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特開2023-65021包装容器内の酸素濃度制御方法および包装機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065021
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】包装容器内の酸素濃度制御方法および包装機
(51)【国際特許分類】
   B65B 31/04 20060101AFI20230502BHJP
   B65B 31/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B65B31/04 D
B65B31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175555
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108281
【氏名又は名称】ゼネラルパッカー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】大島 雅志
(72)【発明者】
【氏名】宮部 祐樹
【テーマコード(参考)】
3E053
【Fターム(参考)】
3E053AA06
3E053DA02
3E053FA01
3E053GA01
3E053GA19
3E053JA03
(57)【要約】
【課題】包装容器内に残存する酸素の濃度が規格値外となる製品が多量に生産されることを防止できる包装容器内の酸素濃度制御方法およびその制御方法を適用した包装機を提供する。
【解決手段】本発明の包装容器H内の酸素濃度制御方法は、被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器H内の酸素濃度を順次測定し、順次測定された包装容器H内の酸素濃度測定値を制御部70に伝達するステップS1と、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か制御部70が判断するステップS2と、制御部70が、酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、包装容器H内の残存酸素濃度を下げるステップS3およびS4を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器内の酸素濃度を順次測定し、順次測定された前記包装容器内の酸素濃度測定値を制御部に伝達するステップと、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップと、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップとを有していることを特徴とする包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項2】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において置換ガスの流量を上げるよう前記制御部が指示するステップと、流量コントローラによって置換ガスの流量を上げるステップとを有している請求項1に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項3】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において前記包装容器内におけるガスノズルの位置を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装容器内におけるガスノズルの位置が下がるステップとを有している請求項1に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項4】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、包装機の回転数を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装機の回転数が下がり前記包装容器内における置換ガス充填時間が増加するステップとを有している請求項1に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項5】
前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、前記酸素濃度測定値が出荷基準値により低い値に設定された設定値に達した際に上昇傾向にあると判定される請求項1ないし4のいずれかに記載の包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項6】
前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、設定された複数の酸素濃度測定値に基づいて判定される請求項1ないし5のいずれかに記載の包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項7】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップの後、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップが行われ、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判定する限り、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップが繰り返される請求項1ないし6のいずれかに記載の包装容器内の酸素濃度制御方法。
【請求項8】
包装容器内に被包装物を充填するための充填装置と、前記包装容器内の空気を不活性ガスに置換するためのガス置換装置と、前記包装容器をシールするためのシール装置と、被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器内の酸素濃度を順次測定するための酸素濃度測定装置とを有する包装機であって、該包装機は、前記酸素濃度測定装置により順次測定された前記包装容器内の酸素濃度測定値を制御部に伝達するステップと、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップと、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップとを有する酸素濃度制御を行うことを特徴とする包装機。
【請求項9】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において置換ガスの流量を上げるよう前記制御部が指示するステップと、流量コントローラによって置換ガスの流量を上げるステップとを有している請求項8に記載の包装機。
【請求項10】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において前記包装容器内におけるガスノズルの位置を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装容器内におけるガスノズルの位置が下がるステップとを有している請求項8に記載の包装機。
【請求項11】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、包装機の回転数を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装機の回転数が下がり前記包装容器内における置換ガス充填時間が増加するステップとを有している請求項8に記載の包装機。
【請求項12】
前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、前記酸素濃度測定値が出荷基準値により低い値に設定された設定値に達した際に上昇傾向にあると判定される請求項8ないし11のいずれかに記載の包装機。
【請求項13】
前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、設定された複数の酸素濃度測定値に基づいて判定される請求項8ないし12のいずれかに記載の包装機。
【請求項14】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップの後、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップが行われ、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判定する限り、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップが繰り返される請求項1ないし13のいずれかに記載の包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器内の酸素濃度をフィードバック制御する包装容器内の酸素濃度制御方法およびその制御方法を適用した包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
被包装物が特に食品の場合、保存期間、賞味期限を長くするために、包装時に包装容器内に残留する空気(酸素濃度が約20.6%)を排除して窒素、二酸化炭素等の不活性ガスを充填するガス置換包装が行われている。特許文献1には、包装容器内に被包装物を投入すると共に、包装容器に挿入したガスノズルから不活性ガスを充填して不活性ガスと包装容器内の空気との置換作用を行なう不活性ガス充填方法が開示されている。
【0003】
そして、製品検査において、被包装物を包装した包装容器内に残存する酸素濃度を計測する方法として、本件出願人はレーザー式酸素濃度測定装置による計測方法(特許文献2)を提案している。
【0004】
ところで、不活性ガス充填において、例えばガスノズル内のガス配管内部に充填物が堆積する等、何らかの影響で不活性ガスの流量が低下すると、包装容器内の残存酸素濃度が上昇して、残存酸素濃度が規格値(例えば酸素濃度が約3%)外の製品が多量に生産され流出する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3742042号公報
【特許文献2】特許第5124719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、包装容器内に残存する酸素の濃度が規格値外となる製品が多量に生産されることを防止できる包装容器内の酸素濃度制御方法およびその制御方法を適用した包装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものは、少なくとも被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器内の酸素濃度を順次測定し、順次測定された前記包装容器内の酸素濃度測定値を制御部に伝達するステップと、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップと、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップとを有していることを特徴とする包装容器内の酸素濃度制御方法である(請求項1)。
【0008】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において置換ガスの流量を上げるよう前記制御部が指示するステップと、流量コントローラによって置換ガスの流量を上げるステップとを有していることが好ましい(請求項2)。前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において前記包装容器内におけるガスノズルの位置を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装容器内におけるガスノズルの位置が下がるステップとを有していてもよい(請求項3)。前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、包装機の回転数を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装機の回転数が下がり前記包装容器内における置換ガス充填時間が増加するステップとを有していてもよい(請求項4)。前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、前記酸素濃度測定値が出荷基準値により低い値に設定された設定値に達した際に上昇傾向にあると判定されることが好ましい(請求項5)。前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、設定された複数の酸素濃度測定値に基づいて判定されることが好ましい(請求項6)。前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップの後、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップが行われ、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判定する限り、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップが繰り返されることが好ましい(請求項7)。
【0009】
また、上記課題を解決するものは、包装容器内に被包装物を充填するための充填装置と、前記包装容器内の空気を不活性ガスに置換するためのガス置換装置と、前記包装容器をシールするためのシール装置と、被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器内の酸素濃度を順次測定するための酸素濃度測定装置とを有する包装機であって、該包装機は、前記酸素濃度測定装置により順次測定された前記包装容器内の酸素濃度測定値を制御部に伝達するステップと、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップと、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップとを有する酸素濃度制御を行うことを特徴とする包装機である(請求項8)。
【0010】
前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において置換ガスの流量を上げるよう前記制御部が指示するステップと、流量コントローラによって置換ガスの流量を上げるステップとを有していることが好ましい(請求項9)。前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、前記ガス置換工程において前記包装容器内におけるガスノズルの位置を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装容器内におけるガスノズルの位置が下がるステップとを有していてもよい(請求項10)。前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップは、包装機の回転数を下げるよう前記制御部が指示するステップと、前記包装機の回転数が下がり前記包装容器内における置換ガス充填時間が増加するステップとを有していてもよい(請求項11)。前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、前記酸素濃度測定値が出荷基準値により低い値に設定された設定値に達した際に上昇傾向にあると判定されることが好ましい(請求項12)。前記制御部による前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、設定された複数の酸素濃度測定値に基づいて判定されることが好ましい(請求項13)。前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップの後、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か前記制御部が判断するステップが行われ、前記制御部が、前記酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判定する限り、前記包装容器内の残存酸素濃度を下げるステップが繰り返されることが好ましい(請求項14)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法によれば、包装容器内に残存する酸素の濃度が規格値外となる製品が多量に生産されることを防止することができる。
請求項2ないし4に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法によれば、上記請求項1の効果を簡素な方法で実現できる。
請求項5に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法によれば、酸素濃度測定値が出荷基準値に達する前に包装容器内の酸素濃度制御が行われるため、包装容器内に残存する酸素が規格値外となる製品の生産をより防止することができる。
請求項6に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法によれば、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断をより正確に行うことができる。
請求項7に記載の包装容器内の酸素濃度制御方法によれば、酸素濃度測定値が上昇傾向にある限り、繰り返し酸素濃度制御が行われることで、包装容器内の酸素濃度の正常化を確実に行うことができる。
請求項8に記載の包装機によれば、包装容器内に残存する酸素の濃度が規格値外となる製品が多量に生産されることを防止することができる。
請求項9ないし11に記載の包装機によれば、上記請求項1の効果を簡素な構成で実現できる。
請求項12に記載の包装機によれば、酸素濃度測定値が出荷基準値に達する前に包装容器内の酸素濃度制御が行われるため、包装容器内に残存する酸素が規格値外となる製品の生産をより防止することができる。
請求項13に記載の包装機によれば、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断をより正確に行うことができる。
請求項14に記載の包装機によれば、酸素濃度測定値が上昇傾向にある限り、繰り返し酸素濃度制御が行われることで、包装容器内の酸素濃度の正常化を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の包装容器内の酸素濃度制御方法の一実施例を説明するためのフローチャートである。
図2図1に示した包装容器内の酸素濃度制御方法において、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かを制御部が判断するステップを説明するための説明図である。
図3】本発明の包装機の一実施例の平面概略図である。
図4図3に示した包装機の酸素濃度測定装置を説明するための説明図である。
図5図3に示した包装機のガス置換装置の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器H内の酸素濃度を順次測定し、順次測定された包装容器H内の酸素濃度測定値を制御部70に伝達するステップS1と、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か制御部70が判断するステップS2と、制御部70が、酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、包装容器H内の残存酸素濃度を下げるステップS3およびS4を有していることで、包装容器H内に残存する酸素濃度が規格値外となる製品が多量に生産されることを防止できる包装容器H内の酸素濃度制御方法およびその制御方法を適用した包装機Pを実現した。
【実施例0014】
本発明の包装容器内の酸素濃度制御方法を、図1ないし図5に示した本発明の包装機(本発明の包装容器内の酸素濃度制御方法を適用した包装機)の一実施例を用いて説明する。
【0015】
この実施例の包装機Pは、包装容器H内に被包装物を充填するための充填装置20と、包装容器H内の空気を不活性ガスに置換するためのガス置換装置50と、包装容器Hをシールするためのシール装置60と、被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器H内の酸素濃度を順次測定するための酸素濃度測定装置Gとを有する包装機であって、包装機Pは、酸素濃度測定装置Gにより順次測定された包装容器H内の酸素濃度測定値を制御部70に伝達するステップS1と、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か制御部70が判断するステップS2と、制御部70が酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、ガス置換ガス装置50において置換ガスの流量を上げるよう制御部70が指示するステップS3と、流量コントローラによって置換ガスの流量を上げるステップS4とを有する酸素濃度制御を行うことを特徴とする包装機である。以下、各構成について順次詳述する。
【0016】
この実施例の包装機Pは、包装容器(包装袋)Hの袋口を開口して被包装物を充填し施封する装置であり、図3に示すように、10のステーション1~10においてそれぞれ、包包装容器(包装袋)Hを順次搬送(間欠、連続を問わない。)されて来るグリップ対gに供給する給袋工程(ステーション1)と、包装容器(包装袋)Hに賞味期限等を印字する印字工程(ステーション2)と、印字検査を行う印字検査工程(ステーション3)と、包装容器(包装袋)Hの上部開口部を開口する袋開き工程(ステーション4)と、充填装置20により被包装物を包装容器(包装袋)H内に充填する充填工程(ステーション5)と、ガス置換装置50により包装容器H内の空気を不活性ガスに置換するガス充填工程(ステーション6,7)と、シール装置60により包装容器(包装袋)Hの上部開口部付近を水平方向にシールするトップシール工程(ステーション8)と、シール冷却装置80によりトップシールが冷却(目付け)されると共に酸素濃度測定装置Gにより包装容器H内の酸素濃度が測定されるシール冷却・酸素濃度測定工程(ステーション9)と、被包装物が包装された製品を機外に排出する製品排出工程(ステーション10)の10工程を繰り返し行い、被包装物を充填した製品を量産する装置である。
【0017】
なお、この実施例は移動体(円盤状回転体)53を回転駆動させるガス充填式ロータリー包装機Pであるが、本発明の包装機はこれに限定されるものではなく、公知の直線移動方式の包装機やトラック式包装機等であってもよい。直線移動方式の包装機とは、例えば直線部とその両端の半円形部からなる環状通路を水平移動する移動体に多数のグリップ対を直立姿勢または水平姿勢に変換自在に設け、給袋工程で供給される包装容器を各グリップ対に支持させて当該包装容器を開口工程、充填工程、袋口のシール工程等の各工程に間欠停止させ被包装物の袋詰めを行う構造のものをいう。また、袋把持部がグリップ対以外で構成された給袋包装機等も包含される。さらに、各包装ステーションの内容およびステーション数はこの実施例に限定されるものではなく、包装容器または被包装物等に応じて適宜設計変更可能である。
【0018】
さらに、本発明の包装機は、シート状のフィルムを製袋しつつ被包装物を当該袋内に充填包装する縦ピロー包装機または横ピロー包装機、その他の製袋包装機であってもよく、包装機の製品排出経路や包装機の下流側アウトラインに包装容器の酸素濃度測定装置Gが配置されたものであってもよい。
【0019】
さらに、包装容器としては、この実施例のように包装袋である他、瓶または樹脂成形容器などであってもよく、本発明の包装機は、飲料等を瓶に充填包装する瓶詰め包装機であってもよく、縦向き状態の瓶を通過させるコンベアの上方であって製品排出路付近に包装容器の酸素濃度測定装置Gが配置されたもの等であってもよい。
【0020】
この包装機Pの機台51上には、縦向きの間欠回転軸(図示しない)を回転自由に支持したスタンドを設け、その間欠回転軸に取り付けた円盤状回転体(移動体)53には、包装容器である包装容器Hを掴着又は釈放するための20個のグリップ対gが等角度間隔で放射方向に突出するように設けられている。そして、この実施例の包装機Pにおいて包装酸素濃度測定装置Gはシール冷却・酸素濃度測定工程(ステーション9)に配置されている。
【0021】
酸素濃度測定装置(O2レーザセンサ)Gは、被包装物を充填しガス置換して包装された包装容器H(食品を充填した包装容器に限定されず、例えば医療用輸液を充填した輸液バッグなどの食品以外を充填した包装容器も含む。)内の酸素濃度を測定する包装容器の酸素濃度測定装置であって、図4に示すように、特定波長のレーザー光を照射する発信器30を有するレーザー発生部31と、発信器30から発振されるレーザー光を受光する受信器32を有するレーザー受光部33とを備え、レーザー発生部31とレーザー受光部33とが包装容器Hの両側に対向して配されるレーザー式ガス濃度計Mを有し、レーザー発光部31の先端部31aとレーザー受光部33の先端部間の離隔距離が一定距離に保持された状態で、レーザー発光部33の先端部とレーザー受光部33の先端部を包装容器Hにそれぞれ当接させることで、順次測定される包装容器Hのレーザー発光部31とレーザー受光部33間における包装容器Hの測定距離が一定に保持されて包装容器H内の特定ガスの濃度が測定されるように構成されている。
【0022】
この実施例の酸素濃度測定装置被包装物Gは、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスによりガス置換されてシールされた包装容器H内の酸素濃度をレーザー式ガス濃度計Mによって測定するものである。
【0023】
レーザー式ガス濃度計Mは、半導体レーザーを光源とする赤外線吸収分光法を利用するもので、測定対象の分子に固有周波数の光を与えると光エネルギーを吸収しこれを測定することによりガス濃度の表示を行なうものである。
【0024】
具体的には、レーザー発生部31の発信器30から発振されるレーザー光は、レーザー発生部31の先端部内を通過して包装容器H内に侵入し、レーザー受光部33の受信器32に受光されるように構成されている。発信器30から発振される特定波長のレーザー光は、酸素ガスの場合、波長(固有周波数)760~770nmの範囲から選択される。そして、特定波長のレーザー光が、包装容器H内に残留している酸素ガスによって吸収されると、レーザー受光部33の受信器32に受光されたレーザー光の吸光度に基づいて包装体H内に残留している酸素ガスのガス濃度が測定されるように構成されている。
【0025】
そして、この実施例の包装容器の酸素濃度測定装置Gでは、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部間の離隔距離が一定距離に保持された状態で、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部を包装容器Hにそれぞれ当接させることで、順次測定される包装容器Hの、レーザー発光部31とレーザー受光部33間における包装容器Hの測定距離一定に保持されて包装容器H内の特定ガスの濃度が測定されるように構成されている。
【0026】
この実施例のレーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部は、相対的に接近及び離隔可能に構成されている。具体的には、この実施例のレーザー発光部31は、シリンダーベース34に固定されており、シリンダーベース34の下方にはシリンダー35が配置され、このシリンダー35によって、シリンダーベース34およびレーザー発光部31の先端部が図4中、左右に往復運動可能に構成されている。他方、この実施例のレーザー受光部33は、シリンダーベース36に固定されており、シリンダーベース36の下方にはシリンダー37が配置され、このシリンダー37によって、シリンダーベース36およびレーザー受光部33の先端部が図4中、左右に往復運動可能に構成されている。
【0027】
そして、この実施例のレーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部は、上記のように、シリンダー35およびシリンダー37の作用により相対的に接近及び離隔可能に構成されており、これらの作用により、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部間の離隔距離は、設定された一定距離に保持可能に構成されている。ただし、本発明における酸素濃度測定装置Gはこれに限定されるものではなく、レーザー発光部の先端部とレーザー受光部の先端部の配置位置が固定されていることにより、レーザー発光部の先端部とレーザー受光部の先端部間の離隔距離が一定距離に保持されるものでもよい。
【0028】
また、レーザー発光部31とレーザー受光部33の先端面は開口しており、レーザー発光部31とレーザー受光部33のレーザー経路(図示しない)内は、包装容器Hに当接後にレーザー照射前には真空雰囲気下となるように吸引機構(図示しない)が設けられていることが好ましい。さらに、レーザー経路に流量調整弁(図示しない)、流量計(図示しない)を介して窒素ガスを充填したタンク(図示しない)を取り付けて、窒素ガスを供給することにより、レーザー経路内の残存酸素率をほぼ0%として測定精度をより高めるようにしてもよい。
【0029】
対となる挟持体38,39は、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部を包装容器Hにそれぞれ当接させるためのものであり、この実施例では、図4に示すように、レーザー発光部31またはレーザー受光部33の下方であって包装容器Hの両側にそれぞれ配されている。挟持体39は、シリンダー40により図4中左右方向に往復動可能に構成されており、挟持体39が図4中左方向に移動すると、包装容器Hの底部付近の両側が挟持体38,39により挟圧され、この作用に伴って包装容器Hの上部が左右方向に膨張し、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部がそれぞれ包装容器Hに当接するように構成されている。
【0030】
上記のように、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部間の離隔距離が一定距離に保持された状態で、対となる挟持体38,39により包装容器Hを挟圧することにより、レーザー発光部31の先端部とレーザー受光部33の先端部が包装容器Hにそれぞれ当接するため、順次測定される包装容器Hのレーザー発光部31とレーザー受光部33間における包装容器Hの測定距離が一定に保持される。これにより、レーザー発光部31とレーザー受光33部間における被測定物の距離の変動がなくなり測定精度を向上させることができる。
【0031】
この実施例のガス置換装置50は、図3に示すように、ステーション7付近に設けられており、包装容器H内の空気を不活性ガスに置換する。不活性ガスは、図3または図5に示すように、不活性ガス入力口54を介して外部から流入され、流量コントローラ52の流量調整の下、ガスノズル55を介してグリップ対gに吊り下げ状に支持されて順次送られてくる包装容器H内に流入されて、包装容器H内の空気が不活性ガスに置換されるように構成されている。
【0032】
つぎに、本発明の包装機Pの特徴的作用(本発明の包装容器内の酸素濃度制御方法の一実施例)について説明する。
本発明の包装機Pは、図1に示すように、酸素濃度測定装置Gにより順次測定された包装容器H内の酸素濃度測定値を制御部70に伝達するステップS1と、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か制御部70が判断するステップS2と、制御部70が酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、ガス置換ガス装置50において置換ガスの流量を上げるよう制御部70が指示するステップS3と、流量コントローラ52によって置換ガスの流量を上げるステップS4とを有する酸素濃度制御を行う。
【0033】
具体的には、この実施例の包装機Pは、図1に示すように、包装機を起動すると、酸素濃度測定装置Gにより、被包装物の充填工程、ガス置換工程およびシール工程を経て生産された製品の包装容器H内の酸素濃度が順次測定され、包装容器H内の酸素濃度測定値が制御部(この実施例ではPLC)70に伝達されて格納される(ステップS1)。
【0034】
そして、制御部70は、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かを、順次送られてくる包装容器H内の酸素濃度測定値に基づいて判断する(ステップS2)。具体的には、この実施例の包装機Pの制御部70は、図2に示すように、酸素濃度測定値が出荷基準値(求められる酸素濃度、例えば3%)により低い値に設定された設定値(例えば、酸素濃度2.7%)に達した際に上昇傾向にあると判定する。これにより、酸素濃度測定値が出荷基準値に達する前に包装容器H内の酸素濃度制御が行われるため、包装容器H内に残存する酸素の濃度が規格値外となる製品の生産をより防止することができる。
【0035】
また、制御部70による酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断は、設定された複数の酸素濃度測定値に基づいて判定されることが好ましい。具体的には、この実施例では、10個の製品が連続で上昇した場合に制御部70は上昇傾向にあると判定する。これにより、何らかの理由で突発的に例えば1製品のみ(単発)、酸素濃度測定値が上昇した場合にこの図のフローチャートに示したような酸素濃度制御を行わないこととして、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否かの判断をより的確に行うことができるように構成されている。複数の酸素濃度測定値の個数は適宜設定可能であり、また、必ずしも不連続の複数回(例えば1つ飛びの複数)を排除するものではないが、正確性の観点からは連続的な複数製品に設定されることが好ましい。
【0036】
制御部70が、酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、ガス置換ガス装置50に対して置換ガスの流量を上げるよう制御部70が指示する(ステップS3)。これにより、流量コントローラ52によって置換ガスの流量を上げる酸素濃度制御が行われ、包装容器H内に不活性ガスがより多量に流入して酸素濃度を低下させる(ステップS4)。
【0037】
他方、制御部70が、酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断しない場合は、上述したステップS3以降は行われず運転が継続する。
【0038】
また、流量コントローラ52によって置換ガスの流量を上げるステップS4の後にも、製品の包装容器Hの酸素濃度測定は継続して行われており、酸素濃度測定値が上昇傾向にあるか否か制御部70が判断するステップS5が行われる。このステップS5における制御部70はステップS2と同様の判断を行い、酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判定する限り、ガス置換工程において置換ガスの流量を上げるよう制御部70が指示するステップS3と、流量コントローラ52によって置換ガスの流量を上げるステップS4が繰り返される。これにより、酸素濃度測定値が上昇傾向にある間は、繰り返し酸素濃度制御が行われることで、包装容器H内の酸素濃度の正常化が確実に行われるように構成されている。
【0039】
以上のように、本発明の包装機Pによれば、酸素濃度測定値に基づいたフィードバック制御(残存酸素濃度制御)が行われるため、包装容器H内に残存する酸素の濃度が規格値外となる製品が多量に生産されることが防止される。
【0040】
なお、前述した本発明の一実施例の包装機Pにおける酸素濃度測定値に基づいたフィードバック制御(残存酸素濃度制御)または本発明の包装容器内の酸素濃度制御方法の一実施例では、制御部70は酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると包装容器H内の残存酸素濃度を下げるステップが、ガス置換工程において置換ガスの流量を上げるよう制御部70が指示するステップと、流量コントローラ52によって置換ガスの流量を上げるステップとを有するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
例えば制御部70が酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると包装容器H内の残存酸素濃度を下げるステップは、ガス置換工程において包装容器H内におけるガスノズル55の位置を下げるよう制御部70が指示するステップと、包装容器H内におけるガスノズル55の位置が下がるステップとを有するものでもよく、そのようなものも本発明の範疇に包含される。
【0042】
具体的には、ガス置換装置50のガスノズル55は、ノズル昇降部(図示しない)に昇降可能に設けられており、制御部70は酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、ノズル昇降部を制御してガスノズル55を包装容器H内においてより下方まで深く降下させる。これにより、包装容器H内の底部の酸素までガス置換が行われることにより残存酸素濃度を下げるよう作用する。
【0043】
また、制御部70が酸素濃度測定値が上昇傾向にあると判断すると、包装容器H内の残存酸素濃度を下げるステップは、包装機Pの回転数(例えば単位時間当たりの移動体53の回転数(包装能力[bpm:1分間当たりの生産袋数])を下げるよう制御部70が指示するステップと、包装機Pの回転数が下がり包装容器H内における置換ガス充填時間が増加するステップとを有するものでもよく、そのようなものも本発明の範疇に包含される。
【符号の説明】
【0044】
G 酸素濃度測定装置
M レーザー式ガス濃度計
P 包装機
H 包装容器
g グリップ対
1~10 各包装ステーション
20 充填装置
30 発信器
31 レーザー発信部
32 受信器
33 レーザー受信部
34 シリンダーベース
35 シリンダー
36 シリンダーベース
37 シリンダー
38,39 対となる挟持体
40 シリンダー
50 ガス置換装置
51 機台
52 流量コントローラ
53 円盤状回転体(移動体)
54 不活性ガス入力口
55 ガスノズル
60 シール装置
70 制御部
80 シール冷却装置
図1
図2
図3
図4
図5