(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000647
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20221222BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221222BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20221222BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610B
H05K7/06 C
H05K5/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101592
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】大道寺 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 有延
(72)【発明者】
【氏名】曹 衡
【テーマコード(参考)】
4E360
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AB12
4E360BD07
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA11
4E360EA24
4E360EA29
4E360EC05
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED07
4E360EE09
4E360EE20
4E360GA24
4E360GA29
4E360GA53
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC08
5G361BA03
5G361BB01
5G361BC01
(57)【要約】
【課題】流動可能な状態で貫通孔に充塞された防水用樹脂が、固まって流動不可な状態となるまでの間に、当該貫通孔にしっかり留まることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】電気接続箱10は、バスバー20と、前記バスバー20をインサート部品としてインサート成形された成形樹脂部30と、前記成形樹脂部30に被さって防水空間12を形成するケース40と、前記成形樹脂部30を貫通するように形成された貫通孔34における第1開口部35を塞ぐ閉塞部50と、前記貫通孔34に充塞された防水用樹脂60と、を備える。前記貫通孔34は、第1保持部31と第2保持部32との間に前記バスバー20の中間部23の全周を露出させるように形成されている。前記閉塞部50は、前記成形樹脂部30とは別に設けられた部材である。前記防水用樹脂60は、前記バスバー20の前記中間部23の全周を覆いつつ、前記閉塞部50に達している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーと、
前記バスバーをインサート部品としてインサート成形された成形樹脂部と、
前記成形樹脂部に被さって防水空間を形成するケースと、
前記成形樹脂部を貫通するように形成された貫通孔における第1開口部及び第2開口部のうち前記第1開口部を塞ぐ閉塞部と、
前記貫通孔に充塞された防水用樹脂と、
を備え、
前記成形樹脂部は、前記バスバーの一端部を保持する第1保持部と、前記バスバーの他端部を前記防水空間に露出させつつ保持する第2保持部とを有し、
前記貫通孔は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に前記バスバーの中間部の全周を露出させるように形成されており、
前記閉塞部は、前記成形樹脂部とは別に設けられた部材であり、
前記防水用樹脂は、前記バスバーの前記中間部の全周を覆いつつ、前記閉塞部に達している、電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱であって、
前記閉塞部は、前記ケースと一体に設けられている、電気接続箱。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気接続箱であって、
前記閉塞部と前記成形樹脂部における前記貫通孔の周縁部とが溶着されている、電気接続箱。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気接続箱であって、
前記閉塞部と前記成形樹脂部における前記貫通孔の周縁部との一方には環状の溝が形成され、他方には前記溝に嵌る環状の凸部が設けられている、電気接続箱。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気接続箱であって、
前記閉塞部のうち前記貫通孔の底となる部分が、前記貫通孔に入り込んでいる、電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バスバーと、バスバーをインサート部品としてインサート成形されたハウジングとを備える回路構成体の防水構造を開示している。当該ハウジングには貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、バスバーの途中部分を全周に亘り開放している。当該貫通孔に防水用接着剤が充塞されることによって、バスバーとハウジングとの隙間から防水空間へ水が浸入することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水用接着剤は、流動可能な状態で貫通孔に充塞された後、固まって流動不可な状態となる。この間、防水用接着剤が、当該貫通孔にしっかり留まることが望まれる。
【0005】
そこで、流動可能な状態で貫通孔に充塞された防水用樹脂が、固まって流動不可な状態となるまでの間に、当該貫通孔にしっかり留まることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電気接続箱は、バスバーと、前記バスバーをインサート部品としてインサート成形された成形樹脂部と、前記成形樹脂部に被さって防水空間を形成するケースと、前記成形樹脂部を貫通するように形成された貫通孔における第1開口部及び第2開口部のうち前記第1開口部を塞ぐ閉塞部と、前記貫通孔に充塞された防水用樹脂と、を備え、前記成形樹脂部は、前記バスバーの一端部を保持する第1保持部と、前記バスバーの他端部を前記防水空間に露出させつつ保持する第2保持部とを有し、前記貫通孔は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に前記バスバーの中間部の全周を露出させるように形成されており、前記閉塞部は、前記成形樹脂部とは別に設けられた部材であり、前記防水用樹脂は、前記バスバーの前記中間部の全周を覆いつつ、前記閉塞部に達している、電気接続箱である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、流動可能な状態で貫通孔に充塞された防水用樹脂が、固まって流動不可な状態となるまでの間に、当該貫通孔にしっかり留まることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる電気接続箱を示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施形態1にかかる電気接続箱を示す斜視図である。
【
図3】
図3は実施形態1にかかる電気接続箱を示す平面図である。
【
図5】
図5はケースを被せる前の電気接続箱を示す平面図である。
【
図6】
図6はケースを被せる前の電気接続箱を示す断面図である。
【
図7】
図7は防水用樹脂を充填する前の電気接続箱を示す断面図である。
【
図8】
図8は防水用樹脂を充填する前の電気接続箱を示す断面図である。
【
図9】
図9は電気接続箱の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の電気接続箱は、次の通りである。
【0011】
(1)バスバーと、前記バスバーをインサート部品としてインサート成形された成形樹脂部と、前記成形樹脂部に被さって防水空間を形成するケースと、前記成形樹脂部を貫通するように形成された貫通孔における第1開口部及び第2開口部のうち前記第1開口部を塞ぐ閉塞部と、前記貫通孔に充塞された防水用樹脂と、を備え、前記成形樹脂部は、前記バスバーの一端部を保持する第1保持部と、前記バスバーの他端部を前記防水空間に露出させつつ保持する第2保持部とを有し、前記貫通孔は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に前記バスバーの中間部の全周を露出させるように形成されており、前記閉塞部は、前記成形樹脂部とは別に設けられた部材であり、前記防水用樹脂は、前記バスバーの前記中間部の全周を覆いつつ、前記閉塞部に達している、電気接続箱である。貫通孔の第1開口部が閉塞部によって塞がれることによって、貫通孔の部分は第2開口部が開口しつつ閉塞部が底となる有底穴状を呈する。これにより、流動可能な状態で第2開口部から貫通孔に充塞された防水用樹脂が、固まって流動不可な状態となるまでの間に、当該貫通孔にしっかり留まることができる。
【0012】
(2)(1)の電気接続箱において、前記閉塞部は、前記ケースと一体に設けられていてもよい。これにより、閉塞部がケースとは別の部材として設けられる場合と比べて、部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
(3)(1)又は(2)の電気接続箱において、前記閉塞部と前記成形樹脂部における前記貫通孔の周縁部とが溶着されていてもよい。これにより、溶着部分によって閉塞部と成形樹脂部との間の隙間が塞がれ、流動可能な状態の防水用樹脂が閉塞部と成形樹脂部との隙間から漏れることが抑制される。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの電気接続箱において、前記閉塞部と前記成形樹脂部における前記貫通孔の周縁部との一方には環状の溝が形成され、他方には前記溝に嵌る環状の凸部が設けられていてもよい。これにより、流動可能な状態の防水用樹脂が閉塞部と成形樹脂部との間に隙間に入り込んだ場合でも、外部に漏れにくくなる。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの電気接続箱において、前記閉塞部のうち前記貫通孔の底となる部分が、前記貫通孔に入り込んでいてもよい。これにより、防水用樹脂の使用量を少なくできる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電気接続箱の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる電気接続箱10について説明する。
図1及び
図2は、実施形態1にかかる電気接続箱10を示す斜視図である。
図1及び
図2は、互いに別の視点から見た斜視図である。
図3は実施形態1にかかる電気接続箱10を示す平面図である。
図4は
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5及び
図6はそれぞれケース40を被せる前の電気接続箱10を示す平面図及び断面図である。
図7及び
図8は防水用樹脂60を充填する前の電気接続箱10を示す断面図である。なお、
図6及び
図7は、
図4と同様の位置での断面図である。
図8は、
図3のVIII-VIII線に沿った位置での断面図である。
【0018】
電気接続箱10は、バスバー20と成形樹脂部30とケース40と閉塞部50と防水用樹脂60とを備える。電気接続箱10には、ボルト26、回路部品などが設けられている。
【0019】
バスバー20は、車両における導電路の一部をなす。例えば、バスバー20は、車両におけるバッテリと、モータなどの負荷とを結ぶ電力経路の一部をなす。バスバー20は、金属製である。例えば、バスバー20は、金属板がプレス加工(曲げ加工)されて形成される。本例では、バスバー20は、2つ設けられる。2つのバスバー20の一方は、入力用のバスバー20であり、他方は、出力用のバスバー20である。各バスバー20の一端部21は、外部の回路と接続可能に設けられている。本例では、各バスバー20の一端部21にボルト26が設けられている。各バスバー20は、当該ボルト26を介して相手側部材(例えば、電線端部の端子)と電気的に接続される。各バスバー20は、他端部22が一端部21よりも幅広となるように形成されている。2つのバスバー20の他端部22は、FET70を介して互いに電気的に接続されている。FET70は、バスバー20間の通電状態のオンオフを切り替えるスイッチング素子である。2つのバスバー20間の通電状態がFET70を介して制御される。
【0020】
成形樹脂部30は、バスバー20をインサート部品としてインサート成形されている。金型に対してバスバー20が所定の位置にセットされた状態で、金型内に樹脂が注入されて成形樹脂部30とされる。成形樹脂部30は、第1保持部31と第2保持部32とを有する。成形樹脂部30には、貫通孔34が形成されている。
【0021】
第1保持部31は、バスバー20の一端部21を保持する。2つのバスバー20の一端部21は、
図5の紙面左右方向に並んでいる。第1保持部31は、ボルト26も保持している。第1保持部31は、バスバー20の上面を露出させつつバスバー20を保持する。なお、ここではバスバー20の上面は、
図4の紙面において上方を向く面とされる。端子がバスバー20と接触しつつ、ボルト26を介してねじ止めされることによって、バスバー20と端子とが電気的に接続される。
【0022】
第2保持部32は、バスバー20の他端部22を保持する。第2保持部32は、ケース40との間に防水空間12を形成する。第2保持部32は、バスバー20の他端部22を防水空間12に露出させている。第2保持部32は、バスバー20の上面を露出させつつバスバー20を保持する。2つのバスバー20の他端部22は、
図5の紙面上下方向に並んでいる。
図4に示すように2つのバスバー20のうち一方のバスバー20は、第2保持部32に保持される部分において折返されている。かかる一方のバスバー20の上面は、他方のバスバー20の上面よりも第1保持部31から遠い位置で露出する。第2保持部32において、外縁部に環状の第1凸部33が設けられている。第1凸部33は、防水空間12の周囲を一周するように連続的に設けられている。
【0023】
貫通孔34は、第1保持部31と第2保持部32との間に形成されている。貫通孔34は、成形樹脂部30を貫通する。成形樹脂部30には、貫通孔34の第1開口部35及び第2開口部36が設けられる。貫通孔34は、バスバー20の中間部23の全周を露出させるように形成されている。ここでは、1つの貫通孔34によって2つのバスバー20の中間部23の全周が露出する。貫通孔34の軸方向と、バスバー20の中間部23の延在方向とは、交差(ここでは直交)する。ここでは貫通孔34は、成形樹脂部30を、
図6の紙面における上下方向に貫通する。バスバー20の中間部23は、
図6の紙面における左右方向に延びる。成形樹脂部30の上面に第1開口部35が設けられ、成形樹脂部30の下面に第2開口部36が設けられる。
【0024】
貫通孔34は、長孔状に形成されている。貫通孔34は、バスバー20の延在方向よりもバスバー20の幅方向に長い。各バスバー20の中間部23は、貫通孔34の短尺方向に延びる。2つのバスバー20の中間部23は、貫通孔34の長尺方向に並んでいる。貫通孔34の軸方向から観察されたときに、2つのバスバー20の中間部23は互いに重なっていない。貫通孔34の位置において、2つのバスバー20の中間部23は幅方向に互いに離れている。貫通孔34の位置において、2つのバスバー20の中間部23は厚み方向に互いにずれている。
【0025】
成形樹脂部30において、貫通孔34の周縁部に環状の第2凸部37が設けられている。第2凸部37は、貫通孔34の周囲を一周するように連続的に設けられている。第1凸部33の一部は、第2凸部37と共通とされる。第1凸部33のうち防水空間12と貫通孔34との間にある部分が共通凸部33aとされる。共通凸部33aは、防水空間12を囲う第1凸部33の一部であると共に、貫通孔34を囲う第2凸部37の一部でもある。
【0026】
ケース40は、成形樹脂部30に被さって防水空間12を形成する。ケース40は箱状に形成される。ケース40は、天板部41と側板部42と第1フランジ部43とを有する。天板部41は成形樹脂部30と間隔をあけて設けられる。側板部42は、天板部41の外縁から成形樹脂部30に向けて突出するように形成される。第1フランジ部43は側板部42の先端部から外周側に向けて突出するように形成される。ケース40には、第1溝部44が形成される。第1溝部44は、第1フランジ部43に形成される。
【0027】
側板部42、第1フランジ部43及び第1溝部44は、環状に形成されている。側板部42、第1フランジ部43及び第1溝部44は、防水空間12の周囲を一周するように連続的に設けられている。第1溝部44に第1凸部33が嵌る。第1凸部33と第1フランジ部43とが溶着されている。第1溝部44の底の反対側の外面が第1フランジ部43に現れる。第1フランジ部43のうち第1溝部44の反対側の外面は、平坦面とされる。これにより溶着機(例えば超音波溶着装置のホーン)が溶着箇所の近くにあたりやすくなる。
【0028】
閉塞部50は、第1開口部35を塞ぐ。閉塞部50は、成形樹脂部30とは別に設けられた部材である。成形樹脂部30の成形時には、閉塞部50は設けられていない。これにより、成形樹脂部30における貫通孔34の部分も、金型が上下抜きされることによって成形されることができる。これにより、成形樹脂部30の成形が容易となる。閉塞部50は、底部51と第2フランジ部53とを有する。
【0029】
底部51は、貫通孔34の底となる部分である。本例では底部51が、貫通孔34に入り込んでいる。閉塞部50には、底部51の反対側に有底穴52hがある。これにより、閉塞部50の質量増加を抑制できる。また、閉塞部50の表面積が増えることによって放熱性が高まる。貫通孔34が軸方向から観察されると、貫通孔34はバスバー20の並列方向に長い。有底穴52hは貫通孔34に対応する形状であることによって、有底穴52hもバスバー20の並列方向に長い。
【0030】
第2フランジ部53は底部51から側方に突出する部分である。第2フランジ部53は、有底穴52hを囲う内壁52とつながっている。第2フランジ部53は、貫通孔34の周縁部において成形樹脂部30と接する。第2フランジ部53を用いて閉塞部50が成形樹脂部30に固定されている。第2フランジ部53に第2溝部54が形成されている。
【0031】
第2フランジ部53及び第2溝部54は、環状に形成されている。第2フランジ部53及び第2溝部54は、貫通孔34の周囲を一周するように連続的に設けられている。第2溝部54に第2凸部37が嵌る。
【0032】
本例では、閉塞部50は、ケース40と一体に設けられている。閉塞部50及びケース40は、金型一体成形されている。閉塞部50及びケース40は、第1フランジ部43及び第2フランジ部53が連なっている。第1フランジ部43の一部は、第2フランジ部53と共通とされる。第1フランジ部43のうち防水空間12と貫通孔34との間にある部分が共通フランジ部43aとされる。第1溝部44のうち共通フランジ部43aに形成された部分が、第2溝部54と共通の共通溝部44aとされる。共通溝部44aに共通凸部33aが嵌る。
【0033】
本例では、閉塞部50と成形樹脂部30における貫通孔34の周縁部とが溶着されている。第2凸部37と第2フランジ部53とが溶着されている。第2溝部54の底の反対側の外面が第2フランジ部53に現れる。これにより溶着機(例えば超音波溶着装置のホーン)が溶着箇所の近くにあたりやすくなる。第2フランジ部53のうち第2溝部54の反対側の外面は、平坦面とされる。
【0034】
閉塞部50には、リブ55が設けられている。リブ55は、有底穴52hの周縁部の一部と他の一部とをつなぐ。リブ55は、有底穴52hの一方の長辺部と他方の長辺部とをつなぐように、短尺方向に延びる。リブ55は、有底穴52hの長尺方向に間隔をあけて複数(ここでは2つ)設けられている。リブ55が設けられることによって、1つの有底穴52hが複数の小さい有底穴に分割されている。
【0035】
閉塞部50は、第2開口部36には設けられていない。第2開口部36は開放されている。第2開口部36は、防水用樹脂60の注ぎ口とされる。防水用樹脂60は、貫通孔34に充塞されている。防水用樹脂60は、絶縁性を有している。防水用樹脂60は、バスバー20の中間部23の全周を覆いつつ、閉塞部50に達している。貫通孔34に防水用樹脂60が充塞されていることによって、水が貫通孔34から防水空間12に達することが抑制される。
【0036】
より詳細には、バスバー20は、中間部23から他端部22に向けて貫通孔34の内面を貫通して延びる。バスバー20は、防水空間12に露出する部分と、貫通孔34に露出する部分との間で第2保持部32を貫通する。バスバー20と成形樹脂部30とは成形樹脂部30がバスバー20の周りを囲むようにインサート成形される。しかしながら、バスバー20の金属材料と成形樹脂部30の樹脂材料との相性、成形樹脂部30を成形するための金型に流し込まれる樹脂材料の粘度などによって、バスバー20と成形樹脂部30との間には、微小な隙間が生じうる。貫通孔34の内面又はバスバー20などにかかった水が、当該隙間を伝って、貫通孔34から防水空間12に達し得る。防水用樹脂60は、貫通孔34の内面又はバスバー20などにかかった水が、バスバー20と成形樹脂部30との間の隙間を伝って防水空間12に達することを抑制する。
【0037】
防水用樹脂60は、流動可能な状態で貫通孔34に注入される。これにより、防水用樹脂60が貫通孔34の内部において、バスバー20の全周及び貫通孔34の内面などに沿って適切に広がることができる。防水用樹脂60は、貫通孔34に注入されて適切に広がった状態で硬化する。これにより、防水用樹脂60が貫通孔34に注入された状態を維持する。防水用樹脂60を硬化させる態様は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、防水用樹脂60は、湿気硬化型樹脂であってもよいし、紫外線硬化型樹脂であってもよいし、2液混合硬化型樹脂であってもよい。防水用樹脂60は、ホットメルト接着剤、常温硬化型のシリコーン接着剤又は弾性に富むエポキシ系接着剤などであってもよい。
【0038】
防水空間12には、回路部品が収められる。かかる回路部品は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。上記FET70は、回路部品の一例である。
図5に示す例では、回路部品として、上記FET70のほかに制御基板74及び中継基板77が設けられている。
【0039】
図5に示す例では、2つのバスバー20の導電方向に対して、2つのFET70が互いに逆向きに接続されている。一方のFET70は、一方のバスバー20に実装され、他方のFET70は、他方のバスバー20に実装されている。一方のFET70のドレイン端子71が一方のバスバー20に接続され、他方のFET70のドレイン端子71が他方のバスバー20に接続されている。一方のFET70のソース端子72及び他方のFET70のソース端子72が共通の導電部(ここでは中継基板77)に接続されている。
【0040】
制御基板74は、第1回路基板75と制御部品76とを備える。制御部品76は第1回路基板75に実装されている。制御部品76は、第1回路基板75及び中継基板77を介してゲート端子73と接続される。制御部品76は、ゲート端子73にオンオフの信号を送る。制御基板74は、FET70を制御する。本例では、制御基板74は、バスバー20の上方に設けられる。成形樹脂部30には、第1回路基板75をバスバー20の上方に支持する支持部39が設けられる。
【0041】
中継基板77は、FET70のソース端子72同士を接続する。また中継基板77は、FET70のゲート端子73と制御基板74の制御部品76とを接続する。中継基板77は、第2回路基板78及び中継コネクタ79を備える。第2回路基板78には、2つのFET70のソース端子72が実装されて、実装された2つのソース端子72同士を接続する回路パターンが設けられる。また、第2回路基板78には、FET70のゲート端子73及び中継コネクタ79が実装されると共に、実装されたゲート端子73と中継コネクタ79とを接続する回路パターンが設けられる。制御基板74の第1回路基板75と、中継基板77の第2回路基板78とが、中継コネクタ79などを介して接続される。
【0042】
電気接続箱10には、外部接続用コネクタが設けられている。制御基板74は、外部接続用コネクタを介して電子制御ユニット(ECU)などの外部の制御部と接続される。外部接続用コネクタは、コネクタ端子及びコネクタハウジング部38を有する。コネクタ端子の一端部は、防水空間12内において第1回路基板75と接続されている。コネクタ端子の他端部は、外部のコネクタと接続可能にコネクタハウジング部38に保持されている。本例では、コネクタハウジング部38は、成形樹脂部30と一体に設けられている。コネクタ端子がインサート部品として、コネクタハウジング部38を有する成形樹脂部30がインサート成形される。
【0043】
図5から
図8を参照しつつ実施形態1にかかる電気接続箱10を製造する様子について説明する。
【0044】
まずは、バスバー20をインサート部品として、成形樹脂部30がインサート成形される。なお、バスバー20のほかにボルト26、コネクタハウジング部38に保持されるコネクタ端子などもインサート部品とされることができる。
【0045】
次にバスバー20付きの成形樹脂部30に対して、防水空間12に収容される部品が組付けられる。本例では、FET70、制御基板74及び中継基板77などが組付けられる。例えば、中継基板77が組付けられた後に、FET70がバスバー20のうち防水空間12に露出する他端部22に実装される。FET70において、ドレイン端子71がバスバー20に接続され、ソース端子72及びゲート端子73が中継基板77に接続される。制御基板74が、中継基板77及びコネクタと接続されるように組付けられる。制御基板74の第1回路基板75と、中継基板77の第2回路基板78とが中継コネクタ79を介して接続される。また他端部がコネクタハウジング部38に露出するコネクタ端子の一端部が、制御基板74の第1回路基板75に接続される。
【0046】
次に、
図5及び
図6に示すように、成形樹脂部30にケース40が被せられる。そして、成形樹脂部30及びケース40の縁部が、例えば、超音波溶着機などの溶着装置によって溶着される。貫通孔34を囲う縁部が溶着される。また、防水空間12を囲う縁部が溶着される。
【0047】
次に、
図7及び
図8に示すように、貫通孔34に流動可能な状態の防水用樹脂60が入れられる。このとき、貫通孔34の第1開口部35が閉塞部50によって塞がれているため、防水用樹脂60が貫通孔34に留まりやすい。この防水用樹脂60が固まることによって、電気接続箱10が製造される。
【0048】
<効果等>
以上のように構成された電気接続箱10によると、貫通孔34の第1開口部35が閉塞部50によって塞がれることによって、貫通孔34の部分は第2開口部36が開口しつつ閉塞部50が底となる有底穴状を呈する。これにより、流動可能な状態で第2開口部36から貫通孔34に充塞された防水用樹脂60が、固まって流動不可な状態となるまでの間に、当該貫通孔34にしっかり留まることができる。また、閉塞部50と防水用樹脂60とが接触していることによって、バスバー20の熱が、防水用樹脂60を介して閉塞部50に伝わる。これにより、バスバー20の放熱性も高まる。
【0049】
また、閉塞部50は、ケース40と一体に設けられている。これにより、閉塞部50がケース40とは別の部材として設けられる場合と比べて、部品点数の増加を抑制できる。
【0050】
また、閉塞部50と成形樹脂部30における貫通孔34の周縁部とが溶着されている。これにより、溶着部分によって閉塞部50と成形樹脂部30との間の隙間が塞がれ、流動可能な状態の防水用樹脂60が閉塞部50と成形樹脂部30との隙間から漏れることが抑制される。一般に、流動する部材において、粘度が低い部材の方が、粘度が高い部材よりも流動しやすく、狭い隙間などにも入り込みやすい。従って、バスバー20と成形樹脂部30との隙間を埋めるとの観点では、流動可能な状態における防水用樹脂60の粘度が低いことが好ましい。一方で、閉塞部50と成形樹脂部30との隙間が塞がれていない場合、流動可能な状態における防水用樹脂60の粘度が低いと、閉塞部50と成形樹脂部30との間の隙間に防水用樹脂60が入り込み、当該隙間から漏れうる。閉塞部50と成形樹脂部30における貫通孔34の周縁部とが溶着されていることによって、流動可能な状態における防水用樹脂60の粘度が低い場合でも、閉塞部50と成形樹脂部30との間の隙間から防水用樹脂60が漏れることが抑制される。
【0051】
本例では、成形樹脂部30とケース40との溶着(防水空間の形成工程)の際に、成形樹脂部30と閉塞部50との溶着(貫通孔34と底部51とを封止する工程)も併せて行われることができる。これにより、貫通孔34と底部51とを封止する工程が増えた分の作業量の増加を抑制できる。
【0052】
また、閉塞部50に環状の第2溝部54が形成され、成形樹脂部30における貫通孔34の周縁部には第2溝部54に嵌る第2凸部37が設けられている。これにより、流動可能な状態の防水用樹脂60が閉塞部50と成形樹脂部30との間に隙間に入り込んだ場合でも、外部に漏れにくくなる。
【0053】
また、閉塞部50のうち貫通孔34の底となる底部51が、貫通孔34に入り込んでいる。これにより、防水用樹脂60の使用量を少なくできる。また、閉塞部50とバスバー20との距離が近くなることによって、バスバー20の熱が閉塞部50に達しやすい。
【0054】
[付記]
図9は電気接続箱10の変形例を示す断面図である。
【0055】
これまで、閉塞部50に第2溝部54が形成され、成形樹脂部30に第2凸部37が設けられているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、第2溝部54及び第2凸部37が設けられていなくてもよい。また例えば
図9に示す例のように、成形樹脂部30における貫通孔34の周縁部に、環状の溝部137が形成され、閉塞部50に溝部137に嵌る環状の凸部154が設けられていてもよい。閉塞部50と成形樹脂部30における貫通孔34の周縁部との一方には、環状の溝が形成され、他方には溝に嵌る環状の凸部が設けられているとよい。
【0056】
またこれまで、閉塞部50のうち貫通孔34の底となる部分が、貫通孔34に入り込んでいるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。
図9に示す例のように、閉塞部50のうち貫通孔34の底となる部分が、貫通孔34に入り込んでいなくてもよい。
【0057】
またこれまで、閉塞部50と成形樹脂部30とが溶着されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。閉塞部50と成形樹脂部30とが溶着されていなくてもよい。この場合、凸部と溝部の嵌り合う高さが大きくされるなどして、流動状の防水用樹脂60の粘度が低い場合でも、流動状の防水用樹脂60が閉塞部50と成形樹脂部30との隙間から漏れることが抑制される。
【0058】
このほか、これまで閉塞部50がケース40と一体に設けられているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。閉塞部50は、ケース40とは別の部材として設けられてもよい。閉塞部50は、貫通孔34のうちケース40が被さる側とは反対側の開口部を塞いでいてもよい。この場合、閉塞部50が被さる側の開口部が第1開口部35とされる。
【0059】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 電気接続箱
12 防水空間
20 バスバー
21 一端部
22 他端部
23 中間部
26 ボルト
30 成形樹脂部
31 第1保持部
32 第2保持部
33 第1凸部
33a 共通凸部
34 貫通孔
35 第1開口部
36 第2開口部
37 第2凸部
137 第2溝部
38 コネクタハウジング部
39 支持部
40 ケース
41 天板部
42 側板部
43 第1フランジ部
43a 共通フランジ部
44 第1溝部
44a 共通溝部
50 閉塞部
51 底部
52 内壁
52h 有底穴
53 第2フランジ部
54 第2溝部
154 第2凸部
55 リブ
60 防水用樹脂
70 FET
71 ドレイン端子
72 ソース端子
73 ゲート端子
74 制御基板
75 回路基板
76 制御部品
77 中継基板
78 回路基板
79 中継コネクタ