、複数のキャビティ12が形成され、光学フィルタ100を得ることができる。なお、プラズマエッチングに用いるガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)、六フッ化硫黄(SF
6)等が挙げられる。また、プラズマエッチングの条件を適宜変更することで、透明基板11におけるキャビティ深さD1を調整することができる。
【0050】
なお、上記では、ブロックコポリマーの自己組織化により、所定の形状及び配置パターンを有する自己組織化ドット53を形成し、ひいてはホールのパターニングを行ったが、これに代えて、二光束干渉露光により、自己組織化ドット53の同等物を透明基板11上に形成することもできる。
【0051】
(フォトダイオードモジュール)
本発明の一実施形態のフォトダイオードモジュールは、基材上に半導体層を有するフォトダイオードと、上述した光学フィルタとを備える、ことを特徴とする。かかるフォトダイオードモジュールは、上述した光学フィルタを備えるため、UV-Cセンシングを基とする様々な用途に用いることができる。
【0052】
なお、上記フォトダイオードモジュールにおける各部材の配置態様は、特に限定されない。例えば、上述した光学フィルタは、基材上の半導体層の上に接触するように配置されていてもよく、基材及び半導体層(フォトダイオード)とは離隔して配置されていてもよい。
【0053】
図7は、本発明の一実施形態のフォトダイオードモジュールの概略側面図である。
図7のフォトダイオードモジュール300は、基材251上に半導体層252が形成されたフォトダイオード200を備える。また、この半導体層252の上には、電極253が配置されている。そして、
図7のフォトダイオードモジュール300においては、光学フィルタ100が、基材251の、半導体層252が形成されていない面に接触して配置されている。光学フィルタ100は、基材251上に直接形成されていても機能を発揮することができるので、
図7に示す配置態様は、様々なアプリケーションに適用できる点でメリットがある。例えば、基材251としてサファイア基材を用い、半導体層252としてMg-ZnO層を形成してなるフォトダイオードモジュール300では、Mg-ZnO層におけるMg添加量を調整することにより、バンドギャップを制御することができる。
【0054】
なお、フォトダイオードモジュールにおいて基材251に対向させる光学フィルタ100の面は、特に限定されず、アルミニウム系膜が形成された面であってもよく、他方の面(アルミニウム系膜が形成されていない面)であってもよい。
【実施例0055】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。
【0056】
(1)キャビティの有無による比較
(実施例1)
図6に示す製造方法に従って、光学フィルタを得た。具体的に、透明基板11として石英基板(厚み0.5mm)を用い、この透明基板11上に、ランダムコポリマー(ポリマーソース社製「P6589-SMMAAEtMAran」)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)にて1%希釈してなる溶液を塗布し、ホットプレート上で250℃、2分間の加熱処理をして、中性層51を形成した。次いで、中性層51上に、ジブロックコポリマー(ポリマーソース社製「P8380-SMMA」)をPGMEAにて3%希釈してなる溶液52を塗布した後、ホットプレート上で250℃、2分間の加熱処理をし、更に酢酸で処理をして、所定の形状及び配置パターン(平面視円形状、直径80nm、中心間の距離の最大180nm)を有するポリスチレンの自己組織化ドット53を形成した。
【0057】
次いで、O2プラズマ処理により、露出している中性層51を除去し、その後、露出している面上に、スパッタリング法により、アルミニウム系膜21としてのアルミニウム膜を、厚みT1=90nmとなるように形成した。その後、アセトンを用いて自己組織化ドット53を除去し、これにより、アルミニウム膜に複数のホール22が形成された。なお、ホール22は、概ね規則的なパターンで配置されていた。次いで、CF4ガスを用いたプラズマエッチングにより、複数のホール22直下の透明基板11の表面を加工し、深さ50nmのキャビティ12を形成した。このようにして、光学フィルタ100を作製した。
【0058】
得られた光学フィルタ(実施例1)は、アルミニウム膜の厚みT1=90nmであり、当該アルミニウム膜に平面視で円形状の複数のホール22が形成されており、当該ホールの径φ1=80nmであり、隣接するホールの中心間の距離(ホールピッチ)P1は最大180nmであり、キャビティの深さD1=50nmであった。
【0059】
(比較例1)
実施例1において、プラズマエッチングを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタ(比較例1)は、アルミニウム膜のホール直下の透明基板にキャビティが形成されていない。
【0060】
実施例1及び比較例1の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図8に示す。
図8より、実施例1では、比較例1との比較において、波長220nm付近にあるメインピークが高くなっており、かつ、波長300nm付近にあるサブピークが小さくなっている。即ち、実施例1の光学フィルタは、比較例1の光学フィルタに比べ、波長280nm以下の光の透過に際し、波長約300nm以上の光との分離性能が向上していることが分かる。
【0061】
(2)ホールピッチによる比較
(参考例1~3)
比較例1において、アルミニウム膜の厚みT1を50nmとし、当該アルミニウム膜におけるホールピッチP1を最大240nm(参考例1)、最大200nm(参考例2)、最大180nm(参考例3)となるよう、ブロックコポリマーの自己組織化の条件を適宜変更したこと以外は、比較例1と同様にして、光学フィルタを得た。
【0062】
参考例1~3の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図9に示す。
図9より、ホールピッチP1が最大240nmの場合は、メインピークが300nm付近にあり、最大200nmの場合及び180nmの場合は、メインピークが300nm以下の位置にある。よって、波長280nm以下の光用のセンサ用途では、ホールピッチを200nm以下にすることが肝要であることが分かる。なお、参考例1~3は、基板にキャビティを形成していない例であるが、原理上、基板にキャビティが形成されている場合においても、上記と同様の傾向が見られるものと考えられる。
【0063】
(3)キャビティ深さによる比較
(実施例2~5)
実施例1において、キャビティ深さD1が10nm(実施例2)、25nm(実施例3)、75nm(実施例4)、100nm(実施例5)となるよう、プラズマエッチングの条件を適宜変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルタを得た。
【0064】
実施例2~5の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、実施例1及び比較例1とともに
図10に示す。また、実施例1におけるメインピークであった波長222nm、及び、実施例1におけるサブピークであった波長300nmでの、各例における透過率を、
図11に示す。
図10及び
図11より、キャビティを形成することで、波長222nm(メインピーク付近)の透過率が上昇するとともに、波長300nm(サブピーク付近)の透過率が低下していることが分かる。また、キャビティの深さD1が5nm以上であれば、上記の効果は得られるものと考えることができる。
【0065】
(4)サファイア基板を用いた光学フィルタの評価
(実施例6及び比較例2)
実施例1及び比較例1において、石英基板に代えてサファイア基板としたこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ光学フィルタ(実施例6、比較例2)を得た。実施例6及び比較例2の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図12に示す。
図12より、実施例6では、比較例2との比較において、波長280nm以下に位置するメインピークの高さを同等に維持しつつ、波長300nm以上に位置するサブピークが小さくなっている。即ち、サファイア基板を用いた光学フィルタも、波長280nm以下の光の透過に際し、波長約300nm以上の光との分離性能が向上していることが分かる。
【0066】
(5)異なる径のホールが混在する光学フィルタの評価
(実施例7)
実施例1において、アルミニウム膜におけるホールピッチP1を最大200nmとし、また、ホールの径φ1が30nm、40nm、50nm及び60nmであるホールが混在するよう(
図3に示すような概形となるように)、ブロックコポリマーの自己組織化の条件を適宜変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルタ(実施例7)を得た。即ち、得られた光学フィルタ(実施例7)のT1、D1は、実施例1と同じとした。
【0067】
(比較例3)
実施例7において、プラズマエッチングを行わなかったこと以外は、実施例7と同様にして、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタ(比較例3)は、アルミニウム膜のホール直下の透明基板にキャビティが形成されていない。
【0068】
実施例7及び比較例3の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図13に示す。
図13より、実施例7では、比較例3との比較において、波長280nm以下に位置するメインピークの高さを同等に維持しつつ、波長300nm以上に位置するサブピークが小さくなっている。即ち、異なる大きさのホールが混在する光学フィルタも、波長280nm以下の光の透過に際し、波長約300nm以上の光との分離性能が向上していることが分かる。
【0069】
(6)ホール径がアルミニウム系膜の上面と下面とで異なる光学フィルタの評価
(実施例8)
実施例1において、アルミニウム膜に形成されるホールの最外面側のホール径φ11が80nm、透明基板側のホール径φ12が60nmとなるよう(
図4に示すような概形となるように)、ブロックコポリマーの自己組織化の条件を適宜変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルタ(実施例8)を得た。即ち、得られた光学フィルタ(実施例8)のT1、P1、D1は、実施例1と同じとした。
【0070】
(比較例4)
実施例8において、プラズマエッチングを行わなかったこと以外は、実施例8と同様にして、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタ(比較例4)は、アルミニウム膜のホール直下の透明基板にキャビティが形成されていない。
【0071】
実施例8及び比較例4の光学フィルタについて、200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図14に示す。
図14より、実施例8では、比較例4との比較において、波長280nm以下に位置するメインピークが高くなっており、かつ、波長300nm以上に位置するサブピークが小さくなっている。即ち、ホール径がアルミニウム膜の上面と下面とで異なる光学フィルタも、波長280nm以下の光の透過に際し、波長約300nm以上の光との分離性能が向上していることが分かる。
【0072】
(7)ホールの大きさによる比較
(参考例4、5)
比較例1において、ホール径φ1を80nm(参考例4)、120nm(参考例5)となるよう、ブロックコポリマーの自己組織化の条件を適宜変更したこと以外は、比較例1と同様にして、光学フィルタを得た(参考例4は、比較例1と同条件である)。
【0073】
参考例4,5の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図15に示す。
図15より、ホール径φ1が小さくなると、メインピークが低下するものの、その半値幅も小さくなる傾向にあることが分かる。また、ホール径φ1が小さくなると、サブピークが低下する傾向にあることが分かる。なお、参考例4,5は、基板にキャビティを形成していない例であるが、原理上、基板にキャビティが形成されている場合においても、上記と同様の傾向が見られるものと考えられる。
【0074】
そして、上記(6)及び(7)の評価より、ホール径φ1、或いは、上面側のホール径φ11及び下面側のホール径φ12を適宜調整することで、所望の透過率とピークの鋭さとをフレキシブルに実現できることが期待できる。
【0075】
(8)アルミニウム系膜以外の金属膜を備える光学フィルタの評価
(比較例5)
実施例1において、アルミニウム膜に代えて、酸化ガリウム(GaO3)膜を積層したこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタ(比較例5)は、透明基板としての石英基板上に厚みT1=90nmの酸化ガリウム膜が積層されており、当該酸化ガリウム膜に平面視で円形状の複数のホールが形成されており、当該ホールの径φ1は80nmであり、隣接するホールの中心間の距離(ホールピッチ)P1は180nmであった。また、得られた光学フィルタ(比較例5)においては、酸化ガリウム膜のホール直下の透明基板に複数のキャビティが形成されており、当該キャビティの深さD1は50nmであった。
【0076】
(比較例6)
実施例1において、アルミニウム膜に代えて、窒化ガリウム(GaN)膜を積層したこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタ(比較例6)は、透明基板としての石英基板上に厚みT1=90nmの窒化ガリウム膜が積層されており、当該窒化ガリウム膜に平面視で円形状の複数のホールが形成されており、当該ホールの径φ1は80nmであり、隣接するホールの中心間の距離(ホールピッチ)P1は180nmであった。また、得られた光学フィルタ(比較例6)においては、窒化ガリウム膜のホール直下の透明基板に複数のキャビティが形成されており、当該キャビティの深さD1は50nmであった。
【0077】
比較例5,6の光学フィルタについて、波長200nm~400nmの範囲内における透過スペクトルを、
図16に示す。
図16より、透明基板上にアルミニウム系膜以外の膜を配置した場合には、所定態様のホール及びキャビティを形成したとしても、波長280nm以下の光の透過の選択性に劣り、本発明で想定する用途の光学フィルタには適していないことが分かる。
本発明によれば、波長280nm以下の光を選択的に透過させつつ、波長約300nm以上の光との分離性能が向上した、しかも簡便に製造可能である光学フィルタを提供することができる。
また、本発明によれば、上述した光学フィルタを備えるフォトダイオードモジュールを提供することができる。
また、本発明によれば、上述した光学フィルタを簡便に製造することが可能な、光学フィルタの製造方法を提供することができる。