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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064935
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】トノカバー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175404
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】下平 敦司
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA03
3D022BB04
3D022BC10
(57)【要約】
【課題】巻取機構とホルダとの間で、がたつきによる異音の発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】トノカバー装置20は、車両の荷室を覆うトノカバーと、トノカバーの基端部が取付けられた巻取シャフトと、トノカバーを巻取及び引出し可能なように、巻取シャフトをトノカバーの巻取り方向に付勢した状態で、巻取シャフトの両端部を回転可能に支持する巻取機構40と、巻取機構40の少なくとも一方の端部に、その長手方向に沿ってスライド可能に外装され、巻取機構40の長手方向外側に向けて付勢されているホルダ60と、ホルダ60の内周面と巻取機構40の前記少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、内周面と外周面とを互いに離反する方向に付勢する付勢部材70とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室を覆うトノカバーと、
前記トノカバーの基端部が取付けられた巻取シャフトと、
前記トノカバーを巻取及び引出し可能なように、前記巻取シャフトを前記トノカバーの巻取り方向に付勢した状態で、前記巻取シャフトの両端部を回転可能に支持する巻取機構と、
前記巻取機構の少なくとも一方の端部に、その長手方向に沿ってスライド可能に外装され、前記巻取機構の長手方向外側に向けて付勢されているホルダと、
前記ホルダの内周面と前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、前記内周面と前記外周面とを互いに離反する方向に付勢する付勢部材と、
を備えるトノカバー装置。
【請求項2】
請求項1記載のトノカバー装置であって、
前記付勢部材は、前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の前記外周面における一定位置に支持された基端を有するバネ部を含み、
前記バネ部は、前記基端から前記巻取機構の長手方向中央に向うにつれて前記外周面から離れる形状に形成されている、トノカバー装置。
【請求項3】
請求項2記載のトノカバー装置であって、
前記ホルダの前記内周面が、当接面と突出面とを有する段差形成面を含み、
前記当接面は、前記ホルダの奥と開口との間に位置し前記奥側に向く面であり、
前記突出面は、前記当接面よりも前記開口側に広がり、前記当接面よりも前記奥側に広がる面よりも前記外周面に向って突出している面である、トノカバー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のトノカバー装置であって、
前記巻取機構は、前記巻取シャフト及び前記巻取シャフトに巻取られた前記トノカバーを収容可能な筒状のケーシングを含み、
前記ケーシングには、前記トノカバーの引出し及び巻取を可能にするカバー用開口が前記ケーシングの長手方向に沿って形成され、
前記付勢部材は、前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面において、前記カバー用開口を避けて設けられている、トノカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、車両の荷室を覆うためのトノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トノカバーを巻取る巻取軸と、前記巻取軸を内部に収容する長尺状のケースと、前記ケースの一端部及び他端部に設けられ、前記巻取軸を回転可能に支持する支持部材と、前記ケースの一端部及び他端部の少なくとも何れか一方に設けられると共に、前記支持部材を覆う外壁部を有し、組付位置から前記巻取軸の軸線方向内側へ移動可能に保持された保持部材と、前記支持部材及び前記保持部材に設けられると共に、前記外壁部に対して内側に配置され、前記組付位置において互いに当接することで前記保持部材の前記組付位置から前記巻取軸の軸線方向外側への移動を阻止する阻止部と、を備えたトノカバー装置を開示している。
【0003】
阻止部の例として、支持部材としての内カバーに形成された長孔の側面と、保持部材としての外カバーに形成されたフックとが記載されている。特許文献1では、フックが長孔内に収容されており、フックが長孔の側面に当接することで、保持部材の移動が阻止される。
【0004】
特許文献2には、巻取シャフトのための支持部材と、その支持部材の少なくとも一端部に支持部材の軸線方向へ移動可能に保持されるエンドキャップと、支持部材に対するエンドキャップの軸方向への移動を制限する制限装置とを備えた装置を開示している。制限装置は、エンドキャップに設けられた第1の制限要素と、支持部材に設けられた第2の制限要素とが相互に作用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-148614号公報
【特許文献2】DE102018209413A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、阻止部は、保持部材が組付位置から巻取軸の軸線方向外側へ移動することを阻止する。特許文献1において、阻止部は、巻取軸に直交する方向における保持部材の移動を規制しない。
【0007】
このため、特許文献1において、保持部材と支持部材との間に隙間が生じた場合、保持部材が支持部材の長手方向に直交する方向にがたつき、振動による異音が発生する可能性がある。
【0008】
特許文献2においても、制限装置は、支持部材に対するエンドキャップの軸方向への移動を制限するだけであり、特許文献1と同様に、支持部材とエンドキャップとの間で振動による異音が発生する可能性がある。
【0009】
そこで、本開示は、巻取機構とホルダとの間で、がたつきによる異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、トノカバー装置は、車両の荷室を覆うトノカバーと、前記トノカバーの基端部が取付けられた巻取シャフトと、前記トノカバーを巻取及び引出し可能なように、前記巻取シャフトを前記トノカバーの巻取り方向に付勢した状態で、前記巻取シャフトの両端部を回転可能に支持する巻取機構と、前記巻取機構の少なくとも一方の端部に、その長手方向に沿ってスライド可能に外装され、前記巻取機構の長手方向外側に向けて付勢されているホルダと、前記ホルダの内周面と前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、前記内周面と前記外周面とを互いに離反する方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
このトノカバー装置によると、巻取機構とホルダとの間で、がたつきによる異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はトノカバー装置が車両に組込まれた状態を示す説明図である。
図2図2はトノカバー装置を示す斜視図である。
図3図3はトノカバー装置を示す分解斜視図である。
図4図4は巻取支持装置の端部を示す斜視図である。
図5図5は巻取支持装置の端部の分解斜視図である。
図6図6は付勢部材を示す斜視図である。
図7図7は巻取支持装置の端部においてホルダを省略した状態を示す斜視図である。
図8図8図4のVIII-VIII線断面図である。
図9図9図4のIX-IX線断面図である。
図10図10はホルダを巻取機構の端部に外装する途中状態を示す説明図である。
図11図11は巻取機構の自重を考慮したホルダの外装状態を示す説明図である。
図12図12は変形例に係る巻取支持装置の端部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係るトノカバー装置について説明する。
【0014】
<適用例>
トノカバー装置の適用例について説明する。図1はトノカバー装置20が車両に組込まれた状態を示す説明図である。
【0015】
トノカバー装置20は、後方に荷室11が設けられた車両10に設けられる。荷室11は、シート14の背もたれ部分14aの後方に広がっている。シート14は、例えば、前から2列目又は3列目のリアシートである。荷室11は、フロア11a上における背もたれ部分14a後方で、両側壁11b間に位置する。側壁11bには、ウインドウ11wが設けられる。荷室の上方にはルーフ11cが設けられている。荷室11の後方は開口しており、当該開口はバックドア12によって開閉される。バックドア12にもウインドウが設けられる。
【0016】
トノカバー装置20は、上記のような荷室11に組込まれる。トノカバー装置20は、荷室11のフロア11a上に載置された物品を上方から覆う位置に配置される。例えば、トノカバー装置20は、フロア11aの上方に離れた位置であって、ウインドウ11wよりも下方位置において、水平方向に延在するように配置される。
【0017】
図1に示す例では、両側壁11bのそれぞれが、受凹部18と引出側受凹部19とを備える。受凹部18は、背もたれ部分14aの上部後方位置に設けられる。引出側受凹部19は、受凹部18に対して後方に離れた位置に設けられる。受凹部18と引出側受凹部19とは、上方及び車幅方向中央側が開口する凹形状に形成されている。
【0018】
トノカバー装置20の巻取支持装置30が車幅方向に沿って延在した状態で、巻取支持装置30の両端部のそれぞれが一対の受凹部18に保持される。巻取支持装置30からトノカバー22が引出され、当該トノカバー22の先端部に設けられた引出部材28の両端部のそれぞれが一対の引出側受凹部19に保持される。これにより、トノカバー22が巻取支持装置30から後方に引出され、荷室11を上方から覆った状態に保たれる。
【0019】
<全体構成>
トノカバー装置20の全体構成について説明する。図2はトノカバー装置20を示す斜視図である。図3はトノカバー装置20を示す分解斜視図である。
【0020】
トノカバー装置20は、トノカバー22と、巻取支持装置30とを備える。トノカバー22は荷室11を覆う部材である。巻取支持装置30は、トノカバー22を引出し可能に巻取る装置である。
【0021】
トノカバー22は、平面状に展開可能でかつ巻取りのための変形が可能なシート状部分22aを含む。シート状部分22aは、樹脂シート又は糸を編んだ布等によって形成された柔軟シートによって構成されている。このシート状部分22aが巻取支持装置30によって巻取られる。
【0022】
シート状部分22aの基端部が巻取支持装置30に連結されている。シート状部分22aの先端部に、車幅方向に沿うように、引出部材28が固定されている。引出部材28の両端部は、シート状部分22aから車幅方向外側にはみ出ている。引出部材28の両端部が上記引出側受凹部19に嵌め込まれて保持される。
【0023】
トノカバー22は、シート状部分22aよりも剛性が高い板状部分22bを含む。板状部分22bは、引出部材28よりも先端側に設けられている。板状部分22bは、例えば、柔軟シートに樹脂板、金属板又は木製板を重ねた構成によって実現される。
【0024】
引出部材28の両端部が一対の引出側受凹部19に保持された状態では、シート状部分22aは、巻取支持装置30と引出部材28との間で前後方向に引っ張られることによって、水平状態に展開した状態に保たれる。板状部分22bは、自信の剛性によって、引出部材28から車両10の後方に向けて水平状態に延在する状態に保たれる。
【0025】
上記板状部分22bは省略されてもよい。
【0026】
巻取支持装置30は、巻取シャフト32と、巻取機構40と、ホルダ60と、付勢部材70とを備える。
【0027】
巻取シャフト32は、長尺部材であり、引出部材28の基端部がその長手方向に沿って取付けられている。このため、巻取シャフト32が回転すると、引出部材28が巻取シャフト32に巻取られる。巻取シャフト32は、例えば、金属等で形成された筒状の部材である。
【0028】
巻取機構40は、トノカバー22を巻取及び引出し可能なように、巻取シャフト32をトノカバー22の巻取方向に付勢した状態で、巻取シャフト32の両端部を回転可能に支持している。
【0029】
ホルダ60は、巻取機構40の少なくとも一方の端部に、巻取機構40の長手方向に沿ってスライド可能に外装されている。ホルダ60は、巻取機構の長手方向に沿って外側に向けて付勢されている。このため、ホルダ60に、巻取機構40の長手方向中央に向かう力を作用させると、ホルダ60は、巻取機構40の長手方向中央に向うようにスライド変位できる。この状態で、ホルダ60に対し、巻取機構の長手方向に沿って外側に向かう力が作用する。
【0030】
ホルダ60の外向きの付勢力を利用することによって、巻取支持装置30を受凹部18によって支持した状態におけるがたつき抑制が図られる。すなわち、ホルダ60を巻取機構40の長手方向中央に向けてスライド移動させた状態で、巻取支持装置30の両端部のそれぞれが一対の受凹部に嵌め込まれる。巻取機構40の少なくとも一方の端部にはホルダ60が設けられており、当該ホルダ60は巻取機構40の長手方向外側に付勢されている。このため、一対の受凹部18の間において、巻取支持装置30がその長手方向において伸びようとし、巻取支持装置30の長手方向両外向き部分と一対の受凹部18との間における隙間の発生が抑制される。これにより、巻取支持装置30の振動、特に、巻取支持装置30の長手方向における振動が抑制される。
【0031】
本実施形態では、巻取機構40の両端部にホルダ60が外装されている例が説明される。巻取機構40の一方の端部のみに、スライド可能かつ付勢されたホルダ60が外装されてもよい。この場合、巻取機構40の他方の端部においては、ホルダが固定された状態で外装されてもよい。
【0032】
付勢部材70は、ホルダ60の内周面と巻取機構40の少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、前記内周面と前記外周面とを互いに離反する方向に付勢する部材である。
【0033】
<巻取機構について>
巻取機構40の一例について説明する。巻取機構40は、ケーシング42と、一対のサイドカバー50と、巻取付勢部材46とを備える。
【0034】
ケーシング42は、巻取シャフト32及び当該巻取シャフト32に巻取られたトノカバー22を収容可能な筒状に形成されている。ケーシング42には、トノカバー22の引出し及び巻取を可能にするカバー用開口43がケーシング42の長手方向に沿って形成されている。本実施形態では、ケーシング42は、4角筒の角を丸めた筒状に形成されている。換言すれば、ケーシング42は、4つの壁部42aと、4つの連結部42bとを含む(図5参照)。壁部42aは平板状又は連結部42bよりも大きな曲率半径で曲る湾曲板状をなしている。連結部42bは、角(例えば直角)をなして曲るか壁部42aよりも小さな曲率半径で曲る形状をなしている。4つの壁部42aが各間に連結部42bを介在させて筒をなすように連なることで、ケーシング42が形成されている。ケーシング42が上記形状であることは必須ではない。ケーシングは、より角が尖った角筒状であってもよい。ケーシングは、円筒状、楕円筒状、3角筒状又は5角筒状であってもよい。
【0035】
4つの壁部42aのうちの1つに、カバー用開口43が形成されている。本実施形態では、壁部42aの幅方向中央から一方の側部に偏った位置に、カバー用開口43が形成されている。巻取支持装置30が受凹部18に支持された状態で、カバー用開口43が壁部42aの上方寄りに位置していてもよい。1つの連結部42bと1つの壁部42aとの間にはカバー用開口43が存在しているため、3つの壁部42aと、1つの細幅の壁部42aとが、3つの連結部42bを介して連なっており、1つの細幅の壁部42aとその隣の壁部42aとの間にカバー用開口43が存在していると把握されてもよい。
【0036】
かかるケーシング42は、例えば、アルミニウム等の金属、又は、樹脂によって形成される。
【0037】
サイドカバー50は、ケーシング42の端部開口を塞ぎ、かつ、巻取シャフト32を回転可能に支持する部材である。本実施形態では、サイドカバー50は、カバー本体52と、回転支持凸部56とを備える。サイドカバー50は、例えば、樹脂による金型成形部品である。
【0038】
カバー本体52は、ケーシング42の端部開口に嵌め込まれるようにして、当該ケーシング42の端部の一定位置に取付けられる。回転支持凸部56は、カバー本体52のうちケーシング42の長手方向中央を向く面に突設される。回転支持凸部56は、ケーシング42の長手方向に沿って当該ケーシング42の長手方向中央に向って突出する円柱状に形成されている。
【0039】
ケーシング42の両端に設けられた一対のサイドカバー50の回転支持凸部56が、巻取シャフト32の両端側開口に挿入されることで、巻取シャフト32がケーシング42内で回転可能に支持される。本実施形態では、巻取シャフト32の両端部に、端部材33が回転止された状態で挿入されている。端部材33は、樹脂等で形成された筒状の部材である。回転支持凸部56は、端部材33内に回転可能に挿入されている。つまり、回転支持凸部56と巻取シャフト32の端部開口との間に、端部材33が介在している。回転支持凸部56に対して端部材33が回転することによって、巻取シャフト32がサイドカバー50に対して回転することができる。
【0040】
巻取付勢部材46は、巻取シャフト32をサイドカバー50に対して、トノカバー22を巻取る方向に付勢する。本実施形態では、巻取付勢部材46は、コイルバネである。巻取付勢部材46は、巻取シャフト32内に当該巻取シャフト32の長手方向に沿って配設される。巻取付勢部材46の一端部が一方の回転支持凸部56に回転止状態で固定されている。巻取付勢部材46の他端部が、シャフト内固定部47を介して巻取シャフトの内周部に回転止状態で固定されている。なお、巻取付勢部材46にはゴムチューブ48が外装されている。ゴムチューブ48が巻取付勢部材46と巻取シャフト32との間に介在することで、巻取シャフト32と巻取付勢部材46との接触によるがたつき音の発生が抑制される。なお、巻取付勢部材がコイルバネであることは必須ではなく、渦巻バネ等であってもよい。
【0041】
初期状態において、引出部材28がカバー用開口43の周りでケーシング42に接触するまでトノカバー22が巻取シャフト32に巻取られている。この状態で、巻取シャフト32と一方のサイドカバー50との間で巻取付勢部材46が捩られており、当該捩りを解消しようとする復元力によって、巻取付勢部材46は、巻取シャフト32をトノカバー22の巻取方向に付勢する。
【0042】
上記初期状態からトノカバー22が引出されると、巻取付勢部材46がさらに捩られ、巻取付勢部材46に巻取シャフト32を巻取方向に付勢する力が蓄えられる。引出部材28が引出側受凹部19に保持された状態では、巻取支持装置30と引出部材28との間で、トノカバー22が引っ張られた状態に保持される。
【0043】
引出側受凹部19による引出部材28の保持力が解除されると、巻取付勢部材46の付勢力によって巻取シャフト32が巻取方向に回転し、巻取シャフト32にトノカバー22が巻取られる。
【0044】
<巻取支持装置の端部構成>
巻取支持装置30の端部構成についてより具体的に説明する。図4は巻取支持装置30の端部を示す斜視図である。図5は巻取支持装置30の端部の分解斜視図である。図6は付勢部材70を示す斜視図である。図7は巻取支持装置30の端部においてホルダ60を省略した状態を示す斜視図である。図8図4のVIII-VIII線断面図である。図9図4のIX-IX線断面図である。
【0045】
ケーシング42の端部は、ケーシング42の長手方向外向きに開口している。ケーシング42のうちカバー用開口43の両外側に位置する一対の壁部42a、42aに係止孔42ahが形成されている。付勢部材70の第1係止凸部73aが当該係止孔42ahに嵌ることができる。
【0046】
サイドカバー50のうちカバー本体52は、ケーシング42の開口を塞ぐ板状に形成されている。本実施形態では、カバー本体52は、ケーシング42の開口の内周面形状に応じた外周面形状を有する板状に形成されている。カバー本体52の外周部に沿って細長い突部52aが突出している。突部52aは、カバー本体52の厚み方向一方側の縁において部分的に突出している。そして、カバー本体52の外周面がケーシング42の開口の内周面に接触すると共に、突部52aがケーシング42の開口の外向き縁に接触した状態で、カバー本体52がケーシング42の開口に取付けられる。
【0047】
上記状態で、回転支持凸部56がカバー本体52からケーシング42内に突出し、端部材33を介して巻取シャフト32の一端部を回転可能に支持する。
【0048】
サイドカバー50は、カバー本体52の外向き部分に、長手方向付勢部材69の一端部を支持する付勢部材支持凸部53を有する。本実施形態では、付勢部材支持凸部53は、長手方向付勢部材69の一端部を嵌め入れることができる環状形状に形成されている。付勢部材支持凸部53は、長手方向付勢部材69の一端内に嵌込可能な凸部であってもよい。
【0049】
ホルダ60は、樹脂等で形成された部材であり、巻取機構40の端部に外装可能に構成されている。より具体的には、ホルダ60は、一端が開口すると共に他端が閉塞された筒状の部材であり、周壁部62と、外閉塞部64とを有している。ホルダ60は、巻取機構40の端部の外周面を覆った状態で、当該巻取機構40の端部に取付けられる。
【0050】
周壁部62は、巻取機構40の端部の外周を覆うことができる筒状に形成されている。本実施形態では、周壁部62は、ケーシング42の4つの壁部42a及び4つの連結部42bに対応する、3つの壁部62a及び4つの連結部62bを有する形状に形成されている。4つの壁部62aが各間に連結部62bを介在させて筒をなすように連なることで、ケーシング42の端部の外周面に沿う筒状の周壁部62が形成される。
【0051】
4つの壁部62aのうちの1つに、ホルダ60の開口縁から外閉塞部64の手前に向うスリット62Sが形成される。ホルダ60がケーシング42の端部に取付けられた状態で、スリット62Sは、カバー用開口43の外側に位置する。ケーシング42とホルダ60とが重なる領域において、トノカバー22は、カバー用開口43とスリット62Sとを通って引出される。
【0052】
外閉塞部64のうちの内向き部分に、付勢部材支持凸部65が突設されている。付勢部材支持凸部65は、長手方向付勢部材69の他端部を支持する部分である。本実施形態では、付勢部材支持凸部65は、長手方向付勢部材69の他端部に嵌込可能な凸形状に形成されている。付勢部材支持凸部65は、長手方向付勢部材69の一端部を嵌め入れることができる環状形状に形成されていてもよい。
【0053】
長手方向付勢部材69は、ホルダ60を、巻取機構40の長手方向に沿って外側に付勢する部材である。本実施形態では、長手方向付勢部材69は、コイルバネである。長手方向付勢部材69の一端が上記付勢部材支持凸部53に嵌め入れられると共に、他端が上記ホルダ60の付勢部材支持凸部65に外装された状態で、長手方向付勢部材69がサイドカバー50とホルダ60との間に配置される。長手方向付勢部材69が圧縮状態から元の形状に戻ろうと伸びる力によって、ホルダ60が巻取機構40の長手方向外側に向けて付勢される。
【0054】
ホルダ60の内周面には、係止溝66が形成されている。係止溝66については、付勢部材70との関係で後により具体的に説明される。
【0055】
上記ホルダ60は、巻取機構40の端部に、巻取機構40の長手方向に沿って移動可能に外装される部材である。このため、巻取機構40の端部の外周面と、ホルダ60の内周面との間に、ホルダ60の移動を容易にするための隙間が形成されることが考えられる。このため、前記隙間の大きさに応じて、巻取機構40の長手方向に交差する方向において、巻取機構40に対してホルダ60が移動することが考えられる。
【0056】
ここで、長手方向付勢部材69は、巻取機構40の長手方向において、巻取機構40とホルダ60とを互いに離反する方向に付勢する部材であるため、巻取機構40の長手方向に交差する方向において、ホルダ60の移動を抑制することは難しい可能性がある。
【0057】
付勢部材70は、ホルダ60の内周面と巻取機構40の端部の外周面との間に介在し、それらの内周面と外周面とを互いに離反する方向に付勢することで、巻取機構40の長手方向に交差する方向において、ホルダ60の移動を抑制する。
【0058】
付勢部材70は、ベース部72と、第1バネ部76と、第2バネ部78とを備える。付勢部材70は、例えば、金属によって一体形成された部材であってもよいし、樹脂によって金型成形された部材であってもよい。付勢部材70が金属によって形成される場合、付勢部材70は、金属板をプレス加工することによって形成されてもよい。この場合、金属板は、バネ鋼によって形成されるとよい。
【0059】
ベース部72は、巻取機構40の端部の外周面の少なくとも一部を囲う形状に形成されている。本実施形態では、ベース部72は、巻取機構40の端部の外周面のうち、カバー用開口43を避けた一部を囲う形状、ここでは、U字状に形成されている。
【0060】
より具体的には、ベース部72は、3つの壁部72a、72b、72cと、2つの連結部72d、72eとを含む。壁部72aと壁部72bとの間に連結部72dが存在し、壁部72bと壁部72cとの間に連結部72eが存在する。壁部72aと壁部72bとが、連結部72dによって互いに交差する方向に延在するように連結されている。壁部72bと壁部72cとが、連結部72eによって互いに交差する方向に延在するように連結されている。壁部72aと壁部72cとが、壁部72bの一方主面側で間隔をあけて平行姿勢で延在している。壁部72aと壁部72cのうち壁部72bとは反対側が開口している。
【0061】
付勢部材70が巻取機構40の端部に取付けられた状態で、壁部72a、72cがケーシング42のうちカバー用開口43の両側の壁部42aの外周面に接触し、壁部72bがケーシング42のうちカバー用開口43とは反対側の壁部42aの外周面に接触する。これにより、ベース部72が、巻取機構40の端部の外周面のうちカバー用開口43が形成された壁部42aを除く部分を覆う。
【0062】
巻取支持装置30が受凹部18に支持された状態で、壁部72aが上側、壁部72cが下側に位置していることが想定される。
【0063】
巻取機構40の長手方向において、壁部72a、72cは、壁部72bよりも長い。本実施形態では、壁部72a、72cは、壁部72bのうち巻取機構40の長手方向外側の縁から巻取機構40の長手方向において外側に突出している。
【0064】
壁部72a、72cのうち壁部72b側の縁に、第1係止凸部73aが形成される。第1係止凸部73aは、巻取機構40の長手方向に沿う板状の凸部であり、ベース部72の内周側に突出している。壁部72a、72cのうち巻取機構40の長手方向外側の縁に、第2係止凸部73bが形成される。第2係止凸部73bは、巻取機構40の長手方向に直交する方向に沿う板状の凸部であり、ベース部72の内周側に突出している。
【0065】
ベース部72が巻取機構40の端部に取付けられた状態で、第1係止凸部73aが係止孔42ahに係止する。これにより、巻取機構40からのベース部72の抜け止が図られる。第2係止凸部73bは、ケーシング42の開口を塞ぐカバー本体52に対して巻取機構40の長手方向外側から接触する。第2係止凸部73bがカバー本体52に接触すること、及び、壁部72bがケーシング42の壁部42aに接触することによって、第1係止凸部73aを中心とするベース部72の傾きが規制される。これらにより、ベース部72が巻取機構40の端部に、姿勢変更を規制された状態で、一定位置に取付けられる。
【0066】
第1バネ部76が壁部72a、72cに形成され、第2バネ部78が壁部72bに形成される。
【0067】
より具体的には、壁部72a、72cの幅方向中間部に、巻取機構40の長手方向中間側に開口する長方形状の凹部が形成される。第1バネ部76は、細長板状部分であり、第1バネ部76の長手方向一方側の基端が、前記凹部の奥側縁に連なっている。ベース部72が巻取機構40の端部に取付けられていることから、第1バネ部76の基端は巻取機構40の端部の外周面における一定位置に支持される。
【0068】
第1バネ部76は、前記基端から巻取機構40の長手方向中央に向うにつれて巻取機構40の端部の外周面から離れる形状に形成されている。より具体的には第1バネ部76は、基端から巻取機構40の長手方向中央に向うにつれて巻取機構40の外周面から離れる方向に傾斜する板状に形成されている。かかる第1バネ部76は、例えば、壁部72a、72cを構成する板部分の一部を切り起すことによって形成されてもよい。
【0069】
上記と同様に、壁部72bの幅方向中間部に、巻取機構40の長手方向中間側に開口する長方形状の凹部が形成される。上記と同様に、この凹部の奥側縁に、細長板状部分である第2バネ部78の基端が連なっている。壁部72bに形成された凹部及び第2バネ部78は、長さが異なる点を除き、壁部72a、72cに形成された凹部及び第1バネ部76と同様構成である。第1バネ部76及び第2バネ部78が長方形板状であることは必須ではない。例えば、第1バネ部76又は第2バネ部78の長手方向中間部が曲っていてもよい。
【0070】
ホルダ60の内周面は、当接面67aと突出面67bとを有する段差形成面67を含む(図8参照)。当接面67aは、ホルダ60の奥と開口との間に位置し、ホルダ60の奥側を向く面である。突出面67bは、当接面67aよりもホルダ60の開口側に広がり、当接面67aよりも奥側に広がる面67cよりも巻取機構40の外周面に向って突出している面である。
【0071】
本実施形態では、ホルダ60の内周部に、巻取機構40の長手方向に沿って延びる係止溝66が形成されている。係止溝66は、ホルダ60の内周面に対して段差を介して凹んでいる。係止溝66の幅は、第1バネ部76の幅と同じが当該幅よりも大きい。このため、第1バネ部76の一部(ここでは先端)が係止溝66内に入り込み、当該係止溝66の底側の面67cに接触しつつ、係止溝66の延在方向に沿って移動することができる。
【0072】
係止溝66のうちホルダ60の開口側に位置し、ホルダ60の奥側を向く面が当接面67aである。当接面67aは、上記面67cに対してホルダ60の開口側に位置している。このため、面67cに接触しつつ移動する第1バネ部76が、ホルダ60の開口側に移動する途中で、当接面67aに接触する。すると、第1バネ部76が当接面67aよりもホルダ60の開口側に移動することが規制される。
【0073】
係止溝66は、ホルダ60の奥側に達する溝であってもよい。当接面67aが係止溝66を囲む側面の一部として構成されていることは必須ではない。ホルダ60の内周部のうち開口寄りの部分が奥側の部分よりも肉厚に形成され、その肉厚部分を形成する段差によってホルダ60の奥側を向く当接面67aが形成されてもよい。
【0074】
本実施形態では、ホルダ60の内周部のうち第2バネ部78に対向する部分には、係止溝66及び当接面67aが形成されていない(図9参照)。つまり、ホルダ60の内周部のうち第2バネ部78に対向する部分は、ケーシング42の壁部42aの外周面に応じた平面又はなだらかに湾曲する面である。ホルダ60の内周部のうち第2バネ部78に対向する部分にも、上記と同様に、係止溝66又は当接面67aが形成されてもよい。
【0075】
ホルダ60が巻取機構40の端部に外装された状態で、第1バネ部76の先端が係止溝66内に配置される(図8参照)。第1バネ部76の先端は、面67cに接触した状態で、係止溝66の延在方向に沿って移動可能である。外力が加わらない状態では、長手方向付勢部材69によってホルダ60が巻取機構40の長手方向において外側に付勢されている。第1バネ部76の先端が当接面67aに接触することによって、ホルダ60が巻取機構40の長手方向に沿って外側に移動することが規制され、もって、巻取機構40の端部からのホルダ60の抜け止が図られている。当接面67aは、第1バネ部76が係止できる程度の段差を形成する形状であればよく、当接面67a、突出面67b及び面67cは高精度に形成されなくてもよい。
【0076】
なお、第1バネ部76がホルダ60の抜け止を行うことは必須ではない。例えば、第1バネ部76とは別に、巻取機構40とホルダ60との間に抜け止用の溝及び凸部の嵌り合い構造が設けられてもよい。この場合、当接面67aは省略されてもよい。
【0077】
また、ホルダ60が巻取機構40の端部に外装された状態で、第1バネ部76は、巻取機構40の端部の外周面とホルダ60の面67cとの間で圧縮された状態となっている(図8参照)。第1バネ部76が元の形状に戻ろうとする力によって、ホルダ60の内周面と巻取機構40の端部の外周面とが互いに離反する方向に付勢される。
【0078】
本実施形態では、壁部72a、72cが巻取機構40の端部を挟む位置に設けられ、壁部72a、72cのそれぞれに第1バネ部76が設けられる。このため、巻取機構40の端部を挟む2つの位置(ここでは上下位置)において、ホルダ60の内周面と巻取機構40の端部の外周面とが互いに離反する方向に付勢される。よって、巻取機構40の長手方向に直交する方向、特に、上下方向において、巻取機構40に対してホルダ60ががたつき難くなる。
【0079】
また、本実施形態では、カバー用開口43とは反対側で、第2バネ部78は、巻取機構40の端部の外周面とホルダ60の内周部のうち第2バネ部78に対向する部分との間で圧縮された状態となっている(図9参照)。第2バネ部78が元の形状に戻ろうとする力によって、ホルダ60の内周面と巻取機構40の端部の外周面とが互いに離反する方向に付勢され、巻取機構40がカバー用開口43側に押される。このため、巻取機構40の長手方向に直交する方向のうちトノカバー22の引出し巻取方向においても、ホルダ60ががたつき難くなる。
【0080】
なお、付勢部材70が備えるバネ部76、78の数は任意であり、付勢部材70は、1つのバネ部を有していてもよいし、複数のバネ部を有していてもよい。例えば、付勢部材は、1つの第1バネ部のみ、又は、1つの第2バネ部78のみ有していてもよい。本実施形態では、第1バネ部76が上下に設けられることによって、上下の振動対策がなされる。また、上下においてなるべく均一な力でホルダ60の抜け止がなされる。第2バネ部78によって、トノカバー22の引出し巻取時におけるがたつきが有効に抑制される。
【0081】
上記ホルダ60を巻取機構40の端部に外装する際の動作について説明する。
【0082】
図10はホルダ60を巻取機構40の端部に外装する途中状態を示している。図10の上側に巻取機構40の端部をホルダ60の開口内に挿入した初期状態が示され、図10の下側に巻取機構40の端部がホルダ60の奥にさらに挿入された状態が示される。
【0083】
ここで、対向する係止溝66の底側の面67c間の寸法をDとする。また、ケーシング42のうち2つの第1バネ部76が設けられた表面間の寸法をE、当該表面に対する各第1バネ部76の突出寸法をF1、F2、2つの第1バネ部76の最大突出部分間の寸法をGとする。なお、寸法F1、F2、Gは、ホルダ60の外装前の状態であり、第1バネ部76は自然な突出状態とされている。寸法Gは、寸法Eに寸法F1、F2を付加した大きさである。巻取機構40の端部にホルダ60を外装した状態で、2つの第1バネ部76が係止溝66の面67cに接触できるように、寸法Gが寸法D以上となるように、第1バネ部76の突出寸法F1、F2が設定されているとよい。
【0084】
巻取機構40の端部をホルダ60内に挿入していくと、第1バネ部76の外向き面が突出面67bに接触する。第1バネ部76の外向き面は、巻取機構40の長手方向中間部に向って巻取機構40の外周面から離れる方向に傾斜している。このため、巻取機構40の端部をホルダ60の奥に挿入していくのに従って、突出面67bが第1バネ部76の外向き面上を滑って第1バネ部76の先端側に相対移動し、第1バネ部76を巻取機構40の外周面に向けて押付ける。これにより、2つの第1バネ部76の最大突出部分間の寸法が小さくなり、2つの第1バネ部76がホルダ60内に入り込むことができる。
【0085】
第1バネ部76が突出面67bを超えてホルダ60の奥側に移動し、係止溝66側に移動すると、第1バネ部76が元の形状に戻ろうとする(図8参照)。これにより、第1バネ部76の先端が係止溝66の面67cに接触する。第2バネ部78の先端も同様に、ホルダ60の内周面に接触する(図9参照)。これにより、第1バネ部76及び第2バネ部78が、巻取機構40の外周面とホルダ60の内周面との間に介在した状態となる。この状態から、長手方向付勢部材69の付勢力によってホルダ60が巻取機構40の端部外側に移動しようとすると、第1バネ部76の先端が当接面67aに接触して、ホルダ60の抜け止がなされる。
【0086】
第1バネ部76の外向きの斜面がホルダ60の開口に接触することによって、第1バネ部76が容易に弾性変形するため、ホルダ60又は巻取機構40を変形させたり、ホルダ60を削るように強く押し当てたりする作業がなくても、第1バネ部76をホルダ60に係止させる構成を容易に実現できる。
【0087】
図11は巻取機構40の自重を考慮したホルダ60の外装状態を示している。図11の上側には巻取支持装置30が受凹部18に支持される前の状態が示され、図11の下側には巻取支持装置30が受凹部18に支持され、ホルダ60が巻取機構40の長手方向中間部に移動した状態が示される。
【0088】
巻取支持装置30が受凹部18に支持される前の状態では、巻取機構40の重さ分、ホルダ60に対して巻取機構40が下方に偏って位置している。よって、上側の第1バネ部76が設けられた部分における、巻取機構40の外周面とホルダ60の内周面との間の寸法H1は、下側の第1バネ部76が設けられた部分における、巻取機構40の外周面とホルダ60の内周面との間の寸法H2よりも大きくなる。
【0089】
巻取支持装置30が受凹部18に支持された状態においても、巻取機構40の重さ分、ホルダ60に対して巻取機構40が下方に偏って位置している。
【0090】
いずれの状態においても、上側の隙間の寸法H1が下側の隙間の寸法H2よりも大きくなる分、上側の第1バネ部76が下側の第1バネ部76よりも大きく突出した状態となって、係止溝66の底側の面67cに接触することが想定される。上側の第1バネ部76が係止溝66の底側の面67cに接触し、かつ、当接面67aに抜け止のために接触した状態がより確実に成立することが好ましい。そのためには、上側の第1バネ部76の突出寸法F1を、下側の第1バネ部76の突出寸法よりも大きくすることが好ましい。また、例えば、上側の第1バネ部76の突出寸法F1が、巻取機構40の上下における隙間の和(上記寸法Dから寸法Eを減算した値)以上に設定されてもよい。
【0091】
<効果等>
以上のように構成されたトノカバー装置20によると、付勢部材70がホルダ60の内周面と巻取機構40の少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、それらの内周面と外周面とを互いに離反する方向に付勢する。このため、ホルダ60が、付勢部材70の長手方向に直行する方向にがたつき難い。なお、ホルダ60は、巻取機構40の長手方向において外側に付勢されているので、巻取機構40の長手方向においてもホルダ60はがたつき難い。これにより、巻取機構40とホルダ60との間で、がたつきによる異音の発生が抑制される。
【0092】
また、付勢部材70は、巻取機構40の少なくとも一方の端部の外周面における一定位置に支持された基端を有するバネ部として、第1バネ部76又は第2バネ部78を含む。このため、第1バネ部76及び第2バネ部78を有する付勢部材70を、巻取機構40の少なくとも一方の端部の外周面に取付ける構成とすることができる。これにより、付勢部材をホルダ60の内周面に取付ける場合と比較して、付勢部材70を巻取機構40に容易に取付けることができる。また、巻取機構40の少なくとも一方の端部にホルダ60を外装すると、ホルダ60によって第1バネ部76及び第2バネ部78が押されて、第1バネ部76及び第2バネ部78が、巻取機構40の外周面に近づくように変形することができる。ホルダ60の外装が完了した状態では、巻取機構40の外周面に近づくように変形した第1バネ部76及び第2バネ部78が、元の形状に復元しようとする力によって、ホルダ60の外周面を、巻取機構40の外周面から遠ざける方向に付勢することができる。これにより、巻取機構40とホルダ60との間で、がたつきによる異音の発生が有効に抑制される。
【0093】
また、ホルダ60が当接面67aと突出面67bとを有しているため、ホルダ60を巻取機構40の少なくとも一方の端部に外装すると、第1バネ部76が突出面67bに接触して、当該第1バネ部76が巻取機構40の外周面に近づくように変形することができる。第1バネ部76の先端が突出面67bを超えてホルダ60の奥側に位置すると、第1バネ部76が元の形状に復元しようとする。第1バネ部76が完全に元の形状に復元しようとする前の状態で、第1バネ部76の先端が当接面67aに接触可能な状態となる。第1バネ部76の先端がホルダ60の奥側から当接面67aに接触することで、巻取機構40の少なくとも一方の端部に対するホルダ60の抜け止が図られる。また、第1バネ部76の先端が、ホルダ60の内周面のうち当接面67aよりも奥側に広がる面67cに接触することで、巻取機構40とホルダ60との間で、がたつきによる異音の発生が抑制される。
【0094】
また、付勢部材70は、巻取機構40の少なくとも一方の端部において、カバー用開口43を避けて設けられている。このため、巻取機構40の端部において、付勢部材70がカバー用開口43の端部を塞がない。このため、カバー用開口43の全体を、トノカバー22の引出し及び巻取用の開口として利用でき、トノカバー装置20の長さに対してトノカバー22が広がる領域を大きくすることができる。
【0095】
{変形例}
付勢部材は、上記のように、巻取機構40の端部の外表面に取付けられる例に限られず、各種態様にて、ホルダ60の内周面と巻取機構40の少なくとも一方の端部の外周面との間に介在すればよい。
【0096】
例えば、図12に示すように、ホルダ60に対応するホルダ160の内周面に位置決め凹部161が形成され、付勢部材70に対応する付勢部材170が位置決め凹部161に嵌った状態で、ホルダ160の内周側に装着されていてもよい。この場合、付勢部材170のうちのベース部172が上記位置決め凹部161に嵌った状態で、ホルダ160の開口側と奥側との間で移動可能であってもよい。
【0097】
付勢部材170のバネ部178は、ベース部172からホルダ160の奥側に向うにつれてホルダ160の内周面から離れる方向に延在していてもよい。巻取機構40に対応する巻取機構140の外周面に、バネ部178の先端部が係止する係止凹部141が形成されていてもよい。
【0098】
本変形例によると、付勢部材170が位置決め凹部161に嵌って、ホルダ160の開口側と奥側との間で移動できる範囲で、ホルダ160が巻取機構140の長手方向に沿って移動することができる。そして、付勢部材170が位置決め凹部161の開口側の段部に当接し、かつ、バネ部178の先端が係止凹部141に係止することで、ホルダ160の抜け止がなされる。いずれの状態においても、バネ部178が、ホルダ160の内周面と巻取機構140の外周面との間に介在し、それらの内周面と外周面とを互いに離反する方向に付勢することができる。これにより、上記実施形態と同様に、ホルダ160のがたつきが抑制される。
【0099】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0100】
なお、本明細書及び図面は下記の各態様を開示する。
【0101】
第1の態様は、車両の荷室を覆うトノカバーと、前記トノカバーの基端部が取付けられた巻取シャフトと、前記トノカバーを巻取及び引出し可能なように、前記巻取シャフトを前記トノカバーの巻取り方向に付勢した状態で、前記巻取シャフトの両端部を回転可能に支持する巻取機構と、前記巻取機構の少なくとも一方の端部に、その長手方向に沿ってスライド可能に外装され、前記巻取機構の長手方向外側に向けて付勢されているホルダと、前記ホルダの内周面と前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、前記内周面と前記外周面とを互いに離反する方向に付勢する付勢部材と、を備えるトノカバー装置である。
【0102】
このトノカバー装置によると、付勢部材がホルダの内周面と巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面との間に介在し、内周面と外周面とを互いに離反する方向に付勢している。このため、ホルダが、付勢部材の少なくとも一方の端部に対して付勢部材の軸方向に直交する方向にがたつき難い。これにより、巻取機構とホルダとの間で、がたつきによる異音の発生が抑制される。
【0103】
第2の態様は、第1の態様に係るトノカバー装置であって、前記付勢部材は、前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の前記外周面における一定位置に支持された基端を有するバネ部を含み、前記バネ部は、前記基端から前記巻取機構の長手方向中央に向うにつれて前記外周面から離れる形状に形成されている、トノカバー装置である。
【0104】
第2の態様によると、付勢部材は、前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面における一定位置に支持された基端を有するバネ部を含む。このため、付勢部材を、巻取機構の少なくとも一方の端部の外周面に取付ける構成とすることができる。これにより、付勢部材を、ホルダの内周面に取付ける場合と比較して、巻取機構に容易に取付けることができる。また、巻取機構の少なくとも一方の端部にホルダを外装すると、ホルダによってバネ部が押されて、バネ部が、巻取機構の少なくとも一方の端部の外周面に近づくように変形することができる。巻取機構の少なくとも一方の端部に対するホルダの外装が完了した状態では、巻取機構の少なくとも一方の端部の外周面に近づくように変形したバネ部が、元の形状に復元しようとする力によって、ホルダの外周面を、巻取機構の少なくとも一方の端部の外周面から遠ざける方向に付勢することができる。これにより、巻取機構とホルダとの間で、がたつきによる異音の発生が抑制される。
【0105】
第3の態様は、第2の態様に係るトノカバー装置であって、前記ホルダの前記内周面が、当接面と突出面とを有する段差形成面を含み、前記当接面は、前記ホルダの奥と開口との間に位置し前記奥側に向く面であり、前記突出面は、前記当接面よりも前記開口側に広がり、前記当接面よりも前記奥側に広がる面よりも前記外周面に向って突出している面である、トノカバー装置である。
【0106】
この場合、バネ部が突出面に接触することで、バネ部が、巻取機構の少なくとも一方の端部の外周面に近づくように変形することができる。バネ部の先端が突出面を超えてホルダの奥側に位置すると、バネ部が元の形状に復元しようとする。バネ部が完全に元の形状に復元しようとする前の状態で、バネ部の先端が当接面に接触することで、巻取機構の前記少なくとも一方の端部に対するホルダの抜け止が図られる。また、バネ部の先端が、ホルダの内周面のうち当接面よりも奥側に広がる面に接触することで、巻取機構とホルダとの間で、がたつきによる異音の発生が抑制される。
【0107】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るトノカバー装置であって、前記巻取機構は、前記巻取シャフト及び前記巻取シャフトに巻取られた前記トノカバーを収容可能な筒状のケーシングを含み、前記ケーシングには、前記トノカバーの引出し及び巻取を可能にするカバー用開口が前記ケーシングの長手方向に沿って形成され、前記付勢部材は、前記巻取機構の前記少なくとも一方の端部の外周面において、前記カバー用開口を避けて設けられている、トノカバー装置である。
【0108】
第4の態様によると、巻取機構の端部において、付勢部材がカバー用開口の端部を塞がない。このため、カバー用開口の全体を、トノカバーの引出し及び巻取用の開口として利用でき、トノカバー装置の長さに対してトノカバーが広がる領域を大きくすることができる。
【0109】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0110】
10 車両
20 トノカバー装置
22 トノカバー
32 巻取シャフト
40、140 巻取機構
42 ケーシング
43 カバー用開口
60、160 ホルダ
66 係止溝
67 段差形成面
67a 当接面
67b 突出面
67c 当接面の奥側の面
70、170 付勢部材
72 ベース部
76 第1バネ部
78 第2バネ部
178 バネ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12