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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065138
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物、および、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230502BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K5/3472
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175771
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】黒田 達也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE032
4J002CF071
4J002EU077
4J002EU088
4J002EU176
4J002FD047
4J002FD048
4J002FD056
4J002FD167
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 耐光性および耐候性に優れた樹脂組成物、および、樹脂組成物から形成される成形品の提供。
【解決手段】 ポリエステル樹脂、紫外線吸収剤、および、融点が90~150℃である離型剤を含み、
前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される構造を含み、かつ、分子量が600以下である、樹脂組成物。
式(1)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、紫外線吸収剤、および、融点が90~150℃である離型剤を含み、
前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される構造を含み、かつ、分子量が600以下である、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、光安定剤を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記光安定剤がヒンダードアミン系光安定剤を含む、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記離型剤の含有量がポリエステル樹脂100質量部に対し、0.01~1.0質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
屋外で用いる成形品形成用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、および、成形品に関する。特に、ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル樹脂を用いた耐光性や耐候性に優れた樹脂組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂(A1)5~100質量%およびポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)0~95質量%からなる熱可塑性樹脂(A)と、紫外線吸収剤(B)と、N-R型またはN-CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)と、を含有し、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が、0.1~1.5質量部であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)の含有量が、0.1~1.5質量部である、耐光性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、熱可塑性ポリエステル樹脂と、SAE J1885にしたがって運転されたキセノンアークウェザロメーターにおいて601.6kJ/m2の照射に晒されたとき、ASTM標準規格D-2244にしたがって光源「D-65」下、CIELab単位で計算したときに約2.25未満の色差を達成し、かつ、照射後に少なくとも約7.5%の表面光沢の保留性を示すのに充分な有効量の、ポリエステル樹脂と組合わされる紫外線安定化系とを含む紫外線安定化された成形組成物であって、紫外線安定化系が:(i)紫外線吸収剤;(ii)ヒンダードアミン光安定剤;および(iii)酸化防止剤を含む前記紫外線安定化された成形組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-152901号公報
【特許文献2】特開平11-323100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、耐光性や耐候性に優れた樹脂組成物は検討されているが、さらに、新規材料の開発が期待される。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、耐光性および耐候性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成される成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリエステル樹脂に、所定の紫外線吸収剤に加えて、融点が90~150℃である離型剤を配合することにより、単に、紫外線吸収剤を配合しただけでは達成できない顕著なレベルで、耐光性や耐候性に優れた樹脂組成物が得られることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリエステル樹脂、紫外線吸収剤、および、融点が90~150℃である離型剤を含み、前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される構造を含み、かつ、分子量が600以下である、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
<2>前記ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>さらに、光安定剤を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記光安定剤がヒンダードアミン系光安定剤を含む、<3>に記載の樹脂組成物。
<5>前記離型剤の含有量がポリエステル樹脂100質量部に対し、0.01~1.0質量部である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>屋外で用いる成形品形成用である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、耐光性および耐候性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成される成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、紫外線吸収剤、および、融点が90~150℃である離型剤を含み、前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される構造を含み、かつ、分子量が600以下であることを特徴とする。
式(1)
【化2】
このような構成とすることにより、耐光性および耐候性に優れた樹脂組成物が得られる。特に、高温での光照射下に長時間さらされた後の耐光性が所定の離型剤の添加により、予想外に向上する。
ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物は、金型成形をする場合には、金型からの離型性を向上させるため、離型剤を配合することが一般的に行われている。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、屋外などで使用される成形品に融点が低い離型剤を配合すると、離型剤が日光の照射によって成形品の表面にしみだしてしまうことが分かった。そこで、本実施形態においては、融点が90℃以上の離型剤を用いることにより、離型剤が溶融して、成形品の表面にしみだしてしまうことを効果的に抑制することに成功した。一方、離型剤の融点が高すぎると、ポリエステル樹脂の離型剤としての機能を十分に果たさなくなることが分かった。本実施形態では、融点が150℃以下の離型剤を用いることにより、金型を用いて成形しても、離型剤が本来有する離型性の効果を効果的に発揮せることができた。
本実施形態では、さらに、驚くべきことに、所定の融点を有する離型剤を用いることにより、高温での光照射下に長時間さらされた後の耐光性(Δ色差)を低くできた。
これは、特定の融点の離型剤の場合には、成形体の表面に離型剤が存在する確率が高くなり、それが変色防止に寄与しているからと推測される。また、その表面にある離型剤が取り除かれにくく、長時間効果が続くのではないかと推測される。
【0009】
<ポリエステル樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含む。
ポリエステル樹脂としては、公知の熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
【0010】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
【0011】
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
【0012】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性、耐トラッキング性が向上しやすい傾向にあり、好ましい。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が抗向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/ton以上である。
【0014】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5~2dL/gであるのが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6~1.5dL/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度を0.5dL/g以上とすることにより、得られる樹脂組成物の機械強度がより向上する傾向にある。また、2dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形性が向上する傾向にある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、0.5~2dL/gであるのが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6~1.5dL/gの範囲の極限粘度を有するものがより好ましい。極限粘度を0.5dL/g以上とすることにより、得られる樹脂組成物の機械強度がより向上する傾向にある。また、2dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形性が向上する傾向にある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、テトラクロロエタンフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃においてウベローデ粘度計を用いて測定される値である。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0017】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエステル樹脂の含有量は、樹脂組成物中、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐薬品性がより向上する傾向にある。また、前記ポリエステル樹脂の含有量は、特定離型剤と特定紫外線吸収剤以外の成分が全てポリエステル樹脂となる量である。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0019】
<融点が90~150℃である離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、融点が90~150℃である離型剤(以下、「特定離型剤」ということがある)を含む。本実施形態においては、特定離型剤を含むことにより、ブリードアウトを効果的に抑制することができ、また、耐光性をより向上させることができる。
【0020】
前記特定離型剤の融点は、95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることがさらに好ましく、110℃以上であることが一層好ましく、120℃以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品表面における離型剤のブリードアウト抑制がより向上する傾向にある。また、前記特定離型剤の融点は、148℃以下であることが好ましく、146℃以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形時に離型剤が成形品表面に溶出しやすくなり成形安定性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が特定離型剤を2種以上含む場合、前記融点は、2種共に前述の融点範囲内であることが好ましい。
本実施形態で用いる特定離型剤の融点は、示差走査型熱量測定(DSC)による融点をいい、融解のメインピークのピーク温度(℃)をいう。具体的には、30℃から予想される融点+40℃まで20℃/分で昇温した際に検出される吸熱メインピークのピークトップの温度(℃)をいう。
【0021】
特定離型剤の種類としては、高級脂肪酸金属塩、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、およびワックスが例示され、ワックスが好ましい。
【0022】
離型剤としては、特開2018-203964号公報の段落0023の記載、特開2021-121685号公報の段落0092~0106の記載、特開2020-172580号公報の段落0047~0051の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0023】
ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、ケトンワックス、アミドワックス、エステルワックス、および、パラフィンワックスの少なくとも1種が好ましく、ポリオレフィンワックスおよび/またはアミドワックスがより好ましい。
【0024】
ポリオレフィンワックスの例には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリエチレン共重合体、またはそれらを酸化変性または酸変性することによって極性基を導入した、変性ポリエチレンワックスが含まれる。また、酸化変性または酸変性することによって、極性基を導入した、変性ポリエチレンワックスをポリオレフィンワックスの1~10質量%の量で配合すると、ポリアミド樹脂中での分散性を向上させることができ、より好ましい。
ポリオレフィンワックスとしては、三井化学社製、ミツイハイワックス100P(商品名)が例示される。
【0025】
アミドワックスは脂肪酸のモノアミドおよび/またはビスアミドである。脂肪酸モノアミドとしてはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド等が挙げられ、脂肪酸ビスアミドとしてはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等が挙げられる。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物における特定離型剤の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましく、0.10質量部以上であることが一層好ましく、0.15質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、離型性向上による成形安定化がより向上する傾向にある。また、前記特定離型剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、1.0質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以下であることが一層好ましく、0.25質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、射出成形時の発生ガス抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、特定離型剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、融点が90℃未満の離型剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、融点が90℃未満の離型剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、融点が90℃未満の離型剤の含有量が、本実施形態の樹脂組成物に含まれる特定離型剤の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましく、0.01質量%以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、また、融点が150℃超の離型剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、融点が150℃超の離型剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、融点が150℃超の離型剤の含有量が、本実施形態の樹脂組成物に含まれる特定離型剤の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましく、0.01質量%以下であることがより一層好ましい。
【0028】
<紫外線吸収剤>
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含む。本実施形態で用いる紫外線吸収剤は、下記式(1)で表される構造を含み、かつ、分子量が600以下である。以下、このような紫外線吸収剤を「特定紫外線吸収剤」ということがある。
式(1)
【化3】
本実施形態においては、特定紫外線吸収剤を含むことにより、樹脂組成物および成形品の耐光性および耐候性を高めることができる。特に樹脂組成物および成形品の耐候性試験後の色差を効果的に小さくすることができる。
【0029】
前記特定紫外線吸収剤の分子量は600以下である。分子量が600以下の紫外線吸収剤を用いることにより、成形品の表層に偏析し紫外線吸収性がより向上する。前記特定紫外線吸収剤の分子量は、550以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、450以下であることがさらに好ましく、400以下であることが一層好ましく、350以下であることがより一層好ましい。前記特定紫外線吸収剤の分子量の下限値は、200以上が好ましい。
【0030】
前記特定紫外線吸収剤は、下記式(UV)で表される紫外線吸収剤が好ましい。
式(UV)
【化4】
(式(UV)中、R1は、炭素数4~20のアルキル基であり、R2は水素原子または有機基である。)
1のアルキル基は、直鎖、分岐、または環状のアルキル基であり、直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、分岐のアルキル基がより好ましい。
1の炭素数は、5以上であることが好ましく、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、また、18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましく、12以下であることが一層好ましく、10以下であることがより一層好ましく、8であることがさらに一層好ましい。
1のアルキル基は、tert-オクチル基であることが特に好ましい。
2は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ベンゾトリアゾール環を含む有機基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物における特定紫外線吸収剤の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましく、0.10質量部以上であることが一層好ましく、0.15質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、紫外線吸収による色差の安定化効果がより向上する傾向にある。また、前記紫外線吸収剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、1.0質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以下であることが一層好ましく、0.25質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、射出成形時の発生ガス抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、特定紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物は、特定紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、特定紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、特定紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤の含有量が、本実施形態の樹脂組成物に含まれる特定紫外線吸収剤の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましく、0.01質量%以下であることがより一層好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物において、特定紫外線吸収剤と特定離型剤の質量比率は、特定紫外線吸収剤1に対し、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが一層好ましく、また、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.2以下であることが一層好ましい。このような比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0034】
<光安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤を含むことにより、長期耐光性・耐候性がより向上する傾向にある。特に、光安定剤がラジカルを補足し、耐光性および耐候性に寄与する。
光安定剤は、ヒンダードフェノール系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤が例示される。これらの中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0035】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤は、下記に示すN-H型、N-Me型、N-OR型のいずれであってもよいが、N-H型が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤は、一分子中に、下記構造の1種または2種以上を1~5個有することが好ましく、1~4個有することがより好ましく、1~3個有することがさらに好ましく、2個有することが一層好ましい。
【化5】
ここで、上記Rは有機基である。Rxは炭素数1~5のアルキル基であり、メチル基が好ましく、mは0~4の整数であり、0または1が好ましく、0がより好ましい。また、*は他の部位との結合位置である。Rは、炭素数1~10の有機基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤は、下記構造Aを有することが好ましい。本実施形態においては、特に、一分子中に下記構造Aを1~3つ有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、下記構造Aを2つ有するヒンダードアミン系光安定剤がより好ましい。
構造A
【化6】
(上記構造Aにおいて、*は他の部位との結合位置である。)
【0037】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましく、450以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、射出成形時の発生ガス抑制効果がより向上する傾向にある。また、ヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましく、700以下であることが一層好ましく、600以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表層に偏析しやすくなり、紫外線吸収による樹脂分解時の発生ラジカルの補足効果がより向上する傾向にある。
【0038】
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ADEKA社製、アデカスタブ LA-52、LA-57、LA-63P、LA-68、LA-72、LA-77Y、LA-77G、LA-81、LA-82、LA-87、LA-402AF、LA-40MP、LA-40Si、C.S.C社製、Chimassorb119、Tinuvin622、Tinuvin123、Tinuvin770 DF等が例示される。
【0039】
光安定剤としては、上記の他、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物が光安定剤を含む場合、その含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましく、0.05質量部以上であることが一層好ましく、0.08質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、光安定剤による色差の安定効果がより向上する傾向にある。また、前記光安定剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることがさらに好ましく、0.5質量部以下であることが一層好ましく、0.2質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、射出成形時の発生ガス抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、光安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物において、特定紫外線吸収剤と光安定剤の質量比率は、特定紫外線吸収剤1に対し、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましく、また、1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。このような比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0042】
<熱安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、熱安定剤を含んでいてもよい。
熱安定剤としては、また、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物などが挙げられ、硫黄系化合物が好ましい。
熱安定剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物が熱安定剤を含む場合、その含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましく、0.10質量部以上であることが一層好ましく、0.15質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱試験における材料特性の保持効果がより向上する傾向にある。また、前記熱安定剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、1.0質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以下であることが一層好ましく、0.25質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、組成物本来が有する材料特性をより効果的に保持できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、熱安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0044】
本実施形態の樹脂組成物において、特定紫外線吸収剤と熱安定剤の質量比率は、特定紫外線吸収剤1に対し、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが一層好ましく、また、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.2以下であることが一層好ましい。このような比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0045】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
具体的には、核剤、顔料、染料、難燃剤、難燃助剤、充填剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、特定紫外線吸収剤、および、特定離型剤、ならびに、必要に応じ配合される成分の合計が100質量%となる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、特定紫外線吸収剤、および、特定離型剤の合計が、樹脂組成物の94質量%以上を占めることが好ましく、96質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、特定紫外線吸収剤、特定離型剤、光安定剤(好ましくはヒンダードアミン系光安定剤)、および、熱安定剤の合計が、樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましく、97質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0046】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の調製の常法によって製造できる。通常は各成分および所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸または二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本実施形態の樹脂組成物を調製することもできる。色素等の一部の成分を熱可塑性樹脂と溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、無機充填剤を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0047】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、耐光性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を、タテ60mm、ヨコ60mm、肉厚1.5mmの試験片に成形し、120℃、積算照度51KJ/m2(275nm波長基準)にて600時間試験処理したときの、前後の色差Δb値(Δb値=処理後b値ー処理前b値)が、20未満であることが好ましく、15未満であることがより好ましい。前記Δb値の差の下限値は0が理想であるが、0.1以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、また、耐候性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を、タテ60mm、ヨコ60mm、肉厚1.5mmの試験片に成形し、耐候性の試験規格SAE J1960に従って400時間試験処理したときの、前後の色差Δb値(Δb値=処理後b値ー処理前b値)が、4未満であることが好ましい。前記Δb値の差の下限値は0が理想であるが、0.1以上が実際的である。
【0048】
<成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法に従って成形される。
成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
射出成形法の詳細は、特許第6183822号公報の段落0113~0116の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、射出成形等、金型成形する際の金型温度は、70~90℃であることが好ましい。特に、特定離型剤の融点より、70~30℃低い金型温度で成形することが好ましい。
【0049】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物から形成された成形品として用いられる。樹脂組成物ないし成形品の用途としては、特に定めるものでは無く、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品(自動車内外装)、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などに好ましく用いられる。
特に、本実施形態の樹脂組成物ないし成形品は、屋外で用いるものに好適に利用される。屋外で用いるものとしては、宅配ボックス、ポスト、自動車の外装部品、監視カメラ筐体、ドローン等飛翔体の外装部品等が例示される。
【実施例0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0051】
1.原料
下記表1に示す各成分を用いた。
【表1】
【0052】
アデカスタブ LA-31の構造は下記の通りである。
【化7】
SEESORB709の構造は下記の通りである。
【化8】
【0053】
Tinuvin 770 DFの構造は下記の通りである。
【化9】
【0054】
2.実施例1~3、比較例1~7
<ペレットの製造>
表1に示す各成分を表2または表3に示す割合(質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)を使用し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0055】
<試験片の製造>
得られたペレットを用い、日精樹脂工業社製「NEX80-9E型」射出成形機を使用して、シリンダー温度250℃、金型温調機設定温度80℃にて、成形品(タテ60mm、ヨコ60mm、肉厚1.5mm)の成形品を成形した。得られた成形品を用いて初期色相(目視評価)、ブリード特性、耐光性、耐候性を評価した。
【0056】
<初期色相>
上記で得られた成形品を目視にて観察した。淡黄色に見えるものは、初期から外観が劣ることを示している。なお、観察は5人の専門家が行い多数決とした。
【0057】
<ブリード特性の評価(120℃ブリード確認)>
上記で得られた成形品を、熱風乾燥機内に水平に設置し、120℃設定にて120時間試験処理した。熱処理後の成形品を取り出し、室温になるまで静置した。成形品表面(設置上面)を、ウエスを使用してふき取り、離型剤成分のブリード特性を以下の四段階の基準で目視判定を行った。なお、比較例7程度のものを「C」と評価することとし、専門家5人が確認して、多数決で判断した。
A:成形品表面に液滴無し、かつ、ウエスふき取り箇所に跡が残らない
B:成形品表面に液滴無し、かつ、ウエスふき取り箇所にわずかな跡が残る
C:成形品表面に液滴無し、かつ、ウエスふき取り箇所に明らかな跡が残る
D:成形品表面に液滴有り
【0058】
<耐光性(120℃耐光性(色差))の評価>
上記で得られた成形品を、耐光性試験機内に垂直に設置し、120℃設定および積算照度51KJ/m2(275nm波長基準)にて600時間試験処理した。処理後の成形品を取り出し、室温になるまで静置した。成形品表面(照射面)を色差計(コニカミノルタ社製SPECTRO PHOTOMETER CM-3600d、SCI法)を用いて評価し、色差Δb値(Δb値=処理後b値ー処理前b値)を算出した。以下の三段階の基準で目視判定を行った。
A:Δb値15未満
B:Δb値15以上、かつ、20未満
C:Δb値20以上
【0059】
<耐候性(色差)の評価>
上記で得られた成形品を、耐候性試験機(ATRUS ci4000)内に垂直に設置し、所定試験規格(SAE J1960)にて400時間試験処理した。処理後の成形品を取り出し、室温になるまで静置した。成形品表面(照射面)を色差計(コニカミノルタ社製SPECTRO PHOTOMETER CM-3600d、SCI法)を用いて評価し、色差Δb値(Δb値=処理後b値ー処理前b値)を算出した。以下の二段階の基準で目視判定を行った。
A:Δb値4未満
B:Δb値4以上
【0060】
<総合評価>
各実施例および比較例について、以下の基準に従って、点数を算出した。
初期色相:白色1点、その他の色(淡黄色等)0点
ブリード特性:A評価1点、その他の評価0点
耐光性:A評価1点、その他の評価0点
耐候性:A評価1点、その他の評価0点
算出した点数に基づき、以下の通り評価した。
A:4点
B:3点
C:2点
D:1点
E:0点
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から得られた成形品は、耐光性および耐候性に優れていた。特に、本発明においては、高温での光照射下に長時間さらされた後の耐光性(120℃耐光性(色差))が所定の離型剤の使用により、向上した。離型剤が耐光性に寄与することは予想外の効果である。