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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064964
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】警報装置及び警報方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175444
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】南 良樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA11
3F333FA36
3F333FD15
3F333FE05
3F333FE09
(57)【要約】
【課題】積荷の有無や爪の位置に関わらず周囲の障害物を検出して警報することができる警報装置及び警報方法を提供する。
【解決手段】警報装置10は、フォークリフト1の周囲の物体までの距離を検出する上部センサ11及び下部センサ12を備えている。そして、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて、フォークリフト1の前方を含む領域に警報対象エリアAを設定し、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて警報対象エリアA内の障害物Oの有無を判定する制御部14を備えている。そして、警報対象エリアA内に障害物Oがあると判定された場合にフォークリフト1の操縦者に警報する警報部16を備えている。さらに、警報対象エリアAは、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて得られた爪長さLfもしくは積荷奥行Lcのうちいずれか長い方よりも大きい半径を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフト周囲の物体までの距離をそれぞれ検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて、前記フォークリフトの前方を含む領域に警報対象エリアを設定する制御部と、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記警報対象エリア内の障害物の有無を判定する判定部と、
前記警報対象エリア内に障害物があると判定された場合に前記フォークリフトの操縦者に警報する警報部と、を備え、
前記警報対象エリアは、前記複数のセンサの検出結果に基づいて得られた前記フォークリフトの爪の先端もしくは積荷の先端までの距離のうちいずれか長い方よりも大きい半径を有する、
ことを特徴とする警報装置。
【請求項2】
前記複数のセンサは、前記フォークリフトのマストに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記複数のセンサは、前記マストの上部及び下部にそれぞれ1以上設けられていることを特徴とする請求項2に記載の警報装置。
【請求項4】
前記警報対象エリアは、前記フォークリフトの爪の先端もしくは積荷の先端までの距離のうちいずれか長い方と、予め記憶されている余裕値と、に基づいて算出された半径を有することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の警報装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記複数のセンサそれぞれの複数回の検出結果に基づいて、相対距離が変化する物体を障害物と判定することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の警報装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記複数のセンサがそれぞれ検出した障害物までの距離のうち、短い距離に基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の警報装置。
【請求項7】
フォークリフト周囲の物体までの距離をそれぞれ検出する複数のセンサの検出結果に基づいて警報を行う警報装置で実行される警報方法であって、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて、前記フォークリフトの前方を含む領域に警報対象エリアを設定する制御工程と、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記警報対象エリア内の障害物の有無を判定する判定工程と、
前記警報対象エリア内に障害物があると判定された場合に前記フォークリフトの操縦者に警報する警報工程と、を含み、
前記警報対象エリアは、前記複数のセンサの検出結果に基づいて得られた前記フォークリフトの爪の先端もしくは積荷の先端までの距離のうちいずれか長い方よりも大きい半径を有する、
ことを特徴とする警報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトの周囲の障害物を警報する警報装置及び警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトは物流現場での荷物運搬に多く用いられるが、フォークリフト(車両)と障害物との接触により、積荷や建物を破損させてしまうことがある。特に爪先部分は、車両から突出している部分であるにも関わらず、マストや積荷の死角となり、乗務員(操縦者)にとって確認が困難な場所である。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動距離測定装置を用いてセンサーから前方の物体までの距離を測定し、演算装置に予め設定した距離より物体までの距離が小さくなった時に、フォークリフト本体やフォークの前進機能を制御する事により、物体との接触事故を未然に防止することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、フォークを移動させながらレーザ光を走査したときにレーザセンサで取得される距離データに基づいて、レーザ光が照射された範囲の3次元距離画像を生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-16202号公報
【特許文献2】特開2016-210586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、センサーはマストの下端に設けられている。そのため、フォークを下げた際などに、積荷などによってセンサーが遮られてしまい、障害物の検出ができなくなってしまう。
【0007】
特許文献2に記載の発明では、レーザセンサはフォークの移動方向に移動可能であるものの、パレットの横方向の位置ずれや、回転に関するずれを検出することが目的であり、障害物の検出は何ら考慮されていない。そのため、積荷を運搬している際に積荷によりレーザ光が遮られてしまう場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑み、積荷の有無や爪の位置に関わらず周囲の障害物を検出して警報することができる警報装置及び警報方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、フォークリフト周囲の物体までの距離をそれぞれ検出する複数のセンサと、前記複数のセンサの検出結果に基づいて、前記フォークリフトの前方を含む領域に警報対象エリアを設定する制御部と、前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記警報対象エリア内の障害物の有無を判定する判定部と、前記警報対象エリア内に障害物があると判定された場合に前記フォークリフトの操縦者に警報する警報部と、を備え、前記警報対象エリアは、前記複数のセンサの検出結果に基づいて得られた前記フォークリフトの爪の先端もしくは積荷の先端までの距離のうちいずれか長い方よりも大きい半径を有する、ことを特徴とする警報装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のセンサを備え、複数のセンサの検出結果に基づいて警報対象エリアを設定し、障害物を検出するため、積荷の有無や爪の位置に関わらず障害物の検出が可能となり、警報することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる警報装置が設けられるフォークリフトの側面図である。
図2図1に示されたフォークリフトの上面図である。
図3図1に示された本体部の機能ブロック図である。
図4図3に示された警報装置の動作のフローチャートである。
図5】爪長さの説明図である。
図6】パレットから爪の先端が突出している場合の説明図である。
図7】積荷奥行の説明図である。
図8】爪長さに基づく警報対象エリアの説明図である。
図9】積荷奥行に基づく警報対象エリアの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる警報装置が設けられるフォークリフトの側面図である。
【0013】
フォークリフト1は、車体2と、マスト3と、バックレスト4と、爪5と、を備えている。なお、本実施形態では、フォークリフト1において、操縦者が運転席22に着席した際に顔が向く方向(マスト3やバックレスト4、爪5が設けられている方向)を前又は前方といい、前又は前方と反対の方向を後又は後方という。そして、前後を基準として、左及び右を規定する(図2を参照)。
【0014】
車体2は、操舵装置21と、運転席22と、前輪23及び後輪24と、を備えている。前輪23及び後輪24は、車体2の両側面にそれぞれ設けられている。フォークリフト1は、運転席22に搭乗した操縦者(乗務員)が操舵装置21を操作することで、車体2が路面を走行するとともに、爪5の昇降等の動作が行われる。
【0015】
マスト3は、車体2の前方に設けられている支柱であり、その軸線は上下方向に伸びている。
【0016】
バックレスト4は、マスト3に上下方向に移動可能に取り付けられている。バックレスト4は、図示しない昇降駆動部と連結されて当該昇降駆動部の動作に応じてマスト3に沿って昇降する。
【0017】
爪(フォークともいう)5は、バックレスト4から車体2の前方に向かって伸びている。爪5は、一対の爪5R、爪5Lを有し、爪5Rと爪5Lとは、車体の左右方向に互いに離間した位置に配置されている(図2も参照)。
【0018】
フォークリフト1は、周知なように、積荷Cが載置されたバレットPに爪5を差し込んで爪5を上昇させることによりパレットPごと積荷Cを持ち上げ、運搬する。
【0019】
フォークリフト1は、警報装置10を備えている。警報装置10は、上部センサ11と、下部センサ12と、本体部13と、を備えている。
【0020】
上部センサ11は、マスト3の上部に設けられている。上部センサ11は、マスト3の上部からフォークリフト1の主に前方にある物体までの距離を検出するセンサである。下部センサ12は、マスト3の下部に設けられている。下部センサ12は、マスト3の下部からフォークリフト1の主に前方にある物体までの距離を検出するセンサである。上部センサ11及び下部センサ12は、物体までの距離が計測できる測距センサで構成されている。具体的には、ToF(Time of Flight)カメラやLiDAR(Light Detection And Ranging)等を用いることができる。
【0021】
図2にフォークリフト1の上面図を示す。なお、図2ではフォークリフト1は簡易な記載としている。上部センサ11及び下部センサ12は、マスト3の左端に設けられている。つまり、上部センサ11はマスト3の左端上部に設けられ、下部センサ12はマスト3の左端下部に設けられている。なお、図2では、上部センサ11及び下部センサ12は、マスト3の左端に設けられているが、右端でもよいことは云うまでもない。また、上部センサ11が右端、下部センサ12が左端等、左右方向の配置位置が揃っていなくてもよい。
【0022】
本実施形態では、車両2の前方側に所定の範囲として警報対象エリアAを設定し、障害物Oを検出するものである。詳細は後述する。図2に示したように、警報対象エリアAは半円状(約180度)になっているため、このエリアをカバーできるように、上部センサ11及び下部センサ12は広角のカメラ又はスキャン範囲等を広げる可動機構等を備えるのが望ましい。即ち、上部センサ11及び下部センサ12は、フォークリフト1周囲の物体までの距離をそれぞれ検出する複数のセンサとして機能する。なお、本実施形態における障害物Oは、床等に載置されている積荷や壁等の物体に限らず、他の車両や人物等も含むものである。
【0023】
本体部13は、車体2に設けられている。本体部13は、上部センサ11や下部センサ12からの検出結果に基づいて障害物Oを検出した場合は操縦者等に警報する。本体部13は、図3に示したように、制御部14と、記憶部15と、警報部16と、を備えている。
【0024】
制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等で構成されている。制御部14は、上部センサ11の検出結果と下部センサ12の検出結果に基づいて、フォークリフト1の前方を含む領域に警報対象エリアAを設定する。そして、上部センサ11の検出結果と下部センサ12の検出結果に基づいて、警報対象エリアA内の障害物Oの有無を判定し、警報対象エリアA内に障害物Oがあると判定された場合は、警報部16にフォークリフト1の操縦者へ警報させる。即ち、制御部14は、複数のセンサの検出結果に基づいて、フォークリフト1の前方を含む領域に警報対象エリアAを設定する。また、複数のセンサの検出結果に基づいて警報対象エリアA内の障害物の有無を判定する判定部、としても機能する。
【0025】
制御部14は、保持部14aを備えている。保持部14aは、例えばRAM(Random access Memory)等の揮発性のメモリで構成されている。保持部14aは、後述する方法により算出された爪5の長さLf及び積荷Cの奥行Lcを保持する。これらの情報は、逐次最新の情報に更新される。したがって、本実施形態では揮発性のRAMとしているが不揮発性のメモリであってもよい。
【0026】
記憶部15は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリで構成されている。記憶部15は、上部センサ11及び下部センサ12の取付位置に関する情報が記憶されている。取付位置に関する情報は、取付位置の情報及び取付角度の情報が含まれている。取付位置の情報は、フォークリフト1に任意に設定した原点に対する相対位置や座標等であってもよいし、上部センサ11及び下部センサ12のいずれか一方の取付位置を原点とした場合の他方の相対位置や座標であってもよい。また、記憶部15には、後述する閾値αも記憶されている。
【0027】
警報部16は、制御部14において警報対象エリアA内に障害物Oがあると判定された場合に、フォークリフト1の操縦者へ警報する。警報部16は、警報音を鳴動するものでもよいし、ランプ等を点灯或いはメッセージ等を表示するものであってもよい。あるいは、音と表示を併用してもよい。
【0028】
次に、上述した構成の警報装置10の動作(警報方法)を図4のフローチャートを参照して説明する。図4に示したフローチャートは、制御部14で実行される。
【0029】
まず、制御部14は、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果から爪5が検出されたか判定する(ステップS1)。爪5の検出は、例えば上部センサ11及び下部センサ12がToFカメラであった場合で説明すると、まず、複数フレーム撮影した映像において、相対位置(画像内の位置)が変化しない部分を抽出する。相対位置が変化しない部分は、フォークリフト1の移動により変化しない部分であるので、フォークリフト1とともに移動する物体である爪5または積荷Cのいずれかであると云える。
【0030】
そして、抽出された部分についてテンプレートマッチング等の方法により、爪5の形状を特定することで判定する。なお、爪5の検出は、上部センサ11及び下部センサ12のいずれかの検出結果に基づいて行ってもよいし、それぞれの検出結果に基づいて行い、両方とも爪5を検出したと一致した場合に爪5の検出としてもよい。
【0031】
ここで、結果が一致しない場合とは、例えばパレットPから爪5の先端が突出している場合(積荷Cが小さい又は爪5が長い場合)等が挙げられる。パレットPから爪5の先端が突出している場合は、例えば下部センサ12からは爪5が検出されている一方で、上部センサ11からは爪5が検出されない場合がある。この場合は、例えば、複数回検出動作を行って、一方だけ爪5を検出するなど同じ結果が繰り返される場合は、パレットPから爪5の先端が突出しているものとして、爪5が検出されたと判定してもよい。
【0032】
ステップS1で爪5が検出されたと判定された場合は(ステップS1;Yes)、制御部14は、積荷なしと判断する(ステップS2)。なお、上述したように、パレットPから爪5の先端が突出している場合も爪5が検出されるので積荷なしの判断となる。これは、爪5と積荷Cのうちより障害物Oに近い(車体2から離れている)端部を基準に警報の判定を行うためである。
【0033】
次に、制御部14は、爪5の長さLfを計測する(ステップS3)。即ち、制御部14は、フォークリフト1の爪の先端までの距離を算出する算出部として機能する。
【0034】
爪5の長さLf(以下、爪長さLfとする)は、ステップS1で用いた検出結果を利用する。例えば、ToFカメラで撮影された画像であれば、画素毎に距離情報を含んでいるので、爪5と識別された領域のうち最も距離が長い値を爪長さLfとする。また、爪長さLfは、上部センサ11の検出結果と下部センサ12の検出結果の両方の検出結果からそれぞれ算出し、長い方の値を採用する。これは、爪5が長いとして判定した方が障害物Oに近い距離を採用できるため、早めに警報することができるからである。なお、一方のセンサしか検出結果が得られない場合は、1つの検出結果を採用すればよい。
【0035】
一方のセンサしか検出結果が得られないとは、例えば、積荷Cや爪5等でセンサの前面が遮られ、検出結果として極端に短い距離しか得られない場合等をいう。このような場合は、正常な判定等が行えないので、検出結果が得られないものとして扱う。
【0036】
また、本実施形態では、記憶部15に記憶されている上部センサ11及び下部センサ12の取付位置に関する情報に基づいて爪長さLfを算出する。上部センサ11及び下部センサ12は、マスト3の上部や下部に取り付けられているため、上部センサ11及び下部センサ12から直接得られた距離情報は、爪5の長手方向の長さである水平方向の長さとは異なる。上部センサ11及び下部センサ12の取付位置に関する情報には、原点に対する座標位置や角度の情報等が含まれているので、これらの値により、検出された距離情報を爪5の水平方向の長さに補正する。なお、この補正は、後述する積荷奥行Lcや障害物Oまでの距離も同様に行い、水平方向の長さを求める。
【0037】
図5に爪長さLfの説明図を示す。図5に示したように爪長さLfは、爪5の長手方向の長さである。図5においては、爪長さLfとしてLf1とLf2が示されているが、Lf2は、サヤフォーク等により爪5を延長する部材を取り付けた場合を示したものである。図6にパレットPから爪5の先端が突出している場合を示す。図6のように、爪5の先端が突出している場合は、爪5の先端が障害物Oと接触するため、積荷Cよりも爪5の長さに基づいて警報する。
【0038】
図4の説明に戻る。次に、制御部14は、ステップS3で計測した爪長さLfを保持部14aに記憶させて更新する(ステップS4)。以後は、後述するステップS8以降を実行する。
【0039】
一方、ステップS1で爪5が検出されないと判定された場合は、制御部14は、積荷ありと判断する(ステップS5)。これは、爪5が検出されないということは、パレットPに爪5が差し込まれている状態と云えるからである。
【0040】
次に、制御部14は、積荷Cの奥行Lcを計測する(ステップS6)。即ち、制御部14は、爪5上にある積荷の先端までの距離を算出する算出部として機能する。
【0041】
積荷Cの奥行Lc(以下、積荷奥行Lcとする)は、ステップS1で用いた検出結果を利用する。つまり、ToFカメラで撮影された画像であれば、画素毎に距離情報を含んでいるので、積荷Cと識別された領域のうち最も距離が長い値を積荷奥行Lcとする。また、積荷奥行Lcも爪長さLfと同様に、上部センサ11の検出結果と下部センサ12の検出結果の両方の検出結果からそれぞれ算出し、長い方の値を採用する。これは、積荷Cの上端側の先端までの距離と下端側の先端までの距離のうち長い方の値を採用することである。なお、一方のセンサしか検出結果が得られない場合は、1つの検出結果を採用すればよい。
【0042】
図7に積荷奥行Lcの説明図を示す。図7に示したように積荷奥行Lcは、積荷Cがフォークリフト1で運搬される際における、爪5の長手方向と平行な方向の長さ、換言するとマスト3から前方に向かう方向の長さである。
【0043】
図4の説明に戻る。次に、制御部14は、保持部14aに記憶されている爪長さLfとステップS6で算出された積荷奥行Lcとを比較し、爪長さLfの方が長いか(Lf>Lc)判定する(ステップS7)。これは、爪長さLfと積荷奥行Lcとのうち、長い方がより障害物Oに近いこと示すのは明らかであり、より早期に警報するためである。
【0044】
ステップS7の判定の結果爪長さLfが長い場合は(ステップS7;Yes)、制御部14は、警報対象エリアAの定義に爪長さLfを使用する(ステップS8)。つまり、制御部14は、警報対象エリアAfを爪長さLfを用いて設定する。また、上述したように、ステップS4で積荷なしと判断された場合もステップS8を実行する。積荷なしと判断された場合は、積荷がないか、積荷Cの長さが爪長さLfよりも短いことが明らかであるので、警報対象エリアの定義に爪長さLfを使用する。
【0045】
警報対象エリアAの定義に爪長さLfを使用した警報対象エリアAfについて、図8を参照して説明する。図8に示したように、警報対象エリアAfは、車両2の前方に設定される半円状の領域であり、その半径は爪長さLf+閾値αの長さとなっている。即ち、警報対象エリアA(所定の範囲)は、爪長さLf(爪の先端までの距離)もしくは荷物奥行Lc(爪上にある積荷の先端までの距離)のうちいずれか長い方よりも大きい半径を有している。そして、警報対象エリアAは、爪長さLf(爪の先端までの距離)もしくは荷物奥行Lc(爪上にある積荷の先端までの距離)のうちいずれか長い方と、予め記憶されている閾値α(余裕値)と、に基づいて算出された半径を有している。
【0046】
閾値αは、爪5が接触する前に確実に警報するために設けられる余裕値であり、フォークリフト1の仕様やフォークリフト1が走行する場所等に応じて適宜設定すればよい。また、警報対象エリアAfは、半円状の領域とすることで、フォークリフト1が転回することも考慮して横方向にある障害物Oを警報することが可能となる。
【0047】
また、ステップS7の判定の結果積荷奥行Lcが長い場合は(ステップS7;No)、制御部14は、警報対象エリアAの定義に積荷奥行Lcを使用する(ステップS9)。つまり、制御部14は、警報エリアAcを積荷奥行Lcを用いて設定する。
【0048】
警報対象エリアAの定義に積荷奥行Lcを使用した警報対象エリアAcについて、図9を参照して説明する。図9に示したように、警報対象エリアAcは、車両2の前方に設定される半円状の領域であり、その半径は積荷奥行Lc+閾値αの長さとなっている。閾値αは、警報対象エリアAfと同様である。
【0049】
なお、閾値αは複数設定してもよい。例えば閾値α1と閾値α2とを設定し、α1>α2の関係となる場合に、α1+Lf(Lc)の範囲に障害物が検出された場合には、「注意」を促す警報をし、さらに障害物Oに接近してα2+Lf(Lc)の範囲に障害物Oが検出された場合には、注意より強い警報を示す「危険」との警報をするといったことを行ってもよい。また、閾値αを係数とし、爪長さLf又は積荷奥行Lcに閾値αを乗算して警報対象エリアAを算出してもよい。例えば閾値αを1.2と設定すれば、警報対象エリアAは爪長さLf又は積荷奥行Lcの1.2倍の長さの半径となる。
【0050】
図4の説明に戻る。次に、制御部14は、警報対象エリアA内に障害物Oがあるか判定する(ステップS10)。障害物Oの判定は、例えば、ToFカメラで複数フレーム撮影した映像の場合、相対位置(画像内の位置)が変化する部分を抽出する。相対位置が変化する部分は、フォークリフト1とともに移動しない物体と云え、床等に置かれた障害物O等の物体であると云える。そして、抽出した部分についての距離を算出し、最も近い距離を選択し、その距離が警報対象エリアAに含まれるか判定する。
【0051】
なお、最も近い距離は、上部センサ11の検出結果と下部センサ12の検出結果の両方の検出結果からそれぞれ算出し、短い方の値を採用する。これは、最も近い距離が短い方を採用した方が障害物Oが近くにあると警報装置10に認識されるため、警報が発され易くなり、操縦者等に注意を促すことができるためである。また、一方のセンサしか検出結果が得られない場合は、1つの検出結果を採用すればよい。
【0052】
即ち、制御部14(判定部)は、上部センサ11及び下部センサ12(複数のセンサ)それぞれの複数回の検出結果に基づいて、相対距離が変化する物体を障害物Oと判定している。また、制御部14(判定部)は、上部センサ11及び下部センサ12(複数のセンサ)がそれぞれ検出した障害物Oまでの距離のうち、短い距離に基づいて判定を行っている。
【0053】
次に、警報対象エリアA内に障害物Oがあると判定された場合は(ステップS10;Yes)、制御部14は、警報部16に対して警報を鳴動させる(ステップS11)。一方、警報対象エリアA内に障害物Oがないと判定された場合は(ステップS10;No)、何もせずにステップS1に戻る。
【0054】
上述した説明のように、図4のフローチャートは繰り返し実行される。したがって、爪長さLfは逐次更新されるので、図5に示したようにサヤフォーク等の装着により爪長さLfが変更になっても操縦者等は特に設定等を変更することなく警報装置10による監視を継続させることができる。また、積荷Cの有無も逐次更新されるので、積荷Cを降した後であっても、操縦者等は特に設定等を変更することなく警報装置10による監視を継続させることができる。
【0055】
また、上述した説明から明らかなように、ステップS8、S9が設定工程、ステップS10が判定工程、ステップS11が警報工程として機能する。
【0056】
本実施形態によれば、警報装置10は、フォークリフト1の周囲の物体までの距離を検出する上部センサ11及び下部センサ12を備えている。そして、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて、フォークリフト1の前方を含む領域に警報対象エリアAを設定し、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて警報対象エリアA内の障害物Oの有無を判定する制御部14を備えている。そして、警報対象エリアA内に障害物Oがあると判定された場合にフォークリフト1の操縦者に警報する警報部16を備えている。さらに、警報対象エリアAは、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて得られた爪長さLfもしくは積荷奥行Lcのうちいずれか長い方よりも大きい半径を有している。
【0057】
警報装置10が上記のように構成されることにより、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて警報対象エリアAを設定し、障害物Oを検出するため、一方のセンサが荷物等により遮られている場合でも他方のセンサにより障害物Oの検出が可能となる。したがって、積荷Cの有無や爪5の位置に関わらず障害物Oの検出が可能となり、障害物Oの存在を警報することが可能となる。
【0058】
また、警報対象エリアAは、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて得られた爪長さLfもしくは積荷奥行Lcのうちいずれか長い方よりも大きい半径を有しているので、確実に爪5又は積荷Cが障害物Oに接触する前に警報をすることができる。
【0059】
また、警報装置10は、制御部14が、上部センサ11及び下部センサ12の検出結果に基づいて爪長さLf及び積荷奥行Lcを算出する。このようにすることにより、上部センサ11及び下部センサ12を障害物Oの検出だけでなく爪長さLf及び積荷奥行Lcの算出に利用することができる。したがって、爪長さLf及び積荷奥行Lcの算出用のセンサを別途設ける必要が無い。また、爪長さLf及び積荷奥行Lcの算出が自動的に算出できるので、人手により設定する手間が省ける。
【0060】
また、上部センサ11及び下部センサ12は、フォークリフト1のマスト3に設置されているので、車体2の前方にある物体を検出することが可能となる。
【0061】
また、上部センサ11及び下部センサ12は、マスト3の上部及び下部にそれぞれ1つ設けられているので、爪5の昇降により、一方のセンサが積荷CやパレットP等に遮られても他方のセンサにより障害物Oの検出が可能となる。
【0062】
また、警報対象エリアAは、爪長さLf及び積荷奥行Lcのうち長い方の距離と、閾値αと、の加算値で定められている。このようにすることにより、爪長さLf及び積荷奥行Lcのうち長い方の距離とすることで、より障害物Oに近い方を選択して、より安全性を確保できるように警報できる。また、閾値αを設定することで、爪5が接触する前に確実に警報することができる。
【0063】
また、制御部14は、上部センサ11及び下部センサ12それぞれの複数回の検出結果において、相対距離が変化する物体を障害物Oと認識している。このようにすることにより、上部センサ11及び下部センサ12を用いて、障害物Oと、爪5又は積荷Cと、の識別をすることができる。
【0064】
また、制御部14は、上部センサ11及び下部センサ12がそれぞれ検出した障害物Oまでの距離のうち、短い距離に基づいて判定を行っている。このようにすることにより、障害物Oが近くにあると警報装置10に認識されるため、警報が発し易くなり、操縦者等に注意を促すことができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、上部センサ11は1つであったが、複数であってもよい。例えばマスト3の左右端にそれぞれ設けてもよい。下部センサ12も同様に、マスト3の左右端にそれぞれ設ける等複数であってもよい。さらには、複数のセンサとして、マスト3の上部と下部に限らず、中央部等に設けてもよい。要するに2か所以上設けられていればよい。
【0066】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の警報装置及び警報方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 フォークリフト
3 マスト
5 爪
11 上部センサ(センサ)
12 下部センサ(センサ)
14 制御部(判定部)
14a 保持部
16 警報部
S8 警報対象エリアの定義にLfを使用(設定工程)
S9 警報対象エリアの定義にLcを使用(設定工程)
S10 警報対象エリア内に障害物がある(判定工程)
S11 警報鳴動(警報工程)
A 警報対象エリア(所定の範囲)
Lc 積荷奥行(積荷の先端位置までの距離)
Lf 爪長さ(爪の先端位置までの距離)
O 障害物
α 閾値(余裕値)
図1
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図9