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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064821
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】細胞用液体培地及び幹細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20230502BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20230502BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/074
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175194
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】519092200
【氏名又は名称】グラドコフ・アレクセイ
(71)【出願人】
【識別番号】519092211
【氏名又は名称】グラドコワ・ニナ
(71)【出願人】
【識別番号】521471981
【氏名又は名称】亀井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】グラドコフ・アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】グラドコワ・ニナ
(72)【発明者】
【氏名】亀井 一郎
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BC02
4B065BC06
(57)【要約】
【課題】ミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導し、ミトコンドリアを活性化させることができ、ミトコンドリアの活性による細胞分裂を促進することができる細胞用液体培地を提供する。
【解決手段】細胞用液体培地は、純水と、所定の栄養素と、純水に溶存させるガス組成物とから形成されている。ガス組成物は、イオン化した水素イオン(H+)と、酸素分子(O)とを含有し、ガス組成物における水素イオン(H+)の濃度が0.5~0.70ppmの範囲にあり、ガス組成物における酸素分子(O)の濃度が12.5~15.5ppmの範囲にある。細胞用液体培地では、所定量の栄養素が純水に溶解しているとともに、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とを含有するガス組成物がナノサイズのナノバブルの状態で純水に溶存している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の培養に使用される細胞用液体培地において、
前記細胞用液体培地が、純水と、所定の栄養素と、前記純水に溶存させるガス組成物とから形成され、前記ガス組成物が、イオン化した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とを含有し、前記ガス組成物における前記水素イオン(H+)の濃度が、0.5~0.70ppmの範囲にあり、前記ガス組成物における前記酸素分子(O)の濃度が、12.5~15.5ppmの範囲にあり、前記ガス組成物では、前記水素イオン(H+)と前記酸素分子(O)とが非結合の分離した状態にあり、前記細胞用液体培地では、所定量の前記栄養素が前記純水に溶解しているとともに、前記水素イオン(H+)と前記酸素分子(O)とを含有する前記ガス組成物がナノサイズのナノバブルの状態で前記純水に溶存していることを特徴とする細胞用液体培地。
【請求項2】
前記ガス組成物の粒径が、100nm以下であり、前記細胞用液体培地では、該細胞用液体培地1ccの中に5~8臆個の前記ガス組成物のマイクロバブルが溶存している請求項1に記載の細胞用液体培地。
【請求項3】
前記細胞用液体培地が、前記酸素分子(O)を含有する好気性培地であって前記細胞のミトコンドリアを活性化させる請求項1又は請求項2に記載の細胞用液体培地。
【請求項4】
前記細胞用液体培地の0℃における粘度が、3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、前記細胞用液体培地では、前記ナノバブルとして該細胞用液体培地に溶存する前記ガス組成物の50%が該細胞用液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にある請求項1ないし請求項3いずれかに記載の細胞用液体培地。
【請求項5】
前記栄養素が、炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも該炭素源であり、前記細胞用液体培地は、前記純水に前記ガス組成物を溶存させた後、前記ガス組成物が溶存する前記純水に粉末状態にある前記栄養素を溶解することから作られている請求項1ないし請求項4いずれかに記載の細胞用液体培地。
【請求項6】
前記細胞用液体培地では、前記純水に微量の炭酸ガスを溶存させた後、前記微量の炭酸ガスが溶存する純水に前記ガス組成物を溶存させる請求項5に記載の細胞用液体培地。
【請求項7】
所定の細胞用液体培地を利用して幹細胞を培養する幹細胞培養方法において、
前記幹細胞培養方法が、前記ドナーから採取した第1骨髄液を層状に分離する骨髄液分離工程と、前記骨髄液分離工程によって層状に分離した第1骨髄液のうちの中間層に位置する第2骨髄液を抽出する骨髄液抽出工程と、純水にガス組成物を溶存させた後、前記純水に所定の栄養素を溶解して前記ガス組成物を含有する細胞用第1液体培地を作る細胞用液体培地第1作成工程と、前記骨髄液抽出工程によって抽出した前記第2骨髄液と前記細胞用液体培地第1作成工程によって作った作成直後の前記細胞用第1液体培地とを所定の高さ寸法及び所定面積の底面を有する所定容量の第1培養容器に注入し、前記第1培養容器を所定時間静的に放置して前記第2骨髄液に含まれる第1幹細胞を該第1培養容器の底面に定着させるとともに前記第1幹細胞を増殖させ、前記第1培養容器の底面において前記第1幹細胞の平面形状が拡張して該第1培養容器の底面面積に対する該第1幹細胞の総平面面積が第1目標割合に達した場合、前記第1培養容器から前記第1幹細胞を抽出する幹細胞第1抽出工程と、前記幹細胞第1抽出工程によって抽出した第1幹細胞を層状に遠心分離する幹細胞遠心分離工程と、前記幹細胞遠心分離工程によって前記第1幹細胞を層状に分離させた後、最下層に位置する第2幹細胞を抽出する幹細胞第2抽出工程と、前記純水に前記ガス組成物を溶存させた後、該純水に前記栄養素を溶解して前記ガス組成物を含有する細胞用第2液体培地を作る細胞用液体培地第2作成工程と、前記幹細胞第2抽出工程によって抽出した前記第2幹細胞と前記細胞用液体培地第2作成工程によって作った作成直後の前記細胞用第2液体培地とを前記第1培養容器よりも大きい容量及び大きい底面面積の底面を有する所定容量の第2培養容器に注入し、前記第2培養容器を所定時間静的に放置して前記第2幹細胞を該第2培養容器の底面に定着させるとともに該第2幹細胞を増殖させ、前記第2培養容器の底面において前記第2幹細胞の平面形状が拡張して該第2培養容器の底面面積に対する該第2幹細胞の総平面面積が第2目標割合に達した場合、前記第2培養容器から前記第2幹細胞を抽出する幹細胞第3抽出工程とを有することを特徴とする幹細胞培養方法。
【請求項8】
前記幹細胞培養方法が、前記骨髄液抽出工程によって抽出した前記第2骨髄液と前記細胞用第1液体培地とを前記第1培養容器に注入した後、前記第1培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で該第1培養容器内の第1幹細胞の初期平面形状からの変形を観察する形状変形第1観察工程と、前記形状変形第1観察工程における観察の結果、前記第1幹細胞が初期平面形状から所定の平面形状に変形した場合、前記第1幹細胞が前記第1培養容器の底面に定着したと判断し、前記第1培養容器内の前記細胞用第1液体培地を排出した後、前記細胞用液体培地第1作成工程によって作った作成直後の新たな細胞用第1液体培地を該第1培養容器に注入し、前記第1培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で該第1培養容器の底面に定着した前記第1幹細胞の該第1培養容器の底面面積に対する総平面面積を観察する総平面面積第1観察工程とを含み、前記幹細胞第1抽出工程では、前記総平面面積第1観察工程における観察の結果、前記第1幹細胞が増殖して該第1幹細胞の平面形状が拡張し、前記第1幹細胞の総平面面積が前記第1培養容器の底面面積に対して前記第1目標割合に達した場合、前記第1培養容器から前記第1幹細胞を抽出する請求項7に記載の幹細胞培養方法。
【請求項9】
前記幹細胞培養方法が、前記幹細胞第2抽出工程によって抽出した前記第2幹細胞と前記細胞用第2液体培地とを前記第2培養容器に注入した後、前記第2培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で該第2培養容器内の前記第2幹細胞の初期平面形状からの変形を観察する形状変形第2観察工程と、前記形状変形第2観察工程における観察の結果、前記第2幹細胞が初期平面形状から所定の平面形状に変形した場合、前記第2幹細胞が前記第2培養容器の底面に定着したと判断し、前記第2培養容器内の前記細胞用第2液体培地を排出した後、前記細胞用液体培地第2作成工程によって作った作成直後の新たな細胞用第2液体培地を該第2培養容器に注入し、前記第2培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で該第2培養容器の底面に定着した前記第2幹細胞の該第2培養容器の底面面積に対する総平面面積を観察する総平面面積第2観察工程とを含み、前記幹細胞第3抽出工程では、前記総平面面積第2観察工程における観察の結果、前記第2幹細胞が増殖して該第2幹細胞の平面形状が拡張し、前記第2幹細胞の総平面面積が前記第2培養容器の底面面積に対して前記第2目標割合に達した場合、前記第2培養容器から前記第2幹細胞を抽出する請求項8に記載の幹細胞培養方法。
【請求項10】
前記細胞用液体培地第1作成工程によって作られた前記細胞用第1液体培地と前記細胞用液体培地第2作成工程によって作られた前記細胞用第2液体培地とが、純水と、前記純水に溶解した所定の栄養素と、濃度0.5~0.75ppmの範囲のイオン化した水素イオン(H+)及び濃度12.5~15.5ppmの範囲であって前記水素イオン(H+)に非結合の酸素分子(O)を含有して前記純水にナノサイズのナノバブルの状態で溶存するガス組成物とから形成されている請求項7ないし請求項9いずれかに記載の幹細胞培養方法。
【請求項11】
前記細胞用第1液体培地及び前記細胞用第2液体培地では、前記ガス組成物の粒径が100nm以下であり、前記細胞用第1液体培地1ccの中に5~8臆個の前記ガス組成物のマイクロバブルが溶存し、前記細胞用第2液体培地1ccの中に5~8臆個の前記ガス組成物のマイクロバブルが溶存している請求項10に記載の幹細胞培養方法。
【請求項12】
前記細胞用第1液体培地及び前記細胞用第2液体培地では、それら液体培地の0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、前記ナノバブルとして前記細胞用第1液体培地に溶存する前記ガス組成物の50%が該細胞用第1液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にあり、前記ナノバブルとして前記細胞用第2液体培地に溶存する前記ガス組成物の50%が該細胞用第2液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にある請求項10又は請求項11に記載の幹細胞培養方法。
【請求項13】
前記栄養素が、炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも該炭素源であり、前記細胞用第1液体培地及び前記細胞用第2液体培地が、前記純水に前記ガス組成物を溶存させた後、前記ガス組成物が溶存する前記純水に粉末状態にある前記栄養素を溶解することから作られている請求項10ないし請求項12いずれかに記載の幹細胞培養方法。
【請求項14】
前記細胞用液体培地第1作成工程及び前記細胞用液体培地第2作成工程では、前記純水に微量の炭酸ガスを溶存させた後、前記微量の炭酸ガスが溶存する純水に前記ガス組成物を溶存させる請求項13に記載の幹細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養に使用される細胞用液体培地に関するとともに、細胞用液体培地を利用して幹細胞を培養する幹細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
栄養培地がクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、αケトグルタル酸、フマル酸、オキサロ酢酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、酒石酸、アジピン酸、乳酸及びこれらの混合物、並びにこれらの酸の塩、誘導体又は複合体からなる群から選ばれた少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、細胞培養のための栄養培地が開示されている(特許文献1参照)。この栄養培地によれば、細胞増殖を改善することができ、代謝副産物の生産を減少させることができる。
【0003】
幹細胞を培養する培地と、幹細胞に対して照射エネルギーが0を超え10ジュール/cm以下、レーザパワー密度が0.1W/cm以下、照射エネルギーを0.1以上2.5ジュール/cm以下の低出力の炭酸ガスレーザーの照射光をデフォーカスして培地全体に照射し、幹細胞を活性化させるレーザー照射手段とを備え、幹細胞に低出力のレーザーを照射して活性化させた後、幹細胞に所定の休止期間を設けて目標増殖数まで増殖させる幹細胞培養方法が開示されている(特許文献2参照)。この幹細胞培養方法によれば、ヒト、非ヒト(動物)から採取した組織又はその細胞に存在する幹細胞を活性化させて飛躍的に増殖させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-509514号公報
【特許文献2】特開2015-186465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の栄養培地は、細胞内小器官のミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導することができないから、ミトコンドリアを活性化させることができず、ミトコンドリアの活性による細胞分裂を促進することはなく、単位時間内に細胞を多量に増殖させることができず、短期間に多量の培養細胞を作ることができない。
【0006】
特許文献2に開示の幹細胞培養方法は、炭酸ガスレーザーの照射光をデフォーカスして培地全体に照射することで、幹細胞を活性化させるが、コヒーレント光である炭酸ガスレーザーを培地全体に均等に照射しなければならないとともに、炭酸ガスレーザーの出力が一定となるように培地に炭酸ガスレーザーを照射しなければならず、単位時間内に細胞を多量に増殖させることが難しく、短期間に多量の培養細胞を作ることができない。
【0007】
本発明の目的は、ミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導することができ、ミトコンドリアを活性化させることができるとともに、ミトコンドリアの活性による細胞分裂を促進することができる細胞用液体培地及び幹細胞培養方法を提供することにある。更に、単位時間内に細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養細胞を作ることができる細胞用液体培地及び幹細胞培養方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、細胞の培養に使用される細胞用液体培地である。
【0009】
前記第1の前提における本発明の第1の特徴は、細胞用液体培地が、純水と、所定の栄養素と、純水に溶存させるガス組成物とから形成され、ガス組成物が、イオン化した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とを含有し、ガス組成物における水素イオン(H+)の濃度が、0.5~0.70ppmの範囲にあり、ガス組成物における酸素分子(O)の濃度が、12.5~15.5ppmの範囲にあり、ガス組成物では、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが非結合の分離した状態にあり、細胞用液体培地では、所定量の栄養素が純水に溶解しているとともに、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とを含有するガス組成物がナノサイズのナノバブルの状態で純水に溶存していることにある。
【0010】
前記第1の特徴を有する本発明の一例としては、ガス組成物の粒径が、100nm以下であり、細胞用液体培地では、細胞用液体培地1ccの中に5~8臆個のガス組成物のマイクロバブルが溶存している。
【0011】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、細胞用液体培地が、酸素分子(O)を含有する好気性培地であって細胞のミトコンドリアを活性化させる。
【0012】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、細胞用液体培地の0℃における粘度が、3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、細胞用液体培地では、ナノバブルとして細胞用液体培地に溶存するガス組成物の50%が細胞用液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にある。
【0013】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、栄養素が、炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であり、細胞用液体培地は、純水にガス組成物を溶存させた後、ガス組成物が溶存する純水に粉末状態にある栄養素を溶解することから作られている。
【0014】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、細胞用液体培地では、純水に微量の炭酸ガスを溶存させた後、微量の炭酸ガスが溶存する純水にガス組成物を溶存させる。
【0015】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、所定の細胞用液体培地を利用して幹細胞を培養する幹細胞培養方法である。
【0016】
前記第2の前提における本発明の第2の特徴は、幹細胞培養方法が、ドナーから採取した第1骨髄液を層状に分離する骨髄液分離工程と、骨髄液分離工程によって層状に分離した第1骨髄液のうちの中間層に位置する第2骨髄液を抽出する骨髄液抽出工程と、純水にガス組成物を溶存させた後、純水に所定の栄養素を溶解してガス組成物を含有する細胞用第1液体培地を作る細胞用液体培地第1作成工程と、骨髄液抽出工程によって抽出した第2骨髄液と細胞用液体培地第1作成工程によって作った作成直後の細胞用第1液体培地とを所定の高さ寸法及び所定面積の底面を有する所定容量の第1培養容器に注入し、第1培養容器を所定時間静的に放置して第2骨髄液に含まれる第1幹細胞を第1培養容器の底面に定着させるとともに第1幹細胞を増殖させ、第1培養容器の底面において第1幹細胞の平面形状が拡張して第1培養容器の底面面積に対する第1幹細胞の総平面面積が第1目標割合に達した場合、第1培養容器から第1幹細胞を抽出する幹細胞第1抽出工程と、幹細胞第1抽出工程によって抽出した第1幹細胞を層状に遠心分離する幹細胞遠心分離工程と、幹細胞遠心分離工程によって第1幹細胞を層状に分離させた後、最下層に位置する第2幹細胞を抽出する幹細胞第2抽出工程と、純水にガス組成物を溶存させた後、純水に栄養素を溶解してガス組成物を含有する細胞用第2液体培地を作る細胞用液体培地第2作成工程と、幹細胞第2抽出工程によって抽出した第2幹細胞と細胞用液体培地第2作成工程によって作った作成直後の細胞用第2液体培地とを第1培養容器よりも大きい容量及び大きい底面面積の底面を有する第2培養容器に注入し、第2培養容器を所定時間静的に放置して第2幹細胞を該第2培養容器の底面に定着させるとともに第2幹細胞を増殖させ、第2培養容器の底面において第2幹細胞の平面形状が拡張して第2培養容器の底面面積に対する第2幹細胞の総平面面積が第2目標割合に達した場合、第2培養容器から第2幹細胞を抽出する幹細胞第3抽出工程とを有することにある。
【0017】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、幹細胞培養方法が、骨髄液抽出工程によって抽出した第2骨髄液と細胞用第1液体培地とを第1培養容器に注入した後、第1培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第1培養容器内の第1幹細胞の初期平面形状からの変形を観察する形状変形第1観察工程と、形状変形第1観察工程における観察の結果、第1幹細胞が初期平面形状から所定の平面形状に変形した場合、第1幹細胞が第1培養容器の底面に定着したと判断し、第1培養容器内の細胞用第1液体培地を排出した後、細胞用液体培地第1作成工程によって作った作成直後の新たな細胞用第1液体培地を第1培養容器に注入し、第1培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第1培養容器の底面に定着した第1幹細胞の第1培養容器の底面面積に対する総平面面積を観察する総平面面積第1観察工程とを含み、幹細胞第1抽出工程では、総平面面積第1観察工程における観察の結果、第1幹細胞が増殖して第1幹細胞の平面形状が拡張し、第1幹細胞の総平面面積が第1培養容器の底面面積に対して第1目標割合に達した場合、第1培養容器から第1幹細胞を抽出する。
【0018】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、幹細胞培養方法が、幹細胞第2抽出工程によって抽出した第2幹細胞と細胞用第2液体培地とを第2培養容器に注入した後、第2培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第2培養容器内の第2幹細胞の初期平面形状からの変形を観察する形状変形第2観察工程と、形状変形第2観察工程における観察の結果、第2幹細胞が初期平面形状から所定の平面形状に変形した場合、第2幹細胞が第2培養容器の底面に定着したと判断し、第2培養容器内の細胞用第2液体培地を排出した後、細胞用液体培地第2作成工程によって作った作成直後の新たな細胞用第2液体培地を第2培養容器に注入し、第2培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第2培養容器の底面に定着した第2幹細胞の第2培養容器の底面面積に対する総平面面積を観察する総平面面積第2観察工程とを含み、幹細胞第3抽出工程では、総平面面積第2観察工程における観察の結果、第2幹細胞が増殖して第2幹細胞の平面形状が拡張し、第2幹細胞の総平面面積が第2培養容器の底面面積に対して第2目標割合に達した場合、第2培養容器から前記第2幹細胞を抽出する。
【0019】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、細胞用液体培地第1作成工程によって作られた細胞用第1液体培地と細胞用液体培地第2作成工程によって作られた細胞用第2液体培地とが、純水と、純水に溶解した所定の栄養素と、濃度0.5~0.75ppmの範囲のイオン化した水素イオン(H+)及び濃度12.5~15.5ppmの範囲であって水素イオン(H+)に非結合の酸素分子(O)を含有して純水にナノサイズのナノバブルの状態で溶存するガス組成物とから形成されている。
【0020】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地では、ガス組成物の粒径が100nm以下であり、細胞用第1液体培地1ccの中に5~8臆個のガス組成物のマイクロバブルが溶存し、細胞用第2液体培地1ccの中に5~8臆個のガス組成物のマイクロバブルが溶存している。
【0021】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地では、それら液体培地の0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、ナノバブルとして細胞用第1液体培地に溶存するガス組成物の50%が細胞用第1液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にあり、ナノバブルとして細胞用第2液体培地に溶存するガス組成物の50%が細胞用第2液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にある。
【0022】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、栄養素が、炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であり、細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地が、純水にガス組成物を溶存させた後、ガス組成物が溶存する純水に粉末状態にある栄養素を溶解することから作られている。
【0023】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、細胞用液体培地第1作成工程及び細胞用液体培地第2作成工程では、純水に微量の炭酸ガスを溶存させた後、微量の炭酸ガスが溶存する純水にガス組成物を溶存させる。
【発明の効果】
【0024】
第1の特徴を有する本発明の細胞用液体培地によれば、それが純水と所定の栄養素と純水に溶存させるガス組成物とから形成され、ガス組成物がイオン化した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とを含有し、ガス組成物における水素イオン(H+)の濃度が0.5~0.70ppmの範囲にあり、ガス組成物における酸素分子(O)の濃度が12.5~15.5ppmの範囲にあり、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが非結合の分離した状態にあり、所定量の栄養素が純水に溶解しているとともに、ガス組成物がナノサイズのナノバブルの状態で純水に溶存しているから、ナノバブルの状態で細胞用液体培地に存在する水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの外膜から内膜に進入し、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアを活性化させることができ、ミトコンドリアの活性によって細胞分裂を促進することができる。細胞用液体培地は、単位時間内に細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養細胞を作ることができる。
【0025】
ガス組成物の粒径が100nm以下であり、細胞用液体培地1ccの中に5~8臆個のガス組成物のマイクロバブルが溶存している細胞用液体培地は、前記粒径のガス組成物のマイクロバブルが細胞用液体培地1ccの中に5~8臆個溶存することで、細胞用液体培地におけるガス組成物の上昇速度が遅く、ガス組成物が細胞用液体培地内に長時間留まり、そのガス組成物の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができ、ミトコンドリアを十分に活性化させることができるとともに、ミトコンドリアの活性によって細胞分裂を確実に促進することができる。細胞用液体培地は、単位時間内に細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養細胞を確実に作ることができる。
【0026】
酸素分子(O)を含有する好気性培地であって細胞のミトコンドリアを活性化させる細胞用液体培地は、ナノバブルの状態で存在する酸素分子(O)が細胞用液体培地を好気性培地とし、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの外膜から内膜に進入し、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアを活性化させることができ、ミトコンドリアの活性によって細胞分裂を促進することができるとともに、好気性培地を利用して短期間に多量の培養細胞を作ることができる。
【0027】
細胞用液体培地の0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、ナノバブルとして細胞用液体培地に溶存するガス組成物の50%が細胞用液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にある細胞用液体培地は、ガス組成物の50%が細胞用液体培地から外気に放出されるまでの時間が前記範囲にあるから、ガス組成物が細胞用液体培地内に長時間留まり、そのガス組成物の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができ、ミトコンドリアを十分に活性化させることができるとともに、ミトコンドリアの活性によって細胞分裂を確実に促進することができる。細胞用液体培地は、単位時間内に細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養細胞を確実に作ることができる。
【0028】
栄養素が炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であり、純水にガス組成物を溶存させた後、ガス組成物が溶存する純水に粉末状態にある栄養素を溶解することから作られている細胞用液体培地は、栄養素が炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であるから、栄養素を利用して細胞を確実に培養することができるとともに、純水にガス組成物を溶存させた後、ガス組成物が溶存する純水に粉末状態にある栄養素を溶解するから、細胞用液体培地の作成過程においてその液体培地に溶存するガス組成物が細胞用液体培地から外気に放出され難く、ガス組成物が細胞用液体培地内に長時間留まる細胞用液体培地を作ることができ、その細胞用液体培地を利用することで単位時間内に細胞を多量に増殖させることができるとともに、短期間に多量の培養細胞を確実に作ることができる。
【0029】
純水に微量の炭酸ガスを溶存させた後、微量の炭酸ガスが溶存する純水にガス組成物を溶存させる細胞用液体培地は、純水に溶存させた微量の炭酸ガス分子がキャリアとなり、その炭酸ガス分子に水素イオン(H+)及び酸素分子(O)が結合することで、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で細胞用液体培地に溶存させることができ、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で含む細胞用液体培地を利用することで単位時間内に細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養細胞を確実に作ることができる。
【0030】
第2の特徴を有する本発明の幹細胞培養方法によれば、ドナーから採取した第1骨髄液を層状に分離させ、層状に分離させた第1骨髄液のうちの中間層に位置する第2骨髄液を抽出し、純水にガス組成物を溶存させた後、純水に所定の栄養素を溶解してガス組成物を含有する細胞用第1液体培地を作り、第2骨髄液と作成直後の細胞用第1液体培地とを注入した第1培養容器において第2骨髄液に含まれる第1幹細胞を第1培養容器の底面に定着させるとともに第1幹細胞を増殖させ、第1幹細胞の総平面面積が第1培養容器の底面面積に対して第1目標割合に達した場合、第1培養容器から第1幹細胞を抽出し、第1幹細胞を層状に分離させた後、最下層に位置する第2幹細胞を抽出し、純水にガス組成物を溶存させた後、純水に栄養素を溶解してガス組成物を含有する細胞用第2液体培地を作り、第2幹細胞と作成直後の細胞用第2液体培地とを注入した第2培養容器において第2幹細胞を第2培養容器の底面に定着させるとともに第2幹細胞を増殖させ、第2幹細胞の総平面面積が第2培養容器の底面面積に対して第2目標割合に達した場合、第2培養容器から第2幹細胞を抽出するから、幹細胞のミトコンドリアを活性化させつつ、ミトコンドリアの活性によって幹細胞の細胞分裂を促進させ、単位時間内に幹細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養幹細胞を作ることができる。幹細胞培養方法は、層状に分離させた第1幹細胞から特定の第2幹細胞(最下層に位置する第2幹細胞)を抽出するから、多種雑多な幹細胞の増殖を防ぐことができ、製造対象の特定種類の幹細胞(第2幹細胞)のみを培養することができるとともに、不要な幹細胞が除去されたピュア(純粋)な幹細胞を製造することができる。幹細胞培養方法は、特定種類の幹細胞のみを培養することができるから、各種の疾患に対する治療の効果や再生医療における再生の効果が大きく、各種の疾患を完治させる確立が高いとともに各種の組織や各種の臓器を再生させる確立が高い幹細胞を培養することができる。
【0031】
抽出した第2骨髄液と細胞用第1液体培地とを第1培養容器に注入した後、第1培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第1培養容器内の第1幹細胞の初期平面形状からの変形を観察し、第1幹細胞の変形を観察の結果、第1幹細胞が初期平面形状から所定の平面形状に変形した場合、第1幹細胞が第1培養容器の底面に定着したと判断し、第1培養容器内の細胞用第1液体培地を排出し、作成直後の新たな細胞用第1液体培地を第1培養容器に注入し、第1培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第1培養容器の底面に定着した第1幹細胞の第1培養容器の底面面積に対する総平面面積を観察し、総平面面積を観察した結果、第1幹細胞が増殖して第1幹細胞の平面形状が拡張し、第1幹細胞の総平面面積が第1培養容器の底面面積に対して第1目標割合に達した場合、第1培養容器から第1幹細胞を抽出する幹細胞培養方法は、幹細胞のミトコンドリアを活性化させる細胞用第1液体培地を利用することで、第1培養容器の底面に第1幹細胞を確実に定着させることができ、第1培養容器の底面に第1幹細胞が定着した後、第1培養容器内の細胞用第1液体培地を排出し、新たな細胞用第1液体培地を第1培養容器に注入し、幹細胞のミトコンドリアを活性化させる新たな細胞用第1液体培地を利用することで、第1幹細胞の増殖を確実に促進することができる。幹細胞培養方法は、幹細胞のミトコンドリアを活性化させる細胞用第1液体培地を利用することで、第1培養容器において第1幹細胞を確実に定着かつ増殖させることができるとともに、第1目標割合に対する第1幹細胞の総平面面積の到達度を正確に確認することができるから、他の幹細胞を含まない第1幹細胞のみを培養することができ、多種雑多な幹細胞の増殖を防ぎつつ、製造対象の特定種類の幹細胞(第2幹細胞)のみを培養することができる。
【0032】
抽出した第2幹細胞と細胞用第2液体培地とを第2培養容器に注入した後、第2培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第2培養容器内の第2幹細胞の初期平面形状からの変形を観察し、第2幹細胞の変形を観察した結果、第2幹細胞が初期平面形状から所定の平面形状に変形した場合、第2幹細胞が第2培養容器の底面に定着したと判断し、第2培養容器内の細胞用第2液体培地を排出し、作成直後の新たな細胞用第2液体培地を第2培養容器に注入し、第2培養容器を所定時間静的に放置しつつ所定の時間間隔で第2培養容器の底面に定着した第2幹細胞の第2培養容器の底面面積に対する総平面面積を観察し、総平面面積を観察した結果、第2幹細胞が増殖して第2幹細胞の平面形状が拡張し、第2幹細胞の総平面面積が第2培養容器の底面面積に対して第2目標割合に達した場合、第2培養容器から第2幹細胞を抽出する幹細胞培養方法は、幹細胞のミトコンドリアを活性化させる細胞用第2液体培地を利用することで、第2培養容器の底面に第2幹細胞を確実に定着させることができ、第2培養容器の底面に第2幹細胞が定着した後、第2培養容器内の細胞用第2液体培地を排出し、新たな細胞用第2液体培地を第2培養容器に注入し、幹細胞のミトコンドリアを活性化させる新たな細胞用第2液体培地を利用することで、第2幹細胞の増殖を確実に促進することができる。幹細胞培養方法は、幹細胞のミトコンドリアを活性化させる細胞用第2液体培地を利用することで、第2培養容器において第2幹細胞を確実に定着かつ増殖させることができるとともに、第2目標割合に対する第2幹細胞の総平面面積の到達度を正確に確認することができるから、他の幹細胞を含まない第2幹細胞のみを培養することができ、多種雑多な幹細胞の増殖を防ぎつつ、製造対象の特定種類の第2幹細胞のみを培養することができる。
【0033】
細胞用第1液体培地と細胞用第2液体培地とが純水と純水に溶解した所定の栄養素と濃度0.5~0.75ppmの範囲のイオン化した水素イオン(H+)及び濃度12.5~15.5ppmの範囲であって水素イオン(H+)に非結合の酸素分子(O)を含有して純水にナノサイズのナノバブルの状態で溶存するガス組成物とから形成されている幹細胞培養方法は、ナノバブルの状態で細胞用液体培地に存在する水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが幹細胞のミトコンドリアの外膜から内膜に進入し、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアを活性化させることができ、ミトコンドリアの活性によって幹細胞の細胞分裂を促進することができる。幹細胞培養方法は、単位時間内に製造対象の特定種類の幹細胞(第2幹細胞)を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養幹細胞を作ることができる。
【0034】
ガス組成物の粒径が100nm以下であり、細胞用第1液体培地1ccの中に5~8臆個のガス組成物のマイクロバブルが溶存し、細胞用第2液体培地1ccの中に5~8臆個のガス組成物のマイクロバブルが溶存している幹細胞培養方法は、前記粒径のガス組成物のマイクロバブルが細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地1ccの中に5~8臆個溶存することで、細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地におけるガス組成物の上昇速度が遅く、ガス組成物が細胞用第1液体培地内や細胞用第2液体培地内に長時間留まり、そのガス組成物の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができ、幹細胞のミトコンドリアを十分に活性化させることができるとともに、ミトコンドリアの活性によって幹細胞の細胞分裂を確実に促進することができる。幹細胞培養方法は、単位時間内に製造対象の特定種類の幹細胞(第2幹細胞)を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養幹細胞を確実に作ることができる。
【0035】
細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地の0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、ナノバブルとして細胞用第1液体培地に溶存するガス組成物の50%が細胞用第1液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にあり、ナノバブルとして細胞用第2液体培地に溶存するガス組成物の50%が細胞用第2液体培地から外気に放出されるまでの時間が48~72時間の範囲にある幹細胞培養方法は、ガス組成物の50%が細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地から外気に放出されるまでの時間が前記範囲にあるから、ガス組成物が細胞用第1液体培地内や細胞用第2液体培地内に長時間留まり、そのガス組成物の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができ、幹細胞のミトコンドリアを十分に活性化させることができるとともに、ミトコンドリアの活性によって幹細胞の細胞分裂を確実に促進することができる。幹細胞培養方法は、単位時間内に製造対象の特定種類の幹細胞(第2幹細胞)を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養幹細胞を確実に作ることができる。
【0036】
栄養素が炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であり、細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地が純水にガス組成物を溶存させた後、ガス組成物が溶存する純水に粉末状態にある栄養素を溶解することから作られている幹細胞培養方法は、栄養素が炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であるから、栄養素を利用して幹細胞を確実に培養することができるとともに、純水にガス組成物を溶存させた後、ガス組成物が溶存する純水に粉末状態にある栄養素を溶解するから、液体培地の作成工程において細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地に溶存するガス組成物が細胞用第1液体培地や細胞用第2液体培地から外気に放出され難く、ガス組成物が細胞用第1液体培地内や細胞用第2液体培地内に長時間留まる液体培地を作ることができ、細胞用第1液体培地や細胞用第2液体培地を利用することで単位時間内に幹細胞を多量に増殖させることができるとともに、短期間に多量の培養幹細胞を確実に作ることができる。
【0037】
細胞用液体培地第1作成工程及び細胞用液体培地第2作成工程において、純水に微量の炭酸ガスを溶存させた後、微量の炭酸ガスが溶存する純水にガス組成物を溶存させる幹細胞培養方法は、純水に溶存させた微量の炭酸ガス分子がキャリアとなり、その炭酸ガス分子に水素イオン(H+)及び酸素分子(O)が結合することで、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で細胞用第1液体培地及び細胞用第2液体培地に溶存させることができ、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で含む細胞用第1液体培地や細胞用第2液体培地を利用することで単位時間内に幹細胞を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養幹細胞を確実に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一例として示すナノバルブ発生システムの構成図。
図2】一例として示すナノバルブ発生装置の構成図。
図3】一例として示す幹細胞培養システムの構成図。
図4】骨髄液分離工程の一例を示す説明図。
図5図4から続く骨髄液分離工程の説明図。
図6】第1扁平培養容器を使用した形状変形第1観察工程の一例を示す説明図。
図7】第1間葉系幹細胞の平面形状の一例を示す部分拡大図。
図8】第1間葉系幹細胞の平面形状の他の一例を示す部分拡大図。
図9】幹細胞遠心分離工程の一例を示す説明図。
図10】幹細胞第2抽出工程の一例を示す説明図。
図11】第2扁平培養容器を使用した形状変形第2観察工程の一例を示す説明図。
図12】第2間葉系幹細胞の平面形状の一例を示す部分拡大図。
図13】第2間葉系幹細胞の平面形状の他の一例を示す部分拡大図。
図14】第2間葉系幹細胞の保存の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一例として示すナノバルブ発生システム10の構成図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る細胞用液体培地11の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、図2は、一例として示すナノバルブ発生装置12の構成図である。細胞用液体培地11は、各種の細胞の培養に使用され、特に好ましくは、間葉系幹細胞(幹細胞)の培養に好適に使用される。
【0040】
細胞用液体培地11は、純水41と、所定の栄養素と、純水41に溶存させるガス組成物13とから形成されている。ガス組成物13は、イオン化(電離)した水素イオン(H+)と、酸素分子(O)とを含有する。ガス組成物13では、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが非結合の分離した状態にある。細胞用液体培地11では、所定量の栄養素が純水に溶解しているとともに、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とを含有するガス組成物13がナノサイズのナノバブルの状態で純水に溶存している。
【0041】
ナノバルブ発生システム10は、純水生成装置14と電気分解装置15とナノバルブ発生装置12とから形成されている。純水生成装置14は、原水管16(ホース)及び第1フィルタハウジング17と、原水管16に設置された原水給水ポンプ18と、純水生成ユニット19と、純水管20(ホース)及び第2フィルタハウジング21と、純水管20に設置された純水給水ポンプ22とから形成されている。原水管17は、純水生成ユニット19の原水流入口に連結されている。原水給水ポンプ18は、原水(水道水等)を純水生成ユニット19に流入させる。第1フィルタハウジング17は、原水管20に設置され、その内部に前処理フィルタが収容されている。第1フィルタハウジング17は、原水管20に流れる原水を濾過し、原水に含まれる不純物を除去する。
【0042】
純水生成ユニット19には、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が混合された状態で充填されている。純水生成ユニット19は、原水中のイオン化した電解質を除去し、純水を生成する。尚、純水生成ユニット19には、図示はしていないが、電気伝導率計(水質計)が設置されている。純水管20は、純水生成ユニット19の純水流出口に連結されている。第2フィルタハウジング21は、純水管20に設置され、その内部に後処理フィルタが収容されている。第2フィルタハウジング21は、純水管20に流れる純水を濾過し、純水に含まれる不純物を除去する。純水給水ポンプ22は、純水生成ユニット19によって生成された純水を電気分解装置15に流入させる。
【0043】
電気分解装置15は、電源23と電気分解ユニット24とから形成されている。電源23は、電気分解ユニット24に設置された陽極(アノード)及び陰極(カソード)に電気を通電する。電気分解ユニット24は、図示はしていないが、陽極(アノード)及び陰極(カソード)と、陽極及び陰極の間に位置(介在)する固体高分子電解質膜(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材及び陰極給電部材と、陽極用貯水槽及び陰極用貯水槽と、陽極主電極および陰極主電極とから形成されている。
【0044】
電気分解ユニット24には、水素給気管25(ホース)と酸素給気管26(ホース)とが連結されている。水素給気管25には、水素給気ポンプ27が設置されている。水素給気ポンプ27は、水素給気管25を通流する水素イオンをナノバルブ発生装置12の第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33に給気する。酸素給気管26には、酸素給気ポンプ28が設置されている。酸素給気ポンプ28は、酸素給気管26を通流する酸素分子をナノバルブ発生装置12の第2細気泡(ナノバブル)発生ノズル33に給気する。
【0045】
電気分解ユニット24は、電源23から電気を通電された陽極で酸化反応を起こすとともに陰極で還元反応を起こすことで原水を化学分解する。電気分解ユニット24では、陽極及び陰極、固体高分子電解質膜(図示せず)が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体を陽極給電部材(図示せず)と陰極給電部材(図示せず)とが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0046】
陽極給電部材は、陽極の外側に位置して陽極に密着し、陽極に+の電流を給電する。陽極用貯水槽は、陽極給電部材の外側に位置して陽極給電部材に密着している。陽極主電極は、陽極用貯水槽の外側に位置して陽極給電部材に+の電流を給電する。陰極給電部材は、陰極の外側に位置して陰極に密着し、陰極に-の電流を給電する。陰極用貯水槽は、陰極給電部材の外側に位置して陰極給電部材に密着している。陰極主電極は、陰極用貯水槽の外側に位置して陰極給電部材に-の電流を給電する。
【0047】
電気分解ユニット24における純水の電気分解では、陽極用貯水槽及び陰極用貯水槽に純水管20から純水(HO)が給水され、陽極主電極に電源23から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極に電源23から-の電流が給電される。陽極主電極に給電された+の電流が陽極給電部材から陽極(アノード)に給電され、陰極主電極に給電された-の電流が陰極給電部材から陰極(カソード)に給電される。陽極(電極)では、2HO→4H+4e+Oの陽極反応(触媒作用)によって酸素分子(O)が生成され、陰極(電極)では、4H+4e→2Hの陰極反応(触媒作用)によって水素イオン(H+)が生成される。プロトン(水素イオン:H)は、固体高分子電解質膜内を通って陽極から陰極(電極)へ移動する。固体高分子電解質膜には、陽極で生成されたプロトンが通流する。
【0048】
電気分解ユニット24において発生した水素イオン(H+)は、水素給気管25を通流してナノバルブ発生装置12に流入し、電気分解ユニット24において発生した酸素分子(O)は、酸素給気管26を通流してナノバルブ発生装置12に流入する。尚、水素給気管25には、水素流量計29が設置され、酸素給気管26には、酸素流量計30が設置されている。
【0049】
ナノバルブ発生装置12は、所定容積の貯水槽31と、第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32及び第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33と、給水ポンプ34とから形成されている。尚、図示はしていないが、ナノバルブ発生装置12(貯水槽31)には、既述の純水生成装置14と同様の純水生成装置が附属(接続)し、純水生成装置において生成された純水41が貯水槽31に流入する。貯水槽31には、純水生成装置において生成された純水41が流入し、純水41が貯水されている。貯水槽31の下部には、抽出管35(ホース)が連結されている。給水ポンプ34には、吸水管36(ホース)が連結されているとともに、第1給水管37(ホース)及び第2給水管38(ホース)が連結されている。吸水管36は、その吸水口40が貯水槽31の内部に設置され、純水41中に配置される。
【0050】
第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32は、貯水槽31の内部に設置され、純水中に配置される。第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32は、電気分解ユニット24において発生した水素イオンをナノバブルの状態にし、水素イオン(ガス組成物)をナノサイズのナノバブルの状態で純水41中に溶存させる。第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32には、水素給気管25が連結されているとともに、第1給水管37が連結されている。第1給水管37には、圧力計39が設置されている。
【0051】
第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33は、貯水槽31の内部に配置され、純水中に位置する。第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33は、電気分解ユニット24において発生した酸素分子をナノバブルの状態にし、酸素分子(ガス組成物)をナノサイズのナノバブルの状態で純水41中に溶存させる。第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33には、酸素給気管26が連結されているとともに、第2給水管37が連結されている。第2給水管37には、圧力計39が設置されている。給水ポンプ34は、貯水槽31に貯水された純水41を吸水し、吸水した純水41を第1及び第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32,33に強制的に給水する。
【0052】
ナノバルブ発生システム10の純水生成装置12や電気分解装置15、ナノバルブ発生装置16を使用して細胞用液体培地11(以下の幹細胞培養方法において利用する第1及び第2細胞用液体培地11a,11b(細胞用液体培養液))を作る。ナノバルブ発生システム10では、ガス組成物13(水素イオン、酸素分子)を貯水槽31の純水41に溶存させる。ナノバルブ発生システム10を起動する直前又は起動させた直後に、貯水槽31に貯水された純水41に微量の炭酸ガス42(炭酸水)を加え、微量の炭酸ガス42を貯水槽31の純水41に溶存させる。尚、貯水槽31の純水41に微量の炭酸ガス42(炭酸水)を加えることなく、炭酸ガス42を貯水槽31の純水41に溶存させなくてもよい。貯水槽31に貯水された純水41の全水量に対する炭酸ガス42(炭酸水)の濃度は、0.005~0.009ppmである。
【0053】
ナノバルブ発生システム10において純水生成装置12、電気分解装置15、ナノバルブ発生装置16が起動すると、原水給水ポンプ18によって原水(水道水等)が原水管16を通流し、原水管16を通流する原水が第1フィルタハウジング17を通流した後、純水生成ユニット19に流入する。純水生成ユニット19によって原水から純水が生成され、生成された純水が純水給水ポンプ22によって純水管20を通流し、純水が第2フィルタハウジング21を通流した後、電気分解ユニット24に流入する。
【0054】
電気分解ユニット24において純水が電気分解され、発生した水素イオンが水素給気ポンプ27によって水素給気管25を通流し、水素イオンが第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32に給気されるとともに、発生した酸素分子が酸素給気ポンプ28によって酸素給気管26を通流し、酸素分子が第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33に給気される。貯水槽31に貯水された純水41が吸水管36を通って給水ポンプ34に給水され、その純水41が第1給水管37を通って第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32に給水されるとともに、その純水41が第2給水管38を通って第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33に給水される。
【0055】
第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32では、電気分解ユニット24において発生した水素イオンが水素給気管25から給気されるとともに、貯水槽31の純水41が第1給水管37から給水される。第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32は、水素イオンをナノサイズのナノバルブの状態にしつつ、ナノバルブの水素イオンを純水41(微量の炭酸ガス42が溶存する純水41)に溶存(混入)させ、ナノバルブの水素イオン(ガス組成物)が溶存(混入)した純水41を貯水槽31の純水41中に噴射する。ナノバルブの水素イオンが溶存した純水41を貯水槽31に連続して噴射することで、貯水槽31に貯水された純水41におけるナノバルブの水素イオンの濃度が次第に増加する。
【0056】
第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33では、電気分解ユニット24において発生した酸素分子が酸素給気管26から給気されるとともに、貯水槽31の純水41が第2給水管38から給水される。第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33は、酸素分子をナノサイズのナノバルブの状態にしつつ、ナノバルブの酸素分子を純水41(微量の炭酸ガス42が溶存する純水41)に溶存(混入)させ、ナノバルブの酸素分子が溶存(混入)した純水41を貯水槽31の純水41中に噴射する。ナノバルブの酸素分子(ガス組成物)が溶存した純水41を貯水槽31に連続して噴射することで、貯水槽31に貯水された純水41におけるナノバルブの酸素分子の濃度が次第に増加する。
【0057】
第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル32で作られたナノバルブの水素イオンと第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル33で作られたナノバルブの酸素分子とが貯水槽31の純水41に所定濃度で溶存した後、貯水槽31の下部の抽出管35を開放し、ナノバルブの水素イオン(ガス組成物)とナノバルブの酸素分子(ガス組成物)とが溶存した純水41を貯水槽31からビーカー43(三角フラスコ)に取り出す。次に、ビーカー43に粉末状態にある栄養素(図示せず)を投入し、ガス組成物13(ナノバルブの水素イオン、ナノバルブの酸素分子)が溶存する純水41に栄養素を溶解することで、細胞用液体培地11を作る。
【0058】
栄養素としては、炭素源(ブドウ糖等)と窒素源(アミノ酸)とビタミン類(チアミン等)と無機塩類とが使用される。尚、栄養素として炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源を使用することができる。ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、酸素分子(O)を含有する好気性培地であって細胞のミトコンドリアを活性化させる。
【0059】
ナノバルブ発生システム10(細胞用液体培地11)は、純水41に溶存させた微量の炭酸ガス42(炭酸水)の分子がキャリアとなり、その炭酸ガス42の分子に水素イオン(H+)及び酸素分子(O)が結合することで、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で純水41(細胞用液体培地11)に溶存させることができ、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で含む細胞用液体培地11を作ることができる。又、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を高い濃度で含む細胞用液体培地11を利用することで単位時間内に幹細胞(細胞)を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養幹細胞(培養細胞)を確実に作ることができる。
【0060】
ナノバルブ発生システム10(細胞用液体培地11)は、純水41にガス組成物13(ナノバルブの水素イオン、ナノバルブの酸素分子)を溶存させた後、ガス組成物13が溶存する純水41に粉末状態にある栄養素を溶解するから、細胞用液体培地11の作成過程においてその液体培地11(純水41)に溶存するガス組成物13が細胞用液体培地11から外気に放出され難く、ガス組成物13が細胞用液体培地11内に長時間留まる細胞用液体培地11を作ることができる。ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、栄養素が炭素源と窒素源とビタミン類と無機塩類とのうちの少なくとも炭素源であるから、栄養素を利用して幹細胞(細胞)を確実に培養することができるとともに、その細胞用液体培地11を利用することで単位時間内に幹細胞(細胞)を多量に増殖させることができるとともに、短期間に多量の培養幹細胞(培養細胞)を確実に作ることができる。
【0061】
ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、ナノバブルの状態で存在する酸素分子(O)がその細胞用液体培地11を好気性培地とし、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの外膜から内膜に進入し、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアを活性化させることができ、ミトコンドリアの活性によって細胞分裂(増殖)を促進することができるとともに、好気性の細胞用液体培地11を利用して短期間に多量の培養幹細胞(培養細胞)を作ることができる。
【0062】
ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、ガス組成物13の全ガス量(全質量)に対する水素イオン(H+)の濃度が0.5~0.70ppmの範囲にあり、ガス組成物13の全ガス量(全質量)に対する酸素分子(O)の濃度が12.5~15.5ppmの範囲にある。ガス組成物13における水素イオン(H+)の濃度が0.5ppm未満であり、ガス組成物13における酸素分子(O)の濃度が12.5ppm未満の場合、ミトコンドリアを活性化させることができず、ミトコンドリアの活性を利用して細胞分裂(増殖)を促進することができない。
【0063】
ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、ガス組成物13の全ガス量(全質量)に対する水素イオン(H+)の濃度が前記範囲にあり、ガス組成物13の全ガス量(全質量)に対する酸素分子(O)の濃度が前記範囲にあり、ガス組成物13(水素イオン、酸素分子)がナノサイズのナノバブルの状態で細胞用液体培地11(純水41)に溶存しているから、ナノバブルの状態で細胞用液体培地11に存在する水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの外膜から内膜に容易に進入し、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、細胞のミトコンドリアを活性化させることができ、ミトコンドリアの活性によって細胞分裂(増殖)を促進することができる。
【0064】
ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、ガス組成物13の粒径が100nm以下であり、細胞用液体培地11の1ccの中に5~8臆個のガス組成物13のマイクロバブルが溶存している。ガス組成物13の粒径が100nmを超過し、細胞用液体培地11の1ccの中に溶存するガス組成物13のマイクロバブルの個数が5臆個未満では、細胞用液体培地11におけるガス組成物13(水素イオン、酸素分子)の上昇速度が速くなり、ガス組成物13が細胞用液体培地11内に長時間留まることはなく、ガス組成物13の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができない。ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、前記粒径のガス組成物13のマイクロバブルが細胞用液体培地11の1ccの中に5~8臆個溶存するから、細胞用液体培地11におけるガス組成物13(水素イオン、酸素分子)の上昇速度が遅く、ガス組成物13が細胞用液体培地11内に長時間留まり、そのガス組成物13の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができる。
【0065】
ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、細胞用液体培地11の0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、ナノバブルとして細胞用液体培地11に溶存するガス組成物13の50%が細胞用液体培地11から外気に放出されるまでの時間が細胞用液体培地11の室温において48~72時間の範囲にある。細胞用液体培地11の0℃における粘度が3.5mPa・s未満では、細胞用液体培地11におけるガス組成物13(水素イオン、酸素分子)の上昇速度が速くなり、ガス組成物13が細胞用液体培地11内に長時間留まることはなく、ガス組成物13の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができない。
【0066】
ナノバルブ発生システム10によって作られた細胞用液体培地11は、細胞用液体培地11の0℃における粘度が前記範囲にあり、ナノバブルとして細胞用液体培地11に溶存するガス組成物13の50%が細胞用液体培地11から外気に放出されるまでの時間が細胞用液体培地11の室温において48~72時間の範囲にあるから、ガス組成物13(水素イオン、酸素分子)が細胞用液体培地11内に長時間留まり、そのガス組成物13の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を長時間利用することができる。
【0067】
図3は、一例として示す幹細胞培養システム50の構成図であり、図4は、骨髄液分離工程の一例を示す説明図である。図5は、図4から続く骨髄液分離工程の説明図である。幹細胞培養システム50(幹細胞培養方法)は、複数のドナー(人)から採取した第1骨髄液51を利用し、骨髄液分離工程、骨髄液抽出工程、細胞用液体培地第1作成工程、形状変形第1観察工程、総平面面積第1観察工程、幹細胞第1抽出工程、幹細胞遠心分離工程、幹細胞第2抽出工程、細胞用液体培地第2作成工程、形状変形第2観察工程、総平面面積第2観察工程、幹細胞第3抽出工程を行うことにより、第1骨髄液51に含まれる複数種類の間葉系幹細胞の中から特定種類の単一種間葉系幹細胞を培養(製造)する。
【0068】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)では、コンピュータ52及び電子顕微鏡53が使用される。コンピュータ52は、中央処理装置(CPUや仮想CPU)と記憶装置(メモリや仮想メモリ)と大容量記憶領域(ハードディスクや仮想ハードディスク等)とを備え、物理的なOS(オペレーティングシステム)や仮想OS(仮想オペレーティングシステム)によって動作する。コンピュータ52には、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイやプリンタ(図示せず)等の出力装置がインターフェイス(無線または有線)を介して接続されている。コンピュータ52の大容量記憶領域には、ドナーデータ(ドナー特定情報)が記憶(格納)されている。ドナーデータには、ドナーの氏名、住所、電話番号、生年月日、性別、血液型、身長、体重、メールアドレス等がある。
【0069】
骨髄液分離工程では、ドナーから採取した第1骨髄液51を層状に分離させる。骨髄液採取では、それらドナーの胸骨または腸骨(骨盤)から2~3cc(2~3ml)の第1骨髄液51が採取される。第1骨髄液51は、ドナーに局所麻酔をかけた後、骨髄を穿刺して骨髄液(骨髄血)を吸引する「骨髄穿刺」(マルク)によって採取される。担当者(医師や看護師、研究者等)は、第1骨髄液51の採取と同時に、コンピュータ52においてシステム10を起動し、キーボードやマウス等の入力装置を利用してドナーデータをコンピュータ52に入力する。コンピュータ52は、ドナーデータが入力される度毎(ドナーから第1骨髄液51を採取する度毎)に各ドナーを特定するユニークなドナー識別子を生成し、ドナーデータをドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に記憶(格納)する。
【0070】
ドナーから採取された2~3ccの第1骨髄液51は、上下方向へ延びるガラス試験管54(分離容器)内に注入(収容)される。尚、2~3ccの第1骨髄液51には、0.5~1ml(約5×10(cells/ml))の複数種類の間葉系幹細胞が含まれる。第1骨髄液51を注入したガラス試験管54は、図4に示すように、試験管立て55にセットされ、試験管立て55とともに恒温槽56内に収容される。
【0071】
ガラス試験管54を恒温槽56に所定時間(約2時間)静的に放置することで、図5に示すように、試験管54に注入された第1骨髄液51が試験管54内において上下方向へ何層か(3層)の層状に分離する。第1骨髄液51を層状に分離させた骨髄液分離工程の後、骨髄液抽出工程が行われる。骨髄液抽出工程では、層状に分離した第1骨髄液51から第2骨髄液57を抽出する。幹細胞の培養には通常150~200cc(150~200ml)の骨髄液が必要とされているが、この幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、ドナーから2~3ccの第1骨髄液51を採取すればよく、少量の骨髄液41で特定種類の間葉系幹細胞(第2間葉系幹細胞)を培養(製造)することができるから、骨髄液51の採取時間を大幅に短縮することができ、骨髄液41を低コストで採取することができるとともに、骨髄液51の採取時にドナーにかかる負担を最小限にすることができる。
【0072】
担当者は、恒温槽56内から試験管立て55を取り出し、試験管立て55からガラス試験管54を引き抜き、層状に分離した第1骨髄液51の特定の層に存在する第2骨髄液57を抽出する。担当者は、注射器やピペットを利用して層状に分離した第1骨髄液51のうちの中間層に位置する3~4mmの層厚みの第2骨髄液57を抽出(吸引)する。幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)では、多種雑多な間葉系幹細胞を含む第1骨髄液51を上下方向へ層状(3層)に分離させた後、第1骨髄液51から特定(中間)の第2骨髄液57を抽出することで、第1骨髄液51に含まれる不要な間葉系幹細胞を除去することができる。
【0073】
第1骨髄液51から第2骨髄液57を抽出する骨髄液抽出工程の後、又は、骨髄液抽出工程と同時に、細胞用液体培地第1作成工程が行われる。細胞用液体培地第1作成工程では、ナノバルブ発生システム10によって純水41にガス組成物13を溶存させた後、所定濃度の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を含むガス組成物13が溶存する純水41に所定の栄養素を溶解し、ガス組成物13(水素イオン、酸素分子)を含有する細胞用第1液体培地11a(細胞用第1液体培養液)を作る。
【0074】
細胞用液体培地第1作成工程で作られた細胞用第1液体培地11aは、純水41と、純水41に溶解した所定の栄養素と、濃度0.5~0.75ppmの範囲のイオン化した水素イオン(H+)及び濃度12.5~15.5ppmの範囲であって水素イオン(H+)に非結合の酸素分子(O)を含有して純水41にナノサイズのナノバブルの状態で溶存するガス組成物13とから形成されている。
【0075】
細胞用液体培地第1作成工程で作られた細胞用第1液体培地11aでは、ガス組成物13の粒径が100nm以下であり、細胞用第1液体培地11aの1ccの中に5~8臆個のガス組成物13のマイクロバブルが溶存している。細胞用液体培地第1作成工程で作られた細胞用第1液体培地11aでは、細胞用第1液体培地11aの0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、ナノバブルとして細胞用第1液体培地11aに溶存するガス組成物13の50%が細胞用第1液体培地11aから外気に放出されるまでの時間が細胞用第1液体培地11aの室温において48~72時間の範囲にある。
【0076】
図6は、第1扁平培養容器58(第1培養容器)を使用した形状変形第1観察工程の一例を示す説明図であり、図7は、第1間葉系幹細胞59の平面形状の一例を示す部分拡大図である。図8は、第1間葉系幹細胞59の平面形状の他の一例を示す部分拡大図である。図7,8は、電子顕微鏡53によって撮影された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像を示す。
【0077】
細胞用液体培地第1作成工程の後、又は、骨髄液抽出工程及び細胞用液体培地第1作成工程後、形状変形第1観察工程が行われる。形状変形第1観察工程では、第2骨髄液57を第1扁平培養容器58(第1培養容器)(細胞培養容器)に収容するとともに、細胞用液体培地第1作成工程(ナノバルブ発生システム10)によって作られた作成直後(作成から15分~30分以内)の細胞用第1液体培地11a(細胞用第1液体培養液)を第1扁平培養容器58に注入(注水)する。
【0078】
次に、培養容器58内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持しつつ、6~12時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、6~12時間の間において約1~2時間間隔で培養容器58内の第2骨髄液57に含まれる第1間葉系幹細胞59(第1幹細胞)の初期平面形状からの変形を電子顕微鏡53で観察し、第1間葉系幹細胞59が培養容器58の底面に定着したか否かを判断する。
【0079】
形状変形第1観察工程で使用される第1扁平培養容器58は、透明なガラス又は透明なプラスチックから作られ、小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が略正四角形の扁平な容器である。第1扁平培養容器58は、頂部及び底部と頂底部の間に位置する中間部と、頂部に形成された注入口とを有する。注入口は、蓋によって水密(気密)に閉塞されている。第1扁平培養容器58は、その容量が約20~30cc(好ましくは、25cc)であり、その底面面積が約25~36mmである。第1扁平培養容器58は、その一辺の長さが5~6mmである。尚、第1扁平培養容器58として小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が円形や楕円形の扁平な容器を使用することもできる。
【0080】
担当者は、注入口から蓋を取り外し、注射器又はピペットに吸引された第2骨髄液57を第1扁平培養容器58の注入口から培養容器58の内部に注入(収容)するとともに、ビーカー43から注射器又はピペットに吸引された細胞用第1液体培地11aの所定量を第1扁平培養容器58の注入口から培養容器58の内部に注入(注水)し、蓋によって注入口を閉塞(密閉)する。
【0081】
細胞用第1液体培地11a(後記する細胞用第2液体培地11bを含む)には、ペニシリン(約100U/ml)、アムホテリシン(約100ng/ml)、ストレプトマイシン(約100mkg/ml)、L-グルタミン(約2~4ml)、20%ウシ胎児血清を添加したミネラル塩溶液及びアミノ酸を加えることができる。又、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、セレニウム、2-メルカプトエタノール、L―アラニル-L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラチン酸、グリシン、L-プロリン、L-セリン等を溶解(添加)することもできる。
【0082】
第1扁平培養容器58に注入された第2骨髄液57に含まれる第1間葉系幹細胞59は、時間の経過とともに培養容器58の底面に定着しつつ、細胞用第1液体培地11aによって培養され、培養容器58の底面において次第に増殖(分化)してコロニーを形成する。担当者は、第2骨髄液57及び細胞用第1液体培地11aを第1扁平培養容器58に注入した後、その培養容器58を電子顕微鏡53の試料ホルダに設置(セット)する。
【0083】
電子顕微鏡53は、インターフェイス(有線または無線)を介してコンピュータ52に接続されている。電子顕微鏡53は、撮像素子によって被写体の拡大画像を撮影する画像撮影機能を有するとともに、その拡大画像をコンピュータ52に送信する画像送信機能を有する。電子顕微鏡53は、第1扁平培養容器58に注入された第2骨髄液57に含まれる第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔でコンピュータ52に送信する。電子顕微鏡53における画像撮影間隔や画像送信間隔は、キーボードやマウス等の入力装置によって1~2時間の間で自由に設定することができる。
【0084】
コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像と撮影時間とをドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像と撮影時間とをコンピュータ52に接続されたディスプレイに出力(表示)する。担当者は、ディスプレイに表示された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像を6~12時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2骨髄液57に含まれる第1間葉系幹細胞59の平面形状の変化を観察する。尚、担当者が電子顕微鏡53の観察窓から第1間葉系幹細胞59の平面形状の変化を6~12時間の間において約1~2時間間隔で直接観察してもよい。
【0085】
第1間葉系幹細胞59の初期平面形状は略円形であり、第1間葉系幹細胞59の平面形状が略円形の場合、第1間葉系幹細胞59が第1扁平培養容器58の底面(底壁内面)に定着しておらず、第1間葉系幹細胞59が増殖(分化)を開始していない。第1間葉系幹細胞59の変形後の平面形状は定着前の略円形を核として第1間葉系幹細胞59が一方向(所定方向)へ不定形に伸張(拡張)した扁平形状であり、第1間葉系幹細胞59が第1扁平培養容器58の底面(底壁内面)に定着し、第1間葉系幹細胞59が増殖(分化)を開始している。
【0086】
担当者は、形状変形第1観察工程における観察の結果、図6に示すように、ディスプレイに表示された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像が略円形のまま観察される場合、第1間葉系幹細胞59が第1扁平培養容器58の底面(底壁内面)に定着していないと判断し、第1間葉系幹細胞59の平面形状の変化を約1~2時間間隔で継続して観察する。担当者は、形状変形第1観察工程における観察の結果、ディスプレイに表示された第1間葉系幹細胞59の平面形状が略円形から略円形を核として不定形の扁平形状に変形した場合、第1間葉系幹細胞59が第1扁平培養容器58の底面に定着したと判断する。
【0087】
尚、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がナノバブルの状態で細胞用第1液体培地11aに溶存し、形状変形第1観察工程において、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが第1間葉系幹細胞59のミトコンドリアの外膜から内膜に容易に進入する。第1間葉系幹細胞59のミトコンドリアの内膜に進入した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアが活性化するとともに、ミトコンドリアの活性によって第1間葉系幹細胞59の細胞分裂(定着)が促進される。
【0088】
細胞用第1液体培地11aを使用せず、市販の培養液を使用して(市販の培養液を第1扁平培養容器58に注入して)培養容器58内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58の底面への定着までに12~24時間を要するが、細胞用第1液体培地11aを使用して培養容器58内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、6~12時間で第1間葉系幹細胞59が第1扁平培養容器58の底面に定着した。細胞用第1液体培地11aを使用することで、第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58の底面への定着時間を約1/2に短縮することができた。
【0089】
第1間葉系幹細胞59の定着時に容量が30ccを超過するとともに底面面積が36mmを超過する大きな扁平培養容器を使用すると、第1間葉系幹細胞59が容器の底面に定着し難くなるとともに第1間葉系幹細胞59の増殖が遅くなるが、幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、前記容量かつ前記底面面積の第1扁平培養容器58を使用することで、第1間葉系幹細胞59を培養容器58の底面に容易に定着させることができ、培養容器58において第1間葉系幹細胞59を素早く増殖させることができる。幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、第1扁平培養容器58を体温と略同一の温度で6~12時間静的放置しつつ、6~12時間の間において約1~2時間間隔で培養容器58内の第1間葉系幹細胞59の初期平面形状からの変形を観察するから、第1間葉系幹細胞59の変形を見逃すことはなく、第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面に対する定着を正確に確認することができる。
【0090】
形状変形第1観察工程における観察の結果、第1間葉系幹細胞59(第1幹細胞)が略円形(初期平面形状)から略円形を核として不定形の扁平形状に変形し、第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58(第1培養容器)の底面への定着を確認した形状変形第1観察工程の後、総平面面積第1観察工程が行われる。
【0091】
総平面面積第1観察工程では、第1扁平培養容器58内に注入(収容)されている細胞用第1液体培地11aを培養容器58から排出する。第1扁平培養容器58から細胞用第1液体培地11aを排出した後、細胞用液体培地第1作成工程によって作られた作成直後(作成から15分~30分以内)の新たな細胞用第1液体培地11a(細胞用第1液体培養液)を培養容器58内に注入(注水)する。
【0092】
次に、第1扁平培養容器58を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持しつつ、18~24時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、18~24時間の間において約1~2時間間隔で培養容器58の底面に定着した第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積を電子顕微鏡53で観察し、第1間葉系幹細胞59の総平面面積が培養容器58の底面面積に対して第1目標割合に達したか否かを判断する。第1扁平培養容器58の底面面積に対する第1間葉系幹細胞59の総平面面積の第1目標割合は、70~80%(70~80%コンフルエント)である。
【0093】
担当者は、形状変形第1観察工程において第1扁平培養容器58に注入した細胞用第1液体培地11aを注射器又はピペットを利用して培養容器58から排出し、ビーカー43から注射器又はピペットに吸引された作成直後(作成から15分~30分以内)の新たな細胞用第1液体培地11a(細胞用第1液体培養液)を培養容器58に注入(注水)する。担当者は、新たな細胞用第1液体培地11aを第1扁平培養容器58に注入した後、培養容器58を電子顕微鏡53の試料ホルダに設置(セット)する。幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、第1間葉系幹細胞59の定着を確認した後、第1扁平培養容器58の細胞用第1液体培地11aを排出し、作成直後の新たな細胞用第1液体培地11aを培養容器58に注入することで、第1間葉系幹細胞59の増殖を確実に促進することができる。
【0094】
電子顕微鏡53は、第1扁平培養容器58内の第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔でコンピュータ52に送信する。コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像と撮影時間とをドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第1間葉系幹細胞59の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイに出力(表示)する。
【0095】
担当者は、ディスプレイに表示された第1間葉系幹細胞58の平面形状の拡大画像を18~24時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第1扁平培養容器58の底面に定着した第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積を観察しつつ、第1間葉系幹細胞59の総平面面積が培養容器58の底面面積に対して第1目標割合(70~80%コンフルエント)に達したか否かを判断する。尚、担当者が電子顕微鏡53の観察窓から第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58の底面面積に対する総平面面積を18~24時間の間において約1~2時間間隔で直接観察し、第1間葉系幹細胞59の総平面面積が培養容器58の底面面積に対して第1目標割合(70~80%コンフルエント)に達したか否かを判断してもよい。
【0096】
担当者は、総平面面積第1観察工程における観察の結果、ディスプレイに表示された第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合(70~80%コンフルエント)に達していない場合、第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積を約1~2時間間隔で継続して観察する。尚、ディスプレイに表示された拡大画像の全面積に対して第1間葉系幹細胞59の総平面面積が第1目標割合に達した場合に、第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合に達したものとする。
【0097】
総平面面積第1観察工程における観察の結果、第1間葉系幹細胞59が第1扁平培養容器58の底面(底壁内面)において増殖して第1間葉系幹細胞59がコロニーを形成し、第1間葉系幹細胞59の平面形状が拡張することで、図8に示すように、ディスプレイに表示された第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合(70~80%コンフルエント)に達した場合、培養容器58から第1間葉系幹細胞59を抽出する幹細胞第1抽出工程が行われる。幹細胞第1抽出工程では、第1扁平培養容器58内において増殖(分化)した第1間葉系幹細胞59を培養容器58から抽出する。
【0098】
総平面面積第1観察工程において、ナノバブルの状態で細胞用第1液体培地11aに溶存する水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが第1間葉系幹細胞59のミトコンドリアの外膜から内膜に容易に進入する。第1間葉系幹細胞59のミトコンドリアの内膜に進入した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアが活性化するとともに、ミトコンドリアの活性によって第1間葉系幹細胞59の細胞分裂(増殖)が促進される。
【0099】
細胞用第1液体培地11aを使用せず、市販の培養液を使用して(市販の培養液を第1扁平培養容器58に注入して)培養容器58内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合に達するまでに36~48時間を要するが、細胞用第1液体培地11aを使用して培養容器58内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合に18~24時間で達した。細胞用第1液体培地11aを使用することで、第1間葉系幹細胞59の培養容器58の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合に達するまでの時間を約1/2に短縮することができた。
【0100】
担当者は、第1扁平培養容器58に注入されている総平面面積第1観察工程時の細胞用第1液体培地11a(細胞用第1液体培養液)を注射器又はピペットを利用して培養容器58から排出し、培養容器58内をPBSで洗浄した後、注射器又はピペットに吸引されたトリプシン液を培養容器58内に注入する。第1扁平培養容器58にトリプシン液を注入すると、培養容器58の底面に定着した第1間葉系幹細胞59がトリプシン液によって底面から剥離し、トリプシン液の水面に浮上する。担当者は、ピペットを利用して第1間葉系幹細胞59を吸引し、第1間葉系幹細胞59をピペット内に収容する。
【0101】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、約1~2時間間隔で第1間葉系幹細胞59の総平面面積を観察することで、第1間葉系幹細胞59の第1扁平培養容器58の底面面積に対する総平面面積を正確に確認することができ、培養容器58の底面面積に対して第1間葉系幹細胞59の総平面面積が第1目標割合に達したことを確実に把握することができる。
【0102】
図9は、幹細胞遠心分離工程の一例を示す説明図であり、図10は、幹細胞第2抽出工程の一例を示す説明図である。第1扁平培養容器58から第1間葉系幹細胞59を抽出した幹細胞第1抽出工程の後、幹細胞遠心分離工程が行われる。幹細胞遠心分離工程では、幹細胞第1抽出工程によって抽出された第1間葉系幹細胞59を遠心分離器60によって層状に遠心分離する。担当者は、ピペット内の第1間葉系幹細胞59をガラス試験管61に注入(収容)し、ガラス試験管61を遠心分離器60に設置(セット)する。担当者は、第1間葉系幹細胞59を遠心分離器60によって所定時間遠心分離した後、ガラス試験管61を遠心分離器60から取り出す。ガラス試験管61内の第1間葉系幹細胞59は、遠心分離器によって上下方向へ2層の層状に分離する。
【0103】
第1間葉系幹細胞59を層状(2層)に分離させた幹細胞遠心分離工程の後、幹細胞第2抽出工程が行われる。幹細胞第2抽出工程では、層状に分離した第1間葉系幹細胞59から下層(最下層)に位置する第2間葉系幹細胞62を抽出する。担当者は、ガラス試験管61において層状に分離した第1間葉系幹細胞59のうちの下層(最下層)に存在する第2間葉系幹細胞62を注射器又はピペットを利用して抽出(吸引)する。
【0104】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、不要な幹細胞を含む第1間葉系幹細胞59を遠心分離器60で遠心分離して上下方向へ層状に分離させ、層状(2層)に遠心分離した第1間葉系幹細胞59のうちの下層(最下層)に位置する第2間葉系幹細胞62を抽出することで、第1間葉系幹細胞59から特定の第2間葉系幹細胞62を確実に抽出することができ、第1間葉系幹細胞59から不要な間葉系幹細胞を除去することができる。
【0105】
第1扁平培養容器58(第1培養容器)の底面面積に対する第1間葉系幹細胞59の総平面面積が80%を超過して第1間葉系幹細胞59が増殖すると、第1間葉系幹細胞59の活性が次第に失われるが、幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、培養容器58の底面面積に対して第1間葉系幹細胞59の総平面面積が70~80%に増殖したときに、第1間葉系幹細胞59を培養容器58から抽出するから、第1間葉系幹細胞59の活性を保持することができ、活性を保持した状態で第1間葉系幹細胞59を増殖させることができるとともに、第1間葉系幹細胞59から活性を有する第2間葉系幹細胞62を抽出することができる。
【0106】
図11は、第2扁平培養容器63(第2培養容器)を使用した形状変形第2観察工程の一例を示す説明図であり、図12は、第2間葉系幹細胞62の平面形状の一例を示す部分拡大図である。図13は、第2間葉系幹細胞62の平面形状の他の一例を示す部分拡大図であり、図14は、第2間葉系幹細胞62の保存の一例を示す図である。図12,13は、電子顕微鏡53によって撮影された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を示す。
【0107】
第1間葉系幹細胞59から下層(最下層)に位置する特定の第2間葉系幹細胞62を抽出する幹細胞第2抽出工程の後、又は、幹細胞第2抽出工程と同時に、細胞用液体培地第2作成工程が行われる。細胞用液体培地第2作成工程では、ナノバルブ発生システム10によって純水41にガス組成物13を溶存させた後、所定濃度の水素イオン(H+)及び酸素分子(O)を含むガス組成物13が溶存する純水41に所定の栄養素を溶解し、ガス組成物13(水素イオン、酸素分子)を含有する細胞用第2液体培地11b(細胞用第2液体培養液)を作る。
【0108】
細胞用液体培地第2作成工程で作られた細胞用第2液体培地11bは、純水と、純水に溶解した所定の栄養素と、濃度0.5~0.75ppmの範囲のイオン化した水素イオン(H+)及び濃度12.5~15.5ppmの範囲であって水素イオン(H+)に非結合の酸素分子(O)を含有して純水にナノサイズのナノバブルの状態で溶存するガス組成物13とから形成されている。
【0109】
細胞用液体培地第2作成工程で作られた細胞用第2液体培地11bでは、ガス組成物13の粒径が100nm以下であり、細胞用第2液体培地11bの1ccの中に5~8臆個のガス組成物13のマイクロバブルが溶存している。細胞用液体培地第2作成工程で作られた細胞用第2液体培地11bでは、細胞用第2液体培地11bの0℃における粘度が3.5~5.5mPa・sの範囲にあり、ナノバブルとして細胞用第2液体培地11bに溶存するガス組成物13の50%が細胞用第2液体培地11bから外気に放出されるまでの時間が細胞用第2液体培地11bの室温において48~72時間の範囲にある。
【0110】
細胞用液体培地第2作成工程の後、又は、幹細胞第2抽出工程及び細胞用液体培地第2作成工程後、形状変形第2観察工程が行われる。形状変形第2観察工程では、第2間葉系幹細胞62を第2扁平培養容器63(第2培養容器)(細胞培養容器)に収容するとともに、細胞用液体培地第2作成工程(ナノバルブ発生システム10)によって作られた作成直後(作成から15分~30分以内)の細胞用第2液体培地11b(細胞用第2液体培養液)を第2扁平培養容器62に注入(注水)する。次に、培養容器62内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持しつつ、18~24時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、18~24時間の間において約1~2時間間隔で培養容器63内の第2間葉系幹細胞62(第2幹細胞)の初期平面形状からの変形を電子顕微鏡53で観察し、第2間葉系幹細胞62が培養容器63の底面に定着したか否かを判断する。
【0111】
形状変形第2観察工程で使用される第2扁平培養容器63(第2培養容器)は、透明なガラス又は透明なプラスチックから作られ、小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が略四角形の扁平な容器であり、底面の面積が第1扁平培養容器58(第1培養容器)のそれの約2倍である。第2扁平培養容器63は、頂部及び底部と頂底部の間に位置する中間部と、頂部に形成された注入口とを有する。注入口は、蓋によって水密(気密)に閉塞されている。
【0112】
第2扁平培養容器63(第2培養容器)は、その容量が約40~60cc(好ましくは、50cc)であり、その底面面積が約50~72mmである。第2扁平培養容器63は、その一辺の長さが約7~8.5mmである。尚、第2扁平培養容器63として小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が円形や楕円形の扁平な容器を使用することもできる。第2扁平培養容器63に収容された第2間葉系幹細胞62は、時間の経過とともに培養容器63の底面に定着しつつ、細胞用第2液体培地11bによって培養され、培養容器63の底面において次第に増殖(分化)してコロニーを形成する。
【0113】
担当者は、注入口から蓋を取り外し、ピペットに吸引された第2間葉系幹細胞62を第2扁平培養容器63の注入口から培養容器63の内部に注入(収容)するとともに、ビーカー43から注射器又はピペットに吸引された作成直後の細胞用第2液体培地11bを培養容器63の注入口から培養容器63の内部に注入(注水)し、蓋によって注入口を閉塞(密閉)する。担当者は、第2間葉系幹細胞62及び細胞用第2液体培地11bを第2扁平培養容器63に注入した後、培養容器63を電子顕微鏡53の試料ホルダに設置(セット)する。
【0114】
電子顕微鏡53は、第2扁平培養容器63に収容された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔でコンピュータ52に送信する。コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像と撮影時間とをドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。
【0115】
コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイに出力(表示)する。担当者は、ディスプレイに表示された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を18~24時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2間葉系幹細胞62の平面形状の変化を観察する。尚、担当者が電子顕微鏡53の観察窓から第2間葉系幹細胞62の平面形状の変化を18~24時間の間において約1~2時間間隔で直接観察してもよい。
【0116】
第2間葉系幹細胞62の初期平面形状は略円形であり、第2間葉系幹細胞62の平面形状が略円形の場合、第2間葉系幹細胞62が第2扁平培養容器63の底面(底壁内面)に定着しておらず、第2間葉系幹細胞62が増殖(分化)を開始していない。第2間葉系幹細胞62の変形後の平面形状は定着前の略円形を核として第2間葉系幹細胞62が一方向へ不定形に伸張した扁平形状であり、第2間葉系幹細胞62が第2扁平培養容器63の底面(底壁内面)に定着し、第2間葉系幹細胞62が増殖(分化)を開始している。
【0117】
担当者は、形状変形第2観察工程における観察の結果、図12に示すように、ディスプレイに表示された第2間葉系幹細胞62の平面形状が略円形のまま観察される場合、第2間葉系幹細胞62が第2扁平培養容器63の底面(底壁内面)に定着していないと判断し、第2間葉系幹細胞62の平面形状の変化を約1~2時間間隔で継続して観察する。担当者は、形状変形第2観察工程における観察の結果、ディスプレイに表示された第2間葉系幹細胞62の平面形状が略円形から略円形を核として不定形の扁平形状に変形した場合、第2間葉系幹細胞62が第2扁平培養容器63の底面に定着したと判断する。
【0118】
尚、水素イオン(H+)及び酸素分子(O)がナノバブルの状態で細胞用第2液体培地11bに溶存し、形状変形第2観察工程において、水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが第2間葉系幹細胞62のミトコンドリアの外膜から内膜に容易に進入する。第2間葉系幹細胞62のミトコンドリアの内膜に進入した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアが活性化するとともに、ミトコンドリアの活性によって第2間葉系幹細胞62の細胞分裂(定着)が促進される。
【0119】
細胞用第2液体培地11bを使用せず、市販の培養液を使用して(市販の培養液を第2扁平培養容器63に注入して)培養容器63内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63の底面への定着までに36~48時間を要するが、細胞用第2液体培地11bを使用して培養容器63内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、18~24時間で第2間葉系幹細胞62が第2扁平培養容器63の底面に定着した。細胞用第2液体培地11bを使用することで、第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63の底面への定着時間を約1/2に短縮することができた。
【0120】
第2間葉系幹細胞62の定着時に容量が60ccを超過するとともに底面面積が72mmを超過する大きな培養容器を使用すると、第2間葉系幹細胞62が容器の底面に定着し難くなるとともに第2間葉系幹細胞62の増殖が遅くなるが、幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、前記容量かつ前記底面面積の第2扁平培養容器63を使用することで、第2間葉系幹細胞62を培養容器63の底面に容易に定着させることができ、培養容器63において第2間葉系幹細胞62を素早く増殖させることができる。
【0121】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、第2扁平培養容器63を体温と略同一の温度で18~24時間静的放置しつつ、18~24時間の間において約1~2時間間隔で培養容器63内の第2間葉系幹細胞62の初期平面形状からの変形を観察するから、第2間葉系幹細胞62の変形を見逃すことはなく、第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面に対する定着を正確に確認することができる。
【0122】
形状変形第2観察工程における観察の結果、第2間葉系幹細胞62(第2幹細胞)が略円形(初期平面形状)から略円形を核として不定形の扁平形状に変形し、第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63(第2培養容器)の底面への定着を確認した幹細胞第3観察工程の後、総平面面積第2観察工程が行われる。
【0123】
総平面面積第2観察工程では、第2扁平培養容器63内に注入されている細胞用第2液体培地11bを培養容器63から排出する。第2扁平培養容器63から細胞用第2液体培地11bを排出した後、細胞用液体培地第2作成工程によって作られた作成直後(作成から15分~30分以内)の新たな細胞用第2液体培地11b(細胞用第2液体培養液)を培養容器内に注入(注水)する。
【0124】
次に、第2扁平培養容器63を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持しつつ、18~24時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、18~24時間の間において約1~2時間間隔で培養容器63の底面に定着した第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積を電子顕微鏡53で観察し、第2間葉系幹細胞62の総平面面積が培養容器63の底面面積に対して第2目標割合に達したか否かを判断する。第2扁平培養容器63の底面面積に対する第2間葉系幹細胞62の総平面面積の第2目標割合は、88~92%(88~92%コンフルエント)である。
【0125】
担当者は、形状変形第2観察工程において第2扁平培養容器63に注入した細胞用第2液体培地11bを注射器又はピペットを利用して培養容器63から排出し、ビーカー43から注射器又はピペットに吸引された作成直後の新たな細胞用第2液体培地11b(細胞用第2液体培養液)を培養容器63に注入(注水)する。担当者は、新たな細胞用第2液体培地11bを第2扁平培養容器63に注入した後、培養容器64を電子顕微鏡53の試料ホルダに設置(セット)する。 幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)、第2間葉系幹細胞62の定着を確認した後、第2扁平培養容器63の細胞用第2液体培地11bを排出し、新たな細胞用第2液体培地11bを培養容器63に注入することで、第2間葉系幹細胞62の増殖を確実に促進することができる。
【0126】
電子顕微鏡53は、第2扁平培養容器63内の第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔でコンピュータ52に送信する。コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像と撮影時間とをドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。コンピュータ52は、電子顕微鏡53から送信された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイに出力(表示)する。
【0127】
担当者は、ディスプレイに表示された第2間葉系幹細胞62の平面形状の拡大画像を18~24時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2扁平培養容器63の底面に定着した第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積を観察しつつ、第2間葉系幹細胞62の総平面面積が培養容器63の底面面積に対して第2目標割合(82~92%コンフルエント)に達したか否かを判断する。尚、担当者が電子顕微鏡53の観察窓から第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63の底面面積に対する総平面面積を18~24時間の間において約1~2時間間隔で直接観察し、第2間葉系幹細胞62の総平面面積が培養容器63の底面面積に対して第2目標割合(88~92%コンフルエント)に達したか否かを判断してもよい。
【0128】
担当者は、総平面面積第2観察工程における観察の結果、ディスプレイに表示された第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合(88~92%コンフルエント)に達していない場合、第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積を約1~2時間間隔で継続して観察する。尚、ディスプレイに表示された拡大画像の全面積に対して第2間葉系幹細胞62の総平面面積が第2目標割合に達した場合に、第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合に達したものとする。
【0129】
総平面面積第2観察工程における観察の結果、第2間葉系幹細胞62が第2扁平培養容器63の底面(底壁内面)において増殖して第2間葉系幹細胞62がコロニーを形成し、第2間葉系幹細胞62の平面形状が拡張することで、図13に示すように、ディスプレイに表示された第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合(88~92%コンフルエント)に達した場合、培養容器63から第2間葉系幹細胞62を抽出する幹細胞第3抽出工程が行われる。幹細胞第3抽出工程では、第2扁平培養容器63内において増殖(分化)した第2間葉系幹細胞62を培養容器63から抽出する。
【0130】
総平面面積第2観察工程において、ナノバブルの状態で細胞用第2液体培地11bに溶存する水素イオン(H+)と酸素分子(O)とが第2間葉系幹細胞62のミトコンドリアの外膜から内膜に容易に進入する。第2間葉系幹細胞62のミトコンドリアの内膜に進入した水素イオン(H+)と酸素分子(O)とがミトコンドリアの電子伝達系の活性を誘導しつつATPの産生を誘導し、ミトコンドリアが活性化するとともに、ミトコンドリアの活性によって第2間葉系幹細胞62の細胞分裂(増殖)が促進される。
【0131】
細胞用第2液体培地11bを使用せず、市販の培養液を使用して(市販の培養液を第2扁平培養容器63に注入して)培養容器63内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合に達するまでに36~48時間を要するが、細胞用第2液体培地11bを使用して培養容器63内を体温と略同一の温度(約36~37℃)に保持した場合、第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合に18~24時間で達した。細胞用第2液体培地11bを使用することで、第2間葉系幹細胞62の培養容器63の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合に達するまでの時間を約1/2に短縮することができた。
【0132】
担当者は、第2扁平培養容器63内に注入されている総平面面積第2観察工程時の細胞用第2液体培地11b(細胞用第2液体培養液)を注射器又はピペットを利用して培養容器から排出し、培養容器63内をPBSで洗浄した後、注射器又はピペットに吸引されたトリプシン液を培養容器63内に注入する。第2扁平培養容器63にトリプシン液を注入すると、培養容器63の底面に定着した第2間葉系幹細胞62がトリプシン液によって底面から剥離し、トリプシン液の水面に浮上する。担当者は、ピペットを利用して第2間葉系幹細胞62を吸引し、第2間葉系幹細胞62をピペット内に収容する。
【0133】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、約1~2時間間隔で第2間葉系幹細胞62の総平面面積を観察することで、第2間葉系幹細胞62の第2扁平培養容器63の底面面積に対する総平面面積を正確に確認することができ、培養容器63の底面面積に対して第2間葉系幹細胞62の総平面面積が第2目標割合に達したことを確実に把握することができる。
【0134】
担当者は、ピペットを利用して培養後(増殖後)の第2間葉系幹細胞62を吸引し、第2間葉系幹細胞62をピペットから保存容器64に注入(収容)する。保存容器64に収容された第2間葉系幹細胞62は、不要な間葉系幹細胞が除去された活性を有する培養対象の特定種類(略単一種)のピュアな間葉系幹細胞62である。担当者は、第2間葉系幹細胞62をピペットから保存容器64に注入した後、ドナーデータを格納した(表した)QRコード(登録商標)が印字されたシールを保存容器64の外周面に貼付する。担当者は、第2間葉系幹細胞62を収容した保存容器64を冷蔵庫65に収納する。第2間葉系幹細胞62は、冷蔵庫65において約3~4℃で保存される。
【0135】
第2扁平培養容器63(第2培養容器)の底面面積に対する第2間葉系幹細胞62の総平面面積が92%を超過して第2間葉系幹細胞62が増殖すると、第2間葉系幹細胞62の活性が次第に失われるが、幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、培養容器63の底面面積に対して第2間葉系幹細胞62の総平面面積が88~92%に増殖したときに、第2間葉系幹細胞62を培養容器63から抽出するから、第2間葉系幹細胞62の活性を保持することができる。
【0136】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、ドナーから採取した第1骨髄液51を層状に分離させ、層状に分離させた第1骨髄液51のうちの中間層に位置する第2骨髄液57を抽出し、純水41にガス組成物13を溶存させた後、純水41に所定の栄養素を溶解してガス組成物13を含有する細胞用第1液体培地11aを作り、第2骨髄液57と作成直後の細胞用第1液体培地11aとを注入(収容)した第1扁平培養容器58(第1培養容器)において第2骨髄液57に含まれる第1間葉系幹細胞59(第1幹細胞)を第1扁平培養容器58の底面に定着させるとともに第1間葉系幹細胞59を増殖させ、第1間葉系幹細胞59の総平面面積が第1扁平培養容器58の底面面積に対して第1目標割合に達した場合、第1扁平培養容器58から第1間葉系幹細胞59を抽出し、第1間葉系幹細胞59を層状に分離させた後、最下層に位置する第2間葉系幹細胞62(第2幹細胞)を抽出し、純水41にガス組成物13を溶存させた後、純水41に栄養素を溶解してガス組成物13を含有する細胞用第2液体培地11bを作り、第2間葉系幹細胞62と作成直後の細胞用第2液体培地11bとを注入した第2扁平培養容器63(第2培養容器)において第2間葉系幹細胞62を第2扁平培養容器63の底面に定着させるとともに第2間葉系幹細胞62を増殖させ、第2間葉系幹細胞62の総平面面積が第2扁平培養容器63の底面面積に対して第2目標割合に達した場合、第2扁平培養容器63から第2間葉系幹細胞62を抽出するから、間葉系幹細胞59,62(幹細胞)のミトコンドリアを活性化させつつ、ミトコンドリアの活性によって間葉系幹細胞59,62の細胞分裂を促進させ、単位時間内に間葉系幹細胞59,62を多量に増殖させることができ、短期間に多量の培養間葉系幹細胞(培養幹細胞)を作ることができる。
【0137】
幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、層状に分離させた第1間葉系幹細胞59(第1幹細胞)から特定の第2間葉系幹細胞62(第2幹細胞)(最下層に位置する第2間葉系幹細胞62(第2幹細胞))を抽出するから、多種雑多な間葉系幹細胞(幹細胞)の増殖を防ぐことができ、製造対象の特定種類の間葉系幹細胞(第2間葉系幹細胞62(第2幹細胞))のみを培養することができるとともに、不要な間葉系幹細胞(幹細胞)が除去されたピュア(純粋)な間葉系幹細胞62(幹細胞)を製造することができる。幹細胞培養システム10(幹細胞培養方法)は、特定種類の間葉系幹細胞62(幹細胞)のみを培養することができるから、各種の疾患に対する治療の効果や再生医療における再生の効果が大きく、各種の疾患を完治させる確立が高いとともに各種の組織や各種の臓器を再生させる確立が高い間葉系幹細胞62(幹細胞)を培養することができる。
【符号の説明】
【0138】
10 ノバルブ発生システム
11 細胞用液体培地
12 ナノバルブ発生装置
13 ガス組成物
14 純水生成装置
15 電気分解装置
16 原水管(ホース)
17 第1フィルタハウジング
18 原水給水ポンプ
19 純水生成ユニット
20 純水管(ホース)
21 第2フィルタハウジング
22 純水給水ポンプ
23 電源
24 電気分解ユニット
25 水素給気管(ホース)
26 酸素給気管(ホース)
27 水素給気ポンプ
28 酸素給気ポンプ
29 水素流量計
30 酸素流量計
31 貯水槽
32 第1微細気泡(ナノバブル)発生ノズル
33 第2微細気泡(ナノバブル)発生ノズル
34 給水ポンプ
35 抽出管(ホース)
36 吸水管(ホース)
37 第1給水管(ホース)
38 第2給水管(ホース)
39 圧力計
40 吸水口
41 純水
42 炭酸ガス(炭酸水)
43 ビーカー
50 幹細胞培養システム
51 第1骨髄液
52 コンピュータ
53 電子顕微鏡
54 ガラス試験管
55 試験管立て
56 恒温槽
57 第2骨髄液
58 第1扁平培養容器(第1培養容器)
59 第1間葉系幹細胞(第1幹細胞)
60 遠心分離器
61 ガラス試験管
62 第2間葉系幹細胞(第2幹細胞)
63 第2扁平培養容器(第2培養容器)
64 保存容器
65 冷蔵庫
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