(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065071
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20230502BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20230502BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20230502BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B23K26/00 N
H01S5/02253
H01S5/042 612
H01S5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175651
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金武 知樹
(72)【発明者】
【氏名】持山 智浩
(72)【発明者】
【氏名】瀧 成治
【テーマコード(参考)】
4E168
5F173
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168BA00
4E168CA04
4E168DA13
4E168DA26
4E168EA02
4E168EA03
4E168EA17
5F173AD05
(57)【要約】
【課題】レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に伝送ファイバからの散乱光が増大する場合でも、出射ヘッドの光出力を精度良く制御できるようにする。
【解決手段】指令値に応じた電流を複数のレーザダイオードバー31に流す電源70を備えたレーザ加工装置100に、伝送ファイバ40からの散乱光の光量を検出する散乱光検出部15を設け、制御部60に、散乱光検出部15の検出値に基づく所定の条件が満たされた状態におけるパワーモニタ14の検出値を用いて指令値の算出を行わせる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する複数のレーザダイオードと、
前記複数のレーザダイオードから出射されたレーザ光を集光するレンズ又は光学ユニットからなる光合成部と、
前記光合成部により出射されたレーザ光を、第1分割光及び第2分割光に分割する部分透過ミラーと、
前記第1分割光の光量を検出するパワーモニタと、
前記第2分割光を出射ヘッドに導く伝送ファイバと、
前記パワーモニタの検出値を用いて指令値を算出する制御部と、
前記制御部によって算出された前記指令値に応じた電流を前記複数のレーザダイオードに流す電源とを備えたレーザ加工装置であって、
前記伝送ファイバからの散乱光の光量を検出する散乱光検出部を備え、
前記制御部は、前記散乱光検出部の検出値に基づく所定の条件が満たされた状態における前記パワーモニタの検出値を用いて前記指令値の算出を行うことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記散乱光検出部は、前記パワーモニタとは別に設けられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記散乱光検出部は、前記パワーモニタであることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記複数のレーザダイオードによる前記レーザ光の出射を開始してから、前記散乱光検出部の検出値の平均値を所定の単位時間毎に繰り返し取得した場合に、k回目に取得した平均値をS(k)とすると、
前記所定の条件は、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値を所定回数連続で取得し終えたという条件であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
前記所定の条件は、前記散乱光検出部の検出値に基づいて算出される前記出射ヘッドの光出力から、前記パワーモニタの検出値に基づいて算出される前記出射ヘッドの光出力を引いた差が、所定閾値以下となることであることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーザダイオードから出射されたレーザ光を集光して出射ヘッドから出射するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を出射するレーザダイオードと、レーザダイオードから出射されたレーザ光を集光するレンズからなる光合成部と、前記光合成部により出射されたレーザ光を、第1分割光及び第2分割光に分割する部分透過ミラーと、前記第1分割光の光量を検出するパワーモニタと、前記第2分割光を出射ヘッドに導く伝送ファイバと、前記パワーモニタの検出値を用いて指令値を算出する制御部と、前記制御部によって算出された前記指令値に応じた電流を前記レーザダイオードに供給する電源とを備えたレーザ加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたようなレーザ加工装置では、レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に、レーザ加工装置内の温度変化により、伝送ファイバへの入射光の入射面における位置が本来の位置からずれるいわゆる光軸ずれが生じる場合がある。かかる場合、光軸ずれにより伝送ファイバからの散乱光が増大し、レーザ加工装置の筐体内で多重反射した後パワーモニタに入射し、その結果、パワーモニタの検出値が、出射ヘッドの実際の光出力(出射光の出力)に対応する値よりも大きくなる。したがって、伝送ファイバからの散乱光が光軸ずれによって増大している期間のパワーモニタの検出値に基づいて算出した指令値を、光軸ずれが収まった後に用いると、出射ヘッドの光出力が想定値よりも小さくなってしまう。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に伝送ファイバからの散乱光が増大する場合でも、出射ヘッドの光出力を精度良く制御できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、レーザ光を出射する複数のレーザダイオードと、前記複数のレーザダイオードから出射されたレーザ光を集光するレンズ又は光学ユニットからなる光合成部と、前記光合成部により出射されたレーザ光を、第1分割光及び第2分割光に分割する部分透過ミラーと、前記第1分割光の光量を検出するパワーモニタと、前記第2分割光を出射ヘッドに導く伝送ファイバと、前記パワーモニタの検出値を用いて指令値を算出する制御部と、前記制御部によって算出された前記指令値に応じた電流を前記複数のレーザダイオードに流す電源とを備えたレーザ加工装置であって、前記伝送ファイバからの散乱光の光量を検出する散乱光検出部を備え、前記制御部は、前記散乱光検出部の検出値に基づく所定の条件が満たされた状態における前記パワーモニタの検出値を用いて前記指令値の算出を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記所定の条件として、レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に光軸ずれ等に起因して伝送ファイバからの散乱光が最大値まで増大しているときには満たされず、かつその後、伝送ファイバからの散乱光がある程度まで低減したときに満たされる条件を設定することにより、制御部に、伝送ファイバからの散乱光がある程度まで低減した状態におけるパワーモニタの検出値に基づいて、指令値を算出させることができる。したがって、レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に伝送ファイバからの散乱光が増大する場合でも、制御部に、出射ヘッドの光出力を精度良く制御させることができる。
【発明の効果】
【0008】
レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に伝送ファイバからの散乱光が増大する場合でも、制御部に、出射ヘッドの光出力を精度良く制御させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【
図3】レーザ光出射部及び光合成部の詳細な構成を示す模式図である。
【
図4】複数のレーザモジュールの構成を示す模式図である。
【
図7】レーザ加工装置の指令値算出動作を示すフローチャートである。
【
図8】散乱光検出部の検出値に基づいて得られる出力換算値、パワーモニタの検出値に基づいて得られる出力換算値、出射ヘッドの実際の光出力を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0011】
以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
図1は、金属製の加工対象物としてのワークWの切断、溶接といったレーザ加工に用いられる本発明の実施形態に係るレーザ加工装置100を示す。同図に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ装置10と伝送ファイバ40と出射ヘッド50と制御部60と電源70と指令部80とを備えている。レーザ装置10と、レーザ装置10よりレーザ光が出射される端部(以下、単に出射端という。)と、レーザ装置10より伝送ファイバ40にレーザ光が入射される端部(以下、単に入射端という。)とは筐体90に収容されている。
【0013】
レーザ装置10は、
図2に示すように、レーザ光出射部11と、光合成部12と、部分透過ミラー13と、パワーモニタ14と、散乱光検出部15と、集光ユニット16とを備えている。
【0014】
レーザ光出射部11は、
図3に示すように、互いに異なる波長のレーザ光LB1を発する例えば10個のレーザモジュール30を有している。各レーザモジュール30は、
図4~6に示すように、レーザダイオードバー(LDバー)31を有しており、レーザダイオードバー31は、並列に配置された複数のエミッタ31bを有する半導体レーザアレイである。言い換えるとレーザダイオードバー31は、エミッタ31bを有する並列に配置された複数のレーザダイオードからなる半導体レーザアレイである。レーザダイオードバー31は、平面視矩形状の平板形状をなし、その一方の面には板状の正電極32が配置され、正電極32の一方の面が取り付けられている。また、レーザダイオードバー31の他方の面には、正電極32よりも広い板状の負電極33が配置され、負電極33の一方の面の一部が取り付けられている。レーザダイオードバー31の一側面が、レーザ光LB1を出射するレーザ光出射面31aを構成している。各電極(正電極32,負電極33)には、配線35が接続され、当該配線35を介して後述する電源70から電流(電力)が供給される。なお、一つのレーザダイオードバー31に含まれるエミッタ31bの個数は、例えば50個に設定される。10個のレーザモジュール30のレーザダイオードバー31は、互いに直列に接続されている。
【0015】
光合成部12は、レーザ光出射部11に含まれるレーザダイオードから出射されたレーザ光LB1を集光する。具体的には、光合成部12は、10個のレーザモジュール30からそれぞれ出射されたレーザ光LB1を集光する第1集光レンズ12aと、第1集光レンズ12aにより出射されたレーザ光を反射させる反射鏡12bとを備えた光学ユニットである。
【0016】
部分透過ミラー13は、光合成部12の反射鏡12bにより出射されたレーザ光を、第1分割光LB2及び第2分割光LB3に分割する。具体的には、部分透過ミラー13は、光合成部12の反射鏡12bにより出射されたレーザ光の一部を第1分割光LB2として透過させる一方、残りを第2分割光LB3として反射させる。
【0017】
パワーモニタ14は、部分透過ミラー13を透過した第1分割光LB2の光量を検出する。パワーモニタ14は、例えば、第1分割光LB2を減衰させて出力する減衰部と、減衰部の出力を検出するフォトダイオードとで構成される。
【0018】
散乱光検出部15は、伝送ファイバ40からの散乱光の光量を検出する。
【0019】
集光ユニット16は、部分透過ミラー13を反射した第2分割光LB3を集光し、所定の倍率でビーム径を縮小して伝送ファイバ40に入射させる第2集光レンズ16aと、伝送ファイバ40の入射端が接続されるコネクタ(図示せず)とを有している。
【0020】
伝送ファイバ40は、集光ユニット16の第2集光レンズ16aに光学的に結合され、当該第2集光レンズ16aを介してレーザ装置10から受け取った第2分割光LB3を出射ヘッド50に導く。
【0021】
出射ヘッド50は、伝送ファイバ40から出力されるレーザ光LB4を外部に向けて照射する。例えば、出射ヘッド50は、所定の位置に配置されたワークWに向けて、レーザ光LB4を出射する。このようにすることで、ワークWにレーザ加工が施される。
【0022】
制御部60は、レーザ装置10のレーザ発振を制御する。具体的には、制御部60は、パワーモニタ14の検出値を用いて、当該パワーモニタ14の検出値が所定の設定値となるように、電源70に出力する電流指令値の算出を行うフィードバック制御を行う。制御部60による制御の詳細については、後述する。
【0023】
電源70は、制御部60によって算出された電流指令値に応じた電流を、前記レーザ光出射部11に含まれるレーザダイオードバー31及び配線35に流す。
【0024】
指令部80は、出射ヘッド50の光出力(出射光の出力)の目標値を示す入力をユーザから受け付け、当該目標値を示す指令信号を制御部60に出力する。
【0025】
次に、上述のように構成されたレーザ加工装置100の動作について説明する。
【0026】
上述のように構成されたレーザ加工装置100は、初期設定動作、指令値算出動作、及び通常動作を実行する。
【0027】
初期設定動作は、制御部60が、電流指令値として所定の定格出力電流値を出力することにより、レーザ光出射部11に含まれるレーザダイオードバー31に当該定格出力電流値の電流を流し、このときのパワーモニタ14の検出値を設定値として設定する動作である。この初期設定動作は、例えば、レーザ加工装置100の出荷時に実行される。
【0028】
図7は、レーザ加工装置100による指令値算出動作を示す。
【0029】
指令値算出動作では、まず、S101において、制御部60が、電流指令値として所定の定格出力電流値を出力することにより、レーザ光出射部11に含まれるレーザダイオードバー31に当該定格出力電流値の電流を流し始める。これにより、レーザ光出射部11がレーザ光LB1の出射を開始する。
【0030】
次いで、S102において、制御部60は、k=1、n=0とする。
【0031】
次いで、S103において、制御部60は、1秒が経過するのを待つ。そして、1秒が経過すると、経過した1秒間における散乱光検出部15の検出値の平均値を取得し、当該平均値をS(k)とする。つまり、S(k)は、レーザ光出射部11がレーザ光LB1の出射を開始してからk回目に取得した平均値となる。なお、散乱光検出部15の検出値のサンプリング間隔は、例えば、10μsに設定される。
【0032】
次いで、S104において、制御部60は、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0が満たされているか否かを判定する。満たされている場合には、S105に進む一方、満たされていない場合には、S106に進む。なお、S(0)は、0とする。
【0033】
S105では、制御部60が、n=n+1とするとともにk=k+1とし、S107に進む。
【0034】
S106では、制御部60が、k=k+1、n=0とし、S103に戻る。
【0035】
S107では、制御部60が、n=3であるか否かを判定し、n=3である場合にはS108に進み、n=3でない場合にはS103に戻る。
【0036】
S108では、制御部60が、パワーモニタ14の検出値を取得し、S109に進む。
【0037】
S109では、制御部60が、S108で取得した検出値と、初期設定動作で設定された設定値との差分に基づいて、パワーモニタ14の検出値が設定値となるように、電流指令値を算出する。
【0038】
上述のような指令値算出動作は、例えば、1週間に1回等、定期的に実行されるか、又はワークWに加工不良が生じたときに実行される。
【0039】
通常動作では、制御部60が、最近の指令値算出動作で算出した電流指令値を出力し、これに応じて、電源70がレーザ光出射部11に含まれるレーザダイオードバー31に当該電流指令値に応じた電流を流す。
【0040】
このように、パワーモニタ14の検出値が初期設定動作によって設定された設定値となるように電流指令値が算出されるので、初期設定動作後に、レーザダイオードバー31の経年劣化、冷却能力の低下、光学部品の損傷や汚染等によって出射ヘッド50の光出力が低下するのを抑制できる。
【0041】
また、制御部60がパワーモニタ14の検出値を取得して電流指令値を算出する処理を開始するタイミングを、レーザ光出射部11がレーザ光LB1の出射を開始してから所定の設定時間が経過したタイミングとする場合に比べ、設定時間が長すぎて電流指令値を取得するのに無駄な時間がかかったり、設定時間が短すぎて適切な電流指令値を取得できなくなる場合がある。しかし、本実施形態では、制御部60がパワーモニタ14の検出値を取得して電流指令値を算出する処理を開始するタイミングを、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値(S(k))を3回連続で取得し終えたことを認識した直後のタイミングとするので、電流指令値を取得するのに無駄な時間がかかったり、適切な電流指令値を取得できなくなるのを防止できる。
【0042】
図8は、散乱光検出部15の検出値に基づいて得られる出力換算値、パワーモニタ14の検出値に基づいて得られる出力換算値、出射ヘッド50の実際の光出力を例示するタイミングチャートである。
図8中、OP1は、散乱光検出部15の検出値に基づいて得られる出力換算値を示し、OP2は、パワーモニタ14の検出値に基づいて得られる出力換算値を示し、OP3は、出射ヘッド50の実際の光出力を示す。散乱光検出部15の検出値に基づいて得られる出力換算値は、散乱光検出部15の検出値に基づいて算出される出射ヘッド50の光出力である。パワーモニタ14の検出値に基づいて得られる出力換算値は、パワーモニタ14の検出値に基づいて算出される出射ヘッド50の光出力である。出射ヘッド50の実際の光出力は、出射ヘッド50の光出力の実測値である。
【0043】
この例では、
図8に示すように、レーザ光出射部11がレーザ光LB1の出射を開始した後、期間D1において、光軸ずれ等に起因して伝送ファイバ40からの散乱光が増大し、散乱光検出部15の検出値に基づいて得られる出力換算値のオーバーシュートが発生している。また、散乱光の影響により、パワーモニタ14の検出値にもオーバーシュートが発生している。したがって、期間D1では、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値(S(k))を3回連続で取得できないと考えられる。また、期間D1におけるパワーモニタ14の検出値に基づいて、電流指令値を算出し、当該電流指令値に応じた電流をレーザ光出射部11に流すと、出射ヘッド50の光出力が想定値よりも小さくなってしまうと考えられる。
【0044】
一方で、期間D2においては、伝送ファイバ40からの散乱光がある程度低減し、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値(S(k))を3回連続で取得できると考えられる。本実施形態では、制御部60が、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値を3回連続で取得し終えたという条件が満たされた状態におけるパワーモニタ14の検出値を用いて電流指令値を算出するので、期間D1におけるパワーモニタ14の検出値を用いて電流指令値を算出する場合に比べ、出射ヘッド50の光出力を精度良く制御できる。
【0045】
なお、上記実施形態では、制御部60が、電流指令値の算出に用いる光量のパワーモニタ14による検出を、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値(S(k))を3回連続で取得し終えたという条件が満たされた状態で行った。しかし、電流指令値の算出に用いる光量のパワーモニタ14による検出を、散乱光検出部15の検出値に基づく他の所定の条件が満たされた状態で行うようにしてもよい。例えば、所定の条件を、例えば、-0.01<(S(k)-S(k-1))/S(k)<0を満たす平均値を3回以外の所定回数以上連続で取得し終えたという条件としてもよい。また、散乱光検出部15をパワーモニタ14よりも伝送ファイバ40からの散乱光が多く入射する位置に配置した場合には、
図8に例示するように、レーザ光出射部11がレーザ光LB1の出射を開始した直後に、光軸ずれ等によって伝送ファイバ40からの散乱光が増大すると、散乱光検出部15の検出値に基づいて算出される出射ヘッド50の光出力が、パワーモニタ14の検出値に基づいて算出される出射ヘッド50の光出力よりも大きくなる。このような場合には、前記所定の条件を、散乱光検出部15の検出値に基づいて算出される出射ヘッド50の光出力から、パワーモニタ14の検出値に基づいて算出される出射ヘッド50の光出力を引いた差が、所定閾値以下となるという条件としてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、光合成部12を、第1集光レンズ12aと反射鏡12bとを備えた光学ユニットとしたが、レーザ光出射部11及び部分透過ミラー13との位置関係によっては、光合成部12を第1集光レンズ12aだけで構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、散乱光検出部15をパワーモニタ14とは別に設けたが、散乱光検出部15を設けず、パワーモニタ14を散乱光検出部としてもよい。つまり、制御部60が、パワーモニタ14の検出値に基づく所定の条件が満たされた状態におけるパワーモニタ14の検出値を用いて指令値の算出を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のレーザ加工装置は、レーザダイオードがレーザ光の出射を開始した直後に伝送ファイバからの散乱光が増大する場合でも、制御部に、出射ヘッドの光出力を精度良く制御させることができ、複数のレーザダイオードから出射されたレーザ光を集光して出射ヘッドから出射するレーザ加工装置として有用である。
【符号の説明】
【0049】
100 レーザ加工装置
12 光合成部
12a 第1集光レンズ
13 部分透過ミラー
14 パワーモニタ
15 散乱光検出部
31 レーザダイオードバー
40 伝送ファイバ
50 出射ヘッド
60 制御部
70 電源
LB1 レーザ光
LB2 第1分割光
LB3 第2分割光