(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064667
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】構造材の接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20230501BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230501BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/94 R
E04B1/58 508L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175073
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 真理子
(72)【発明者】
【氏名】町田 健一
(72)【発明者】
【氏名】長島 泰介
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 周平
(72)【発明者】
【氏名】村田 泰治
(72)【発明者】
【氏名】守時 秀明
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】河村 優輝
(72)【発明者】
【氏名】南川 貴明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀太
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA08
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA63
2E001GA76
2E001HA01
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2E001HA21
2E001HB01
2E001HB04
2E001HC01
2E001HC02
2E001HC04
2E001LA04
2E001LA12
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB12
2E125AC24
2E125AG03
2E125AG23
2E125BB16
2E125BD01
2E125BE07
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】簡便に施工することができる構造材の接合構造を提供すること。
【解決手段】第1構造材10の側面に、第2構造材20が垂直に接合された構造材の接合構造1であって、第1構造材10及び第2構造材20は、それぞれ、荷重支持部11,21、荷重支持部11,21の軸方向Z1,Z2に沿う側面を被覆する被覆部材12,22、及び被覆部材12,22の外側に配された燃えしろ層13,23を備え、第2構造材20の荷重支持部21における第1構造材10側の端面21aを第1構造材10の被覆部材12よりも第1構造材10の径方向の外側に位置させる金物3を介して、第2構造材20が第1構造材10に接合されている、構造材の接合構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造材の側面に、第2構造材が垂直に接合された構造材の接合構造であって、
第1構造材及び第2構造材は、それぞれ、荷重支持部、該荷重支持部の軸方向に沿う側面を被覆する耐火性の被覆部材、及び該被覆部材の外側に配された燃えしろ層を備え、
第2構造材の前記荷重支持部における第1構造材側の端面を第1構造材の前記被覆部材よりも第1構造材の径方向の外側に位置させる金物を介して、第2構造材が第1構造材に接合されている、構造材の接合構造。
【請求項2】
前記金物は、第2構造材の前記荷重支持部の前記端面を第1構造材の前記燃えしろ層よりも第1構造材の径方向の外側に位置させる、請求項1に記載の構造材の接合構造。
【請求項3】
前記金物の周囲における水平方向の両側及び鉛直方向の下側に遮蔽部材が配されており、
前記遮蔽部材における第2構造材側の端部、及び第2構造材の前記被覆部材における該金物側の端部の両方と重なるように、目地材が配されている、請求項1又は2に記載の構造材の接合構造。
【請求項4】
前記金物は、第1構造材の前記荷重支持部における第2構造材側の側面に当接する板状部と、第2構造材の前記荷重支持部の前記端面に当接する板状部と、これらの板状部間を連結する連結部とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造材の接合構造。
【請求項5】
前記金物は、前記端面に当接する前記板状部から垂直に突出する板状の荷重支持部挿入部を有し、該荷重支持部挿入部が、第2構造材の前記荷重支持部に形成されたスリットに挿入された状態で第2構造材に固定される、請求項4に記載の構造材の接合構造。
【請求項6】
前記金物の周囲における水平方向の両側及び鉛直方向の下側に遮蔽部材が配されており、
前記遮蔽部材の外面と、第2構造材の前記被覆部材の外面とが同一面上に存在している、請求項4又は5に記載の構造材の接合構造。
【請求項7】
前記金物は、第1構造材の前記荷重支持部における第2構造材側の側面に当接する第1板状部と、第2構造材の前記荷重支持部における軸方向に沿う側面に当接した状態に固定される一対の第2板状部とを有し、
一対の第2板状部は、第1板状部から垂直に突出して設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造材の接合構造。
【請求項8】
前記金物は、第1構造材の前記荷重支持部における第2構造材側の側面に当接する第1板状部と、第2構造材の前記荷重支持部に形成されたスリットに挿入された状態で、第2構造材に固定される1つ又は複数の第2板状部とを有し、
第2板状部は、第1板状部から垂直に突出して設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造材の接合構造。
【請求項9】
前記金物は、第1構造材の前記荷重支持部に形成されたスリットに挿入された状態で第1構造材に固定される第1板状部と、第2構造材の前記荷重支持部に形成されたスリットに挿入された状態で第2構造材に固定される第2板状部とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造材の接合構造。
【請求項10】
前記金物は、第2構造材の荷重支持部の下面に当接する下方支持板状部を有しており、該下方支持板状部は、第1及び第2板状部に対して垂直に設けられている、請求項7~9のいずれか一項に記載の構造材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、火災時に外部から加熱されると表面が燃えて炭化層が形成される。この炭化層が木材の表面に均一に形成されると木材内部への熱の侵入が抑制され、木材内部の構造的な劣化が抑制される。この特性を利用し、柱や梁等に使用する木材を太くし、燃焼後の木材の内部に長期荷重を支持し得る健全な断面が確保されるように、木材の表面に、燃えて炭化層を形成すべき所定の厚みの燃えしろを設ける技術が知られている。このような燃えしろを設けた構造材等を主要構造部に用いて、木造建築物を準耐火建築物とすることも行われている。
燃えしろを設けた構造材としては、例えば、荷重を受ける長尺かつ矩形横断面の構造部と、該構造部の横断面の少なくとも三方をその全長に亘って被覆する被覆部と、構造部と被覆部との間に層状に介在し、構造部に作用した荷重が被覆部に伝達されないようにする絶縁部とを含んで構成されたことを特徴とする木製建築部材が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
木材や木材と他の材料との複合材の表面に燃えしろを設けた耐火材の部材どうしを接合する技術は種々提案されており、例えば、特許文献2には、燃えしろ層の内側に位置する燃え止まり層を構成する燃え止まり部材が露出する凹部を柱に設け、該凹部に梁を当接させて、柱と梁を接合する構造材の接合構造が提案されている。また、特許文献3には、柱の側面に固定されたブラケットのガセットプレートを、梁の下面から該梁の木質心部へ延びるスリットに挿入した状態で、該スリットに栓部材を挿入した接合構造が提案されている。また、特許文献4には、柱部材と梁部材とが、木材よりも硬質で耐火性能に優れた材料からなる仕口部材を介して接合された接合構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-46286号公報
【特許文献2】特開2008-014036号公報
【特許文献3】特開2014-201984号公報
【特許文献4】特開2020-118001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の木製建築部材は、構造部が被覆部及び絶縁部で覆われているので、木製建築部材の構造部どうしを接合しようとしたときに、被覆部及び絶縁部が邪魔になってしまう場合がある。したがって、工場等で木製建築部材を製造するときには、木製建築部材における接合部に相当する部分は被覆部や絶縁部を施工せずに、建築現場で木製建築部材の構造部どうしを接合した後に、接合部における被覆部や絶縁部を施工する必要がある。このように、同文献の木製建築部材どうしを接合する際には、建築現場での作業に手間がかかってしまう。
【0006】
特許文献2の接合構造では、柱及び梁の接合部において、柱の燃え止まり層と梁の燃え止まり層とを隙間なく連続させることが困難である。柱の燃え止まり層と梁の燃え止まり層との間に隙間が生じてしまった場合、該隙間を埋める作業を行う必要があるが、同文献において、柱の燃え止まり層と梁の燃え止まり層とは柱の凹部内で対向するので、該隙間は該凹部内に位置する。そのため、同文献では、柱の燃え止まり層と梁の燃え止まり層との間の隙間を埋める作業に非常に手間がかかってしまう。
【0007】
特許文献3では、梁に形成されたスリット孔の形状に合う栓部材を製造する手間がかかってしまう。また梁のスリット孔において耐火性能が損なわれないようにするためには、栓部材をスリット孔に隙間なく入れる必要があるが、栓部材をスリット孔に隙間なく入れるには手間がかかる。
特許文献4では、仕口部材として、木材よりも硬質で耐火性能に優れたものを用いる必要があり、同文献の接合構造は汎用性が低い。
【0008】
本発明の目的は、簡便に施工することができる構造材の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1構造材の側面に、第2構造材が垂直に接合された構造材の接合構造であって、第1構造材及び第2構造材は、それぞれ、荷重支持部、該荷重支持部の軸方向に沿う側面を被覆する耐火性の被覆部材、及び該被覆部材の外側に配された燃えしろ層を備え、第2構造材の前記荷重支持部における第1構造材側の端面を第1構造材の前記被覆部材よりも第1構造材の径方向の外側に位置させる金物を介して、第2構造材が第1構造材に接合されている、構造材の接合構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便に施工することができる構造材の接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態の構造材の接合構造を模式的に示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIa-Ia線断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、金物の板状部を、第2構造材の荷重支持部に固定する方法を説明する模式断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の好ましい別の実施形態の構造材の接合構造を模式的に示す断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVa-IVa線断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の好ましい更に別の実施形態の構造材の接合構造を模式的に示す断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVa-Va線断面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5に示す接合構造の変形例を示す断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIa-VIa線断面図である。
【
図7】
図7(a)は、
図5に示す接合構造の変形例を示す断面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIa-VIIa線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の構造材の接合構造の好ましい一実施形態である接合構造1を
図1(a)及び
図1(b)に示す。接合構造1は、第1構造材10の側面に、第2構造材20が垂直に接合された構造材の接合構造である。
【0013】
第1構造材10は、例えば、建築物の柱として使用される構造用の角材である。第1構造材10は、荷重支持部11、荷重支持部11の軸方向Z1に沿う側面を被覆する耐火性の被覆部材12、及び被覆部材12の外側に配された燃えしろ層13を備える。
荷重支持部11は、該荷重支持部11単独で、固定荷重、積載荷重、積雪荷重の長期に生ずる荷重(長期荷重)に対して構造耐力上安全であるようにその断面設計がなされている。斯かる断面設計は公知である。荷重支持部11の横断面形状は四角形状であり、第1構造材10の横断面における、荷重支持部11の縦方向の長さ及び横方向の長さは、梁や柱の形状、或いは大きさ等によって適宜に変更することができる。
【0014】
被覆部材12は、荷重支持部11の軸方向Z1に沿う4側面を被覆している。被覆部材12は、第1構造材10の横断面の一方向X1における荷重支持部11の両側を被覆している第1被覆部材12aと、該一方向X1と直交する直交方向Y1における荷重支持部11の両側を被覆している第2被覆部材12bとを含んでいる。
第1被覆部材12aは、Y方向における両端が、荷重支持部11のY方向における両端と一致しており、Y方向の全域に亘って該荷重支持部11を被覆している。第1被覆部材12aは、ねじ等により荷重支持部11の側面に固定することができる。本実施形態において、第1被覆部材12aは、2枚の板状部材を重ね合わせた積層体からなる。積層体を構成する各板状部材は、複数の部材を留め付け材により繋ぎ合わせて構成されていてもよい。留め付け材としては、例えば、接着剤、ネジ、釘、ステープル等を用いることができる。また、第1被覆部材12aは、3枚以上の板状部材を重ね合わせた積層体であってもよい。積層体は、該積層体を構成する板状部材間が、予め接着剤等により接合されていてもよいし、接合されていなくてもよい。積層体は、該積層体を構成する板状部材間を接着すると共に又は接着することなく、荷重支持部11等の被固定部材に固定してもよい。後述する第2被覆部材12b及び角部補強部材15が積層体からなる場合も同様である。第1被覆部材12aは、1枚の板状部材であってもよい。
【0015】
本実施形態では、第1被覆部材12aの外面に、角部補強部材15が配されている。より具体的には、角部補強部材15は、第1被覆部材12aの外面に一部を重ねた状態に且つY方向において荷重支持部11の一端から一部が延出した状態に配されている(
図1(a)参照)。ここで、重ねた状態とは、角部補強部材15と第1被覆部材12aとが重なった部分を有している状態を意味し、角部補強部材15と第1被覆部材12aとが当接している状態のみならず、角部補強部材15と第1被覆部材12aとが離間している状態も含む。本実施形態において、角部補強部材15と第1被覆部材12aとは当接している。また、本実施形態において、角部補強部材15は、第1被覆部材12aの一端からも延出している。
【0016】
角部補強部材15は、ねじ等により第1被覆部材12aの外面に固定することができる。本実施形態において、角部補強部材15は、2枚の板状部材を重ね合わせた積層体からなる。積層体を構成する各板状部材は、複数の部材を留め付け材により繋ぎ合わせて構成されていてもよい。また、角部補強部材15は、3枚以上の板状部材を重ね合わせた積層体であってもよい。なお、角部補強部材15を構成する各板状部材は、留め付け材により繋ぎ合わせられている必要は必ずしも無く、該板状部材の端部どうしを突き合わせた状態であってもよい。角部補強部材15は、1枚の板状部材であってもよい。
【0017】
第2被覆部材12bは、X1方向における荷重支持部11の両端から延出し、その延出方向の先端面が、角部補強部材15における荷重支持部11の一端から延出した部分と対向している。また本実施形態において、第2被覆部材12bは、2枚の板状部材を重ね合わせた積層体からなる。また、第2被覆部材12bは、3枚以上の板状部材を重ね合わせた積層体であってもよい。第2被覆部材12bは、1枚の板状部材であってもよい。
【0018】
燃えしろ層13は、X1方向における第1被覆部材12aそれぞれの外側に配された第1燃えしろ層13aと、Y1方向における第2被覆部材12bそれぞれの外側に配された第2燃えしろ層13bとを含む。第1燃えしろ層13aは、第1被覆部材12aの外側に、第1被覆部材12aとの間に隙間6を有するようにスペーサー17を介して固定されている。燃えしろ層13の厚みTは、公知の燃えしろ設計に基づいて設定することができる。燃えしろ設計は、長期構造耐力や地震時等の短期構造耐力に対して必要な断面に、所定の燃えしろ分を足す設計手法であり、防耐火性能上の非損傷性(火災加熱を受けても建物を支える荷重に耐えたまま、崩壊しない性能)を荷重支持部11により確保した上で、その周囲に、要求される耐火性能に応じた厚みの燃えしろ層を設ける設計である。例えば、1時間の準耐火性能に対しては45mmの木材被覆を設ける燃えしろ設計が行われている。
【0019】
木材の一般的な炭化速度は約0.6mm/分であるため、燃えしろ層13の厚みTは、該燃えしろ層13に1時間の耐火性能を付与する観点から、好ましくは36mm以上、より好ましくは45mm以上である。燃えしろ層13の厚みTは、該燃えしろ層13を2時間の耐火性能を付与する観点から、好ましくは72mm以上であり、より好ましくは90mm以上である。燃えしろ層13の厚みTは、該燃えしろ層13に3時間の耐火性能を付与する観点からは、好ましくは108mm以上であり、より好ましくは120mm以上である。
【0020】
スペーサー17は、荷重支持部11の軸方向Z1及び軸方向Z1に直交する方向Z2のいずれか一方又は両方に間欠的又は連続的に配されている。
図1に示す実施形態において、スペーサー17は、軸方向Z1に間欠的又は連続的に配されている。
また、本実施形態において、スペーサー17はねじ又は釘(図示せず)により荷重支持部11及び第1被覆部材12aに固定されており、第1燃えしろ層13aはねじ又は釘(図示せず)によりスペーサー17に固定されている。第1燃えしろ層13aを固定するビス(図示せず)の先端は荷重支持部11まで達していないことが、該ねじ又は該釘が熱橋となることを防ぐ観点から好ましい。また、本実施形態においては、第1燃えしろ層13aに座彫り加工を施し、前記ビスが第1燃えしろ層13aの外面から突出しないようにすることが好ましい。
【0021】
本実施形態では、上述のように、第1構造材10の側面に第2構造材20が接合されている。第2構造材20は、例えば、木造建築物の梁として使用される構造用の角材である。
第2構造材20について更に詳述すると、第2構造材20は、荷重支持部21、荷重支持部21の軸方向Z2に沿う側面を被覆する耐火性の被覆部材22、及び被覆部材22の外側にはいされた燃えしろ層23を備える。
第2構造材20の荷重支持部21は、第1構造材10の荷重支持部11と同様に、荷重支持部21単独で、固定荷重、積載荷重、積雪荷重の長期に生ずる荷重(長期荷重)に対して構造耐力上安全であるようにその断面設計がなされている。
【0022】
第2構造材20の被覆部材22は、荷重支持部21の軸方向Z2に沿う3側面を被覆している。被覆部材22は、第2構造材20の横断面の一方向X2における荷重支持部21の両側を被覆している第1被覆部材22aと、該一方向X2と直交する直交方向Y2における荷重支持部21の片側を被覆している第2被覆部材22bとを含んでいる。本実施形態では、軸方向Z2における、第1被覆部材22a、第2被覆部材22b及び荷重支持部21の端部の位置は一致しており、第1被覆部材22a及び第2被覆部材22bは、軸方向Z2の全域にわたって荷重支持部21を被覆している。
【0023】
第1被覆部材22a及び第2被覆部材22bは、ねじ等により荷重支持部21の側面に固定することができる。本実施形態において、第1被覆部材22a及び第2被覆部材22bは、2枚の板状部材を重ね合わせた積層体からなる。積層体を構成する各板状部材は、複数の部材を留め付け材により繋ぎ合わせて構成されていてもよい。また、第1被覆部材22a及び第2被覆部材22bは、3枚以上の板状部材を重ね合わせた積層体であってもよい。積層体は、該積層体を構成する板状部材間が、予め接着剤等により接合されていてもよいし、接合されていなくてもよい。なお、第1被覆部材22a及び第2被覆部材22bは、耐火性を有する1枚の板状部材であってもよい。
【0024】
燃えしろ層23は、X2方向における第1被覆部材22aそれぞれの外側に配された第1燃えしろ層23aと、Y2方向における第2被覆部材22bの外側に配された第2燃えしろ層23bとを含む。第1燃えしろ層23aは、第1被覆部材22aの外側に、第1被覆部材22aとの間に隙間6を有するようにスペーサー27を介して固定されている。燃えしろ層23の厚みTは、第1構造材10の燃えしろ層13と同様に、公知の燃えしろ設計に基づいて設定することができる。
【0025】
スペーサー27は、荷重支持部21の軸方向Z2及び軸方向Z2に直交する方向Z1のいずれか一方又は両方に、間欠的又は連続的に配されている。
図1に示す実施形態において、スペーサー27は、Z1方向に間欠的又は連続的に配されている。
本実施形態において、第2構造材20のスペーサー27を荷重支持部21及び第1被覆部材22aに固定する方法は、第1構造材10のスペーサー17を荷重支持部11及び第1被覆部材12aに固定する方法と同様であってもよい。また、第2構造材20の第1燃えしろ層23aをスペーサー27に固定する方法は、第1構造材10の第1燃えしろ層13aをスペーサー17に固定する方法と同様であってもよい。
【0026】
第1構造材10と第2構造材20とは、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、金物3を介して接合されている。金物3は、第2構造材20の荷重支持部21における第1構造材10側の端面21aを、第1構造材10の被覆部材12よりも第1構造材10の径方向の外側に位置させる機能を有するものである。第1構造材10の径方向とは、第1構造材10の荷重支持部11における、第2構造材20と対向する面11eから離される方向を意味する。
【0027】
金物3は、第1構造材10の荷重支持部11の側面11eに当接する板状部32aと、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aに当接する板状部32bと、これらの板状部32a,32b間を連結する連結部31とを有する。本実施形態では、金物3は、一方向に延びるウェブ部、及びウェブ部の該一方向の両端それぞれに位置し、該一方向と直交する方向に延びるフランジ部を有するH型鋼である。板状部32a,32bは、フランジ部に相当し、連結部31はウェブ部に相当する。
【0028】
第1構造材10の荷重支持部11の側面11eに当接する板状部32aは、第1構造材10の荷重支持部11の側面11eに固定されており、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aに当接する板状部32bは、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aに固定されている。板状部32a,32bの固定手段としては、ボルト及びナット等、公知の締結具を用いることができる。本実施形態では、第1構造材10には、荷重支持部11の側面11eが露出する凹部19が形成されており、板状部32aは、該凹部19において、荷重支持部11の側面11eに固定されている。凹部19は、第1構造材10の燃えしろ層13及び被覆部材12を貫通するように、燃えしろ層13及び被覆部材12の一部を切り欠くことにより形成することができる。
【0029】
本実施形態では、第1構造材10と第2構造材20とを接合する前の状態において、金物3は、第1構造材10に固定されているが、第2構造材20には固定されていない状態であることが好ましい。こうすることにより、金物3が固定された第1構造材10と、第2構造材20とを建築現場に搬入し、第1構造材10に固定された金物3に第2構造材20を固定するだけで、第1構造材10に第2構造材20を接合することができるので、接合構造1を簡便に施工することができる。この観点から、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aに当接する板状部32bの固定方法は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、板状部32bに、板状部32bから垂直に突出する荷重支持部挿入部5を設け、該荷重支持部挿入部5を、第2構造材20の荷重支持部21に予め形成したスリット等の被挿入部26に挿入した上で、第2構造材20の側面から、荷重支持部21及び荷重支持部挿入部5を貫通するようにドリフトピンを打ち込む方法が好ましい。
【0030】
荷重支持部21及び荷重支持部挿入部を貫通するようにドリフトピンを打ち込む場合、荷重支持部挿入部5におけるドリフトピンが挿入される部分に穴をあけておくことが好ましい。荷重支持部挿入部5は、板状部32bに、断面T字型又は断面コ字型の鋼材を、溶接、ボルトによる締結等の任意の方法によって接合することにより設けることができ(
図3(a)及び
図3(b)参照)、また、板状部32bに、長尺板状の鋼材を断面T字状に結合又は一体成形することにより設けることもできる。
図3(a)には、金物3の板状部32bに断面T字型の鋼材51Aをボルト8によって接合することによって、板状部32bに荷重支持部挿入部5を設けた例が示されている。
図3(b)には、金物3の板状部32bに断面コ字型の鋼材51Bをボルト8によって接合することによって、板状部32bに荷重支持部挿入部5を設けた例が示されている。
【0031】
第2構造材20の荷重支持部21の端部に、ボルト8の端部8aが収容される凹部21dが形成されていてもよい(
図3(a)及び
図3(b)参照)。前記凹部21dは、第2構造材20を吊り降ろして第1構造材10に接合する際に、第2構造材20の吊り降ろしの障害とならないようにする観点から、第2構造材20の吊り降ろし方向に延びる溝であることが好ましい。より具体的には、第2構造材20におけるY2方向の下端から、ボルト8の対応位置まで、連続した溝であることが好ましく、第2構造材20のY2方向の全長に亘る溝であってもよい。
図3(a)及び
図3(b)では、X2方向に離間した複数の溝状の凹部21dが示されているが、第2構造材20の荷重支持部21の端部に、複数のボルト8の端部8aの全てが収容される1つの溝状の凹部21dが形成されていてもよい。ボルト8は両ねじボルトであってもよいし、片ねじボルトであってもよい。
図3(a)及び
図3(b)では、第1構造材10における荷重支持部11以外の部材、第2構造材20における荷重支持部21以外の部材、及びドリフトピンの図示を省略している。
板状部32bから垂直に突出する荷重支持部挿入部5には、
図3(a)及び(b)に示すように、板状部32bに断面T字型又は断面コ字型の部材を固定して設けたものに限られず、板状部32bに、溶接、一体成形等により、荷重支持部挿入部を直接設けたものも含まれる。荷重支持部挿入部5は板状であることが好ましい。
【0032】
次に、本実施形態の接合構造1の施工方法の一例について説明する。
製造工場において、第1構造材10の荷重支持部11の一部に、被覆部材12及び燃えしろ層13に覆われていない部位を設けておき、該部位における荷重支持部11の側面11eに、金物3の板状部32aを接合しておく。
その第1構造材10を建築現場に搬入して、軸方向Z1を鉛直方向に一致させた状態に第1構造材10を立設させる。そして、揚重機等により吊り上げた第2構造材20を、第1構造材10の軸方向Z1の上方から、第2構造材20の軸方向Z2において、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aの位置と、金物3の板状部32bの端面の位置とが合うように降下させる。そして、第1構造材10の軸方向Z1において、第2構造材20の荷重支持部21と金物3の板状部32bとが重なったところで第2構造材20の降下を停止し、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aに金物3の板状部32bを固定する。このようにして、接合構造1を施工することができる。
【0033】
本実施形態の接合構造1は、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aが第1構造材10の被覆部材12よりも第1構造材10の径方向の外側に位置するところ、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aと第1構造材10の被覆部材12とが上述のような位置関係にあることの利点は以下のとおりである。例えば、第2構造材20を第1構造材10の側面に接合するために、上述のように第2構造材20を第1構造材10の軸方向Z1の上方から降ろしたときに、第2構造材20の荷重支持部21と第1構造材10の被覆部材12とが干渉することなく、第2構造材20を金物3の板状部32bと重なる位置まで降ろすことができる。したがって、第1構造材10の被覆部材12が施工されている場合であっても、第1構造材10と第2構造材20とを接合することができる。つまり、例えば、工場等で予め被覆部材12を施工しておき、建築現場においては第1構造材10と第2構造材20との接合作業を行うだけで、第1構造材10と第2構造材20とを接合することができる。
【0034】
本実施形態においては、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、金物3は、第2構造材20の荷重支持部21の端面21aを第1構造材10の燃えしろ層13よりも第1構造材10の径方向の外側に位置させることが好ましい。第2構造材20の荷重支持部21の端面21aを第1構造材10の燃えしろ層13よりも第1構造材10の径方向の外側に位置させることによって、上述のように第2構造材20を第1構造材10の軸方向Z1の上方から降ろしたときに、第2構造材20の荷重支持部21と第1構造材10の燃えしろ層13とが干渉することなく、第2構造材20を金物3の板状部32bと重なる位置まで降ろすことができる。
また本実施形態の接合構造1によれば、一対の第1構造材10を一定の間隔で立設させたのち、両者間に梁材としての第2構造材20を上方から降ろして適正位置に配置することができるため、施工が容易であるといった効果も奏される。
このように、本実施形態の接合構造1は、簡便に施工することができる。
【0035】
本実施形態においては、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、金物3の周囲に遮蔽部材42,43が配されている。具体的には、金物3の周囲における水平方向X2の両側及び鉛直方向Y2の下側に遮蔽部材42,43が配されている。本実施形態では、金物3の鉛直方向Y2の上側には遮蔽部材は配されていないが、金物3の鉛直方向Y2の上側に遮蔽部材が配されていてもよい。以下、金物3の周囲における水平方向X2の両側に配されている遮蔽部材42を第1遮蔽部材42ともいい、金物3の周囲における鉛直方向Y2の下側に配されている遮蔽部材43を第2遮蔽部材43ともいう。
【0036】
第1遮蔽部材42の一端部42bは、第1構造材10の第2被覆部材12bに当接しており、第1遮蔽部材42の他端部42aは、第2構造材20の第1被覆部材22aに当接している(
図2参照)。第2遮蔽部材43の一端部43bは、第1構造材10の第2被覆部材12bに当接しており、第2遮蔽部材43の他端部43aは、第2構造材20の第2被覆部材22bに当接している(
図1(b)参照)。
また本実施形態では、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように、目地材41が配されている。遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように、目地材41が配されていることにより、X2方向外方からの熱の侵入を防ぐことができるので、接合構造1の耐火性能を向上させることができる。
【0037】
遮蔽部材42,43の他端部42a,43aは、第2構造材20の被覆部材22に当接していなくてもよい。遮蔽部材42,43が第2構造材20の被覆部材22に当接せずに、遮蔽部材42,43と第2構造材20の被覆部材22とが離間している場合、接合構造1の耐火性能を向上させる観点から、遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように、目地材41が配されていることが好ましい。
鉛直方向Y2において、第1遮蔽部材42の下端は、金物3の下端よりも上側に位置していてもよいし、金物3の下端と同じ位置に位置していてもよいし、金物3の下端よりも下側に位置していてもよい。
【0038】
目地材41としては、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、熱膨張性断熱材、モルタル板、コンクリートブロック、金属板、アルミテープなどが挙げられ、これらの中でも、遮蔽部材42や第1被覆部材22aに対して少量の接着剤、釘、ねじ又はステープル等で固定することができる観点から、石膏ボード又はケイ酸カルシウム板を用いることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態では、
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、遮蔽部材42,43の外面42f,43fは、第2構造材20の被覆部材22の外面22fと同一面上に存在することが好ましい。換言すれば、遮蔽部材42,43の外面42f,43fと、被覆部材22の外面22fとが面一であることが好ましい。
本実施形態では、第1遮蔽部材42が、該第1遮蔽部材42と金物3との間に位置する位置調整部材44に固定されることによって、第1遮蔽部材42の外面42fと、第1被覆部材22aの外面22fとが面一となっている。鉛直方向Y2において、位置調整部材44の下端は、金物3の下端よりも上側に位置していてもよいし、金物3の下端と同じ位置に位置していてもよいし、金物3の下端よりも下側に位置していてもよい。
また、第2遮蔽部材43が、金物3の鉛直方向Y2の下端よりも低い位置まで延伸される第1遮蔽部材42や位置調整部材44に固定されることによって、第2遮蔽部材43の外面43fと、第2被覆部材22bの外面22fとが面一となっている。遮蔽部材42,43の外面42f,43fと、被覆部材22の外面22fとが面一であることにより、目地材41を、遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように施工しやすくなる。位置調整部材44は、例えば接着剤等によって金物3の連結部31に固定することができる。
【0040】
本実施形態では、第1構造材10に固定された金物3に第2構造材20を固定する前に、遮蔽部材42,43を、位置調整部材44を介して金物3に固定することが好ましい。金物3を第1構造材10に固定した後に、遮蔽部材42,43を金物3に固定してもよいし、遮蔽部材42,43を金物3に固定した後に、該金物3を第1構造材10に固定してもよい。
【0041】
次に、本発明の別の実施形態について、
図4(a)及び
図4(b)、
図5(a)及び
図5(b)、
図6(a)及び
図6(b)並びに
図7(a)及び
図7(b)を参照しながら説明する。本発明の別の実施形態における特に説明しない構成については、
図1(a)及び
図1(b)に示す実施形態についての説明が適宜適用される。
【0042】
図4(a)及び
図4(b)に示す接合構造1Bは、
図1(a)及び
図1(b)に示す接合構造1とは、金物3Bの形状が異なる。具体的には、接合構造1Bが有する金物3Bは、第1構造材10の荷重支持部11における第2構造材20側の側面11eに当接する第1板状部35と、第2構造材20の荷重支持部21における軸方向Z2に沿う側面21eに当接した状態に固定される一対の第2板状部36,36とを有する。金物3Bは、一対の第2板状部36,36を有している。一対の第2板状部36,36は、第1板状部35から突出して設けられている。
【0043】
第1板状部35は、第1構造材10の荷重支持部11の側面11eに固定されており、第2板状部36,36は、第2構造材20の荷重支持部21の側面21eに固定されている。第1板状部35及び第2板状部36の固定手段としては、ボルト及びナット等、公知の締結具を用いることができる。本実施形態では、第1板状部35は、第1構造材10の凹部19において、荷重支持部11の側面11eに固定されている。
【0044】
金物3Bは、金物3と同様に、第1構造材10と第2構造材20とを接合する前の状態において、第1構造材10に固定されているが、第2構造材20には固定されていない状態であることが好ましい。こうすることにより、金物3Bが固定された第1構造材10と、第2構造材20とを建築現場に搬入し、第1構造材10に固定された金物3Bに第2構造材20を固定するだけで、第1構造材10に第2構造材20を接合することができるので、接合構造1を簡便に施工することができる。この観点から、第2板状部36の固定方法は、一対の第2板状部36,36間に、第2構造材20の荷重支持部21の端部を挿入した状態で、一対の第2板状部36,36それぞれの外側から、第2板状部36及び荷重支持部21を貫通するようにドリフトピンを打ち込む方法が好ましい。第2板状部36及び荷重支持部21を貫通するようにドリフトピンを打ち込む場合、第2板状部36におけるドリフトピンが挿入される部分に穴をあけておくことが好ましい。
【0045】
また本実施形態では、金物3Bは、
図4(b)に示すように、第2構造材20の荷重支持部21の下面に当接する下方支持板状部37を有していることが好ましい。下方支持板状部37は、第1板状部35及び第2板状部36に対して垂直に設けられている。金物3Bが下方支持板状部37を有していることにより、第2構造材20の荷重支持部21を支持することができるので、第1構造材10と第2構造材20とを一層簡便に接合することができる。
【0046】
また、接合構造1Bでは、第2構造材20の軸方向Z2において、第2構造材20の被覆部材22は、第2構造材20の荷重支持部21の端縁まで達していない。金物3Bの周囲における水平方向X2の両側及び鉛直方向Y2の下側には、遮蔽部材42,43が配されている。第1遮蔽部材42の一端部は、第1構造材10の第2被覆部材12bに当接しており、第1遮蔽部材42の他端部は、第2構造材20の第1被覆部材22aに当接している(
図4(a)参照)。第2遮蔽部材43の一端部43bは、第1構造材10の第2被覆部材12bに当接しており、第2遮蔽部材43の他端部43aは、第2構造材20の第2被覆部材22bに当接している(
図4(b)参照)。
【0047】
接合構造1Bにおいても、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように、目地材41が配されている。遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように、目地材41が配されていることにより、X2方向外方からの熱の侵入を防ぐことができるので、接合構造1の耐火性能を向上させることができる。なお、接合構造1Bにおいても、遮蔽部材42,43の他端部42a,43aは、第2構造材20の被覆部材22に当接していなくてもよい。遮蔽部材42,43が第2構造材20の被覆部材22に当接せずに、遮蔽部材42,43と第2構造材20の被覆部材22とが離間している場合、接合構造1の耐火性能を向上させる観点から、遮蔽部材42,43の他端部42a,43a及び第2構造材20の被覆部材22の端部の両方と重なるように、目地材41が配されていることが好ましい。
【0048】
図5(a)及び
図5(b)に示す接合構造1Cは、
図1(a)及び
図1(b)に示す接合構造1とは、金物3Cの形状が異なる。具体的には、接合構造1Cが有する金物3Cは、第1構造材10の荷重支持部11における第2構造材20側の側面11eに当接する第1板状部35と、第2構造材20に固定される第2板状部36cとを有している。金物3Cは、第2板状部36cを1つ又は複数有するところ、
図5(a)及び
図5(b)に示す実施形態では、2つの第2板状部36cを有する。第2板状部36cは、第1板状部35から垂直に突出して設けられている。第2板状部36cは、第1板状部35におけるX1方向の両端部に位置している。
【0049】
第1板状部35は、第1構造材10の荷重支持部11の側面11eに固定されている。第1板状部35の固定手段としては、ボルト及びナット等、公知の締結具を用いることができる。本実施形態では、第1板状部35は、第1構造材10の凹部19において、荷重支持部11の側面11eに固定されている。
【0050】
第2板状部36cは、第2構造材20の荷重支持部21に形成されたスリット26に挿入された状態で、第2構造材20に固定される。第2板状部36cの固定方法としては、第2板状部36cをスリット26に挿入した状態で、第2構造材20の側面から、荷重支持部21及び第2板状部36cを貫通するようにドリフトピンを打ち込む方法が好ましい。荷重支持部21及び第2板状部36cを貫通するようにドリフトピンを打ち込む場合、第2板状部36cにおけるドリフトピンが挿入される部分に穴をあけておくことが好ましい。
【0051】
金物3Cは、金物3と同様に、第1構造材10と第2構造材20とを接合する前の状態において、第1構造材10に固定されているが、第2構造材20には固定されていない状態であることが好ましい。こうすることにより、金物3Cが固定された第1構造材10と、第2構造材20とを建築現場に搬入し、第1構造材10に固定された金物3Cに第2構造材20を固定するだけで、第1構造材10に第2構造材20を接合することができるので、接合構造1を簡便に施工することができる。
【0052】
また本実施形態では、金物3Cは、
図5(b)に示すように、第2構造材20の荷重支持部21の下面に当接する下方支持板状部37を有していることが好ましい。下方支持板状部37は、第1板状部35及び第2板状部36に対して垂直に設けられている。金物3Cが下方支持板状部37を有していることにより、第2構造材20の荷重支持部21を支持することができるので、第1構造材10と第2構造材20とを一層簡便に接合することができる。
【0053】
図5(a)及び
図5(b)に示す実施形態では、金物3Cは、2つの第2板状部36cを有しているが、金物3Cは、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、第2板状部36cを1つのみ有していてもよい。
図6(a)及び
図6(b)に示す例では、第2板状部36cは、第1板状部35におけるX1方向の中央域に位置している。
【0054】
図7(a)及び
図7(b)に示す接合構造1Dは、
図1(a)及び
図1(b)に示す接合構造1とは、金物3Dの形状が異なる。具体的には、接合構造1Dが有する金物3Dは、第1構造材10に固定される第1板状部35dと、第2構造材20に固定される第2板状部36dとを有している。第1板状部35dと第2板状部36dとは連続する一つの部材であってもよいし、それぞれ別体の部材であってもよい。
図7(a)及び
図7(b)に示す実施形態では、金物3Dは一枚の板状の部材からなり、第1板状部35dと第2板状部36dとは連続している。
【0055】
第1板状部35dは、第1構造材10の荷重支持部11に形成されたスリット16に挿入された状態で、第1構造材10に固定される。第1板状部35dの固定方法としては、第1板状部35dをスリット16に挿入した状態で、第1構造材10の側面から、荷重支持部11及び第1板状部35dを貫通するようにドリフトピンを打ち込む方法が好ましい。荷重支持部11及び第1板状部35dを貫通するようにドリフトピンを打ち込む場合、第1板状部35dにおけるドリフトピンが挿入される部分に穴をあけておくことが好ましい。
【0056】
第2板状部36dは、第2構造材20の荷重支持部21に形成されたスリット26に挿入された状態で、第2構造材20に固定される。第2板状部36dの固定方法としては、第2板状部36dをスリット26に挿入した状態で、第2構造材20の側面から、荷重支持部21及び第2板状部36dを貫通するようにドリフトピンを打ち込む方法が好ましい。荷重支持部21及び第2板状部36dを貫通するようにドリフトピンを打ち込む場合、第2板状部36dにおけるドリフトピンが挿入される部分に穴をあけておくことが好ましい。
【0057】
金物3Dは、金物3と同様に、第1構造材10と第2構造材20とを接合する前の状態において、第1構造材10に固定されているが、第2構造材20には固定されていない状態であることが好ましい。こうすることにより、金物3Dが固定された第1構造材10と、第2構造材20とを建築現場に搬入し、第1構造材10に固定された金物3Dに第2構造材20を固定するだけで、第1構造材10に第2構造材20を接合することができるので、接合構造1を簡便に施工することができる。
金物3Dは、第2構造材20の荷重支持部21の下面に当接する下方支持板状部を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0058】
次に、上述した各実施形態に共通する事項について説明する。
燃えしろ層13,23は、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT)、集成材、単板積層材(LVL)、合板、製材、パーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)からなる群から選択される材料で形成することができ、これらの中でも、幅広で長スパンの材料の製造が容易で、かつ大規模な木造建築で美観を担保し易い観点から、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT)、集成材、単板積層材(LVL)、合板又は製材からなる群から選択される材料で形成することが好ましい。CLTや集成材は、断面が長方形状のラミナを、該長方形の頂点どうしを重ねるようにして、Y1方向又はY2方向に複数積層したものなどであってもよい。
【0059】
また、第1被覆部材12a,22aとしては、石膏ボード、耐水石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、ALC板、木片セメント板、木毛セメント板、窯業系サイディング、モルタル、難燃木材等を用いることができ、耐火性能の観点から、石膏ボード、耐水石膏ボード、ケイ酸カルシウム板を用いることが好ましい。
【0060】
また、スペーサー17,27としては、木材や鋼製材、ステンレス鋼製材等を用いることができ、熱による変形のしにくさの観点から、木材を用いることが好ましい。
【0061】
角部補強部材15としては、石膏ボード、耐水石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、ALC板、木片セメント板、木毛セメント板、窯業系サイディング、モルタル、難燃木材等を用いることができ、耐火性能の観点から、石膏ボード、耐水石膏ボード、ケイ酸カルシウム板を用いることが好ましい。角部補強部材15を構成する材料と、被覆部材12,22を構成する材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
第2被覆部材12b,22bとしては、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、耐水石膏ボード、ALC板、木片セメント板、木毛セメント板、窯業系サイディング、モルタル、難燃木材等を用いることができ、熱収縮を抑える観点から、ケイ酸カルシウム板を用いることが好ましい。
遮蔽部材42としては、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、耐水石膏ボード、ALC板、木片セメント板、木毛セメント板、窯業系サイディング、モルタル、難燃木材等を用いることができ、熱収縮を抑える観点及び鋼材に接着施工しやすい観点から、ケイ酸カルシウム板を用いることが好ましい。
位置調整部材44としては、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、耐水石膏ボード、ALC板、木片セメント板、木毛セメント板、窯業系サイディング、モルタル、難燃木材等を用いることができ、熱収縮を抑える観点及び鋼材に接着施工しやすい観点から、ケイ酸カルシウム板を用いることが好ましい。
【0063】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されない。
例えば、上述した各実施形態では、第1燃えしろ層13a,23aは、スペーサー17,27を介して第1被覆部材12a,22aに固定されていたが、第1燃えしろ層13a,23aは、スペーサー17,27を介さずに第1被覆部材12a,22aに固定されていてもよい。また、第2燃えしろ層13b,23bは、第2被覆部材12b,22bとの間に隙間を有するようにスペーサー17,27を介して固定されていてもよい。
また、第1構造材10は、第2燃えしろ層13bを有していなくてもよいし、第2構造材20は、第2燃えしろ層23bを有していなくてもよい。
【0064】
また、上述した各実施形態では、第2構造材20は、第1構造材10における第2被覆部材12b側の面側に接合されていたが、第2構造材20は、第1構造材10における第1被覆部材12a側の面側に接合されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,1B,1C 接合構造
10 第1構造材
11 荷重支持部
12 被覆部材
13 燃えしろ層
20 第2構造材
21 荷重支持部
22 被覆部材
23 燃えしろ層
3,3B,3C 金物