IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特開-建具 図1
  • 特開-建具 図2
  • 特開-建具 図3
  • 特開-建具 図4
  • 特開-建具 図5
  • 特開-建具 図6
  • 特開-建具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064801
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230502BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175148
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】山田 良
【テーマコード(参考)】
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E016AA03
2E016BA09
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E239CA04
2E239CA22
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA45
2E239CA67
2E239CA68
(57)【要約】
【課題】いかなる耐火性を備えたガラスを用いた場合であっても防火性能を確保することができる建具を提供する。
【解決手段】建物の開口部に設けられた枠体1と、枠体内に配置された障子2Bと、を備え、障子は、少なくとも屋内側に耐火性を備えたガラス31が配されたペアガラス30を備え、障子の框体24Bであってペアガラスの屋内側に中空部95が形成され、ペアガラスの周縁部における屋内側を向いた面31aと対向した位置に、ガラス保持金具88が設けられ、ペアガラスの周縁部、ガラス保持金具、および中空部が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられた枠体と、
前記枠体内に配置された障子と、を備え、
前記障子は、少なくとも屋内側に耐火性を備えたガラスが配されたペアガラスを備え、
前記枠体および前記障子の框体のいずれかであって前記ペアガラスの屋内側に中空部が形成され、
前記ペアガラスの周縁部における屋内側を向いた面と対向した位置に、ガラス保持金具が設けられ、
前記ペアガラスの周縁部、前記ガラス保持金具、および前記中空部が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている建具。
【請求項2】
前記耐火性を備えたガラスは、耐熱強化ガラスである請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記ガラス保持金具は、前記ペアガラスの各辺に対向する長さの長尺材である請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記ガラス保持金具は、前記ペアガラスの各辺の一部に対向するピース片である請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項5】
前記障子は、内障子と外障子を備えた引き違い窓であり、
前記内障子の召内框に前記ガラス保持金具が固定されている請求項1から請求項4の何れか一項に記載の建具。
【請求項6】
前記中空部が、前記内障子の前記召内框の屋内側端部に形成されている請求項5に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に設けられた枠体内に障子を納めた建具が知られている。防火性能を求められる建具の例として、屋外側に網入りガラスが配され、屋内側にLow-Eガラスが配されたペアガラスを内障子および外障子に備えた引き違い窓と、外障子の召外框に設けられたペアガラス脱落防止用のガラス保持金具と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。近年、障子からの眺望性確保の理由などから網入りガラスの代わりに耐熱強化ガラスを用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-056557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
網入りガラスの代わりに、例えば耐熱強化ガラスを用いるとともに、耐熱強化ガラスをペアガラスの屋内側に配置した場合、火災時に屋内側の耐熱強化ガラスが網入りガラスの場合よりも早く崩落する虞があった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、いかなる耐火性を備えたガラスを用いた場合であっても防火性能を確保することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による建具は、建物の開口部に設けられた枠体と、前記枠体内に配置された障子と、を備え、前記障子は、少なくとも屋内側に耐火性を備えたガラスが配されたペアガラスを備え、前記枠体および前記障子の框体のいずれかであって前記ペアガラスの屋内側に中空部が形成され、前記ペアガラスの周縁部における屋内側を向いた面と対向した位置に、ガラス保持金具が設けられ、前記ペアガラスの周縁部、前記ガラス保持金具、および前記中空部が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る引き違い窓を屋内側から見た正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4】一実施形態の変形例である縦辷り出し窓の水平断面図である。
図5図4のC-C線断面図である。
図6】一実施形態の変形例であるFIX窓の水平断面図である。
図7図6のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の建具を図1図3を用いて説明する。建物の開口部に設けられる建具の一例として、引き違い窓を用いて説明する。
【0009】
以下の説明において、屋内側と屋外側とを結ぶ方向を屋内外方向と称し、障子の縦方向を上下方向と称し、障子の幅方向を左右方向と称する。左右方向は、屋内側から見て左方向を左側、右方向を右側と称する。
【0010】
図1図3に示すように、引き違い窓100は、建物の開口部に設けられ、四角形枠状に形成された枠体1と、枠体1に対して左右方向にスライド可能に設けられた外障子2Aおよび内障子2Bと、を備えている。
【0011】
枠体1は、左右方向に延在する上枠11および下枠12と、上枠11の両端部と下枠12の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する一対の縦枠13,13と、を備えている。枠体1は、例えばアルミニウムなどの金属製である。
【0012】
外障子2Aは、枠体1の屋外側に設けられている。内障子2Bは、枠体1の屋内側に設けられている。外障子2Aおよび内障子2Bが閉じた状態で、枠体1内を閉塞するように配置されている。外障子2Aおよび内障子2Bは、それぞれ四方枠状に形成された框体20と、框体20内に納められたペアガラス30と、を有している。外障子2Aおよび内障子2Bは、下枠12に形成されたレール15に沿ってそれぞれ左右方向にスライド可能である。
【0013】
框体20は、左右方向に延在する上框21および下框22と、上框21の両端部と下框22の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する戸先框23および召合せ框24と、を有している。框体20は、例えばアルミニウムなどの金属製である。以下の説明では、各框が延びる方向を長手方向と称することがある。
【0014】
ペアガラス30は、外障子2Aおよび内障子2Bともに同じ構成のものが取り付けられている。ペアガラス30の屋内側のガラスは、耐熱強化ガラス31である。耐熱強化ガラス31が、耐火性を持つガラスに対応する。ペアガラス30の屋外側のガラスは、LOW-Eガラス32である。ペアガラス30は、框体20に支持固定されている。
【0015】
外障子2Aと内障子2Bとは、互いの召合せ框24に設けられたクレセント錠38をロックすることにより、外障子2Aおよび内障子2Bは左右方向のスライド移動がロックされる。クレセント錠38を解除することにより、外障子2Aおよび内障子2Bは左右方向のスライド移動が可能になる。
【0016】
引き違い窓100の召合せ框24の構成について詳細に説明する。
【0017】
外障子2Aの召合せ框24(以下、召外框24Aと称する)は、屋外側に配置される外壁部40と、屋内側に配置される内壁部50と、外壁部40と内壁部50を連結する第1連結板部61および第2連結板部62と、を有している。第1連結板部61は、第2連結板部62よりもペアガラス30側に配置されている。
【0018】
外壁部40は左右方向に延びている。外壁部40の一端40aは、第2連結板部62に連結している。外壁部40の他端40bは、第1連結板部61よりもさらにペアガラス30側に延びている。外壁部40における第1連結板部61よりもペアガラス30側に延びた部分を第1見付板部41という。
【0019】
内壁部50は左右方向に延びている。内壁部50の一端50aは、第2連結板部62に連結している。内壁部50の他端50bは、第1連結板部61に連結している。
【0020】
外壁部40、内壁部50、第1連結板部61、および第2連結板部62で囲まれた中空部42が形成されている。中空部42は平面視で矩形状に形成されている。中空部42の内部には、補強芯材43が配されている。補強芯材43は、第1連結板部61にネジなどを用いて固定されている。
【0021】
第1連結板部61は、屋内外方向に延びている。第1連結板部61の一端61aは、外壁部40に連結している。第1連結板部61の他端61bは、内壁部50よりもさらに屋内側に延びている。第1連結板部61の他端61bから左右方向のペアガラス30側に向かって第2見付板部44が延びている。
【0022】
第1見付板部41、第1連結板部61、および第2見付板部44は、平面視コ字状に形成されたガラス保持溝45として機能する。
【0023】
第2連結板部62は、屋内外方向に延びている。第2連結板部62の一端62aは、外壁部40に連結している。第2連結板部62の他端62bは、内壁部50よりもさらに屋内側に延びている。第2連結板部62の他端62b近傍から左右方向のペアガラス30側に向かって第3見付板部46が延びている。第3見付板部46の先端から屋内方向に向かって第1見込板部47が延びている。第1見込板部47の先端から左右方向のペアガラス30側に向かって外側煙返し48が延びている。
【0024】
内壁部50、および内壁部50よりも屋内側に延びている第1連結板部61並びに内壁部50よりも屋内側に延びている第2連結板部62は、平面視コ字状に形成された加熱発泡材保持溝49として機能する。
【0025】
召外框24Aの加熱発泡材保持溝49には、長手方向に沿って加熱発泡材70が取り付けられている。加熱発泡材70は、内壁部50の屋内側の面50cに両面テープなどで固定されている。加熱発泡材70は、発泡温度の異なる2種類の発泡材が用いられている。発泡温度の高い第1加熱発泡材71は、召外框24Aの下端25から上端26までの長手方向全長にわたって取り付けられている。第1加熱発泡材71よりも発泡温度の低い第2加熱発泡材72は、召外框24Aの下端25からクレセント錠38の直上まで取り付けられている。第2加熱発泡材72は、召外框24Aの長手方向全長に取り付けてもよい。例えば、第1加熱発泡材71の発泡温度は250℃であり、第2加熱発泡材72の発泡温度は200℃弱である。第1加熱発泡材71および第2加熱発泡材72の発泡温度は、適宜最適なものを採用すればよい。
【0026】
内障子2Bの召合せ框24(以下、召内框24Bと称する)は、屋外側に配置される外壁部80と、屋内側に配置される内壁部90と、外壁部80と内壁部90を連結する第3連結板部63および第4連結板部64と、を有している。第3連結板部63は、第4連結板部64よりもペアガラス30側に配置されている。
【0027】
外壁部80は、左右方向に延びている。外壁部80の一端80aは、第3連結板部63よりもさらにペアガラス30側に延びている。外壁部80の他端80bは、第4連結板部64に連結している。
【0028】
内壁部90は、左右方向に延びている。内壁部90の一端90aは、第3連結板部63に連結している。内壁部90の他端90bは、第4連結板部64に連結している。
【0029】
外壁部80、内壁部90、第3連結板部63、および第4連結板部64で囲まれた中空部65が形成されている。中空部65は平面視で略矩形状に形成されている。中空部65の内部には、補強芯材66が配されている。
【0030】
第3連結板部63は、屋内外方向に延びている。第3連結板部63の一端63aは、外壁部80に連結している。第3連結板部63の他端63bは、内壁部90よりもわずかに屋内側まで延びている。
【0031】
第4連結板部64は、屋内外方向に延びている。第4連結板部64の一端64aは、外壁部80よりもさらに屋外側に延びている。第4連結板部64における外壁部80よりも屋外側に延びた部分を第2見込板部82という。第4連結板部64の他端64bは、内壁部90の他端90bと連結している。第4連結板部64と内壁部90との交点67から屋内側に延びる第1屋内板部91は、屋内外方向よりも若干傾斜して延びている。第3連結板部63の他端63bから左右方向のペアガラス30側に向かって第2屋内板部92が延びている。第2屋内板部92の先端から屋内側に延びる第3屋内板部93は、屋内外方向よりも若干第1屋内板部91側に傾斜して延びている。第1屋内板部91と第3屋内板部とは、屋内側に向かうにしたがって近づく方向に傾斜している。第1屋内板部91の先端91aと、第3屋内板部93の先端93aとを連結する第4屋内板部94が設けられている。
【0032】
外壁部80、第3連結板部63、および第2屋内板部92は、平面視コ字状に形成されたガラス保持溝83として機能する。
【0033】
第3連結板部63と第2屋内板部92におけるガラス保持溝83を向く面に沿ってガラス保持金具88が取り付けられている。ガラス保持金具88は、平面視L字状の形状を有している。ガラス保持金具88は、第3連結板部63に沿って配される固定片88aと、第2屋内板部92に沿って配される保持片88bと、を備えている。
【0034】
固定片88aは、屋内外方向に延びる板片である。固定片88aの板面は、左右方向を向いている。固定片88aの屋内側端部に保持片88bが連結されている。
【0035】
保持片88bは、左右方向に延びる板片である。保持片88bの板面は、屋内外方向を向いている。保持片88bは、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面31aと対向した位置に配置されている。保持片88bは、耐熱強化ガラス31が屋内側方向に倒れてきたときに耐熱強化ガラス31の周縁部を支えることができる長さを有していればよい。保持片88bの先端は、第2屋内板部92とパッキン材75との間に挟まれている。パッキン材75は、ペアガラス30を框体20に支持するための部材である。ペアガラス30は、框体20に対してシール材76を用いて固定されている。
【0036】
ガラス保持金具88は、例えばステンレス製である。ガラス保持金具88は、鋼製であってもよい。ガラス保持金具88は、ペアガラス30の上下方向の長さと略同一の長さを有している。ガラス保持金具88は、補強芯材66とともに第3連結板部63にネジなどを用いて固定されている。
【0037】
内壁部90、第1屋内板部91、第2屋内板部92、第3屋内板部93、および第4屋内板部94で囲まれた中空部95が形成されている。中空部95は、アルミニウムなどの金属製の框材に囲まれて形成されている。第1屋内板部91、第3屋内板部93、および第4屋内板部94は、枠体1よりも屋内側に突出している。中空部95は、内障子2Bの召内框24Bの屋内側端部に形成されている。
【0038】
ペアガラス30のガラス保持溝83内に配された周縁部、ガラス保持金具88の保持片88b、および中空部95は、屋内側から見込方向を見て互いに重なり合う位置に配置されている。ペアガラス30のガラス保持溝83内に配された周縁部、ガラス保持金具88の保持片88b、および中空部95は、この順で屋外側から屋内側に位置している。
【0039】
外壁部80の中間部から屋外方向に第3見込板部84が延びている。第2見込板部82、外壁部80の一部、および第3見込板部84は、平面視コ字状に形成された気密材保持溝85として機能する。気密材保持溝85には、気密材85aが保持されている。
【0040】
第3見込板部84の先端から左右方向のペアガラス30側に向かって内側煙返し86が延びている。外壁部80、第3見込板部84、および内側煙返し86で囲まれた箇所は、加熱発泡材保持溝87として機能する。
【0041】
召内框24Bの加熱発泡材保持溝87には、長手方向に沿って第3加熱発泡材73が取り付けられている。第3加熱発泡材73は、第3見込板部84のペアガラス30側を向く面84aに両面テープなどで固定されている。第3加熱発泡材73は、例えば第1加熱発泡材71と同じ発泡温度の発泡材が用いられている。第3加熱発泡材73は、召内框24Bの長手方向全長にわたって取り付けられている。
【0042】
引き違い窓100は、建物の開口部に設けられた枠体1と、枠体1内に配置された外障子2Aおよび内障子2Bと、を備えている。外障子2Aおよび内障子2Bは、屋内側に耐熱強化ガラス31が配されたペアガラス30を備えている。内障子2Bの召内框24Bにおけるペアガラス30の屋内側に中空部95が形成されている。ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面31aと対向した位置にガラス保持金具88が設けられている。ペアガラス30の周縁部の面31a、ガラス保持金具88、および中空部95が、屋内側から見て少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている。ペアガラス30の屋内側に配された耐熱強化ガラス31の周縁部に対向した位置にガラス保持金具88が取り付けられているため、火災時に耐熱強化ガラス31が溶融して脱落しそうになってもガラス保持金具88で一定時間脱落を抑制することができる。引き違い窓100は、防火性能を確保することができる。
【0043】
耐火性を備えたガラスとして耐熱強化ガラス31を用いることにより防火性能を確保することができるとともに、網入りガラスと比較して眺望性の向上を図ることもできる。
【0044】
ガラス保持金具88は、ペアガラス30の一辺に対向する長さの長尺材であるため、耐熱強化ガラス31の脱落を一定時間抑制することができる。
【0045】
内障子2Bの召内框24Bの屋内側端部には中空部95が形成されている。中空部95が形成されていることにより、引き違い窓100の断熱性が向上する。
【0046】
本実施形態の変形例として、図4図5を用いて縦辷り出し窓100Aの場合で説明する。変形例では、ガラス保持金具の構成について主に説明する。上記実施形態と同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
図4図5に示すように、縦辷り出し窓100Aは、枠体1と、枠体1内で開閉する障子2Cと、を備えている。
【0048】
枠体1は、左右方向に延在する上枠11および下枠12と、上枠11の両端部と下枠12の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する一対の縦枠13,13と、を備えている。枠体1は、例えばアルミニウムなどの金属製である。
【0049】
障子2Cは、枠体1内に設けられている。障子2Cが閉じた状態で、枠体1内を閉塞するように配置されている。障子2Cは、四方枠状に形成された框体20と、框体20内に納められたペアガラス30と、を有している。
【0050】
框体20は、左右方向に延在する上框21および下框22と、上框21の両端部と下框22の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する縦框23,24と、を有している。框体20は、例えばアルミニウムなどの金属製である。以下の説明では、各框が延びる方向を長手方向と称することがある。
【0051】
上枠11と上框21との間に開閉機構101が設けられている。下枠12と下框22との間に開閉機構102が設けられている。縦框23の屋内側に設けられたハンドル103を操作することにより、障子2Cは開閉される。
【0052】
ペアガラス30の屋内側のガラスは、耐熱強化ガラス31である。耐熱強化ガラス31が、耐火性を持つガラスに対応する。ペアガラス30の屋外側のガラスは、LOW-Eガラス32である。ペアガラス30は、框体20に支持固定されている。
【0053】
障子2Cの框体20は、押縁構造が用いられている。上框21の屋内側には上押縁105が設けられている。縦框23の屋内側には縦押縁106が設けられている。縦框24の屋内側には縦押縁107が設けられている。框体20の三辺には押縁が設けられている。下框22には押縁は設けられていない。下框22の屋内側にはガラス収容溝110を形成する立ち上がり部108が形成されている。
【0054】
上押縁105は、中空部111が形成されている。上押縁105は、ペアガラス30の上端周縁部の屋内側の面112と対向する位置まで延びている。
【0055】
縦押縁106は、中空部113が形成されている。縦押縁106は、ペアガラス30の左側周縁部の屋内側の面114と対向する位置まで延びている。
【0056】
縦押縁107は、中空部115が形成されている。縦押縁107は、ペアガラス30の右側周縁部の屋内側の面116と対向する位置まで延びている。
【0057】
立ち上がり部108は、中空部117が形成されている。立ち上がり部108は、ペアガラス30の下端周縁部の屋内側の面118と対向する位置まで延びている。
【0058】
縦辷り出し窓100Aには、ガラス保持金具120が取り付けられている。ガラス保持金具120について説明する。
【0059】
ガラス保持金具120は、ペアガラス30の四辺に対向した位置にそれぞれ設けられている。ガラス保持金具120は、ペアガラス30の各辺と略同一の長さを有する長尺材である。ガラス保持金具120は、ステンレス製である。ガラス保持金具120は、鋼製であってもよい。
【0060】
上框21には、ガラス保持金具120Aが取り付けられている。ガラス保持金具120Aは、上框21に固定される固定片121と、固定片121から下方に延びる第1連結片122と、第1連結片122の下端から屋内側に延びる第2連結片123と、第2連結片123の屋内側端部から下方に延びる保持片124と、を備えている。固定片121と上框21とはネジなどを用いて固定されている。保持片124は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面112と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面112、ガラス保持金具120Aの保持片124、および中空部111が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0061】
縦框23には、ガラス保持金具120Bが取り付けられている。ガラス保持金具120Bは、縦框23に固定される固定片125と、固定片125から右方向に延びる第1連結片126と、第1連結片126の右端から屋内側に延びる第2連結片127と、第2連結片127の屋内側端部から右方に延びる保持片128と、を備えている。固定片125と縦框23とはネジなどを用いて固定されている。保持片128は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面114と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面114、ガラス保持金具120Bの保持片128、および中空部113が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0062】
縦框24には、ガラス保持金具120Cが取り付けられている。ガラス保持金具120Cは、縦框24に固定される固定片129と、固定片129から左方向に延びる第1連結片130と、第1連結片130の左端から屋内側に延びる第2連結片131と、第2連結片131の屋内側端部から左方に延びる保持片132と、を備えている。固定片129と縦框24とはネジなどを用いて固定されている。保持片132は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面116と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面116、ガラス保持金具120Cの保持片132、および中空部115が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0063】
下框22には、ガラス保持金具120Dが取り付けられている。ガラス保持金具120Dは、下框22に固定される固定片133と、固定片133の屋内側端部から上方に延びる保持片134と、を備えている。固定片133と下框22とはネジなどを用いて固定されている。保持片134は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面118と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面118、ガラス保持金具120Dの保持片134、および中空部117が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0064】
縦辷り出し窓100Aは、建物の開口部に設けられた枠体1と、枠体1内に配置された障子2Cと、を備えている。障子2Cは、屋内側に耐熱強化ガラス31が配されたペアガラス30を備えている。各框21,22,23,24におけるペアガラス30の屋内側に中空部111,113,115,117がそれぞれ形成されている。ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面112,114,116,118と対向した位置にガラス保持金具120A,120B,120C,120Dが設けられている。ペアガラス30の周縁部の面112,114,116,118、ガラス保持金具120A,120B,120C,120D、および中空部111,113,115,117が、屋内側から見て少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている。ペアガラス30の屋内側に配された耐熱強化ガラス31の周縁部に対向した位置にガラス保持金具120が取り付けられているため、火災時に耐熱強化ガラス31が溶融して脱落しそうになってもガラス保持金具120で一定時間脱落を抑制することができる。縦辷り出し窓100Aは、防火性能を確保することができる。
【0065】
本実施形態のさらに別の変形例として、図6図7を用いてFIX窓100Bの場合で説明する。変形例では、ガラス保持金具の構成について主に説明する。上記実施形態と同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
図6図7に示すように、FIX窓100Bは、枠体1と、枠体1内に固定されたペアガラス30と、を備えている。
【0067】
枠体1は、左右方向に延在する上枠11および下枠12と、上枠11の両端部と下枠12の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する一対の縦枠13,14と、を備えている。枠体1は、例えばアルミニウムなどの金属製である。
【0068】
ペアガラス30の屋内側のガラスは、耐熱強化ガラス31である。耐熱強化ガラス31が、耐火性を持つガラスに対応する。ペアガラス30の屋外側のガラスは、LOW-Eガラス32である。ペアガラス30は、枠体1に支持固定されている。
【0069】
枠体1は、押縁構造が用いられている。上枠11の屋内側には上押縁150が設けられている。左側の縦枠13の屋内側には縦押縁151が設けられている。右側の縦枠14の屋内側には縦押縁152が設けられている。枠体1の三辺には押縁が設けられている。下框22には押縁は設けられていない。下枠12の屋内側にはガラス収容溝153を形成する立ち上がり部154が形成されている。
【0070】
上押縁150は、中空部155が形成されている。上押縁150は、ペアガラス30の上端周縁部の屋内側の面156と対向する位置まで延びている。
【0071】
縦押縁151は、中空部157が形成されている。縦押縁151は、ペアガラス30の左側周縁部の屋内側の面158と対向する位置まで延びている。
【0072】
縦押縁152は、中空部159が形成されている。縦押縁152は、ペアガラス30の右側周縁部の屋内側の面160と対向する位置まで延びている。
【0073】
FIX窓100Bには、ガラス保持金具170が取り付けられている。ガラス保持金具170について説明する。
【0074】
ガラス保持金具170は、ペアガラス30の下辺を除く三辺に対向した位置にそれぞれ設けられている。ガラス保持金具170は、ペアガラス30の各辺と略同一の長さを有する長尺材である。ガラス保持金具170は、ステンレス製である。ガラス保持金具170は、鋼製であってもよい。
【0075】
上枠11には、ガラス保持金具170Aが取り付けられている。ガラス保持金具170Aは、上枠11に固定される固定片171と、固定片171の屋内側端部から下方に延びる第1連結片172と、第1連結片172の下端から屋内側に延びる第2連結片173と、第2連結片173の屋内側端部から下方に延びる保持片174と、を備えている。固定片171と上枠11とはネジなどを用いて固定されている。保持片174は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面156と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面156、ガラス保持金具170Aの保持片174、および中空部155が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0076】
左側の縦枠13には、ガラス保持金具170Bが取り付けられている。ガラス保持金具170Bは、縦枠13に固定される固定片175と、固定片175の屋内側端部から右方向に延びる第1連結片176と、第1連結片176の右端から屋内側に延びる第2連結片177と、第2連結片177の屋内側端部から右方に延びる保持片178と、を備えている。固定片175と縦枠13とはネジなどを用いて固定されている。保持片178は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面158と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面158、ガラス保持金具170Bの保持片178、および中空部157が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0077】
右側の縦枠14には、ガラス保持金具170Cが取り付けられている。ガラス保持金具170Cは、縦枠14に固定される固定片179と、固定片179の屋内側端部から左方向に延びる第1連結片180と、第1連結片180の左端から屋内側に延びる第2連結片181と、第2連結片181の屋内側端部から左方に延びる保持片182と、を備えている。固定片179と縦枠14とはネジなどを用いて固定されている。保持片182は、ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面160と対向する位置まで延びている。ペアガラス30の面160、ガラス保持金具170Cの保持片182、および中空部159が、屋内側から見て互いに重なり合う位置に配置されている。
【0078】
FIX窓100Bは、建物の開口部に設けられた枠体1と、枠体1内に固定された屋内側に耐熱強化ガラス31が配されたペアガラス30を備えている。上枠11、縦枠13,14におけるペアガラス30の屋内側に中空部155,157,159がそれぞれ形成されている。ペアガラス30の周縁部における屋内側を向いた面156,158,160と対向した位置にガラス保持金具170A,170B,170Cが設けられている。ペアガラス30の周縁部の面156,158,160、ガラス保持金具170A,170B,170C、および中空部155,157,159が、それぞれ屋内側から見て少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている。ペアガラス30の屋内側に配された耐熱強化ガラス31の周縁部に対向した位置にガラス保持金具170が取り付けられているため、火災時に耐熱強化ガラス31が溶融して脱落しそうになってもガラス保持金具170で一定時間脱落を抑制することができる。FIX窓100Bは、防火性能を確保することができる。
【0079】
なお、本開示による建具は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態では耐火性を備えたガラスとして耐熱強化ガラス31を用いた場合の説明をしたが、耐火性を備えたガラスとしては耐熱強化ガラス31以外のものを採用してもよい。ペアガラス30のもう一方のガラスとしてはLOW-Eガラス32以外のものを採用してもよい。
【0081】
上記実施形態の引き違い窓100では、ガラス保持金具を召内框24Bのみに取り付けた場合の説明をしたが、ガラス保持金具はそれ以外の框や召外框24Aに取り付けてもよい。
【0082】
上記実施形態ではガラス保持金具88,120,170がペアガラス30の各辺と略同一の長さを有する長尺材として説明をしたが、ガラス保持金具はペアガラス30の各辺の一部に対応したピース片であってもよい。ピース片のガラス保持金具を採用する場合、ピースの長さや一辺に取り付ける個数などは適宜調整すればよい。
【0083】
上記実施形態では引き違い窓100、縦辷り出し窓100A、およびFIX窓100Bを用いて説明したが、建具の種類はそれ以外であっても適用可能である。その際、ガラス保持金具は、枠体や框体の他、枠体の中央に配された縦桟や無目に取り付ければよい。
【符号の説明】
【0084】
1…枠体、2A…外障子(障子)、2B…内障子(障子)、2C…障子、24A…召外框、24B…召内框、30…ペアガラス、31…耐熱強化ガラス(耐火性を備えたガラス)、31a…ペアガラスの周縁部における屋内側を向いた面、88…ガラス保持金具、95…中空部、100…引き違い窓(建具)、100A…縦辷り出し窓(建具)、100B…FIX窓(建具)、111,113,115,117…中空部、112,114,116,118…ペアガラスの周縁部における屋内側を向いた面、120(120A,120B,120C,120D)…ガラス保持金具、155,157,159…中空部、156,158,160…ペアガラスの周縁部における屋内側を向いた面、170(170A,170B,170C)…ガラス保持金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7