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特開2023-65134液状組成物、液状組成物の製造方法及び液状組成物の保管方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065134
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】液状組成物、液状組成物の製造方法及び液状組成物の保管方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/22 20060101AFI20230502BHJP
   C01D 5/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C01B17/22
C01D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175765
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 幸一
(72)【発明者】
【氏名】古屋 政幸
(57)【要約】
【課題】沈殿の発生が抑制された液状組成物を提供する。
【解決手段】本開示の液状組成物は、アルカリ金属硫化物を含有し、かつ、イエローインデックスが10.00以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属硫化物を含有し、かつ、イエローインデックスが10.00以下である、液状組成物。
【請求項2】
亜硫酸アルカリ金属塩を更に含有する、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が、1.0モル%以上である、請求項2に記載の液状組成物。
【請求項4】
アルカリ金属硫化物と、亜硫酸アルカリ金属塩とを含有し、
前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が、1.0モル%以上である、液状組成物。
【請求項5】
前記亜硫酸アルカリ金属塩が、亜硫酸ナトリウムを含む、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記アルカリ金属硫化物が、硫化水素ナトリウムを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項7】
水を更に含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項8】
アルカリ金属硫化物、亜硫酸アルカリ金属塩及び水を含有し、
前記アルカリ金属硫化物、前記亜硫酸アルカリ金属塩及び前記水の合計含有割合が、液状組成物に対して、90質量%以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項9】
アルカリ金属硫化物及び亜硫酸アルカリ金属塩を含有する液状組成物の製造方法であって、
前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように調製する工程を含む、液状組成物の製造方法。
【請求項10】
アルカリ金属硫化物を含む液状組成物に、亜硫酸アルカリ金属塩を添加する工程を含む、液状組成物の保管方法。
【請求項11】
前記添加する工程において、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように、前記液状組成物に前記亜硫酸アルカリ金属塩を添加する、請求項10に記載の液状組成物の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液状組成物、液状組成物の製造方法及び液状組成物の保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化水素ナトリウムは、触媒や硫黄源等に幅広く用いられる。硫化水素ナトリウムは、化学工場等で発生する廃液から抽出されることがある。例えば、特許文献1には、廃ソーダ液等から硫化水素ナトリウムを含むアルカリ溶液を回収するにあたり、アルカリ溶液中に含まれる微細硫化物をポリアクリルアミドで凝集沈降させて除去分離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-172204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硫化水素ナトリウムは、従来のように沈殿物等が除去分離された後で、液体の形態で利用される場合が多い。
しかしながら、硫化水素ナトリウムを含む液状組成物を保管している間に、液状組成物に沈殿が発生し、固形物が生じるおそれがある。液状組成物中に固形物が生じた状態で、液状組成物を製品の原料に利用すると、固形物は、製造ラインにおける配管及び送液ポンプを詰まらせる等、製造ラインの安定な運転を妨げるおそれがある。
一方、液状組成物中から固形物を除去してから液状組成物を利用することが考えられるが、固形物の除去には手間がかかる。
したがって、沈殿の発生そのものが抑制された液状組成物が求められている。
【0005】
本開示の一態様の課題は、沈殿の発生が抑制された液状組成物、液状組成物の製造方法及び液状組成物の保管方法を提供することである。
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> アルカリ金属硫化物を含有し、かつ、イエローインデックスが10.00以下である、液状組成物。
<2> 亜硫酸アルカリ金属塩を更に含有する、前記<1>に記載の液状組成物。
<3> 前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が、1.0モル%以上である、前記<2>に記載の液状組成物。
<4> アルカリ金属硫化物と、亜硫酸アルカリ金属塩とを含有し、
前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が、1.0モル%以上である、液状組成物。
<5> 前記亜硫酸アルカリ金属塩が、亜硫酸ナトリウムを含む、前記<2>~<4>のいずれか1つに記載の液状組成物。
<6> 前記アルカリ金属硫化物が、硫化水素ナトリウムを含む、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の液状組成物。
<7> 水を更に含有する、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の液状組成物。
<8> アルカリ金属硫化物、亜硫酸アルカリ金属塩及び水を含有し、
前記アルカリ金属硫化物、前記亜硫酸アルカリ金属塩及び前記水の合計含有割合が、液状組成物に対して、90質量%以上である、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の液状組成物。
<9> アルカリ金属硫化物及び亜硫酸アルカリ金属塩を含有する液状組成物の製造方法であって、
前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように調製する工程を含む、液状組成物の製造方法。
<10> アルカリ金属硫化物を含む液状組成物に、亜硫酸アルカリ金属塩を添加する工程を含む、液状組成物の保管方法。
<11> 前記添加する工程において、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように、前記液状組成物に前記亜硫酸アルカリ金属塩を添加する、前記<10>に記載の液状組成物の保管方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、沈殿の発生が抑制された液状組成物、液状組成物の製造方法及び液状組成物の保管方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
(1)第1実施形態
本開示の第1実施形態に係る液状組成物は、アルカリ金属硫化物を含有し、かつ、イエローインデックス(以下、「Y.I」という場合がある)が10.00以下である。
【0010】
本開示において、「アルカリ金属硫化物」とは、硫化水素の少なくとも1つの水素原子がアルカリ金属原子に置換された化合物を示す。
【0011】
第1実施形態に係る液状組成物は、上記の構成を有するため、沈殿の発生が抑制されている。
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
従来、市販の硫化水素ナトリウムを用いた硫化水素ナトリウム水溶液(以下、「市販品」という。)のイエローインデックスは10.00超であり、市販品は黄色味を帯びている。黄色味は、市販品に溶解している硫黄系イオンに起因すると考えられる。硫黄系イオンは、硫化物イオン(S2-)を含む。
本発明者らは、市販品を保管すると、市販品中に、黒色固形物が発生する場合があることを確認した。そして、本発明者らは、黒色固形物を分析したところ、黒色固形物は硫化鉄(FeS)であることがわかった。この分析結果から、市販品は鉄イオンを含有し、沈殿の発生は、市販品に溶解している鉄イオンと、市販品に溶解している硫黄系イオンとに起因すると考えられる。市販品に溶解している鉄イオンは、硫化水素ナトリウムの製造過程等で不可避的に混入されると考えられる。
液状組成物のイエローインデックスが10.00以下であることは、液状組成物に溶解している硫黄系イオンの量が従来よりも少ないことを示す。そのため、鉄イオンが液状組成物に溶解していても、液状組成物に溶解している鉄イオンと、液状組成物に溶解している硫黄系イオンとが反応して、硫化鉄(FeS)を生成する生成反応(以下、「硫化鉄生成反応」という。)は、従来よりも進行しにくい。その結果、第1実施形態に係る液状組成物では、沈殿の発生が抑制されていると推測される。
【0012】
本開示において、「沈殿」とは、反応生成物が粒状等の固形物になって、液状組成物中に析出する現象を示す。
【0013】
(1.1)イエローインデックス
第1実施形態では、液状組成物のイエローインデックスは、10.00以下である。これにより、硫化鉄生成反応の進行は従来よりも抑制され、沈殿の発生は抑制される。
液状組成物のイエローインデックスの上限は、沈殿の発生をより抑制する等の観点から、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7以下である。
液状組成物のイエローインデックスの下限は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上である。
液状組成物のイエローインデックスの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0014】
液状組成物のイエローインデックスを上記範囲内に調整する方法としては、例えば、液状組成物に亜硫酸アルカリ金属塩を添加する方法等が挙げられる。
【0015】
(1.2)成分
液状組成物は、アルカリ金属硫化物を含有する。
【0016】
(1.2.1)アルカリ金属硫化物
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化水素アルカリ金属塩、硫化アルカリ金属塩等が挙げられる。硫化水素アルカリ金属塩としては、例えば、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素ルビジウム、硫化水素セシウム等が挙げられる。硫化アルカリ金属塩としては、例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム等が挙げられる。
なかでも、アルカリ金属硫化物は、沈殿の発生がより適切に抑制される観点から、硫化水素ナトリウムを含むことが好ましい。
【0017】
アルカリ金属硫化物の含有割合は、特に限定されず、アルカリ金属硫化物の用途等に応じて適宜選択される。
アルカリ金属硫化物の含有割合の上限は、液状組成物に対して、沈殿の発生がより抑制される観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量以下である。
アルカリ金属硫化物の含有割合の下限は、目的に応じて適宜決定すればよく、例えば、液状組成物に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
液状組成物中のアルカリ金属硫化物の質量の測定方法は、JIS K1435(1986)に準拠して測定される。
【0018】
(1.2.2)亜硫酸アルカリ金属塩
第1実施形態では、液状組成物は、亜硫酸アルカリ金属塩を更に含有することが好ましい。これにより、沈殿の発生はより抑制される。
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
液状組成物が亜硫酸アルカリ金属塩を含有することで、液状組成物に溶解している硫黄系イオンは、亜硫酸アルカリ金属塩と反応して、例えば、チオ硫酸アルカリ金属塩を生成する。換言すると、液状組成物に溶解している硫黄系イオンは、亜硫酸アルカリ金属塩との反応で消費され、液状組成物に溶解している硫黄系イオンの量は少なくなる。そのため、鉄イオンが液状組成物に溶解していても、硫化鉄生成反応は進行しにくくなる。その結果、沈殿の発生はより抑制されると推測される。
【0019】
本開示において、「亜硫酸アルカリ金属塩」とは、亜硫酸の水素原子がアルカリ金属原子に置換された化合物を示す。
【0020】
亜硫酸アルカリ金属塩としては、例えば、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ルビジウム、亜硫酸セシウム等が挙げられる。
なかでも、亜硫酸アルカリ金属塩は、沈殿の発生の抑制により適している観点から、亜硫酸ナトリウムを含むことが好ましい。
【0021】
(1.2.3)亜硫酸アルカリ金属塩のモル比
アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比(以下、単に「亜硫酸アルカリ金属塩のモル比」という場合がある。)は、特に限定されず、1.0モル%以上であることが好ましい。これにより、沈殿の発生はさらに抑制される。
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上であることで、液状組成物に溶解している硫黄系イオンの大部分は、亜硫酸アルカリ金属塩との反応によって消費される。換言すると、液状組成物に溶解している硫黄系イオンの量はより少なくなる。これにより、硫化鉄生成反応がさらに進行しにくくなる。その結果、沈殿の発生はさらに抑制されると推測される。
アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の上限は、目的に応じて適宜設定すればよく、例えば、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の下限は、沈殿の発生の抑制に適している観点から、好ましくは1.2モル%以上、より好ましくは1.5モル%以上である。
【0022】
亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合は、特に限定されず、アルカリ金属硫化物の含有割合等に応じて適宜選択される。
亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合の上限は、溶解度の観点から、液状組成物に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合の下限は、沈殿の発生の抑制により適している観点から、液状組成物に対して、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。
液状組成物中の亜硫酸アルカリ金属塩の質量の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0023】
(1.2.4)水
液状組成物は、水を更に含有することが好ましい。
水の含有割合は、特に限定されず、液状組成物の用途等に応じて適宜選択される。
水の含有割合の上限は、目的に応じて適宜設定すればよく、例えば、液状組成物に対して、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
水の含有割合の下限は、アルカリ金属硫化物、亜硫酸アルカリ金属塩などの溶解度の観点から、液状組成物に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
【0024】
液状組成物は、アルカリ金属硫化物、亜硫酸アルカリ金属塩及び水を含有する場合、アルカリ金属硫化物、亜硫酸アルカリ金属塩及び水の合計含有割合(以下、単に「合計含有割合」という場合がある。)は、特に限定されず、液状組成物に対して、90質量%以上であることが好ましい。
合計含有割合の上限は、目的に応じて適宜設定すればよく、例えば、好ましくは99質量%以下である。
合計含有割合の下限は、目的に応じて適宜設定すればよく、例えば、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上である。
【0025】
(1.3)用途
液状組成物の用途としては、例えば、触媒、硫黄源等が挙げられる。
【0026】
(2)第2実施形態
第2実施形態に係る液状組成物は、アルカリ金属硫化物と、亜硫酸アルカリ金属塩とを含有し、前記アルカリ金属硫化物に対する前記亜硫酸アルカリ金属塩のモル比は、1.0モル%以上である。
【0027】
第2実施形態に係る液状組成物は、上記の構成を有するため、沈殿の発生が抑制されている。
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
上述したように、亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上であることで、液状組成物に溶解している硫黄系イオンの量は非常に少なくなる。これにより、硫化鉄生成反応がさらに進行しにくくなる。その結果、沈殿の発生は抑制されると推測される。
【0028】
(2.1)イエローインデックス
第2実施形態では、液状組成物のイエローインデックスは、特に限定されず、10.00以下であることが好ましい。これにより、沈殿の発生はより抑制される。
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
上述したように、液状組成物のイエローインデックスが10.00以下であることは、液状組成物に溶解している硫黄系イオンの量が従来よりも少ないことを示す。その結果、硫化鉄生成反応の進行は従来よりも抑制され、沈殿の発生はより抑制されると推測される。
液状組成物のイエローインデックスの好ましい上限、下限は、第1実施形態における液状組成物のイエローインデックスの好ましい上限、下限として例示したものと同様のものが挙げられる。
液状組成物のイエローインデックスの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0029】
液状組成物のイエローインデックスを上記範囲内に調整する方法としては、第1実施形態における液状組成物のイエローインデックスの調整方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
(2.2)成分
第2実施形態では、液状組成物は、アルカリ金属硫化物及び亜硫酸アルカリ金属塩を含有する。
【0031】
(2.2.1)亜硫酸アルカリ金属塩のモル比
第2実施形態では、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比は、1.0モル%以上である。これにより、沈殿の発生は抑制される。
上記効果が奏される理由は、第1実施形態において亜硫酸アルカリ金属塩のモル比を1.0モル%以上とすることによる効果が奏される理由と同様であると推測されるが、これに限定されない。
亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の好ましい上限、下限は、第1実施形態における液状組成物のアルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の好ましい上限、下限として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
(2.2.2)アルカリ金属硫化物
アルカリ金属硫化物としては、第1実施形態におけるアルカリ金属硫化物として例示したものと同様のものが挙げられる。
なかでも、アルカリ金属硫化物は、沈殿の発生をより抑制できる観点から、亜硫酸ナトリウムを含むことが好ましい。
アルカリ金属硫化物の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態におけるアルカリ金属硫化物の含有割合として例示したものと同様であってもよい。
液状組成物中のアルカリ金属硫化物の質量の測定方法は、第1実施形態における液状組成物中のアルカリ金属硫化物の質量の測定方法と同様である。
【0033】
(2.2.3)亜硫酸アルカリ金属塩
亜硫酸アルカリ金属塩としては、第1実施形態における亜硫酸アルカリ金属塩として例示したものと同様のものが挙げられる。
なかでも、亜硫酸アルカリ金属塩は、沈殿の発生をより抑制できる観点から、硫化水素ナトリウムを含むことが好ましい。
亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態における亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合として例示したものと同様であってもよい。
液状組成物中の亜硫酸アルカリ金属塩の質量の測定方法は、第1実施形態における液状組成物中の亜硫酸アルカリ金属塩の質量の測定方法と同様である。
【0034】
(2.2.4)水
液状組成物は、水を更に含有することが好ましい。
水の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態における水の含有割合として例示した割合と同様であってもよい。
【0035】
液状組成物は、アルカリ金属硫化物、亜硫酸アルカリ金属塩及び水を含有する場合、前記アルカリ金属硫化物、前記亜硫酸アルカリ金属塩及び前記水の合計含有割合が、液状組成物に対して、90質量%以上であることが好ましい。
合計含有割合は、第1実施形態における合計含有割合として例示した割合と同様であってもよい。
【0036】
(2.3)用途
液状組成物の用途としては、例えば、触媒、硫黄源等が挙げられる。
【0037】
(3)液状組成物の製造方法
本開示の液状組成物の製造方法は、アルカリ金属硫化物及び亜硫酸アルカリ金属塩を含有する液状組成物の製造方法であって、後述する調製する工程(以下、「調製工程」という。)を含む。
これにより、第1実施形態に係る液状組成物、又は第2実施形態に係る液状組成物が得られる。
【0038】
(3.1)調製工程
調製工程では、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように調製する。
【0039】
(3.1.1)調製
亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように調製する方法は、特に限定されず、例えば、液状組成物中のアルカリ金属硫化物の質量及び亜硫酸アルカリ金属塩の質量を測定し、これらの測定値に基づいて、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように、アルカリ金属硫化物を含む液状組成物に亜硫酸アルカリ金属塩を添加する方法等が挙げられる。
調製する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比は、1.0モル%以上であれば特に限定されない。
調製する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の上限は、溶解度の観点から、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
調製する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の下限は、沈殿の発生をより抑制できる観点から、より好ましくは1.2モル%以上、さらに好ましくは1.5モル%以上である。
【0040】
(3.1.2)アルカリ金属硫化物
本開示の液状組成物の製造方法におけるアルカリ金属硫化物としては、第1実施形態におけるアルカリ金属硫化物として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいアルカリ金属硫化物も第1実施形態と同様のものが挙げられる。
アルカリ金属硫化物の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態におけるアルカリ金属硫化物の含有割合として例示したものと同様であればよい。
【0041】
(3.1.3)亜硫酸アルカリ金属塩
亜硫酸アルカリ金属塩としては、第1実施形態における亜硫酸アルカリ金属塩として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい亜硫酸アルカリ金属塩も第1実施形態と同様である。
亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態における亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合として例示したものと同様であればよい。
【0042】
(4)液状組成物の保管方法
本開示の液状組成物の保管方法は、後述する添加する工程(以下、「添加工程」という。)を含む。
これにより、アルカリ金属硫化物を含む液状組成物において、沈殿の発生を抑制することができる。
【0043】
(4.1)添加工程
添加工程では、アルカリ金属硫化物を含む液状組成物に亜硫酸アルカリ金属塩を添加する。
【0044】
(4.1.1)添加
化水素アルカリ金属塩を含む液状組成物に亜硫酸アルカリ金属塩を添加する方法(以下、「添加方法」という。)は、特に限定されず、公知の方法であればよい。
【0045】
添加方法は、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように、液状組成物に亜硫酸アルカリ金属塩を添加することが好ましい。具体的に、添加方法は、液状組成物中のアルカリ金属硫化物の質量及び亜硫酸アルカリ金属塩の質量を測定し、これらの測定値に基づいて、アルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比が1.0モル%以上となるように、アルカリ金属硫化物を含む液状組成物に亜硫酸アルカリ金属塩を添加してもよい。
これにより、アルカリ金属硫化物を含む液状組成物において、沈殿の発生を抑制することができる。
調製する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の上限、下限は、本開示の液状組成物の製造方法におけるアルカリ金属硫化物に対する亜硫酸アルカリ金属塩のモル比の好ましい上限、下限と同様である
【0046】
(4.1.2)アルカリ金属硫化物
アルカリ金属硫化物としては、第1実施形態におけるアルカリ金属硫化物として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいアルカリ金属硫化物も第1実施形態と同様である。
アルカリ金属硫化物の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態におけるアルカリ金属硫化物の含有割合として例示したものと同様であればよい。
【0047】
(4.1.3)亜硫酸アルカリ金属塩
亜硫酸アルカリ金属塩としては、第1実施形態における亜硫酸アルカリ金属塩として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい亜硫酸アルカリ金属塩も第1実施形態と同様である。
亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合は、特に限定されず、第1実施形態における亜硫酸アルカリ金属塩の含有割合として例示したものと同様であればよい。
【実施例0048】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下説明中、特に言及が無い限り「部」、「%」は質量基準である。
【0049】
[亜硫酸ナトリウム分析法]
液状組成物中の亜硫酸ナトリウムの質量を、JIS K1435(1986)に準拠した測定により求めた。
【0050】
[水溶液イエローインデックス測定法]
液状組成物のイエローインデックスを、下記の測定条件で測定した
<測定条件>
・装置 :コニカミノルタ株式会社製の「SPECTROPHOTOMETER CM-5」
・測定モード:E313-96
・石英セル :20mm
【0051】
[実施例1]
硫化水素ナトリウムの含有割合が硫化水素ナトリウム水溶液に対して26.0質量%である硫化水素ナトリウム水溶液(以下、「26質量%硫化水素ナトリウム水溶液」という。)となるように、ガラスビーカー中の硫化水素ナトリウムを純水で希釈した。これにより、26質量%硫化水素ナトリウム水溶液を得た。
26質量%硫化水素ナトリウム水溶液中に、鉄が含まれることをICP-MS Agilent7500cs (アジレントテクノロジー製)により確認した。
26質量%硫化水素ナトリウム水溶液 50g(NaSHのモル数:0.232mol)に、亜硫酸ナトリウム(NaSO)の含有割合が液状組成物に対して1.0質量%(NaSOのモル数:0.004mol)となるように、亜硫酸ナトリウム(NaSO)を加え撹拌して完全に溶解させて、液状組成物を調製した。得られた液状組成物の色は、無色透明であった。
得られた液状組成物中の亜硫酸ナトリウムの質量を、亜硫酸ナトリウム分析法により測定した。液状組成物のイエローインデックスを、水溶液イエローインデックス測定法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0052】
[実施例2~3、比較例1]
亜硫酸ナトリウムの含有割合を表1に示すとおりに変更したことの他は、実施例1と同様に、液状組成物を調製した。実施例2~3での液状組成物の色は無色透明であったのに対し、比較例1の液状組成物の色は黄色味を帯びていた。
液状組成物中の亜硫酸ナトリウムの質量及び液状組成物のイエローインデックスを実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1に示す。
【0053】
[保管安定性評価]
液状組成物を40℃のオーブン内に2週間保管した。その後、液状組成物をオーブン内に保管した日から2週間経過した液状組成物中に沈殿物が発生しているか否かを、下記の評価基準で、目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
A:黒色固形物を含む固形物を液状組成物中に目視で確認できなかった。
B:液状組成物の底一面に、粒子状の黒色固形物を含む固形物の沈殿が広がっていることを目視で確認した。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例1の液状組成物は、硫化水素ナトリウムを含有する。比較例1の液状組成物のイエローインデックスは、28.20であり、10.00以下ではなかった。そのため、比較例1の液状組成物の保管安定性評価は、「B」であった。これにより、比較例1の液状組成物では、沈殿の発生が抑制されていないことがわかった。
これに対し、実施例1~実施例3の液状組成物は、硫化水素ナトリウムを含有する。実施例1~実施例3の液状組成物のイエローインデックスは、6.87以下であり、10.00以下であった。そのため、実施例1~実施例3の液状組成物の保管安定性評価は、「A」であった。その結果、実施例1~実施例3の液状組成物は、沈殿の発生が抑制されていることがわかった。
【0057】
比較例1の液状組成物は、硫化水素ナトリウムと、亜硫酸ナトリウムとを含有する。硫化水素ナトリウムに対する亜硫酸ナトリウムのモル比(NaSO/NaSH)は、0.9モル%であり、1.0モル%以上ではなかった。そのため、比較例1の液状組成物の保管安定性評価は、「B」であった。これにより、比較例1の液状組成物は、沈殿の発生が抑制されていないことがわかった。
これに対し、実施例1~実施例3の液状組成物は、硫化水素ナトリウムと、亜硫酸ナトリウムとを含有する。硫化水素ナトリウムに対する亜硫酸ナトリウムのモル比(NaSO/NaSH)は、1.7モル%以上であり、1.0モル%以上であった。そのため、実施例1~実施例3の液状組成物の保管安定性評価は、「A」であった。その結果、実施例1~実施例3の液状組成物では、沈殿の発生が抑制されていることがわかった。
【0058】
保管安定性評価において比較例1の液状組成物中に発生した黒色固形物をX線分析により分析したところ、黒色固形物は硫化鉄(FeS)であることわかった。これにより、黒色固形物の鉄源は、硫化水素ナトリウム又は亜硫酸ナトリウムの原料製品に由来することがわかった。