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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065101
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】端末装置および端末制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20230502BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20230502BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 U
B66B31/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175712
(22)【出願日】2021-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 悠児
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
3F321
【Fターム(参考)】
3F303CB48
3F303DA08
3F303DC36
3F303FA14
3F304EA01
3F304EA05
3F321EB07
3F321HA03
(57)【要約】
【課題】通信による障害を受けることなく計測を実行する端末装置を提供する。
【解決手段】端末装置(1)は、エレベータまたはマンコンベヤである乗客搬送装置に関する計測対象を計測する計測部(5)と、少なくとも1種類の通信機能によって通信を行う通信部(4)と、計測部(5)および通信部(4)を制御する制御部(7)と、を備える。制御部(7)は、計測部(5)による計測の開始時に、通信機能のうちの所定の通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータまたはマンコンベヤである乗客搬送装置に関する計測対象を計測する計測部と、
少なくとも1種類の通信機能によって通信を行う通信部と、
前記計測部および前記通信部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記計測部による計測の開始時に、前記通信機能のうちの所定の前記通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促す、端末装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記計測部による計測の開始時に、全ての前記通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促す、請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記エレベータまたは前記マンコンベヤの加速度変化を計測する、請求項1または2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記エレベータまたは前記マンコンベヤの動作音を計測する、請求項1から3のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記計測部による計測の終了時に、計測時に無効であった前記通信機能について、有効にするか、または有効にする操作をするように使用者に促す、請求項1から4のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項6】
前記計測部は、前記エレベータまたは前記マンコンベヤの加速度変化を計測し、
前記制御部は、所定の加速度変化を検知した場合、前記計測部による計測の終了を判断する、請求項5に記載の端末装置。
【請求項7】
前記計測部は、前記エレベータに関する前記計測対象を計測し、
前記制御部は、前記計測部による計測開始から所定時間が経過したときに前記計測部による計測の終了を判断する、請求項5に記載の端末装置。
【請求項8】
前記計測部により計測された計測データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記計測部による計測の終了後に前記通信機能が有効となった状態で、前記記憶部に記憶された前記計測データを前記通信部に外部へ送信させる、請求項1から7のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の端末装置としてコンピュータを機能させるための端末制御プログラムであって、前記制御部としてコンピュータを機能させるための端末制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置および端末制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ、エスカレータなどの乗客を固定経路で搬送する装置では、安全性、快適性などを維持するためにメンテナンスが行われる。メンテナンスにおいては、異常の有無を各種の計測によって検知し、異常が検知されると、調整、修理などが行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、スマートフォンに実装された振動センサおよびマイクロフォンによって、エレベータ運転時における振動および騒音の少なくとも一方を計測する計測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-168560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の計測方法では、スマートフォンが通信機能を備えるために、通信を行いながら計測を行うと、計測が正常に行えなくなるという不都合が生じやすい。例えば、計測中に電話の着信などがあると、計測を中断して再度計測する必要があったり、通信によってセンサ信号にノイズが混入したりする。また、振動センサを用いた計測が行われているときに受信があると、振動の計測より受信処理が優先されてしまうために計測データが乱れる。
【0006】
本発明の一態様は、通信による障害を受けることなく計測を実行する端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る端末装置は、エレベータまたはマンコンベヤである乗客搬送装置に関する計測対象を計測する計測部と、少なくとも1種類の通信機能によって通信を行う通信部と、前記計測部および前記通信部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記計測部による計測の開始時に、前記通信機能のうちの所定の前記通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促す。
【0008】
上記の構成によれば、計測の開始時に通信部の所定の通信機能、例えば、計測に影響を及ぼすような通信機能を無効にすることができる。これにより、計測が所定の通信機構が有効であることによって障害を受ける可能性を大幅に低減することができる。
【0009】
本発明の態様2に係る端末装置は、上記態様1において、前記制御部は、前記計測部による計測の開始時に、全ての前記通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、通信機能が有効であることによって計測が障害を受けることを容易に回避することができる。
【0011】
本発明の態様3に係る端末装置は、上記態様1において、前記計測部は、前記エレベータまたは前記マンコンベヤの加速度変化を計測してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、通信機能が有効であることによる影響を抑えながら振動の計測を行うことができる。
【0013】
本発明の態様4に係る端末装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記計測部は、前記エレベータまたは前記マンコンベヤの動作音を計測してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、通信機能が有効であることによる影響を抑えながら動作音の計測を行うことができる。
【0015】
本発明の態様5に係る端末装置は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記制御部は、前記計測部による計測の終了時に、計測時に無効であった前記通信機能について、有効にするか、または有効にする操作をするように使用者に促してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、計測が終了しているのに、通信機能が計測時から継続して無効である状態を回避または回避可能な状態にすることができる。
【0017】
本発明の態様6に係る端末装置は、上記態様5において、前記計測部は、前記エレベータまたは前記マンコンベヤの加速度変化を計測し、前記制御部は、所定の加速度変化を検知した場合、前記計測部による計測の終了を判断してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、エレベータまたはマンコンベアの停止を判断できる加速度変化を検知したタイミングで、通信機能を有効にすることができる。
【0019】
本発明の態様7に係る端末装置は、上記態様5において、前記計測部は、前記エレベータに関する前記計測対象を計測し、前記制御部は、前記計測部による計測開始から所定時間が経過したときに前記計測部による計測の終了を判断してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、エレベータのかごが移動する範囲が例えば最下階から最上階というように決まっていることを利用して、その範囲をかごが移動する時間を所定時間とすることで、計測の終了を判断することができる。これにより、エレベータが停止するタイミングで通信機能を有効にすることができる。
【0021】
本発明の態様8に係る端末装置は、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記計測部により計測された計測データを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記計測部による計測の終了後に前記通信機能が有効となった状態で、前記記憶部に記憶された前記計測データを前記通信部に外部へ送信させてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、計測部による計測の終了時に、使用者が端末装置に対して操作を行うことなく、計測データを外部に送信することができる。これにより、計測データの送信を必要とする場合、送信の失念を防止することができる。
【0023】
本発明の各態様に係る端末装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記端末装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記端末装置をコンピュータにて実現させる端末装置の端末制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、通信による障害を受けることなく計測を実行する端末装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る端末装置の構成を示すブロック図である。
図2】上記端末装置の計測動作の処理手順を示すフローチャートである。
図3】上記端末装置がエレベータのかご内に設置された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る端末装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
<端末装置1の構成>
図1に示す端末装置1は、携帯型の通信機能を有する装置であり、スマートフォン、タブレットなどの装置である。図1に示すように、端末装置1は、入力部2と、出力部3と、通信部4と、計測部5と、記憶部6と、制御部7とを備えている。
【0028】
入力部2は、操作入力のためタッチパネル、音声入力のためのマイク、画像入力のためのカメラなどを有している。出力部3は、音の出力のためのスピーカ31、表示出力のための表示装置32などを有している。
【0029】
通信部4は、少なくとも1種類の通信機能を有しており、ネットワーク100を通じてコンピュータ10などの外部装置との通信を行う。なお、ここで、ネットワーク100は、電話通信のための電話ネットワークおよびデータ通信のためのインターネットを含んでおり、説明の便宜上これらを厳密に区別していない。通信部4は、電話通信部41と、パケット通信部42とを有している。また、通信部4は、図示はしないが、電話通信部41およびパケット通信部42で共通して使用されるアンテナを有している。
【0030】
電話通信部41は、電話通信機能を有している。電話通信部41は、入力部2(マイク)から制御部7を介して入力される音声信号を高周波の送信信号に変調してアンテナに出力する。また、電話通信部41は、アンテナによって受信された高周波の受信信号を音声信号に復調して制御部7に入力する。制御部7は、デジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換してスピーカ31に出力する。
【0031】
パケット通信部42は、データ通信機能を有している。パケット通信部42は、メール、メッセージ、記憶部6に記憶された計測データなどのデータをパケットに変換して、さらに当該パケットを高周波の送信信号に変調してアンテナに出力する。また、パケット通信部42は、アンテナによって受信された高周波の受信信号をパケットに復調し、さらにパケットをデータに変換して制御部7に入力する。制御部7は、データを表示装置32、記憶部6などに出力する。パケット通信部42は、ネットワーク100を通じた通信以外に、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの近距離通信も行う。
【0032】
計測部5は、エレベータまたはマンコンベヤである乗客搬送装置に関する計測対象を計測する。計測部5は、計測デバイスとして、加速度センサ51、音センサ52などを有している。音センサ52は、音を検出して音波信号として出力する検出器であり、入力部2に含まれる上述のマイクを用いてもよい。音波信号については、音量を所定の周期で検出するものであってもよい。加速度センサ51は、エレベータまたはマンコンベヤの加速度変化を計測するために用いられる。音センサ52は、エレベータまたはマンコンベヤの動作音を計測するために用いられる。
【0033】
エレベータまたはマンコンベヤの加速度変化を計測することによって、エレベータおよびマンコンベアの振動を計測する。また、加速度変化を計測することによって、エレベータおよびマンコンベアを駆動するモーターの振動を計測する場合もある。
【0034】
記憶部6は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの記憶装置によって構成される。記憶部6、計測部5により計測された計測データなどを記憶する。
【0035】
制御部7は、端末装置1の各部を制御する。制御部7は、例えば、入力部2のタッチパネルへの入力操作に応じて端末装置1の各機能の実行を制御する。また、制御部7は、計測部5による計測に関する制御機能を有している。制御部7は、当該制御機能を実現するために、通信制御部71と、計測制御部72と、データ送信制御部73とを有している。
【0036】
通信制御部71は通信部4を制御し、制御機能の1つとして通信機能の無効処理を行う。通信制御部71は、通信機能の無効処理として、計測部5による計測の開始時に、通信部4の通信機能のうちの所定の通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように端末装置1の使用者に促す。通信制御部71は、使用者による上記の操作を受け付けて、通信部4の通信機能を無効にする。
【0037】
通信制御部71が無効の対象とする通信機能は、電話通信部41による電話通信機能であり、パケット通信部42によるデータ通信機能については無効の対象としない。あるいは、通信制御部71が無効の対象とする通信機能は、全ての通信機能、すなわち、電話通信機能およびデータ通信機能であってもよい。
【0038】
通信制御部71は、制御機能の他の1つとして通信機能の有効処理を行う。通信制御部71は、通信機能の有効処理として、計測部5による計測の終了時に、計測時に無効であった通信機能について、有効にするか、または有効にする操作をするように使用者に促す。通信制御部71は、使用者による上記の操作を受け付けて、通信部4の通信機能を有効にする。計測部5による計測の終了は、後述するように計測制御部72により通知される。
【0039】
計測制御部72は、計測部5による計測を制御する。計測制御部72は、計測部5によって計測された計測結果を記録することにより計測を実行する。計測制御部72は、加速度センサ51による計測結果を振動データとして記憶部6に記憶させ、音センサ52による計測結果を録音データとして記憶部6に記憶させる。
【0040】
計測制御部72は計測の終了を判断する。具体的には、計測制御部72は、加速度センサ51によるエレベータまたはマンコンベヤの加速度変化の計測において、所定の加速度変化を検知した場合、加速度センサ51による計測の終了を判断する。計測制御部72は、計測の終了を判断すると、通信制御部71に計測終了を通知する。
【0041】
上記の所定の加速度変化としては、エレベータまたはマンコンベアの停止を判断できる加速度変化であってもよい。エレベータでは、停止時のかごの加速度変化がゼロ加速度に至るために特有の変化を示す。また、マンコンベアのうち、特にエスカレータの場合、エスカレータの乗り始めの平坦部分から上昇または下降に変わるタイミング、および、最後の上昇または下降から平坦に変わるタイミングで加速度変化がある。したがって、これらの加速度変化によって停止を判断することができる。
【0042】
計測制御部72は、エレベータに関する加速度センサ51および音センサ52の少なくともいずれか一方による計測が行われている場合、計測開始から所定時間が経過したときに計測部による計測の終了を判断してもよい。エレベータが最下階から最上階に移動するまでの間で計測を行う場合、当該移動に要する時間は概ね一定であると考えられるからである。あるいは、計測制御部72は、入力部2のタッチパネルなどから入力された計測を終了する操作指示に基づいて、計測の終了を判断してもよい。
【0043】
データ送信制御部73は、記憶部6に記憶されている計測データの送信を制御する。具体的には、データ送信制御部73は、計測部5による計測の終了後に通信機能が有効となった状態で、記憶部6に記憶された計測データを通信部4に外部へ送信させる。
【0044】
<端末装置1の動作>
図2は、端末装置1の計測動作の処理手順を示すフローチャートである。図3は、端末装置1がエレベータのかご200内に設置された状態を示す斜視図である。
【0045】
図2に示すように、まず、通信制御部71は、使用者の入力部2を用いた操作により、計測の指示があったか否かを判定する(ステップS1)。通信制御部71は、ステップS1において、計測の指示があるまで待機し(NO)、計測の指示があると(YES)、続いて通信機能無効処理を行う(ステップS2)。
【0046】
通信制御部71は、通信機能無効処理として、通信部4の電話通信機能または全ての通信機能を無効にするように、電話通信部41の動作または通信部4の動作を停止させる。あるいは、通信制御部71は、通信無効処理として、通信部4の電話通信機能または全ての通信機能を無効にする操作をするように使用者に促す。通信制御部71は、当該操作をするように使用者に促す処理として、通信機能を無効にする操作をするように促すメッセージを、スピーカ31に音声出力させるか、または表示装置32に表示させる。使用者による上記の操作が行われると、通信制御部71は、その操作を受け付けて通信機能を無効にする。
【0047】
次いで、計測制御部72は、計測部5による計測および計測結果の記録を行う(ステップS3)。計測は、記録が行われることを以て行われるものとする。通常、計測部5の各センサは、端末装置1の電源が投入された状態で検出対象を検出するため、通信機能無効処理を伴わない検出動作は、計測に該当しない。
【0048】
計測制御部72は、計測が終了したか否かを判定する(ステップS4)。計測制御部72は、上述したように、所定の加速度を検知した場合、計測開始から所定の時間が経過した場合、使用者による計測終了の操作指示が受けた場合などにより、計測の終了を判断する。計測制御部72は、ステップS4において、計測が終了していないと判定すると(NO)、処理をステップS3に戻す。計測制御部72は、ステップS4において計測の終了を判定すると(YES)、計測結果の記録を停止する(ステップS5)。
【0049】
その後、通信制御部71は、通信機能有効処理を行う(ステップS6)。通信制御部71は、通信機能有効処理として、計測時に無効にされていた通信機能を有効にするか、あるいは有効にする操作をするように使用者に促す。通信制御部71は、当該操作をするように使用者に促す処理として、通信機能を有効にする操作をするように促すメッセージを、スピーカ31に音声出力させるか、または表示装置32に表示させる。使用者による上記の操作が行われると、通信制御部71は、その操作を受け付けて通信機能を有効にする。通信制御部71は、通信機能が有効であることをデータ送信制御部73に通知する。
【0050】
そして、データ送信制御部73は、通信制御部71からの通知を受けると、記憶部6に保存されている計測データを送信するように通信部4に送出する。通信部4は、当該計測データを例えばコンピュータ10に送信する(ステップS7)。
【0051】
コンピュータ10では、必要に応じて、受信した計測データに基づいて、計測結果の解析が行われる。例えば、エレベータやマンコンベアの走行音を計測した場合、計測音から音の大きさと周波数とを分析して、異常の有無を判断したり、分析結果をトラブルシューティングに応用したりする。例えば、騒音がエレベータやマンコンベアの品質を低下させるので、走行音の大きさで問題の有無を確認する。また、周波数分析により、エレベータやマンコンベアに設けられている回転要素の異常の有無を判断する。加速度の変化によりエレベータやマンコンベアの振動を計測する場合も、エレベータやマンコンベアの品質を低下させる問題となる振動の有無を確認したり、回転要素の異常の有無を判断したりする。
【0052】
なお、本実施形態では、通信制御部71は、使用者の計測指示を計測の開始として認識して通信機能無効処理を実行するが、通信機能無効処理を行う契機とするのは使用者の計測指示に限定されない。例えば、加速度計測の場合、通常、図3に示すように、エレベータのかご200における床201(X方向およびY方向に沿った面)の中心に端末装置1が設置(平置き)される。この状態では、端末装置1の垂直方向(Z軸)に1Gの負荷がかかる。通信制御部71は、その負荷を計測開始として受けて、通信機能無効処理を実行してもよい。
【0053】
また、端末装置1は、計測部5として気圧センサ(高度センサ)を有していてもよい。エレベータの高さが高いと、1階と最上階とで気圧差が生じるために、耳鳴りが生じることがある。気圧センサによる計測結果を用いて、上記の気圧差を分析することができる。
【0054】
また、端末装置1は、計測部5として照度センサを有していてもよい。計測対象としては、エレベータのかご200内の環境として、例えば明るさが挙げられる。エレベータ関連の法令や規格では、床201の最低照度や照度基準が規定されている。このため、照度センサによる計測結果を用いて、床201の照度を分析することができる。
【0055】
<端末装置1の効果>
以上のように、本実施形態に係る端末装置1は、通信制御部71が、計測部5による計測の開始時に、通信部4の通信機能のうちの所定の通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促す。
【0056】
これにより、計測の開始時に通信部4の所定の通信機能、例えば、計測に影響を及ぼすような通信機能を無効にすることができる。これにより、計測が所定の通信機構が有効であることによって障害を受ける可能性を大幅に低減することができる。例えば、動作音の計測や振動の計測においては、電話通信機能による呼出音が計測に影響を及ぼす。また、加速度の計測時に受信(電話着信やデータ通信)が行われると、加速度変化の計測より受信処理の方が優先されてしまう。このため、計測データが乱れてしまうという不都合がある。通信機能を無効にすることにより、このような不都合を回避することができる。
【0057】
また、通信制御部71は、計測部5による計測の開始時に、全ての通信機能について、無効にするか、または無効にする操作をするように使用者に促してもよい。これにより、通信機能が有効であることによって計測が障害を受けることを容易に回避することができる。
【0058】
また、計測部5は、加速度センサ51により、エレベータまたはマンコンベヤの加速度変化を計測してもよい。これにより、通信機能が有効であることによる影響を抑えながら振動の計測を行うことができる。
【0059】
また計測部5は、エレベータまたはマンコンベヤの動作音を計測してもよい。これにより、通信機能が有効であることによる影響を抑えながら動作音の計測を行うことができる。
【0060】
また、通信制御部71は、計測部5による計測の終了時に、計測時に無効であった前記通信機能について、有効にするか、または有効にする操作をするように使用者に促してもよい。これにより、計測が終了しているのに、通信機能が計測時から継続して無効である状態を回避または回避可能な状態にすることができる。
【0061】
また、計測部5は、エレベータまたはマンコンベヤの加速度変化を計測し、計測制御部72は、所定の加速度変化を検知した場合、計測部5による計測の終了を判断してもよい。これにより、エレベータまたはマンコンベアの停止を判断できる加速度変化を検知したタイミングで、通信機能を有効にすることができる。
【0062】
また、計測部5は、エレベータに関する計測対象を計測し、計測制御部72は、計測部5による計測開始から所定時間が経過したときに計測部5による計測の終了を判断してもよい。これにより、エレベータのかごが移動する範囲が例えば最下階から最上階というように決まっていることを利用して、その範囲をかごが移動する時間を所定時間とすることで、計測の終了を判断することができる。これにより、エレベータが停止するタイミングで通信機能を有効にすることができる。
【0063】
また、端末装置1は、計測制御部72は、計測部5による計測の終了後に通信機能が有効となった状態で、記憶部6に記憶された計測データを通信部4に外部へ送信させてもよい。これにより、計測部5による計測の終了時に、使用者が端末装置1に対して操作を行うことなく、計測データを外部に送信することができる。これにより、計測データの送信を必要とする場合、送信の失念を防止することができる。
【0064】
〔ソフトウェアによる実現例〕
端末装置1の機能は、端末装置1としてコンピュータを機能させるための端末制御プログラムであって、端末装置1の各制御ブロック(特に制御部7に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(アプリケーションプログラム)により実現することができる。
【0065】
この場合、端末装置1は、端末制御プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0066】
端末制御プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、端末装置1が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、端末制御プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して端末装置1に供給されてもよい。
【0067】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0068】
また、上記実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは端末装置1で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0069】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 端末装置
4 通信部
5 計測部
6 記憶部
7 制御部
71 通信制御部
72 計測制御部
73 データ送信制御部
図1
図2
図3