(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064910
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B25H 3/00 20060101AFI20230502BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
A62B35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175359
(22)【出願日】2021-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】517294576
【氏名又は名称】田子島屋 正隆
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】田子島屋 正隆
【テーマコード(参考)】
2E184
3C012
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA04
3C012BG01
(57)【要約】
【課題】高所作業において作業工具が抜け落ちる危険を無くす工具ホルダを提供する。
【解決手段】作業工具保持空間部2を有する収納本体部1を、左右方向Mに揺動可能として、水平状軸体4によって、取付片10に、枢着した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から作業工具が収納される工具保持空間部(2)を有する収納本体部(1)と、該収納本体部(1)から上方へ延伸状として連設された吊下げ用舌片(3)とを、一体状に有する工具ホルダ本体(7)と、
他部材(Z)に巻付状に固着される短帯状取付片(10)とを、備え、
上記短帯状取付片(10)に対して、上記工具ホルダ本体(7)を、左右揺動自在として、上記吊下げ用舌片(3)と上記短帯状取付片(10)とを水平状軸体(4)によって、枢結したことを、
特徴とする工具ホルダ。
【請求項2】
上記短帯状取付片(10)は、その裏面(10B)に、上記他部材(Z)を掴持する掴持具(8)を有する請求項1記載の工具ホルダ。
【請求項3】
上記他部材(Z)は、フルハーネス型安全帯(Fs )の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト(21)(21)の身体前面対応ベルト部位(30)である請求項1又は2記載の工具ホルダ。
【請求項4】
上記他部材(Z)は、フルハーネス型安全帯(Fs )の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト(21)(21)の身体前面対応ベルト部位(30)であって、
上記短帯状取付片(10)は、その裏面(10B)に、上記身体前面対応ベルト部位(30)の左右端縁(30E)(30E)を掴持する複数対の掴持具(8)(8)を、有する請求項1記載の工具ホルダ。
【請求項5】
上記掴持具(8)は、上記身体前面対応ベルト部位(30)の左右端縁(30E)(30E)に喰い込む爪部(8A)を有する請求項4記載の工具ホルダ。
【請求項6】
上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト(21)(21)を備えたフルハーネス型安全帯(Fs )に於て、
上記肩掛けベルト(21)の身体前面対応ベルト部位(30)に、
前後方向のかつ水平状の軸心廻りに、揺動自在として、
上方から作業工具が収納される工具ホルダ本体(7)を、
付設したことを特徴とするフルハーネス型安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダ及びフルハーネス型安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等の高所において作業者が作業する際、作業者の墜落防止のためにフルハーネス型安全帯を使用することが、近い将来には、義務付けされることとなった。
フルハーネス型安全帯は、墜落防止時の衝撃荷重を身体の肩、胸、腿等の複数部位に分散させることができて、安全上好ましい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高所作業のために、作業者は、スパナ,ハンマー,ドライバ等の種々の作業工具を必要とするのであるが、従来は、腰ベルトに作業工具挿し具を取着し、ハーネス型安全帯の上から、別途、腰ベルトを(巻付けて)取着せねばならなかった。
【0005】
ハーネス型安全帯自体及びその上に巻付ける腰ベルトは、作業者にとっては、身体の動きが阻害され、いわば“ごわごわ感”を作業者に与えて、作業能率の低下や(安全面では)集中力を低減させる等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決して、高所作業の際に、腰ベルトを別途使用せずに、作業工具を、(落下させる危険もなく)安全に保持しつつ、容易に高所で使用可能とし、しかも、“ごわごわ感”も感じることなく、高所作業を能率良く、集中力も低下させずに安全に作業ができる工具ホルダを提供することを、目的とする。
また、フルハーネス型安全帯としては、腰ベルトを別途付加せずに(高所作業のための)作業工具を、(落下させる危険もなく)安全を確保しつつ、容易に高所で使用可能として、高所作業能率を改善できて、集中力も低下させないようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、上方から作業工具が収納される工具保持空間部を有する収納本体部と、該収納本体部から上方へ延伸状として連設された吊下げ用舌片とを、一体状に有する工具ホルダ本体と;他部材に巻付状に固着される短帯状取付片とを、備え;上記短帯状取付片に対して、上記工具ホルダ本体を、左右揺動自在として、上記吊下げ用舌片と上記短帯状取付片とを水平状軸体によって、枢結した。
【0008】
また、上記短帯状取付片は、その裏面に、上記他部材を掴持する掴持具を有する。
また、上記他部材は、フルハーネス型安全帯の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルトの身体前面対応ベルト部位である。
また、上記他部材は、フルハーネス型安全帯の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルトの身体前面対応ベルト部位であって;上記短帯状取付片は、その裏面に、上記身体前面対応ベルト部位の左右端縁を掴持する複数対の掴持具を、有する。
また、上記掴持具は、上記身体前面対応ベルト部位の左右端縁に喰い込む爪部を有する。
【0009】
また、本発明に係るフルハーネス型安全帯は、上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルトを備えたフルハーネス型安全帯に於て;上記肩掛けベルトの身体前面対応ベルト部位に;前後方向のかつ水平状の軸心廻りに、揺動自在として;上方から作業工具が収納される工具ホルダ本体を;付設した。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る工具ホルダによれば、フルハーネス型安全帯に、簡単かつ確実に取付けることが可能であり、腰ベルトを用いずに済み、作業者の身体の動きを阻害せず、“ごわごわ感”も無く、集中力も高まり、高所作業の能率改善と安全性向上を図り得る。作業工具が抜け落ちる危険も防止できる。
また、本発明のフルハーネス型安全帯は、“ごわごわ感”を作業者に与えずに済み、さらに、作業工具は抜け落ちる危険も防止できる。従って、集中力も高まり、高所作業の能率改善と安全性向上が図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】掴持具の実施例を示す図であって、(A)は開いた状態の断面図であり、(B)は要部拡大説明図である。
【
図5】開いた状態の掴持具とその作用を示した要部拡大断面図である。
【
図6】閉じた状態の掴持具とその作用を示した要部拡大断面図である。
【
図7】
図6の状態から、さらに、短帯状取付片を巻付けた状態を示した要部拡大断面図である。
【
図8】工具ホルダの取付箇所を説明した正面図である。
【
図9】フルハーネス型安全帯の一例と、それに工具ホルダを取付けた状態を説明した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1と
図2に於て、1は、上方から作業工具が収納されて保持される工具保持空間部2を有する収納本体部である。この収納本体部1から上方へ延伸状として、板状の吊下げ用舌片3が一体状に連設されている。
【0013】
即ち、7は工具ホルダ本体であって、収納本体部1と吊下げ用舌片3とを、一体状として、有している。
10は、(後述の)他部材に巻付状に固着される短帯状取付片である。
この短帯状取付片10に対して、工具ホルダ本体7を、矢印Mのように、左右揺動自在として、吊下げ用舌片3と短帯状取付片10とを、(前後方向)水平状軸体4によって、枢結する。
【0014】
水平状軸体4としては、ボルト・ナット結合体としたり、又は、頭付きピンを挿入して先端をカシメにて抜止めしたカシメピン等とする。なお、矢印M方向への左右揺動をスムーズに行うために、一枚又は複数枚の平ワッシャ6を介装するのも好ましい。
【0015】
しかも、
図2に示すように、貫孔付の横長矩形板5を、短帯状取付片10の裏面10Bに接着剤等で固着して、補強するも好ましい。この横長矩形板5の材質は、金属やプラスチックや人工皮革等とする。
【0016】
そして、
図2、及び、
図3~
図7に示すように、短帯状取付片10は、その裏面10Bに、他部材Z(ベルト20)を掴持する掴持具8を複数個(
図2は4個)有する。
具体的には、上記他部材Z(ベルト20)は、
図8と
図9に例示のフルハーネス型安全帯Fs の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21の身体前面対応ベルト部位30である。
【0017】
また、
図2に示す如く、短帯状取付片10は、その裏面10Bに、身体前面対応ベルト部位
30の左右端縁30E,30Eを掴持する(複数対を成す)掴持具8,8を、有する。
また、掴持具8は、身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eに喰い込む(三角形等の)爪部8Aを有する(
図3(B)参照)。
【0018】
図8に示した“星印”が、掴持具8,8が付着される箇所を示している。
なお、“星印”の両方に付着しても、片方のみに付着しても、自由である。上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21を備えたフルハーネス型安全帯Fs に於て、上記肩掛けベルト21の身体前面対応ベルト部位30に、前後方向のかつ水平状の軸心───具体的には、
図1,
図2に示す軸体4の軸心───廻りに、左右揺動自在として、工具ホルダ本体7を、付設している。
【0019】
次に、掴持具8の形状・構造及び作用(作動)について、以下、説明する。
図3~
図7に於て、11は基体であって、短帯状取付片10の裏面10Bにリベットやビス等の固着体12にて固着される。また、基体11は、全体が略浅皿形状であると共に、レバー取付片11Aが上方突出状に有する。13はレバーであり、カム部13Aを基端に有する。また、レバー13の枢着軸部13Cによって、上記レバー取付片11Aに枢着される。
【0020】
また、14は先端に(前述の)爪部8Aを有する板バネ片である。基体11の後方に差込スリットを有する後起立片部11Bを形成して、板バネ片14の基端14Aを、後起立片部11Bの差込みスリットに差込状に取着している。
【0021】
図3に示すように、板バネ片14の前後中間の上面を、レバー13のカム部13Aが非接触の状態では、板バネ片14の先端の爪部8Aは、所定のギャップG
8 を形成している。このギャップG
8 は、
図5に示すように、ベルト20を差込むための間隙である。
【0022】
図4に示すように、レバー13を矢印M
13のように押下げれば、カム部13Aが板バネ片14を下方へ押圧して、爪部8Aが下動して、基体11の前起立片部11Fの内面に近接状となる。即ち、
図5→
図6→
図7と順次示す如く、他部材Zとしてのベルト20を、確実かつ強力に、喰い込んで、掴持できる。
【0023】
また、弾性的に弯曲変形可能な弾性材から成る板バネ片14は、ベルト20の厚さ寸法の大小相違、あるいは、ベルト20の硬さや剛性の大小相違に、対応でき、確実に強力掴持可能である。しかも、ベルト20が、
図6,
図7の紙面に直交方向に、強い引張力が作用した場合にも、爪部8A(
図3(B)参照)によって、引抜け移動を強力阻止できる。
なお、カム部13Aの代りに、レバー13を、一枚の強力な鋼板の板片を、L字状に折曲げ加工して、その(短い方の)折曲片を、板バネ片14に、接触(押圧)するようにするも、望ましい(図示省略)。
【0024】
図3の状態から、
図5のように、掴持具8,8のギャップG
8 へベルト20の左右端縁30E,30Eを、差込む。
具体的に説明すれば、
図3のように板バネ片14の爪部8Aが開いて、ギャップG
8 が形成された状態下で、他部材Zとしてのベルト20───具体的には身体前面対応ベルト部位30(
図8と
図9参照)───を差込むと、
図5の状態となる。
【0025】
次に、
図5から
図6に示す如く、矢印M
13のようにレバー13を指で押圧揺動させると、カム部13Aが板バネ片14を押圧して、爪部8Aがベルト部位30に喰い込む(矢印F
8 参照)。
【0026】
次に、
図7に示すように、短帯状取付片10を巻付けて、固定する。
この固定のための手段としては、
図1と
図2と
図7に示したように、雄面状ファスナ16と雌面状ファスナ17とが、予め取付片10の両端に、貼着又は縫着されている。
【0027】
図7のように、取付片10を巻付けることによって、高所作業中に、不意に他の物体等にレバー13が当って、掴持具8が開放される危険を、防止できる。また、作業者の腕等が掴持具8に当って怪我をすることも防止できる。
【0028】
なお、
図2に示すように、掴持具8の表て面を成すレバー13は、全体に丸味のある凸面状とすることが望ましい。つまり、作業者の指や腕等の怪我を防止し、かつ、不意にレバー13が他の物体に当って開放(リリース)される危険を防止できるからである。
【0029】
図8に於て、肩掛けベルト21の身体前面対応ベルト部位30に対して、
図7の断面平面図のように短帯状取付片10が(巻付状として)固着されると共に、
図1と
図2と
図7を合わせて判断すれば、収納本体部1、及び、その工具収納空間部2に挿入され、又は、その差込まれた作業工具(図示省略)は、軸体4の水平方向の軸心廻りに、左右揺動して、
図9に示す如く、鉛直(上下)方向の姿勢を常に維持できて、作業工具が抜け出て、高所から落下する危険を完全防止できることが、判る。
【0030】
特に、
図8又は
図9に示すように、上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21に対して、本発明に係る工具ホルダを取着したにもかかわらず、収納本体部1及びそれに収納した各種作業工具は、常に、鉛直(上下)方向姿勢を維持できる。従って、フルハーネス型安全帯Fs に、さらに、腰ベルトを巻付ける必要が無くなり、いわゆる“ごわごわ感”を無くすことが可能となって、作業能率が改善し、作業者の集中力も高く維持され、安全性も高まる利点がある。
【0031】
なお、(図示省略するが)フルハーネス型安全帯Fs に対して、工具ホルダ本体7のみを───即ち、短帯状取付片10を省略した状態にて───前後水平状軸体4にて、直接的に、枢着するも、望ましい(設計変更自由である)。なお、本発明における、工具保持空間部2を有する収納本体部1が、(左右幅も大きい)収納袋部を有する形式のものとするも、自由である。
【0032】
本発明は、以上詳述したように、上方から作業工具が収納される工具保持空間部2を有する収納本体部1と、該収納本体部1から上方へ延伸状として連設された吊下げ用舌片3とを、一体状に有する工具ホルダ本体7と;他部材Zに巻付状に固着される短帯状取付片10とを、備え;上記短帯状取付片10に対して、上記工具ホルダ本体7を、左右揺動自在として、上記吊下げ用舌片3と上記短帯状取付片10とを水平状軸体4によって、枢結した構成であるので、他部材Zが、例えばベルトであって、そのベルトが(水平状に限らず)鉛直状や傾斜状であったとしても、工具ホルダ本体7は、重力で常に鉛直状を保って、上方から収納された各種作業工具の抜け出る(抜け落ちる)危険が、確実に防止でき、特に、高所作業用として、安全で使い易い。また、他部材Zに簡単に取付できる。
【0033】
また、上記短帯状取付片10は、その裏面10Bに、上記他部材Zを掴持する掴持具8を有するので、掴持具8によって、他部材Zが鉛直状や傾斜状であっても、さらに、他部材Zが激しく動く部材(用途)であっても、工具ホルダが他部材Zから離脱しないで確実に他部材Zに掴持状に固着される。また、掴持具8の開閉にて、他部材Zへの取付位置の変更・調節も、容易である。
【0034】
また、上記他部材Zは、フルハーネス型安全帯Fs の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21の身体前面対応ベルト部位30であるので、(
図8,
図9からも判るように、)作業工具の取出しと収納を、安全かつ迅速に行うことができる。特に、腰ベルトを、別途、付加せずに済むので、いわゆる“ごわごわ感”を感ずること無く、軽快に身体を動かすことが可能となって、高所作業を能率良く、集中力も低下させずに、安全に作業可能となる。
【0035】
また、上記他部材Zは、フルハーネス型安全帯Fs の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21の身体前面対応ベルト部位30であって;上記短帯状取付片10は、その裏面10Bに、上記身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eを掴持する複数対の掴持具8,8を、有する構成であるので、身体前面対応ベルト部位30が、(
図8,
図9のように)上下鉛直状乃至傾斜状であっても、強固に工具ホルダを固着保持できて、安全性が高い。しかも、作業工具の出し入れ(収納・取出し)が、高所でも容易・安全、かつ、迅速に、行うことが可能である。
【0036】
また、上記掴持具8は、上記身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eに喰い込む爪部8Aを有するので、身体前面対応ベルト部位30が(
図8,
図9のように)上下鉛直状乃至傾斜状であっても、位置ずれすることなく、工具ホルダ本体7を強固に保持する。
【0037】
また、上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21を備えたフルハーネス型安全帯Fs に於て;上記肩掛けベルト21の身体前面対応ベルト部位30に;前後方向のかつ水平状の軸心廻りに、揺動自在として;上方から作業工具が収納される工具ホルダ本体7を;付設したので、作業者にとって、“ごわごわ感”を感ずること無く、軽快に身体を動かして、高所作業を能率良く、集中力を低下させること無く、安全作業を行うことが可能となった。さらに、工具ホルダ本体7は、重力で常に鉛直状を保ち、上方から収納された各種作業工具の抜け出し(抜け落ち)を、防止できる。このようにフルハーネス型安全帯として、高所作業を、一層、安全かつ能率的に行い得る。
【符号の説明】
【0038】
1 収納本体部
2 工具保持空間部
3 吊下げ用舌片
4 水平状軸体
7 工具ホルダ本体
8 掴持具
8A 爪部
10 短帯状取付片
10B 裏面
21 肩掛けベルト
30 身体前面対応ベルト部位
30E 左右端縁
Fs フルハーネス型安全帯
Z 他部材
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から作業工具が収納される工具保持空間部(2)を有する収納本体部(1)と、該収納本体部(1)から上方へ延伸状として連設された吊下げ用舌片(3)とを、一体状に有する工具ホルダ本体(7)と、
他部材(Z)に巻付状に固着される短帯状取付片(10)とを、備え、
上記短帯状取付片(10)に対して、上記工具ホルダ本体(7)を、左右揺動自在として、上記吊下げ用舌片(3)と上記短帯状取付片(10)とを水平状軸体(4)によって、枢結し、
上記短帯状取付片(10)は、その裏面(10B)に、上記他部材(Z)を掴持する掴持具(8)を有することを、
特徴とする工具ホルダ。
【請求項2】
上記他部材(Z)は、フルハーネス型安全帯(Fs )の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト(21)(21)の身体前面対応ベルト部位(30)であって、
上記短帯状取付片(10)は、その裏面(10B)に、上記身体前面対応ベルト部位(30)の左右端縁(30E)(30E)を掴持する複数対の掴持具(8)(8)を、有する請求項1記載の工具ホルダ。
【請求項3】
上記掴持具(8)は、上記身体前面対応ベルト部位(30)の左右端縁(30E)(30E)に喰い込む爪部(8A)を有する請求項2記載の工具ホルダ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等の高所において作業者が作業する際、作業者の墜落防止のためにフルハーネス型安全帯を使用することが、近い将来には、義務付けされることとなった。
フルハーネス型安全帯は、墜落防止時の衝撃荷重を身体の肩、胸、腿等の複数部位に分散させることができて、安全上好ましい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高所作業のために、作業者は、スパナ,ハンマー,ドライバ等の種々の作業工具を必要とするのであるが、従来は、腰ベルトに作業工具挿し具を取着し、ハーネス型安全帯の上から、別途、腰ベルトを(巻付けて)取着せねばならなかった。
【0005】
ハーネス型安全帯自体及びその上に巻付ける腰ベルトは、作業者にとっては、身体の動きが阻害され、いわば“ごわごわ感”を作業者に与えて、作業能率の低下や(安全面では)集中力を低減させる等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決して、高所作業の際に、腰ベルトを別途使用せずに、作業工具を、(落下させる危険もなく)安全に保持しつつ、容易に高所で使用可能とし、しかも、“ごわごわ感”も感じることなく、高所作業を能率良く、集中力も低下させずに安全に作業ができる工具ホルダを提供することを、目的とする。
また、フルハーネス型安全帯としては、腰ベルトを別途付加せずに(高所作業のための)作業工具を、(落下させる危険もなく)安全を確保しつつ、容易に高所で使用可能として、高所作業能率を改善できて、集中力も低下させないようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、上方から作業工具が収納される工具保持空間部を有する収納本体部と、該収納本体部から上方へ延伸状として連設された吊下げ用舌片とを、一体状に有する工具ホルダ本体と;他部材に巻付状に固着される短帯状取付片とを、備え;上記短帯状取付片に対して、上記工具ホルダ本体を、左右揺動自在として、上記吊下げ用舌片と上記短帯状取付片とを水平状軸体によって、枢結し、上記短帯状取付片は、その裏面に、上記他部材を掴持する掴持具を有する。
また、上記他部材は、フルハーネス型安全帯の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルトの身体前面対応ベルト部位であって;上記短帯状取付片は、その裏面に、上記身体前面対応ベルト部位の左右端縁を掴持する複数対の掴持具を、有する。
また、上記掴持具は、上記身体前面対応ベルト部位の左右端縁に喰い込む爪部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る工具ホルダによれば、フルハーネス型安全帯に、簡単かつ確実に取付けることが可能であり、腰ベルトを用いずに済み、作業者の身体の動きを阻害せず、“ごわごわ感”も無く、集中力も高まり、高所作業の能率改善と安全性向上を図り得る。作業工具が抜け落ちる危険も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】掴持具の実施例を示す図であって、(A)は開いた状態の断面図であり、(B)は要部拡大説明図である。
【
図5】開いた状態の掴持具とその作用を示した要部拡大断面図である。
【
図6】閉じた状態の掴持具とその作用を示した要部拡大断面図である。
【
図7】
図6の状態から、さらに、短帯状取付片を巻付けた状態を示した要部拡大断面図である。
【
図8】工具ホルダの取付箇所を説明した正面図である。
【
図9】フルハーネス型安全帯の一例と、それに工具ホルダを取付けた状態を説明した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1と
図2に於て、1は、上方から作業工具が収納されて保持される工具保持空間部2を有する収納本体部である。この収納本体部1から上方へ延伸状として、板状の吊下げ用舌片3が一体状に連設されている。
【0011】
即ち、7は工具ホルダ本体であって、収納本体部1と吊下げ用舌片3とを、一体状として、有している。
10は、(後述の)他部材に巻付状に固着される短帯状取付片である。
この短帯状取付片10に対して、工具ホルダ本体7を、矢印Mのように、左右揺動自在として、吊下げ用舌片3と短帯状取付片10とを、(前後方向)水平状軸体4によって、枢結する。
【0012】
水平状軸体4としては、ボルト・ナット結合体としたり、又は、頭付きピンを挿入して先端をカシメにて抜止めしたカシメピン等とする。なお、矢印M方向への左右揺動をスムーズに行うために、一枚又は複数枚の平ワッシャ6を介装するのも好ましい。
【0013】
しかも、
図2に示すように、貫孔付の横長矩形板5を、短帯状取付片10の裏面10Bに接着剤等で固着して、補強するも好ましい。この横長矩形板5の材質は、金属やプラスチックや人工皮革等とする。
【0014】
そして、
図2、及び、
図3~
図7に示すように、短帯状取付片10は、その裏面10Bに、他部材Z(ベルト20)を掴持する掴持具8を複数個(
図2は4個)有する。
具体的には、上記他部材Z(ベルト20)は、
図8と
図9に例示のフルハーネス型安全帯Fs の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21の身体前面対応ベルト部位30である。
【0015】
また、
図2に示す如く、短帯状取付片10は、その裏面10Bに、身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eを掴持する(複数対を成す)掴持具8,8を、有する。
また、掴持具8は、身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eに喰い込む(三角形等の)爪部8Aを有する(
図3(B)参照)。
【0016】
図8に示した“星印”が、掴持具8,8が付着される箇所を示している。
なお、“星印”の両方に付着しても、片方のみに付着しても、自由である。上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21を備えたフルハーネス型安全帯Fs に於て、上記肩掛けベルト21の身体前面対応ベルト部位30に、前後方向のかつ水平状の軸心───具体的には、
図1,
図2に示す軸体4の軸心───廻りに、左右揺動自在として、工具ホルダ本体7を、付設している。
【0017】
次に、掴持具8の形状・構造及び作用(作動)について、以下、説明する。
図3~
図7に於て、11は基体であって、短帯状取付片10の裏面10Bにリベットやビス等の固着体12にて固着される。また、基体11は、全体が略浅皿形状であると共に、レバー取付片11Aが上方突出状に有する。13はレバーであり、カム部13Aを基端に有する。また、レバー13の枢着軸部13Cによって、上記レバー取付片11Aに枢着される。
【0018】
また、14は先端に(前述の)爪部8Aを有する板バネ片である。基体11の後方に差込スリットを有する後起立片部11Bを形成して、板バネ片14の基端14Aを、後起立片部11Bの差込みスリットに差込状に取着している。
【0019】
図3に示すように、板バネ片14の前後中間の上面を、レバー13のカム部13Aが非接触の状態では、板バネ片14の先端の爪部8Aは、所定のギャップG
8 を形成している。このギャップG
8 は、
図5に示すように、ベルト20を差込むための間隙である。
【0020】
図4に示すように、レバー13を矢印M
13のように押下げれば、カム部13Aが板バネ片14を下方へ押圧して、爪部8Aが下動して、基体11の前起立片部11Fの内面に近接状となる。即ち、
図5→
図6→
図7と順次示す如く、他部材Zとしてのベルト20を、確実かつ強力に、喰い込んで、掴持できる。
【0021】
また、弾性的に弯曲変形可能な弾性材から成る板バネ片14は、ベルト20の厚さ寸法の大小相違、あるいは、ベルト20の硬さや剛性の大小相違に、対応でき、確実に強力掴持可能である。しかも、ベルト20が、
図6,
図7の紙面に直交方向に、強い引張力が作用した場合にも、爪部8A(
図3(B)参照)によって、引抜け移動を強力阻止できる。
なお、カム部13Aの代りに、レバー13を、一枚の強力な鋼板の板片を、L字状に折曲げ加工して、その(短い方の)折曲片を、板バネ片14に、接触(押圧)するようにするも、望ましい(図示省略)。
【0022】
図3の状態から、
図5のように、掴持具8,8のギャップG
8 へベルト20の左右端縁30E,30Eを、差込む。
具体的に説明すれば、
図3のように板バネ片14の爪部8Aが開いて、ギャップG
8 が形成された状態下で、他部材Zとしてのベルト20───具体的には身体前面対応ベルト部位30(
図8と
図9参照)───を差込むと、
図5の状態となる。
【0023】
次に、
図5から
図6に示す如く、矢印M
13のようにレバー13を指で押圧揺動させると、カム部13Aが板バネ片14を押圧して、爪部8Aがベルト部位30に喰い込む(矢印F
8 参照)。
【0024】
次に、
図7に示すように、短帯状取付片10を巻付けて、固定する。
この固定のための手段としては、
図1と
図2と
図7に示したように、雄面状ファスナ16と雌面状ファスナ17とが、予め取付片10の両端に、貼着又は縫着されている。
【0025】
図7のように、取付片10を巻付けることによって、高所作業中に、不意に他の物体等にレバー13が当って、掴持具8が開放される危険を、防止できる。また、作業者の腕等が掴持具8に当って怪我をすることも防止できる。
【0026】
なお、
図2に示すように、掴持具8の表て面を成すレバー13は、全体に丸味のある凸面状とすることが望ましい。つまり、作業者の指や腕等の怪我を防止し、かつ、不意にレバー13が他の物体に当って開放(リリース)される危険を防止できるからである。
【0027】
図8に於て、肩掛けベルト21の身体前面対応ベルト部位30に対して、
図7の断面平面図のように短帯状取付片10が(巻付状として)固着されると共に、
図1と
図2と
図7を合わせて判断すれば、収納本体部1、及び、その工具収納空間部2に挿入され、又は、その差込まれた作業工具(図示省略)は、軸体4の水平方向の軸心廻りに、左右揺動して、
図9に示す如く、鉛直(上下)方向の姿勢を常に維持できて、作業工具が抜け出て、高所から落下する危険を完全防止できることが、判る。
【0028】
特に、
図8又は
図9に示すように、上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21に対して、本発明に係る工具ホルダを取着したにもかかわらず、収納本体部1及びそれに収納した各種作業工具は、常に、鉛直(上下)方向姿勢を維持できる。従って、フルハーネス型安全帯Fs に、さらに、腰ベルトを巻付ける必要が無くなり、いわゆる“ごわごわ感”を無くすことが可能となって、作業能率が改善し、作業者の集中力も高く維持され、安全性も高まる利点がある。
【0029】
なお、(図示省略するが)フルハーネス型安全帯Fs に対して、工具ホルダ本体7のみを───即ち、短帯状取付片10を省略した状態にて───前後水平状軸体4にて、直接的に、枢着するも、望ましい(設計変更自由である)。なお、本発明における、工具保持空間部2を有する収納本体部1が、(左右幅も大きい)収納袋部を有する形式のものとするも、自由である。
【0030】
本発明は、以上詳述したように、上方から作業工具が収納される工具保持空間部2を有する収納本体部1と、該収納本体部1から上方へ延伸状として連設された吊下げ用舌片3とを、一体状に有する工具ホルダ本体7と;他部材Zに巻付状に固着される短帯状取付片10とを、備え;上記短帯状取付片10に対して、上記工具ホルダ本体7を、左右揺動自在として、上記吊下げ用舌片3と上記短帯状取付片10とを水平状軸体4によって、枢結した構成であるので、他部材Zが、例えばベルトであって、そのベルトが(水平状に限らず)鉛直状や傾斜状であったとしても、工具ホルダ本体7は、重力で常に鉛直状を保って、上方から収納された各種作業工具の抜け出る(抜け落ちる)危険が、確実に防止でき、特に、高所作業用として、安全で使い易い。また、他部材Zに簡単に取付できる。
【0031】
また、上記短帯状取付片10は、その裏面10Bに、上記他部材Zを掴持する掴持具8を有するので、掴持具8によって、他部材Zが鉛直状や傾斜状であっても、さらに、他部材Zが激しく動く部材(用途)であっても、工具ホルダが他部材Zから離脱しないで確実に他部材Zに掴持状に固着される。また、掴持具8の開閉にて、他部材Zへの取付位置の変更・調節も、容易である。
【0032】
また、上記他部材Zは、フルハーネス型安全帯Fs の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21の身体前面対応ベルト部位30であるので、(
図8,
図9からも判るように、)作業工具の取出しと収納を、安全かつ迅速に行うことができる。特に、腰ベルトを、別途、付加せずに済むので、いわゆる“ごわごわ感”を感ずること無く、軽快に身体を動かすことが可能となって、高所作業を能率良く、集中力も低下させずに、安全に作業可能となる。
【0033】
また、上記他部材Zは、フルハーネス型安全帯Fs の上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21の身体前面対応ベルト部位30であって;上記短帯状取付片10は、その裏面10Bに、上記身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eを掴持する複数対の掴持具8,8を、有する構成であるので、身体前面対応ベルト部位30が、(
図8,
図9のように)上下鉛直状乃至傾斜状であっても、強固に工具ホルダを固着保持できて、安全性が高い。しかも、作業工具の出し入れ(収納・取出し)が、高所でも容易・安全、かつ、迅速に、行うことが可能である。
【0034】
また、上記掴持具8は、上記身体前面対応ベルト部位30の左右端縁30E,30Eに喰い込む爪部8Aを有するので、身体前面対応ベルト部位30が(
図8,
図9のように)上下鉛直状乃至傾斜状であっても、位置ずれすることなく、工具ホルダ本体7を強固に保持する。
【0035】
また、上下鉛直状乃至傾斜状の肩掛けベルト21,21を備えたフルハーネス型安全帯Fs に於て;上記肩掛けベルト21の身体前面対応ベルト部位30に;前後方向のかつ水平状の軸心廻りに、揺動自在として;上方から作業工具が収納される工具ホルダ本体7を;付設したので、作業者にとって、“ごわごわ感”を感ずること無く、軽快に身体を動かして、高所作業を能率良く、集中力を低下させること無く、安全作業を行うことが可能となった。さらに、工具ホルダ本体7は、重力で常に鉛直状を保ち、上方から収納された各種作業工具の抜け出し(抜け落ち)を、防止できる。このようにフルハーネス型安全帯として、高所作業を、一層、安全かつ能率的に行い得る。
【符号の説明】
【0036】
1 収納本体部
2 工具保持空間部
3 吊下げ用舌片
4 水平状軸体
7 工具ホルダ本体
8 掴持具
8A 爪部
10 短帯状取付片
10B 裏面
21 肩掛けベルト
30 身体前面対応ベルト部位
30E 左右端縁
Fs フルハーネス型安全帯
Z 他部材