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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064724
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20230501BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230501BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20230501BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230501BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230501BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230501BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230501BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230501BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230501BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/08
C09D11/52
C09J9/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J163/00
H01B1/22 A
H01B5/14 Z
H01B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169230
(22)【出願日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2021175022
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】白川 祐基
(72)【発明者】
【氏名】福島 洸
【テーマコード(参考)】
4J002
4J039
4J040
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4J002CC042
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD111
4J002CD131
4J002CD141
4J002CD181
4J002DA066
4J002EF027
4J002EF037
4J002EF047
4J002EF057
4J002EF067
4J002EF077
4J002EF117
4J002EJ038
4J002EJ068
4J002EV237
4J002EW127
4J002FD116
4J002FD142
4J002FD147
4J002FD148
4J002GH01
4J002GJ01
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4J039AE05
4J039BA06
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4J039BA38
4J039BC19
4J039BC29
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE23
4J039BE25
4J039BE29
4J039BE30
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4J039FA04
4J039GA10
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4J040EC001
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4J040HB22
4J040JA05
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4J040JB10
4J040KA14
4J040KA16
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4J040KA28
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4J040KA35
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4J040KA38
4J040LA09
4J040MA04
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA19
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA13
5G301DA18
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5G301DA42
5G301DA55
5G301DA57
5G301DA60
5G301DD02
5G301DD03
5G301DE01
5G307GA02
5G307GB02
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】良好な導電性を示し、各種基材に対する密着性(接合強度)が優れ、導電性インク、導電性接着剤、回路接続材料等として有用な導電性樹脂組成物を提供すること。さらに、当該導電性樹脂組成物から形成された導電膜、当該導電性樹脂組成物を含む導電性インク、当該導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤、及び、当該導電性樹脂組成物を含む回路接続材料を提供すること。
【解決手段】(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤、を含む、導電性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤、
を含む、導電性樹脂組成物。
【請求項2】
(b)エポキシ樹脂が、
(i)25℃で液状である、及び/又は、
(ii)ビスフェノール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、多官能芳香族エポキシ樹脂及び水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
(d)フェノール系硬化剤が、25℃で液状である、請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物から形成された、体積抵抗率が1.0×10-2Ω・cm未満である導電膜。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性インク。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性接着剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物を含む、回路接続材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物に関する。また、本発明は、導電膜、基材にスクリーン印刷等により回路等を形成する際に用いられる導電性インク、接着対象部位を導電性を有するように接着するために用いられる導電性接着剤、及び電子部品を回路基板等に導電接続する際に用いられる回路接続材料に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性樹脂組成物としては、多種多様な組成のものが知られており、導電性ペースト、導電膜、導電性インク、導電性塗料、回路接続材料、導電性接着剤等として、電子回路の形成、電子部品の接着等の種々の用途に使用されている。
例えば、導電回路や電極等の導電構造を形成するために有用な導電性を有する膜が求められている。
例えば、各種の印刷方法に適用可能であり、相互接続及びトレース、電極等の導電構造を有するフレキシブルプラスチック基材、フィルム基材、シート基材、樹脂成型品、ガラス、ガラスエポキシ、セラミック基材等の製造に有用な導電性インクが求められている。
例えば、コンピュータや携帯電話等の電子機器において、LED素子、半導体素子、コンデンサ等の各種の電子部品を同一回路基板上に高密度実装し高集積化するための回路接続材料が求められている。
【0003】
これまで、導電性樹脂組成物としては、樹脂と導電性粒子を含む導電性樹脂組成物(導電性ペースト)が知られている。しかし、導電性樹脂組成物は、体積抵抗率が十分に低くならず、低い体積抵抗率が求められる用途とする場合には、導電性粒子として銀粒子を用いる必要があった。また、導電性樹脂組成物から得られる膜の体積抵抗率を低くするために、導電性粒子を大量に含有させた場合には、各種基材に対する膜の密着性(接合強度)が低下し、満足できるものではなかった。
特許文献1には、導電性粉末が少なくとも銀を用いた銀系粉末であり、樹脂成分が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方であり、さらに、特定の分子量及び構造を有するエステル系化合物又はその塩、あるいは、エーテル/アミン系化合物を含有する、導電性ペースト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-205245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、銀粒子は、非常に高価でコスト的に不利であり、一方で、銀粒子以外の導電性粒子を用いた場合には、導電性樹脂組成物の膜の体積抵抗率が高くなり導電性が不十分になることがあった。また、体積抵抗率を低くするために導電性粒子を大量に含有させた場合には、各種基材に対する密着性が不十分になることがあった。
これまで、導電膜を形成した際の体積抵抗率が低く、良好な導電性を示し、各種基材に対する密着性(接合強度)が優れる導電性樹脂組成物は知られていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、良好な導電性を示し、各種基材に対する密着性(接合強度)が優れ、導電性インク、導電性接着剤、回路接続材料等として有用な導電性樹脂組成物を提供することである。さらに、当該導電性樹脂組成物から形成された導電膜、当該導電性樹脂組成物を含む導電性インク、当該導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤、及び、当該導電性樹脂組成物を含む回路接続材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成の導電性樹脂組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下に示すとおりである。
項1:(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤、
を含む、導電性樹脂組成物。
項2:(b)エポキシ樹脂が、
(i)25℃で液状である、及び/又は、
(ii)ビスフェノール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、多官能芳香族エポキシ樹脂及び水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の導電性樹脂組成物。
項3:(d)フェノール系硬化剤が、25℃で液状である、項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
項4:項1~3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物から形成された、体積抵抗率が1.0×10-2Ω・cm未満である導電膜。
項5:項1~3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性インク。
項6:項1~3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性接着剤。
項7:項1~3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む、回路接続材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、良好な導電性を示し、各種基材に対する密着性(接合強度)が優れ、導電性インク、導電性接着剤、回路接続材料等として有用な導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の導電性樹脂組成物は、プリンテッドエレクトロニクス材料として有用であり、表示装置、車両関連部品、IoT、移動通信システム(Mobile Communication System)等の各種電子機器等の大量生産に際して極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、導電性樹脂組成物、導電膜、導電性インク、導電性接着剤及び回路接続材料に係るものである。以下、これらについて詳細に説明する。
【0010】
[導電性樹脂組成物]
<(a)錫粉末>
本発明の導電性樹脂組成物が含む錫粉末は、錫99.5質量%以上と不可避不純物から構成される粉末である。
錫粉末における錫の含有率は、蛍光X線分析(XRF)装置等を用いることで容易に測定できる。
錫粉末に含まれる不可避不純物としては、例えば、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ag、Cu、Ni、Au、B、C、N、O、Ge、Sb、In、As、Al、Fe等からなる群より選ばれる1種以上の他の原子が挙げられる。
他の原子の含有率は、好ましくは錫粉末中0.3質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0011】
錫粉末の形状は、特に限定されない。例えば、鱗片状(フレーク状)、扁平状、真球状、略球状(例えば、縦横のアスペクト比が1.5以下)、ブロック状、板状、多角錐状、多面体状、棒状、繊維状、針状、不定形状等のものを、用途等に応じて用いることができる。本発明においては、体積抵抗率、分散性、取扱性等の観点から、鱗片状、真球状、略球状、扁平状、不定形状のものが好ましい。
【0012】
球状又は不定形状の錫粉末の体積平均粒子径(体積基準粒度分布における累積頻度%径の50%粒子径D50)は、特に制限されない。D50としては、例えば0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上であり、例えば300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。D50が0.5μm以上であると、錫粉末の分散性及び取扱性が良好になる。D50が300μm以下であると、体積抵抗率を低くでき、分散性及び取扱性が良好になる。
【0013】
扁平状又は鱗片状の錫粉末の平均直径、平均厚及びアスペクト比(平均直径/平均厚)は、特に限定されない。
平均直径は、例えば0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上であり、例えば500.0μm以下、好ましくは300.0μm以下、より好ましくは150.0μm以下である。
平均厚は、例えば、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、例えば50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下である。
アスペクト比は、例えば、2以上、好ましくは10以上、より好ましくは50以上である。
【0014】
導電性樹脂組成物における、(a)錫粉末の含有量は、特に限定されない。導電性樹脂組成物の導電性等の観点から適宜定めることができる。例えば、(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤の合計量を100質量%として、50.0質量%以上、好ましくは60.0質量%以上、より好ましくは85.0質量%以上、さらに好ましくは88.0質量%以上、よりさらに好ましくは91.0質量%以上であり、例えば98.0質量%以下、好ましくは97.0質量%以下である。
(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤の合計量100質量%における(a)錫粉末の含有量が50.0質量%未満であると、導電性が低下し、体積抵抗率が上昇する又は実施例に記載するLED点灯試験でLEDが点灯しないおそれがあり、98.0質量%を超えると、塗膜の接合強度が低下するおそれがある。
【0015】
<(b)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、分子構造中にエポキシ基を2つ以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態で用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;アルキレンオキサイド変性ビスフェノール型樹脂;キレート変性エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;イソシアネート基を有するウレタン結合含有化合物とヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させて得られる樹脂等のウレタン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;ダイマー酸変性エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂;ポリサルファイド変性エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ基を分子構造中に2つ以上含む化合物のうちの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等のビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール等の脂環構造を有するポリオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂環式エポキシ樹脂;ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ポリブタジエンポリオール等の脂肪族ポリオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂肪族エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン骨格(トリスフェノールメタン骨格)を有するエポキシ樹脂;アミノフェノール型エポキシ樹脂等;ポリエーテル変性エポキシ樹脂;多官能芳香族エポキシ樹脂;水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の導電性樹脂組成物は、密着性、耐熱性、作業性、取扱性等をより効果的に向上させる観点から、(b)エポキシ樹脂が、
(i)25℃で液状である、及び/又は、
(ii)ビスフェノール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、脂肪族ポリオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂肪族エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、多官能芳香族エポキシ樹脂及び水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
25℃において液状のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリブタジエンポリオールのエポキシ化物であるエポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、脂肪族ポリオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂肪族エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、多官能芳香族エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、脂肪族ポリオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂肪族エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、多官能芳香族エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
具体例としては、例えば、三菱ケミカル社製のjER807、jER828、jER828US、jER828EL、jER825、jER630、jER630LSD等;ADEKA社製のアデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4300E、アデカレジンEP-4400、アデカレジンEP-4901E、アデカレジンEP-4000、アデカレジンEP-4000S、アデカレジンEP-4005、アデカレジンEPU-6、アデカレジンEPU-1395、アデカレジンEPU-73B、アデカレジンEPU-17、アデカレジンEPU-11F、アデカレジンEPU-15F、アデカレジンEPR-1415-1、アデカレジンEPR-2000、アデカレジンEPR-2007、アデカレジンEP-49-10N、アデカレジンEP-49-10P2、アデカレジンEP-49-23、アデカグリシロールED-503、アデカグリシロールED-503G、アデカグリシロールED-506、アデカグリシロールED-523T、アデカグリシロールED-505等;東レファインケミカル社製のFLEP-50、FLEP-60等;共栄社化学社製のエポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト4000、エポライト3002(N)等;ナガセケムテックス社製のデナコールEX-201、デナコールEX-201-IM、デナコールEX-252、デナコールEX-991L等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、得られる導電性樹脂組成物の密着性、耐熱性、作業性及び取扱性等の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
導電性樹脂組成物における、(b)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されない。(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤の合計量を100質量%として、例えば0.5質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、例えば25.0質量%以下、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下である。
(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤の合計量100質量%における(b)エポキシ樹脂の含有量が0.5質量%未満であると、膜形成ができなくなるおそれがあり、塗膜の接合強度が低下するおそれがあり、25.0質量%を超えると導電性が低下し、体積抵抗率が上昇する又は実施例に記載するLED点灯試験でLEDが点灯しないおそれがある。
【0018】
<(c)有機酸化合物>
有機酸化合物としては、例えば、R-X(式中、Rは、水素、炭素数1~50の有機基であり、Xは酸基であって複数のXは互いに異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)で表される有機酸化合物の1種又は2種以上が挙げられる。
Xで表される酸基としては、例えば、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SOH)、リン酸基(-PO)等が挙げられる。
有機酸化合物としては、例えば、有機カルボン酸化合物、有機スルホン酸化合物、有機ホスホン酸化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。好ましくは、有機カルボン酸化合物である。
【0019】
(有機カルボン酸化合物)
有機カルボン酸化合物は、分子構造中にカルボキシル基(-COOH)を1つ以上有する炭素数1~50の化合物であれば、特に限定されない。
有機カルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アビエチン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルタコン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2-メチルアゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸ドデカン二酸、エイコ酸二酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドデセニルコハク酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメチロールプロパン酸、トリメチロールブタン酸、安息香酸、サリチル酸、ピルビン酸、パラメチル安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸、2-メチルプロパン酸、イソペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、2-エチル-2-ブテン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、ヘキサントリカルボン酸、シクロヘキシルカルボン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、パラストリン酸、イソピマール酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
さらに、炭素数が12以上の直鎖又は分岐鎖ジカルボン酸(例えば、岡村製油社製、SL-12、SL-20、UL-20、MMA-10R、SB-12、IPU-22、IPS-22、SB-20、UB-20等)も好適に用いることができる。
【0020】
(有機スルホン酸化合物)
有機スルホン酸化合物は、分子構造中にスルホン酸基(-SOH)を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。
例えば、ベンゼンスルホン酸、n-ブチルベンゼンスルホン酸、n-オクチルベンゼンスルホン酸、n-ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2,5-ジメチルベンゼンスルホン酸、p-クロルベンゼンスルホン酸、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、o-クレゾ-ルスルホン酸、m-クレゾ-ルスルホン酸、p-クレゾ-ルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、4,4-ビフェニルジスルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸、m-ベンゼンジスルホン酸、アニリン-2,4-ジスルホン酸、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、n-オクチルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,3-プロパンジスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸化合物;シクロペンタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸脂環族スルホン酸化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
好ましくは、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び(ポリ)スチレンスルホン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0021】
(有機ホスホン酸化合物)
有機ホスホン酸化合物は、分子構造中にリン酸基(-PO)を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。
例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メチルジホスホン酸、ニトロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、シクロヘキサンジアミンテトラメチレンホスホン酸、カルボキシエチルホスホン酸、ホスホノ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、2,3-ジカルボキシプロパン-1,1-ジホスホン酸、ホスホノブチル酸、ホスホノプロピオン酸、スルホニルメチルホスホン酸、N-カルボキシメチル-N,N-ジメチレンホスホン酸、N,N-ジカルボキシメチル-N-メチレンホスホン酸、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、ベンゼンホスホン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0022】
有機ホスホン酸化合物は、分子構造中にリン酸基を有する界面活性剤であってもよい。
リン酸基を有する界面活性剤としては、分子構造中にポリオキシエチレン基又はフェニル基を有するものが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ジポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシプロピレンオレイルエーテルリン酸、ラウリルリン酸アンモニウム、オクチルエ-テルリン酸アンモニウム、セチルエーテルリン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテルリン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
リン酸基を有する界面活性剤としては、東邦化学工業社製の商品名フォスファノールやビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk等の市販品からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0023】
(含有量)
導電性樹脂組成物における、(c)有機酸化合物の含有量は、特に限定されない。(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤の合計量を100質量%として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、例えば9.4質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下である。
(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、(c)有機酸化合物及び(d)フェノール系硬化剤の合計量100質量%における(c)有機酸化合物の含有量が0.1質量%未満であると、膜形成ができない、塗膜の接合強度が低下する、硬化に時間がかかる等のおそれがあり、含有量が9.4質量%を超えると、導電性が低下し、体積抵抗率が上昇する又は実施例に記載するLED点灯試験でLEDが点灯しない、膜形成ができなくなる等のおそれがある。
【0024】
<(d)フェノール系硬化剤>
フェノール系硬化剤としては、分子構造中にエポキシ基と反応し得るフェノール性水酸基を1つ以上、好ましくは2つ以上有する化合物が挙げられる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール類;ヒドロキシフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のフェノール類;アルキルフェノール類;2,6-ビス[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]-フェノール、フェノールビフェニレンノボラック(ビフェニルアラルキルフェノール)等のフェノールノボラック類;o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック等のクレゾールノボラック類;トリフェニルメタン類;テトラキスフェノール類;フェノール樹脂類;フェノールノボラック樹脂;ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂;等が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
具体的には、4,4’,4’’-トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,4’’,4’’’-メタンテトライルテトラフェノール、1、1、2、2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、明和化成社製のMEH-8005、日本化薬社製のKAYAHARD GPH-65、KAYAHARD GPH-103、アイカ工業社製のBRG-555、BRG-556、BRG-557、BRG-558、CRG-951、TAM-005等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、例えばフェノール樹脂が好ましく用いられる。このようなフェノール樹脂としては、水酸基当量が、例えば50g/eq以上、好ましくは100g/eq以上、より好ましくは300g/eq以下である。
本発明においては、フェノール系硬化剤として、フェノールノボラック等のフェノール樹脂が好ましく用いられる。
【0026】
導電性樹脂組成物における、(d)フェノール系硬化剤の含有量は、特に限定されない。エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、フェノール基が、例えば0.1当量以上、好ましくは0.2当量以上であり、例えば1.5当量以下、好ましくは1.2当量以下、より好ましくは1.1当量以下、さらに好ましくは1.0当量以下である。エポキシ基1当量に対して0.1当量未満の場合、導電性樹脂組成物の硬化性が低下し、硬化に時間がかかる又は塗膜の硬化不良が発生するおそれがあり、1.5当量を超える場合、過剰となる硬化剤未反応物の影響で塗膜の硬化不良が発生し、塗膜硬度が低下するおそれがあり、導電接続の信頼性が低下するおそれがある。
また、導電性樹脂組成物における、(d)フェノール系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくば15質量部以上であり、例えば250質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下とすることができる。エポキシ樹脂100質量部に対して硬化剤の含有量が5質量部未満の場合、導電性樹脂組成物の硬化性が低下し、硬化に時間がかかるおそれがあり、250質量部を超える場合、導電性樹脂組成物が固化せず膜形成しないおそれがある。
【0027】
<その他成分>
本発明の導電性樹脂組成物は、必要に応じて、溶媒、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤、密着性付与剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、硬化促進剤(硬化触媒)、反応性希釈剤、錫粉末以外の導電性粉末、エポキシ樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、顔料、充填剤(フィラー)、腐食抑制剤、消泡剤、カップリング剤、沈降防止剤等、レベリング剤、重金属不活性化剤、界面活性剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着付与剤等からなる群より選ばれる1種以上の各種添加剤を混合することができる。
【0028】
(溶媒)
本発明の導電性樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物の流動性を向上させ、作業性の向上に寄与することができる。また、導電性樹脂組成物と溶媒を混合することで、導電性樹脂ペースト、導電性インク、導電性接着剤、回路接続材料等を構成することができる。
【0029】
溶媒としては、水及び各種有機溶媒からなる群より選ばれる1種以上から、任意のものを用いることができる。有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、1,2-ジアセトキシエタン等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル系溶媒;酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素極性溶媒;シリコーンオイル系溶媒等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
溶剤を用いる場合の含有量は、特に限定されず、導電性樹脂組成物の粘度が、基材上に適切に塗布、印刷等できる程度の粘度及び/又は多孔質体に適切に含浸し得る程度の粘度となるように適宜調整すればよい。
【0030】
(フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を含んでいてもよい。フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、チオール系硬化剤、アミン系硬化剤及びアミド系硬化剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の導電性樹脂組成物は、作業性や取扱性等をより効果的に向上させる観点から、25℃において液状である硬化剤を含むことが好ましい。
【0031】
-酸無水物系硬化剤-
酸無水物系硬化剤は、分子構造中にカルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。
酸無水物系硬化剤は、有機カルボン酸2分子の分子間での脱水及び/又は有機カルボン酸1分子の分子構造中での脱水により得られたものである。本発明においては、例えば、前記有機カルボン酸のうち、有機モノカルボン酸の分子間脱水により得られたもの及び有機ポリカルボン酸の分子内脱水及び/又は分子間脱水により得られるものからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。例えば、脂肪族モノカルボン酸無水物、脂肪族ポリカルボン酸無水物、脂環族ポリカルボン酸無水物、芳香族ポリカルボン酸無水物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
好ましくは、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、シュウ酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、安息香酸無水物、コハク酸無水物、2-メチルコハク酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、(ポリ)アジピン酸無水物、(ポリ)アゼライン酸無水物、(ポリ)セバシン酸無水物、ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0032】
また、下記構造式(1)
【化1】

(構造式(1)中、Rは、炭素数10以上40以下の直鎖又は分岐炭化水素基である。)
で表されるポリ酸ポリ無水物を用いてもよい。このようなポリ酸ポリ無水物は、長鎖脂肪族ジカルボン酸が分子間脱水縮合反応することで得られるものである。
ポリ酸ポリ無水物としては、例えば、岡村製油社製のSL-12AH、SL-20AH、SB-20AH、IPU-22AH、ST-2PAH等の1種以上が挙げられる。特に、25℃で液状のSB-20AH、IPU-22AH及びST-2PAHの1種以上が好ましい。
【0033】
-チオール系硬化剤-
チオール系硬化剤としては、分子構造中にエポキシ基と反応し得るチオール基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するチオール化合物が挙げられる。チオール系硬化剤として、分子構造中のチオール基数が2~6(2官能~6官能)である多官能チオール化合物が好ましく、3~6(3官能~6官能)である多官能チオール化合物がより好ましい。チオール当量は、特に限定されないが、例えば低分子のチオール系硬化剤では50g/eq以上、好ましくは90g/eq以上であり、例えば200g/eq以下、好ましくは150g/eq以下である。高分子のチオール系硬化剤では250g/eq以上、好ましくは400g/eq以上であり、例えば5000g/eq以下、好ましくは3000g/eq以下である。
【0034】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:PEMP)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:DPMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(略称:TEMPIC)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート(略称:TMPIC)、エチレングリコールビスチオグリコレート(略称:EGTG)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(略称:TMTG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(略称:PETG)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(略称:TPMB)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(略称:TEMB)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトプロピル)グリコールウリル、4,4’-イソプロピリデンビス[(3-メルカプトプロポキシ)ベンゼン]、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール等のチオール化合物(多官能チオール化合物)、チオール基を有するポリサルファイドポリマ等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
具体的には、例えば、SC有機化学社製多官能チオール(TMMP-LV、PEMP-LV、DPMP、TEMPIC、PEMP等)、東レファインケミカル社製多官能チオール(QE-340M、LP-2、LP-3、LP-55、LP-31等)、四国化成工業社製多官能チオール(TS-G、C3TS-G等)、昭和電工社製多官能チオール(カレンズ MTシリーズ(PE-1、BD-1、NR-1、TPMB、TEMB等))、淀化学社製多官能チオール(OTG、EGTG、TMTG、PETG、3-MPA、TMTP、PETP等)等が挙げられる。
【0036】
-アミン系硬化剤-
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、ビス[4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル]メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m-キシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン及びこれらをエポキシアダクト、マイケル付加、マンニッヒ反応等により変性した変性ポリアミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
-フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤の含有量-
導電性樹脂組成物における、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤の含有量は、特に限定されない。本発明においては、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を使用しなくてもよい。
フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中のエポキシ基と反応する基(例えば、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、酸無水物基等)が、例えば0.1当量以上、好ましくは0.3当量以上、より好ましくは0.9当量以上であり、例えば1.5当量以下、好ましくは1.2当量以下、より好ましくは1.1当量以下である。最も好ましくは1.0当量である。エポキシ基1当量に対して0.1当量未満の場合、導電性樹脂組成物の硬化性が低下し、硬化に時間がかかる又は塗膜の硬化不良が発生するおそれがあり、1.5当量を超える場合、過剰となる硬化剤未反応物の影響で塗膜の硬化不良が発生し、塗膜硬度が低下するおそれがあり、導電接続の信頼性が低下するおそれがある。
また、エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化剤全体が、例えば5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、例えば250質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下となるようにできる。エポキシ樹脂100質量部に対して硬化剤の含有量が5質量部未満の場合、導電性樹脂組成物の硬化性が低下し、硬化に時間がかかるおそれがあり、250質量部を超える場合、導電性樹脂組成物が固体とならなくなるおそれがある。
【0038】
(密着性付与剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、密着性付与剤を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物を基材に塗布した際に、基材との密着性等を向上させることができる。密着性付与剤としては、例えば、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、官能基(カルボン酸基、アミノ基、水酸基等)を有するポリマーやその塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
密着性付与剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製BYKシリーズ(4509、4510、4512等)が挙げられる。
【0039】
(粘弾性調整剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、粘弾性調整剤(レオロジーコントロール剤)を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物の粘弾性(レオロジー)を調製して、作業性等の向上に寄与することができる。
粘弾性調整剤(レオロジーコントロール剤)としては、ポリアマイド系、アミノプラスト系、ポリカルボン酸系、ウレタン系、セルロース系、無機層状化合物系等の粘弾性調整剤(レオロジーコントロール剤)が挙げられる。例えば、ビックケミー・ジャパン社製RHEOBYKシリーズ(H370、H400、H600、H600VF、100、405、410、411、415、430、431、440、7410ET等);楠本化成社製ディスパロンシリーズ(AQ-600、AQH-800、3600N、3900EF等);サンノプコ社製SNシックナーシリーズ(613、617、618、630、634、636、621N、623N等);ADEKA社製アデカノールシリーズ(UH-814N、UH-752、UH-750、UH-462等)、ダイセル社製HECダイセルシリーズ(SP600N等);エレメンティスジャパン社製BENTONE HD等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(湿潤分散剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、錫粉末の凝集を防止するために、必要に応じて湿潤分散剤を含有していてもよい。
湿潤分散剤の具体例としては、例えば、日本ルーブリゾール社製ソルスパースシリーズ(9000、12000、17000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、32000、35100、54000等)、エフカアディディブズ社製EFKAシリーズ(4008、4009、4010、4015、4046、4047、4060、4080、7462、4020、4050、4055、4400、4401、4402、4403、4300、4330、4340、6220、6225、6700、6780、6782、8503等)、味の素ファインテクノ社製アジスパーシリーズ(PA111、PB711、PB821、PB822、PN411等)、ビックケミー・ジャパン社製DISPERBYKシリーズ(101、106、108、116、130、140、145、161、163、166、168、171、180、192、2000、2001、2020、2025、2070、2152、2155、2164、220S、300、320、340、378、380N、410、425、430等)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(硬化促進剤(硬化触媒))
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤の硬化を促進させるための硬化促進剤(硬化触媒)を含有していてもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等の脂肪族第三アミン類、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアミノ-p-クレゾール、ピペリジン、α-ピコリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、3,4,5-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、N-アミノエチルピペラジン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、メチレンジアニリン、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノアニゾール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-メチレンジアニリン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラピロ[5,5]ウンデカン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミド、変性ポリアミン、変性ポリアミドアミン、変性ポリアミド等のアミン系化合物;ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ(o-トリル)グアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等のグアニジン系化合物;テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムイオダイド、テトラブチルホスホニウムイオダイド、ブチルトリフェニルホスホニウムイオダイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラブチルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラブチルボレート、テトラフェニルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムアセテート、ブチルトリフェニルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等のホスホニウム系化合物:チタンやコバルト等の遷移金属を含む化合物;等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(反応性希釈剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物の粘度調整や硬化性調整等のための反応性希釈剤を含有していてもよい。反応性希釈剤としては、特に限定されないが、分子構造中にエポキシ基を1つ有する化合物、分子構造中にオキセタン基を1つ以上有する化合物等の1種以上が挙げられる。例えば、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4-tertブチルフェニルグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、三菱ケミカル社製のYED111N、YED111AN、YED188、ADEKA社製のアデカグリシロールED-502、アデカグリシロールED-502S、アデカグリシロールED-509E、アデカグリシロールED-509S、アデカグリシロールED-529、ナガセケムテックス社製のデナコールEX-145、デナコールEX-171、デナコールEX-192、共栄社化学社製のエポライトM-1230、エポライト100MF、東亜合成社製のアロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-212、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-221、UBE社製のETERNACOLL EHO、ETERNACOLL HBOX、ETERNACOLL OXMA、ETERNACOLL OXBP等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(導電性粉末)
本発明の導電性樹脂組成物は、錫粉末以外の導電性粉末を含んでいてもよい。このような導電性粉末としては、例えば、無鉛ハンダ粉末、金粉末、金合金粉末、銀粉末、銀合金粉末、銅粉末、銅合金粉末、銀被覆銅粉末、銀被覆銅合金粉末、銀被覆シリカ粉末、銀被覆ニッケル粉末、銀被覆アルミニウム粉末、銀被覆チタン酸カリウム粉末、銀被覆カーボン粉末、樹脂コア金属被覆微粒子、ニッケル粉末、導電性カーボン粉末、カーボンナノチューブ、グラフェン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
例えば、無鉛ハンダ粉末としては、作業者、使用者、環境等への影響から、不可避的に含まれる量以上の鉛を含有しないハンダの粉末であれば、特に限定されない。無鉛ハンダ粉末の融点は、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは240℃以下であり、さらに好ましくは50~240℃である。無鉛ハンダ粉末の融点が300℃を超えると、回路基板や電子部品等の被接続部材が熱破壊や熱劣化するおそれがある。融点が50℃未満であると、機械的強度が弱くなり、導電接続の信頼性が低下するおそれがある。
【0044】
(樹脂)
本発明の導電性樹脂組成物は、エポキシ樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、1種又は2種以上を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、テルペン系樹脂等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、キシレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレア系樹脂、フラン樹脂、イソシアネート系樹脂、尿素樹脂等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明においては、樹脂としてポリビニルブチラール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びキシレン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性、基材への密着性等の観点から、ポリビニルブチラール系樹脂が好適に用いられる。
【0045】
(酸化防止剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物の硬化物の耐熱性や耐黄変性等の向上に寄与することができる。酸化防止剤としては、酸化防止機能を有する化合物であれば特に限定されず、公知又は慣用の酸化防止剤が使用できる。例えば、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系酸化防止剤、ハイドロキノン等のキノン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ペンチルフェノール、ビス-[3,3-ビス-(4'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチルフェニル)-ブタノイックアシッド]-グリコールエステル、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4′-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2'-ブチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C-C側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3′,3″,5,5′,5″-ヘキサ-tert-ブチル-a,a′,a″-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール系酸化防止剤;β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系酸化防止剤;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d、f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系酸化防止剤;ジラウリル3,3′-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系酸化防止剤;フェノチアジン等のアミン系酸化防止剤;ラクトン系酸化防止剤;ビタミンE系酸化防止剤等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
酸化防止剤は、市販品を用いてもよい。例えば、BASF社製のIRGANOXシリーズ、ADEKA社製のアデカスタブシリーズ、精工化学社製のノンフレックスシリーズ、住友化学社製のSumilizerシリーズ等が挙げられる。
【0046】
<導電性樹脂組成物の性状>
本発明の導電性樹脂組成物の性状は、粉末状、固体状、ペースト状、液体状(ワニス状)等の任意の性状とすることができる。導電性インク、導電性接着剤、回路接続材料としての用途の際には、室温(25℃)でペースト状又は液体状(ワニス状)であることが好適である。
本発明の導電性樹脂組成物は、材料をミキサー等により混合、撹拌してペースト状又は液体状(ワニス状)の導電性樹脂組成物を作製した際に、ダマ等の発生がなく、均一な導電性樹脂組成物を形成することができる。
【0047】
<導電性樹脂組成物の特性>
本発明の導電性樹脂組成物は、硬化性に優れている。例えば、基材の上に塗布後に、50℃~250℃で5分~300分熱処理(焼成)することで、容易に導電膜(乾燥塗膜)を形成することができる。
本発明の導電性樹脂組成物は、導電性に優れている。例えば、剥離性基材の上に導電性樹脂組成物を流延又は塗布し乾燥後に剥離して得られた導電膜の体積抵抗率が1.0×10-2Ω・cm未満であることが好ましい。より好ましくは導電膜の体積抵抗率が8.0×10-3Ω・cm未満、さらに好ましくは1.0×10-3Ω・cm未満である。ここで、体積抵抗率は、実施例において記載した方法により得られる。また、例えば、導電性樹脂組成物を用いて接続部材を接合した際に、導電性樹脂組成物の膜は表面絶縁性(体積抵抗率が1.0×10-1Ω・cm以上であり、表面が実質的に絶縁体となっている)にもかかわらず、内部が導電性を示すことから、接続部材間に導電接続を形成することが可能である。ここで、導電接続の形成の確認は、実施例において記載したLED点灯試験により確認することができる。これより、導電性樹脂組成物の硬化物は、表面が絶縁性、内部が導電性を示す、絶縁皮膜付き電線のような構造を形成していると考えられる。
本発明の導電性樹脂組成物は、各種の基材に対する密着性に優れている。例えば、ガラス、金属又はプラスチック(例えば、ポリエステル等)に対する密着性に優れている。
本発明の導電性樹脂組成物は、製造後に保存した後であっても、塗布・印刷等を行うことが可能な実用的な保存安定性を有している。
【0048】
<導電性樹脂組成物の調製方法>
本発明の導電性樹脂組成物の調製に際しては、錫粉末、エポキシ樹脂、有機酸化合物及びフェノール系硬化剤を必須成分とし、必要に応じて無鉛ハンダ粉末、溶媒等を、任意の順序で混合容器に加えて混合し製造することができる。混合に際しては、例えば、自転・公転ミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、タンブラー、スターラー、撹拌機、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、一軸押出機、二軸押出機等で混合する方法が適宜用いられる。
【0049】
導電性樹脂組成物を調製する際の温度(各成分を混合する際の温度)は、特に限定されない。必要に応じて、加熱等をすることもでき、例えば、10~100℃で導電性樹脂組成物を調製することができる。
導電性樹脂組成物を調製する際の雰囲気は、特に限定されない。大気中で行うことができ、不活性雰囲気下で行うこともできる。
【0050】
<導電性樹脂組成物の用途>
本発明の導電性樹脂組成物の用途は、導電性物体の製造に係る用途である。導電性物体は、導電性樹脂組成物に加えて他の部材等を含んでいてもよい。
導電性物体としては、例えば、導電性インク、回路接続材料、導電性ペースト、導電性を有する膜、導電性繊維、導電性塗料、半導体パッケージ用導電材料、マイクロエレクトロニクスデバイス用導電材料、帯電防止材料、電磁波シールド材料、導電性接着剤(ダイ取付接着剤等、表面実装部品取付用接着剤)、ダイアタッチペースト、アクチュエータ、センサー、導電性樹脂成形体、電子部品の電極形成材料(チップ抵抗の端子等)、電子部品の内部電極用材料(MLCCの内部電極等)、集電極材料、アンテナ形成材料等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0051】
例えば、溶媒を導電性樹脂組成物の成分とすることで、導電性インク、導電性ペースト、導電性塗料、導電性接着剤等を構成することができる。その際の粘度は特に限定されず、用途等に応じて低粘度のワニス状から高粘度のペースト状等とすることができる。
例えば、必要に応じて溶媒等を含む導電性樹脂組成物を、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、スプレーコート法、スピンコート法、インクジェット法、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、スリットコート法、ナイフコート法、パッド印刷、樹脂凸印刷、アプリケータ法、反転印刷、反転オフセット印刷等により各種の基材に塗布し、300℃以下の温度で加熱乾燥させて導電性を有する膜とすることができる。乾燥時の雰囲気は、大気中、不活性ガス中、真空中、減圧等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。特に、導電性を有する膜の劣化抑制(錫粉末等の酸化防止等)の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0052】
本発明の導電性樹脂組成物は、押出成形、射出成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、ブロー成形、TOM成形、プレス成形、インサート成形、インモールド成形等の成形方法により成形し、成形体として用いることができる。成形体としては、例えば電子機器部品、自動車用部品、機械機構部品、食品容器、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。
【0053】
[導電膜]
本発明の導電膜は、前記導電性樹脂組成物から形成され、体積抵抗率が1.0×10-2Ω・cm未満である。好ましくは導電膜の体積抵抗率が8.0×10-3Ω・cm未満、より好ましくは1.0×10-3Ω・cm未満である。本発明の導電膜は、1.0×10-4Ω・cm未満(10-5Ω・cmオーダー)という、銀ペーストから形成された導電膜に匹敵する体積抵抗率とすることも可能である。
ここで、体積抵抗率は、実施例において記載した方法により得られる。
【0054】
導電性樹脂組成物から導電膜を形成する方法としては、特に限定されない。例えば、前記導電性樹脂組成物を溶媒含有のものとし、これを任意の基材上に塗布し乾燥等することで、導電膜を形成できる。また、剥離性基材の上に導電性樹脂組成物を流延又は塗布し乾燥等した後に剥離して得ることができる。
導電膜の形成条件は、特に限定されず、被塗物等に応じて適宜設定できる。導電性樹脂組成物を塗布した後の乾燥等に際しての温度は、例えば50℃以上、好ましくは90℃以上であり、例えば250℃以下、好ましくは220℃以下である。乾燥等の時間としては、例えば5分以上、好ましくは7分以上であり、例えば300分以下、好ましくは200分以下である。
導電膜の乾燥膜厚は、特に限定されず、用途等に応じて適宜調整できる。例えば、10μm以上、好ましくは30μm以上であり、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下である。
【0055】
[導電性インク]
本発明の導電性インクは、前記導電性樹脂組成物を含むものである。例えば、前記導電性樹脂組成物を、必要に応じて前記溶媒に溶解及び/又は分散させて得ることができる。
導電性インクは、必要に応じて、溶媒、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤、密着性付与剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、硬化促進剤(硬化触媒)、反応性希釈剤、錫粉末以外の導電性粉末、エポキシ樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、顔料、充填剤(フィラー)、腐食抑制剤、消泡剤、カップリング剤、沈降防止剤等、レベリング剤、重金属不活性化剤、界面活性剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着付与剤等からなる群より選ばれる1種以上をさらに含んでいてもよい。
導電性インクは、前記成分を混合容器に入れた後に、自転・公転ミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、タンブラー、スターラー、撹拌機、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、一軸押出機、二軸押出機等からなる群より選ばれる1種以上の混合機を用いて混合し、ワニス状又はペースト状とすることで得られる。
【0056】
導電性インクは、例えば配線形成用の印刷用導電性インクとして利用できる。導電性インクを各種基材に適用する方法としては、特に限定されない。例えば、前記の導電性樹脂組成物を基材に塗布する方法が挙げられる。本発明においては、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、印刷性や形状保持性に優れることから、スクリーン印刷、インクジェット印刷等からなる群より選ばれる1種以上の印刷方法を用いることがより好ましい。
ここで、スクリーン印刷におけるメッシュは適宜選択でき、導電性インク中の導電性粉末や無鉛ハンダ粉末等が過度に除去されないだけのメッシュを採用することが好ましい。
【0057】
導電性インクを塗布してなる塗布膜の膜厚は、各種の用途に応じて適当な膜厚とすることができる。例えば1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、500μm以下である。
導電性インクは、導電性、各種基材への密着性、レベリング(表面平滑性)、印刷性等からなる群より選ばれる1種以上の特性に優れたものである。
【0058】
[導電性接着剤]
本発明の導電性接着剤は、前記導電性樹脂組成物を含むものである。例えば、前記導電性樹脂組成物を、必要に応じて前記溶媒に溶解及び/又は分散させて得ることができる。
導電性接着剤は、接着対象部位を導電性を有するように接着するために用いられる。例えば、電池、電気・電子機器の製造において、導電性が必要な接着を行う際等に用いられる。導電性接着剤は、必要に応じて、溶媒、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤、密着性付与剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、硬化促進剤(硬化触媒)、反応性希釈剤、錫粉末以外の導電性粉末、エポキシ樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、顔料、充填剤(フィラー)、腐食抑制剤、消泡剤、カップリング剤、沈降防止剤等、レベリング剤、重金属不活性化剤、界面活性剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着付与剤等からなる群より選ばれる1種以上をさらに含んでいてもよい。
導電性接着剤は、前記成分を混合容器に入れた後に、自転・公転ミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、タンブラー、スターラー、撹拌機、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、一軸押出機、二軸押出機等からなる群より選ばれる1種以上の混合機を用いて混合し、ワニス状又はペースト状とすることで得られる。
【0059】
本発明の導電性接着剤は、異方導電性接着剤として用いることができる。これにより、微細化されたICチップ、発光ダイオード等の電子部品、回路基板の電極接続等において、高信頼性の導電接続を形成することができる。また、本発明の導電性接着剤は、硬化させた後の硬化膜表面が絶縁性を示す場合があり、電子部品を高密度に実装させる際に有利である。
本発明の導電性接着剤を介して被接着部材同士が接着されている接着構造体としては、例えば、電極を有する基板にICチップを接着した、ICカードやICタグ等のRFID関連製品や、電極を有する基板に発光ダイオードを接着した発光電子部品等が挙げられる。例えば、基板の少なくとも一方の面に電極を多数形成し、各電極がそれぞれ少なくとも覆われるように本発明の導電性接着剤を塗布して接着剤膜を形成し、各電極部に各電子部品の電極部を相対させて圧着し、接着剤層を硬化させることで、導電性接着剤を用いた接着構造体を形成することができる。
【0060】
本発明の導電性接着剤を基材に塗布する手段は、特に限定されない。例えば、前記の導電性樹脂組成物を基材に塗布する方法が挙げられる。本発明においては、印刷、吐出等により行うことができる。印刷方法としては、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、印刷性や形状保持性に優れることから、スクリーン印刷、インクジェット印刷等からなる群より選ばれる1種以上の印刷方法を用いることが好ましい。
ここで、スクリーン印刷におけるメッシュは適宜選択でき、導電性接着剤中の導電性粉末が過度に除去されないだけのメッシュを採用することが好ましい。
導電性接着剤を塗布してなる接着剤膜の膜厚は、各種の用途に応じて適当な膜厚とすることができる。例えば1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、200μm以下である。
【0061】
本発明の導電性接着剤は、フィルム状に成形して用いてもよい。フィルム状の導電性接着剤は、例えば、導電性接着剤組成物に必要に応じて溶剤等を加える等で得られた導電性接着剤溶液を、剥離性支持体上に塗布し、溶剤等を除去する方法により得ることができる。フィルム状の導電性接着剤は、取り扱い等の点から一層便利である。フィルム状の導電性接着剤の層を1層以上と、必要に応じて、1層以上の絶縁性接着剤層、1層以上の剥離性材料層等とともに、多層構造体として用いることもできる。
本発明の導電性接着剤は、通常、加熱及び加圧を併用して被着体同士を接着させることができる。加熱温度は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されず、例えば70℃以上250℃以下である。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されず、例えば0.1MPa以上10MPa以下である。加熱及び加圧は、例えば0.5秒以上120秒以下で行うことが好ましい。
【0062】
本発明の導電性接着剤は、被着体同士を電気的に接合させるために用いられる。例えば、互いに異なる材料であって熱膨張係数が異なる被着体同士を接着させるとともに電気的に接続させるための異種の被着体の接着剤として使用することができる。さらに、本発明の導電性接着剤は、異方導電性接着剤、導電性ペースト、導電性接着フィルム等の回路接続材料、アンダーフィル材、LOCテープ等の半導体素子接着材料として使用することができる。
【0063】
[回路接続材料]
本発明の回路接続材料は、前記導電性樹脂組成物及び/又は前記導電性接着剤を含むものである。本発明の回路接続材料は、必要に応じて、溶媒、フェノール系硬化剤以外のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤、密着性付与剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、硬化促進剤(硬化触媒)、反応性希釈剤、錫粉末以外の導電性粉末、エポキシ樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、顔料、充填剤(フィラー)、腐食抑制剤、消泡剤、カップリング剤、沈降防止剤等、レベリング剤、重金属不活性化剤、界面活性剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着付与剤等からなる群より選ばれる1種以上をさらに含んでいてもよい。
本発明の回路接続材料は、各種電子部品と回路基板との導電接続や電気・電子回路相互の電気的な接続(接着)に用いられる。
【0064】
回路接続材料の形状等は特に限定されないが、液状又はフィルム状であることが好ましい。
液状の回路接続材料は、例えば、本発明の導電性樹脂組成物に有機溶媒等の溶媒を混合して液状化することで得ることができる。
フィルム状の回路接続材料は、例えば、前記の液状化した本発明の導電性樹脂組成物を剥離性基材上に直接流延・塗布して膜を形成し、乾燥して溶媒を除去してフィルムを形成した後に剥離性基材上から剥がすことで得ることができる。
また、フィルム状の回路接続材料は、例えば、前記の液状化した本発明の導電性樹脂組成物を不織布等に含浸させた後に剥離性基材上に形成し、乾燥して溶媒を除去した後に剥離性基材上から剥がすことで得ることができる。
【0065】
回路接続材料を用いた電気的接続方法等は特に限定されない。例えば、電子部品や回路等の電極と、それと相対峙する基材上の電極との間に回路接続材料を設け、加熱して両電極の電気的接続と両電極間の接着を行う方法が挙げられる。加熱の際、必要に応じて加圧することができる。
相対峙する電極との間に回路接続材料を設ける方法は、特に限定されない。例えば、液状の回路接続材料を塗布する方法、フィルム状の回路接続材料を挟む方法等が挙げられる。
また、電子部品等が有するピンと回路との導電接続に際して、ピンの根元に回路接続材料を設け、突合せ接合して導電接続を構成する方法等が挙げられる。
【0066】
回路接続材料は、実質的に異方導電性材料として用いることができ、また、接着性に優れた回路接続材料を基材上の相対峙する電極間に形成し、加熱加圧により両電極の接触と基材間の接着を得る電極の接続方法に用いることができる。電極を形成する基材としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラスエポキシ等のこれらの複合物等の各種組み合わせが適用できる。
【実施例0067】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
実施例で用いた成分は、それぞれ以下のとおりである。
【0068】
・錫粉末1:球状錫粉末(D50=5.5μm、Sn≧99.5質量%)
・錫粉末2:不定形状錫粉末(D50=7.5μm、Sn≧99.9質量%)
・銅粉末:球状銅粉末(粒子径10μm~25μm、Sigma-Aldrich社製、銅powder(spheroidal)、98%)
・ニッケル粉末:不定形状ニッケル粉末(D90:10μm以下)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER1001)
・エポキシ樹脂2:ウレタン変性エポキシ樹脂(ADEKA社製、EPU-73B)
・エポキシ樹脂3:ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)
・エポキシ樹脂4:ゴム変性エポキシ樹脂(ADEKA社製、EPR-1415-1)
・有機酸化合物1:グルタル酸
・有機酸化合物2:ピメリン酸
・有機酸化合物3:アゼライン酸
・有機酸化合物4:ジグリコール酸
・有機酸化合物5:コハク酸
・有機酸化合物6:アジピン酸
・フェノール系硬化剤1:液状フェノール樹脂(明和化成社製、MEH-8005)
・フェノール系硬化剤2:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(日本化薬社製、KAYA HARD GPH-103)
・フェノール系硬化剤3:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(日本化薬社製、KAYA HARD GPH-65)
・アミン系硬化剤1:(三菱ケミカル社製、ST-11)
・アミン系硬化剤2:(三菱ケミカル社製、ST-14)
・溶媒1:MFDG(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)
・溶媒2:ブチルカルビトール
・溶媒3:エチルカルビトール
【0069】
導電性樹脂組成物のペースト状態及び硬化性、導電性樹脂組成物により形成された導電膜(乾燥塗膜)の体積抵抗率、表面絶縁性、接合強度及びLED点灯試験の測定・評価は、以下に示す方法で行った。
【0070】
<ペースト状態>
導電性樹脂組成物の構成成分及びその含有量(部)を、それぞれ表1に示すものとし、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「あわとり練太郎 AR-100」)を用いて混合、撹拌して導電性樹脂組成物を得た。この導電性樹脂組成物の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。本発明において、Aは合格、Cは不合格である。
A:導電性樹脂組成物は、均一であった。
C:ダマ等が発生しており、導電性樹脂組成物は不均一であった。
【0071】
<硬化性>
2cm×2cmの穴を開けたPETフィルムをマスクとして、導電性樹脂組成物を手刷り印刷し、ガラス基材上に2cm×2cmの塗膜を作製した後に、160℃・60分の熱処理条件で加熱硬化した。得られた塗膜の中央をヘラで軽く触れたときに、塗膜が変形する度合いを、以下の基準で評価した。本発明において、Aは合格、Cは不合格である。
A:塗膜が硬化しており、変形しなかった。
C:塗膜が硬化しておらず、容易に変形した。
【0072】
<体積抵抗率>
2cm×2cmの穴を開けたPETフィルムをマスクとして、導電性樹脂組成物を手刷り印刷し、プラスチックフィルム基材上に2cm×2cmの塗膜を作製した。次いで、160℃・60分の熱処理条件で加熱硬化し、熱処理(焼成)後の膜厚が表1及び表3に記載されたものである導電膜(乾燥塗膜)を作製した。導電膜(乾燥塗膜)の体積抵抗率を、抵抗率計「ロレスタGP-MCP T610」(日東精工アナリテック社製)により測定した。
【0073】
<表面絶縁性>
2cm×2cmの穴を開けたPETフィルムをマスクとして、導電性樹脂組成物を手刷り印刷し、プラスチックフィルム基材上に2cm×2cmの塗膜を作製した。次いで、160℃・60分の熱処理条件で加熱硬化し、熱処理後の膜厚が表4に記載されたものである導電膜(乾燥塗膜)を作製した。導電膜(乾燥塗膜)の体積抵抗率を、抵抗率計「ロレスタGP-MCP T610」(日東精工アナリテック社製)により測定し、以下の基準で評価した。
A:表面絶縁(体積抵抗率が1.0×10-1Ω・cm以上)
C:表面導電(体積抵抗率が1.0×10-1Ω・cm未満)
【0074】
<LED点灯試験>
エッチングにより面積6.9mmの銅が3.8mm間隔で形成されているガラスエポキシ基板と5025LEDチップを準備した。前記LEDチップの各電極端子それぞれの下に導電性樹脂組成物を面積2.5mm、厚さ100μmとなるように塗布した後に、前記ガラスエポキシ基板上の銅パターン配線と接合し、160℃・60分の熱処理条件で導電性樹脂組成物を硬化して測定用サンプルを作製した。
LEDチェッカーを用い、起電力3Vの電圧を配線の両端に印加し、以下の基準で評価した。本発明において、Aが合格、Cが不合格である。
A:LEDが点灯する。
C:LEDが点灯しない。
【0075】
<接合強度>
面積2.0mmの銅が4mm間隔でエッチングされたガラスエポキシ基板(陽銘社製)と5025チップ抵抗(ローム社製、MCR-50)を準備した。前記チップ抵抗の各電極端子それぞれの下に導電性樹脂組成物を面積1.5mm、厚さ100μmとなるように塗布し、ガラスエポキシ基板上の銅パターン配線と接合し、160℃・60分の熱処理条件で導電性樹脂組成物を硬化して測定用サンプルを作製した。
得られたサンプルについて、Bonding Tester PTR1102(レスカ社製)を用いてダイシェアテスト(0.1mm/sec)を実施し、接合強度を測定した。
【0076】
[実施例1]
15.00部の錫粉末、0.65部のエポキシ樹脂1、0.40部の有機酸化合物、0.19部のフェノール系硬化剤1及び1.00部の溶媒1を混合し、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「あわとり練太郎 AR-100」)を用い混合、撹拌して導電性樹脂組成物を得た。
2cm×2cmの穴を開けたPETフィルムをマスクとして、得られた導電性樹脂組成物を手刷り印刷し、ガラス基材上に2cm×2cmの塗膜を作製した。次いで、160℃・60分の熱処理条件で加熱硬化し、熱処理後の膜厚が表1に記載されたものである導電膜(乾燥塗膜)を作製した。
得られた導電性樹脂組成物について、ペースト状態及び硬化性を評価した。
得られた導電膜(乾燥塗膜)について、体積抵抗率の測定を行った。
得られた導電性樹脂組成物を用いて、LED点灯試験及び接合強度の測定を行った。
これらの結果を、表1に併せて示す。
【0077】
[実施例2~10、比較例1~3]
導電性樹脂組成物の構成成分、その含有量(部)及び導電膜(乾燥塗膜)の膜厚を、それぞれ表1に示すものとしたほかは、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物及び導電膜(乾燥塗膜)を作製した。
得られた導電性樹脂組成物について、ペースト状態及び硬化性を評価した。
得られた導電膜(乾燥塗膜)について、体積抵抗率の測定を行った。
得られた導電性樹脂組成物を用いて、LED点灯試験及び接合強度の測定を行った。
これらの結果を、表1に併せて示す。
実施例10は、体積抵抗率が1.0×10-1Ω・cm以上であり表面絶縁と判定したが、LED点灯試験の評価はA(LEDが点灯する)であった。
比較例1は、ペースト状態はAであったが、硬化性評価がCで導電膜(乾燥塗膜)を形成することができなかったため、膜厚、体積抵抗率、LED点灯試験及び接合強度の評価・測定を行うことができなかった。比較例2、3は、ペースト状態がCであり、導電性樹脂組成物が不均一であるため、硬化性、膜厚、体積抵抗率、LED点灯試験及び接合強度の評価・測定を行うことができなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
[実施例11]
10.00部のエポキシ樹脂2及び5.50部のフェノール系硬化剤1を混合して、ワニスV-1を得た。
0.84部のワニスV-1、15.00部の錫粉末1、0.40部の有機酸化合物1及び1.50部の溶媒1を混合し、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「あわとり練太郎 AR-100」)を用い混合、撹拌して導電性樹脂組成物を作製した。
得られた導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、熱処理後の膜厚(乾燥塗膜の膜厚)が表3に記載されたものである導電膜(乾燥塗膜)を作製した。
得られた導電膜(乾燥塗膜)について、体積抵抗率の測定を行った。
得られた導電性樹脂組成物を用いて、LED点灯試験及び接合強度の測定を行った。
これらの結果を表3に併せて示す。
【0080】
[実施例12~20、比較例4、5]
ワニスV1~V-11の構成成分及びその含有量(部)を表2に示すものとし、導電性樹脂組成物の構成成分及びその含有量(部)を表3に示すものとしたほかは、実施例11と同様にして導電性樹脂組成物及び熱処理後の膜厚が表3に記載されたものである導電膜(乾燥塗膜)を作製した。
得られた導電膜(乾燥塗膜)について、体積抵抗率の測定を行った。
得られた導電性樹脂組成物を用いて、LED点灯試験及び接合強度の測定を行った。
これらの結果を、表3に併せて示す。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
[実施例21~25]
ワニスの構成成分及びその含有量(部)を表2に示すものとし、導電性樹脂組成物の構成成分及びその含有量(部)を表4に示すものとしたほかは、実施例11と同様にして導電性樹脂組成物及び熱処理後の膜厚(乾燥塗膜の膜厚)が表4に記載されたものである導電膜(乾燥塗膜)を作製した。
得られた導電膜(乾燥塗膜)について、表面絶縁性の測定を行った。
得られた導電性樹脂組成物を用いて、LED点灯試験及び接合強度の測定を行った。
これらの結果を、表4に併せて示す。
【0084】
【表4】
【0085】
実施例1~9、11~20に係る導電性樹脂組成物により形成された導電膜(乾燥塗膜)は、いずれも体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm未満、場合によっては1.0×10-4Ω・cm未満という、銀ペーストと同等以上の導電性を示し、導電性に優れたものであった。これより、銀ペースト等と比較して低コストであり、銀ペーストと同等の高い導電性を示す導電膜を形成できる導電性樹脂組成物が得られたことがわかる。
実施例10、21~25に係る導電性樹脂組成物を用いて形成した導電膜(乾燥塗膜)は、いずれも体積抵抗率が1.0×10-1Ω・cm以上であり、表面絶縁性がA評価でありながらLED点灯試験に合格する特異な特性を示している。これより、本発明の導電性樹脂組成物は、膜を形成した際に、表面が実質的に絶縁体となっているにもかかわらず、内部が導電性を示す特性を有する場合があることがわかる。そして、本発明の導電性樹脂組成物を用いて導電接続を形成した場合、接続部材間に導電接続を形成しつつ、膜表面を実質的に絶縁性とすることが可能であることから、導電性インク、導電性接着剤及び回路接続材料等の導電性材料として有用であることが分かる。
さらに、表1、表3及び表4に示される通り、本発明の導電性樹脂組成物により形成される導電膜(乾燥塗膜)は、その接合強度が強力であり、基材に対する密着性が高いことがわかる。
【0086】
一方、有機酸化合物を含まない比較例1に係る導電性樹脂組成物は、硬化性評価がCで導電膜(乾燥塗膜)を形成することができないものであり、フェノール系硬化剤に替えてアミン系硬化剤を用いた比較例2、3に係る導電性樹脂組成物は、ペースト状態がCでダマが発生し均一な導電性樹脂組成物を作製できないものであり、錫粉末に替えて銅粉末を用いた比較例4に係る導電性樹脂組成物及び錫粉末に替えてニッケル粉末を用いた比較例5に係る導電性樹脂組成物は、LED点灯試験評価がCで十分な導電性を示さないものであった。