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特開2023-64897生花類を用いた装飾額の製造方法及び装飾額用土台
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064897
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】生花類を用いた装飾額の製造方法及び装飾額用土台
(51)【国際特許分類】
   A47G 1/06 20060101AFI20230502BHJP
   A47G 7/04 20060101ALI20230502BHJP
   B44C 5/04 20060101ALI20230502BHJP
   A47G 7/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A47G1/06 J
A47G1/06 K
A47G7/04 Z
B44C5/04 B
B44C5/04 E
A47G7/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175332
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】320011188
【氏名又は名称】株式会社花の千正園
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 敦
【テーマコード(参考)】
3B111
【Fターム(参考)】
3B111BA03
3B111BA04
3B111BA06
3B111BB06
3B111BD01
3B111BD04
3B111BE01
(57)【要約】
【課題】生花類を用いた装飾額における高度な装飾性の要望を満足させる。
【解決手段】プロジェクタPJTを用いて正面から投影した画像に基づき、装飾額用土台10の吸水スポンジ80に対して、人物画のポイントとなる目、鼻、口、眉、顔の輪郭、首もと、額の生え際、頭髪の輪郭、洋服の襟などの境界線に、吸水スポンジに対してほぼ直角となる様にPIN1,PIN2を刺す。PIN1,PIN2を目印に、茎の長さに長短を持たせるなどして鼻の高さや小鼻の張り具合などを立体的に表現する様に同色・複数品種の花を刺し、頭髪にはフェニックスロベレニーの葉を用い、順次、洋服やアクセサリなどを小さな花で描き、仕上げとして、人物画の周囲を葉や百合の花などで装飾する。上下方向複数段のセルに吸水させたスポンジを嵌め込んであるので、水やりなしでも、生花類の瑞々しさを保った装飾額を長期間楽しむことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水スポンジを備える装飾額用土台に生花類を刺すことによって人物等の描画対象を描くと共に当該描画対象の周囲を生花類で装飾した装飾額を製造するための方法であって、以下の構成を採用したことを特徴とする生花類を用いた装飾額の製造方法。
(1A)前記装飾額用土台に対して前記描画対象の画像情報を重ね合わせた上で、少なくとも前記描画対象と前記周囲との境界線に沿って当該装飾額用土台に備えられた前記吸水スポンジに対するピン打ちを実行すること。
(1B)前記ピン打ちを終えた後、前記装飾額用土台から前記描画対象の画像情報を取り除くこと。
(1C)前記描画対象の画像情報を取り除いた前記装飾額用土台の前記吸水スポンジに対して、前記ピン打ちした境界線の内側に生花類を刺すことにより、前記描画対象を生花類にて描画すること。
(1D)前記描画対象を生花類にて描画した後、当該描画対象の周囲の吸水スポンジに対して生花類を刺して装飾を行うこと。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも採用したことを特徴とする請求項1に記載の生花類を用いた装飾額の製造方法。
(2A)前記境界線に沿ったピン打ちは、前記吸水スポンジに対してほぼ直角となる様にこれを実行すること。
(2B)前記ピンの一部を前記描画対象の一部として視認可能に残しつつ生花類を刺すことにより、前記描画対象を生花類にて描画すること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも採用したことを特徴とする請求項1又は2に記載の生花類を用いた装飾額の製造方法。
(3A)前記描画対象が人物画であるときは、前記境界線の内側の頭髪、眉、目、鼻、口等に対応する境界線に沿ったピン打ちを実行すること。
(3B)前記描画対象物と周囲との境界線に沿ったピン打ち、及び前記境界線の内側の頭髪、眉、目、鼻、口等に対応する境界線に沿ったピン打ちに際しては、仕上がりにおいてピンの色を活かし、又はピンの色を隠す様に、ピンの色を変更すること。
(3C)前記人物画の顔の部分については、鼻の高さ、小鼻の膨らみ、ほうれい線を表現する様に、前記吸水スポンジに対して刺す生花類の茎の長さに長短を持たせること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも採用したことを特徴とする請求項3に記載の生花類を用いた装飾額の製造方法。
(4)前記人物画の顔の部分には同色・複数品種の花を適所に刺すことによって顔の色味を表現し、前記人物画の頭髪には多数の線状の小葉からなる羽状複葉を正面視において部分的に重なり合う様に刺すことによってヘアスタイルを表現すること。
【請求項5】
さらに、以下の構成をも採用したことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の生花類を用いた装飾額の製造方法。
(5)プロジェクタを用いて前記装飾額用土台に対して画像情報を投影することにより、前記装飾額用土台に対して前記描画対象の画像情報を重ね合わせ、前記プロジェクタによる画像情報の投影を停止することにより、前記描画対象の画像情報の取り除きを実行すること。
【請求項6】
生花類を刺すことのできる吸水スポンジを備え、生花類を用いて人物等の描画対象を描くのに適する装飾額用土台であって、以下の構成を採用したことを特徴とする装飾額用土台。
(6A)台車部と、フレーム部とからなり、前記台車部に対して前記フレーム部が全体として後傾した状態となる様に取り付けられていること。
(6B)前記台車部は、下部構造体と、前記下部構造体の上に載置固定されるフレーム支持体とを備えていること。
(6C)前記下部構造体は、開閉栓によって開閉可能な水抜き穴を備える底板の周囲に垂直壁を備えるバットと、前記バットの底面に備えられた複数個のキャスタとを備えていること。
(6D)前記フレーム支持体は、前記バットの前記垂直壁の内側に収まる底部枠と、前記底部枠に対して直立した状態に取り付けられる直立枠と、前記直立枠の上端部と前記底部枠の後端部とを連結するステー部材とを備え、前記バットの上面に対して前記底部枠の底面が当接した状態で、前記直立枠と前記バットとの間に隙間が形成された状態となる様に載置固定されていること。
(6E)前記フレーム部は、フレームと、前記フレームに対して上下方向に複数段となる様に取り付けられ、内側に前記吸水スポンジを嵌め込まれる複数個のセルとを備え、背面側を前記直立枠に固定されると共に、下端が前記直立枠より前側において前記バットの内側に収容され下端前側をストッパ部材で位置決めすることによって前記後傾した状態に取り付けられていること。
【請求項7】
さらに、以下の構成をも採用したことを特徴とする請求項6に記載の装飾額用土台。
(7A)前記吸水スポンジとしてレンガサイズの吸水スポンジを厚さ半分にしたものを用い、前記セルは前記吸水スポンジの厚さに対応する深さを有すると共に、前記厚さ半分のレンガサイズの吸水スポンジを横長状態で上下2段で横方向に複数列となる様に並べて嵌め込んだときに当該吸水スポンジの収縮と復元とによって上下左右から嵌め込まれた吸水スポンジを保持し得る内側寸法を有する横長の長方形バットで構成されていること。
(7B)前記フレームは、縦長長方形の枠部材と、前記枠部材の背面側に取り付けた桁部材とを備え、前記枠部材の左右の縦枠には、左右で対となるネジ挿通穴が複数段貫通されていること。
(7C)前記セルを構成する前記長方形バットの左右の端近くには、前記フレームの枠部材に左右で対となる様に貫通されたネジ挿通穴に対応するセル側ネジ挿通穴が貫通され、各セルは、上下方向に接する様に前記フレームに対してネジ止め固定されていること。
【請求項8】
さらに、以下の構成をも採用したことを特徴とする請求項6又は7に記載の装飾額用土台。
(8)前記キャスタはストッパ付きであること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生花類を用いた装飾額の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、 生花類を用いた装飾額の提案がなされている(特許文献1,2等)。
【0003】
特許文献1は、吸水性スポンジの一面を外部に露出される窓部を中央に具備したを壁掛け用生花保持具を、特許文献2は周囲に花を飾れる様にした額縁を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3773251号(図1図3
【特許文献2】特許第3299247号(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の提案は額縁内の写真等の周囲を生花で装飾するに留まり、特許文献1の提案は壁掛け式の生け花鑑賞技術に留まるものであり、例えば、「生花によって人物画を描く」といった高度な装飾性を求める要望には応えることができない。
【0006】
そこで、本発明は、生花類を用いた装飾額における高度な装飾性の要望を満足させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の生花類を用いた装飾額の製造方法は、吸水スポンジを備える装飾額用土台に生花類を刺すことによって人物等の描画対象を描くと共に当該描画対象の周囲を生花類で装飾した装飾額を製造するための方法であって、以下の構成を採用したことを特徴とする。
(1A)前記装飾額用土台に対して前記描画対象の画像情報を重ね合わせた上で、少なくとも前記描画対象と前記周囲との境界線に沿って当該装飾額用土台に備えられた前記吸水スポンジに対するピン打ちを実行すること。
(1B)前記ピン打ちを終えた後、前記装飾額用土台から前記描画対象の画像情報を取り除くこと。
(1C)前記描画対象の画像情報を取り除いた前記装飾額用土台の前記吸水スポンジに対して、前記ピン打ちした境界線の内側に生花類を刺すことにより、前記描画対象を生花類にて描画すること。
(1D)前記描画対象を生花類にて描画した後、当該描画対象の周囲の吸水スポンジに対して生花類を刺して装飾を行うこと。
【0008】
本発明の生花類を用いた装飾額の製造方法によれば、装飾額用土台にに対して描画対象の画像情報を重ね合わせた上で、少なくとも描画対象と周囲との境界線に沿って当該装飾額用土台に備えられた吸水スポンジに対するピン打ちを実行し、元となる画像の主要部分を特定する。こうしてピン打ちを終えた後、装飾額用土台から描画対象の画像情報を取り除くことにより、吸水スポンジに対してピンによって描画対象の輪郭線などを認識できる状態となる。こうして描画対象の画像情報を取り除いた装飾額用土台の吸水スポンジに対して、ピン打ちした境界線の内側に生花類を刺すことにより、描画対象を生花類にて描画した後、当該描画対象の周囲の吸水スポンジに対して生花類を刺して装飾を行う。この結果、後述実施例の様に、生花類で人物画等を描くと共に、その周囲をさらに生花類で装飾した高度な装飾性を備える装飾額を製造することができる。
【0009】
ここで、本発明の生花類を用いた装飾額の製造方法は、さらに、以下の構成をも採用した方法とすることができる。
(2A)前記境界線に沿ったピン打ちは、前記吸水スポンジに対してほぼ直角となる様にこれを実行すること。
(2B)前記ピンの一部を前記描画対象の一部として視認可能に残しつつ生花類を刺すことにより、前記描画対象を生花類にて描画すること。
【0010】
かかる手順をも採用した装飾額の製造方法によれば、ピンを単に境界線を示す役割だけでなく、生花類を吸水スポンジに刺す際、ピンの一部を描画対象の一部として視認可能に残すことにより、例えば、人物画の影の表現などに活かしつつ立体的な装飾額を生花類を用いて製造することができる。なお、吸水スポンジにほぼ直角となる様にピン打ちをするのは、後述の本発明の装飾額用土台に対してプロジェクタ画像を投影させた状態において人物画の目、鼻、口等の各パーツの比率を歪ませ難いという利点による。
【0011】
これら本発明の生花類を用いた装飾額の製造方法は、さらに、以下の構成をも採用した方法とすることができる。
(3A)前記描画対象が人物画であるときは、前記境界線の内側の頭髪、眉、目、鼻、口等に対応する境界線に沿ったピン打ちを実行すること。
(3B)前記描画対象物と周囲との境界線に沿ったピン打ち、及び前記境界線の内側の頭髪、眉、目、鼻、口等に対応する境界線に沿ったピン打ちに際しては、仕上がりにおいてピンの色を活かし、又はピンの色を隠す様に、ピンの色を変更すること。
(3C)前記人物画の顔の部分については、鼻の高さ、小鼻の膨らみ、ほうれい線を表現する様に、前記吸水スポンジに対して刺す生花類の茎の長さに長短を持たせること。
【0012】
かかる手順をも採用した装飾額の製造方法によれば、周囲を生花類で装飾した人物画からなる装飾額を生花類を用いて製造することができる。特に、仕上がりにおいてピンの色を活かし、又はピンの色を隠す様に、ピンの色を変更することにより、ピンを有効に活かした装飾額を製造することができる。また、油絵等では表現しきれない立体感を生花類を用いるからこそ表現することができる。
【0013】
ここで、人物画を描画対象とする生花類を用いた装飾額の製造方法は、さらに、以下の構成をも採用した方法とすることができる。
(4)前記人物画の顔の部分には同色・複数品種の花を適所に刺すことによって顔の色味を表現し、前記人物画の頭髪には多数の線状の小葉からなる羽状複葉を正面視において部分的に重なり合う様に刺すことによってヘアスタイルを表現すること。
【0014】
かかる手順をも採用した装飾額の製造方法によれば、顔の表情や顔色などを同色・複数品種の花の混在によって表現でき、多数の線状の小葉からなる羽状複葉(フェニックスロベレニーなど)を正面視において部分的に重なり合う様に刺すことでヘアスタイルをリアルに表現することができる。
【0015】
これら本発明の生花類を用いた装飾額の製造方法は、さらに、以下の構成をも採用した方法とすることができる。
(5)プロジェクタを用いて前記装飾額用土台に対して画像情報を投影することにより、前記装飾額用土台に対して前記描画対象の画像情報を重ね合わせ、前記プロジェクタによる画像情報の投影を停止することにより、前記描画対象の画像情報の取り除きを実行すること。
【0016】
かかる手順をも採用した装飾額の製造方法によれば、人物や愛玩動物の写真などを原画とした装飾額を容易に製造することができる。
【0017】
上記目的を達成するためになされた本発明の装飾額用土台は、生花類を刺すことのできる吸水スポンジを備え、生花類を用いて人物等の描画対象を描くのに適する装飾額用土台であって、以下の構成を採用したことを特徴とする。
(6A)台車部と、フレーム部とからなり、前記台車部に対して前記フレーム部が全体として後傾した状態となる様に取り付けられていること。
(6B)前記台車部は、下部構造体と、前記下部構造体の上に載置固定されるフレーム支持体とを備えていること。
(6C)前記下部構造体は、開閉栓によって開閉可能な水抜き穴を備える底板の周囲に垂直壁を備えるバットと、前記バットの底面に備えられた複数個のキャスタとを備えていること。
(6D)前記フレーム支持体は、前記バットの前記垂直壁の内側に収まる底部枠と、前記底部枠に対して直立した状態に取り付けられる直立枠と、前記直立枠の上端部と前記底部枠の後端部とを連結するステー部材とを備え、前記バットの上面に対して前記底部枠の底面が当接した状態で、前記直立枠と前記バットとの間に隙間が形成された状態となる様に載置固定されていること。
(6E)前記フレーム部は、フレームと、前記フレームに対して上下方向に複数段となる様に取り付けられ、内側に前記吸水スポンジを嵌め込まれる複数個のセルとを備え、背面側を前記直立枠に固定されると共に、下端が前記直立枠より前側において前記バットの内側に収容され下端前側をストッパ部材で位置決めすることによって前記後傾した状態に取り付けられていること。
【0018】
本発明の装飾額用土台によれば、台車部に対して全体として後傾状態となる様に取り付けたフレーム部に備えられた吸水スポンジに対して生花類を刺すことにより、本発明の目的とする生花類を用いた装飾額の製造方法を適確に実施することができる。特に、台車部として、下部構造体と、その上に載置固定されるフレーム支持体とを備え、下部構造体を、開閉栓によって開閉可能な水抜き穴を備える底板の周囲に垂直壁を備えるバットと、その底面に備えられた複数個のキャスタとを備えたものを採用することにより、十分に水を含ませた吸水スポンジから滴下する水滴を台車部の下部構造体のバットで受け止めることによって床面を水で濡らすことなく生花類を吸水スポンジに刺して装飾額を製造することができると共に、完成した装飾額を展示する場所へと容易に移動させることができる。加えて 、台車部のフレーム支持体を、バットの垂直壁の内側に収まる底部枠と、この底部枠に対して直立した状態に取り付けられる直立枠と、この直立枠の上端部と底部枠の後端部とを連結するステー部材とを備え、バットの上面に対して底部枠の底面が当接した状態で、直立枠とバットとの間に隙間が形成された状態となる様に載置固定し、フレーム部として、フレームと、内側に吸水スポンジを嵌め込まれる複数個のセルとを備え、背面側を直立枠に固定されると共に、下端が直立枠より前側において前記バットの内側に収容され下端前側をストッパ部材で位置決めすることによって後傾した状態に取り付けたことにより、フレーム部を安定した状態で支持して生花類による装飾額の製造を行うことができる。特に、吸水スポンジを嵌め込むセルをフレームに対して上下方向に複数段となる様に取り付ける構成とすることで、吸水スポンジに含ませた水はセル毎に保持され、装飾額の全体として吸水スポンジの乾燥を防ぐことができるから、生花類を用いて製造した装飾額を長期間展示しておくことができる。また、製造中及び展示中にバット内に滴下した水は、直立枠とバットとの隙間を介してバット内を流通することができるから、開閉栓を適宜開くことによって排水することもできる。
【0019】
ここで、本発明の装飾額用土台は、さらに、以下の構成をも採用したものとすることができる。
(7A)前記吸水スポンジとしてレンガサイズの吸水スポンジを厚さ半分にしたものを用い、前記セルは前記吸水スポンジの厚さに対応する深さを有すると共に、前記厚さ半分のレンガサイズの吸水スポンジを横長状態で上下2段で横方向に複数列となる様に並べて嵌め込んだときに当該吸水スポンジの収縮と復元とによって上下左右から嵌め込まれた吸水スポンジを保持し得る内側寸法を有する横長の長方形バットで構成されていること。
(7B)前記フレームは、縦長長方形の枠部材と、前記枠部材の背面側に取り付けた桁部材とを備え、前記枠部材の左右の縦枠には、左右で対となるネジ挿通穴が複数段貫通されていること。
(7C)前記セルを構成する前記長方形バットの左右の端近くには、前記フレームの枠部材に左右で対となる様に貫通されたネジ挿通穴に対応するセル側ネジ挿通穴が貫通され、各セルは、上下方向に接する様に前記フレームに対してネジ止め固定されていること。
【0020】
かかる構成をも採用した装飾額用土台によれば、厚さ半分としたレンガサイズの吸水スポンジを横長状態で上下2段で横方向に複数列となる様に並べて嵌め込んだときに当該吸水スポンジの収縮と復元とによって上下左右から嵌め込まれた吸水スポンジを保持し得る内側寸法を有する横長の長方形バットでセルを構成したことにより、市販の吸水スポンジを素材として用いることができ、装飾額全体の重量増加を抑制することができる。また、フレームを構成する枠部材に左右で対となる様に複数段貫通したネジ挿通穴と、これに対応する挿通穴を長方形バットの左右の端近くに貫通したセル側ネジ挿通穴とを利用して、各セルを上下方向に接する様にフレームに対してネジ止め固定する構成を採用したから、広い描画面積を有する装飾額を製造することができる。
【0021】
これら本発明の装飾額用土台は、さらに、以下の構成をも採用したものとすることができる。
(8)前記キャスタはストッパ付きであること。
【0022】
かかる構成をも採用した装飾額用土台によれば、キャスタのストッパを機能させたり解除させることにより、装飾額を製造する時に安定した作業を実現することができ、装飾額を製造場所から展示場所へとスムーズに移動させることができ、装飾額を安定した状態で展示することができる。特に、広い描画面積を有する装飾額において有利な作用を発揮する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生花類を用いた装飾額における高度な装飾性の要望を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1の生花類を用いて人物画を描いた装飾額及び生花類を用いた装飾額を製造するのに適する装飾額用土台を示し、(A)は装飾額の正面図、(B)は装飾額用土台の正面図、(C)は装飾額用土台の側面図である。
図2】実施例1の装飾額用土台の一部を構成する台車部を示し、(A)は分解斜視図、(B)は斜視図である。
図3】実施例1の装飾額用土台の一部を構成するフレーム部を示し、(A)は正面図、(B)はフレームの斜視図、(C)はフレームの断面図、(D)はセルの斜視図、(E)はセルの断面図、(F)は吸水スポンジの斜視図である。
図4】実施例1の装飾額用土台の一部を構成するフレーム部の組立手順を示し、(A)はフレームにセルを取り付ける様子を模した正面図、(B)はフレームにセルを取り付け終えた状態の正面図、(C)はさらに吸水スポンジを取り付ける様子フレを模した正面図、(D)は組み立てを終えたフレーム部の正面図である。
図5】実施例1の装飾額用土台の組立手順を示し、(A)は台車部にフレーム部を取り付ける様子を模した側面図、(B)は組み立てを終えた装飾額用土台の正面図、(C)は組み立てを終えた装飾額用土台の断面図である。
図6】実施例1の生花類を用いて人物画を描いた装飾額の製造方法の作業手順を示す説明図である。
図7】実施例1の生花類を用いて人物画を描いた装飾額を示し、(A)は完成直後の正面図、(B)は5日経過後の正面図である。
図8】他の実施例における装飾額の製造方法を示し、(A1)~(A3)は実施例2としてのサムネイル図柄の装飾額の製造方法を示す説明図、(B1)~(B3)は実施例3としてのダルマ図柄の装飾額の製造方法を示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について実施例で説明する。
【実施例0026】
実施例1は、図1(A)に例示する様な「生花類を用いて人物画を描いた装飾額1」を製造するための方法、及び図1(B),(C)に示す様な「生花類を用いた装飾額を製造するのに適する装飾額用土台10」に関するものである。
【0027】
装飾額用土台10は、キャスタ付きの台車部20と、吸水スポンジ付きのフレーム部50とからなり、台車部20に対してフレーム部50を全体として若干後傾した状態となる様に取り付けたものとして構成される。
【0028】
キャスタ付きの台車部20は、図2(A)に示す様に、矩形のバット31の底面の四隅にキャスタ32,32,…を備えた下部構造体30と、この下部構造体30の上に載置固定されるフレーム支持体40とから構成される。各キャスタ32,32,…はストッパ付きである。バット31は矩形の底板31aの周囲に垂直壁31bが形成されて内部に水を溜めることができるものとなっている。
【0029】
フレーム支持体40は、バット31の垂直壁31bの内側にピタリと収まる底部矩形枠41と、この底部矩形枠41に対してその中央部から直立した状態に取り付けられる直立矩形枠42と、この直立矩形枠42の上端部と底部矩形枠41の後端部とを左右それぞれの側で連結するステー部材43,43とから構成されている。
【0030】
ここで、バット31中央部には水抜き穴33が設けられている。この水抜き穴33は、常には水が漏れない様に開閉栓34で塞がれる。この開閉栓34を開けることにより、任意のタイミングでバット31の水抜きをすることができる。
【0031】
組み立て状態の装飾額用土台10においては、図2(B)に示す様に、バット31の水抜き穴33が直立矩形枠42よりも後方に位置する様にフレーム支持体40が取り付けられる。
【0032】
ここで、バット31の上面に対してフレーム支持体40の底部矩形枠41の底面が当接した状態となるが、直立矩形枠42とバット31との間には、底部矩形枠41の板厚分の隙間が形成された状態となり、この隙間を介して前後方向に水が流通可能となっている。
【0033】
フレーム部50は、図3(A)に示す様に、フレーム60と、セル70と、吸水スポンジ80とからなる。
【0034】
フレーム60は、図3(B),(C)に示す様に、縦長長方形の枠部材61と、枠部材61の背面側に等間隔となる様に取り付けた桁部材62,62,…とからなる。枠部材の左右の縦枠には、等間隔のネジ挿通穴63,63,…が貫通されている。
【0035】
セル70は、図3(D),(E)に示す様に、横長の長方形バット71からなり、左右の端近くにネジ挿通穴72,72が貫通されている。長方形バット71は、横長長方形の底板71aの周囲に前方へ突出する周壁71bが形成されている。
【0036】
吸水スポンジ80は、図3(F)に示す様に、直方体ブロックとなっている。この吸水スポンジ80は、市販のもの(幅×高さ×厚さ=23×11×8cm、保水時の重量約2000g)を半分の厚さに切断したもの(幅×高さ×厚さ=23×11×4cm)である。セル70の周壁71bの深さは、この吸水スポンジ80の厚さに合わせたものとなっている。また、セル70の底板71aの寸法は、吸水スポンジ80を上下2段にして8個嵌め込むことができる幅及び高さとなっている。そして、フレーム60の枠部材61の左右内内の幅はセル70の左右幅と対応させ、吸水スポンジ80の収縮と復元を利用してセル70から脱落することなく嵌め込んだ状態とできる様に構成されている。
【0037】
これらフレーム60、セル70、吸水スポンジ80は、まず、セル70のネジ挿通穴72と枠部材61のネジ挿通穴63とを重ね合わせてネジを通して接合する(図4(A)→図4(B))。こうして7個のセル70をフレーム60に取り付けたら、各セル70に対して吸水させた各8個の吸水スポンジ80を上下2段となる様に嵌め込む(図4(C)→図4(D))。こうしてフレーム部50が完成する。なお、吸水スポンジ80には、セル70に嵌め込み終えた後に吸水させる様にしても構わない。
【0038】
次に、図5(A)に示す様に、台車部20のフレーム支持体40の直立矩形枠42の上端とフレーム部50のフレーム60の裏面の桁部材62の一つとを、連結用金具91とボルト・ナットとを用いて固定すると共に、フレーム60の下端位置を規定するストッパ部材92を台車部20のフレーム支持体40の底部矩形枠41の所定位置にバット31の前縁と平行となる様に取り付ける。こうして、図5(B),(C)に示す様に、「生花類を用いた装飾額を製造するのに適する装飾額用土台10」が完成する。
【0039】
次に、実施例の装飾額用土台10を用いて、「生花類を用いて人物画を描いた装飾額1を製造するための方法」について、図6に基づいて説明する。
【0040】
まず、装飾用土台10のキャスタ32,32,…のストッパを機能させて位置決めを行う。このとき、バット31の水抜き穴33は開閉栓34で塞いでおく。これにより、以下説明する作業を行う間に吸水スポンジ80に吸水させた水が滴下しても床面を濡らすことがない。
【0041】
次に、作業を行う部屋の明かりを落とし、描こうとする人物の画像をプロジェクタPJTを用いて装飾額用土台10の正面から投影する(図6(A))。こうして投影された画像に基づき、装飾額用土台10の吸水スポンジ80に対して、人物画のポイントとなる目、鼻、口、眉、顔の輪郭、首もと、額の生え際、頭髪の輪郭、洋服の襟、などにピン(PIN1,…,PIN2,…)を刺していく(図6(B)→図6(C))。
【0042】
ここで、PIN1は白色系、PIN2は黒色系の素材で製造したものを用いる。例えば、「眉」は上縁を白色系、下縁を黒色系を、「鼻筋」は一方側に白色系、他方側に黒色系を、「頬のほうれい線」は黒色系を、「顎」は外側に白色系、やや内側に黒色系を、「口元」は白色系を、「洋服」の輪郭線は黒色系を、…といった具合に、立体的な人物画における影などの仕上がりを考慮して選択したピンを用いる。
【0043】
なお、PIN1,PIN2は、プロジェクタ画像として投影した人物画の目、鼻、口等の各パーツの比率を歪ませない様に、吸水スポンジ80に対してほぼ直角となる様に刺す(図6(C))。この作業が完了したら、プロジェクタPJTからの画像の投影をやめ、作業を行う部屋を明るくする。
【0044】
次に、目、額、鼻など顔の内部を埋める様に白色のスタンダードカーネーションAを刺していく。瞳や眉は黒色に染めたスプレーカーネーションBを用いる。また、白色のスタンダードカーネーションAは、鼻の高さや小鼻の張り具合などへは茎の長さに長短を持たせ立体的に表現する様に刺していく(図6(D))。特に、鼻、頬、顎の狭所・先端は、それを密に刺していくことで質感を表すことができる。
【0045】
こうして生花類を用いて顔の部分を描き終えたら(図6(E))、首もとや耳にも白色のスタンダードカーネーションAを、洋服には青色に染めたかすみ草Cを、ネックレスは黄色のスプレーカーネーションDを、頭髪部分にはフェニックスロベレニーの葉Eを刺す。フェニックスロベレニーの葉Eは、ヘアスタイルを意識しつつ部分的に重なり合わせることによってボリューム感を表現する(図6(F))。この際、フェニックスロベレニーの葉Eの一部を開き気味にするなどして額に髪の毛が自然に重なるイメージを表現する。なお、頬や額などの濃い影には黒いピンFを使用し、浅い影には黒いピンとかすみ草を密に刺す事により、自然な顔色を表現する。
【0046】
生花類によって人物画の本体を描き終えたら(図6(F))、ハランやモンステラなどの葉Gを人物の周囲に配置する様に刺し、さらに、これらの葉の前に重なりつつ人物を装飾する様にバラの花H、ひまわりの花I、百合の花Jなどを加える(図6(G))。
【0047】
こうして生花類を用いて人物画を描いた装飾額2は、装飾用土台10のキャスタ32,32,…のストッパを解除して、任意の場所へと移動させる(図6(H))。
【0048】
図1(A)に示した「生花類を用いて人物画を描いた装飾額1」も、上述の装飾額2と同様の手順で製造した。この装飾額1について、完成時の様子と5日経過後の様子を図7に示す。図7(A)が完成時の装飾額1であり、図7(B)が5日経過後の装飾額1’である。この間、水やりは一切行わなかった。本実施例の「生花類を用いた装飾額を製造するのに適する装飾額用土台10」を用いることにより、図7(A),(B)に示す通り、途中の水やりを行わなくても、花類の瑞々しさが損なわれることはなかった。
【0049】
なお、装飾額1の製造においても頭髪にはフェニックスロベレニーの葉を用いた。その他、顔や首もとには白色スタンダードカーネーションを、眉や瞳には黒色に染めたスプレーカーネーションを、衣服には青色に染めたかすみ草を、周囲の装飾にはドラセナの葉、バラ、ひまわり、百合などを用いた。
【実施例0050】
実施例2として、図8(A3)に示す様なギフト用としての「生花類を用いてサムネイルを描いた装飾額3」を製造するための方法を説明する。この装飾額3は持ち運び可能なサイズのものであり、水を吸わせた吸水スポンジ100に対して、室内の明かりを落とした状態で投影した画像を参照しつつピンPIN3を刺してサムネイル図柄の輪郭を特定する(図8(A1),(A2))。このとき、本実施例においても、PIN3は、吸水スポンジ100に対してほぼ直角となる様に刺す。この作業が完了したら、プロジェクタからの画像の投影をやめ、作業を行う部屋を明るくする。
【0051】
次に、PIN3で特定した輪郭に沿って白色のスプレーカーネーションを刺し、その後、輪郭の内側を埋める。
【0052】
こうして生花類を用いてサムネイル図柄を描き終えたら、ドラセナの葉、トルコ桔梗、黄色や緑色のスプレーカーネーションなどによってサムネイル図柄の周囲を装飾する(図8(A3))。
【実施例0053】
実施例3として、図8(B3)に示す様なギフト用としての「生花類を用いてダルマを描いた装飾額4」を製造するための方法を説明する。この装飾額4も持ち運び可能なサイズのものであり、水を吸わせた吸水スポンジ110に対して、室内の明かりを落とした状態で投影した画像を参照しつつピンPIN4を刺してダルマ図柄の輪郭を特定する(図8(B1),(B2))。このとき、本実施例においても、PIN4は、吸水スポンジ110に対してほぼ直角となる様に刺す。この作業が完了したら、プロジェクタからの画像の投影をやめ、作業を行う部屋を明るくする。
【0054】
次に、PIN4で特定した輪郭の内側を埋める様に、顔の部分には白色スプレーカーネーションを、目玉、眉、髭の部分には黒色に染めたスプレーカーネーションを、胴体の部分には赤いスプレーカーネーションを刺し、ポンポンスプレーマムでダルマ図柄の周囲を装飾する(図8(B3))。
【0055】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内においてさらに種々の形態で実施することができる。
【0056】
例えば、実施例2,3においては、画像を投影する代わりにピンを刺した後に容易に破り取ることが可能な薄紙にサムネイル図柄やダルマ図柄を印刷したものを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
生花類を用いた装飾に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1’,2,3,4・・・装飾額、10・・・装飾額用土台、20・・・台車部、30・・・下部構造体、31・・・バット、31a・・・底板、31b・・・垂直壁、32・・・キャスタ、33・・・水抜き穴、34・・・開閉栓、40・・・フレーム支持体、41・・・底部矩形枠、42・・・直立矩形枠、43・・・ステー部材、50・・・フレーム部、60・・・フレーム、61・・・枠部材、62・・・桁部材、63・・・ネジ挿通穴、70・・・セル、71・・・長方形バット、71a・・・底板、71b・・・周壁、72・・・ネジ挿通穴、80,100,110・・・吸水スポンジ、91・・・連結用金具、92・・・ストッパ部材、PIN1~PIN4・・・ピン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8