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特開2023-65040ラジアントチューブの交換方法及びラジアントチューブの交換台車
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065040
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ラジアントチューブの交換方法及びラジアントチューブの交換台車
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/12 20060101AFI20230502BHJP
   C21D 1/34 20060101ALI20230502BHJP
   F23D 99/00 20100101ALI20230502BHJP
【FI】
F23D14/12 A
C21D1/34 P
F23D99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175597
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】久家 由紀香
【テーマコード(参考)】
3K017
3K065
【Fターム(参考)】
3K017BA10
3K017BB09
3K065QB00
(57)【要約】
【課題】本開示は、加熱炉のメンテナンス作業を効率的に実施することが可能なラジアントチューブの交換方法及びラジアントチューブの交換台車を説明する。
【解決手段】ラジアントチューブの交換方法は、保持部がラジアントチューブを保持していない第1の台車を架構デッキ上に配置すると共に、保持部が新品のラジアントチューブを保持している第2の台車を架構デッキ上に配置する第1の工程と、架構デッキのうち使用済のラジアントチューブと向かい合う交換位置に第1の台車が位置するように第1の台車を移動させる第2の工程と、使用済のラジアントチューブを第1の台車の保持部に保持させる第3の工程と、第1の台車を交換位置から退避させる第4の工程と、交換位置に第2の台車が位置するように、第2の台車を移動させる第5の工程と、第2の台車の保持部が保持する新品のラジアントチューブを炉体に取り付ける第6の工程とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の台車及び第2の台車を含む複数の台車であって、前記複数の台車はそれぞれ、加熱炉の架構デッキ上を走行可能に構成された走行部と、前記走行部に搭載され且つラジアントチューブを保持可能に構成された保持部とを備える複数の台車を用いて、前記加熱炉の炉体に取り付けられている使用済のラジアントチューブを新品のラジアントチューブに交換する方法であって、
前記保持部がラジアントチューブを保持していない前記第1の台車を前記架構デッキ上に配置すると共に、前記保持部が前記新品のラジアントチューブを保持している前記第2の台車を前記架構デッキ上に配置する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記架構デッキのうち前記使用済のラジアントチューブと向かい合う交換位置に前記第1の台車が位置するように、前記架構デッキ上において前記第1の台車を移動させる第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記使用済のラジアントチューブを前記第1の台車の前記保持部に保持させる第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記架構デッキ上において前記第1の台車を前記交換位置から退避させる第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記交換位置に前記第2の台車が位置するように、前記架構デッキ上において前記第2の台車を移動させる第5の工程と、
前記第5の工程の後に、前記第2の台車の前記保持部が保持する前記新品のラジアントチューブを前記炉体に取り付ける第6の工程とを含む、ラジアントチューブの交換方法。
【請求項2】
前記第1の工程の前に、前記加熱炉の操業中に、天井クレーンを用いて前記第1の台車及び前記第2の台車を地上から前記架構デッキに運搬する第7の工程と、
前記第6の工程の後に、前記加熱炉の操業中に、前記天井クレーンを用いて前記第1の台車及び前記第2の台車を前記架構デッキから地上に運搬する第8の工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の工程は、前記第1の台車を前記架構デッキに固定した状態で、前記使用済のラジアントチューブを前記第1の台車の前記保持部に保持させることを含み、
前記第6の工程は、前記第2の台車を前記架構デッキに固定した状態で、前記第2の台車の前記保持部が保持する前記新品のラジアントチューブを前記炉体に取り付けることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第5の工程の後で且つ前記第6の工程の前に、前記加熱炉内に設けられている台座部までの距離を測定部によって測定し、測定された当該距離に基づいて前記新品のラジアントチューブの押込量を決定する第7の工程をさらに含み、
前記第6の工程は、前記押込量に基づいて前記新品のラジアントチューブを前記第2の台車から前記加熱炉の内部に向けて押し込むことにより、前記ラジアントチューブの先端部に設けられている突出部を前記台座部に載置させることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保持部は、
ベース部と、
ラジアントチューブの基端部と前記ベース部とをピンを介して着脱可能に連結するように構成された連結部とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保持部は、
ベース部と、
ラジアントチューブの上側基端部と、前記ベース部とを第1のピンを介して着脱可能に連結するように構成された第1の連結部と、
ラジアントチューブの下側基端部と前記ベース部とを第2のピンを介して着脱可能に連結するように構成された第2の連結部とを含み、
前記第1の連結部は、前記ベース部に設けられた第1の貫通孔に前記第1のピンが挿通された状態で、前記第1のピンの周りに回動可能であり、
前記第2の連結部は、前記ベース部に設けられ且つ前記第1の貫通孔を中心とする円弧状に延びる第2の貫通孔に前記第2のピンが挿通された状態で、前記第2の貫通孔の延在方向に沿って移動可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記保持部は、前記走行部に対して進退可能となるように前記走行部に搭載されており、
前記第3の工程は、
前記第1の台車の前記保持部が前記炉体に近づくように前記保持部を前進させることと、
前記使用済のラジアントチューブを前記第1の台車の前記保持部に保持させた状態で、前記使用済のラジアントチューブを前記炉体から取り外すことと、
前記第1の台車の前記保持部が前記炉体から離れるように前記第1の台車の前記保持部を後退させることとをこの順に実行することを含み、
前記第6の工程は、
前記第2の台車の前記保持部が前記炉体に近づくように前記第2の台車の前記保持部を前進させることと、
前記第2の台車の前記保持部が保持する前記新品のラジアントチューブを前記炉体に取り付けることと、
前記第2の台車の前記保持部が前記炉体から離れるように前記第2の台車の前記保持部を後退させることとをこの順に実行することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記台車は、ラジアントチューブを吊り下げて保持するように構成されると共に、前記走行部に対して進退可能となるように前記走行部に搭載された吊り下げ部をさらに備え、
前記第1の工程では、前記第2の台車の前記保持部に代えて、前記第2の台車の前記吊り下げ部が前記新品のラジアントチューブを吊り下げ保持しており、
前記第3の工程は、
前記第1の台車の前記保持部が前記炉体に近づくように前記保持部を前進させることと、
前記使用済のラジアントチューブを前記第1の台車の前記保持部に保持させた状態で、前記使用済のラジアントチューブを前記炉体から取り外すことと、
前記第1の台車の前記保持部が前記炉体から離れるように前記第1の台車の前記保持部を後退させることと、
前記使用済のラジアントチューブを前記第1の台車の前記吊り下げ部によって吊り下げ保持した後に、前記第1の台車の前記保持部による前記使用済のラジアントチューブの保持を解除することと、
前記第1の台車の前記吊り下げ部が前記炉体から離れるように前記第1の台車の前記吊り下げ部を後退させることとをこの順に実行することを含み、
前記第6の工程は、
前記第2の台車の前記吊り下げ部が前記炉体に近づくように前記第2の台車の前記吊り下げ部を前進させること、
前記新品のラジアントチューブを前記第2の台車の前記保持部によって保持した後に、前記第2の台車の前記吊り下げ部による前記新品のラジアントチューブの吊り下げ保持を解除することと、
前記第2の台車の前記保持部が前記炉体に近づくように前記第2の台車の前記保持部を前進させることと、
前記第2の台車の前記保持部が保持する前記新品のラジアントチューブを前記炉体に取り付けることと、
前記第2の台車の前記保持部が前記炉体から離れるように前記第2の台車の前記保持部を後退させることとをこの順に実行することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1の台車、第2の台車及び第3の台車を含む複数の台車であって、前記複数の台車はそれぞれ、加熱炉の架構デッキ上を走行可能に構成された走行部と、前記走行部に搭載され且つラジアントチューブを保持可能に構成された保持部とを備える複数の台車を用いて、前記加熱炉の炉体に取り付けられている第1の使用済のラジアントチューブを第1の新品のラジアントチューブに交換すると共に、前記加熱炉の炉体に取り付けられている第2の使用済のラジアントチューブを第2の新品のラジアントチューブに交換する方法であって、
前記保持部がラジアントチューブを保持していない前記第1の台車を前記架構デッキ上に配置し、前記保持部が前記第1の新品のラジアントチューブを保持している前記第2の台車を前記架構デッキ上に配置すると共に、前記保持部が前記第2の新品のラジアントチューブを保持している前記第3の台車を前記架構デッキ上に配置する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記架構デッキのうち前記第1の使用済のラジアントチューブと向かい合う第1の交換位置に前記第1の台車が位置するように、前記架構デッキ上において前記第1の台車を移動させる第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第1の使用済のラジアントチューブを前記第1の台車の前記保持部に保持させる第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記架構デッキ上において前記第1の台車を前記第1の交換位置から退避させる第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記第1の交換位置に前記第2の台車が位置するように、前記架構デッキ上において前記第2の台車を移動させる第5の工程と、
前記第5の工程の後に、前記第2の台車の前記保持部が保持する前記第1の新品のラジアントチューブを前記炉体に取り付ける第6の工程と、
前記第6の工程の後に、前記架構デッキ上において前記第2の台車を前記第1の交換位置から退避させる第7の工程と、
前記第7の工程の後に、前記架構デッキのうち前記第2の使用済のラジアントチューブと向かい合う第2の交換位置に前記第2の台車が位置するように、前記架構デッキ上において前記第2の台車を移動させる第8の工程と、
前記第8の工程の後に、前記第2の使用済のラジアントチューブを前記第2の台車の前記保持部に保持させる第9の工程と、
前記第9の工程の後に、前記架構デッキ上において前記第2の台車を前記第2の交換位置から退避させる第10の工程と、
前記第10の工程の後に、前記第2の交換位置に前記第3の台車が位置するように、前記架構デッキ上において前記第3の台車を移動させる第11の工程と、
前記第11の工程の後に、前記第3の台車の前記保持部が保持する前記第2の新品のラジアントチューブを前記炉体に取り付ける第12の工程とを含む、ラジアントチューブの交換方法。
【請求項10】
加熱炉の架構デッキ上を走行可能に構成された走行部と、
ラジアントチューブを保持可能に構成された保持部と、
ラジアントチューブを吊り下げて保持するように構成された吊り下げ部とを備え、
前記保持部は、前記走行部に対して進退可能となるように前記走行部に搭載されており、
前記吊り下げ部は、前記保持部とは独立して前記走行部に対して進退可能となるように前記走行部に搭載されている、ラジアントチューブの交換台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラジアントチューブの交換方法及びラジアントチューブの交換台車に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉(例えば、連続焼鈍炉など)の内部には、多数の炉内部材(例えば、ラジアントチューブ、ローラなど)が配置されている。加熱炉の定期的なメンテナンスの際には、使用済の炉内部材を新品の炉内部材に交換する作業の他に、加熱炉の改修・改良等の作業も実施されるが、これらの作業には、加熱炉の建屋に設けられている天井クレーンが用いられる。
【0003】
ところで、ラジアントチューブは、一般に、地上から約5m~約20m程度の高所に位置している。そのため、ラジアントチューブの交換のためには、天井クレーンを用いる必要があり、交換作業に時間を要する。また、メンテナンス時には、通常、複数のラジアントチューブの交換作業が発生するので、数に限りのある天井クレーンがラジアントチューブの交換作業に占有されてしまい、他の作業に支障が生ずることがある。
【0004】
特許文献1は、ラジアントチューブを保持する保持部を備える交換台車と、交換台車の移動用レールとが一体化された交換装置を、天井クレーンによって、地上と架構デッキとの間で運搬するようにした、ラジアントチューブの交換方法を開示している。この場合、炉体に対するラジアントチューブの着脱時には、ラジアントチューブが交換台車の保持部に保持されており、天井クレーンを用いなくてもよいので、ラジアントチューブの交換作業における天井クレーンの占有時間が短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-194506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の交換方法によれば、以下の作業時に天井クレーンが占有されており、以下のいずれの作業も加熱炉のメンテナンス期間中に行われる。そのため、特許文献1の交換方法によれば、加熱炉のメンテナンス期間中において、依然として天井クレーンの使用を要していた。
(1)使用済のラジアントチューブを収容するための空の交換装置を地上から架構デッキに運搬する時。
(2)使用済のラジアントチューブを保持した交換装置を架構デッキから地上に運搬する時。
(3)交換装置から使用済のラジアントチューブを降ろして、新品のラジアントチューブを交換装置に搭載する時。
(4)新品のラジアントチューブを保持した交換装置を地上から架構デッキに運搬する時。
(5)新品のラジアントチューブが炉体に取り付けられて空となった交換装置を架構デッキから地上に運搬する時。
【0007】
そこで、本開示は、加熱炉のメンテナンス作業を効率的に実施することが可能なラジアントチューブの交換方法及びラジアントチューブの交換台車を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例1.ラジアントチューブの交換方法の一例は、第1の台車及び第2の台車を含む複数の台車であって、複数の台車はそれぞれ、加熱炉の架構デッキ上を走行可能に構成された走行部と、走行部に搭載され且つラジアントチューブを保持可能に構成された保持部とを備える複数の台車を用いて、加熱炉の炉体に取り付けられている使用済のラジアントチューブを新品のラジアントチューブに交換する方法である。ラジアントチューブの交換方法の一例は、保持部がラジアントチューブを保持していない第1の台車を架構デッキ上に配置すると共に、保持部が新品のラジアントチューブを保持している第2の台車を架構デッキ上に配置する第1の工程と、第1の工程の後に、架構デッキのうち使用済のラジアントチューブと向かい合う交換位置に第1の台車が位置するように、架構デッキ上において第1の台車を移動させる第2の工程と、第2の工程の後に、使用済のラジアントチューブを第1の台車の保持部に保持させる第3の工程と、第3の工程の後に、架構デッキ上において第1の台車を交換位置から退避させる第4の工程と、第4の工程の後に、交換位置に第2の台車が位置するように、架構デッキ上において第2の台車を移動させる第5の工程と、第5の工程の後に、第2の台車の保持部が保持する新品のラジアントチューブを炉体に取り付ける第6の工程とを含む。この場合、ラジアントチューブの交換作業の際に、架構デッキを走行可能な空の台車(第1の台車)と、架構デッキを走行可能で且つ新品のラジアントチューブを保持している台車(第2の台車)とが、すでに架構デッキ上に配置されている。そのため、使用済のラジアントチューブを炉体から取り外してから新品のラジアントチューブを炉体に取り付けるまでの過程において、加熱炉の天井クレーンを使用する必要がない。したがって、ラジアントチューブの交換作業における天井クレーンの占有時間が極めて短くなる。その結果、加熱炉のメンテナンス作業を効率的に実施することが可能となる。
【0009】
例2.例1の方法は、第1の工程の前に、加熱炉の操業中に、天井クレーンを用いて第1の台車及び第2の台車を地上から架構デッキに運搬する第7の工程と、第6の工程の後に、加熱炉の操業中に、天井クレーンを用いて第1の台車及び第2の台車を架構デッキから地上に運搬する第8の工程とをさらに含んでいてもよい。この場合、第1の台車及び第2の台車を天井クレーンにより地上と架構デッキとの間で運搬する作業が、加熱炉の操業中、すなわち、加熱炉がメンテナンスされていない期間に実施される。換言すれば、加熱炉のメンテナンス作業の期間中は、ラジアントチューブの交換作業には天井クレーンが使用されない。そのため、加熱炉のメンテナンス作業を極めて効率的に実施することが可能となる。
【0010】
例3.例1又は例2の方法において、第3の工程は、第1の台車を架構デッキに固定した状態で、使用済のラジアントチューブを第1の台車の保持部に保持させることを含み、第6の工程は、第2の台車を架構デッキに固定した状態で、第2の台車の保持部が保持する新品のラジアントチューブを炉体に取り付けることを含んでいてもよい。この場合、台車が位置決めされた状態で、台車がラジアントチューブを授受する。そのため、ラジアントチューブの交換作業をより容易に実施することが可能となる。また、ラジアントチューブの交換作業の際に、台車がバランスを崩して傾くといった懸念もなくなる。
【0011】
例4.例1~例3のいずれかの方法は、第5の工程の後で且つ第6の工程の前に、加熱炉内に設けられている台座部までの距離を測定部によって測定し、測定された当該距離に基づいて新品のラジアントチューブの押込量を決定する第7の工程をさらに含み、第6の工程は、押込量に基づいて新品のラジアントチューブを第2の台車から加熱炉の内部に向けて押し込むことにより、ラジアントチューブの先端部に設けられている突出部を台座部に載置させることを含んでいてもよい。この場合、測定部によって距離を測定するという極めて簡易な手法により、加熱炉内に作業者が入ってラジアントチューブの先端部(突出部)の位置を確認するといった作業を要することなく、加熱炉内の適切な位置に新品のラジアントチューブを容易に配置することが可能となる。
【0012】
例5.例1~例4のいずれかの方法において、保持部は、ベース部と、ラジアントチューブの基端部とベース部とをピンを介して着脱可能に連結するように構成された連結部とを含んでいてもよい。この場合、ピンの挿抜という極めて簡易な手法により、ラジアントチューブを保持部に保持させることが可能となる。
【0013】
例6.例1~例4のいずれかの方法において、保持部は、ベース部と、ラジアントチューブの上側基端部と、ベース部とを第1のピンを介して着脱可能に連結するように構成された第1の連結部と、ラジアントチューブの下側基端部とベース部とを第2のピンを介して着脱可能に連結するように構成された第2の連結部とを含み、第1の連結部は、ベース部に設けられた第1の貫通孔に第1のピンが挿通された状態で、第1のピンの周りに回動可能であり、第2の連結部は、ベース部に設けられ且つ第1の貫通孔を中心とする円弧状に延びる第2の貫通孔に第2のピンが挿通された状態で、第2の貫通孔の延在方向に沿って移動可能であってもよい。ところで、ラジアントチューブは、使用に伴い経時的に劣化して下方に垂れ下がるように変形する。そのため、使用済のラジアントチューブを水平方向にまっすぐに炉体から引き抜く場合、当該変形部分が炉壁に干渉することがありうる。しかしながら、例6によれば、ラジアントチューブが保持部に保持された状態において、第2の貫通孔の延在方向に沿って、第1のピンの周りにラジアントチューブが回動可能となる。そのため、使用済のラジアントチューブに変形が存在している場合には、第1のピンの周りにラジアントチューブを回動させることで、当該変形部分を上方に変位させることができる。したがって、この状態で使用済のラジアントチューブを炉体から引き抜くことにより、大きく変形した使用済のラジアントチューブであっても、炉体から水平方向に容易に引き抜くことが可能となる。
【0014】
例7.例1~例6のいずれかの方法において、保持部は、走行部に対して進退可能となるように走行部に搭載されており、第3の工程は、第1の台車の保持部が炉体に近づくように保持部を前進させることと、使用済のラジアントチューブを第1の台車の保持部に保持させた状態で、使用済のラジアントチューブを炉体から取り外すことと、第1の台車の保持部が炉体から離れるように第1の台車の保持部を後退させることとをこの順に実行することを含み、第6の工程は、第2の台車の保持部が炉体に近づくように第2の台車の保持部を前進させることと、第2の台車の保持部が保持する新品のラジアントチューブを炉体に取り付けることと、第2の台車の保持部が炉体から離れるように第2の台車の保持部を後退させることとをこの順に実行することを含んでいてもよい。この場合、保持部が走行部に対して進退することで、保持部が保持するラジアントチューブを、台車から加熱炉へ、または、加熱炉から台車へと、容易に移動させることができる。そのため、ラジアントチューブの交換作業をより容易に実施することが可能となる。
【0015】
例8.例7の方法において、台車は、ラジアントチューブを吊り下げて保持するように構成されると共に、走行部に対して進退可能となるように走行部に搭載された吊り下げ部をさらに備え、第1の工程では、第2の台車の保持部に代えて、第2の台車の吊り下げ部が新品のラジアントチューブを吊り下げ保持しており、第3の工程は、第1の台車の保持部が炉体に近づくように保持部を前進させることと、使用済のラジアントチューブを第1の台車の保持部に保持させた状態で、使用済のラジアントチューブを炉体から取り外すことと、第1の台車の保持部が炉体から離れるように第1の台車の保持部を後退させることと、使用済のラジアントチューブを第1の台車の吊り下げ部によって吊り下げ保持した後に、第1の台車の保持部による使用済のラジアントチューブの保持を解除することと、第1の台車の吊り下げ部が炉体から離れるように第1の台車の吊り下げ部を後退させることとをこの順に実行することを含み、第6の工程は、第2の台車の吊り下げ部が炉体に近づくように第2の台車の吊り下げ部を前進させること、新品のラジアントチューブを第2の台車の保持部によって保持した後に、第2の台車の吊り下げ部による新品のラジアントチューブの吊り下げ保持を解除することと、第2の台車の保持部が炉体に近づくように第2の台車の保持部を前進させることと、第2の台車の保持部が保持する新品のラジアントチューブを炉体に取り付けることと、第2の台車の保持部が炉体から離れるように第2の台車の保持部を後退させることとをこの順に実行することを含んでいてもよい。ところで、加熱炉によっては、架構デッキのスペースが小さく、小型台車を用いなければならない場合がある。走行部に搭載されている保持部は、小型台車の大きさ(走行部の大きさ)を超えて進退できないため、小型台車に対するラジアントチューブの保持位置に制約が存在している。そのため、小型台車の保持部にラジアントチューブを保持させると、ラジアントチューブが小型台車からはみ出したり、ラジアントチューブの重さによって小型の台車が浮き上がったりしてしまう懸念がありうる。しかしながら、例8によれば、炉体から取り外された使用済のラジアントチューブを受け取るときと、新品のラジアントチューブを炉体に取り付けるときには保持部でこれらのラジアントチューブを保持する一方で、それ以外のときには、吊り下げ部によってこれらのラジアントチューブを吊り下げ保持している。このように、ラジアントチューブが保持部と吊り下げ部との間で移し替えられることにより、吊り下げ部によって吊り下げ保持されているラジアントチューブの小型台車に対する位置を調節できる。そのため、小型台車を用いる場合であっても、例えば小型台車の大きさ(走行部の長さ)を超えてラジアントチューブが進退できるようになり、小型台車に対するラジアントチューブの保持位置の制約が緩やかとなる。したがって、小型台車によってラジアントチューブを安定して移動させることが可能となる。
【0016】
例9.ラジアントチューブの交換方法の他の例は、第1の台車、第2の台車及び第3の台車を含む複数の台車であって、複数の台車はそれぞれ、加熱炉の架構デッキ上を走行可能に構成された走行部と、走行部に搭載され且つラジアントチューブを保持可能に構成された保持部とを備える複数の台車を用いて、加熱炉の炉体に取り付けられている第1の使用済のラジアントチューブを第1の新品のラジアントチューブに交換すると共に、加熱炉の炉体に取り付けられている第2の使用済のラジアントチューブを第2の新品のラジアントチューブに交換する方法である。ラジアントチューブの交換方法の他の例は、保持部がラジアントチューブを保持していない第1の台車を架構デッキ上に配置し、保持部が第1の新品のラジアントチューブを保持している第2の台車を架構デッキ上に配置すると共に、保持部が第2の新品のラジアントチューブを保持している第3の台車を架構デッキ上に配置する第1の工程と、第1の工程の後に、架構デッキのうち第1の使用済のラジアントチューブと向かい合う第1の交換位置に第1の台車が位置するように、架構デッキ上において第1の台車を移動させる第2の工程と、第2の工程の後に、第1の使用済のラジアントチューブを第1の台車の保持部に保持させる第3の工程と、第3の工程の後に、架構デッキ上において第1の台車を第1の交換位置から退避させる第4の工程と、第4の工程の後に、第1の交換位置に第2の台車が位置するように、架構デッキ上において第2の台車を移動させる第5の工程と、第5の工程の後に、第2の台車の保持部が保持する第1の新品のラジアントチューブを炉体に取り付ける第6の工程と、第6の工程の後に、架構デッキ上において第2の台車を第1の交換位置から退避させる第7の工程と、第7の工程の後に、架構デッキのうち第2の使用済のラジアントチューブと向かい合う第2の交換位置に第2の台車が位置するように、架構デッキ上において第2の台車を移動させる第8の工程と、第8の工程の後に、第2の使用済のラジアントチューブを第2の台車の保持部に保持させる第9の工程と、第9の工程の後に、架構デッキ上において第2の台車を第2の交換位置から退避させる第10の工程と、第10の工程の後に、第2の交換位置に第3の台車が位置するように、架構デッキ上において第3の台車を移動させる第11の工程と、第11の工程の後に、第3の台車の保持部が保持する第2の新品のラジアントチューブを炉体に取り付ける第12の工程とを含む。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。また、交換対象のラジアントチューブの数よりも1つ多い数の台車を準備しておくだけで、使用済のラジアントチューブを新品のラジアントチューブに順次に交換することができる。すなわち、第1の新品のラジアントチューブが加熱炉に取り付けられて空となった第2の台車に第2の使用済のラジアントチューブを保持させることにより、最小限の数の台車で極めて効率的にラジアントチューブの交換作業を行うことが可能となる。
【0017】
例10.ラジアントチューブの交換台車の一例は、加熱炉の架構デッキ上を走行可能に構成された走行部と、ラジアントチューブを保持可能に構成された保持部と、ラジアントチューブを吊り下げて保持するように構成された吊り下げ部とを備える。保持部は、走行部に対して進退可能となるように走行部に搭載されている。吊り下げ部は、保持部とは独立して走行部に対して進退可能となるように走行部に搭載されている。この場合、例1及び例8と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係るラジアントチューブの交換方法及びラジアントチューブの交換台車によれば、加熱炉のメンテナンス作業を効率的に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、加熱炉の一例を概略的に示す上面図である。
図2図2(a)は図1のIIA-IIA断面図であり、図2(b)は図1のIIB-IIB断面図である。
図3図3は、交換台車の一例を概略的に示す側面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図5図5は、ベース部と連結部との連結状態を説明するための斜視図である。
図6図6は、ラジアントチューブの交換処理の一例を説明するための、加熱炉の上面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線断面図である。
図8図8は、図6の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線断面図である。
図10図10は、図8の後続の処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
図11図11は、図10の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図12図12は、図11の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図13図13は、ラジアントチューブの交換処理の他の例を説明するための、加熱炉の上面図である。
図14図14は、図13の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図15図15は、図14の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図16図16は、図15の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図17図17は、図16の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図18図18は、図17の後続の処理を説明するための、加熱炉の上面図である。
図19図19は、交換台車の他の例を概略的に示す側面図である。
図20図20は、図19の交換台車を用いて使用済のラジアントチューブを炉体から取り外す処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
図21図21は、図20の後続の処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
図22図22は、図21の後続の処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
図23図23は、図19の交換台車を用いて新品のラジアントチューブを炉体に取り付ける処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
図24図24は、図23の後続の処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
図25図25は、図24の後続の処理を説明するための、加熱炉及び交換台車の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0021】
[加熱炉]
まず、図1及び図2を参照して、加熱炉1の構成について説明する。加熱炉1は、例えば連続焼鈍炉であり、炉体2と、炉体2の内部に配置された複数(例えば数十本)のラジアントチューブ3と、架構デッキ4と、図示しない搬送装置とを備える。
【0022】
炉体2は、ラジアントチューブ3が取り付けられる前壁2aと、前壁2aと向かい合うように位置する後壁2bと、炉体2内に位置するように後壁2bの壁面に設けられた台座部2cとを含む。前壁2aには、ラジアントチューブ3を取り付けるための複数の開口部2dが形成されている。なお、ラジアントチューブ3は、前壁2aに対して、ボルト等の締結部材を用いて取り付けられていてもよいし、溶接等により取り付けられていてもよい。
【0023】
ラジアントチューブ3は、炉体2の内部の所定の領域を加熱するためのチューブ状の燃焼室である。ラジアントチューブ3は、炉体2の内部において、例えば地上(床上)から約5m~約20mの高さに位置している。ラジアントチューブ3の重量は、例えば、400kg~600kg程度であってもよい。なお、以下では、交換対象となる使用済のラジアントチューブ3を「ラジアントチューブ3U」(図面において黒塗りで示される)と称し、ラジアントチューブ3Uに代えて用いられる新品のラジアントチューブ3を「ラジアントチューブ3N」(図面において太線で示される)と称することがある。
【0024】
ラジアントチューブ3は、図2に例示されるように、本体部3aと、基端部3b,3cとを含む。本体部3aは、ラジアントチューブ3が炉体2に取り付けられた状態において、鉛直平面内において延びるように屈曲していてもよい。本体部3aは、例えば、アルファベットの「W」字状に屈曲していてもよい。ラジアントチューブ3が使用により劣化すると、図2(b)に例示されるように、下方に垂れ下がるように変形する。
【0025】
本体部3aの先端部(基端部3b,3cとは反対側の部分)には、突出部3dが設けられている。突出部3dは、ラジアントチューブ3が炉体2に取り付けられた状態において、台座部2cに載置されている。
【0026】
基端部3b(上側基端部)は、ラジアントチューブ3が炉体2に取り付けられた状態において、上側に位置していてもよい。基端部3c(下側基端部)は、ラジアントチューブ3が炉体2に取り付けられた状態において、下側に位置していてもよい。
【0027】
架構デッキ4は、炉体2の外側に設けられており、ラジアントチューブ3の交換作業を含む加熱炉1の各種メンテナンス作業などを作業員が行えるスペースとして構成されている。炉体2の各フロアに対してそれぞれ架構デッキ4が設けられていてもよい。搬送装置は、加熱炉1の各種メンテナンス作業のために、物品を地上と架構デッキ4との間で運搬したり、物品を空中に吊り下げ保持するように構成されている。搬送装置は、例えば、加熱炉1の建屋の天井に設けられた天井クレーンであってもよいし、移動式クレーンであってもよいし、加熱炉1の建屋に設けられたビームを走行可能に構成されたチェーンブロックであってもよいし、フォークリフトであってもよい。
【0028】
[交換台車]
続いて、図3図5を参照して、交換台車10(台車)の構成について説明する。交換台車10は、ラジアントチューブ3の交換のために用いられるものであり、天井クレーンによって地上と架構デッキ4との間を運搬される。なお、以下では、ラジアントチューブ3が搭載されていない空の交換台車10(第1の台車)を「交換台車10A」と称し、ラジアントチューブ3Nが搭載されている交換台車10(第2の台車)を「交換台車10B」と称することがある。
【0029】
交換台車10は、図3及び図4に示されるように、走行部20と、保持部30とを含む。走行部20は、車体21と、複数の車輪22と、駆動部23と、レール部材24とを含む。車体21は、所定の方向に沿って延びており、上方から見て略矩形状を呈している。車体21の長さは、ラジアントチューブ3よりも長くてもよいし、ラジアントチューブ3と同程度であってもよい。
【0030】
複数の車輪22は、車体21に対して回転可能となるように車体21の側方に取り付けられている。これにより、例えば作業者が交換台車10を手で押し引きすることで、交換台車10が架構デッキ4上を移動可能となっている。
【0031】
駆動部23は、例えば電動モータなどのアクチュエータであり、複数の車輪22のうちの少なくとも一つを駆動するように構成されている。駆動部23は、作業者による交換台車10の押し引きを補助するように構成されていてもよいし、コントローラ(図示せず)からの指示に基づいて車輪22を駆動するように構成されていてもよい。後者の場合、作業者が遠隔で交換台車10を操作することが可能となる。
【0032】
レール部材24は、車体21の長手方向に沿って直線状に延びるように、車体21に設けられている。レール部材24は、図4に例示されるように、断面が略C字形状を呈していてもよい。
【0033】
保持部30は、走行部20に搭載されており、ラジアントチューブ3を保持可能に構成されている。保持部30は、ベース部40と、2つの連結部50とを含む。
【0034】
ベース部40は、ベース部材41と、一対の側壁42と、複数の車輪43とを含む。一対の側壁42は、ベース部材41上に設けられている。一対の側壁42は、例えば板状を呈しており、車体21の幅方向において向かい合うように配置されている。
【0035】
図3及び図5に示されるように、側壁42には、貫通孔42a,42bが設けられている。貫通孔42a(第1の貫通孔)は、側壁42の上部に位置しており、円形状を呈している。貫通孔42b(第2の貫通孔)は、側壁42の下部に位置している。貫通孔42bは、一対の側壁42の対向方向から見たときに、貫通孔42aを中心とした円弧状を呈している。貫通孔42bの長手方向(延在方向)における長さは、例えば、10cm~20cm程度であってもよい。
【0036】
複数の車輪43は、ベース部材41に対して回転可能となるようにベース部材41の側方に取り付けられている。車輪43は、レール部材24の長手方向に沿って転動するように構成されている。そのため、例えば作業者がベース部40を手で押し引きすることで、ベース部40は、レール部材24の長手方向に沿って、レール部材24の一端部と他端部との間を移動可能となっている。なお、車輪43は、図4に例示されるように、レール部材24によって上下方向から挟まれていてもよい。この場合、上下方向や水平方向におけるベース部40のがたつきなどがレール部材24によって抑制される。
【0037】
2つの連結部50は、ラジアントチューブ3とベース部40とを連結するように構成されている。2つの連結部50は、上下方向に並ぶように、ベース部40(側壁42)に対して着脱可能に取り付けられている。なお、以下では、上方に位置する連結部50を「連結部50A」(第1の連結部)と称し、下方に位置する連結部50を「連結部50B」(第2の連結部)と称することがある。
【0038】
連結部50は、図3図5に示されるように、ベース部材51と、挿入部材52と、一対の壁部材53と、複数のピン54とを含む。ベース部材51は、例えば板状を呈している。
【0039】
挿入部材52は、ベース部材51の一方の主面から突出するように、ベース部材51に設けられている。挿入部材52は、例えば、ラジアントチューブ3の内径よりも小さい円柱状を呈している。挿入部材52には、その外周面から外方に突出するフランジ部52aが設けられている。フランジ部52aは、図示しない締結具(例えばボルト等)によってラジアントチューブ3の基端部3bが着脱可能に構成されている。ラジアントチューブ3の基端部3bにフランジ部52aが固定される際に、挿入部材52が基端部3b内に挿入されることで、ラジアントチューブ3のがたつきなどが抑制される。
【0040】
一対の壁部材53は、ベース部材51の他方の主面(挿入部材52が設けられているのとは反対側の主面)から突出するように、ベース部材51に設けられている。一対の壁部材53は、例えば板状を呈しており、車体21の幅方向において向かい合うように配置されている。一対の壁部材53の離隔幅は、一対の側壁42の離隔幅よりも小さく設定されていてもよい。図5に示されるように、壁部材53には、貫通孔53aが設けられている。
【0041】
図3図5に示されるように、連結部50Aは、ピン54が貫通孔42a,53aに挿通されることにより、ピン54を介してベース部40(側壁42)に対して着脱可能に取り付けられる。このとき、連結部50Aは、ピン54(貫通孔42a,53a)を中心として回動可能である。一方、連結部50Bは、ピン54が貫通孔42b,53aに挿通されることにより、ピン54を介してベース部40(側壁42)に対して着脱可能に取り付けられる。このとき、連結部50Bは、円弧状を呈する貫通孔42bの延在方向に沿って移動可能である。なお、ピン54の脱落を防止するための抜け止め部材(図示せず)がさらに用いられていてもよい。
【0042】
[ラジアントチューブの交換方法]
続いて、図1図12を参照して、交換対象のラジアントチューブ3が1本である場合のラジアントチューブ3の交換方法について説明する。
【0043】
まず、2台の交換台車10A,10Bを準備する。交換台車10Bには、新品のラジアントチューブ3Nを予め保持部30に保持させておく。すなわち、ラジアントチューブ3Nの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aに固定し、ラジアントチューブ3Nの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aに固定した状態で、ピン54を介してこれらの連結部50A,50Bをベース部40に対して着脱可能に取り付けておく。このとき、ラジアントチューブ3Nが全体として交換台車10B上に位置するように、ラジアントチューブ3Nが交換台車10Bに保持されていてもよい。例えば、水平方向においてラジアントチューブ3Nの重心位置と交換台車10Bの重心位置とが略一致又は近接するように、ラジアントチューブ3Nが交換台車10Bに保持されていてもよい。なお、ピン54によってベース部40に取り付けられた連結部50A,50Bに対して、ラジアントチューブ3Nの基端部3b,3cをそれぞれ固定してもよい。
【0044】
次に、図1に示されるように、天井クレーンによって2台の交換台車10A,10Bを地上から架構デッキ4上に吊り上げる。天井クレーンによる交換台車10A,10Bのつり上げは、加熱炉1の操業中に実施されてもよい。すなわち、ラジアントチューブ3の交換以外のメンテナンス作業が実施されている期間を避けて、天井クレーンによって交換台車10A,10Bを地上から架構デッキ4上に吊り上げてもよい。
【0045】
次に、図6及び図7に示されるように、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Aを押し引きして、ラジアントチューブ3Uの交換位置に交換台車10Aを移動する。ここでいう交換位置は、交換台車10Aが交換対象のラジアントチューブ3Uの正面となる位置である。交換台車10Aが当該交換位置に到着した後、固定具5によって交換台車10Aを架構デッキ4に固定してもよい。固定方法としては、例えばアングル状の固定具5を用いて、車体21と固定具5とを図示しない締結具(例えばボルト等)で締結しつつ、架構デッキ4と固定具5とを図示しない締結具(例えばボルト等)で締結する方法が挙げられる。
【0046】
次に、図6及び図7に示されるように、作業者が交換台車10Aの保持部30を炉体2に向けて押し出して、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Uの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aに固定し、ラジアントチューブ3Uの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aに固定する。次に、炉体2の前壁2aに取り付けられているラジアントチューブ3Uを、前壁2aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Uが炉体2から保持部30に移載される。この状態で、図8に示されるように、保持部30が炉体2の前壁2aから離れるように、作業者が保持部30を押し戻して(後退させて)、前壁2aの開口部2dからラジアントチューブ3Uを引き抜く。この際、ラジアントチューブ3Uの本体部3aが変形しているので、当該変形部が開口部2dの下端縁に引っ掛かり、ラジアントチューブ3Uを水平方向に引き抜くことができない場合がある。このような場合には、図9に示されるように、ラジアントチューブ3U及び連結部50A,50Bを、ピン54(貫通孔42a,53a)を中心として回動させてラジアントチューブ3Uの当該変形部分を上方に変位させた状態で、ラジアントチューブ3Uを前壁2aの開口部2dから引き抜くようにしてもよい。このとき、当該変形部が開口部2dの下端縁と擦れながら、ラジアントチューブ3Uが開口部2dから引き抜かれてもよい。こうして、図10に示されるように、ラジアントチューブ3Uが全体として交換台車10A上に位置するように、ラジアントチューブ3Uが交換台車10Aに保持される。
【0047】
次に、図11に示されるように、固定具5を交換台車10Aから取り外し、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Aを押し引きして、ラジアントチューブ3Uを保持している交換台車10Aを交換位置から退避させる。次に、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Bを押し引きして、交換位置に交換台車10Bを移動する。ここでいう交換位置は、ラジアントチューブ3Uが取り外された前壁2aの開口部2dの正面となる位置である。交換台車10Bが当該交換位置に到着した後、交換台車10Aの場合と同様に、固定具5によって交換台車10Bを架構デッキ4に固定してもよい。
【0048】
このとき、測定部6(例えば、レーザ距離測定器)を交換台車10Bに取り付け、台座部2cまでの距離を測定し、測定された当該距離に基づいて、これから取り付けようとするラジアントチューブ3Nの押込量を決定してもよい。ところで、ラジアントチューブ3は、加熱炉1の操業に伴い熱により伸縮する。そのため、ラジアントチューブ3の伸縮によっても、ラジアントチューブ3の本体部3aが台座部2cに接触したり台座部2cから脱落することのないような大きさの押込量が決定されてもよい。
【0049】
次に、図12に示されるように、作業者が交換台車10Bの保持部30を炉体2に向けて押し出して、ラジアントチューブ3Nの突出部3dが台座部2cに載置されるまで、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。押込量が決定されている場合には、当該押込量に従って、保持部30を前壁2aに近づける。次に、ラジアントチューブ3Nが開口部2dを通じて炉体2の所定位置まで押し込まれた状態で、ラジアントチューブ3Nを炉体2の前壁2aに取り付ける。次に、ラジアントチューブ3Nの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aから取り外し、ラジアントチューブ3Nの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Nは、交換台車10Bの保持部30から前壁2aの開口部2dを通じて炉体2内に押し込まれ、炉体2に取り付けられる。
【0050】
次に、交換台車10Bの保持部30が炉体2の前壁2aから離れるように、作業者が保持部30を押し戻す(後退させる)。この状態で、固定具5を交換台車10Bから取り外し、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Bを押し引きして、ラジアントチューブ3を保持していない空の交換台車10Bを交換位置から退避させる。
【0051】
次に、搬送装置(例えば、天井クレーン)によって2台の交換台車10A,10Bを吊って、架構デッキ4から地上に降ろす。天井クレーンによる交換台車10A,10Bの地上への運搬は、加熱炉1の操業中に実施されてもよい。すなわち、ラジアントチューブ3の交換以外のメンテナンス作業が実施されている期間を避けて、天井クレーンによって交換台車10A,10Bを架構デッキ4から地上に降ろしてもよい。
【0052】
[作用]
以上の例によれば、ラジアントチューブ3U,3Nの交換作業の際に、交換台車10A,10Bがすでに架構デッキ4上に配置されている。そのため、ラジアントチューブ3Uを炉体2から取り外してからラジアントチューブ3Nを炉体2に取り付けるまでの過程において、加熱炉1の天井クレーンを使用する必要がない。したがって、ラジアントチューブ3U,3Nの交換作業における天井クレーンの占有時間が極めて短くなる。その結果、加熱炉1のメンテナンス作業を効率的に実施することが可能となる。
【0053】
以上の例によれば、交換台車10A,10Bを天井クレーンにより地上と架構デッキ4との間で運搬する作業が、加熱炉1の操業中、すなわち、加熱炉1がメンテナンスされていない期間に実施されうる。この場合、加熱炉1のメンテナンス作業を極めて効率的に実施することが可能となる。
【0054】
以上の例によれば、ラジアントチューブ3U,3Nの交換作業の際に、交換台車10A,10Bが固定具5によって架構デッキ4に固定されうる。この場合、交換台車10A,10Bが位置決めされた状態で、交換台車10A,10Bがラジアントチューブ3U,3Nを授受する。そのため、ラジアントチューブ3U,3Nの交換作業をより容易に実施することが可能となる。また、ラジアントチューブ3U,3Nの交換作業の際に、交換台車10A,10Bがバランスを崩して傾くといった懸念もなくなる。
【0055】
以上の例によれば、ラジアントチューブ3Nを炉体2に取り付ける際に、測定部6によって測定された台座部2cまでの距離に基づいて、ラジアントチューブ3Nの押込量を決定しうる。この場合、測定部6によって距離を測定するという極めて簡易な手法により、加熱炉1内に作業者が入ってラジアントチューブ3Nの先端部(突出部3d)の位置を確認するといった作業を要することなく、加熱炉1内の適切な位置にラジアントチューブ3Nを容易に配置することが可能となる。
【0056】
以上の例によれば、ベース部40の側壁42と連結部50A,50Bの壁部材53とがピン54を介して着脱可能に連結されうる。この場合、ピン54の挿抜という極めて簡易な手法により、ラジアントチューブ3を保持部30に保持させることが可能となる。
【0057】
以上の例によれば、連結部50Aが、ピン54(貫通孔42a,53a)を中心として回動可能とされ、連結部50Bが、円弧状を呈する貫通孔42bの延在方向に沿って移動可能とされうる。この場合、ラジアントチューブ3Uに変形が存在していても、連結部50A,50Bに固定されているラジアントチューブ3Uをピン54(貫通孔42a,53a)の周りに回動させることで、当該変形部分を上方に変位させることができる。そのため、この状態でラジアントチューブ3Uを炉体2から引き抜くことにより、大きく変形したラジアントチューブ3Uであっても、開口部2dから水平方向に容易に引き抜くことが可能となる。
【0058】
以上の例によれば、保持部30が、走行部20に対して進退可能となるように走行部20に搭載されうる。この場合、保持部30が保持するラジアントチューブ3を、交換台車10から加熱炉1へ、または、加熱炉1から交換台車10へと、容易に移動させることができる。そのため、ラジアントチューブ3の交換作業をより容易に実施することが可能となる。
【0059】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0060】
(1)例えば、複数の交換台車10を用いて、複数のラジアントチューブ3の交換が行われてもよい。ここで、図13図18を参照して、3台の交換台車10A,10B,10Cを用いて、2本の使用済のラジアントチューブ3Uを新品のラジアントチューブ3Nに交換する例を説明する。なお、以下では、2本の使用済のラジアントチューブ3を「ラジアントチューブ3U」及び「ラジアントチューブ3U」と称し、2本の新品のラジアントチューブ3Nを「ラジアントチューブ3N」及び「ラジアントチューブ3N」と称する。また、以上の例における説明と重複する内容については、説明を省略する。
【0061】
まず、交換しようとするラジアントチューブ3U,3Uの数よりも1台多い3台の交換台車10A,10B,10Cを準備する。交換台車10Bには、新品のラジアントチューブ3Nを予め保持部30に保持させておく。交換台車10Cには、新品のラジアントチューブ3Nを予め保持部30に保持させておく。次に、図13に示されるように、天井クレーンによって3台の交換台車10A,10B,10Cを地上から架構デッキ4上に吊り上げる。
【0062】
次に、図14に示されるように、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Aを押し引きして、ラジアントチューブ3Uの交換位置に交換台車10Aを移動する。ここでいう交換位置は、交換台車10Aが交換対象のラジアントチューブ3Uの正面となる位置である。
【0063】
次に、作業者が交換台車10Aの保持部30を炉体2に向けて押し出して、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Uの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aに固定し、ラジアントチューブ3Uの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aに固定する。次に、炉体2の前壁2aに取り付けられているラジアントチューブ3Uを、前壁2aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Uが炉体2から保持部30に移載される。この状態で、保持部30が炉体2の前壁2aから離れるように、作業者が保持部30を押し戻して(後退させて)、前壁2aの開口部2dからラジアントチューブ3Uを引き抜く。こうして、ラジアントチューブ3Uが全体として交換台車10A上に位置するように、ラジアントチューブ3Uが交換台車10Aに保持される。
【0064】
次に、図15に示されるように、固定具5を交換台車10Aから取り外し、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Aを押し引きして、ラジアントチューブ3Uを保持している交換台車10Aを交換位置から退避させる。次に、架構デッキ4上で作業員が交換台車10B(第2の台車)を押し引きして、交換位置に交換台車10Bを移動する。ここでいう交換位置は、ラジアントチューブ3Uが取り外された前壁2aの開口部2dの正面となる位置である。
【0065】
次に、作業者が保持部30を炉体2に向けて押し出して、ラジアントチューブ3Nの突出部3dが台座部2cに載置されるまで、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Nが開口部2dを通じて炉体2の所定位置まで押し込まれた状態で、ラジアントチューブ3Nを炉体2の前壁2aに取り付ける。次に、ラジアントチューブ3Nの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aから取り外し、ラジアントチューブ3Nの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Nは、交換台車10Bの保持部30から前壁2aの開口部2dを通じて炉体2内に押し込まれ、炉体2に取り付けられる。
【0066】
次に、図16に示されるように、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Bを押し引きして、ラジアントチューブ3Uの交換位置に交換台車10Bを移動する。ここでいう交換位置は、交換台車10Bが交換対象のラジアントチューブ3Uの正面となる位置である。
【0067】
次に、作業者が交換台車10Bの保持部30を炉体2に向けて押し出して、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Uの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aに固定し、ラジアントチューブ3Uの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aに固定する。次に、炉体2の前壁2aに取り付けられているラジアントチューブ3Uを、前壁2aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Uが炉体2から保持部30に移載される。この状態で、保持部30が炉体2の前壁2aから離れるように、作業者が保持部30を押し戻して(後退させて)、前壁2aの開口部2dからラジアントチューブ3Uを引き抜く。こうして、ラジアントチューブ3Uが全体として交換台車10B上に位置するように、ラジアントチューブ3Uが交換台車10Bに保持される。
【0068】
次に、図17に示されるように、固定具5を交換台車10Bから取り外し、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Bを押し引きして、ラジアントチューブ3Uを保持している交換台車10Bを交換位置から退避させる。次に、架構デッキ4上で作業員が交換台車10C(第3の台車)を押し引きして、交換位置に交換台車10Cを移動する。ここでいう交換位置は、ラジアントチューブ3Uが取り外された前壁2aの開口部2dの正面となる位置である。
【0069】
次に、作業者が交換台車10Cの保持部30を炉体2に向けて押し出して、ラジアントチューブ3Nの突出部3dが台座部2cに載置されるまで、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Nが開口部2dを通じて炉体2の所定位置まで押し込まれた状態で、ラジアントチューブ3Nを炉体2の前壁2aに取り付ける。次に、ラジアントチューブ3Nの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aから取り外し、ラジアントチューブ3Nの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Nは、交換台車10Cの保持部30から前壁2aの開口部2dを通じて炉体2内に押し込まれ、炉体2に取り付けられる。
【0070】
次に、交換台車10Cの保持部30が炉体2の前壁2aから離れるように、作業者が保持部30を押し戻す(後退させる)。この状態で、固定具5を交換台車10Cから取り外し、架構デッキ4上で作業員が交換台車10Cを押し引きして、図18に示されるように、ラジアントチューブ3を保持していない空の交換台車10Cを交換位置から退避させる。次に、天井クレーンによって3台の交換台車10A,10B,10Cを吊って、架構デッキ4から地上に降ろす。
【0071】
以上によれば、交換対象のラジアントチューブ3Uの数よりも1つ多い数の交換台車10を準備しておくだけで、使用済のラジアントチューブ3Uを新品のラジアントチューブ3Nに順次に交換することができる。すなわち、ラジアントチューブ3Nが加熱炉1に取り付けられて空となった交換台車10Bにラジアントチューブ3Uを保持させることにより、最小限の数の交換台車で極めて効率的にラジアントチューブ3の交換作業を行うことが可能となる。
【0072】
(2)例えば、図19に例示される交換台車10を用いてラジアントチューブ3の交換作業が行われてもよい。図19に例示される交換台車10において、車体21の長さは、ラジアントチューブ3よりもやや長くてもよいし、ラジアントチューブ3と同程度であってもよい。
【0073】
図19に例示される交換台車10は、支持部60と、1つ以上の吊り下げ部70とをさらに備えていてもよい。支持部60は、複数の支持柱61と、上部レール62とを含む。複数の支持柱61は、車体21から上方に向けて延びるように車体21に設けられている。複数の支持柱61は、車体21の長手方向において並ぶように配置されている。上部レール62は、複数の支持柱61の先端部において支持されている。上部レール62は、車体21の長手方向に沿って直線状に延びている。
【0074】
吊り下げ部70は、基台71と、吊り具72とを含む。基台71は、上部レール62に取り付けられており、上部レール62に沿って移動可能(滑動可能)に構成されている。吊り具72は、基台71から下方に垂れ下がるように延びている。吊り具72は、例えばチェーンブロックなどであってもよい。吊り具72は、ラジアントチューブ3の本体部3aの周囲に巻かれることにより、ラジアントチューブ3を吊り下げ保持するように構成されている。
【0075】
次に、図20図22を参照して、図19に例示される交換台車10を用いて、使用済のラジアントチューブ3Uを炉体2から取り外す手順について説明する。まず、図20に示されるように、作業者が交換台車10の保持部30を炉体2に向けて押し出して、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Uの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aに固定し、ラジアントチューブ3Uの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aに固定する。次に、炉体2の前壁2aに取り付けられているラジアントチューブ3Uを、前壁2aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Uが炉体2から保持部30に移載される。
【0076】
この状態で、図21に示されるように、保持部30が炉体2の前壁2aから離れるように、作業者が保持部30を押し戻して(後退させて)、前壁2aの開口部2dからラジアントチューブ3Uを引き抜く。ここで、図19に例示される交換台車10は、相対的に小型であるので、保持部30がレール部材24の端部まで移動しても、ラジアントチューブ3Uの先端部が加熱炉1内に留まる場合がある。
【0077】
そこで、次に、図21に示されるように、吊り具72をラジアントチューブ3Uの本体部3aに引っかける。このとき、交換台車10が吊り下げ部70を一つだけ備える場合には、ラジアントチューブ3Uの重心の近傍に吊り具72を引っかけてもよい。交換台車10が吊り下げ部70を複数備える場合には、ラジアントチューブ3Uの重心が2つの吊り下げ部70の間に位置するように吊り具72をラジアントチューブ3Uに引っかけてもよい。
【0078】
次に、貫通孔42a,42b,53aからピン54を抜去する。これにより、吊り下げ部70によってラジアントチューブ3Uが吊り下げ保持される。この状態で、図22に示されるように、作業者がラジアントチューブ3Uを炉体2から完全に引き抜く。この際、ラジアントチューブ3Uは、吊り下げ部70を介して上部レール62に沿って移動する。こうして、ラジアントチューブ3Uが全体として交換台車10上に位置するように、ラジアントチューブ3Uが交換台車10に保持される。
【0079】
一方、図23図25を参照して、図19に例示される交換台車10を用いて、新品のラジアントチューブ3Nを炉体2に取り付ける手順について説明する。まず、図23に示されるように、ラジアントチューブ3Nの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aに固定し、ラジアントチューブ3Nの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aに固定する。このように、連結部50A,50Bが取り付けられたラジアントチューブ3Nを、吊り下げ部70によって吊り下げ保持する。このとき、交換台車10が吊り下げ部70を一つだけ備える場合には、ラジアントチューブ3Nの重心の近傍に吊り具72を引っかけてもよい。交換台車10が吊り下げ部70を複数備える場合には、ラジアントチューブ3Nの重心が2つの吊り下げ部70の間に位置するように吊り具72をラジアントチューブ3Uに引っかけてもよい。なお、ラジアントチューブ3Nを吊り下げ部70によって吊り下げ保持した後に、ラジアントチューブ3Nに連結部50A,50Bを取り付けてもよい。
【0080】
次に、図24に示されるように、作業者がラジアントチューブ3Nを炉体2に向けて押し出して、ラジアントチューブ3Nを前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ピン54を介して、連結部50A,50Bをベース部40(側壁42)に取り付ける。このとき、ラジアントチューブ3Nの先端部が加熱炉1内に位置しうる。次に、ラジアントチューブ3Nから吊り下げ部70を取り外す。
【0081】
次に、図25に示されるように、作業者が保持部30を炉体2に向けて押し出して、ラジアントチューブ3Nの突出部3dが台座部2cに載置されるまで、保持部30を前壁2aに近づける(前進させる)。次に、ラジアントチューブ3Nが開口部2dを通じて炉体2の所定位置まで押し込まれた状態で、ラジアントチューブ3Nを炉体2の前壁2aに取り付ける。次に、ラジアントチューブ3Nの基端部3bを連結部50Aのフランジ部52aから取り外し、ラジアントチューブ3Nの基端部3cを連結部50Bのフランジ部52aから取り外す。これにより、ラジアントチューブ3Nは、交換台車10の保持部30から前壁2aの開口部2dを通じて炉体2内に押し込まれ、炉体2に取り付けられる。
【0082】
以上によれば、炉体2から取り外された使用済のラジアントチューブ3Uを受け取るときと、新品のラジアントチューブ3Nを炉体2に取り付けるときには保持部30でこれらのラジアントチューブ3U,3Nを保持する一方で、それ以外のときには、吊り下げ部70によってこれらのラジアントチューブ3U,3Nを吊り下げ保持している。このように、ラジアントチューブ3U,3Nが保持部30と吊り下げ部70との間で移し替えられることにより、吊り下げ部70によって吊り下げ保持されているラジアントチューブ3U,3Nの交換台車10に対する位置を調節できる。そのため、小型の交換台車10を用いる場合であっても、小型の交換台車10の大きさ(走行部20の長さ)を超えてラジアントチューブ3U,3Nが進退できるようになり、小型の交換台車10に対するラジアントチューブ3U,3Nの保持位置の制約が緩やかとなる。したがって、交換台車10によってラジアントチューブ3U,3Nを安定して移動させることが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
1…加熱炉、2…炉体、2c…台座部、3,3U,3N…ラジアントチューブ、3b…基端部(上側基端部)、3c…基端部(下側基端部)、3d…突出部、5…固定具、6…測定部、10…交換台車(台車)、10A…交換台車(第1の台車)、10B…交換台車(第2の台車)、10C…交換台車(第3の台車)、20…走行部、30…保持部、40…ベース部、42…側壁、42a…貫通孔(第1の貫通孔)、42b…貫通孔(第2の貫通孔)、50…連結部、50A…連結部(第1の連結部)、50B…連結部(第2の連結部)、54…ピン、70…吊り下げ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
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図16
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