IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.の特許一覧

特開2023-64715応力緩和及び損傷回復のために薄いSICウエハに適用されるCMP処理
<>
  • 特開-応力緩和及び損傷回復のために薄いSICウエハに適用されるCMP処理 図1
  • 特開-応力緩和及び損傷回復のために薄いSICウエハに適用されるCMP処理 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064715
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】応力緩和及び損傷回復のために薄いSICウエハに適用されるCMP処理
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230501BHJP
   B24B 37/015 20120101ALI20230501BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230501BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230501BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H01L21/304 622W
H01L21/304 622D
H01L21/304 622R
B24B37/015
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166993
(22)【出願日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】102021000027467
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】アガタ グラッソ
(72)【発明者】
【氏名】ニコロ ピルソ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア セヴェリーノ
(72)【発明者】
【氏名】ブルネッラ カフラ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA08
3C158BC01
3C158BC02
3C158CA05
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED12
3C158ED23
3C158ED26
5F057AA02
5F057AA03
5F057AA11
5F057AA28
5F057BA11
5F057BB09
5F057CA14
5F057DA04
5F057DA08
5F057DA11
5F057EA08
5F057EA16
5F057EA32
5F057GA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グラインディング後のシリコンカーバイドウエハの表面の損傷や反りを回復させる応力緩和の効果にて、ウエハ自体や集積化装置の品質を改善できる化学的機械的研磨処理方法を提供する。
【解決手段】200μm以下の厚さを有するシリコンカーバイドのウエハ20に適用される化学的機械的研磨処理方法であって、pHが2-3の範囲内である研磨スラリーをウエハ上に送給ながら、ウエハの背面側を研磨パッド16に対して押し付けて、支持ヘッド14によって研磨パッド上に5-20kPaの範囲内の圧力を付し、研磨パッドの回転を30-180rpmの範囲内に設定し、且つ、支持ヘッドの回転を30-180rpmの範囲内に設定するとともに、CMP処理温度を50℃以下に設定し、且つ、維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200μm以下の厚さを有しているシリコンカーバイドのウエハ(20)へ適用される化学的機械的研磨CPM処理方法において、
CMP処理装置(10)の支持ヘッド(14)上に、互いに反対側にある正面側(20a)と背面側(20b)とを具備しており、該正面側(20a)は少なくとも1個の電子部品を収容しており且つ該支持ヘッド(14)と結合されているウエハ(20)を配置させるステップ、
pHが2-3の範囲内である研磨スラリーを該ウエハ(20)上に送給するステップ、
該ウエハ(20)の該背面側(20b)を該CMP装置(10)の研磨パッド(16)に対して押し付けて、該支持ヘッド(14)によって5-20kPaの範囲内の圧力を該研磨パッド(16)に付与するステップ、
該研磨パッド(16)の回転を30-180rpmの範囲内に設定し且つ該支持ヘッド(14)の回転を30-180rpmの範囲内に設定するステップ、
CMP処理温度を50℃以下に設定し且つ維持するステップ、
を有している方法。
【請求項2】
該研磨スラリーの流量が100ml/分未満である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該研磨スラリーがアルミナを基礎としている請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該CMP処理は、該ウエハ(20)の背面側(20b)から1μmと3μmとの間の厚さの物質が除去されるまで行われる先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該研磨パッド(16)の回転方向が該支持ヘッド(14)の回転方向と同じである先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該研磨パッド(16)の回転が30-70rpmの範囲内に設定され、且つ該支持ヘッド(14)の回転が30-60rpmの範囲内に設定される先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に180μm以下の厚さを有する、シリコンカーバイドの薄いウエハへ適用される化学的機械的研磨(CMP)処理に関するものである。そのCMP処理は、薄くされたウエハの応力を緩和させ且つ表面損傷又は亀裂を回復させることを目的としている。そのCMP処理は、既に処理されている正面側(即ち、その正面側に電子部品が集積化されている)を具備しているSiCウエハの背面側において実施される。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、シリコン及びシリコンカーバイドウエハに属する複数の層の付着及び除去の交互のステップによって製造されることが知られており、これらの層は導電性、半導電性、絶縁性のいずれかとすることが可能である。
【0003】
一つの製造ステップは、最適な装置性能を保証するため、典型的には装置が導通状態にある場合の電気的抵抗(RON抵抗)を減少させることであり、そのためにウエハを薄くすること、即ち薄層化、が関与する。その薄層化処理は、通常、基板の機械的摩耗によって実施される(グラインディング処理)。
【0004】
SiCウエハ上で、該グラインディング処理は、亀裂及び転位を伴う深い表面下損傷(SSD)を発生させる場合があり、該損傷はシリコンカーバイド表面を介して1-3μmの深さとなる。
【0005】
ウエハ表面上の圧縮応力によって発生されるウエハの反りも、グライディング技術による薄層化処理の直接的な結果である。薄層化処理によって誘起される応力及び亀裂の残存が、ウエハの反りを増加させ、且つその結果製造されるダイを脆弱なものとさせ、機械的強度及びダイ歩留まりに影響を与える。
【0006】
元々の(即ち、グライディング前の)ウエハ表面を回復させ、従ってウエハの反りを元々のグライディング前の値は回復させることが可能な応力緩和ステップが、シリコンカーバイド物質の品質、従ってその中に集積化される装置の電気的及び機械的品質を改善させるために必要である。
【0007】
本発明者等は、グライディング損傷を回復させるために熱処理(アニーリング)を使用することを検討したが、この解決法は、熱的拘束条件に起因して満足のいくものではない、何故ならば、幾つかの場合に(即ち、電子装置の製造のために、少なくとも部分的に、ウエハが既に処理されている場合に)、温度は1000℃未満に制限されるからである。この様な熱条件では、SiCウエハの表面回復を保証することは不可能である。
【0008】
ウエハの局所的表面加熱を可能とさせるレーザーアニーリングの場合も同じことが考えられる。レーサー照射による熱的に誘起される応力が結晶再配置の原因となり、アニールした(熱的に応力を発生した)領域とアニールしていない領域との間に、レーザー処理期間中に発生する熱勾配に起因して、新たな結晶欠陥及び亀裂形成が発生する。
【0009】
従って、破砕強度が低く、極めて脆く、硬度が高く、且つ化学的不活性が顕著であるSiCウエハに対して、応力緩和は特に重要なステップである。これらの問題点は、厚さを減少させた(例えば、180μm未満)SiC基板の場合には一層深刻となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的とするところは、上述した従来技術の欠点を解消するシリコンカーバイドの薄いウエハに適用されるCMP処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義される如き、シリコンカーバイドのウエハに適用されるCMP処理が提供される。本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して純粋に非制限的な例によって本発明の幾つかの実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】CMP装置の概略図。
図2】本発明に基づくCMP処理期間中のウエハの一部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1実施例においては、従来技術の制限を解消するために、CMP(化学的機械的研磨)処理方法が提供される。
【0014】
図1を参照すると、CMP装置10が概略的に示されている。
【0015】
CMP装置10は、それ自身既知の態様で、CMP処理期間中にウエハ20(この場合は、シリコンカーバイドからなる)を支持又は担持又は保持する構成とされている研磨ヘッド14を有している。研磨パッド16が支持プラテン17上に配置されている。研磨パッド16は、例えば、ポリウレタンからなる。研磨ヘッド14と研磨パッド16とは互いに対面している。
【0016】
研磨ヘッド14とプラテン17の両方は、CMPプロセス即ち処理を実施するために、矢印19a,19bで示したように回転制御可能である。プラテン17の回転は研磨パッド16の対応する回転を発生させ、且つ研磨ヘッド14の回転はウエハ20の対応する回転を発生させる。
【0017】
スラリー送給システム18も設けられており、それは、それ自身既知の態様で、研磨パッド16上に実質的に一様なスラリー層(即ち、化学的機械的研磨)を提供する構成とされている。研磨後検知及び処理制御装置、廃棄物処理及びテスト装置等もCMP装置10の一部とすることが可能である。
【0018】
処理すべきSiCウエハ20は、互いに反対側の正面側20aと背面(又は底部)側20bとを有している。以下により良く説明するように、正面側20aは、例えば、ドーパント種を注入し、導電性又は絶縁性の層を成長又は付着させる等によって、一つ又はそれ以上の電子装置又はその一部を製造するために既に処理されている。背面側20bは、ウエハ20の厚さを200μm以下に減少させるためにグライディング処理に露呈されている。本発明に基づくCMP処理が底部側20bに適用される。
【0019】
CMP処理期間中、正面側20aにおいて研磨ヘッド14によって支持/保持されているウエハ20は、研磨ヘッド14によって研磨パッド16に対して押し付けられて表面20bを処理する。特に、ウエハ20はシリコンカーバイド(SiC)からなり且つ180μm又はそれ以下で、例えば40μmと180μmとの間で、より特定的には100μmの厚さを有している。通常、SiCウエハ20は、約350-500μmの厚さで製造され、前述した如く、180μm以下の厚さを達成するために、グライディングステップが実施される。
【0020】
図2に示したように、ウエハ20の正面側20aは既に処理されて、少なくとも部分的に、電子部品又は装置、又は何らかのその他の電気的構造体を形成している場合がある。ウエハ20の背面側20bは、グライディングプロセスによって処理された側であり(従って、そのグライディングプロセスの結果として欠陥/亀裂を示している)、且つ本発明に基づくCMP処理によって更に処理すべき側である。
【0021】
本発明に基づくCMP処理は以下のパラメータ/設定で実施される。
【0022】
研磨パッド速度及びウエハ速度
研磨パッド速度は、ウエハ20と研磨パッド16との間での化学的生成物及び反応物の進入及び離脱に影響を与えることが可能である。ウエハ速度は、ウエハ20を介しての研磨速度に影響を与える。
【0023】
研磨パッドの回転速度は30-180rpmの範囲内で、より特定的には30rpmと70rpmとの間に設定される。
【0024】
ウエハ回転速度は、研磨ヘッド14の回転速度によって確定され、且つ30-180rpmの範囲内、より特定的には30rpmと60rmpとの間に設定される。
【0025】
1実施例においては、ウエハ20(即ち、担持体である研磨ヘッド14)及び研磨パッド16は同一方向に回転し、その他の実施例においては、ウエハ20(即ち、担持体である研磨ヘッド14)と研磨パッド16とを反対方向に回転させることが可能である。
【0026】
研磨圧力
ウエハ20を間に介在させて、研磨パッド16上に研磨ヘッド14によって圧力が付与される。
【0027】
この処理においては、ウエハ20の表面20bの異なる区域上に付与される圧力は異なるものとすることが可能であるが、必ずしもそうである必要はない。その圧力は、5kPaと20kPaとの間に設定される。
【0028】
研磨時間及び物質除去率
研磨時間は、物質除去率に影響を与える。研磨時間の選択は、処理品質条件及び/又は除去すべき物質の量(厚さ)に基づく。研磨時間が長すぎると、研磨スラリー中の研磨剤が処理表面に対して二次的損傷を与えることとなる場合がある。
【0029】
背面側20bにおいて除去されるSiCの厚さは、1実施例においては、1-3μmの範囲内であり、従って、研磨時間/除去率はこの目的を達成するために設定される。
【0030】
本発明者等が知見したところでは、約3μmのSiC物質を除去することが処理表面(本例においては、表面20b)における全ての欠陥及び亀裂を除去するのに十分である。
【0031】
スラリーのタイプ
研磨用スラリーはそのpH特性に基づいて選択される。本処理においては、スラリーはpHが2-3の範囲内(酸性)のものを選択している。
【0032】
スラリー流量は、1つの可能な実施例においては、100ml/分未満である。
【0033】
除去率は、例えば10μm/hrに等しいか又はそれより大きい等自由に設定することが可能である。一層低い除去率(例えば、約6μm/hr)とすることも可能である。
【0034】
例示的なスラリーは、例えば、シリコンカーバイドウエハの化学的機械的平坦化用に特に調整されたアルミナを基礎とした研磨スラリーを包含している。これらのスラリーは、当該技術において既知であり且つ市販されているものであり、過マンガン酸塩酸化剤、きっちりとした寸法とされた人工ナノ粒子(tightly sized engineered nano-particles)、及びSiC表面上を非常に低い表面仕上げ、欠陥性及び表面下損傷とすることを容易とさせる促進剤化学物質で調整されている。
【0035】
その他のタイプのスラリーを使用することも可能である。
【0036】
処理温度
CMP処理温度(即ち、研磨パッド16の温度)は、50℃より下、特に大気温度(約24℃)と50℃との間、に維持される。
【0037】
上述したパラメータで、本発明者等は、従来技術の問題点が解消されることを知見した。
【0038】
特に、ウエハ表面における亀裂及び損傷が回復(除去)される。更に、CMP処理の終わりにおいてのウエハの反りは、元々のウエハの反りと実質的に同等、即ちグライディングを介して実施される薄層化前の状態と実質的に同等であることが判明した。
【0039】
表面品質は本CMP処理で改善されている。化学的要因と機械的要因との間の適宜のバランスが、一層高い表面形状精度を獲得し且つ所望の表面品質を確保するために、ウエハの粗面度を減少させることが可能である。CMP後のウエハ表面20bを形状検査(profile testing)によって検査することが可能であり、且つその表面の粗面度を大面積粗面計(profilometer)で測定することが可能である。ウエハの表面品質検査のために、幾つかの指標を測定することが可能である。例えば、以下のパラメータが例示的に測定されており、即ち、Sa又は算術平均高さ<2nm、Sq又は根二乗平均<10nmであり、Sz又は最大高さ<2nmである。
【0040】
本発明によって得られる利点は上述したことから明らかである。
【0041】
本発明は、SiCの化学的不活性が高いためにSiCウエハをグライディングした後(<180μm)に適切な応力緩和処理を実施することの困難性を解消するための手段を提供している。本発明により提供される解決手段は、化学的機械的表面平坦化応力緩和処理に基づくものであって、表面回復及び機械的歩留まりに関して、反り/応力回復に関して効果的であることを示している。本CMP処理ステップは、グライディングステップの損傷を回復させるために、装置製造処理の流れ期間中、グライディングステップ後、に実施することが可能であり、装置歩留まりを向上させている。
【0042】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施例のみに制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形及び修正をすることが可能であることは勿論である。例えば、上述したCMP処理は、支持ウエハに一時的にボンドされたSiCウエハ上に適用させることが可能であり、そのことは、厚さが薄く、従って壊れ安く及び/又は取り扱い困難である、SiCウエハの場合に有用である。
図1
図2