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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064737
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】顕微鏡のノイズ除去モデルの訓練
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/00 20060101AFI20230501BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230501BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230501BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G06T5/00 705
G06T1/00 295
G06T7/00 630
G06T7/00 350C
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022170401
(22)【出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】21204605
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホセ ミゲル セラ ジェティ
(72)【発明者】
【氏名】メイト ベルジャン
【テーマコード(参考)】
2H052
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
2H052AA09
2H052AB01
2H052AC06
2H052AC07
2H052AD34
2H052AF25
5B057AA10
5B057BA02
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057DA20
5B057DB02
5B057DC40
5L096CA02
5L096CA17
5L096EA05
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】顕微鏡のノイズ除去モデルを訓練するためのコンピュータにより実装される方法、プログラム及びデータ処理装置を提供する。
【解決手段】方法(100)は、顕微鏡(104)を用いて撮影されたそれぞれ異なる画像取得設定を有する複数の訓練画像を取得する(106)。複数の訓練画像は、顕微鏡のハードウェアによって引き起こされたノイズを含む。方法はまた、それぞれ異なる画像取得設定で取得された複数の訓練画像を使用してノイズ除去モデル(102)を訓練(108)し、これにより、顕微鏡のハードウェアに固有のノイズ除去モデル(102)を作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(104)のノイズ除去モデル(102)を訓練するためのコンピュータにより実装される方法(100)であって、前記方法は、
前記顕微鏡(104)を用いて撮影されたそれぞれ異なる画像取得設定を有する複数の訓練画像を取得するステップ(106)であって、前記複数の訓練画像は、前記顕微鏡のハードウェアによって引き起こされたノイズを含むステップと、
それぞれ異なる画像取得設定で取得された前記複数の訓練画像を使用して前記ノイズ除去モデル(102)を訓練(108)し、これにより、前記顕微鏡のハードウェアに固有のノイズ除去モデル(102)を作成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記それぞれ異なる画像取得設定は、前記複数の訓練画像がそれぞれ異なる信号対ノイズ比を有するように選択される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記それぞれ異なる画像取得設定で前記複数の訓練画像を取得するステップ(106)は、前記それぞれ異なる画像取得設定を定義する所定のプロトコルに従って実行される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記所定のプロトコルは、複数の露光時間、好ましくは露光時間の勾配を定義しており、
任意選択手段として、前記所定のプロトコルは、各露光時間に対して複数の照明設定を定義する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記複数の訓練画像は、前記顕微鏡(104)を用いて撮影された、試料なしの画像または試料キャリアのみを有する画像である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ノイズ除去モデル(102)は、前記顕微鏡(104)の各カメラ、対物レンズ、フィルタ、光路および/またはモダリティを考慮するように訓練される、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ノイズ除去モデル(102)は、前記顕微鏡(104)のカメラ、対物レンズ、フィルタ、光路および/またはモダリティのうちの少なくともいくつかについての別個のモデル、および/または、前記顕微鏡(104)のカメラ、対物レンズ、フィルタ、光路および/またはモダリティのうちの少なくともいくつかについての組み合わされたモデルを含む、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
顕微鏡(104)のノイズ除去モデル(102)を訓練するためのコンピュータにより実装される方法(200)であって、前記方法は、
前記顕微鏡(104)を用いて撮影されたそれぞれ異なる画像取得設定を有する試料(204)の複数の画像を取得するステップ(202)であって、前記試料(204)の前記複数の画像は、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を使用して訓練されたノイズ除去モデル(102)を使用してノイズ除去(206)され、前記試料(204)の前記複数の画像は、前記試料(204)によって引き起こされたノイズを含むステップと、
前記試料(204)の前記複数の画像を使用して、前記ノイズ除去モデル(102)またはそのコピーを訓練し(208)、これにより、前記顕微鏡のハードウェアおよび前記試料(204)に固有の前記ノイズ除去モデル(102)またはそのコピーを作成するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
それぞれ異なる画像取得設定で前記試料(204)の前記複数の画像を取得するステップ(202)は、所定のプロトコルに従って実行され、前記所定のプロトコルは、前記異なる画像取得設定を定義し、
任意選択手段として、前記所定のプロトコルは、前記複数の訓練画像を取得するために使用されたプロトコルと同じプロトコルである、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
前記顕微鏡のハードウェアおよび前記試料に固有の訓練済みの前記ノイズ除去モデル(102)を、他の試料、特に同様の種類の試料とともに使用するために保存するステップをさらに含む、
請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記試料(204)の前記複数の訓練画像および/または前記複数の画像を取得するために使用される前記画像取得設定は、利得設定、露光時間または照明のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ノイズ除去モデル(102)は、機械学習モデル、人工ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、特にU-Netおよび/または敵対的生成ネットワークであるかまたはこれらを含む、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実行する手段を備えたデータ処理装置。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法に従って訓練されている、顕微鏡(104)のための訓練済みのノイズ除去モデル(102)。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されたときに、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、顕微鏡検査用途におけるデータ処理の分野に関し、特に、機械学習を使用して顕微鏡検査画像をノイズ除去するための改善された技術に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡検査の特定の分野、例えば細胞構造または生体試料を研究するための蛍光顕微鏡検査の分野では、光退色および光毒性等の望ましくない影響を最小限に抑えるために、露光量と取得される画像の品質との間でトレードオフを行うことがしばしば必要となる。
【0003】
通常、研究者らは、エネルギ入力を最小化することによって光退色および光毒性の最小化を試みており、これは、露光時間または利得を減少させることにより達成できるが、その犠牲としてノイズの量が増大することになる。多くの対象物が評価される実験(例えば、細胞培養におけるハイスループットスクリーニング)では、蛍光撮像は、可能な限り高速とし、かつ事後分析に十分な品質を保持する必要がある。
【0004】
このような背景から、画像ノイズ除去の重要性はますます高まっている。画像ノイズ除去とは、概して、加法性ノイズが混入した画像を復元する試みを指す。かかるノイズは、電子源、例えば、ガウスノイズ、ソルトアンドペッパーノイズ、ショットノイズ、またはカメラセンサからの量子化、感度、もしくは熱に起因する試料依存高周波ノイズから生じうる。
【0005】
カメラ画像のノイズ除去というテーマは、科学的な研究の対象となっている。例えば、Mandracchia, B., Hua, X., Guo, C. et al.による論文“Fast and accurate sCMOS noise correction for fluorescence microscopy”(Nat Commun 11, 94 (2020). https://doi.org/10.1038/s41467-019-13841-8)では、蛍光顕微鏡検査のためのsCMOS関連のノイズの自動補正のための内容適応化アルゴリズムが開示されている。ここに開示されている技術では、信号の微細な詳細情報を保存しながらsCMOSセンサ内のノイズ源を低減するために、カメラ物理と階層スパースフィルタリングとが組み合わされている。
【0006】
Alexander Krull, et al.による論文“Probabilistic Noise2Void : Unsupervised Content-Aware Denoising”(arXiv:1906.00651)およびAlexander Krull, et al.による論文“Noise2Void - Learning Denoising From Single Noisy Images”(IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2019)では、ノイズの多い観測に対する完全な確率的モデルと全てのピクセルにおける真の信号とを取得するために、ピクセルごとの強度分布を予測するように畳み込みニューラルネットワークを訓練する方法が開示されている。
【0007】
これらの科学的アプローチに加えて、従来の顕微鏡では、通常、カメラ内で、または画像取得後の後処理ルーチンとして、一般的なノイズ除去器が使用されている。そのため、実際に採用されているノイズ除去技術の効果は限定的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の実施形態の根底にある問題は、改善された顕微鏡検査画像ノイズ除去技術を提供し、これにより、上述した従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態では、顕微鏡のノイズ除去モデルを訓練するためのコンピュータにより実装される方法が提供される。本方法は、顕微鏡を用いて撮影された異なる画像取得設定を有する複数の訓練画像を取得することを含むことができ、複数の訓練画像は、顕微鏡のハードウェアによって引き起こされたノイズを含む。本方法は、異なる画像取得設定で取得された複数の訓練画像を使用してノイズ除去モデルを訓練し、これにより顕微鏡のハードウェアに固有のノイズ除去モデルを作成することをさらに含みうる。
【0010】
したがって、従来のカメラで概して使用されている一般的なノイズ除去器であって、撮像される試料または用いられる画像取得設定に固有ではないノイズ除去器とは異なり、本発明の上記の態様は、ノイズ除去モデル(本明細書では「画像ノイズ除去モデル」とも称される)を顕微鏡のハードウェアに合わせて調整し、さらに、新しい実験環境に適応させることを可能とするものである。換言すれば、従来の解決策は、通常、任意のもの、すなわち任意の顕微鏡に対して、かかる顕微鏡によって撮影されるあらゆる画像に対して機能するノイズ除去モデルに依存しているが、本発明の上記の実施形態は、具体的な顕微鏡ハードウェアに対して非常に特化したノイズ除去モデルを生成するものである。
【0011】
一態様では、異なる画像取得設定は、複数の訓練画像が異なる信号対ノイズ比を有するように選択することができる。これにより、モデルが訓練画像を用いて訓練されると、顕微鏡のハードウェアによって生成されるノイズの性質を非常に正確に反映することが保証される。
【0012】
異なる画像取得設定で複数の訓練画像を取得するステップは、所定のプロトコルに従って実行されてよく、所定のプロトコルは、異なる画像取得設定を定義する。したがって、本方法のこの態様により、十分な数の訓練画像が取得され、訓練画像のセットが、ノイズ除去モデルを十分に良好に訓練するために必要な画像取得設定をカバーすることが保証される。
【0013】
所定のプロトコルは、複数の露光時間、好ましくは露光時間の勾配を定義することができる。任意選択手段として、所定のプロトコルは、各露光時間に対して複数の照明設定を定義することができる。したがって、これにより、顕微鏡のノイズ因子の範囲を特に良好にカバーする訓練画像のセットが得られる。
【0014】
好ましくは、複数の訓練画像は、顕微鏡を用いて撮影された、試料なしの画像または試料キャリアのみを有する画像である(本明細書では「ブランク画像」、「暗画像」または「オープンシャッタ画像」とも称され、かかる画像の目的は、光路が試料の存在なしで撮像されることである)。このように、訓練画像には、画像の内容によって誘起されうる任意の付加的なノイズにかかわらず、対象となる顕微鏡のハードウェアによって誘起された任意のノイズが直接に反映される。
【0015】
本発明の別の態様では、ノイズ除去モデルは、顕微鏡の各カメラ、対物レンズ、フィルタ、光路および/またはモダリティを考慮するように訓練することができる。例えば、ノイズ除去モデルは、顕微鏡のカメラ、対物レンズ、フィルタ、光路および/またはモダリティのうちの少なくともいくつかについての別個のモデル、および/または、顕微鏡のカメラ、対物レンズ、フィルタ、光路および/またはモダリティのうちの少なくともいくつかについての組み合わされたモデルを含んでいてよい。したがって、これにより、顕微鏡の特定のハードウェアに特化したノイズ除去モデルを取得することが可能となる。
【0016】
さらに、顕微鏡のノイズ除去モデルを訓練するためのコンピュータにより実装される方法が提供され、当該方法は、顕微鏡を用いて撮影された異なる画像取得設定を有する試料の複数の画像を取得することを含みうる。試料の複数の画像は、本明細書に開示される方法のいずれかを使用して訓練されたノイズ除去モデルを使用してノイズ除去され、試料の複数の画像は、試料によって引き起こされたノイズを含む。本方法は、試料の複数の画像を使用して、ノイズ除去モデルまたはそのコピーを訓練し、これにより、顕微鏡のハードウェアおよび試料に固有のノイズ除去モデルまたはそのコピーを作成することをさらに含みうる。
【0017】
したがって、この態様では、ノイズを学習し、使用される特定のハードウェアに合わせてモデルを適応化することが試みられるだけでなく、顕微鏡内の試料に固有の特定のノイズを除去することも試みられる。次いで、ノイズが存在しない場合、より高い信号対ノイズ比(SNR)で画像を取得することができる。この方法を使用して、(初期訓練によって)具体的な顕微鏡ハードウェアに対して非常に特化したノイズ除去モデルが生成され、第2の訓練プロセスの後、実施形態は、対象となる試料に対しても特化した相乗効果を生み出す。
【0018】
一態様では、異なる画像取得設定で試料の複数の画像を取得するステップは、所定のプロトコルに従って実行されてよく、所定のプロトコルは、異なる画像取得設定を定義する。所定のプロトコルは、複数の訓練画像を取得するために使用されたプロトコルと同じプロトコルであってよい。このようにして、所定のプロトコルは、訓練の両方のフェーズにおいてノイズ除去モデルを訓練するために効率的に再利用されうる。
【0019】
別の態様では、本方法は、顕微鏡のハードウェアおよび試料に固有の訓練済みのノイズ除去モデルを、他の試料、特に同様の種類の試料とともに使用するために保存することを含みうる。このように、訓練済みのノイズ除去モデルは、特にこれらの種類の試料に対してモデルを訓練する必要なしに、他の、特に同様の種類の試料に対してさらにより相乗的に使用することができる。
【0020】
複数の訓練画像および/または試料の複数の画像を取得するために使用される画像取得設定は、利得設定、露光時間または照明のうちの少なくとも1つを含みうる。より概して言えば、本発明の実施形態は、ノイズ除去モデルを訓練することに関連する任意の種類の画像取得設定をサポートする。
【0021】
特定の実装形態では、ノイズ除去モデルは、機械学習モデル、人工ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、特にU-Netおよび/または敵対的生成ネットワークであるか、またはそれらを含む。しかしながら、特定の種類のノイズ除去モデルまたはノイズ除去アルゴリズムは、かかるモデルまたはアルゴリズムが本明細書に開示される訓練プロセスに役立つ限り、本発明のある実施形態にとって重要ではない。
【0022】
本明細書で開示される方法のいずれかを実行するための手段を備えるデータ処理装置、ならびにコンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されたときに本明細書で開示される方法のいずれかを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムも提供される。最後に、顕微鏡の訓練済みのノイズ除去モデルも提供され、当該モデルは、本明細書で開示される方法のいずれかに従って訓練される。
【0023】
本開示は、以下の図面を参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態による顕微鏡のハードウェア固有のノイズ除去モデルを訓練するための方法を示すフローチャートの図である。
図2】本発明の実施形態による顕微鏡のハードウェアおよび試料に固有のノイズ除去モデルを訓練するための方法を示すフローチャートの図である。
図3】本発明の実施形態による種々の資料の種類に対するノイズ除去モデルの例示的な使用を示す図である。
図4】本発明の実施形態を実行可能なシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態は、顕微鏡のノイズ除去モデルを訓練するための改善された技術を提供する。特に、使用する顕微鏡とノイズ除去アルゴリズムとを組み合わせて、最終的にユーザが通常必要とする調整量を削減するワークフローに関する実施形態について説明する。
【0026】
本発明者らは、ノイズ除去の問題を理解する方法として、(高い信号対ノイズ比(SNR)を有する)理想的なピクチャと、取得した画像の各ピクセルにいくつかのランダムな値を加える数学的分布と、を一緒に考慮することを見出した。この関数は、例えば、蛍光の場合には、ポアソンノイズ(ショットノイズとも称される)が支配的なポアソン-ガウス分布を使用してモデル化することができる。
【0027】
より具体的には、画像は、
F=M×X+S+N
のように考えることができる。式中、Xはクリアな画像であり、Mはスペックル等の乗法性ノイズであり、Sは、典型的にはラプラス分布に従い、主に撮像機器(カメラ等)におけるアーチファクトが原因で発生する、カメラ領域の異なる感度によって引き起こされる縞模様または照明の変化等の加法性スパースノイズであり、Nは、加法性ガウスノイズである。当該加法性ガウスノイズは、通常、十分な光子がカメラによって捕捉される場合には試料に依存しないが、そうでない場合にはポアソン分布であり、その分散は撮像される試料に依存する。
【0028】
本発明者らはさらに、ノイズが2つの成分、すなわち、画像が例えばレンズシステム(対物レンズ、フィルタ、…)における歪みによって影響を受けるカメラ/ハードウェア電子機器に関連するノイズと、試料に固有のノイズ(典型的には蛍光または透過光に関連する)と、に分解できることを見出した。
【0029】
本発明の実施形態は、これらのノイズ成分の各々を独立して学習し、それらを顕微鏡における試料取得のための1つのワークフローに組み合わせるワークフローを提供する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態による、顕微鏡のノイズ除去モデルを訓練するための方法100のフローチャートを示している。
【0031】
訓練されるノイズ除去モデルは、機械学習モデル、特に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の人工ニューラルネットワークであるか、またはこれらを含む。特定の実施形態は、モデルは、U-Netおよび/または敵対的生成ネットワーク(GAN)でありうる。さらに他の実施形態は、上記の導入部で述べたような一般的なノイズ除去モデルを使用することができる。さらに他の実施形態では、ノイズ除去モデルは、“Methods and systems for training convolutional neural networks”と題する欧州特許出願第20206032.3号明細書に開示されているモデルでありうる。
【0032】
ノイズ除去モデルは、関連する顕微鏡104の単一の機械学習モデル、または機械学習モデルのセットを含みうる。例えば、特定のノイズモデルを各カメラおよび/または光路に関連付けることができる。各対物レンズおよび/またはフィルタについてモデルを生成することも可能である。さらに別の実施形態では、顕微鏡モダリティごと、例えば共焦点、多光子、広視野ごとに、ノイズ除去モデルが提供される。
【0033】
図1の方法100に戻って参照すると、ステップ106(「訓練データを取得する」とラベル付けされている)において、異なる画像取得設定を有する複数の訓練画像が取得される。図示の実施形態では、これには、十分な訓練データが利用可能になるまで(図1の「イエス」分岐を参照)、顕微鏡104を用いて画像を取り込むこと、顕微鏡104の画像取得設定を調整すること、別の画像を取り込むこと等が含まれる。このプロセスの間、顕微鏡のシャッタを開くことができ、訓練目的のために、ブランク画像(「暗」画像とも称される)をそれぞれ異なる取得設定(例えば、利得、露光時間および/または対物レンズ)で取得することができる。暗画像を撮影する場合、背景は均質であることが予想されるため、モデルの基準となるデータが得られる。
【0034】
画像取得プロセスは、所定のルーチン、プロトコル、またはスクリプトに従って実行することができる。一実施形態では、専門家は、包括的な訓練データ(最適条件の検証のための低品質および高品質データの取得)を提供するために、特定の顕微鏡に対して最適にノイズモデルを学習するために必要な設定(例えば、照明、露光、利得等の自動変更)を一覧表示する構成可能ルーチンを作成することができる。
【0035】
別の実施形態では、自動化された構成可能なルーチン、プロトコル、またはスクリプトが提供され、異なる条件下で訓練画像が体系的に収集される。一実施形態には、露光時間の勾配を使用することと、各露光時間について光の強度をさらに変化させることと、が含まれうる。このようにして、それぞれ異なるSNRを有する異なる画像を取得することが可能である。それぞれ異なるSNRで得られた画像のセットを、訓練の材料として使用することができる。
【0036】
ステップ106は、サービス中、例えば製造直後に、または動作条件が変化したときに顧客サイトで設定を保存することによって実行することができる。この手順は、任意の種類の光学顕微鏡(例えば明視野、暗視野、蛍光)検査に適用することができる。
【0037】
十分な訓練データが取得された後、ステップ108において、訓練画像を用いてノイズ除去モデルが訓練され、その結果、特定の顕微鏡104(顕微鏡104は、訓練画像を取り込むために使用された顕微鏡であるため)のノイズに特に適合されたノイズ除去モデル102が得られる。
【0038】
いくつかの顕微鏡は、固定誤差を補正するテンプレートマトリクス等を有することができ、これは通常、フラットフィールド補正(Flat Field Correction)と称されている(例えば、https://www.adimec.com/which-types-of-flat-field-corrections-exist-and-why-it-matters-for-high-resolution-cameras/を参照されたい)。しかしながら、これらの方法は静的な誤差を解決するのみである。対照的に、本発明の実施形態は、ノイズのダイナミクス、すなわち、試料が存在しない場合の主に熱ノイズおよび特定の電子機器に起因する誤差がどのように統計的に分布するかを捕捉するものである。
【0039】
蛍光顕微鏡検査の場合、より複雑な相互作用をモデル化するために、プローブ試料を使用することが有用でありうる。ここで、ノイズを完全にモデル化することは非常に困難である。ノイズは、他の要因の中でも、フルオロフォアの濃度および種類、異なるチャネルにおける交差励起および交差発光の混入(いくつかのケースでは、自家蛍光)、および/または複雑な散乱効果を生み出す屈折率による違いに依存する場合がある。顕微鏡側からは、インパルス応答(点拡がり関数;PSF)、照明ビームの種類、エネルギ(レーザ強度および/または利得)および/または露光時間の影響が存在する場合がある。さらに、最終的な画像に影響を与える別の要因が存在する場合もある。したがって、画像が生成されると、ノイズは、試料に依存した分布を有することになる。したがって、本発明の一実施形態は、特に蛍光顕微鏡検査の場合、第2のモデル、または上記で説明したモデルの付加的な訓練を含んでおり、これについては、以下で説明する。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態による、顕微鏡のノイズ除去モデルを訓練するための別の方法200のフローチャートを示している。図示の実施形態では、方法100の結果であったハードウェア固有のノイズ除去モデル102が方法200への入力として機能し、さらなる訓練のための基礎として使用される。なお、ここでは、訓練は、ブランク訓練画像を使用して行われるのではなく、試料204の画像を使用して行われる。これらは、ステップ206において、ハードウェア固有のノイズ除去モデル102を使用してノイズ除去される。図1のステップ106と同様に、図2の方法200でも、それぞれ異なる画像取得設定を使用して複数の訓練画像が取得されており、これは図2のステップ202に示されている。十分な量の訓練画像が取得されると、ステップ208においてノイズ除去モデル102が訓練され、その結果、ハードウェアおよび試料の両方に固有の、すなわち特定の顕微鏡のハードウェア関連のノイズおよび試料204自体によって誘起されるノイズの両方を考慮に入れたノイズ除去モデル102が得られる。
【0041】
説明した方法100および200は、特定の実施形態において異なる組み合わせで実行可能であることが理解されるべきである。例えば、方法100は、使用される顕微鏡の種類にかかわらず、製造業者においてノイズ除去モデルの初期訓練として実行されうる。上述した蛍光顕微鏡検査の場合、説明したように、方法100および200の両方が顕微鏡の製造業者において実行されうる。両方の場合において、方法200は、以下でさらに詳細に説明するように、顧客によって繰り返されて、より微調整されたノイズ除去モデルがさらに取得されうる。
【0042】
異なる画像取得設定に関して、方法200においても、これらの設定は、方法100において使用されるものと同じルーチンでありうる所定のスクリプトまたはルーチンに従って変更することができる。これは、特に、いくつかの試料204に余裕があり、ユーザが十分な量の訓練画像を取得することが可能な場合に当てはまる。
【0043】
一方、訓練画像の第2のセット(試料204を有するもの)を取得することは、訓練画像の第1のセット(ブランク画像)を取得することと比較して、概して、過度に多くの画像を撮影することで試料204が損傷を受けるまたは破壊される可能性があるため、よりセンシティブである。したがって、訓練画像の第2のセットを取得することは、ユーザ定義されたルーチンを伴う場合がある。ただし、特定の実施形態では、例えば、ユーザに特定のガイドライン(「異なる露光時間を使用する場合、露光設定まで進むことができる…」等)を提供することにより、このルーチンを少なくとも部分的に自動化することが依然として可能である。
【0044】
一実施形態では、ノイズ除去モデルを訓練するための全体的なワークフローとして、次のものが挙げられる;
-工場では、モデルが各一般的な構成に対して訓練される。得られたモデルのセットは、「ロー(raw)」モデルと称される。
-蛍光の場合、いくつかの固定されたプローブ(例えば、ビーズ、細胞またはゼブラフィッシュ等のモデル生物)、すなわち複数のランダムな試料が挿入される。得られたモデルのセットは、「フルオ(fluo)」モデルと称される。NNの場合、ローモデルが訓練の基礎(事前訓練済みのモデル)となる。
-ユーザは、顕微鏡を受け取ると、「フルオ」モデルを使用することができる(ユーザは、関連する複雑性を意識することなく、一実施形態では、「ノイズ除去」ボタンがあることを知るだけである)。明視野等の他の光学顕微鏡検査では、ユーザは「ロー」モデルを使用する。
-ユーザは、現在のノイズ除去設定が満足できるものではないと判断する場合がある。例えば、ユーザは、いくつかの繊細な幹細胞を用いて実験しており、ノイズ除去においてより良い品質を必要とする場合がある。一実施形態では、ユーザは、例えば「ノイズ除去器の訓練」と称した別のボタンを使用する。ユーザは、試料内のいくつかの位置(画像を取得する位置)および一般的構成(カメラに対応する対物レンズおよびチャネル)を決定してクリックして、工場でのプロトコルと同様に、異なるSNRで画像が取得される。
-「フルオ」モデルは、事前訓練済みのモデルとして使用され、その上で新しいモデルが調整される(ユーザの時間を節約する)。ユーザは、この新しいモデルを再利用することのみに関心がある。
【0045】
本発明の他の実施形態は、上記のステップのサブセットのみを含みうることを理解されたい。さらに、言及した顕微鏡上のボタンは、上記の説明における例示のために役立ち、説明される実施形態の概念は、他の種類のユーザ入力機構を用いて等しく実現されうることが理解されるべきである。
【0046】
以下では、画像を取得するための所定のプロトコルの一実施形態について説明する。いくつかの実施形態は、例えば、“Steuerverfahren fuer ein Mikroskop”と題する欧州特許出願更改第2020/072057号明細書に開示されているような自動照明モデルを使用することを含んでいてよい。例えば、モデルは、特定のSNRを有する画像を取得することを可能にしうる。概して、SNRは、ピクセル当たりの光子の数に関連する。ピクセル当たりの光子は、画像を得た後に数式を使用して推測することができる。
【0047】
1つの例示的な実施形態は、次のような命令セットを含む:
1)一般的な設定の特定のグループを選択する顕微鏡のジョブを準備する
-カメラは同時に存在し、各カメラはそのモデルを必要とする
-対物レンズ、蛍光の場合、対物レンズごとにモデルが必要となる(10倍での画像は、63倍での画像とは異なって見え、モデルは試料に依存することになり、また、各対物レンズは異なるSNAを有し、油/水での浸漬を考慮することも有用でありうる)
-その他の要素
簡略化のために、本発明の実施形態を1つのモデルに関連して説明した。しかし、このモデルは複数のモデルを含みうる。例えば、カメラが同じ製造業者からのものであり、それらの間の差が最小である場合、それぞれのモデルは、カメラごとに1つのモデルに圧縮されうる。
モデルの総数は、例えば、カメラの数×対物レンズの数(これを一般的な「ノイズ」構成と称する)でありうる。
2)各ジョブに対して特定の設定のグループを準備する。自動照明モデルは、照明に関連する利得および他の複雑な要因を固定する。したがって、画像の勾配は、異なるSNRで指定するだけでよい。例えば、「非常にノイズが多い」から「ノイズがない」まで、20個の画像が必要であると指定することができる。特定の実施形態で使用される自動照明がない場合、これは、露光時間の勾配を固定し、露光時間ごとに、光の強度を増大させ、レーザ利得をそれぞれ調整することを意味する。
3)次いで、画像がCNNに供給され、CNNは、モデルが収束するまで訓練する。結果が満足のいくものでない場合は、出力における画像が満足のいくものになるまで、ステップ2および3を反復的に繰り返すことができる。
【0048】
図3は、ノイズ除去モデル102が複数のシナリオで使用される、本発明の実施形態によるプロセス300を示している。特に、図示されているように、図3のフローを通る4つの可能な経路がある。
1.ブランク画像は、工場内のプロトコルを使用して撮影され、モデルA1を訓練するために使用することができる。次いで、モデルA1を使用して、任意の種類の試料をノイズ除去することができ、電子機器に由来する独立した加法性ノイズの一部が除去される。
2.工場またはユーザによるプロトコルを使用して工場でプローブにより撮影された画像(図3では「試料プローブ」とラベル付けされている)は、モデルA2を訓練するための基礎として、事前訓練済みのモデルA1とともに使用することができる。次いで、モデルA2を蛍光試料に使用することができ、蛍光から生じるノイズが(少なくとも部分的に)除去される。
3.ユーザによるプロトコルを使用してラボ内の同じ試料から撮影された画像は、モデルB1を訓練するための基礎として、事前訓練済みのモデルA1とともに使用することができる。モデルB1は、対応する試料の種類に対して最良の品質を達成することができる。
4.ユーザによるプロトコルを使用してラボ内の同じ試料から撮影された画像は、モデルB2を訓練するための基礎として、事前訓練済みのモデルA2とともに使用することができる。モデルB2は、対応する蛍光試料について最良の品質を達成することができる。
【0049】
試料に固有のノイズの連続的な学習のための基礎としてハードウェア固有のノイズ除去モデルを使用し、以前と同じ訓練方法を再使用しつつ、特定の実験に調整することも可能である。
【0050】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0051】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0052】
いくつかの実施形態は、図1から図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、図1から図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムの一部であってもよい、または図1から図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムに接続されていてもよい。図4は本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステム400の概略図を示している。システム400は、顕微鏡410とコンピュータシステム420とを含んでいる。顕微鏡410は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム420に接続されている。コンピュータシステム420は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム420は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム420と顕微鏡410は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム420は、顕微鏡410の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム420は、顕微鏡410のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、顕微鏡410の従属部品の一部であってもよい。
【0053】
コンピュータシステム420は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等の様々な場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム420は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム420は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム420に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム420は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム420はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザがコンピュータシステム420に情報を入力すること、およびコンピュータシステム420から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0054】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0055】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0057】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0058】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0059】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0060】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0061】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0062】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0063】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0064】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【0066】
実施形態は、機械学習モデルまたは機械学習アルゴリズムの使用に基づいていてもよい。機械学習は、モデルおよび推論に依存する代わりに、コンピュータシステムが、明示的な命令を使用することなく、特定のタスクを実行するために使用し得るアルゴリズムおよび統計モデルを参照してもよい。例えば、機械学習では、ルールに基づくデータ変換の代わりに、過去のデータおよび/またはトレーニングデータの分析から推論、されるデータ変換が使用されてもよい。例えば、画像コンテンツは、機械学習モデルを用いて、または機械学習アルゴリズムを用いて分析されてもよい。機械学習モデルが画像コンテンツを分析するために、機械学習モデルは、入力としてのトレーニング画像と出力としてのトレーニングコンテンツ情報を用いてトレーニングされてもよい。多数のトレーニング画像および/またはトレーニングシーケンス(例えば単語または文)および関連するトレーニングコンテンツ情報(例えばラベルまたは注釈)によって機械学習モデルをトレーニングすることによって、機械学習モデルは、画像コンテンツを認識することを「学習」するので、トレーニングデータに含まれていない画像コンテンツが機械学習モデルを用いて認識可能になる。同じ原理が、同じように他の種類のセンサデータに対して使用されてもよい:トレーニングセンサデータと所望の出力を用いて機械学習モデルをトレーニングすることによって、機械学習モデルは、センサデータと出力との間の変換を「学習し」、これは、機械学習モデルに提供された非トレーニングセンサデータに基づいて出力を提供するために使用可能である。提供されたデータ(例えばセンサデータ、メタデータおよび/または画像データ)は、機械学習モデルへの入力として使用される特徴ベクトルを得るために前処理されてもよい。
【0067】
機械学習モデルは、トレーニング入力データを用いてトレーニングされてもよい。上記の例は、「教師あり学習」と称されるトレーニング方法を使用する。教師あり学習では、機械学習モデルは、複数のトレーニングサンプルを用いてトレーニングされ、ここで各サンプルは複数の入力データ値と複数の所望の出力値を含んでいてもよく、すなわち各トレーニングサンプルは、所望の出力値と関連付けされている。トレーニングサンプルと所望の出力値の両方を指定することによって、機械学習モデルは、トレーニング中に、提供されたサンプルに類似する入力サンプルに基づいてどの出力値を提供するのかを「学習」する。教師あり学習の他に、半教師あり学習が使用されてもよい。半教師あり学習では、トレーニングサンプルの一部は、対応する所望の出力値を欠いている。教師あり学習は、教師あり学習アルゴリズム(例えば分類アルゴリズム、回帰アルゴリズムまたは類似度学習アルゴリズム)に基づいていてもよい。出力が、値(カテゴリー変数)の限られたセットに制限される場合、すなわち入力が値の限られたセットのうちの1つに分類される場合、分類アルゴリズムが使用されてもよい。出力が(範囲内の)任意の数値を有していてもよい場合、回帰アルゴリズムが使用されてもよい。類似度学習アルゴリズムは、分類アルゴリズムと回帰アルゴリズムの両方に類似していてもよいが、2つのオブジェクトがどの程度類似しているかまたは関係しているかを測定する類似度関数を用いた例からの学習に基づいている。教師あり学習または半教師あり学習の他に、機械学習モデルをトレーニングするために教師なし学習が使用されてもよい。教師なし学習では、入力データ(だけ)が供給される可能性があり、教師なし学習アルゴリズムは、(例えば、入力データをグループ化またはクラスタリングすること、データに共通性を見出すことによって)入力データにおいて構造を見出すために使用されてもよい。クラスタリングは、複数の入力値を含んでいる入力データを複数のサブセット(クラスター)に割り当てることであるので、同じクラスター内の入力値は1つまたは複数の(事前に定められた)類似度判断基準に従って類似しているが、別のクラスターに含まれている入力値と類似していない。
【0068】
強化学習は機械学習アルゴリズムの第3のグループである。換言すれば、強化学習は機械学習モデルをトレーニングするために使用されてもよい。強化学習では、1つまたは複数のソフトウェアアクター(「ソフトウェアエージェント」と称される)が、周囲において行動を取るようにトレーニングされる。取られた行動に基づいて、報酬が計算される。強化学習は、(報酬の増加によって明らかにされるように)累積報酬が増加し、与えられたタスクでより良くなるソフトウェアエージェントが得られるように行動を選択するように、1つまたは複数のソフトウェアエージェントをトレーニングすることに基づいている。
【0069】
さらに、いくつかの技術が、機械学習アルゴリズムの一部に適用されてもよい。例えば、特徴表現学習が使用されてもよい。換言すれば、機械学習モデルは、少なくとも部分的に特徴表現学習を用いてトレーニングされてもよい、かつ/または機械学習アルゴリズムは、特徴表現学習構成要素を含んでいてもよい。表現学習アルゴリズムと称され得る特徴表現学習アルゴリズムは、自身の入力に情報を保存するだけでなく、多くの場合、分類または予測を実行する前の前処理ステップとして、有用にするように情報の変換も行ってもよい。特徴表現学習は、例えば、主成分分析またはクラスター分析に基づいていてもよい。
【0070】
いくつかの例では、異常検知(すなわち、外れ値検知)が使用されてもよく、これは、入力またはトレーニングデータの大部分と著しく異なることによって疑念を引き起こしている入力値の識別を提供することを目的としている。換言すれば、機械学習モデルは、少なくとも部分的に異常検知を用いてトレーニングされてもよく、かつ/または機械学習アルゴリズムは、異常検知構成要素を含んでいてもよい。
【0071】
いくつかの例では、機械学習アルゴリズムは、予測モデルとして決定木を使用してもよい。換言すれば、機械学習モデルは、決定木に基づいていてもよい。決定木において、項目(例えば、入力値のセット)に関する観察は、決定木のブランチによって表されてもよく、この項目に対応する出力値は、決定木のリーフによって表されてもよい。決定木は、出力値として離散値と連続値の両方をサポートしてもよい。離散値が使用される場合、決定木は、分類木として表されてもよく、連続値が使用される場合、決定木は、回帰木として表されてもよい。
【0072】
相関ルールは、機械学習アルゴリズムにおいて使用され得る別の技術である。換言すれば、機械学習モデルは、1つまたは複数の相関ルールに基づいていてもよい。相関ルールは、大量のデータにおける変数間の関係を識別することによって作成される。機械学習アルゴリズムは、データから導出された知識を表す1つまたは複数の相関的なルールを識別してもよい、かつ/または利用してもよい。これらのルールは、例えば、知識を格納する、操作するまたは適用するために使用されてもよい。
【0073】
機械学習アルゴリズムは通常、機械学習モデルに基づいている。換言すれば、用語「機械学習アルゴリズム」は、機械学習モデルを作成する、トレーニングするまたは使用するために使用され得る命令のセットを表していてもよい。用語「機械学習モデル」は、(例えば、機械学習アルゴリズムによって実行されるトレーニングに基づいて)学習した知識を表すデータ構造および/またはルールのセットを表していてもよい。実施形態では、機械学習アルゴリズムの用法は、基礎となる1つの機械学習モデル(または基礎となる複数の機械学習モデル)の用法を意味していてもよい。機械学習モデルの用法は、機械学習モデルおよび/または機械学習モデルであるデータ構造/ルールのセットが機械学習アルゴリズムによってトレーニングされることを意味していてもよい。
【0074】
例えば、機械学習モデルは、人工ニューラルネットワーク(ANN)であってもよい。ANNは、網膜または脳において見出されるような、生物学的ニューラルネットワークによって影響を与えられるシステムである。ANNは、相互接続された複数のノードと、ノード間の複数の接合部分、いわゆるエッジと、を含んでいる。通常、3種類のノードが存在しており、すなわち入力値を受け取る入力ノード、他のノードに接続されている(だけの)隠れノードおよび出力値を提供する出力ノードが存在している。各ノードは、人工ニューロンを表していてもよい。各エッジは、1つのノードから別のノードに、情報を伝達してもよい。ノードの出力は、その入力(例えば、その入力の和)の(非線形)関数として定義されてもよい。ノードの入力は、入力を提供するエッジまたはノードの「重み」に基づく関数において使用されてもよい。ノードおよび/またはエッジの重みは、学習過程において調整されてもよい。換言すれば、人工ニューラルネットワークのトレーニングは、与えられた入力に対して所望の出力を得るために、人工ニューラルネットワークのノードおよび/またはエッジの重みを調整することを含んでいてもよい。
【0075】
択一的に、機械学習モデルは、サポートベクターマシン、ランダムフォレストモデルまたは勾配ブースティングモデルであってもよい。サポートベクターマシン(すなわち、サポートベクターネットワーク)は、(例えば、分類または回帰分析において)データを分析するために使用され得る、関連する学習アルゴリズムを伴う、教師あり学習モデルである。サポートベクターマシンは、2つのカテゴリのいずれかに属する複数のトレーニング入力値を伴う入力を提供することによってトレーニングされてもよい。サポートベクターマシンは、2つのカテゴリのいずれかに新しい入力値を割り当てるようにトレーニングされてもよい。択一的に、機械学習モデルは、確率有向非巡回グラフィカルモデルであるベイジアンネットワークであってもよい。ベイジアンネットワークは、有向非巡回グラフを用いて、確率変数とその条件付き依存性のセットを表していてもよい。択一的に、機械学習モデルは、検索アルゴリズムと自然淘汰の過程を模倣した発見的方法である遺伝的アルゴリズムに基づいていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 ハードウェアに固有のノイズ除去モデルを訓練するプロセス
102 ノイズ除去モデル
104 顕微鏡
106 訓練データを取得するステップ
108 訓練
200 試料に固有のノイズ除去モデルを訓練するプロセス
202 訓練データを取得するステップ
204 試料
206 ノイズ除去ステップ
208 訓練ステップ
300 類似の試料の種類に対してノイズ除去モデルを再利用するプロセス
400 システム
410 顕微鏡
420 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】