(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064843
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】穀物糖化液含有食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/30 20160101AFI20230502BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20230502BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20230502BHJP
A23G 9/42 20060101ALI20230502BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20230502BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20230502BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230502BHJP
A23L 7/104 20160101ALI20230502BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20230502BHJP
A23L 9/10 20160101ALI20230502BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20230502BHJP
A23L 11/00 20210101ALN20230502BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20230502BHJP
【FI】
A23L29/30
A23L9/20
A23L23/00
A23G9/42
A21D13/00
A23L27/60 A
A23L2/38 J
A23L7/104
A23C11/10
A23L9/10
A23G3/34 106
A23L11/00 301Z
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175241
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】八木 優紀
(72)【発明者】
【氏名】品川 千廸
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B020
4B023
4B025
4B032
4B036
4B041
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC20
4B001DC50
4B001EC99
4B014GB18
4B014GG01
4B020LB15
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4B023LG05
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4B025LB17
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4B041LK22
4B041LK23
4B047LG41
4B047LG66
4B117LG13
(57)【要約】
【課題】穀物糖化液を用いた新規な食品を提供する。
【解決手段】穀物糖化液を含有することを特徴とする食品である。前記穀物糖化液の原材料である穀物はオーツ麦であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物糖化液を含有することを特徴とする食品。
【請求項2】
前記穀物糖化液の原材料である穀物がオーツ麦であることを特徴とする請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記穀物糖化液の含有量が1質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の食品。
【請求項4】
プラントベース食品であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の食品。
【請求項5】
アレルゲンフリー食品または低アレルゲン食品であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の食品。
【請求項6】
パン類、和菓子、洋菓子および氷菓よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の食品。
【請求項7】
アイスクリーム類の代替食品、ヨーグルトの代替食品、プリンの代替食品、カスタードクリームの代替食品、マヨネーズの代替食品およびパスタ用クリームソースの代替食品よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の食品。
【請求項8】
オーツミルクであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物糖化液を含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で各種食材や添加物が使用されている。また、卵、乳、小麦等のアレルゲンを含む食品の代替食品として、これらアレルゲンに代えて別の材料を用いる手法も知られている。例えば、牛乳を使用した食品(菓子類等)では、アレルギーの問題や環境問題等の観点から、植物性ミルクのような代替乳の使用が注目されている。
【0003】
特開平09-028303号公報(特許文献1)には、豆乳と植物性クリームとを含む豆乳混合物にゲル化剤を含む水溶液を混合することを特徴とする豆乳を用いる純植物性食品の発明が記載されており、これによって、独特のまろやかな味がでて食べやすい健康食品を提供することができるとしている。
【0004】
特開2002-262803号公報(特許文献2)には、豆乳およびニガリを含む原料を混合してニガリ入り液状混合物とし、該液状混合物を加熱して半流動状とすることにより、豆乳デザートを製造する方法の発明が記載されており、これによって、柔らかく、トローッとした独特のなめらかさのある、とろけるような食感を有する、新規な豆乳デザートを製造することができるとしている。
【0005】
植物性ミルクとしては、豆乳の他、アーモンドミルクやココナッツミルク等も広く知られている。また、玄米ミルク、ライスミルク、オーツミルク等の禾穀類を原材料とする穀物ミルクも知られている。穀物ミルクも、豆乳等と同様に牛乳の代替品として利用可能であるが、穀物は栄養価が高く、穀物由来の風味も人気があることから、牛乳や乳製品が通常使用されない食品への利用も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-028303号公報
【特許文献2】特開2002-262803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、牛乳を使用した食品に限らず食品全般への利用を考えた場合、穀物ミルクよりも穀物糖化液の方が汎用性の高い原材料となり得ると考えている。そこで、本発明は、穀物糖化液を用いた新規な食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、穀物糖化液を用いて様々な食品を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
したがって、本発明は、穀物糖化液を含有することを特徴とする食品である。
【0010】
本発明に従う食品の好適例においては、前記穀物糖化液の原材料である穀物がオーツ麦である。
【0011】
本発明に従う食品の他の好適例においては、前記穀物糖化液の含有量が1質量%以上である。
【0012】
本発明に従う食品の他の好適例においては、プラントベース食品である。
【0013】
本発明に従う食品の他の好適例においては、アレルゲンフリー食品または低アレルゲン食品である。
【0014】
本発明に従う食品の他の好適例においては、パン類、和菓子、洋菓子および氷菓よりなる群から選択される。
【0015】
本発明に従う食品の他の好適例においては、アイスクリーム類の代替食品、ヨーグルトの代替食品、プリンの代替食品、カスタードクリームの代替食品、マヨネーズの代替食品およびパスタ用クリームソースの代替食品よりなる群から選択される。
【0016】
本発明に従う食品の他の好適例においては、オーツミルクである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、穀物糖化液を用いた新規な食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、穀物糖化液を含む食品に関する。本明細書では、この食品を「穀物糖化液含有食品」とも称する。
【0019】
食品
本発明において「食品」は、すべての飲食物を指す。このため、穀物糖化液含有食品には、穀物糖化液を含むものである限り、あらゆる食べ物や飲み物が含まれる。また、本発明において「穀物糖化液を含む食品」とは、文字通り、穀物糖化液を含む食品を意味するが、これには、原材料として穀物糖化液を含む食品、例えば、原材料として穀物糖化液を含むもので、食品の製造の過程において熱処理等が行われた食品等も含まれる。
【0020】
本発明において、穀物糖化液含有食品は、植物性食品を原材料とする食品(プラントベース食品)であることが好ましい。動物性の原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品を提供することで、消費者の多様な嗜好に合わせることが可能となる。また、畜産によって生じる温室効果ガスの削減など、環境問題の観点からも、プラントベース食品は好ましい。プラントベース食品は、本来は動物性食品を原材料として使用した食品について当該動物性食品を植物性食品に置き換えた食品である。プラントベース食品としては、一部の原材料に動物性食品が含まれるものがあるが、水を除く全ての原材料が植物性食品であるものが好ましい。食品の原材料となり得る植物性食品としては、例えば、穀類、イモ類、種実類、豆類、野菜類、果実類、キノコ類、藻類等が挙げられる。食品の原材料となり得る動物性食品としては、例えば、食肉類、卵類、乳類、魚介類等が挙げられる。
【0021】
本発明において、穀物糖化液含有食品は、アレルゲンフリー食品または低アレルゲン食品であることが好ましい。穀物糖化液の原料である穀物を適宜選択することで、アレルゲンフリー食品や低アレルゲン食品を提供することが可能である。アレルゲンフリー食品とは、食物アレルギー症状を引き起こすことが明らかになった食品を含まない食品であるが、本明細書では、食品表示法第4条第1項の規定に基づく食品表示基準について、特定原材料に該当する食品および特定原材料に準ずるものに該当する食品をいずれも含まない食品を「アレルゲンフリー食品」と称する。本明細書において「低アレルゲン食品」とは、食物アレルギー症状を引き起こすことが明らかになった食品のうち、特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いものを含まない食品であって、具体的には、食品表示法第4条第1項の規定に基づく食品表示基準について、特定原材料に該当する食品を含まない食品を指す。
【0022】
令和3年9月15日付け消食表第389号により改正された「食品表示基準について」では、特定原材料として、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の7品目が挙げられ、特定原材料に準ずるものとして、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの21品目が挙げられている。
【0023】
本発明に従う穀物糖化液含有食品によれば、穀物の風味を呈する食品を提供することができる。また、本発明に従う穀物糖化液含有食品によれば、穀物由来の栄養に富む食品を提供することもできる。穀物の風味や穀物由来の栄養の観点から、穀物糖化液の原材料である穀物はオーツ麦であることが好ましい。
【0024】
穀物糖化液の量は、食品の種類に応じて適宜選択されるものであるが、穀物の風味や穀物由来の栄養の観点から、食品中の穀物糖化液の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。また、上限として、食品中の穀物糖化液の含有量は、例えば80質量%以下である。また、食品の原材料全体に基づく穀物糖化液の量についても、同様に、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが特に好ましく、上限としては例えば60質量%以下である。
【0025】
本発明において、穀物糖化液含有食品は、各種食品として適用可能である。食品としては、例えば、水産加工食品、畜産加工品、農産加工食品、菓子類、清涼飲料水、酒類、食用油脂、みそ、しょうゆ、ソース類、調理食品、冷凍食品、密封包装食品、添加物等が挙げられる。
【0026】
穀物糖化液は甘味料として好適であることから、本発明の穀物糖化液含有食品は、菓子類、例えばパン類、和菓子、洋菓子、氷菓等であることが好ましい。また、本発明の穀物糖化液含有食品は、アレルゲンを含む食品の代替食品であることが好ましく、乳(牛乳や他の乳類)の代替食品、乳製品の代替食品、乳または乳製品を原材料とする食品の代替食品、卵(鶏卵や他の食鳥卵)を原材料とする食品の代替食品であることが更に好ましい。具体例としては、アイスクリーム類の代替食品、ヨーグルトの代替食品、プリンの代替食品、カスタードクリームの代替食品、マヨネーズの代替食品、パスタ用クリームソースの代替食品等が挙げられる。本明細書において「ある特定の食品の代替食品」という表現は、対象とする食品に分類される食品ではないが、対象とする食品の風味が感じられる食品を表す。例えば、アイスクリーム類の代替食品とは、アイスクリーム類には分類されないが、アイスクリーム類の風味が感じられる食品である。また、本発明の穀物糖化液含有食品は、穀物ミルク、例えばオーツミルク等としても好適である。
【0027】
(アイスクリームの代替食品)
本発明の一実施形態は、アイスクリームの代替食品である。アイスクリームの代替食品は、典型的に洋菓子や氷菓に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、糖類、油脂、増粘剤等が含まれる。アイスクリームの代替食品は、一般的なアイスクリームと同様の手法で製造することができる。例えば、穀物糖化液、水、糖類を加熱しながら撹拌して糖類を溶解させ、次いで植物油脂、増粘剤を加え撹拌しながらこれらを溶解させ、その後、得られた混合液を撹拌しながら冷却し、冷却された混合液をアイスクリームメーカーで攪拌しながら冷凍させることによって、プラントベースで且つアレルゲンフリーのアイスクリーム代替食品を作ることが可能である。
【0028】
(プリンの代替食品)
本発明の一実施形態は、プリンの代替食品である。プリンの代替食品は、典型的に洋菓子に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、糖類、植物性ホイップ、ゲル化剤等が含まれる。プリンの代替食品は、一般的なケミカルプリンと同様の手法で製造することができる。例えば、穀物糖化液、水、糖類を攪拌しながら加熱して糖類を溶解させ、次いで植物油脂、ゲル化剤を加え撹拌しながらこれらを均一に溶解させ、その後、得られた混合液を容器に充填して冷やし固めることで、プラントベースで且つアレルゲンフリーのプリンの代替食品を作ることが可能である。
【0029】
(ヨーグルトの代替食品)
本発明の一実施形態は、ヨーグルトの代替食品である。ヨーグルトの代替食品は、典型的に乳酸発酵食品に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、乳酸菌、糖類、ゲル化剤等が含まれる。ヨーグルトの代替食品は、乳酸発酵後に糖類、ゲル化剤で調整することで製造することができる。例えば、穀物糖化液、水を混合し乳酸菌種菌を加えて発酵させ、得られた発酵物に寒天および糖類を加え、攪拌しながらこれらを溶解させ、その後、発酵物を容器に充填して冷やし固めることで、プラントベースで且つアレルゲンフリーのヨーグルトの代替食品を作ることが可能である。
【0030】
(シフォンケーキ)
本発明の一実施形態は、シフォンケーキである。シフォンケーキは、典型的に洋菓子に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、糖類、小麦粉、卵等が含まれる。シフォンケーキは、一般的なシフォンケーキと同様の手法で製造することができる。例えば、穀物糖化液、卵黄、サラダ油を均一になるまで混ぜ、そこに薄力粉を加え粘りが出るまで混ぜて生地を用意し、また、卵白、グラニュー糖、コーンスターチからメレンゲを作り、次いで、生地とメレンゲを混ぜ合わせ、その後、型に入れ焼成することで、シフォンケーキを作ることが可能である。
【0031】
(餡)
本発明の一実施形態は、餡である。餡は、典型的に和菓子に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、白生あん、糖類等が含まれる。餡は、一般的な餡と同様の手法で製造することができる。例えば、穀物糖化液、水、糖類を攪拌しながら加熱して糖類を溶解させ、次いで、ここに白生あんを少量ずつ加え均一になるよう攪拌し、食塩を加え煮詰めることで、餡を作ることが可能である。
【0032】
(パン)
本発明の一実施形態は、パンであって、典型的にはパン類に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、小麦粉、油脂、糖類、食塩、ドライイースト等が含まれる。パンは、一般的なパンと同様の手法で製造することができる。例えば、原材料からパン生地を作製して1次発酵、2次発酵を行った後、焼成させることで、パンを作ることが可能である。
【0033】
(パスタ用クリームソースの代替食品)
本発明の一実施形態は、パスタ用クリームソースの代替食品であるが、パスタソースであることに変わりはなく、典型的にはソース類に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、植物性シュレッドチーズ(シュレッドチーズの植物性代替食品)、植物性ブイヨン(ブイヨンの植物性代替食品)、野菜等が含まれる。パスタ用クリームソースの代替食品は、一般的なパスタ用クリームソースと同様の手法で製造することができる。例えば、ニンニク、パーム油を火にかけ香りを出し、次いで、玉ねぎ、マッシュルーム、大豆ミートを炒め、穀物糖化液、水、植物性ブイヨン、加工澱粉、食塩を加えてとろみが出るまで加熱し、最後に植物性シュレッドチーズを加えて混ぜることで、プラントベースで且つ低アレルゲンのパスタ用クリームソースの代替食品を作ることが可能である。
【0034】
(マヨネーズの代替食品)
本発明の一実施形態は、マヨネーズの代替食品である。マヨネーズの代替食品は、典型的にソース類に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、油脂、糖類、食酢、調味料、増粘剤等が含まれる。マヨネーズの代替食品は、一般的なマヨネーズと同様の手法で製造することができる。例えば、穀物糖化液、穀物酢、レモン汁を混合し、次いで、糖類、粉からし、食塩、こしょうおよび増粘剤の混合物を攪拌しながら加え、最後に油脂を加え、乳化するまで攪拌することで、プラントベースで且つアレルゲンフリーのマヨネーズの代替食品を作ることが可能である。
【0035】
(カスタードクリームの代替食品)
本発明の一実施形態は、カスタードクリームの代替食品である。カスタードクリームの代替食品は、典型的に洋菓子に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、糖類、油脂、増粘剤、香料等が含まれる。カスタードクリームの代替食品は、一般的なカスタードクリームと同様の手法で製造することができる。例えば、糖類、米粉、粉寒天、食塩を混合し、ここに穀物糖化液の希釈液を加えながら混ぜ、次いで油脂、ブランデーを加えて加熱し、最後にバニラオイルを加えることで、プラントベースで且つアレルゲンフリーのカスタードクリームの代替食品を作ることが可能である。
【0036】
(穀物ミルク)
本発明の一実施形態は、穀物ミルクである。穀物ミルクは、典型的に清涼飲料水に分類される食品である。穀物糖化液以外の主原材料には、水、ひまわり油、食塩、安定剤等が含まれる。穀物ミルクは、一般的な穀物ミルクと同様の手法で製造することができる。例えば、穀物糖化液、水を混合して加熱し、そこに植物油脂、安定剤、食塩を加えて混合し、その後ホモジナイズ処理を行うことで、穀物ミルクを作ることができる。この穀物ミルクは、一般的な牛乳や穀物ミルクと同様に、ラテやスムージー等に使用することができる。
【0037】
穀物糖化液
本発明に従う食品は、穀物糖化液を含むものである。本明細書において「穀物糖化液」とは、穀物を原材料として用い、穀物の液化および糖化を経て製造される液であり、例えば、甘味料等として利用可能である。
【0038】
穀物糖化液の主な原材料は、穀物および水(好ましくは、純水)である。ここで、穀物としては、糖化液中に食物繊維を含有させることのできる穀物が好ましく、例えば、米、小麦、トウモロコシ、モロコシ、ヒエ、アワ、キビ、大麦、オーツ麦、ライ麦等が挙げられる。本発明において、穀物糖化液の原材料である穀物は、禾穀類であることが好ましく、オーツ麦および大麦の少なくとも一方を含むことが更に好ましく、オーツ麦であることが特に好ましい。オーツ麦および大麦は、水溶性食物繊維であるβ-グルカンが多く含まれており、健康志向の糖化液を提供する観点から好ましい。なお、大麦は酸味や苦味がある一方で、オーツ麦には癖がないため、美味しい糖化液を提供する観点からもオーツ麦は好適である。
【0039】
穀物糖化液の原材料として、オーツ麦および/または大麦に加えて、他の穀物を用いる場合、穀物中におけるオーツ麦および大麦の合計は、少なくとも50wt%以上であることが好ましく、80~100wt%であることが更に好ましい。
【0040】
穀物糖化液の原材料である穀物は、ざらつきが少なく、通液性に優れると共に、穀物が持つ栄養成分を多く含む糖化液を提供する観点から、オーツ麦や大麦等の穀物粉(微粉砕化されている穀物)であることが好ましく、後述するような粒度分布が調整された穀物粉であることが特に好ましい。穀物粉の製造には、ジェットミル、カッターミル、ハンマーミル、ボールミル等の粉砕機を用いた乾式粉砕を利用することが好ましい。
【0041】
穀物糖化液は、食物繊維を含むことが好ましい。食物繊維は、食物中に含まれている、人の消化酵素で消化することのできない物質であり、通常、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に大別される。食物繊維の有効性については、例えば、改訂増補版 機能性食品素材便覧(薬事日報社、2006年発行)において説明されている。
【0042】
不溶性食物繊維は、便通を整えて便秘を防ぐ効果があり、また、不溶性食物繊維を摂ることでビフィズス菌などが増えて腸内環境が改善される。穀物糖化液は、不溶性食物繊維を含むことで、整腸効果が期待できる。不溶性食物繊維としては、セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。不溶性食物繊維は、上述した穀物に由来する不溶性食物繊維であることが好ましい。例えば、後述する穀物糖化液の製造方法において、液化工程および糖化工程後、ろ過処理等により不溶性食物繊維を除去せずに糖化液を製造することで、不溶性食物繊維の含有量が高い穀物糖化液が得られる。また、穀物糖化液の原材料としてオーツ麦を用いることで、不溶性食物繊維の含有量を高めることができる。穀物糖化液固形分中の不溶性食物繊維の量は、1.0wt%以上であることが好ましく、2.0wt%以上であることがより好ましく、4.0wt%以上であることが更に好ましい。一方、穀物糖化液固形分中の不溶性食物繊維の量は、例えば8.0wt%以下であり、6.0wt%以下であることが好ましい。
【0043】
水溶性食物繊維は、血糖値の上昇やコレステロールを減らす効果、糖質の吸収を緩やかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑える効果、さらには整腸効果もある。穀物糖化液は、水溶性食物繊維を含むことでも、整腸効果が期待できる。水溶性食物繊維としては、グルカン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アガロース、アガロペクチン、カラギーナン、ポリデキストロース等が挙げられる。水溶性食物繊維は、上述した穀物に由来する水溶性食物繊維であることが好ましい。特に、オーツ麦および大麦には水溶性食物繊維としてβ-グルカンが多く含まれているため、オーツ麦および大麦に由来する水溶性食物繊維は、健康志向の糖化液を提供する観点から好ましい。例えば、後述する穀物糖化液の製造方法において、原材料中に含まれる水溶性食物繊維、特にはβ-グルカンを酵素分解しないまま、液化・糖化を行うことで、水溶性食物繊維の含有量が高い穀物糖化液が得られる。また、穀物糖化液の原材料としてオーツ麦を用いることで、水溶性食物繊維の含有量を高めることができる。穀物糖化液固形分中の水溶性食物繊維の量は、0.6wt%以上であることが好ましく、1.0wt%以上であることがより好ましく、2.0wt%以上であることが更に好ましい。一方、穀物糖化液固形分中の水溶性食物繊維の量は、例えば6.0wt%以下であり、4.0wt%以下であることが好ましい。
【0044】
穀物糖化液は、イソマルトオリゴ糖を含むことが好ましい。イソマルトオリゴ糖は、グルコースがα-1,4結合およびα-1,6結合で結合したもの、並びにグルコースがα-1,6結合のみで結合したもので、重合度2から10の糖類であり、イソマルトース、パノース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソパノース等がある。イソマルトオリゴ糖は、糖アルコールに比べて下痢を起しにくく、整腸作用が期待できる。イソマルトオリゴ糖の有効性については、例えば、改訂増補版 機能性食品素材便覧(薬事日報社、2006年発行)において説明されている。例えば、後述する穀物糖化液の製造方法において、糖組成における三糖類以上の割合を高くすることで、イソマルトオリゴ糖の割合が高い穀物糖化液が得られる。穀物糖化液中の糖類全体に対するイソマルトオリゴ糖の割合は、10.0wt%以上であることが好ましく、13.0wt%以上であることがより好ましく、15.0wt%以上であることが更に好ましい。一方、穀物糖化液中の糖類全体に対するイソマルトオリゴ糖の割合は、例えば30.0wt%以下であり、25.0wt%以下であることが好ましい。
【0045】
本明細書において「穀物糖化液固形分」とは、穀物糖化液を構成する成分から水を除いた成分であり、主として糖類から構成され、穀物糖化液の好ましい実施形態においては、食物繊維や後述のようなさらなる栄養成分も含まれる。なお、穀物糖化液中の固形分の量は、穀物糖化液の質量から水分量を除いて算出することができる。ここで、水分量は、公知の測定法を適宜用いて測定することができ、例えば、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル(文部科学省発行)の常圧加熱乾燥法により測定することができる。穀物糖化液中の固形分量は、例えば、10~55wt%である。
【0046】
本明細書において「穀物糖化液固形分中の不溶性食物繊維量」および「穀物糖化液固形分中の水溶性食物繊維量」は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。例えば、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル(文部科学省発行)の酵素-重量法(プロスキー変法)により穀物糖化液中の食物繊維量を測定することができ、下記式から穀物糖化液固形分中の食物繊維量を求めることができる。
穀物糖化液中の食物繊維量/穀物糖化液中の固形分量×穀物糖化液全体量
【0047】
本明細書において「穀物糖化液中の糖類全体に対するイソマルトオリゴ糖の割合」は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。例えば、排除型イオン交換カラムを用いた液体クロマトグラフィーにより求めた総糖含量から、排除型イオン交換カラムおよび順層カラムを用いた液体クロマトグラフィーにより求めた単糖、マルトース、マルトオリゴ糖、ショ糖含量を差し引くことにより求めることができる。具体例として、活性炭、イオン交換樹脂、固層抽出、メンブレンフィルター等により穀物糖化液に対して前処理を行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製))を使用して以下の条件で総糖含量の分析を行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:商品名「Prominence」(島津ジーエルシー社製))を使用して以下の条件で単糖、マルトース、マルトオリゴ糖、ショ糖含量の分析を行うことができる。
(総糖含量の分析条件)
カラム:ULTRON PS80-N(島津ジーエルシー社製)
溶媒:純水
温度:60℃
流速:0.6ml/min
検出:RI(示差屈折率)
(単糖・マルトース・ショ糖・マルトオリゴ糖含量の分析条件)
カラム:Amide-80(東ソー製)
溶媒:70%アセトニトリル
温度:65℃
流速:0.6ml/min
検出:RI(示差屈折率)
【0048】
穀物糖化液には、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類以上の各種糖類が含まれる。穀物糖化液固形分中の糖類全体の量は、例えば30~95wt%である。ここで、イソマルトオリゴ糖を多く含む穀物糖化液では、多くの場合、糖組成における三糖類以上の割合が高い。穀物糖化液中の糖類全体に対する三糖類以上の糖類の割合は、30wt%以上であることが好ましく、40wt%以上であることがより好ましく、50wt%以上であることが更に好ましい。一方、穀物糖化液中の糖類全体に対する三糖類以上の糖類の割合は、例えば70wt%以下であり、60wt%以下であることが好ましい。また、単糖類および二糖類については、例えば、穀物糖化液中の糖類全体に対する割合がそれぞれ15~30wt%の範囲内にある。
【0049】
本明細書において、穀物糖化液中の糖類の組成は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。一例としては、活性炭、イオン交換樹脂、固層抽出、メンブレンフィルター等により穀物糖化液を精製したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:例えば、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製))によって測定することができる。分析条件の一例としては、以下のとおりである。
(分析条件)
カラム:ULTRON PS80-N(島津ジーエルシー社製)
溶媒:純水
温度:60℃
流速:0.6ml/min
検出:RI(示差屈折率)
【0050】
本明細書において「穀物糖化液固形分中の糖類全体の量」は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。例えば、穀物糖化液の全体量から水分量、たんぱく質量、脂質量、灰分量および食物繊維量を除いて穀物糖化液中の糖類全体の量を算出することができ、下記式から穀物糖化液固形分中の糖類全体の量を求めることができる。
穀物糖化液中の糖類全体の量/穀物糖化液中の固形分量×穀物糖化液全体量
【0051】
穀物糖化液は、当然に糖質を含むものであるが、穀物由来の他の栄養成分を多く含む糖化液であることが好ましい。穀物糖化液は、上述の食物繊維に加えて、たんぱく質、ミネラル、脂質等の栄養成分を多く含むことが好ましい。このような栄養成分を多く含む糖化液は、例えば、後述する穀物糖化液の製造方法においてろ過処理等を行わずに糖化液を製造することによって得られる。
【0052】
穀物糖化液固形分中のたんぱく質量は、5.0wt%以上であることが好ましく、12.0wt%以上であることが特に好ましい。一方、穀物糖化液固形分中のたんぱく質量は、例えば20wt%以下であり、15wt%以下であることが好ましい。
【0053】
本明細書において「穀物糖化液固形分中のたんぱく質量」は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。例えば、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル(文部科学省発行)の窒素定量置換法により穀物糖化液中のたんぱく質量を測定することができ、下記式から穀物糖化液固形分中のたんぱく質量を求めることができる。
穀物糖化液中のたんぱく質量/穀物糖化液中の固形分量×穀物糖化液全体量
【0054】
穀物糖化液固形分中の灰分量は、1.0wt%以上であることが好ましく、1.5wt%以上であることが特に好ましい。一方、穀物糖化液固形分中の灰分量は、例えば5.0wt%以下であり、3.0wt%以下であることが好ましい。
【0055】
本明細書において「穀物糖化液固形分中の灰分量」は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。例えば、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル(文部科学省発行)の直接灰化法により穀物糖化液中の灰分量を測定することができ、下記式から穀物糖化液固形分中の灰分量を求めることができる。
穀物糖化液中の灰分量/穀物糖化液中の固形分量×穀物糖化液全体量
【0056】
穀物糖化液固形分中の脂質量は、1.0wt%以上であることが好ましく、5.0wt%以上であることが特に好ましい。一方、穀物糖化液固形分中の脂質量は、例えば10.0wt%以下であり、7.0wt%以下であることが好ましい。
【0057】
本明細書において「穀物糖化液固形分中の脂質量」は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。例えば、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル(文部科学省発行)のエーテル抽出法により穀物糖化液中の脂質量を測定することができ、下記式から穀物糖化液固形分中の脂質量を求めることができる。
穀物糖化液中の脂質量/穀物糖化液中の固形分量×穀物糖化液全体量
【0058】
穀物糖化液中の不溶性成分の平均粒径は、70μm以下であることが好ましく、65μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。穀物糖化液は、食物繊維を含む場合、穀物糖化液中の粒度分布を調整することが好ましい。上記特定した範囲の平均粒径を有する不溶性成分は、ざらつきが少なく、通液性に優れる穀物糖化液を提供する観点から好ましい。穀物糖化液中の不溶性成分の平均粒径の下限値は、特に制限されるものではないが、例えば30μm以上であり、50μm以上であることが好ましく、55μm以上であることがより好ましい。
【0059】
穀物糖化液は、粒径200μm以下の不溶性成分の割合が、穀物糖化液中の不溶性成分の全量に基づき85%以上であることが好ましく、97%以上であることが特に好ましい。粒径200μm以下の不溶性成分の割合が85%以上であれば、穀物糖化液由来のざらつきを軽減することができる。粒径200μm以下の不溶性成分の割合の上限値は、特に制限されるものではなく、例えば、粒径200μm以下の不溶性成分の割合を穀物糖化液中の不溶性成分の全量に基づき100%とすることも可能である。
【0060】
穀物糖化液は、粒径300μm以上の不溶性成分の割合が、穀物糖化液中の不溶性成分の全量に基づき5.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。粒径300μm以上の不溶性成分の割合が5.0%以下であれば、通液性を向上でき、例えば飲料製造ラインで一般的に使用される60メッシュに通液することが可能であり、不溶性成分を除去せずに飲料の製造に使用可能である。粒径300μm以上の不溶性成分の割合の下限値は、特に制限されるものではなく、例えば、粒径300μm以上の不溶性成分の割合を穀物糖化液中の不溶性成分の全量に基づき0.0%とすることも可能である。
【0061】
穀物糖化液は、通液性の観点から、粒径600μm以上の不溶性成分の割合が、穀物糖化液中の不溶性成分の全量に基づき0.10%以下であることが好ましく、粒径600μm以上の不溶性成分が存在しないことが特に好ましい。
【0062】
本明細書において「穀物糖化液中の不溶性成分」とは、穀物糖化液を構成する成分のうち糖化液中で溶解していない成分であり、粒度分布の測定対象となる成分である。「穀物糖化液中の不溶性成分」は、主として不溶性食物繊維から構成される。
【0063】
本明細書において「穀物糖化液中の不溶性成分の平均粒径」は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により測定した粒度分布から求めることができる。また、特定の粒径範囲を有する不溶性成分の割合もレーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により体積基準で測定した粒度分布から求めることができる。マイクロトラック法の粒度分布は、非球状の物質にレーザーを当てて散乱される光を一定角度毎に検出・演算処理することにより、球に近似した粒径とその頻度を求めるものである。上記のとおり、本発明において、粒子(不溶性成分や後述の穀物粉)の割合は体積基準とする。
【0064】
穀物糖化液中の不溶性成分の粒度分布は、例えば、穀物糖化液の製造過程においてホモゲナイザー処理を行うことで調整することができる。ホモゲナイザー処理は、糖化液中に含まれる不溶性食物繊維をせん断により微細化することが可能であり、所望の粒度分布に調整することができるものの、ホモゲナイザーは、通常、大型の装置であるため、費用や設置スペースの観点からホモゲナイザーを使用しない手法が好ましい場合もある。この場合は、粒度分布が調整された穀物粉を原材料として用いることで、所望の粒度分布を有する糖化液を得ることが好ましい。
【0065】
穀物糖化液の原材料である穀物粉は、平均粒径が70μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。原料の穀物粉の平均粒径の下限値は、例えば、1μm以上である。また、原料の穀物粉は、粒径200μm以下の割合が80%以上でかつ粒径500μm以上の割合が1.0%以下である粒度分布を有することが好ましい。ここで、穀物粉中の粒径200μm以下の割合は、95%以上であることが特に好ましく、その上限値に制限はなく、例えば100vol%とすることも可能である。穀物粉中の粒径500μm以上の割合は、0.5%以下であることが特に好ましく、その下限値に制限はなく、例えば0.0%とすることも可能である。
【0066】
本明細書において、穀物粉の平均粒径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により測定した粒度分布から求めることができる。また、特定の粒径範囲を有する穀物粉の割合もレーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により体積基準で測定した粒度分布から求めることができる。マイクロトラック法の粒度分布は、非球状の物質にレーザーを当てて散乱される光を一定角度毎に検出・演算処理することにより、球に近似した粒径とその頻度を求めるものである。
【0067】
穀物糖化液は、Brixが、例えば15.0~25.0である。Brixとは、可溶性固形分濃度(%)のことであり、本明細書においては、糖化液の20℃における屈折率を測定し、ICUMSA(International Commission for Uniform Methods of Sugar Analysis)提供の換算表に基づいて、純蔗糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値のことである。例えば、糖化液を濃縮や希釈するときの濃度を調整するためにBrixが測定される。Brixは、既に知られている公知の測定法を適宜用いて測定することができ、一般的には市販の糖度計(例えば、デジタル屈折計 商品名「RX-5000α」(アタゴ社製))を用いて測定することができる。
【0068】
穀物糖化液は、25℃におけるpHが、例えば3.5~7.0であり、好ましくは4.5~6.5である。本明細書において、糖化液のpHは、公知の測定法を適宜用いて測定される。一例としては、市販のpH測定器(例えば、卓上型pHメータ 型式:F-74(HORIBA社製)を用いて測定することができる。
【0069】
次に、穀物糖化液の製造方法について説明する。穀物糖化液の製造方法は、原材料として穀物を用い、穀物から糖化液を製造する方法である。
【0070】
穀物糖化液の製造方法は、液化工程および糖化工程を含み、典型的には、液化工程の前に仕込み工程が行われることが好ましい。一実施形態において、穀物糖化液の製造方法は、仕込み工程、液化工程および糖化工程を含む。穀物糖化液の製造方法では、少なくとも液化工程および糖化工程を経て、原材料である穀物から糖化液を製造することができる。上述のとおり、穀物糖化液の主な原材料は、穀物および水である。
【0071】
1.仕込み工程
穀物糖化液の製造方法の典型的な実施形態においては、粉砕処理した穀物を原材料として用い、当該穀物の粉砕物を純水等の水媒体と混合して仕込み液を得る。その際の穀物と水媒体の割合は、所望する糖類の割合に応じて適宜選択することが可能である。一例としては、穀物と水の合計に対する穀物の割合が10~50wt%、好ましくは15~40wt%、より好ましくは20~30wt%となるように純水等の水媒体の量が調整される。
【0072】
原材料としての穀物がβ-グルカンを多く含む穀物(オーツ麦、大麦など)である場合、液化工程を行う前に、水溶性食物繊維であるβ-グルカンをβ-グルカン分解酵素(例えば、商品名「Finizym250L」(ノボザイムズジャパン社製))により酵素分解を行うことも多い。しかしながら、穀物糖化液の製造方法の好ましい実施形態においては、水溶性食物繊維の含有量が高い穀物糖化液を得るために、仕込み液に対してβ-グルカンの酵素分解を行わずに液化工程を行うことが好ましい。仕込み液に対してβ-グルカンの酵素分解を行うと、ざらつきを感じる傾向が確認されたが、これは、β-グルカンの酵素分解により、液の粘度が低下し、粒子が明確に感じられるようになったためと推測される。
【0073】
2.液化工程
上記仕込み液中に含まれるデンプンの糖鎖を切断して、低分子化された糖類を含む液化液を得るために、液化工程を実施する。当該工程は、仕込み液に液化酵素を添加することで行われる。液化工程時において、仕込み液中における穀物の濃度は、歩留まり等を考慮して、5~35wt%であることが好ましく、15~25wt%であることが特に好ましい。なお、仕込み工程が行われない穀物糖化液の製造方法の一実施形態では、仕込み液を予め調製するのではなく、原材料を反応槽に投入して反応槽中で仕込み液が調製される。
【0074】
液化工程においては、液化酵素の至適pHの範囲から、仕込み液のpHは、3.5~7.0であることが好ましく、4.5~6.5であることが特に好ましい。なお、一般的な仕込み液であれば3.5~7.0の範囲内のpHを示すので、当該仕込み液のpHを敢えて調整しなくても液化反応を進行させることができる。また、穀物糖化液の製造方法の一実施形態では、後述の糖化工程の前に液化液のpH調整を行わなくてもよい。すなわち、糖化工程で用いる糖化酵素の多くもpH3.5~7.0の範囲内に至適pHを有するので、液化工程と糖化工程のpH条件を同等の範囲に設定し得る。よって、得られた液化液のpHを糖化工程のために改めて調整し直さなくてもよい。したがって、穀物糖化液の製造方法の特に好適な実施形態では、仕込み工程から糖化工程までpHの調整を全く行わなくてもよいので、穀物糖化液の製造を更に簡素化ができる。
【0075】
液化酵素としては、至適pHが3.5~7.0、特には4.5~6.5であり且つデンプン等の糖鎖を切断して低分子の糖類に分解することができるものであれば、いずれのものも好適に利用でき、中でもα-アミラーゼ(EC3.2.1.1)が好ましい。また、耐熱性が高い酵素が好ましく、その具体例として、商品名「クライスターゼSD8」、商品名「クライスターゼT10S」(以上、天野エンザイム社製)、商品名「ターマミルSC」(ノボザイムズジャパン社製)、商品名「スピターゼHK」(長瀬産業社製)等が挙げられる。更に、穀物糖化液の製造方法の好ましい実施形態においては、液化酵素は、β-グルカナーゼ活性度が0~80%であることが好ましく、0~40%であることがより好ましく、0~20%であることが更に好ましく、0~10%であることが特に好ましい。β-グルカナーゼ活性度の低い液化酵素を用いると、特に原料としてβ-グルカンを多く含む穀物(オーツ麦、大麦など)を用いる場合に、水溶性食物繊維の含有量が高い穀物糖化液を得ることができる。β-グルカナーゼ活性度の測定方法の詳細については後述する。
【0076】
液化酵素の添加量は、JIS K7001:1990により測定した1液化力単位(JLU)を1unitとした場合に、原材料である穀物1gに対して、例えば1unit~150unit、好ましくは10unit~100unit、より好ましくは20unit~70unitである。1unit以上であれば、液化反応は十分に進み、150unit以下であれば経済的である。
【0077】
液化工程における反応温度および反応時間は、添加する液化酵素の種類によって適宜調整することが可能である。一例として、65℃~120℃の反応温度、好ましくは80℃~110℃の反応温度であって、0.01時間~24時間の反応時間、好ましくは0.1時間~12時間の反応時間、より好ましくは0.1時間~2時間の反応時間とすることが可能である。
【0078】
穀物中には、デンプンに働いて液化するα-アミラーゼ、デキストリンに働いてオリゴ糖を生成するデキストリナーゼ、β-グルカン等の多糖類に作用する酵素等の内在性酵素が存在する。これら内在性酵素が働くと、場合により、上述したような好適な成分の損失につながり得る。したがって、液化工程においては内在性酵素を働かせないことが好ましい一態様であり得る。
【0079】
この目的のために、穀物糖化液の製造方法の好適な一実施形態では、仕込み液を上述の反応温度範囲に昇温した後に液化酵素を加え、反応中も上述の反応温度範囲内に維持し、そのような温度域で液化反応を行うことができる。
【0080】
また、穀物糖化液の製造方法の一実施形態においては、仕込み液をできるだけ速やかに上述の反応温度範囲に昇温することで、原材料の内在性酵素を失活させて、その働きを可能な限り抑制することが好ましい。例えば、仕込み液を速やかに昇温して、少なくとも5分以内、好ましくは1分以内、より好ましくは10秒以内に、原材料の内在性酵素が働く温度域を通過させることが好ましい。このような急速な昇温が可能な装置として、仕込み液に直接スチームジェットを当て、瞬時に加熱・ミキシングすることが可能なジェットクッカーを用いることができる。そのようなジェットクッカーとして、商品名「ノリタケクッカー・スチームミキサー」(ノリタケ社製)、商品名「ジェットクッカー」(ハイドロサーマル社)等が市販されており、本実施形態でも使用することができる。また、高圧下でミキシングにより、添加した液化酵素を十分に作用させることもできる。
【0081】
なお、穀物糖化液の製造方法の別の実施形態においては、上記ジェットクッカーによる液化反応後の液化液を、例えばバッチタンク内で、液化酵素に最適な温度域に維持して、更に液化反応を熟成させることも可能である。
【0082】
また、液化反応後の液化液は、適宜必要に応じて、珪藻土等を助剤とする濾過を行い、適宜不純物を除去してもよい。
【0083】
3.糖化工程
上記液化液中の低分子化された糖類を更に分解して、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類等を含む糖化液を得るために、糖化工程を実施する。当該工程は、液化液に糖化酵素を添加することで行われる。
【0084】
糖化酵素の例として、β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)や糖化型α-アミラーゼ(EC3.2.1.1)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)、プルラナーゼ(ECEC3.2.1.41)、トランスグルコシダーゼ(EC3.2.1.20)、グルカナーゼ(EC3.2.1.6)等を挙げることができる。これらの酵素は単独でも使用できるが、複数の酵素を組み合わせて使用することも好ましい。糖化酵素は、市販のものでもよく、具体例としては、β-アミラーゼとして、商品名「β-アミラーゼL/R」(ナガセケムテックス社製)、商品名「β-アミラーゼFアマノ」(天野エンザイム社製)、商品名「ハイマルトシンGL」(エイチビィアイ社製)等が挙げられ、糖化型α-アミラーゼとして、商品名「ファンガミル」(ノボザイムズ社製)等が挙げられ、グルコアミラーゼとして、商品名「グルコチーム#20000」、商品名「デナチームGSA/R」(以上、長瀬産業社製);商品名「グルクザイムAF6」(天野エンザイム社製);商品名「スミチーム」(新日本化学工業社製);商品名「グルターゼAN」(エイチビィアイ社製);商品名「AMG」(ノボザイムズジャパン社製);商品名「AMG300L」(ノボザイムズジャパン社製);商品名「GODO-ANGH」(合同酒精社製);および商品名「ユニアーゼ30」(ヤクルト薬品工業社製)等が挙げられる。また、市販のプルラナーゼとしては、商品名「プルラナーゼ「アマノ」3」(天野エンザイム社製)等が挙げられ、トランスグルコシダーゼとしては、商品名「トランスグルコシダーゼL「アマノ」」(天野エンザイム社製)、商品名「トランスグルコシダーゼL-500」(ジェネンコア社製)等が挙げられ、グルカナーゼとして商品名「Finizym250L」(ノボザイムズジャパン社製)等が挙げられる。これらの酵素は、概ね、pH3.5~7.0で活性を示し、pH4.5~6.5の至適pHを有している。
【0085】
更に、穀物糖化液の製造方法の好ましい実施形態において、糖化酵素は、β-グルカナーゼ活性度が0~80%であることが好ましく、0~40%であることがより好ましく、0~20%であることが更に好ましく、0~10%であることが特に好ましい。β-グルカナーゼ活性度の低い糖化酵素を用いると、特に原料としてβ-グルカンを多く含む穀物(オーツ麦、大麦等)を用いる場合に、水溶性食物繊維の含有量が高い穀物糖化液を得ることができる。糖化工程において複数の糖化酵素を組み合わせて用いる場合には、それぞれの糖化酵素のβ-グルカナーゼ活性度が上記特定した範囲内にあることが好ましいものの、そのうちの一部の糖化酵素のβ-グルカナーゼ活性度が低い場合であっても、β-グルカンの分解を抑えることが可能である。例えば、複数の糖化酵素のうちの一つの糖化酵素のβ-グルカナーゼ活性度が0~10%であれば、β-グルカンの分解を十分に抑えることも可能である。
【0086】
<β-グルカナーゼ活性度の測定方法>
本明細書において、糖化酵素および液化酵素についてのβ-グルカナーゼ活性度は、次の方法により測定される。
β-グルカンの標準を5mg/mlとなるよう純水で溶解して、β-グルカン溶液を作製する。なお、以下の表1に示すデータでは、シグマ社製の大麦由来のβ-グルカンを用いてβ-グルカン溶液を作製した。
酵素サンプルは、純水で10mg/mlとなるよう希釈する。β-グルカン溶液と希釈した酵素サンプルを試験管内で混ぜて、60℃恒温槽に3時間インキュベーションした後、氷冷する。コンゴレッド法(栃木農試研報、No47、57-64、1998年)により、溶液中の分子量105以上のβ-グルカン濃度を測定する。酵素サンプルのかわりに、純水で同様の操作を行ったものをブランクとする。以下の表1には、一部の液化酵素および糖化酵素についてのβ-グルカナーゼ活性度を示す。
β-グルカナーゼ活性度は、次式より求められる。
β-グルカナーゼ活性度(%)=(1-B/B0)×100
B=酵素サンプル希釈液の場合でのβ-グルカン濃度
B0=ブランクの場合でのβ-グルカン濃度
【0087】
【0088】
糖化酵素の添加量は、pH4.5で40℃、30分間、アミロースに添加して反応させた結果グルコースを1mg生産する酵素量を1unitとした場合に、原材料である穀物1gに対して、例えば10unit~1000unit、好ましくは20unit~900unit、より好ましくは500unit~700unitである。1000unit以下であれば不快な風味を抑制でき、10unit以上であれば、糖化反応は十分に進む。
【0089】
糖化工程における反応温度および反応時間は、添加する糖化酵素の種類によって適宜調整することが可能である。一例として、30℃~65℃の反応温度、好ましくは40℃~65℃の反応温度、より好ましくは45℃~65℃の反応温度であって、1時間~24時間の反応時間、好ましくは1.5時間~10時間の反応時間、より好ましくは2時間~4時間とすることが可能である。
【0090】
なお、穀物糖化液の製造方法においては、糖化工程の際に、所望に応じてプロテアーゼやリパーゼ等の他の酵素を一緒に添加してもよい。
【0091】
穀物糖化液の製造方法の一実施形態においては、糖化液に対してホモゲナイザー処理を行うことができる。これにより、糖化液中に含まれる不溶性食物繊維がせん断により微細化され、所望の粒度分布に調整することができる。ホモゲナイザーによる処理条件は、不溶性食物繊維の微細化により糖化液を食したときの舌触りをなめらかにすることが可能であれば、特に制限されるものではなく、処理圧力として、例えば5MPa以上、好ましくは10MPa以上である。一方、処理圧力としては、典型的には90MPa以下であり、20MPa以下であることが好ましい。ホモゲナイザーは、市販のものを使用でき、例えば、商品名「ホモゲナイザーH20型」(三和エンジニアリング社製)等が挙げられる。
【0092】
糖化液は、適宜必要に応じて、珪藻土等を助剤とする濾過を行い、適宜不純物を除去してもよい。
【0093】
穀物糖化液の製造方法の一実施形態は、ろ過処理を用いない穀物糖化液の製造方法であることが好ましい。本明細書において「ろ過処理を用いない穀物糖化液の製造方法」とは、穀物を含む原料の液化工程(液化工程の前に仕込む工程を行う場合は仕込み工程)から穀物糖化液の製造が完了するまでの間にろ過処理が行われない製造方法を意味する。ろ過処理は、液化工程や糖化工程の前後で行われる場合があるが、栄養成分を多く含む糖化液を提供する観点からは、ろ過処理を用いないことが好ましい。例えば、上述のような粒度分布を有する穀物粉を原材料としたり、または糖化液に対してホモゲナイザー処理を行ったりすることで、ろ過処理を行わずに、粒度分布が制御された穀物糖化液の製造方法を実現することが可能である。
【0094】
穀物糖化液の製造方法の一実施形態は、ホモゲナイザー処理を用いない穀物糖化液の製造方法であることが好ましい。本明細書において「ホモゲナイザー処理を用いない穀物糖化液の製造方法」とは、穀物を含む原材料の液化工程(液化工程の前に仕込む工程を行う場合は仕込み工程)から穀物糖化液の製造が完了するまでの間にホモゲナイザー処理が行われない製造方法を意味する。費用や設置スペースの観点からホモゲナイザーを使用しないことが望ましい場合もある。例えば、上述のような粒度分布を有する穀物粉を原材料とすることで、ホモゲナイザー処理を行わずに、粒度分布が制御された穀物糖化液の製造方法を実現することが可能である。
【実施例0095】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
1.穀物糖化液およびオーツミルク
実施例または比較例で用いたオーツ麦糖化液およびオーツミルクは、以下のとおりである。
【0097】
・オーツ麦糖化液A
オーツ麦粉砕物と水の混合物から液化工程および糖化工程を経て得られた穀物糖化液である。オーツ麦糖化液Aは、固形分量が43.5wt%、穀物糖化液固形分中の不溶性食物繊維量が1.2wt%、穀物糖化液固形分中の水溶性食物繊維量が5.6wt%、穀物糖化液中の糖類全体に対するイソマルトオリゴ糖の割合が17.9wt%、穀物糖化液中の不溶性成分の平均粒径が32μm、Brixが約40であった。
【0098】
・オーツ麦糖化液B
オーツ麦糖化液Aに対して珪藻土を助剤とする濾過が行われた穀物糖化液である。オーツ麦糖化液Bは、固形分量が38.9wt%、穀物糖化液固形分中の不溶性食物繊維量が0wt%、穀物糖化液固形分中の水溶性食物繊維量が1.4wt%、穀物糖化液中の糖類全体に対するイソマルトオリゴ糖の割合が21.7wt%、穀物糖化液中の不溶性成分の平均粒径が0.6μm、Brixが約40であった。
【0099】
・オーツ麦糖化液C
オーツ麦粉砕物と水の混合物から液化工程および糖化工程を経て得られた穀物糖化液である。オーツ麦糖化液Cは、固形分量が22.4wt%、穀物糖化液固形分中の不溶性食物繊維量が5.3wt%、穀物糖化液固形分中の水溶性食物繊維量が1.4wt%、穀物糖化液中の糖類全体に対するイソマルトオリゴ糖の割合が10.0wt%、穀物糖化液中の不溶性成分の平均粒径が92μm、Brixが約20であった。オーツ麦糖化液Cは、その製造過程において粒度管理を行っていないため、オーツ麦糖化液Aと比べて不溶性成分の平均粒径が高い。
【0100】
・オーツミルク
アルプロ社製のオーツミルク(砂糖不使用)である。このオーツミルクは、固形分量が11.0wt%、不溶性成分の平均粒径が2.1μm、Brixが約10であった。原材料の表記から、固形分中の食物繊維の総量は1.2wt%であると思われる。
【0101】
2.アイスクリームの代替食品
・製造例
鍋にオーツ麦糖化液もしくはオーツミルク、水、グラニュー糖(三井製糖製)を加え攪拌しながら加熱しグラニュー糖を溶解させた。次に植物油脂(ミヨシ油脂製MF215)、増粘剤(ユニテックフーズ製ローカストビーンガム、DSP五協フード&ケミカル製キサンタンガム)を加え攪拌しながら溶解させた。得られた混合液を攪拌しながら冷却した。冷却された混合液をアイスクリームメーカーで攪拌しながら冷凍させることで、アイスクリームの代替食品(氷菓)を作った。
原材料の配合処方(質量部)を表2に示す。表中の「収量」には、得られたアイスクリームの代替食品(氷菓)の量(質量部)が示され、「オーツ固形分含有率(%)」には、得られたアイスクリームの代替食品(氷菓)中に含まれるオーツ麦糖化液またはオーツミルク由来の固形分の含有率(wt%)が示される。
【0102】
【0103】
・評価
得られた氷菓を食した際の風味および滑らかさについて、成人パネリスト5名による官能試験を行った。風味については、オーツ麦の風味(オーツ風味)を感じるか否かの二択とした。滑らかさについては、ざらつきを感じるか否かの二択とした。オーツ風味を感じると回答した人数、ざらつきを感じないと回答した人数を表3に示す。
【0104】
【0105】
表3から、実施例の氷菓は、比較例と比較してオーツ風味に優れる食品であることが分かる。また、実施例1-1の氷菓は、栄養分を多く含むオーツ麦糖化液Aを用いた食品であるが、オーツ麦糖化液A中の不溶性成分の粒径が制御されているため、オーツ風味と滑らかさの両立が可能であった。
【0106】
3.餡
・製造例
鍋にオーツ麦糖化液もしくはオーツミルク、水、グラニュー糖(三井製糖製)を入れ、攪拌しながら加熱しグラニュー糖を溶解させた。次に白生あん(星製餡所製)を少量ずつ加え均一になるよう攪拌した。食塩を加え適正な硬さになるまで(Brix65±2程度になるまで)煮詰めて、餡を作った。
原材料の配合処方(質量部)を表4に示す。表中の「収量」には、得られた餡の量(質量部)が示され、「Brix」には、得られた餡のBrixが示され、「オーツ固形分含有率(%)」には、得られた餡中に含まれるオーツ麦糖化液またはオーツミルク由来の固形分の含有率(wt%)が示される。
【0107】
【0108】
・評価
得られた餡を食した際の風味および滑らかさについて、成人パネリスト3名による官能試験を行った。風味については、オーツ麦の風味(オーツ風味)を感じるか否かの二択とした。オーツ風味を感じると回答した人数を表5に示す。
また、得られた餡100g当たりの栄養価を算出した。結果を表6に示す。エネルギーの単位はkcalであり、その他の項目の単位はgである。
【0109】
【0110】
【0111】
表5から、実施例の餡は、Brixが同程度である比較例2-2の餡と比較してもオーツ風味に優れる食品であることが分かる。また、比較例2-1の餡は一般的な白あんであるが、実施例の餡は、添加物を使用することなく同等のカロリーでたんぱく質や食物繊維等の栄養価を高めることができる。なお、比較例2-2の餡に用いた市販のオーツミルクにはイヌリンが添加されている。
【0112】
4.シフォンケーキ
・製造例
ボウルにオーツ麦糖化液、卵黄、サラダ油を入れミキサーで均一になるまで混ぜ、そこにふるった薄力粉を加え粘りが出るまで混ぜて生地を準備した。別のボウルに卵白、グラニュー糖、コーンスターチを入れ泡立て、固めのメレンゲを作った。生地とメレンゲを混ぜ合わせた後、シフォン型に入れ160℃のオーブンで30分間焼成し、シフォンケーキを作った。
原材料の配合処方(質量部)を表7に示す。表中の「収量」には、得られたシフォンケーキの量(質量部)が示され、「オーツ固形分含有率(%)」には、得られたシフォンケーキ中に含まれるオーツ麦糖化液由来の固形分の含有率(wt%)が示される。
【0113】
【0114】
・評価
得られたシフォンケーキを食した際の風味およびざらつきについて成人パネリスト4名による官能試験を実施した。風味については、オーツ麦の風味(オーツ風味)を感じるか否かの二択とした。滑らかさについては、ざらつきを感じるか否かの二択とした。オーツ麦の風味(オーツ風味)を感じると回答した人数、ざらつきを感じないと回答した人数を表8に示す。
また、焼成時の生地のふくらみおよび得られたシフォンケーキ断面のキメ(気泡の均一性)について目視で確認した。ふくらみについては、適正なふくらみを「〇」、ふくらみがやや不足している場合を「△」とし、キメについては、気泡が均一である場合を「〇」、気泡がやや不均一である場合を「△」として、それぞれの評価を行った。結果を表8に示す。
【0115】
【0116】
実施例はいずれもシフォンケーキとして問題のないものであったが、実施例3-1のシフォンケーキの方が、オーツ風味、ふくらみ、キメの評価が優れていた。
【0117】
5.ヨーグルトの代替食品
・製造例
オーツ麦糖化液もしくはオーツミルク、水を混合し乳酸菌種菌(中垣技術士事務所製)を加え、40℃で10時間発酵させた。得られた発酵物に寒天(タイショーテクノス製)およびグラニュー糖(三井製糖製)を加え、攪拌しながら溶解させ、容器に充填して冷やし固めることで、ヨーグルトの代替食品を作った。
原材料の配合処方(質量部)を表9に示す。表中の「収量」には、得られたヨーグルトの代替食品の量(質量部)が示され、「オーツ固形分含有率(%)」には、得られたヨーグルトの代替食品中に含まれるオーツ麦糖化液またはオーツミルク由来の固形分の含有率(wt%)が示される。
【0118】
【0119】
・評価
得られたヨーグルトの代替食品を食した際の酸味、甘味、風味および滑らかさについて、成人パネリスト3名による官能試験を表10に示される評価基準に従い行った。
表10において、酸味および甘さは、ヨーグルトの代替食品としてのスコアであり、「0」が最も良い点数である。オーツ風味および滑らかさについても「0」が最も良い結果となるような評価基準となっている。パネリストの合計点を表11に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
実施例は、酸味および甘味の点で、いずれもヨーグルトの代替食品として問題のないものであった。また、実施例4-1は、不溶性成分の粒径が制御されたオーツ麦糖化液を用いたことで滑らかさも優れており、ヨーグルトの代替食品としてより好適であることが分かる。
【0123】
6.プリンの代替食品
・製造例
オーツ糖化液もしくはオーツミルク、水、糖類(三井製糖製グラニュー糖、群栄化学工業製ピュアトースL)を鍋に入れ攪拌しながら加熱し糖類を溶解させた。さらに植物油脂(タカナシ製植物性ホイップ)、ゲル化剤(伊那食品工業製イナアガーF)を加え均一に溶解させ後、得られた混合液を容器に充填して冷やし固めることで、プリンの代替食品を作った。
原材料の配合処方(質量部)を表12に示す。表中の「収量」には、得られたプリンの代替食品の量(質量部)が示され、「オーツ固形分含有率(%)」には、得られたプリンの代替食品中に含まれるオーツ麦糖化液またはオーツミルク由来の固形分の含有率(wt%)が示される。
【0124】
【0125】
・評価
得られたプリンの代替食品を食した際の風味および滑らかさについて、成人パネリスト4名による官能試験を行った。風味については、オーツ麦の風味(オーツ風味)を感じるか否かの二択とした。滑らかさについては、ざらつきを感じるか否かの二択とした。オーツ風味を感じると回答した人数、ざらつきを感じないと回答した人数を表13に示す。
【0126】
【0127】
表13から、実施例のプリンの代替食品は、比較例と比べてオーツ風味に優れる食品であることが分かる。また、実施例5-1は、栄養分を多く含むオーツ麦糖化液Aを用いた食品であるが、オーツ麦糖化液A中の不溶性成分の粒径が制御されているため、オーツ風味と滑らかさの両立が可能であった。
【0128】
7.オーツミルク
・製造例
オーツ麦糖化液、水を混合して80℃以上に加熱した。そこに植物油脂(日清オイリオ製ひまわり油)、安定剤(DSP五協フード&ケミカル製キサンタンガム)、食塩を加えホモミキサーで混合した。その後、ホモジナイズ処理を行うことでオーツミルク飲料を作った。比較例は、市販のオーツミルクそのものである。
原材料の配合処方(質量部)を表14に示す。表中の「収量」には、得られたオーツミルクまたは市販のオーツミルクの量(質量部)が示され、「オーツ固形分含有率(%)」には、得られたオーツミルク中に含まれるオーツ麦糖化液由来の固形分の含有率(wt%)が示され、「Brix」には、得られたオーツミルクまたは市販のオーツミルクのBrixが示される。
【0129】
【0130】
・評価
得られたオーツミルクおよび市販のオーツミルクを食した際の風味および滑らかさについて、成人パネリスト5名による官能試験を行った。風味については、オーツ麦の風味(オーツ風味)を感じるか否かの二択とした。滑らかさについては、ざらつきを感じるか否かの二択とした。オーツ風味を感じると回答した人数、ざらつきを感じないと回答した人数を表15に示す。
【0131】
【0132】
表15から、実施例のオーツミルクは、比較例である市販のオーツミルクと比べてオーツ風味に優れる食品であることが分かる。また、実施例6-1は、栄養分を多く含むオーツ麦糖化液Aを用いた食品であるが、オーツ麦糖化液A中の不溶性成分の粒径が制御されているため、オーツ風味と滑らかさの両立が可能であった。
【0133】
8.パン
・製造例
ホームベーカリーに表16に示される原材料を投入し生地を作製した(1次発酵まで行った)。50gずつ生地を分け成形した後、15分寝かし、40℃で40分間2次発酵させた。その後、180℃のオーブンで15分焼成させることで、パンを作ることができた。原材料の配合処方(質量部)を表16に示す。
【0134】
【0135】
9.パスタソース
・製造例
フライパンにニンニク、パーム油を入れ火にかけ香りを出した後、玉ねぎ、マッシュルーム、大豆ミートをいれさらに炒めた。玉ねぎに火が通ったら、オーツ麦糖化液またはオーツミルク、水、植物性ブイヨン、加工澱粉、食塩を入れ、とろみが出るまで加熱した。最後に植物性シュレッドチーズを加え均一になるように混ぜて、パスタソースを作った。原材料の配合処方(質量部)を表17に示す。
【0136】
【0137】
・評価
得られたパスタソースに汎用的なスパゲティ麺を加えて試食を行い、風味、コク味および甘味について官能試験を実施した。風味については、オーツ麦の風味(オーツ風味)が感じられる場合を「〇」、オーツ風味が弱い場合を「△」とし、コク味については、コクが強い場合を「〇」、コクが弱い場合を「△」とし、甘味については、甘味が感じられる場合を「〇」、甘味を感じるが弱い場合を「△」として、評価を行った。結果を表18に示す。
【0138】
【0139】
実施例8-1は、コク味および甘味の点で、パスタ用クリームソースの代替食品として問題のないものであった。また、実施例8-1は、比較例と比べてオーツ風味に優れる食品であることが分かる。
【0140】
10.マヨネーズの代替食品
・製造例
オーツ麦糖化液、穀物酢(タマノイ酢製)、レモン汁をボウルに入れて混合した後、あらかじめ混合しておいたグラニュー糖(三井製糖製)、粉からし(エスビー食品製)、食塩、こしょう(エスビー食品製)および増粘剤類(ユニテックフーズ製ローカストビーンガム、DSP五協フード&ケミカル製キサンタンガム)を少量ずつ攪拌しながら加えた。最後にキャノーラ油(日清オイリオ製)を加え、ハンドブレンダーで乳化するまで攪拌することで、マヨネーズの代替食品を作ることができた。原材料の配合処方(質量部)を表19に示す。
【0141】
【0142】
11.カスタードクリームの代替食品
・製造例
オーツ麦糖化液と水を混ぜ、希釈液を作製した。鍋にグラニュー糖(三井製糖製)、米粉、粉寒天、食塩を計り入れ軽く混ぜ、予め作製しておいたオーツ麦糖化液希釈液を少しずつ加えながら、ダマにならないように混ぜた。パーム油、ブランデーを加え火にかけ、混ぜながらとろみが出るまで加熱し、最後にバニラオイルを加えて、カスタードクリームの代替食品を作ることができた。原材料の配合処方(質量部)を表20に示す。
【0143】